(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031387
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液体付与装置
(51)【国際特許分類】
B05C 3/10 20060101AFI20240229BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B05C3/10 ZAB
B05C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134905
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 裕之
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA01
4F040AB13
4F040BA48
4F040CC15
4F040CC19
4F042AA01
4F042AB00
4F042DF01
4F042DF17
(57)【要約】
【課題】紙加工製品に薬液を付与するのに適する液体付与装置を提供する。
【解決手段】
浸漬籠が搬送レールより上方に位置した状態で搬送される上部搬送区間と、浸漬籠が搬送レールに対して吊下された状態で搬送される下部搬送区間と、浸漬籠が上部搬送区間から下部搬送区間に向う下降搬送区間と、浸漬籠が下部搬送区間から上部搬送区間に向う上昇搬送区間と、を有する無端軌道の搬送経路であり、下降搬送区間から下部搬送区間の一部区間に、搬送経路を移動する浸漬籠の蓋部に接触するガイドレールが配され、浸漬籠がガイドレールによって蓋体の閉止状態を維持しつつ搬送される過程で浸漬槽を通過する、液体付与装置により解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被浸漬物品が入れられる浸漬籠が、搬送レールに沿って移動する過程で浸漬液が入れられた浸漬槽を通過する搬送経路を有する、液体付与装置であって、
搬送経路は、浸漬籠が搬送レールより上方に位置した状態で搬送される上部搬送区間と、浸漬籠が搬送レールに対して吊下された状態で搬送される下部搬送区間と、浸漬籠が上部搬送区間から下部搬送区間に向う下降搬送区間と、浸漬籠が下部搬送区間から上部搬送区間に向う上昇搬送区間と、を有する無端軌道であり、
浸漬籠は、籠本体部と、籠本体部に開閉自在に連結された蓋体と、を有し、
少なくとも下降搬送区間から下部搬送区間の一部区間に、搬送経路を移動する浸漬籠の蓋部に接触するガイドレールが配され、ガイドレールが設けられた区間に浸漬槽が位置し、ガイドレールが設けられた区間において、ガイドレールが蓋体を押持しつつ浸漬籠が移動され、浸漬籠がガイドレールによって蓋体の閉止状態を維持しつつ搬送される過程で浸漬槽を通過する、ことを特徴とする、液体付与装置。
【請求項2】
浸漬籠がガイドレールの非存在区間に移動された際に、ガイドレールによる蓋体の押持が解除され、蓋体が籠本体部から吊下されるように開き、内包される浸漬後の被浸漬物品が落下して自動的に排出される、請求項1記載の液体付与装置。
【請求項3】
浸漬籠が浸漬槽を通過した後の区間に、浸漬籠に対して気体を送気する、気体送気装置が設けられている、請求項1又は2記載の液体付与装置。
【請求項4】
被浸漬物品が排出された浸漬籠は、蓋体が開いた状態で、上昇搬送区間から上部搬送区間に移動され、上部搬送区間において蓋体が開いた浸漬籠に対して、自動で新たな被浸漬物が供給される、請求項2記載の液体付与装置。
【請求項5】
蓋体は、ガイドレールと当接する位置にガイド部を有し、ガイド部がガイドレール上を摺動しながら浸漬籠が移動される、請求項1記載の液体付与装置。
【請求項6】
蓋体は、蓋体が開かれた状態で籠本体部の外方位置において、下方に突出するレバー部を有し、上部搬送区間のレバー部に当たる位置にレバー当接部が配され、上部搬送区間を浸漬籠が移動する通過で、レバー部がレバー当接部に接触して引かれて蓋体が自動的に閉じる、請求項1記載の液体付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体付与装置に関し、特に、紙加工製品に薬液を付与するのに適する液体付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旅館やホテル等の宿泊施設等では、アメニティとしてカミソリや歯ブラシが提供されていることがある。また、商業施設におけるフードコート、ファストフードショップ、持ち帰り弁当店、航空機内など飲食提供サービス、フードデリバリーやケータリングイベント等の種々の飲食提供の場において、無料のカトラリー、ストローや食器類が提供されていることがある。これらカミソリ、歯ブラシ、カトラリー、ストローや食器類は、一回又は数回程度の使用の後に廃棄することが想定されている使い捨てのものであり、安価で軽量なプラスチック成型品のものが多く使用されている
【0003】
他方で、近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでいる。日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業等の特定業種において、提供されるカミソリ、歯ブラシ、カトラリー、ストローが指定されており、これら製品における脱プラスチック化の要望が高まっている。このような背景のなか、プラスチック成型品に代替するものとして、天然素材であるパルプを主原料とする紙を加工した紙加工製品が注目されている。
【0004】
ところで、歯ブラシ、カミソリ、カトラリー、ストローや食器類は、いずれも使用時に水に触れる態様で用いられる。その一方で、紙は、元来、水解しやすいものであるため、歯ブラシ、カミソリ、カトラリー、ストロー、食器類等を紙加工製品とするにあたっては、水濡れ時の強度低下、破損を防止すべく、耐水性、防水性、撥水性といった水に濡れても水解せずに強度が保持されるようにする必要がある。
【0005】
従来、紙加工製品における水濡れ時の強度低下や破損を防止する方法としては、例えば、成形前の原紙の表面に対して予め防水剤や撥水剤等の薬剤を塗布し、耐水性や撥水性を付与した紙を用いて成形することが一般的である。また、物品に対して薬剤等の液体を付与する方法として、スプレー塗布によって表面に塗膜を形成したり薬剤を浸透させたり、物品の一部を保持して薬液槽中の薬液に浸漬することが知られており、これらの薬剤を撥水剤等として、紙加工製品に耐水性や撥水性を付与することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-117107号公報
【特許文献2】特開2012-249963号公報
【特許文献3】特開2021-29926号公報
【特許文献4】特開2021-29924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、原紙に薬剤を塗布する方法は、紙層内に十分に薬剤が浸透し難く、断裁加工や打抜き加工によって露出する断面から水が紙層内に浸漬して強度が低下するおそれがある。また、断裁加工や打抜き加工後の余剰部分にも薬剤が塗布されるため、薬剤の歩留まりが悪い。薬剤をスプレー塗布する方法は、紙加工製品においては形状によっては薬剤が行き届かない未処理部分が発生するおそれがある。また、形状の異なる成形品毎に対応するには、複数のスプレー装置を設けたり、吐出口を移動させたりする必要が生じ、設備や操作が煩雑となる。物品の一部を保持して薬剤に浸漬させる方法は、保持部分が未処理になるおそれがある。紙加工製品では一部にでも未処理部分があれば、その部分から水が浸透するおそれがある。さらに、この方法は、形状の異なる成形品毎に保持態様や保持具を適合させる必要が生じ、設備や操作が煩雑となる。また、使い捨てのハブラシ、カミソリ、カトラリー等のプラスチック成型品は、大量生産が求められるが、個々の製品をスプレーしたり、保持したりする方法は、大量生産に適していない。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、加工後の断面に薬液を付与することができ、薬液が行き届かない未処理部分が発生し難く、複数の被浸漬物品や形状の異なる被浸漬物品に対して薬液を付与することができ、煩雑な操作がなく作業性に優れ、特に被浸漬物品が紙加工製品である場合に適する、液体付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した第一の手段は、
被浸漬物品が入れられる浸漬籠が、搬送レールに沿って移動する過程で浸漬液が入れられた浸漬槽を通過する搬送経路を有する、液体付与装置であって、
搬送経路は、浸漬籠が搬送レールより上方に位置した状態で搬送される上部搬送区間と、浸漬籠が搬送レールに対して吊下された状態で搬送される下部搬送区間と、浸漬籠が上部搬送区間から下部搬送区間に向う下降搬送区間と、浸漬籠が下部搬送区間から上部搬送区間に向う上昇搬送区間と、を有する無端軌道であり、
浸漬籠は、籠本体部と、籠本体部に開閉自在に連結された蓋体と、を有し、
少なくとも下降搬送区間から下部搬送区間の一部区間に、搬送経路を移動する浸漬籠の蓋部に接触するガイドレールが配され、ガイドレールが設けられた区間に浸漬槽が位置し、ガイドレールが設けられた区間において、ガイドレールが蓋体を押持しつつ浸漬籠が移動され、浸漬籠がガイドレールによって蓋体の閉止状態を維持しつつ搬送される過程で浸漬槽を通過する、ことを特徴とする、液体付与装置である。
【0010】
第二の手段は、
浸漬籠がガイドレールの非存在区間に移動された際に、ガイドレールによる蓋体の押持が解除され、蓋体が籠本体部から吊下されるように開き、内包される浸漬後の被浸漬物品が落下して自動的に排出される、上記第一の手段に係る液体付与装置である。
【0011】
第三の手段は、
浸漬籠が浸漬槽を通過した後の区間に、浸漬籠に対して気体を送気する、気体送気装置が設けられている、上記第一又は第二の手段に係る液体付与装置である。
【0012】
第四の手段は、
被浸漬物品が排出された浸漬籠は、蓋体が開いた状態で、上昇搬送区間から上部搬送区間に移動され、上部搬送区間において蓋体が開いた浸漬籠に対して、自動で新たな被浸漬物が供給される、上記第二の手段の液体付与装置である。
【0013】
第五の手段は、
蓋体は、ガイドレールと当接する位置にガイド部を有し、ガイド部がガイドレール上を摺動しながら浸漬籠が移動される、上記第一の手段に係る液体付与装置である。
【0014】
第六の手段は、
蓋体は、蓋体が開かれた状態で籠本体部の外方位置において、下方に突出するレバー部を有し、上部搬送区間のレバー部に当たる位置にレバー当接部が配され、上部搬送区間を浸漬籠が移動する通過で、レバー部がレバー当接部に接触して引かれて蓋体が自動的に閉じる、上記第一の手段に係る液体付与装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加工後の断面に薬液を付与することができ、薬液が行き届かない未処理部分が発生し難く、複数の被浸漬物品や形状の異なる被浸漬物品に対して薬液を付与することができ、煩雑な操作がなく作業性に優れ、特に被浸漬物品が紙加工製品である場合に適する、液体付与装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る薬液付与装置を説明するための側面図である。
【
図2】本実施形態に係る薬液付与装置を説明するための平面図である。
【
図3】本実施形態に係る浸漬籠を説明するための平面図である。
【
図4】本実施形態に係る浸漬籠を説明するための正面図である。
【
図5】本実施形態に係る浸漬籠を説明するための側面図である。
【
図6】本実施形態に係る浸漬籠とガイドレールを説明するための平面図である。
【
図7】本実施形態に係る浸漬籠の蓋体の開放を説明するための側面図である。
【
図8】本実施形態に係る浸漬籠の蓋体が閉じられる態様を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次いで、本発明の実施形態を
図1~
図8を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるわけではない。
【0018】
本実施形態の液体付与装置Mは、特に
図1及び
図2に示すように、一又は複数の被浸漬物品が入れられる浸漬籠10と、浸漬液Dが入れられた浸漬槽20と、浸漬籠10が搬送レール30に沿って移動する過程で浸漬液Dが入れられた浸漬槽20を通過する搬送経路1とを有している。
【0019】
本実施形態の浸漬籠10は、特に
図3~
図5に示すように、籠本体部11と、籠本体部11に開閉自在に連結された蓋体12と、を有している。本実施形態の籠本体部11は、上部解放の直六面体形状であり、蓋体12は、閉じた状態では、その開放部分を全面的に覆う形状となっている。但し、浸漬籠10の具体的な大きさ及び形状は、限定されない。被浸漬物品に応じて適宜の形状や大きさとすることができる。
【0020】
蓋体12は、籠本体部11の開口縁部に対して蝶番13等によるヒンジ接合等によって、籠本体部11の開口側を地面側に向けた際に、蓋体12が籠本体部11から垂れ下がって開口可能な程度の強度で連結されている。
【0021】
浸漬籠10の具体例としては、浸漬液Dの侵入及び排出が迅速にされるパンチング籠などとも称されるパンチングメタル製の籠、金網籠、ワイヤー籠、プラスチック籠などが例示できる。特に好ましくは、壁面を平にでき浸漬液Dが壁面に留まり難いパンチング籠である。但し、浸漬籠10は、これらの籠に限定されるわけではない。液没によって浸漬籠内に浸漬液が侵入して、被浸漬物と浸漬液との接触がなされるように壁面に多数の通孔1が設けられている箱体であればよい。浸漬籠10における通孔14の数や大きさも限定されない。また、浸漬籠10の素材も、必ずしも限定されない。浸漬液及び被浸漬物品に応じて適宜選択することができる。例えば、ステンレス、鉄、銅等の金属素材、エンジニアプラスチック等の樹脂素材とすることができる。一部が別素材となっていてもよい。好ましくは、耐腐食性に優れるステンレス素材である。
【0022】
本実施形態の搬送経路1は、浸漬籠10が搬送レール30より上方に位置した状態で搬送される上部搬送区間1Aと、浸漬籠10が搬送レール30に対して吊下された状態で搬送される下部搬送区間1Cと、浸漬籠10が上部搬送区間1Aから下部搬送区間1Cに向う下降搬送区間1Bと、浸漬籠10が下部搬送区間1Cから上部搬送区間1Aに向う上昇搬送区間1Dと、を有する無端軌道となっている。
【0023】
この搬送経路1を構成するための搬送レール30の具体的な構成は限定されない。また、浸漬籠10を搬送レール30に沿って移動させる具体的な装置構成も、必ずしも限定されない。図示の形態では、搬送レール30は、所定の離隔距離で並設された一対の搬送枠30A,30Aに沿って、無端チェーン31,31を配して形成されており、この無端チェーン31,31間に架橋された架台32に浸漬籠10の底側が固定され、サーボモータ等の駆動装置33による無端チェーン31,31の駆動によって、浸漬籠10が搬送レール30に沿って移動するようにして構成されている。但し、搬送レール30は、搬送枠30Aを全範囲又は一部範囲に設けないようにした構成としてもよい。図示はしないが、例えば、下部搬送区間1Cは、搬送枠30Aを配さずに、無端チェーン31が吊り下げで架橋されるように構成してもよい。適宜の支持部に無端チェーン31を巻き掛け、無端チェーン31のみで搬送レールを構成してもよい。また、搬送枠及び無端チェーン31を一つとして、片持ちで架台32を無端チェーン31に取り付ける構成も例示できる。さらに、浸漬籠10を搬送レール30に沿って移動させる他の装置構成例としては、搬送枠30Aに沿って無端ベルトや無端クローラが配されているベルトコンベア、キャタピラコンベヤ等の適宜のコンベヤ装置におけるベルト、クローラ上に適宜の間隔で直接又は架台を介して浸漬籠を連結してもよい。
【0024】
搬送経路1を移動する浸漬籠10の数は限定されない。一又は複数とすることができる。好ましくは、複数の浸漬籠10が走行方向に間隔をあけて移動するように構成されているのが望ましい。図示の形態は、無端チェーン31,31の走行方向に間隔をあけて複数の浸漬籠10が固定されている例を示している。
【0025】
浸漬槽20は、被処理物品に付与する浸漬液Dが溜められた槽であり、浸漬籠10が浸漬槽20内を通過することで、浸漬籠10が液没され、浸漬籠10内の被処理物品に対して浸漬液Dが付与される。浸漬槽20は、図示の形態のように、浸漬液Dが貯められているタンク21からカラン22を介して浸漬液Dを供給可能となっており、底部には浸漬液Dを排出するドレン23が設けられている。これによって、浸漬液の補給及び液面の調整が可能となっている。
【0026】
浸漬槽20の配設位置は、
図1に示すように、下降搬送区間1Bから下部搬送区間1Cにかけて配置するのが望ましい。浸漬籠10は、下降搬送区間1Bにおいて下降されつつ浸漬槽20に入槽し、下降搬送区間1Bから下部搬送区間1Cに変わった直後の位置(
図1中符号Yの位置)において、浸漬籠10が浸漬槽20に最も深く浸かり、この浸漬籠10が最も深く浸かる位置から、下部搬送区間1Cを移動する間に浸漬槽20から出槽される。
【0027】
より具体的には、この形態では、
図1に示すように、下降搬送区間1Bにおいて搬送レール30が浸漬槽20の液面に対して垂直に配されており、下降搬送区間1Bにおいては、浸漬籠10が液面に向かって垂直に下降するように構成されている。そして、下降搬送区間1Bから円弧軌道を描いて下部搬送区間1Cに変る過程で浸漬籠10が浸漬槽20に入槽し、下降搬送区間1Bから下部搬送区間1Cに変わり、浸漬籠10の底が最上方となる位置Yとなった際に、浸漬籠10が浸漬槽20に最も深く浸かって浸漬籠全体が液没し、浸漬籠内の被浸漬物品が浸漬液Dに浸漬される。このように浸漬籠10が完全に液没されることで、紙加工製品等の軽量で液体に浮く、又は沈み難い性質の被浸漬物品であっても全面に液体を付与することができる。また、この位置においては、図示されるように、浸漬籠10は底まで浸漬槽に浸かるが、架台32より上方位置にある駆動装置に係る部分は浸漬液Dと接触しないように浸漬槽20の液面を調整するのが望ましい。浸漬液Dによる駆動装置の汚染が発生し難くなる。下部搬送区間1Cでは、浸漬槽20に最も浸漬籠が深く浸かる位置から、搬送レール30が上り勾配となっている上り勾配区間1C
1が設けられており、浸漬籠10が下部搬送区間1Cを移動する過程で搬送レール30に沿って浸漬槽20から徐々に出槽されるように構成されている。なお、図示の形態は、下部搬送区間1C全体が、上り勾配区間となっている例であるが、必ずしもこのように構成する必要はない。なお、本実施形態では、浸漬槽20の底面20Bも搬送レール30の上り勾配と対応するように上り勾配の斜面となっており、浸漬槽20に溜まる浸漬液Dの量を少なくでき、少ない浸漬液Dで被処理物品とが接触されるようになっている。
【0028】
なお、上記形態は、浸漬槽20を下降搬送区間か1Bら下部搬送区間1Cにかけて配設した形態であるが、浸漬槽20の配設位置は、搬送経路1の下部搬送区間1Cにあってもよい。図示はしないが、この場合、下部搬送区間1Cにおいて搬送レール30を下り勾配から登り勾配に変化するように配置して下り勾配区間と上り勾配区間とを設け、下り勾配区間から上り勾配区間に変わる位置で浸漬籠が最も浸漬槽に浸かるようにすればよい。この形態では、浸漬槽20の底面を、搬送レール30の勾配に応じて入槽側が下り勾配、出槽側が上り勾配となるように構成するのが望ましい。
【0029】
ここで、本実施形態の液体付与装置Mでは、特徴的に、少なくとも下降搬送区間1Bから下部搬送区間1Cの一部区間に、搬送経路1を移動する浸漬籠10の蓋体12に接触するガイドレール40が配されている。ガイドレール40は、搬送レール30と所定距離離隔した位置で、搬送レール30に沿って並設されており、ガイドレール40が設けられた区間においては、浸漬籠10はガイドレール40によって蓋体12が押持されつつ移動される。したがって、浸漬籠10は、このガイドレール40が配された区間においては蓋体12の閉止状態が維持されつつ搬送される。
【0030】
そして、本実施形態の液体付与装置Mは、浸漬槽20がこのガイドレール40が設けられた区間に位置しており、浸漬籠10は蓋体12の閉止状態が維持されつつ浸漬槽20を通過するように構成されている。本実施形態の液体付与装置Mは、ガイドレール40という簡易な機構で浸漬籠の蓋体を閉じた状態とし、煩雑な操作なく、被浸漬物品が浸漬液Dに浸されるようになっている。なお、ガイドレール40は、本発明の効果を妨げないかぎり、上部搬送区間1A、上昇搬送区間1Dの一部に至るように配されていてもよい。
【0031】
ガイドレール40の具体例は、必ずしも限定されないが、単純な棒状のレール、多数のローラが配されたローラレール、ベルトコンベアレール等が例示できる。好ましくは、単純な棒状のレールである。浸漬籠10と接触しながら浸漬籠10を移動可能にする要素として機械的な可動部を有さないためメンテナンス性に優れる。このような、単純な棒状のレールの場合、蓋体12がガイドレール40上を単に摺動しながら移動される。
【0032】
蓋体12とガイドレールの当接位置は任意の位置とすることができるが、
図6に示すように、蓋体12におけるガイドレール40と当接する位置にガイド部51を設け、ガイド部51がガイドレール40上に位置するように構成されているのが望ましい。蓋体12におけるガイド部51の位置は、必ずしも限定されないが、
図6に示すように、籠本体部11の移動軌跡Z外の位置であるのが望ましい。浸漬槽20から浸漬籠10が出槽した後、ガイドレール40上に薬液が溜まって被浸漬物品の液切れを阻害し難くなる。
【0033】
ガイドレール40の素材は限定されない。ステンレス等の金属製、エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等の樹脂製の単純なレール材でもよいし、また、ガイドレール40を樹脂製とする場合、食品加工設備等で衛生上問題無く使用可能な樹脂で構成するのが望ましい。具体的には、ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂が挙げられる。安全性、耐摩耗性、滑走性により優れることから、特に、ポリオキシメチレン樹脂、超高分子量ポリエチレンが望ましい。
【0034】
他方で、本実施形態の液体付与装置Mは、ガイドレール40の一端が下部搬送区間1Cに位置しており、浸漬籠10がこのガイドレール40の一端を超えてガイドレール40の非存在区間に移動された際に、ガイドレール40による蓋体12の押持が解除され、蓋体12が籠本体部11から吊下されるように開くようになっている。その際に、浸漬籠10に納められている浸漬後の被浸漬物品が落下して自動的に排出される。この形態では、特に、
図7に示すように、ガイドレール40による蓋体12の押持が解除された位置において、搬送レール30を水平又は上り勾配とするのが望ましい。十分な開口部を形成して蓋体12が開かれやすくなる。
【0035】
また、本実施形態の液体付与装置Mは、
図1及び
図2に示すように、被浸漬物品の落下位置に、多数のローラによる搬送面を有するローラーコンベア、無端ベルトによる搬送面を有するベルトコンベア等のコンベア装置60が配されており、このコンベア装置によって、浸漬後の被浸漬物品Pが、コンベア装置の端に配設された回収容器61に投入されて回収されるようになっている。コンベア装置が、特に多数のローラによる搬送面を有するローラーコンベアの場合、被浸漬物品がローラ間を移動する過程の振動等で、余剰な浸漬液を落下させて除去することができる。
【0036】
なお、このような落下による被浸漬物品の自動排出が行われる形態では、被浸漬物品は、軽量で硬質な落下の衝撃で破損しない軽量で硬質な物品が望ましい。例えば、望ましい被浸漬物品としては、処理液に対して耐液性を有する板紙、複数の紙層が積層された多層紙等のパルプ繊維を抄紙したシート材で形成された紙加工製品、このようなシート材を圧縮成形した紙加工製品、特に、一部又は全部が厚み方向にプレス加工されて成形されている紙加工製品、さらにセルロース繊維水分散体を脱水・成形するパルプモールド加工製品が挙げられる。
【0037】
本実施形態の液体付与装置Mにおいては、浸漬籠10が浸漬槽20を通過した後の区間に、浸漬籠10に対して気体を送気する、気体送気装置70Aが設けられているのが望ましい。気体送気装置70Aは、一又は複数設けることができる。また、複数の位置に設けることができる。浸漬籠10に対して気体を送気する位置は、浸漬槽20を通過した後、特に新たな被浸漬物品が供給されるまでの区間であれば、必ずしも限定されないが、浸漬籠10が浸漬槽20を通過したのち内包される浸漬後の被浸漬物品が自動的に排出されるまでの区間、及び、浸漬籠10がガイドレール40の非存在区間に移動され、ガイドレール40による蓋体12の押持が解除され、蓋体12が籠本体部11から吊下されるように開いた後の区間の少なくとも一方にあるのが望ましい。気体送気装置70Aを設けることで、浸漬籠や被浸漬物品に付着している過剰な浸漬液を吹き飛ばしたり、乾燥を早めたりすることができる。さらに、被浸漬物品に付着した浸漬液によって被浸漬物品が意図せず浸漬籠に付着してしまったり、浸漬籠の意図しない部位に引っ掛かってしまったりしても、被浸漬物品の浸漬籠からの排出を促進させることができる。この気体送気装置70Aとしては、ブロア手段やスプレー手段、ファン手段などでよく、例えば、浸漬籠10に向かってブロア手段やスプレー手段から空気や不活性ガスを吹き付けることで、浸漬籠10や被浸漬物品に付着している余剰の浸漬液を吹き飛ばしたり、浸漬籠10からの被浸漬物品の排出が促進されたりするように構成することができる。また、浸漬籠10に向かってファン手段から空気を送風することで、浸漬液の乾燥及び浸透の少なくとも一方を早めるように構成することができる。図示の形態では、ガイドレール40による蓋体12の押持が解除され、蓋体12が籠本体部11から吊下されるように開いた後の位置に、浸漬籠の側方位置に向かって気体を送気するブロア手段を設け、浸漬籠や被浸漬物品に付着した浸漬液の吹き飛ばしや被浸漬物品の排出の促進ができるように構成した形態を示している。なお、気体送気装置70Aの後に浸漬液の乾燥装置を併設しても良い。乾燥の手段としては、浸漬液の性状に合わせて公知の乾燥装置が使用できる。
【0038】
また、液体付与装置Mにおいては、浸漬籠10から排出されてコンベア装置60で搬送される被浸漬物品に対して、気体を送気する第二の気体送気装置70Bを設けてもよい。この第二の気体送気装置70Bは、既述の気体送気装置70Aとともに設けることができる。第二の気体送気装置70Bを設けることで、被浸漬物品Pに付着している余剰の浸漬液を更に除去することができる。この気体送気装置70Bは、例えば、コンベア装置60の所定位置からカーテン状に、又は、幅方向に複数個のノズル口を設けてそのノズル口から気体を送気するようにすればよい。また、コンベア装置60には、第二の気体送気装置とともに、又は単独で乾燥装置を設置してもよいし、気体送気装置70Bに乾燥装置を組込んでも良い。乾燥の手段としては、浸漬液の性状に合わせて公知の乾燥装置が使用できる。
【0039】
本実施形態の液体付与装置Mでは、被浸漬物品が排出された浸漬籠10は、蓋体12が開いた状態で、上昇搬送区間1Dから上部搬送区間1Aに移動されるように構成するのが望ましい。そして、上部搬送区間1Aにおいて蓋体12が開いた浸漬籠10に対して、自動で新たな被浸漬物が投入されるように構成するのが望ましい。もちろん、手動で被浸漬物を供給してもよい。
【0040】
浸漬籠10を蓋体12が開いた状態で上部搬送区間1Aに移動させる機構は必ずしも限定されないが、一形態としては、
図1及び
図7に示すように、搬送経路1を円弧軌道で下部搬送区間1Cから上昇搬送区間1Dを経て上部搬送区間1Aに至るように構成する。さらに、浸漬籠10の籠本体部11と蓋体12とを連結する蝶番13の開き角度を90度超の角度、好ましくは100度超270度未満の角度とし、浸漬籠10の進行方向に対して後方側の縁部で籠本体部11と蓋体12とを連結するように構成する。そうすると、下部搬送区間1Cから上昇搬送区間1Dに向かって、蓋体12と籠本体部11とを連結する蝶番13の開き角度が維持された状態のまま、または、蓋体12と籠本体部11とを連結する蝶番13の開き角度に向かって開きつつ、浸漬籠10が移動されるようになる。このとき、蝶番13の開き角度が、90度超となっているため、浸漬籠10の移動時に再度蓋体が閉じることがなく、籠本体部11の開口が解放された状態で上部搬送区間1Aに移動される。なお、上部搬送区間1Aにおける搬送レール30は水平又は上り勾配とするのが望ましい。上昇搬送区間1Dから上部搬送区間1Aに浸漬籠10が移行する際に意図せず蓋体が閉じることが防止される。なお、図示の形態は、浸漬籠10が円弧軌道で下部搬送区間1Cから上昇搬送区間1Dを経て上部搬送区間1Aに至るように構成しているが、上昇搬送区間1Dを下降搬送区間1Bと同様に垂直に浸漬籠10が上昇するように構成してもよい。なお、蝶番13の開き角度の調整方法は限定されない。蝶番13の構造及び取り付け態様による公知の方法によって設定することができる。図示の形態では、開き角度が約180度となる例を示している。
【0041】
他方で、被浸漬物品の浸漬籠10内への供給は、作業者が手動で供給しても良いが、上部搬送区間1Aにおいて蓋体が開いた状態の浸漬籠に対して、自動で供給されるように構成するのが望ましい。例えば、上部解放の浸漬籠上にコンベア手段の一端が位置するように配置して、コンベア手段から、籠本体部に被浸漬物品が投入されるようにする。また、コンベア手段ではなく、投入用のシューターを配置してシューターか投入されるようにしてもよい。その具体的な手段は限定されない。
【0042】
さらに、本実施形態の液体付与装置Mは、
図1~
図5及び
図8に示すように、浸漬籠10の蓋体12に、蓋体12を自動的に閉じるためのレバー部52が設けられている。それとともに、上部搬送区間1Aには、このレバー部52のトリガーとなるレバー当接部34が配されており、上部搬送区間1Aを浸漬籠10が移動する通過で、レバー部52がレバー当接部34に接触して引かれ、蓋体12が自動的に閉じるようになっている。
【0043】
レバー部52は、蓋体12が開かれた状態で籠本体部11の外方位置において、下方に突出するように設けられている。より具体的には、
図3~
図5に示すように、レバー部52は、籠本体部11の移動軌跡Z外に位置するガイド部51の進行方向後方側に連続して、蓋体12の上面と所定の鈍角をもって突出する凸片として設けられ、上部搬送区間1Aでは、蓋体12が閉じた状態で上方に突出し、蓋体12が開くにしたがって蝶番13に軸心回りに回転して、上部搬送区間1Aでは、蓋体12が開かれた状態で下方に、突出するように設けられている。
【0044】
他方で、特に、
図1及び
図8に示すように、レバー当接部34は、上部搬送区間1Aの所定位置において搬送レール30の基体等から上方に向かって立設された凸片に設けられた棒状の凸部等であり、浸漬籠10の蓋体12が開かれた状態で浸漬籠10が、上部搬送区間1Aを移動して、
図8(A)に示すように、レバー当接部34の配設位置に来ると、下方に突出するレバー部52がレバー当接部34に当たる。そして、さらなる移動にともなって
図8(B)~(C)に示すように、レバー当接部34がレバー部52を蝶番13の軸心回りに回転するように押し上げ、最終的には
図8(D)に示すように、蓋体12を閉じた状態とする。なお、レバー部52及びレバー当接部34の形状は、凸片や棒状の凸部に限定されず、適宜の大きさ、形状とすることができる。
【0045】
さらに、この本実施形態の液体付与装置Mは、既述のとおり、レバー部52は、籠本体部11の移動軌跡外に位置するガイド部51の進行方向後方側に連続して、蓋体12の上面と所定の鈍角をもって突出する凸片として設けられ、特に、上部搬送区間1Aで蓋体12が閉じた状態では上方に突出するように配されている。このため、
図1に示すように、浸漬籠10が、上部搬送区間1Aから下降搬送区間1Bに移動されると、レバー部52は、蓋体12を閉じた状態に維持するためのカウンターウェイトとしても機能するようになっている。このためガイドレール40の配設区間に至る前に蓋体12が意図せず、開き難くなっている。
【0046】
ここで、本実施形態の液体付与装置Mに係る被浸漬物品は、必ずしも限定されるわけではないが、例えば、軽量でかつ撥水剤や防水剤を付与する必要がある紙加工製品が適しており、それら紙加工製品等の具体例としては、紙製の食器、トレー類、紙製のスプーン、フォーク、ナイフ、蓮華、マドラー、穴あきスプーン等のカトラリーやストロー、紙製のカミソリ、紙製の歯ブラシ、紙製のブラシ、紙製の櫛などが例示できる。予めプレス加工等によって成形された製品でもよい。紙加工製品の素材となる紙も限定されないが、板紙、多層紙などある程度の剛性、耐水性を有する厚紙が適する。また、サイズ剤や紙力増強剤が含有されているものが望ましい。さらに、被浸漬物品は、抄紙後の紙を素材とする紙加工製品のみならず、抄紙原料であるパルプを成形したパルプモールド加工製品であってもよい。パルプモールド加工製品の具体例も、上記の紙加工製品と同様のものが挙げられる。
【0047】
また。本実施形態の液体付与装置Mに係る浸漬液Dは、必ずしも限定されるわけではない。紙加工製品に付与する防水剤や撥水剤等の薬剤が挙げられる。本実施形態の液体付与装置に係る浸漬液、特に好ましいものとしては、紙加工製品に対してシロキサン化合物を付与するための薬液である。この薬液は、迅速に繊維で構成される紙加工製品に浸透しやすく浸漬による薬液の付与に適し、さらに、シロキサン化合物は、シロキサン結合によって、紙加工製品の剛度、強度、耐水性及び表面の滑らかさを高めることができる。シロキサン化合物を付与するための薬液としては、例えば、アルコール、イソプロピルアルコールの少なくとも一方を溶媒として含むアルコキシシラン溶液が例示できる。
【0048】
以上の本実施形態の液体付与装置Mは、搬送経路1の構成とガイドレール40の配設という簡易な機構によって浸漬籠10の蓋体12を閉じた状態で被浸漬物品に液体をドブ付けで加工後の断面も含めて物品全体に付与することができ、薬液が行き届かない未処理部分が発生し難い。さらに、ガイドレール40の配設区間の設定によって、自動で液体付与後の被浸漬物品を排出することができ、蓋体12の開閉も浸漬籠10の移動のみによって自動的に行うことができる等、煩雑な操作がなく作業性に優れる。そして、特に、軽量な紙加工製品に適する。なお、本発明は、上記の実施形態に限定されない。搬送経路1や搬送レールの具体的な配置形態等、本発明の効果を妨げない範囲で適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
M…液体付与装置、1…搬送経路、1A…上部搬送区間、1B…下降搬送区間、1C…下部搬送区間、1D…上昇搬送区間、1C1…上り勾配区間、10…浸漬籠、11…籠本体部、12…蓋体、13…蝶番、14…通孔、20…浸漬槽、20B…浸漬槽の底面、21…タンク、22…カラン、23…ドレン、30…搬送レール、30A…搬送枠、31…無端チェーン、32…架台、33…駆動装置、34…レバー当接部、D…浸漬液、40…ガイドレール、51…ガイド部、52…レバー部、60…コンベア装置、61…回収容器、70…気体送気装置、P…被浸漬物品、Z…浸漬籠の移動軌跡の範囲。