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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031403
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/08 20060101AFI20240229BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20240229BHJP
   F02B 23/08 20060101ALI20240229BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20240229BHJP
   F02B 75/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F02D21/08 311Z
F02B19/12 Z
F02B23/08 W
F02B67/00 L
F02B75/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134938
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若本 進児
【テーマコード(参考)】
3G023
3G092
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AA08
3G023AA18
3G023AB03
3G023AC03
3G023AC05
3G023AD04
3G023AD25
3G092AA01
3G092AA04
3G092AA06
3G092AA07
3G092AA15
3G092BB06
3G092CB05
3G092DE10S
3G092FA31
3G092GA01
3G092HA10X
3G092HB02X
3G092HE08Z
(57)【要約】
【課題】プレチャンバが設けられるエンジンの冷態時において追加部品を設置することなく、低コスト且つ燃焼室の着火性を向上させる。
【解決手段】エンジンシステムは、エンジンの冷態時に、プレチャンバが設けられていない第1気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行い、第1気筒の排ガスを接続ポートを通じてプレチャンバが設けられた第2気筒に導入するとともに、第2気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を行わずに、第1気筒から導入される排ガスを吸気および排気する特殊動作を行うことにより、第2気筒のプレチャンバの隔壁を昇温させることと、プレチャンバの隔壁が所定の閾値以上に昇温した後に、第2気筒でも、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行うことと、を含む処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレチャンバが設けられていない第1気筒と、プレチャンバが設けられた第2気筒と、前記第1気筒と前記第2気筒とを直列に接続する接続ポートとを有するエンジンと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記エンジンの冷態時に、前記第1気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行い、前記第1気筒の排ガスを前記接続ポートを通じて前記第2気筒に導入するとともに、前記第2気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を行わずに、前記第1気筒から導入される前記排ガスを吸気および排気する特殊動作を行うことにより、前記第2気筒の前記プレチャンバの隔壁を昇温させることと、
前記プレチャンバの隔壁が所定の閾値以上に昇温した後に、前記第2気筒でも、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行うことと、
を含む処理を実行する、エンジンシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第2気筒の前記プレチャンバの隔壁の温度に応じて、前記エンジンの動作モードを、前記第1気筒および前記第2気筒の双方を前記通常動作させる通常動作モードと、前記第1気筒を前記通常動作させつつ前記第2気筒を前記特殊動作させる特殊動作モードとの間で切り替えること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記通常動作モードは、
前記第1気筒の排ガスを前記接続ポートを通じて前記第2気筒に導入せずに、前記第1気筒と前記第2気筒を独立的に前記通常動作させる第1通常動作モードと、
前記第1気筒の排ガスを前記接続ポートを通じて前記第2気筒に導入しながら、前記第1気筒と前記第2気筒とを連動させて前記通常動作させる第2通常動作モードと、
を含み、
前記プロセッサは、
前記エンジンの要求出力または熱効率の少なくとも一方に基づいて、前記通常動作モードを、前記第1通常動作モードと前記第2通常動作モードとの間で切り替えること、
を含む処理を実行する、請求項2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記エンジンは、水平対向エンジンであり、
前記水平対向エンジンの左バンクおよび右バンクのいずれか一方または双方に、前記第1気筒および前記第2気筒が設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、点火点を覆うプラグカバー内をプレチャンバとした点火プラグがシリンダヘッドに装着されたエンジンが開示されている。かかるエンジンでは、圧縮行程において、ピストンの上昇により、燃料と空気との混合ガスがプラグカバーの連通孔を介してプレチャンバ内に流入し、爆発行程において、プレチャンバ内の混合ガスが火花点火される。そして、プレチャンバ内で発生した燃焼火炎がプラグカバーの連通孔を介して、プレチャンバから燃焼室へ噴出し、燃焼室内の混合ガスが着火される。かかるプレチャンバ燃焼を採用することにより、エンジンの熱効率を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5555030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両が極低温環境下にあるときなど、エンジンの冷態時には、プレチャンバの隔壁も冷えているため、プレチャンバの燃焼安定性が課題となる。例えば、上記特許文献1に記載の技術においても、エンジンの冷態時は、点火プラグのプラグカバーの温度も低いため、プレチャンバ内で発生した燃焼火炎がプラグカバーの連通孔を通過する際に消失し易く、燃焼室内の混合ガスが着火し難いという問題がある。ここで、プラグカバーは、プレチャンバの隔壁に相当する。そこで、特許文献1に記載のエンジンは、点火プラグのプラグカバーの頭部にニクロム線を設け、エンジンが冷態状態であるとき、ニクロム線によりプラグカバーの頭部をクランキング開始温度まで加熱している。しかし、その場合、点火プラグのプラグカバーの頭部にニクロム線を新たに設ける必要があるため、追加部品の設置が必要となり、レイアウトの問題や、エンジンのコストが増大するという問題がある。
【0005】
また、プレチャンバの燃焼安定性を解決するために、プレチャンバの外の燃焼室に別途点火プラグを設け、エンジンの冷態時には、プレチャンバの外に設けられた点火プラグにより燃焼室内の混合ガスを点火する方法も考えられる。しかし、その場合も、プレチャンバの外の燃焼室に追加部品として別途点火プラグを設ける必要があり、レイアウトの問題や、エンジンのコストが増大するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、プレチャンバが設けられるエンジンの冷態時において追加部品を設置することなく、低コスト且つ燃焼室の着火性を向上させることが可能なエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るエンジンシステムは、
プレチャンバが設けられていない第1気筒と、プレチャンバが設けられた第2気筒と、前記第1気筒と前記第2気筒とを直列に接続する接続ポートとを有するエンジンと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記エンジンの冷態時に、前記第1気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行い、前記第1気筒の排ガスを前記接続ポートを通じて前記第2気筒に導入するとともに、前記第2気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を行わずに、前記第1気筒から導入される前記排ガスを吸気および排気する特殊動作を行うことにより、前記第2気筒の前記プレチャンバの隔壁を昇温させることと、
前記プレチャンバの隔壁が所定の閾値以上に昇温した後に、前記第2気筒でも、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行うことと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレチャンバが設けられるエンジンの冷態時において追加部品を設置することなく、低コスト且つ燃焼室の着火性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態にかかるエンジンシステムの構成を示す概略図である。
図2図2は、第1気筒および第2気筒を縦断面で示すエンジンシステムの概略図である。
図3図3は、第1気筒および第2気筒を上方からみた概略平面図である。
図4図4は、各気筒における行程を説明する図である。
図5図5は、第1通常動作モードにおけるエンジンの状態を示す図である。
図6図6は、第2通常動作モードにおけるエンジンの状態を示す図である。
図7図7は、特殊動作モードにおけるエンジンの状態を示す図である。
図8図8は、制御装置の動作の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかるエンジンシステム1の構成を示す概略図である。エンジンシステム1は、エンジン10および制御装置12を備える。エンジン10は、例えば、車両に搭載される。
【0012】
エンジン10は、例えば、水平対向エンジンであり、右バンク20および左バンク22を有する。エンジン10は、A気筒30a、B気筒30b、C気筒30cおよびD気筒30dの4つの気筒を有する。例えば、A気筒30aおよびC気筒30cは、水平対向エンジンの右バンク20に設けられ、B気筒30bおよびD気筒30dは、水平対向エンジンの左バンク22に設けられる。なお、A気筒30aおよびC気筒30cが左バンク22に設けられ、B気筒30bおよびD気筒30dが右バンク20に設けられてもよい。また、A気筒30a、B気筒30b、C気筒30cおよびD気筒30dを総称して、単に、気筒と呼ぶ場合がある。
【0013】
ここで、右バンク20のC気筒30cを第1気筒とし、右バンク20のA気筒30aを第2気筒とする。左バンク22のD気筒30dを第1気筒とし、左バンク22のB気筒30bを第2気筒とする。エンジン10は、第1気筒と第2気筒とを直列に接続する接続ポート32を有する。接続ポート32は、第1気筒の燃焼室と第2気筒の燃焼室とを連通する。具体的には、第1気筒であるC気筒30cと第2気筒であるA気筒30aとが、右バンク20における接続ポート32で接続され、第1気筒であるD気筒30dと第2気筒であるB気筒30bとが、左バンク22における接続ポート32で接続される。
【0014】
エンジン10は、吸気弁40、排気弁42、第1弁44、第2弁46および動弁機構48を有する。後述するが、吸気弁40は、吸気ポートに設けられ、排気弁42は、排気ポートに設けられる。第1弁44は、接続ポート32における第1気筒側に設けられ、第2弁46は、接続ポート32の第2気筒側に設けられる。動弁機構48は、吸気弁40、排気弁42、第1弁44および第2弁46を開閉する。
【0015】
制御装置12は、1つまたは複数のプロセッサ52と、プロセッサ52に接続される1つまたは複数のメモリ54とを備える。メモリ54は、プログラム等が格納されたROM、および、ワークエリアとしてのRAMを含む。制御装置12のプロセッサ52は、メモリ54に含まれるプログラムと協働して、エンジン10を制御する。制御装置12の動作については、後に詳述する。
【0016】
図2は、第1気筒および第2気筒を縦断面で示すエンジンシステム1の概略図である。図3は、第1気筒および第2気筒を上方からみた概略平面図である。図2および図3では、第1気筒および第2気筒として、C気筒30cおよびA気筒30aを示している。なお、D気筒30dおよびB気筒30bについては、C気筒30cおよびA気筒30aと同様の構成であるため、図示を省略している。
【0017】
エンジン10は、シリンダブロック60、ピストン62、コネクティングロッド64およびシリンダヘッド66を備える。C気筒30cおよびA気筒30aは、シリンダブロック60に形成されている。ピストン62は、各気筒内に収容されている。ピストン62は、コネクティングロッド64を介して不図示のクランクシャフトに連結されている。
【0018】
シリンダヘッド66は、シリンダブロック60におけるクランクシャフトとは反対側に配置される。シリンダヘッド66は、各気筒の上部開口を覆うように各気筒上に配置され、シリンダブロック60に連結される。燃焼室68は、気筒の内面、シリンダヘッド66の内面およびピストン62の冠面で囲まれた空間である。
【0019】
シリンダヘッド66は、気筒毎に吸気ポート70および排気ポート72を有する。具体的には、C気筒30cの吸気ポート70は、開口部74を通じてC気筒30cの燃焼室68に連通している。C気筒30cの排気ポート72は、開口部76を通じてC気筒30cの燃焼室68に連通している。A気筒30aの吸気ポート70は、開口部74を通じてA気筒30aの燃焼室68に連通している。A気筒30aの排気ポート72は、開口部76を通じてA気筒30aの燃焼室68に連通している。
【0020】
吸気弁40は、吸気ポート70に設けられ、吸気ポート70の開口部74を開閉する。吸気弁40によって吸気ポート70の開口部74が開かれると、吸気ポート70を通じて燃焼室68に空気が導入される。排気弁42は、排気ポート72に設けられ、排気ポート72の開口部76を開閉する。排気弁42によって排気ポート72の開口部76が開かれると、燃焼室68内のガスが排気ポート72を通じて排出される。
【0021】
接続ポート32は、シリンダヘッド66に形成される。接続ポート32は、C気筒30c側に開口部80を有し、A気筒30a側に開口部82を有する。接続ポート32は、開口部80を介してC気筒30cの燃焼室68と連通し、開口部82を介してA気筒30aの燃焼室68と連通する。
【0022】
第1弁44は、接続ポート32におけるC気筒30c側に設けられ、C気筒30c側の開口部80を開閉する。第2弁46は、接続ポート32におけるA気筒30a側に設けられ、A気筒30a側の開口部82を開閉する。後述するが、第1弁44および第2弁46が開かれると、第1気筒であるC気筒30cの排気が、接続ポート32を通じて、第2気筒であるA気筒30aの燃焼室68に導入される。
【0023】
図3で示すように、C気筒30cでは、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76がそれぞれ1つずつ設けられる。C気筒30cの吸気ポート70の開口部74は、C気筒30cの中心軸に対して偏心して設けられる。C気筒30cの排気ポート72の開口部76は、C気筒30cの中心軸を間に挟んで吸気ポート70とは反対側に設けられる。同様に、A気筒30aでは、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76がそれぞれ1つずつ設けられる。A気筒30aの吸気ポート70の開口部74は、A気筒30aの中心軸に対して偏心して設けられる。A気筒30aの排気ポート72の開口部76は、A気筒30aの中心軸を間に挟んで吸気ポート70とは反対側に設けられる。
【0024】
接続ポート32のC気筒30c側の開口部80は、C気筒30cにおける吸気ポート70の開口部74と排気ポート72の開口部76との隙間に配置され、A気筒30a寄りに位置する。接続ポート32のA気筒30a側の開口部82は、A気筒30aにおける吸気ポート70の開口部74と排気ポート72の開口部76との隙間に配置され、C気筒30c寄りに位置する。
【0025】
図2で示すように、シリンダヘッド66には、気筒毎に不図示のインジェクタおよび点火プラグ84が設けられる。インジェクタの噴射口は、吸気ポート70内に設けられ、吸気ポート70の開口部74に向けて配置される。ただし、インジェクタの噴射口は、燃焼室68内に設けられ、燃焼室68のピストン62側に向けて配置されてもよい。また、インジェクタの噴射口は、後述するプレチャンバ88内に設けられ、プレチャンバ88のピストン62側に向けて配置されてもよい。インジェクタは、ガソリンなどの燃料を所定のタイミングで吸気ポート70内、燃焼室68内あるいはプレチャンバ88内に噴射する。吸気ポート70内に噴射された燃料は、吸気ポート70内を流通する空気の流れに沿って、開口部74を介して燃焼室68に導入される。以下、吸気ポート70内を流通して燃焼室68に導入される外気である空気を新気と呼ぶ場合がある。
【0026】
第1気筒であるC気筒30cの点火プラグ84は、電極を燃焼室68に向けて配置される。点火プラグ84は、燃焼室68内の空気と燃料との混合ガスを所定のタイミングで点火して燃焼させる。かかる燃焼により、ピストン62が気筒の軸方向に往復運動する。クランクシャフトは、ピストン62の往復運動に従って回転する。
【0027】
第2気筒であるA気筒30aの点火プラグ84は、電極側に隔壁86が設けられる。A気筒30aの点火プラグ84の電極の周囲は、隔壁86により囲繞されている。隔壁86の内側には、プレチャンバ88が形成され、隔壁86は、燃焼室68とプレチャンバ88とを区画している。
【0028】
隔壁86には、連通孔86aが形成される。プレチャンバ88は、連通孔86aを介して、燃焼室68と連通する。そのため、燃焼室68内の空気と燃料との混合ガスは、連通孔86aを介してプレチャンバ88内に流入することができる。A気筒30aに設けられた点火プラグ84は、プレチャンバ88内の空気と燃料との混合ガスを所定のタイミングで点火して燃焼させる。プレチャンバ88内で発生した燃焼火炎は、連通孔86aを介して燃焼室68内にジェット状に噴出される。このジェット状に噴出された燃焼火炎により、燃焼室68内の空気と燃料との混合ガスが燃焼される。かかる燃焼により、ピストン62が気筒の軸方向に往復運動する。クランクシャフトは、ピストン62の往復運動に従って回転する。
【0029】
本実施形態では、第1気筒であるC気筒30cおよびD気筒30dには、隔壁86およびプレチャンバ88が設けられておらず、第2気筒であるA気筒30aおよびB気筒30bにのみ隔壁86およびプレチャンバ88が設けられる。ここで、プレチャンバ88で発生した燃焼火炎は、連通孔86aにより燃焼室68へジェット状に噴出される。そのため、プレチャンバ88が設けられる場合の燃焼室68での燃焼火炎の伝播速度は、プレチャンバ88が設けられない場合の燃焼室68での燃焼火炎の伝播速度より速くなる。このように、プレチャンバ88を設けることで燃焼室68での燃焼火炎の伝播速度を高速にすることができるため、プレチャンバ88が設けられない場合に比べ、エンジン10の熱効率を向上させることができる。
【0030】
図4は、各気筒における行程を説明する図である。各気筒は、吸気行程、圧縮行程、爆発行程、排気行程の順に行程を繰り返す。同じ行程が各々の気筒で重ならないように、各々の行程が各々の気筒で互いにシフトして設定されている。
【0031】
具体的には、A気筒30aが吸気行程のとき、B気筒30bが爆発行程となり、C気筒30cが排気行程となり、D気筒30dが圧縮行程となる。A気筒30aが圧縮行程のとき、B気筒30bが排気行程となり、C気筒30cが吸気行程となり、D気筒30dが爆発行程となる。A気筒30aが爆発行程のとき、B気筒30bが吸気行程となり、C気筒30cが圧縮行程となり、D気筒30dが排気行程となる。A気筒30aが排気行程のとき、B気筒30bが圧縮行程となり、C気筒30cが爆発行程となりD気筒30dが吸気行程となる。
【0032】
すなわち、第1気筒であるC気筒30cが排気行程のとき、第2気筒であるA気筒30aが吸気行程となる。同様に、第1気筒であるD気筒30dが排気行程のとき、第2気筒であるB気筒30bが吸気行程となる。
【0033】
制御装置12は、各気筒の各行程に応じて動弁機構48を制御し、エンジン10の動作モードを変更する。具体的に、制御装置12は、エンジン10の各気筒を通常動作させる通常動作モードと、エンジン10の各気筒を特殊動作させる特殊動作モードとの間で切り替えるように制御する。以下では、まず、通常動作モードについて詳細に説明し、その後、特殊動作モードについて詳細に説明する。
【0034】
通常動作モードは、第1通常動作モードと第2通常動作モードの2種類を含む。第1通常動作モードと第2通常動作モードは、エンジン10の要求出力および熱効率に応じて切り替えられる。例えば、エンジン10の熱効率よりもエンジン10の出力が要求される場合、エンジン10の動作モードが出力優先モードである第1通常動作モードに切り替えられる。一方、エンジン10の出力よりも熱効率が要求される場合、エンジン10の動作モードが熱効率優先モードである第2通常動作モードに切り替えられる。
【0035】
より詳細に、本実施形態では、制御装置12は、エンジン回転数および負荷のマップにおいて、予め実験により得られた閾値以上のエンジン回転数および負荷である場合、エンジン10の動作モードを、出力優先モードである第1通常動作モードに切り替える。一方、制御装置12は、エンジン回転数および負荷のマップにおいて、当該閾値未満のエンジン回転数および負荷である場合、エンジン10の動作モードを、熱効率優先モードである第2通常動作モードに切り替える。
【0036】
図5は、第1通常動作モードにおけるエンジン10の状態を示す図である。図5に示すように、制御装置12は、動弁機構48によって、接続ポート32の開口部80、82を閉じるように制御する。また、制御装置12は、第1気筒であるC気筒30cの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を開状態に制御し、排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。
【0037】
また、制御装置12は、C気筒30cの圧縮行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、C気筒30cの爆発行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、C気筒30cの排気行程において、吸気ポート70の開口部74を閉状態に制御し、排気ポート72の開口部76を開状態に制御する。
【0038】
これにより、C気筒30cの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を介して新気A12が燃焼室68に導入される。また、C気筒30cの排気行程において、排気ポート72の開口部76を介して排ガスA14が燃焼室68から排出される。
【0039】
なお、第2気筒であるA気筒30aの各行程における吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76の開閉状態は、第1気筒であるC気筒30cと同じであるため、詳細な説明を省略する。A気筒30aの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を介して新気A16が燃焼室68に導入される。また、C気筒30cの排気行程において、排気ポート72の開口部76を介して排ガスA18が燃焼室68から排出される。
【0040】
図6は、第2通常動作モードにおけるエンジン10の状態を示す図である。図6に示すように、制御装置12は、動弁機構48によって、第1気筒であるC気筒30cの排気行程において、接続ポート32の開口部80、82を開くように制御する。また、制御装置12は、動弁機構48によって、C気筒30cの吸気行程、圧縮行程、爆発行程において、接続ポート32の開口部80、82を閉じるように制御する。
【0041】
また、制御装置12は、第1気筒であるC気筒30cの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を開状態に制御し、排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、C気筒30cの圧縮行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、C気筒30cの爆発行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、C気筒30cの排気行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。
【0042】
これにより、C気筒30cの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を介して新気A22が燃焼室68に導入される。また、C気筒30cの排気行程において、排気ポート72の開口部76が閉状態に制御され、接続ポート32の開口部80、82が開状態に制御されることから、排ガスA24は、接続ポート32を通ってC気筒30cからA気筒30aの燃焼室68に排出される。
【0043】
一方、制御装置12は、第2気筒であるA気筒30aの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を開状態に制御し、排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、A気筒30aの圧縮行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、A気筒30aの爆発行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、A気筒30aの排気行程において、吸気ポート70の開口部74を閉状態に制御し、排気ポート72の開口部76を開状態に制御する。
【0044】
これにより、A気筒30aの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を介して新気A26が燃焼室68に導入される。このとき、C気筒30cが排気行程であるため、接続ポート32の開口部82を介して排ガスA24が燃焼室68に導入される。つまり、A気筒30aの吸気行程において、C気筒30cの排気行程で排出された排ガスが、所謂EGRガスとしてA気筒30aに導入される。したがって、A気筒30aの爆発行程においては、燃料と新気A26と排ガスA24の混合ガスがプレチャンバ88および燃焼室68内で燃焼される。このように、燃焼室68内に新気A26に加え排ガスA24を導入させることで吸気損失を減らすことができ、エンジン10の熱効率を向上させることができる。また、A気筒30aの排気行程において、排気ポート72の開口部76を介して排ガスA28が燃焼室68から排出される。
【0045】
なお、通常動作モード時のC気筒30cおよびA気筒30aにおいて、制御装置12は、各行程に応じて不図示のインジェクタおよび点火プラグ84を駆動させる制御を行う。つまり、通常動作モード時において、C気筒30cおよびA気筒30aのいずれも、各行程に応じてインジェクタによる燃料の噴射および点火プラグ84による点火が行われる。
【0046】
ところで、エンジン10が冷態状態であるとき、点火プラグ84の隔壁86の温度も低いため、プレチャンバ88内で発生した燃焼火炎が隔壁86の連通孔86aを通過する際に消失し易く、燃焼室68内の混合ガスが着火し難いという問題がある。ここで、本実施形態に係るエンジンの冷態時とは、低温環境下でエンジンが動作停止していた状態から、エンジンが動作開始した直後の状態において、エンジンが冷えているときである。例えば、エンジンの冷態時は、エンジンの冷却水の温度が10℃以下、特に、0℃以下のときである。
【0047】
そこで、本実施形態の制御装置12は、プレチャンバ88の隔壁86の温度に応じて、エンジン10を通常動作モードから、隔壁86の昇温を目的とした特殊動作モードに切り替えるように制御する。具体的に、制御装置12は、プレチャンバ88の隔壁86の温度が所定の閾値以上である場合、エンジン10の動作モードを通常動作モードに切り替え、所定閾値未満である場合、エンジン10の動作モードを特殊動作モードに切り替える。
【0048】
図1に示すように、エンジンシステム1は、水温センサ90を有する。水温センサ90は、エンジン10を冷却する冷却水の流路に設けられ、当該冷却水の温度であるエンジン水温を検出する。制御装置12は、水温センサ90の検出結果を取得する。
【0049】
制御装置12は、取得したエンジン水温に基づいて、隔壁86の温度を導出する。ここで、本実施形態では、制御装置12は、エンジン水温から隔壁86の温度を導出しているが、これに限定されず、例えば、隔壁86の温度を検出する温度センサを設け、制御装置12は、温度センサによって検出された隔壁86の温度を取得してもよい。そして、制御装置12は、隔壁86の温度に応じて、エンジン10の動作モードを、通常動作モードと、特殊動作モードとの間で切り替える。通常動作モードは、第1気筒および第2気筒の双方を通常動作させる動作モードである。ここで、通常動作は、燃料の燃焼および新気の吸気を含む動作である。一方、特殊動作モードは、第1気筒を通常動作させつつ第2気筒を特殊動作させる動作モードである。ここで、特殊動作は、第1気筒の排ガスを接続ポート32を通じて第2気筒に導入するとともに、第2気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を行わずに、第1気筒から導入される排ガスを吸気および排気する動作である。
【0050】
図7は、特殊動作モードにおけるエンジン10の状態を示す図である。図7に示すように、制御装置12は、動弁機構48によって、第1気筒であるC気筒30cの排気行程において、接続ポート32の開口部80、82を開くように制御する。また、制御装置12は、C気筒30cの吸気行程、圧縮行程、爆発行程において、接続ポート32の開口部80、82を閉じるように制御する。
【0051】
また、制御装置12は、第1気筒であるC気筒30cの各行程について、上記で説明した第2通常動作モードの制御と同じ制御を実行する。これにより、C気筒30cの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を介して新気A32が燃焼室68に導入される。また、C気筒30cの排気行程において、排気ポート72の開口部76が閉状態に制御され、接続ポート32の開口部80、82が開状態に制御されることから、排ガスA34は、接続ポート32を通ってC気筒30cからA気筒30aの燃焼室68に排出される。
【0052】
一方、制御装置12は、第2気筒であるA気筒30aの吸気行程において、吸気ポート70の開口部74を閉状態に制御し、排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、A気筒30aの圧縮行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、A気筒30aの爆発行程において、吸気ポート70の開口部74および排気ポート72の開口部76を閉状態に制御する。制御装置12は、A気筒30aの排気行程において、吸気ポート70の開口部74を閉状態に制御し、排気ポート72の開口部76を開状態に制御する。
【0053】
これにより、A気筒30aの吸気行程において、C気筒30cが排気行程であるため、接続ポート32の開口部82を介して排ガスA34が燃焼室68に導入される。このとき、吸気ポート70の開口部74が閉状態であるため、吸気ポート70からの新気および燃料は、燃焼室68に導入されない。つまり、特殊動作モード時には、A気筒30aにおいてインジェクタによる燃料の噴射および点火プラグ84による混合ガスの点火動作が行われない特殊動作となる。また、A気筒30aの排気行程において、吸気行程で第1気筒から導入された排ガスA38を、排気ポート72の開口部76から排出させる。
【0054】
このように、特殊動作モード時のA気筒30aにおいて、制御装置12は、不図示のインジェクタおよび点火プラグ84の駆動を停止させる制御を行っている。一方、特殊動作モード時のC気筒30cにおいて、制御装置12は、各行程に応じて不図示のインジェクタおよび点火プラグ84を駆動させる制御を行っている。つまり、特殊動作モード時において、C気筒30cでは、インジェクタによる燃料の噴射および点火プラグ84による点火が行われる一方、A気筒30aでは、インジェクタによる燃料の噴射および点火プラグ84による点火が行われない。これにより、エンジン10の冷態時において、例えば、A気筒30aのプレチャンバ88の隔壁86を加熱する加熱装置を設けることなく、当該隔壁86をC気筒30cからの排ガスにより昇温させることができる。
【0055】
図8は、制御装置12の動作の流れを説明するフローチャートである。制御装置12は、エンジン10の停止中において、所定の制御周期で訪れる所定の割込みタイミングで、図8の一連の処理を実行する。
【0056】
所定の割込みタイミングとなると、制御装置12は、エンジン10が始動されたか否かを判断する(S10)。エンジン10が停止中の場合(S10におけるNO)、制御装置12は、一連の処理を終了する。
【0057】
エンジン10が停止中でなく始動された場合(S10におけるYES)、制御装置12は、水温センサ90の検出結果に基づき、プレチャンバ88の隔壁86の温度を導出する(S11)。制御装置12は、隔壁86の温度が所定の第1閾値以上であるか否か判定する(S12)。
【0058】
隔壁86の温度が第1閾値未満である場合(S12のNO)、制御装置12は、エンジン10の動作モードを、特殊動作モードに設定する処理を実行し、エンジン10を特殊動作モードで動作させる(S13)。一方、エンジン水温が第1閾値以上である場合(S12のYES)、制御装置12は、エンジン10の動作モードを、通常動作モードに設定する処理を実行する。
【0059】
ここで、本実施形態の通常動作モードには、第1通常動作モードと第2通常動作モードが含まれる。第1通常動作モードと第2通常動作モードは、エンジン10の要求出力と熱効率とに応じて切り替え制御され、エンジン回転数および負荷が所定の第2閾値以上である場合、エンジン10の動作モードを、出力優先モードである第1通常動作モードに設定する。一方、エンジン回転数および負荷が所定の第2閾値未満である場合、エンジン10の動作モードを、熱効率優先モードである第2通常動作モードに設定する。
【0060】
エンジン10の動作モードとして出力優先モードあるいは熱効率優先モードを判別するため、制御装置12は、エンジン回転数および負荷が所定の第2閾値以上であるか否か判定する(S14)。エンジン回転数および負荷が所定の第2閾値以上である場合(S14のYES)、制御装置12は、エンジン10の動作モードを、第1通常動作モード(出力優先モードに相当)に設定する処理を実行し、エンジン10を第1通常動作モードで動作させる(S15)。
【0061】
一方、エンジン回転数および負荷が所定の第2閾値未満である場合(S14のNO)、制御装置12は、エンジン10の動作モードを、第2通常動作モード(熱効率優先モードに相当)に設定する処理を実行し、エンジン10を第2通常動作モードで動作させる(S16)。制御装置12は、エンジン10の動作モードを第1通常動作モード(S15)あるいは第2通常動作モード(S16)で動作させた後、例えばドライバーの入力指示等に応じて、エンジン10の動作を停止させるか否かを判定する(S17)。
【0062】
エンジン10の動作を停止しない場合(S17のNO)、制御装置12は、ステップS11の処理に戻り、再びステップS11~S17の処理を実行する。一方、エンジン10の動作を停止する場合(S17のYES)、制御装置12は、一連の処理を終了する。
【0063】
以上、本実施形態によれば、制御装置12は、プレチャンバ88の隔壁86の温度に応じて、エンジン10の動作モードを、通常動作モードと特殊動作モードとの間で切り替えるように制御する。具体的に、エンジン10の冷態時以外の場合、エンジン10を通常動作モードで動作させ、エンジン10の冷態時の場合、エンジン10を特殊動作モードで動作させる。通常動作モードでは、第1気筒および第2気筒の双方を通常動作させ、特殊動作モードでは、第1気筒を通常動作させつつ第2気筒を特殊動作させる。
【0064】
詳細に、第1気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を行い、第1気筒の排ガスを接続ポート32を通じて第2気筒に導入するとともに、第2気筒では、燃料の燃焼および新気の吸気を行わずに、第1気筒から導入される排ガスを吸気および排気する特殊動作を行う。この第2気筒において第1気筒から導入される排ガスを吸気および排気する特殊動作を行うことにより、プレチャンバ88の隔壁86を昇温させることができる。このとき、隔壁86の昇温のために別途追加部品を設ける必要がないため、プレチャンバ88が設けられるエンジン10の冷態時において追加部品を設置することなく、低コスト且つ燃焼室の着火性を向上させることができる。
【0065】
また、プレチャンバ88の隔壁86が所定の閾値以上に昇温した後は、プレチャンバ88内で発生した燃焼火炎が隔壁86の連通孔86aを通過する際に消失し難くなるため、第2気筒でも、燃料の燃焼および新気の吸気を含む通常動作を実行させることができるようになる。
【0066】
また、通常動作モードは、第1通常動作モードと第2通常動作モードとを含む。第1通常動作モードは、第1気筒の排ガスを接続ポート32を通じて第2気筒に導入せずに、第1気筒と第2気筒を独立的に通常動作させる。一方、第2通常動作モードは、第1気筒の排ガスを接続ポート32を通じて第2気筒に導入しながら、第1気筒と第2気筒とを連動させて通常動作させる。第1通常動作モードと第2通常動作モードは、エンジン10の要求出力および熱効率に基づいて切り替えられる。これにより、ドライバーが要求するエンジン出力および熱効率に応じたエンジン10の動作を実行させることができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば、上記実施形態では、水平対向エンジンの右バンク20および左バンク22の双方に、第1気筒、第2気筒および接続ポート32が設けられていた。しかし、水平対向エンジンの右バンク20および左バンク22のいずれか一方のみに、第1気筒、第2気筒および接続ポート32が設けられてもよい。また、エンジン10は、水平対向エンジンに限らず、例えば、V型エンジンなど、任意のタイプのエンジンであってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、第1気筒に、吸気ポート70、排気ポート72および接続ポート32がそれぞれ1つずつ設けられていた。しかし、第1気筒に、2つの吸気ポート70、1つの排気ポート72および1つの接続ポート32を設けてもよい。また、上記実施形態では、第2気筒に、吸気ポート70、排気ポート72および接続ポート32がそれぞれ1つずつ設けられていた。しかし、第2気筒に、1つの吸気ポート70、2つの排気ポート72および1つの接続ポート32を設けてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、通常動作モードが第1通常動作モードと第2通常動作モードとを含む例について説明した。しかし、これに限定されず、例えば、通常動作モードは、第1通常動作モードのみを含んでもよい。また、例えば、通常動作モードは、第2通常動作モードのみを含んでもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、特殊動作モードを「エンジンの冷態時」に実行する例について説明しているが、この「エンジンの冷態時」は、「プレチャンバの隔壁の冷態時」と読み替えてもよい。例えば、プレチャンバの隔壁の冷態時は、プレチャンバの隔壁の温度が10℃以下、特に、0℃以下のときである。
【0072】
また、上記実施形態では、第1通常動作モードと第2通常動作モードを、エンジンの要求出力および熱効率に基づいて切り替える例について説明した。しかし、これに限定されず、第1通常動作モードおよび第2通常動作モードは、エンジンの要求出力または熱効率の少なくとも一方に基づいて切り替えられてもよい。すなわち、エンジンの要求出力のみに基づいて、第1通常動作モードおよび第2通常動作モードを切り替えてもよい。また、エンジンの熱効率のみに基づいて、第1通常動作モードおよび第2通常動作モードを切り替えてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 エンジンシステム
10 エンジン
12 制御装置
20 右バンク
22 左バンク
30a A気筒
30b B気筒
30c C気筒
30d D気筒
32 接続ポート
44 第1弁
46 第2弁
48 動弁機構
52 プロセッサ
54 メモリ
72 排気ポート
84 点火プラグ
86 隔壁
88 プレチャンバ
90 水温センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8