(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003141
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】フィラミンAに対する抗体およびその治療上の使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231228BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231228BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231228BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231228BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231228BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231228BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20231228BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20231228BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20231228BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20231228BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231228BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20231228BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231228BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231228BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231228BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20231228BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0781
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12P21/08
C07K19/00
C12N15/09 100
A61K39/395 N
A61P35/00
G01N33/574 A
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192525
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2021519606の分割
【原出願日】2019-10-09
(31)【優先権主張番号】62/743,169
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520292039
【氏名又は名称】アイベックス バイオサイエンシーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジョセフ カーリン
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ムラート クローチ
(72)【発明者】
【氏名】ビダル フィリックス デ ラ クルーズ
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン ジェンナン ライ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ フェインソン
(57)【要約】
【課題】フィラミンAに対する抗体およびその治療上の使用の提供。
【解決手段】本開示は、特に、ヒト癌を検出および治療する方法において有用な抗体を教示する。特定の態様では、本開示は、ヒト乳癌を検出および治療するのに有用である新規抗体を教示する。一部の実施形態では、本開示は、フィラミンAに結合する新規抗体を教示する。一部の実施形態では、抗体は、細胞内抗体である。本開示は、特に、モノクローナル抗体(mAb)を含む新規抗体およびその断片を提供することによって、医学界における前述のニーズに対処する。一部の実施形態では、mAbは、癌(例えば、ヒト乳癌)を選択的に標的にし、治療する。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、細胞内抗体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月9日に出願された米国仮特許出願第62/743,169号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:IBEX_004_03WO_ST25.txt:記録日:2019年10月9日、ファイルサイズ:4キロバイト)。
【0003】
本開示は、モノクローナル抗体(mAb)およびその断片、当該抗体またはその断片を分泌する新規タンパク質発現細胞株、ならびに抗原を優先的に検出し、および/または疾患を治療するための抗体および抗体断片の使用に関する。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体およびその断片は、細胞転移を調節する。本開示の特定の実施形態は、例えば、乳癌などのヒトの癌の治療に有用なヒトキメラmAb、細胞内抗体、および細胞免疫療法を教示する。
【背景技術】
【0004】
癌は、所定の正常組織からもたらされた異常細胞数の増加を特徴とする多面的な疾患であり、これらの細胞は、典型的には、血液またはリンパ系を介して身体の他の領域へと広がることによって、隣接組織に浸潤するか、または転移する。癌は、典型的には、新生物に進行し得る軽度な前腫瘍変化で始まる多段階プロセスを経て進行する。腫瘍性病変は、浸潤、成長、転移、および異種に対する増加する能力を生じ得る。
【0005】
例えば、肺、結腸、乳房、直腸、前立腺、脳、および腸の癌を含む、非常に多様な癌が存在する。癌の発生は、集団が加齢すると共に、新規癌が発生すると共に、感受性集団が成長すると共に、上昇し続ける。癌を有する患者を治療するために使用できる新規方法および組成物の多大な要求が存在する。
【0006】
癌を治療する現在の方法は、顕著に非選択性である。外科手術は罹患した組織を除去し、放射線療法は固形塊を縮小し、化学療法は急速に分裂する細胞を殺傷する。放射線照射および化学療法は、癌細胞と共に健常な細胞の非選択的な破壊など、様々な望ましくない副作用と関連する。
【0007】
したがって、当該技術分野において、現在の治療に付随する欠点に苦しまない、癌を治療する方法を開発するニーズが依然としてある。具体的には、当該技術分野において、転移性細胞を優先的に標的とし、健常な細胞を破壊しない、高度に選択的な治療法を開発する大きなニーズがある。
【0008】
新たな高度に選択的な癌治療法および処置のニーズは、乳癌に関して特に急務である。乳癌は、皮膚癌を除き、米国の女性の中で最も一般的な癌である。米国の女性の8人中約1人(12%)が、その生涯に浸潤性乳癌を発症する。米国癌協会による2015年の米国における乳癌の推定は、約231,840の新規症例の浸潤性乳癌が、女性において診断され、約60,290の新規症例の上皮内癌(CIS)が診断され(CISは非浸潤性であり、乳癌の最も早期の形態である)、約40,290人の女性が、乳癌で死亡する。これらは、驚くべき統計であり、当該技術分野において、新規治療法および乳癌の広がりを選択的に標的にし、予防する方法を開発する大きなニーズを強調する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、特に、モノクローナル抗体(mAb)を含む新規抗体およびその断片を提供することによって、医学界における前述のニーズに対処する。一部の実施形態では、mAbは、癌(例えば、ヒト乳癌)を選択的に標的にし、治療する。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、細胞内抗体である。
【0010】
一態様では、本開示は、フィラミンA抗原に結合するモノクローナル抗体(mAb)などの抗体を提供する。本明細書において記載される抗体は、一部の態様では、ヒト乳癌細胞などの哺乳類細胞によって分泌されるフィラミンA抗原に優先的に結合する、ヒトキメラmAbである。他の態様では、ヒトキメラmAbは、ヒト乳癌細胞などの哺乳類細胞の細胞膜と関連するフィラミンA抗原に優先的に結合する。一部の態様では、本明細書において提供される抗体または断片は、細胞ベースの免疫療法(例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T))の一部であり、抗体または断片は、ヒト乳癌細胞などの哺乳類細胞の細胞膜と関連するフィラミンA抗原に結合する。なおさらなる態様では、本明細書において教示される抗体は、細胞内抗体である。したがって、一部の実施形態では、抗体は、細胞内のフィラミンA抗原に結合してもよい。一部の実施形態では、本明細書において教示される抗体は、細胞内小胞内のフィラミンA抗原に結合してもよい。さらなる実施形態では、本明細書において教示される抗体は、細胞外微小小胞またはエクソソーム内のフィラミンA抗原に結合してもよい。
【0011】
本開示は、癌細胞由来のフィラミンA抗原を選択的に標的にすることができる新規の治療用mAbを提供するだけでなく、当該抗体を含む医薬組成物、および抗体で患者を治療する方法も教示する。一部の実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導する。一部の実施形態では、本開示は、フィラミンA抗原を発現する癌細胞への標的化治療薬の送達のための抗体を提供する。さらなる実施形態において、標的化治療薬は、放射性ヌクレオチド、有効治療剤、薬物、化学療法剤、他の抗体、ナノ粒子、および遺伝子治療ベクターからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示は、治療剤に連結または結合された抗体を提供し、抗体は、癌細胞によって飲食運動される。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、細胞内のフィラミンA抗原に特異的な細胞内抗体を発現させる方法を提供する。さらなる実施形態では、細胞は癌細胞である。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、フィラミンA抗原に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号18、19、20、または21による重鎖CDR3領域を含む。かかる抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、単離ヒトキメラ抗体、および/または細胞内抗体であってもよい。
【0014】
一実施形態では、本開示は、三つの相補性決定領域(CDR)CDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む、フィラミンA抗原に結合する抗体、例えば、単離ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、抗体断片、または細胞内抗体を提供する。一部の実施形態では、軽鎖CDR1は、配列番号12および13から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、軽鎖CDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、軽鎖CDR3は、配列番号15のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示は、三つの相補性決定領域(CDR)CDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変ドメインを含む、フィラミンA抗原に結合する単離ヒトキメラ抗体、抗体断片、または細胞内抗体を提供する。一部の実施形態では、重鎖CDR1は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、重鎖CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、重鎖CDR3は、配列番号18、19、20、および21のアミノ酸配列を含む。
【0015】
開示される抗体(例えば、単離ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、抗体断片、または細胞内抗体)の一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号1または配列番号2を含む。一実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、または7を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号1を含み、重鎖可変領域は、配列番号4を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号1を含み、重鎖可変領域は、配列番号5を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号1を含み、重鎖可変領域は、配列番号6を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号1を含み、重鎖可変領域は、配列番号7を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号2を含み、重鎖可変領域は、配列番号4を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号2を含み、重鎖可変領域は、配列番号5を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号2を含み、重鎖可変領域は、配列番号6を含む。一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号2を含み、重鎖可変領域は、配列番号7を含む。
【0016】
開示される抗体(例えば、単離ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、抗体断片、または細胞内抗体)の一実施形態では、軽鎖定常ドメインは、配列番号3を含み、重鎖定常ドメインは、配列番号11を含む。
【0017】
一部の実施形態において、抗体は、配列番号1または2を含む軽鎖可変ドメイン、および配列番号4、5、6、または7を含む重鎖可変ドメインを含むscFvである。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号2を含む軽鎖可変ドメインおよび配列番号7を含む重鎖可変領域を含むscFvである。一部の実施形態では、scFv抗体は、細胞内抗体である。
【0018】
開示される抗体(例えば、単離ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、抗体断片、または細胞内抗体)の一実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号1または2を含み、軽鎖定常ドメインは、配列番号3を含み、重鎖可変ドメインは、配列番号4、5、6、または7を含み、重鎖定常ドメインは、配列番号11を含む。一部の実施形態では、開示される単離ヒトキメラ抗体は、配列番号2を含む軽鎖可変ドメイン、配列番号3を含む軽鎖定常ドメイン、配列番号7を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号11を含む重鎖定常ドメインを含む。
【0019】
一部の実施形態では、抗体または細胞内抗体は、本明細書において提供される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、可変領域は、軽鎖-重鎖の配向である。したがって、一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、重鎖可変領域のアミノ末端に位置する。さらなる実施形態では、抗体または細胞内抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、抗体または細胞内抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に、軽鎖可変領域、リンカー、および重鎖可変領域を含む。
【0020】
一部の実施形態では、抗体または細胞内抗体は、本明細書において提供される軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含み、可変領域は、重鎖-軽鎖の配向である。したがって、一部の実施形態では、重鎖可変領域は、軽鎖可変領域のアミノ末端に位置する。さらなる実施形態では、抗体または細胞内抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。さらなる実施形態では、抗体または細胞内抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に、重鎖可変領域、リンカー、および軽鎖可変領域を含む。一態様では、フィラミンA抗原は、FLNA遺伝子によってコードされる遺伝子産物、またはその相同体である。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、細胞内である。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、癌細胞などの細胞によって分泌される。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、細胞表面、例えば、細胞膜関連フィラミンA抗原と関連する。別の態様では、フィラミンA抗原は、膜または小胞などの細胞関連構造に結合し、および/または関連する。したがって、一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、細胞内のフィラミンA抗原に結合してもよい。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、微小胞に結合し、および/または関連する。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、エクソソームまたは他の多成分複合体に結合し、および/または関連する。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、断片である。一態様では、フィラミンA抗原は、約280kDaの乳癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原である。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、フィラミンA抗原またはその断片に優先的に結合することができ、当該優先結合は、非乳癌フィラミンA抗原に対してである。一部の実施形態では、乳癌細胞フィラミンA抗原は、可溶性フィラミンA抗原である。一部の実施形態では、乳癌細胞フィラミンA抗原は、細胞表面と関連する。一部の実施形態では、乳癌細胞フィラミンA抗原は、エクソソームまたは多成分複合体などの微小胞に取り込まれる。一部の実施形態では、乳癌細胞フィラミンA抗原は、分泌された可溶性形態で、細胞表面および/もしくは小胞と関連して、ならびに/または結合して見られる。
【0022】
一部の実施形態では、抗体は、約10-5M~約10-12Mの特異的親和性でフィラミンA抗原に結合する能力を有する。一部の実施形態では、抗体は、約10-7M~約10-11Mの特異的親和性でフィラミンA抗原に結合する能力を有する。一部の実施形態では、抗体は、約10-8M~約10-11Mの特異的親和性でフィラミンA抗原に結合する能力を有する。
【0023】
また、本明細書において提供される抗体をコードする単離ポリヌクレオチドDNA配列も本明細書において教示される。例えば、本開示は、本明細書において提供されるヒト、キメラ、またはヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチドDNA配列を提供する。本明細書において提供される抗体をコードするポリヌクレオチドDNA配列を含むベクターも本明細書において提供される。当該ベクターを含む宿主細胞も本明細書において提供される。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される細胞内抗体をコードする単離核酸を提供する。一部の実施形態では、単離核酸は、ポリヌクレオチドDNA配列である。一部の実施形態では、核酸は、RNA配列である。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される細胞内抗体をコードするRNAを提供し、RNAによってコードされる細胞内抗体は、遺伝子導入された細胞内で一過性に発現される。
【0024】
本開示は、フィラミンAに対する単離ヒトキメラ抗体を産生する方法であって、ベクターを有する宿主細胞を培養して、当該抗体を発現させること、抗体を発現させること、および宿主細胞によって発現される抗体を回収することを含む方法を提供する。
【0025】
本開示は、フィラミンAに対する細胞内抗体を産生するための組成物および方法、標的細胞に細胞内抗体遺伝子またはタンパク質を送達するための組成物および方法、ならびに細胞内の特定の細胞内位置に細胞内抗体遺伝子またはタンパク質を送達するための組成物および方法を提供する。開示される方法は、組み換えウイルスを介した送達、非ウイルス性遺伝子送達方法(ポリマーまたはカチオン性脂質送達システムなどのナノキャリア送達システム)、または機械的送達技術を介した他のプラスミドもしくはトランスポゾンシステム、ならびに細胞膜透過ペプチドまたはタンパク質を使用した送達を含む。したがって、本開示は、ナノ担体および本明細書において提供される細胞内抗体を含む組成物を提供し、細胞内抗体は、細胞貫通ペプチドまたは化学的部分と融合するか、または連結する。一部の実施形態では、非ウイルスベクターは、転移性エレメント、またはトランスポゾンである。さらなる実施形態では、非ウイルスベクターは、スリープビューティトランスポゾン、piggyBacトランスポゾン、または当該技術分野で公知の任意の他のトランスポゾンを含む。一部の実施形態では、開示される方法は、遺伝子編集システムを介した送達を含む。例えば、一部の実施形態では、開示される方法は、(i)クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連(Cas)システム、(ii)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システム、または(iii)亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システムを介した送達を含む。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される細胞内抗体をコードする遺伝子を含むプラスミドを提供する。一部の実施形態では、プラスミドは、細菌であるか、または細菌に由来するか、または例えば、真菌、藻類、もしくは植物などの非細菌性供給源に由来する。一部の実施形態では、核酸は、細胞内抗体の発現をもたらすための真核生物プロモーターを含むプラスミドである。さらなる実施形態では、プラスミドは、CMVプロモーターを含む。
【0027】
一部の実施形態では、方法は、細胞内抗体を細胞内構造に標的化するための配列を有する細胞内抗体の送達を含む。細胞内抗体が標的化され得る細胞内構造としては、例えば、核、小胞体(ER)、ゴルジ装置、ミトコンドリア、またはリソソームが挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸は、細胞内で安定的にまたは一過性に発現されてもよい。一部の実施形態では、安定的発現は、核酸が細胞ゲノム内に統合されたことを意味し、一部の実施形態では、一過性発現は、遺伝子導入された遺伝子が、限られた期間発現することを意味する。一部の実施形態では、RNA、siRNA、miRNA、またはmRNAを使用して、細胞における細胞内抗体の一過性発現に影響する。
【0028】
一部の態様では、教示される抗体は、固相に固定化される。一部の態様では、教示される抗体は、検出可能に標識される。一部の態様では、本明細書において提供される抗体は、細胞障害性薬物などの薬物に結合される。したがって、一部の実施形態では、本開示は、抗体と薬物の結合体を提供する。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体と薬物の結合体は、エンドサイトーシスを介して内部移行される。一部の態様では、教示される抗体は、放射性核種、有効な治療剤、または薬物、または化学療法剤、またはタンパク質、または他の抗体に結合される。
【0029】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体(例えば、フィラミンA抗原に特異的な単離ヒトキメラ抗体)、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される細胞内抗体(例えば、フィラミンA抗原に特異的な細胞内抗体)を含む医薬組成物、または本明細書において提供される細胞内抗体をコードする遺伝子もしくは核酸を含む送達システムを提供する。例えば、一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される細胞内抗体をコードするDNAまたはRNAを含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、本明細書において提供される細胞内抗体をコードする遺伝子または核酸を含む送達システムは、非ウイルスまたはウイルス送達システムである。例えば、一部の実施形態では、ウイルス送達システムは、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターである。一部の実施形態では、医薬組成物は、細胞内位置への細胞内抗体の標的化送達のための遺伝子またはタンパク質をさらに含む。一部の実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含む医薬組成物を提供し、CARは、本明細書において提供されるフィラミンA結合ドメインを含む。
【0030】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体(例えば、フィラミンA抗原に特異的な単離ヒトキメラ抗体、および/またはフィラミンA抗原に特異的な細胞内抗体)、および抗体に結合する二次抗体を含むヒト癌を診断するためのキットを教示し、二次抗体は、検出可能な標識に結合される。例えば、一部の実施形態では、本開示は、フィラミンA抗原に特異的な単離されたヒトキメラ抗体、および検出可能な標識に結合した二次抗体を含む、ヒト乳癌を診断するためのキットを提供する。
【0031】
患者における癌を診断する方法であって、患者から生物学的試料得ること、生物学的試料を本明細書において提供される抗体(例えば、フィラミンA抗原に特異的な単離ヒトキメラ抗体、および/またはフィラミンA抗原に特異的な細胞内抗体)と接触させること、および抗体が、癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原に結合し、および/または癌細胞膜関連もしくは結合フィラミンA抗原に結合し、および/または細胞内フィラミンA抗原に結合するかどうかを検出することを含み、当該抗体とフィラミンA抗原の間の正の結合相互作用が、癌の指標である、方法も、本明細書において教示される。さらなる実施形態では、癌は、ヒト乳癌である。
【0032】
本開示はまた、有効量の本明細書において提供される抗体を投与することを含む、患者における癌を治療する方法を提供する。例えば、本開示は、本明細書において提供される、フィラミンA抗原に特異的な単離ヒトキメラ抗体、および/またはフィラミンA抗原に特異的な細胞内抗体、および/またはフィラミンA抗体もしくはその断片(例えば、フィラミンA結合ドメイン)を含むCARを含む免疫細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む、治療方法を提供する。さらなる実施形態では、癌は、ヒト乳癌である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、癌細胞に結合し、補体依存性細胞傷害活性(CDC)および/または抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)を含む。
【0033】
さらに、本開示は、フィラミンA抗原を発現する癌腫瘍細胞の成長を予防または低減する方法であって、それを必要とするヒト患者に、有効量の本明細書において提供される抗体を投与することを含む、方法を教示する。一部の実施形態では、本方法は、配列番号12および13から選択される軽鎖CDR1、配列番号14の軽鎖CDR2、配列番号15の軽鎖CDR3、配列番号16の重鎖CDR1、配列番号17の重鎖CDR2、ならびに/または配列番号18、19、20、および21から選択される重鎖CDR3を含む抗体を投与することを含む。ある特定の実施形態では、当該抗体は、それぞれ、配列番号13、14、および15に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれ、配列番号16、17、および21に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の実施形態では、当該抗体は、配列番号2を含む軽鎖可変領域および配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。
【0034】
一部の実施形態では、抗体は、非癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原と比較して、哺乳類癌細胞(乳癌細胞など)により分泌される可溶性フィラミンA抗原に優先的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、細胞内であり、および/またはエクソソームなどの小胞内に位置するフィラミンA抗原に優先的に結合する。
【0035】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒトキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。一部の実施形態では、抗体は、細胞内抗体である。
【0036】
一部の実施形態では、抗体は、二重特異性抗体または多重特異性抗体である。一部の実施形態では、二重特異性または多重特異性抗体は、フィラミンA抗原に結合する本明細書において提供される第一の抗体、および免疫細胞上の抗原に結合する第二の抗体を含む。免疫細胞は、一部の実施形態では、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、単球、または樹状細胞から選択される。一部の実施形態では、抗原は、T細胞抗原である。一部の実施形態では、T細胞抗原は、CD3、CD2、CD4、CD5、CD6、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD69、およびCD90からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗体は、フィラミンA抗原およびCD3に結合する二重特異性抗体である。
【0037】
さらなる実施形態では、単離ヒトキメラ抗体は、フィラミンAに対するマウス抗体と比較して、低減した免疫原性を示し、抗体を投与された患者から負の免疫応答を導かない。他の実施形態では、開示された抗体は、当該抗体の免疫原性をさらに低減するようヒト化される。他の態様では、抗体は、例えば、抗体を「脱免疫化すること」によって、ヒト化以外の他の方法によって減少した免疫原性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、RFUで報告される、運動性アッセイの結果。結果は、図の左側に沿って表示された多数の実験的処置および対照の存在下でのMDA-MB-231およびHEK-293細胞の運動性として提示される。
【0039】
【
図2】
図2は、MDA-MB-231細胞の運動性アッセイのグラフ表示。エラーバーは標準偏差を表し、色の付いた棒のピークは、集められたデータの平均RFUを表す。データは三つのピークを出現させ、それぞれが利用された組織培養プレート表面コーティングを表す。具体的には、各処置について、左の棒は、TC(コーティングなし)であり、中央の棒は、コラーゲンでコーティングしたウェルであり、右の棒は、フィブロネクチンでコーティングしたウェルである。データは、ヒトキメラmAbが、1μg/mLの処置でマウスmAbよりも大きな細胞運動性の減少をもたらしたことを説明する。
【0040】
【
図3】
図3は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたTI10フィラミンA抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0041】
【
図4】
図4は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたAHO1402フィラミンA抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0042】
【
図5】
図5は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたマウスフィラミンA抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0043】
【
図6】
図6は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたキメラフィラミンA抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0044】
【
図7】
図7は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、ローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギポリクローナル抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0045】
【
図8】
図8は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色された抗マウスIgGロバ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0046】
【
図9】
図9は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、フルオレセイン染色で染色された抗ヒトIgGロバ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0047】
【
図10】
図10は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、ローダミン染色で染色されたF(ab’)
2抗ウサギIgGロバ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0048】
【
図11】
図11は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたTI10フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0049】
【
図12】
図12は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたTI10フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0050】
【
図13】
図13は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたAHO1402フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0051】
【
図14】
図14は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたAHO1402フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0052】
【
図15】
図15は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたマウスフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0053】
【
図16】
図16は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたマウスフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0054】
【
図17】
図17は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、フルオレセイン染色で染色されたキメラフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0055】
【
図18】
図18は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、フルオレセイン染色で染色されたキメラフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0056】
【
図19】
図19は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたTI10フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0057】
【
図20】
図20は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたTI10フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0058】
【
図21】
図21は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたAHO1402フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0059】
【
図22】
図22は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたAHO1402フィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0060】
【
図23】
図23は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたマウスフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0061】
【
図24】
図24は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたマウスフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0062】
【
図25】
図25は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、フルオレセイン染色で染色されたキメラフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0063】
【
図26】
図26は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、フルオレセイン染色で染色されたキメラフィラミンA抗体、およびローダミン染色で染色されたベータアクチンウサギ抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0064】
【
図27】
図27は、DAPI DNA染色で染色されたMDA-MB-231癌細胞、DYLIGHT 488染色で染色されたロバ由来のマウスIgG抗体の免疫蛍光顕微鏡写真。
【0065】
【
図28】
図28は、ヒトキメラ軽鎖可変CDR結合ドメイン領域について予測されたCDR領域である、Chothia、ABM、Kabat、およびAbysisデータベースを利用したContactシステムによって予測されたCDR領域間の残基アライメントの描写を伴った、配列番号73。
【0066】
【
図29】
図29は、ヒトキメラ重鎖可変CDR結合ドメイン領域について予測されたCDR領域である、Chothia、ABM、Kabat、およびAbysisデータベースを利用したContactシステムによって予測されたCDR領域間の残基アライメントの描写を伴った、配列番号4。
【0067】
【
図30】
図30は、マウス軽鎖可変CDR結合ドメイン領域について予測されたCDR領域である、Chothia、ABM、Kabat、およびAbysisデータベースを利用したContactシステムによって予測されたCDR領域間の残基アライメントの描写を伴った、配列番号74。
【0068】
【
図31】
図31は、マウス重鎖可変CDR結合ドメイン領域について予測されたCDR領域である、Chothia、ABM、Kabat、およびAbysisデータベースを利用したContactシステムによって予測されたCDR領域間の残基アライメントの描写を伴った、配列番号24。
【0069】
【
図32】
図32は、細胞遊走アッセイにおける、緩衝液対照(左パネル)またはフィラミンA抗体B411(右パネル)との一晩のインキュベーション後のMDA-MB-321細胞の蛍光染色の画像。
【0070】
【
図33】
図33は、B411がDU145(癌)細胞増殖を阻害することを示す棒グラフ。DU145またはHEK293A(非癌)細胞を、処理しないか、またはB4111 1μgもしくは10μgで24時間もしくは48時間処理し、細胞増殖を、OD
650に対するOD
412によって測定した。
【0071】
【
図34-1】
図34は、感染の72時間後のA549細胞におけるGFP発現のヒストグラム。
図34Aは、模擬遺伝子導入した細胞を示す。
図34B、34C、および34Dは、それぞれ、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞を示す。
図34Eは、
図34A~Dの混合である。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):10,000。
【0072】
【
図35-1】
図35は、遺伝子導入の72時間後の遺伝子導入したA549細胞におけるCDR(カルセインディープレッド)のヒストグラム(GFPゲート化細胞の生細胞解析)。
図35Aは、無染色対照である。
図35Bは、陽性対照であり、
図35C、35D、および35Eは、それぞれ、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞である。
図35Fは、
図35C~Eの混合である。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):10,000。
【0073】
【
図36】
図36は、A549細胞におけるFLNA細胞内抗体の発現が、減少した細胞生存率をもたらすことを示す、
図35A~Fの統計解析。N=3;両側不対、スチューデントt検定。
【0074】
【
図37-1】
図37は、遺伝子導入の72時間後の遺伝子導入したA549細胞におけるEthD-1のヒストグラム(GFPゲート化細胞の死細胞解析)。
図37Aは、無染色対照である。
図37Bは、陽性対照である。
図37C、37D、および37Eは、それぞれ、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入している。
図37Fは、
図37C~Eの混合である。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):10,000。
【0075】
【
図38】
図38は、A549細胞におけるFLNA細胞内抗体の発現が、増大した細胞死をもたらすことを示す、
図37A~Fの統計解析。N=3;両側不対、スチューデントt検定。
【0076】
【
図39】
図39は、FLNA細胞内抗体を発現するA549細胞は、低減した細胞増殖を示す(GFPゲート化し、EdUによって染色)。
図39Aは、染色していない対照であり、
図39B、39C、および39Dは、それぞれ、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入されている。
図39Eは、
図39A~Dの統計解析である(n=3;両側不対、スチューデントt検)。各群についての合計取得現象(細胞数):10,000。
【0077】
【
図40】
図40は、LV-GFPおよびLV-FLNA-GFP細胞内抗体で遺伝子導入したA549細胞における発現。
図40A(上部パネル、A1):LV-GFP、
図40A(底部パネル、A2):A1の明視野。
図40B(上部パネル、B1):LV-FLNA_2-GFP;
図40B(下部パネル、B2):B1の明視野。
図40C(上部パネル、C1):LV-FLNA_1-GFP;
図40C(下部パネル、C2):C1の明視野。
図40D(上部および中央パネル、D1およびD2):C1またはC2からズームインした選択ビュー(白色の長方形)。
図40D(底部パネル、D3):D1とD2の混合ビュー。白色の矢印は、A549細胞におけるFLNAのGFPとの共発現を示唆する。
【0078】
【
図41】
図41は、A549細胞と非癌MRC-5細胞(正常細胞)の間での、FLNA細胞内抗体処置の比較。FLNA細胞内抗体処置は、A549細胞においては目に見える細胞死をもたらすが、A549細胞のMRC-5肺正常線維芽細胞明視野画像(
図40A左パネル、A1)およびLV-GFP(2.5μg)で遺伝子導入したMRC-5肺正常線維芽細胞細胞(
図40B左パネル、B1)においては目に見える細胞死をもたらさない。LV-FLNA_2-GFP細胞内抗体(2.5μg)で遺伝子導入したA549(
図40A右パネル、A2)およびMRC-5細胞(
図40B右パネル、B2)。短い矢印は、分離した死細胞を示す(10×倍率)。挿入図:死細胞クラスター(短い矢印)と生細胞(長い矢印)の間の差を示す高倍率ビュー。
【0079】
【
図42】
図42は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体で処理したU87MG細胞上での細胞生存率アッセイ:カルセインAM(生細胞)およびEthD-1(死細胞)解析。U87MG細胞におけるFLNA細胞内抗体の発現は、減少した細胞生存率をもたらす。左パネル:カルセインAM染色のヒストグラム(緑色);中央パネル:EthD-1染色のヒストグラム(赤色);右パネル:両方のヒストグラムの混合。左端のピークを指す矢印は、EthD-1陽性細胞(死細胞)のピークを示し、右端のピークを指す矢印は、LV-GFPと比較した、FLNA_1/2による処理後のカルセインAM陽性(生細胞)の不存在を示し、中間のピークを指す矢印は、FLNAで処理した細胞におけるカルセインAMの中間シグナルを有する細胞を示す。各群についての現象での合計取得(細胞数):50,000。
【0080】
【
図43】
図43は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体によって処理したU87MG細胞上での細胞生存率アッセイ:生細胞解析の概要。
図43A:
図42(左パネル)のカルセインAM(生細胞)の混合ヒストグラム;
図43B:Aの統計解析(n=3;スチューデントt検定、両側不対)。各群についての合計取得現象(細胞数):50,000。
【0081】
【
図44】
図44は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体によって処理したU87MG細胞上での細胞生存率アッセイ:死細胞解析の概要。
図44A:
図42(中央パネル)のEthD-1(死細胞)の混合ヒストグラム;
図44B:Aの統計解析(n=3;スチューデントt検定、両側不対)。各群についての合計取得現象(細胞数):50,000。
【0082】
【
図45】
図45は、FLNA細胞内抗体処理は、遺伝子導入の72時間後にLN229細胞において細胞死をもたらすが、HBEC-5i皮質上皮細胞において細胞死をもたらさない。
図45A:示したコンストラクトで遺伝子導入したLN229細胞におけるEthD-1染色(GFPゲート化)のヒストグラム。
図45B:示したコンストラクトで遺伝子導入したHEBC-5iにおけるEthD-1染色(GFPゲート化)のヒストグラム。パネルBにおいて対照群と比較して、処理群間で有意差は存在しない(総取得時間:各群について30秒)。
【0083】
【
図46】
図46は、遺伝子導入の24時間後で観察した、FLNA細胞内抗体処理後のU87MG細胞の顕微鏡研究。
図46A上部パネル(A1):LV-GFP、
図46A下部パネル(A2):A1の明視野、
図46上部パネル(B1):LV-FLNA_1-GFP、
図46下部パネル(B2):B1の明視野、
図46C上部パネル(C1):LV-FLNA_2-GFP、
図46C下部パネル(A2):C1の明視野。
【0084】
【0085】
【
図48】
図48は、遺伝子導入の72時間後で観察した、FLNA細胞内抗体処理後のU87MG細胞の顕微鏡研究。示したコンストラクトで遺伝子導入したU87MG細胞の明視野画像。
図48A、B:LV-GFP;
図48C、D:LV-FLNA_1-GFP;
図48E、F:LV-FLNA_2-GFP。48A、48C、48Eは、4×倍率で撮影し、48B、48D、48Fは、10×倍率で撮影した。
【0086】
【
図49】
図49は、免疫細胞化学(ICC)によってFLNA細胞内抗体で処理したU87MG細胞におけるFLNAの解析。遺伝子導入の72時間後にFLNA細胞内抗体で処置したU87MG細胞は、ICC解析によるFLNAタンパク質の破損を示す。パネルの左カラム:LV-GFP(上段)、FLNA_1(中段)、およびFLNA_2(下段)で処理したU87MG細胞におけるFLNA染色。パネルの中央カラム:DAPI核染色。パネルの右カラム:混合画像;矢印は、細胞外FLNA破片を示す。
【0087】
【
図50】
図50は、FLNA細胞内抗体で遺伝子導入したU87MG細胞におけるFLNA scFvの解析。U87MG細胞を、LV-FLNA_2-GFP細胞内抗体(パネルの上段)およびLV-GFP(パネルの下段)で処理した。遺伝子導入の48時間後に、FLNA細胞内抗体を、Alexa555に結合した抗マウスIgG二次抗体(1:200、ThermoFisher社)を有する抗Hisタグ抗体(R&D Systems社)によって検出した(第一のパネル)。GFPの発現を、抗GFP抗体(R&D Systems社)によって確認した(第二のパネル)。DAPI染色を、第三のパネルに示し、第四のパネルは、混合した画像である。全ての画像は、同じ顕微鏡設定で撮影した。白色の矢印は、FLNA細胞内抗体およびGFPの共発現を示す。
【0088】
【
図51】
図51は、フィラミンA細胞内抗体で処理したDU145細胞の細胞生存率アッセイ:遺伝子導入の72時間後のGFP発現。
図51A、偽遺伝子導入。
図51B、LV-GFP遺伝子導入。
図51C、LV-FLNA_1-GFP遺伝子導入。
図51D、LV-FLNA_2-GFP遺伝子導入。
図51E、51A~Dの混合。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):10,000。
【0089】
【
図52】
図52は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体で処理したDU145細胞の細胞生存率アッセイ:カルセインディープレッド(CDR)による生細胞解析(GFPゲート化細胞)。
図52A:遺伝子導入したLV-GFP。
図52B:遺伝子導入したLV-FLNA_1-GFP;
図52C:遺伝子導入したLV-FLNA_2-GFP。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):10,000。
【0090】
【
図53】
図53は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体によって処理したDU145細胞上での細胞生存率アッセイ:生細胞解析の概要。
図53A:
図52A~CのカルセインAM(生細胞)の混合ヒストグラム。
図53Bは、
図53Aの統計解析(n=3;両側不対、スチューデントt検)。各群についての合計取得現象(細胞数):50,000。
【0091】
【
図54】
図54は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体によって処理したDU145細胞の細胞生存率アッセイ:EthD-1染色による死細胞解析(GFPゲート化細胞)。
図54A:遺伝子導入したLV-GFP。
図54B:遺伝子導入したLV-FLNA_1-GFP;
図54C:遺伝子導入したLV-FLNA_2-GFP。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):10,000。
【0092】
【
図55】
図55は、フィラミンA(FLNA)細胞内抗体によって処理したDU145細胞上での細胞生存率アッセイ:死細胞解析の概要。
図55A:
図54A~CのEthD-1(死細胞)の混合ヒストグラム;
図55B:55Aの統計解析(n=3;スチューデントt検定、両側不対)。各群についての合計取得現象(細胞数):50,000。
【0093】
【
図56】
図56は、FLNA細胞内抗体で処理したMDA-MB-234細胞の細胞増殖アッセイ(EdU):遺伝子導入の72時間後のGFP発現。
図56A、偽遺伝子導入。
図56B、LV-GFP遺伝子導入。
図56C、LV-FLNA_1-GFP遺伝子導入。
図56D、LV-FLNA_2-GFP遺伝子導入。
図56E、56A~Dの混合。各群についての合計の非ゲート化取得現象(細胞数):30,000。
【0094】
【
図57】
図57は、FLNA細胞内抗体で処理したMDA-MB-234細胞の細胞増殖アッセイ(EdU):FLNA細胞内抗体を発現するMDA-MB-231細胞は、低減した細胞増殖を示す(GFPゲート化、EdUにより染色)。
図57A:染色していない対照;
図57B:LV-GFP;
図57C:LV-FLNA_1-GFP;
図57D:LV-FLNA_2-GFP。
図57Eは、
図57A~Dの統計解析(n=3;両側不対、スチューデントt検)。各群についての合計取得現象(細胞数):30,000。
【0095】
【
図58】
図58は、遺伝子導入の24時間後のGFP発現を観察した、FLNA細胞内抗体処理後のMDA-MB-231細胞の顕微鏡研究。
図58A、D:LV-GFP;
図58B、E:LV-FLNA_1-GFP;
図58C、F:LV-FLNA_2-GFP。
図58A、58B、58Cは、GFP発現を示し、一方、
図58D、58E、58Fは、それぞれの明視野画像である。
【0096】
【
図59】
図59は、ウェスタンブロット解析による細胞内抗体処理後のFLNAタンパク質レベル。レーン1:LV-GFP;レーン2:LV-FLNA_1-GFP;レーン3:LV-FLNA_1-GFP(GAPDHを、負荷対照として使用した)。
【0097】
【
図60】
図60は、遺伝子導入の24時間後の正常ヒト星状細胞におけるGFP発現のヒストグラム。60A:偽遺伝子導入;60B:LV-GFP;60C:LV-FLNA_1-GFP;60D:LV-FLNA_2-GFP;60E:60A~Dの混合。
【0098】
【
図61】
図61は、FLNA細胞内抗体での処置後の正常なヒト星状細胞の顕微鏡研究。示したコンストラクトで遺伝子導入した正常なヒト星状細胞におけるGFP発現。61A:LV-GFP(下部パネル、A2:上部パネルの明視野、A1);61B:LV-FLNA_1-GFP(下部パネル、B2:上部パネルの明視野、B1);61C:LV-FLNA_2-GFP(61C下部パネル、B2:上部パネルの明視野、C1)。
【0099】
【
図62】
図62は、遺伝子導入の72時間後の正常なヒト星状細胞における細胞毒性の割合。キットプロトコールにおける計算:%細胞毒性=((化合物で処理したLDH活性-自然LDH活性)×100)/(最高LDH活性-自然LDH活性)を使用して、LDH細胞毒性を計算した。化合物で処理したウェルは、示した処置群(LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、LV-FLNA_2-GFP)からの記録したLDH放出であった。自然放出は、偽遺伝子導入群からの記録したLDH放出(遺伝子導入試薬によって引き起こされるバックグラウンドとして減算すべき)であった。最高LDHは、全細胞溶解からの記録したLDH放出であった。三つの処置群間での%細胞毒性において有意差は存在しなかった。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【
図67】
図67は、B411エンドサイトーシス陽性SKBR3細胞(左パネル)またはHEK細胞(右パネル)の割合を示す、ヒストグラム。
【0105】
【
図68】
図68は、陰性対照(ゼノン標識のみ、または無染色(UST))と比較した、B411エンドサイトーシス陽性SKBR3およびHEK細胞の総細胞数を示す、棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0106】
定義
「約」とは、用語が利用される科学的背景に適切であると、当業者によって理解されるであろう、そのように適格である数、パラメータ、または特性のプラスまたはマイナスのパーセント(例えば、±5%)を意味する。さらに、本明細書で使用される数量を指す全ての数、値、および表現は、当技術分野で遭遇する測定値の様々な不確かさの対象となるため、別段の示唆がない限り、全ての提示される値は、用語「約」によって修正されると理解され得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」、「an」、および「the」は、別段、単数参照語に明らかに限定されない限り、または冠詞が、単数参照語を指す文章の文脈から当業者にとって明らかである場合を除き、複数の参照語を含み得る。
【0108】
数値範囲が本明細書において開示されている場合、こうした範囲は、範囲の最小値と最大値の両方、ならびにこうした最小値と最大値の間の全ての値を含み、連続的である。さらに、ある範囲が整数を指す場合、その範囲の最小値と最大値との間の全ての整数が含まれる。さらに、特徴または特性を記載するために複数の範囲が提供される場合、こうした範囲を組み合わせることができる。すなわち、別段の示唆がない限り、本明細書において開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる全ての部分範囲を包含すると解されるべきである。例えば、所定の範囲「1~10」は、最小値1と最大値10の間のあらゆる全ての部分範囲を含むとみなされるべきである。範囲「1~10」の例示的な部分範囲には、1~6.1、3.5~7.8、および5.5~10が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
用語「フィラミン」、「ヒトアクチン結合タンパク質」、または「ヒトABP」は、アクチンフィラメントを皮質細胞質の直交ネットワークに架橋し、アクチン細胞骨格のための膜タンパク質のアンカーリングに関与するタンパク質のファミリーを指す。フィラミンは、三つの機能的ドメイン:N末端フィラメント型アクチン結合ドメイン、C末端自己会合ドメイン、および膜糖タンパク質結合ドメインを含む。フィラミンタンパク質のファミリーは、以下の三つのタンパク質:フィラミンA、フィラミンB、およびフィラミンCを含む。
【0110】
用語「フィラミンA」、「ヒトフィラミンA」、「アルファ-フィラミン」、「フィラミン1」、「ABP-280」、「内皮アクチン結合タンパク質」および「非筋肉フィラミン」は、インテグリン、膜貫通型受容体複合体、およびセカンドメッセンジャーと相互作用することによってアクチン細胞骨格の再構成を調節する広く発現されたタンパク質である、FLNA遺伝子によりコードされる約280kDのフィラミンタンパク質を指す。フィラミンA(またはその一部分)も、ヒト神経芽細胞腫細胞(例えば、NMB-7)の表面上に表示される。これはまた、NMB-7細胞の不可欠な膜画分、ならびに細胞質および末梢膜タンパク質を含有する親水性タンパク質画分にも存在する。したがって、細胞外表面を含む、細胞全体にわたって見出すことができる。FLNaはまた、ヒト細胞株HeLa(子宮頸癌)、SKOV3(卵巣癌)、およびHEK293(ヒト胚腎臓)の細胞表面に存在することが示されている。Bachmannら、Cancer Sci.97(12)、2006年を参照のこと、文献は参照によりその全体で全ての目的のため本明細書に組み込まれる。フィラミンAのポリペプチド配列は、GenBank受託番号P21333(Gorlinら、1990年、J.Cell Biol.111(3):1089~1105頁)で入手可能である。本明細書で使用される場合、「フィラミンA」は、そのバリアント、その変異体、その組み換え体バージョン、およびその断片を含む。
【0111】
用語「フィラミンB」、「ヒトフィラミンB」、「ベータ-フィラミン」、「ABP-278」、「内皮アクチン結合タンパク質」、および「非筋肉フィラミン」は、アクチンフィラメントに結合するFLNB遺伝子によってコードされる約278kDを指す。フィラミンBのポリペプチド配列は、Gen Bank受託番号075369(Takafutaら、1998年、J.Biol.Chem.273(28)、17531~17538頁)を参照されたい。
【0112】
用語「フィラミンC」、「ヒトフィラミンC」、「フィラミン2」、「ガンマフィラミン」、「ABP-280、常染色体形態」は、アクチンフィラメントに結合するFLNC遺伝子によってコードされる約280kDのタンパク質を指す。フィラミンCのポリペプチド配列は、GenBank受託番号Q14315(Xieら、1998年、Biochem.Biophys.Res.Commun.251(3)、914~919頁)で入手可能である。
【0113】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、(a)免疫グロブリンポリペプチドおよび免疫グロブリンポリペプチドの免疫活性部分、すなわち、特定の抗原(例えば、フィラミンA)に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する、免疫グロブリンファミリーのポリペプチド、もしくはその断片、または(b)抗原(例えば、フィラミンA)に免疫特異的に結合するそのような免疫グロブリンポリペプチドもしくは断片の保存的に置換された誘導体を指す。抗体は、例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988年)に一般的に記載されている。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、抗体断片を包含する。したがって、一部の実施形態では、抗体は、VhH抗体またはドメイン抗体などの単一ドメイン抗体(sdAb)、あるいは一本鎖可変断片(scFv)または他の抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくはFv断片)である。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「細胞内抗体」は、細胞内タンパク質に結合し、細胞内で効果を有する抗体またはその断片(例えば、一本鎖可変断片(scFv)または他の一本鎖もしくは単一ドメイン抗体)を指す。一部の実施形態では、細胞内抗体は、標的細胞内で、例えば、遺伝子療法を介して発現される。例えば、細胞内抗体をコードするDNAまたはRNAは、プラスミド、ウイルス送達システム、または非ウイルス送達システムを使用して細胞に送達される。ウイルス送達システムには、例えば、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターが含まれる。非ウイルス送達システムとしては、例えば、カチオン性脂質、脂質エマルション、ナノ粒子、ペプチドベクター(例えば、カチオン性ペプチド)、ポリマー(例えば、合成ポリエチレンイミン(PEI)などのカチオン性ポリマー)、キトサン、ポリ(DL-ラクチド)(PLA)もしくはポリ(DL-ラクチド-コ-グリコシド(PLGA)粒子)、デンドリマーまたは機械的送達技術を使用して細胞に送達される、プラスミドもしくはDNA断片、またはRNAが挙げられる。一部の実施形態では、細胞内抗体は、細胞膜貫通型ペプチド、または細胞内部移行ペプチドを介して細胞内に送達されてもよい。任意で、本明細書において提供される細胞内抗体は、核局在化シグナル、または例えば、小胞体(ER)、ゴルジ装置、ミトコンドリア、リソソーム、または他の位置などの異なる細胞内構造に細胞内抗体を標的化するシグナルを含んでもよい。したがって、細胞内で一度発現された細胞内抗体は、細胞質内に留まり得るか、または特定の細胞内構造に局在化し得る。細胞内抗体は、細胞内微小環境に対する抵抗性を増加させるか、または安定性を強化するための追加の修飾を含んでもよい。
【0115】
上で定義された免疫グロブリンポリペプチドまたはその断片の文脈において、「保存的置換」とは、免疫グロブリンポリペプチドまたはその断片の抗原への特異的結合(例えば、KDによって測定される)を実質的に低減する一つまたは複数のアミノ酸置換(すなわち、例えば、ELISAなどの標準的な結合アッセイにより結合される、約40%以下、典型的には、約30%以下、より典型的には、約20%以下、なおより典型的には、約10%以下、または最も典型的には、約5%以下、結合を増加させる、結合を有意に変化させる、または結合を低減する置換)を意味する。
【0116】
本明細書で使用される場合、「抗体誘導体」は、上で定義された抗体を意味し、例えば、異種ポリペプチドの結合による、または抗体と通常関連しないグリコシル化、アセチル化もしくはリン酸化などによる、異種分子の共有結合によって修飾される。例えば、化学療法剤、または蛍光標識、または放射性化学物質、または活性薬物が、とりわけ、結合されてもよい。
【0117】
天然で生じる抗体(免疫グロブリン)は、ジスルフィド結合によって一緒に結合された二つの重鎖および各軽鎖がジスルフィド結合によって重鎖のうちの一つに結合されている二つの軽鎖を含む。各鎖は、N末端可変ドメイン(VHまたはVL)およびそのC末端に定常ドメイン(CHまたはCL)を有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと共に整列し、ジスルフィド結合し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと共に整列する。重鎖定常領域は、(N末端からC末端方向に)CH1およびヒンジ領域を含む。軽鎖はまた、ヒンジドメインを含む。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の界面を形成し、ジスルフィド結合を形成すると考えられており、例えば、Chothiaら、J.Mol.Biol.186:651~663(1985年);NovotnyおよびHaber、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
82:4592~4596(1985年);Padlarら、Mol.immunol.23(9):951~960(1986年);およびS.Miller、J.Mol.Biol.、216:965~973(1990年)を参照されたい。
【0118】
定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性および補体依存性細胞傷害における抗体の関与など、様々なエフェクター機能に関与する。軽鎖および重鎖の各対の可変ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与する。天然の軽鎖および重鎖のドメインは、同じ一般的な構造、いわゆる、免疫グロブリンフォールドを有し、各ドメインは、四つのフレームワーク(FR)領域を含み、その配列は、幾分保存されており、三つの超可変領域または相補性決定領域(CDR)によって結び付けられる(Kabat,E.Aら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health,Bethesda,Md.、(1987年)を参照)。四つのフレームワーク領域は、主に、βシート構造を採用し、CDRは、βシート構造、ある場合では、その形成部を結び付けるループを形成する。各鎖中のCDRは、フレームワーク領域によって近接して保持され、他方の鎖のCDRと共に、抗原結合部位の形成に関与する。
【0119】
抗体は、様々な抗原結合断片に分けることができる。Fv断片は、重鎖および軽鎖の可変ドメインのみを含有するヘテロ二量体である。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の一つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を生じるFab’の本明細書における名称である。
【0120】
また、本明細書では、前述のFab、Fab’、F(ab’)2、ScFv、およびFv断片、ならびに所望の標的エピトープまたは複数のエピトープに対する特異性を有する本開示の抗体の任意の部分を含む、「抗体断片」も教示される。一態様では、本開示の抗体は、抗フィラミンA抗体である。抗体断片の発現は、例えば、米国特許第5,648,237号において教示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、scFvまたは他の抗体断片を含む細胞内抗体である。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、一般的に少量で存在する、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る可能性のあるバリアントを除いて、同一であり、および/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に指向される異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向される。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。
【0122】
修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975年)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または組み換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら、Nature、352:624~628(1991年)およびMarksら、J.Mol.Biol、222:581~597(1991年)に記載される技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。本明細書のモノクローナル抗体の具体的な例には、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体が含まれる。
【0123】
本明細書のモノクローナル抗体は、具体的には、所望の生物活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、一方、鎖の残りの部分は、別の種に由来する抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、または相同である(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81 :6851~6855(1984年))。
【0124】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最短配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体において、またはドナー抗体において見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。概して、ヒト化抗体は、超可変料理基の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、上で示されたFR置換を除き、ヒト免疫グロブリンのものである、少なくとも一つ、典型的には、二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も任意で含む。詳細については、Jonesら、Nature 321 :522~525(1986年);Riechmannら、Nature 332:323~329(1988年);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596を参照されたい。
【0125】
本明細書における「ヒト抗体」は、ヒトB細胞から取得可能な抗体のアミノ酸配列構造に対応するアミノ酸配列構造を含むものである。かかる抗体は、免疫の際、内因性免疫グロブリン産生の不存下でヒト抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物(例えば、マウス)による産生(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993年);Jakobovitsら、Nature、362:255~258(1993年);Bruggermannら、Year in Immuno.、7:33(1993年);ならびに米国特許第5,591,669号、第5,589,369号および第5,545,807号を参照);ヒト抗体を発現するファージ提示ライブラリーからの選択(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552~553(1990年);Johnsonら、Current
Opinion in Structural Biology 3:564~571(1993年);Clacksonら、Nature、352:624~628(1991年);Marksら、J.Mol.Biol.222:581~597(1991年);Griffithら、EMBO J.12:725~734(1993年);米国特許第5,565,332号および第5,573,905号を参照);インビトロ活性化B細胞を介した生成(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照);ならびにヒト抗体産生ハイブリドーマからの単離を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって同定するか、または作製することができる。
【0126】
本明細書における「多重特異性抗体」は、二つ以上の異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。一部の実施形態では、多重特異性抗体は、三重特異性または四重特異性である。一部の実施形態では、多重特異性抗体は、2価、3価、または4価である。
【0127】
「二重特異性抗体」は、二つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、1価または2価である。
【0128】
抗体結合体、融合タンパク質、および二重特異性抗体:これらは、放射性核種、薬物、巨大分子、または他の薬剤と化学的方法によって結合されたモノクローナル抗体を指す。
【0129】
抗原:これは、さらに、動物が、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するよう誘導して抗体を生成することができる抗体によって結合されることができる一つまたは複数の分子または分子の一つ以上の部分を指す。抗原は、一つ以上のエピトープを有し得る。上で言及された特定の反応は、抗原が、非常に優先的な方法で、その対応する抗体と反応し、他の抗原によって誘発され得る他の抗体の多数と反応しないことを示すことを意味する。
【0130】
エピトープ:これは、抗体によって認識され、抗体によって結合されることができる任意の分子のその部分を指す。概して、エピトープは、化学的に活性な表面群の分子、例えば、アミノ酸または糖側鎖からなり、特定の三次元構造特性ならびに特定の荷電特性を有する。一部の態様では、本開示の対象のエピトープは、フィラミンAの部分のエピトープである。フィラミンAのエピトープは、Antibodies,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、HarlowおよびDavid Lane編(1988年)に記載されるようなクロスクロッキングアッセイで同定することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
相補性決定領域またはCDR:これは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を一緒に定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれ、三つのCDRを有する。CDRは、Kabatら、(1991年) Sequences of Proteins of Immunological
Interest、第5編、Department of Health and Human Services、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda(NIH公開第91-3242号)によって詳述された番号付け規則を使用して位置付けられ、説明され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
フレームワーク領域またはFWR:これは、CDR間に介在するアミノ酸配列を指す。抗体のこれらの部分は、抗原結合のための適切な配向でCDRを保持する役割を果たす。
【0133】
特異性決定残基またはSDR:これは、他のIgGと比較した場合の、本開示の抗体に特有のアミノ酸残基を指す。一態様では、SDRは、抗原接触に直接関与する免疫グロブリンの一部である。
【0134】
定常領域:これは、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。重鎖定常領域は、五つのアイソタイプ:アルファ、デルタ、エプシロン、ガンマ、またはミューのいずれかから選択することができる。様々なサブクラスの重鎖(重鎖のIgGサブクラスなど)は、異なるエフェクター機能に関与する。したがって、所望の重鎖定常領域を選択することによって、所望のエフェクター機能を有するヒト化抗体を作製することができる。軽鎖定常領域は、カッパ型またはラムダ型であり得る。
【0135】
免疫原性:レシピエントに投与されたとき、免疫応答(液性または細胞性)を誘発する標的タンパク質または治療部分の能力の尺度。
【0136】
免疫反応性:特定の抗原を認識し、結合する免疫グロブリンの能力の尺度。
【0137】
フィラミンA抗体またはFilA mAb:これらの用語は、本明細書において、用語「フィラミンA特異的抗体」および「フィラミンA抗原特異的抗体」および「フィラミンA抗原結合抗体」などと互換的に使用される。これらの用語は、フィラミンA遺伝子およびフィラミンA遺伝子の相同体の発現産物に優先的に結合することができる抗体を指し、癌細胞によって産生される、修飾された形態の発現産物に特異的な抗体を含み得る。抗体は、キメラ、ヒト化、および当業者に公知の他のバリアントなどのバリアントを含む。フィラミンA抗体は、それらが、別のタンパク質と比較して、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、または少なくとも500倍高い結合親和性でのフィラミンA抗原またはエピトープへの優先結合を示すなら、本開示のフィラミンA抗原またはエピトープに特異的であると言われる。一態様では、フィラミンA抗体は、それらが、任意の他のタンパク質と比較して、1000倍を超える高い親和性で結合する場合、本開示のフィラミンA抗原またはエピトープに特異的であると言われる。ネイキッドフィラミンA抗体は、ビオチンまたは放射性標識などの異種分子にコンジュゲートされていないか、またはそうでなければ結合されていない、本開示のフィラミンA抗体である。
【0138】
フィラミンA抗原:これは、フィラミンA遺伝子によって生成される発現産物を指し、発現産物は、抗原、標的分子、バイオマーカー、またはそれらの任意の組み合わせとして使用することができる。フィラミンA抗原は、フィラミンA遺伝子およびフィラミンA遺伝子の相同体によって産生され得、様々な改変を含み得る。改変には、アミノ酸変異および/または翻訳後変異が含まれ得る。例えば、フィラミンA抗原は、癌細胞などのフィラミンA抗原を発現する細胞によって導入される改変を含んでもよい。一部の実施形態では、フィラミンA抗原は、FLNa遺伝子、またはその改変を使用して作製された組み換えタンパク質である。
【0139】
実質的に類似した結合特性:これは、キメラ抗体を産生するために使用される親抗体によって認識される抗原に優先的に結合する能力を保持する、ヒト化抗体またはその断片などのキメラ抗体の能力を指す。一態様では、親抗体に「実質的に類似した結合特性」を有するキメラ抗体の親和性は、結合親和性が、親抗体によって標的化される記抗原に少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%特異的であるものである。
【0140】
別の態様では、キメラ抗体、ヒト化抗体、または抗体断片の親和性は、親抗体の親和性の約10%~約95%、約10%~約50%、約50%~約95%、約10%~約25%、約25%~約50%、約50%~約95%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、または約80%~約90%である。
【0141】
抗原結合親和性をアッセイする方法は、当該技術分野で公知であり、最大藩領の結合アッセイ、競合アッセイ、およびスキャチャード解析を含む。一態様では、抗原結合親和性は、競合アッセイを使用してアッセイされる。
【0142】
実質的に相同は、参照免疫グロブリン配列と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す免疫グロブリン配列を指してもよく、パーセント同一性は、二つの免疫グロブリン間の同一のアミノ酸残基の数を比較することによって決定され、アミノ酸残基の位置は、例えば、Kabatナンバリングスキームを使用することによって示される。
【0143】
二つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」または「パーセント同一性」は、比較され、最大対応のために整列された場合、同じであるか、または同じである特定の割合のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有する二つ以上の配列またはサブ配列を指す。パーセント同一性を決定するために、配列は、最適な比較目的のために整列させられる(例えば、ギャップは、第二のアミノ酸配列または核酸配列との最適なアラインメントのために、第一のアミノ酸の配列または核酸配列に導入され得る)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第一の配列における位置が、第二の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、次いで、分子は、その位置で同一である。二つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複位置)×100)。特定の実施形態では、二つの配列は、同じ長さである。
【0144】
二つの核酸またはポリペプチドの文脈において、用語「実質的に同一」は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%の同一性(以下に記載される方法の一つを使用して決定される)を有する二つ以上の配列またはサブ配列を指す。
【0145】
二つ以上のポリペプチド配列の文脈における「類似性」または「パーセント類似性」は、下に記載される方法の一つを使用して測定されるように、比較され、最大対応について整列されたとき、同じであるか、または保存的に置換された、特定の割合のアミノ酸残基を有する二つ以上の配列またはサブ配列を指す。例として、第一のアミノ酸配列は、第一のアミノ酸配列が、第一の配列に含有される数と同一の数のアミノ酸と比較されたとき、または当該技術分野においてこうちのコンピュータ類似性プログラム(以下を参照)により整列されたポリペプチドのアライメントと比較されたとき、第二のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%、もしくは95%以上同一であるか、または保存的に置換されているとき、第二のアミノ酸配列に類似とみなすことができる。
【0146】
二つの配列間のパーセント同一性またはパーセント類似性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。二つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、KarlinおよびAltschul、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873~5877において改変された、KarlinおよびAltschul、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264~2268のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschulら、1990年、J.Mol.Biol.215:403~410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに取り込まれる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、語長=12を用いて行い、対象のタンパク質をコードする核酸と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3を用いて行い、対象のタンパク質と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschulら、1997年、Nucleic Acids Res.25:3389~3402に記載されるように利用することができる。あるいは、PSI-Blastを使用して、分子間の遠縁関係を検出する反復検索を行うことができる(Id.)。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の既定のパラメータを使用することができる。(例えば、インターネットウェブサイトアドレス:www.ncbi.nlm.nih.govを参照。)配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的な例は、MyersおよびMiller、CABIOS(1989年)のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用することができる。配列解析のためのさらなるアルゴリズムは、当該技術分野において公知であり、TorellisおよびRobotti、1994年、Comput.Appl.Biosci.10:3~5に記載されるADVANCEおよびADAM;ならびにPearsonおよびLipman、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444~8に記載されるFASTAを含む。FASTA内で、ktupは、検索の感度と速度を設定する制御オプションである。ktup=2の場合、比較される二つの配列中の類似の領域は、整列した残基の対を見ることによって見出され、ktup=1の場合、単一の整列したアミノ酸が、調べられる。Ktupは、タンパク質配列については2または1に設定することができ、DNA配列については1~6に設定することができる。ktupを指定しない場合の既定値は、タンパク質について2、DNAについて6である。あるいは、タンパク質配列アライメントは、Higginsら、1996年、Methods Enzymol.266:383~402により記載される、CLUSTAL Wアルゴリズムを使用して行ってもよい。
【0147】
実質的に純粋:本開示の目的のため、実質的に純粋は、均質な調製物を指す。一態様では、均質な調製物は、フィラミンA抗体もしくは抗体断片、または他の化学剤もしくは生物剤のものである。少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の均質性の実質的に純粋な免疫グロブリンが、想定される。
【0148】
フィラミンA抗原発現は、特定の組織標本、血液、血清、または血漿におけるフィラミンA抗原の存在または存在量の測定、一態様では、フィラミンA、その相同体、そのバリアント、その変異体、その組み換えバージョン、および/またはその断片の遺伝子産物の発現によって特徴付けられる疾患に罹患している患者由来の組織標本を含む。そのような疾患には、乳癌、胃癌、および大腸癌が含まれる。
【0149】
対象開示の「親和性試薬」は、標的分析物に対して高い結合親和性を有する分析物結合ドメイン、部分または成分を有する。高い結合親和性とは、少なくとも約10-4M、通常は、少なくとも約10-6M以上、例えば、10-9M以上の結合親和性を意味する。一態様では、本明細書において教示される抗体の結合親和性は、少なくとも10-2M、10-3M、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M以上、または前述の任意の組み合わせもしくは範囲であってもよい。親和性試薬は、タグ付けされた親和性リガンドとして提示するときに標的タンパク質に対して必要な結合親和性を示す限り、様々な異なるタイプの分子のいずれかであってもよい。したがって、親和性試薬は、小分子または高分子リガンドであってもよい。
【0150】
また、本開示の対象は、一本鎖抗体またはscFvなどの組み換え産生抗体および抗体断片であり、このような組み換え産生抗体断片は、上記抗体の結合特性を保持する。かかる組み換え産生抗体断片は、対象抗体の結合特性を保持するために、概して、対象抗体の少なくともVHドメインおよびVLドメインを含む。対象の開示のこれらの組み換え産生抗体断片または模倣体は、その開示が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,851,829号および第5,965,371号に記載される方法論のような、任意の便宜的な方法論を使用して容易に調製され得る。
【0151】
上記の抗体、断片、およびその模倣体は、市販の供給源から取得されてもよく、および/または任意の便宜的なテクノロジーを使用して調製されてもよく、その組み換え誘導体を含むポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片および模倣体を作製する方法は、当業者に知られている。
【0152】
第一の実施形態の配列およびCDR領域
表1Aは、本明細書において提供される抗体の例示的な可変領域および定常領域を提供する。
表1A-例示的な可変領域および定常領域
【表1A-1】
【表1A-2】
【表1A-3】
【0153】
ヒトキメラmAbの軽鎖可変アミノ酸配列である配列番号1は、残基31にイソロイシンを含み、これは、一実施形態では、代わりにロイシンを含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、軽鎖可変アミノ酸配列は、配列番号1を含む。一部の実施形態では、配列番号1および2のCDR領域は、アミノ酸残基27~32(CDR1)、50~53(CDR2)、および88~96(CDR3)を含む。
【0154】
ヒトキメラmAbの重鎖可変アミノ酸配列である配列番号4は、残基101および102に二つのロイシンを含み、これは、一実施形態では、代わりに、二つイソロイシンを含んでもよく、別の実施形態では、一方の一にロイシンを、他方の一にイソロイシンを含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、重鎖可変アミノ酸配列は、配列番号5、6、または7を含む。一部の実施形態では、配列番号4~7のCDR領域は、アミノ酸残基26~33(CDR1)、51~58(CDR2)、および97~106(CDR3)を含む。
抗体および抗体断片
【0155】
抗体AHO1402は、乳癌細胞株MDA.MB.231由来のタンパク質画分を使用して作製されたフィラミンAに対する市販のマウスIgG1k抗体である、Life Technologies社から得られるモノクローナル抗体である(Alperら、「Novel anti-filamin-A antibody detects a secreted filamin-A antigen in plasma from
patients with breast carcinoma and high-grade astrocytoma」、Cancer Sci.、100(9)巻、1748~1756頁、2009年、その全体が、参照により本明細書に取り込まれる)。
【0156】
本開示は、10-5M~10-11Mの特異的親和性で、可溶性形態または細胞関連形態のフィラミンAに結合することができる抗体または抗体断片;可溶性形態のフィラミンAに結合することができる抗体または抗体断片;可溶性フィラミンAの活性を選択的に低減することができる抗体または抗体断片;およびフィラミンAに結合することができる抗体または抗体断片を含む、フィラミンA抗原に対する抗体および抗体断片を含む。
【0157】
抗体または抗体断片は、任意の抗体または抗体断片であることができ、限定されないが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびscFv(キメラ抗原受容体、もしくはCARを含む)、または抗体もしくは抗体断片結合体であることができる。一態様では、抗体は、本開示のヒトフィラミンA抗原を同定するマウスモノクローナル抗体である。
【0158】
一態様では、抗体または抗体断片は、脊椎動物の血液または他の体液において見られる任意のガンマグロブリンタンパク質であることができ、細菌およびウイルスなどの外来の対象物を同定し、中和するための宿主免疫システムによって使用され得る。一態様では、抗体または抗体断片は、抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびscFv、CAR、または抗体結合体から選択することができる。一部の実施形態において、scFvまたは他の抗体断片は、本明細書において提供される軽鎖可変領域、本明細書において提供される重鎖可変領域、およびリンカーを含む。本明細書において提供されるscFvの例示的なアミノ酸配列は、表1Bにおいて提供される。一態様では、抗体または抗体断片は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMなどの任意のタイプの免疫グロブリンタンパク質であり得る。一態様では、抗体は、IgGであり得る。
【0159】
一態様では、抗体または抗体断片は、少なくとも一つの形態のフィラミンAの活性を低減することができる。一態様では、抗体または抗体断片は、可溶性形態のフィラミンAの活性を低減することができる。別の態様では、抗体または抗体断片は、分泌された形態のフィラミンAの活性を低減することができる。別の態様では、開示される抗体または抗体断片は、細胞表面と関連するフィラミンA抗原、例えば、細胞膜関連フィラミンA抗原、または細胞内小胞関連フィラミンA抗原の活性を低減することができる。したがって、本明細書において教示される抗体は、細胞によって取り込まれる可能性がある。一部の実施形態では、可溶性フィラミンAタンパク質は、勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって測定される通り、約250~280kDaの分子量を有し得る。一態様では、本開示の可溶性フィラミンA抗原は、リン酸化される。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、フィラミンA断片に結合する。例えば、一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、p180断片またはp100断片であるフィラミンAタンパク質に結合する。特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、p180断片に結合する。
【0160】
本開示の別の態様では、抗体または抗体断片を使用して、分泌された形態のフィラミンAを検出することができる。本開示の別の態様では、抗体または抗体断片を使用して、可溶性形態および分泌された形態または複数の形態のフィラミンAを検出することができる。本開示の別の態様では、抗体または抗体断片を使用して、フィラミンAエピトープまたはその断片を検出することができる。
【0161】
本開示の一態様では、抗体または抗体断片は、可溶性形態のフィラミンAタンパク質に優先的に結合することができる。この態様では、フィラミンAへのこうした優先結合は、任意の他のタンパク質に対するものであってもよい。特定の態様では、フィラミンAへのこうした優先結合は、膜結合であるか、または関連するフィラミンAに対するものである。しかしながら、他の態様では、本明細書において教示される抗体または抗体断片は、非結合形態の抗原と比較して、細胞膜結合形態のフィラミンAタンパク質に優先的に結合することができる。したがって、膜結合形態のフィラミンA抗原、非膜結合形態のフィラミンA抗原、またはその両方に優先的に結合し得る抗体およびその断片が、本開示において提供される。
【0162】
本開示の一態様では、抗体または抗体断片は、分泌された形態のフィラミンAタンパク質に優先的に結合することができる。本開示の別の態様では、抗体または抗体断片は、分泌された形態および可溶性形態または複数の形態のフィラミンAタンパク質に結合することができる。本開示の別の態様では、抗体または抗体断片は、本開示のフィラミンAエピトープまたはその断片に結合することができる。
【0163】
本明細書で使用される場合、膜関連タンパク質または膜結合タンパク質は、細胞の検査時に、膜で局在化しているタンパク質である。膜結合タンパク質は、脂質二重層と少なくとも部分的に連結するものである。一態様では、それは、イオン相互作用を介して膜に結合される。別の態様では、膜結合タンパク質は、共有結合相互作用を介して膜に結合される。一態様では、膜結合タンパク質は、疎水性相互作用を介して膜に結合される。本明細書において教示される抗体は、前述の膜結合タンパク質、または膜関連タンパク質に結合してもよい。
【0164】
本開示の一態様では、優先結合は、バックグラウンドに関する。別の態様では、優先結合は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、100倍、1,000倍、10,000倍または1,000,000倍である。別の態様では、本開示の抗体は、膜形態のフィラミンAと比較して、可溶性形態のフィラミンAに優先的に結合する。特定の態様では、本開示の抗体は、核膜形態のフィラミンAと比較して、可溶性形態のフィラミンAに優先的に結合するか、または別の態様では、逆である。すなわち、一部の態様では、上記の優先結合は、細胞膜と関連するフィラミンA抗原に優先的に結合する教示された抗体の能力に関する。
【0165】
一態様では、本明細書において教示される抗体または抗体断片は、約10-5M、約10-6M、約10-7M、約10-8M、約10-9M、約10-10M、約10-11M、もしくは約10-12Mより高い、または約10-8M~約10-11M、もしくは約10-9M~約10-10M、もしくは約10-10M~約10-11Mの特異的親和性で、分泌された形態もしくは可溶性形態(例えば、ヒト乳癌由来)、または膜結合形態のような、特定の形態のフィラミンAに結合する。一態様では、特異的活性は、競合結合アッセイを使用して測定される。
【0166】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号12および13から選択される軽鎖CDR1配列を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号14に記載の軽鎖CDR2配列を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号15に記載の軽鎖CDR3配列を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号16に記載の重鎖CDR1配列を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号17に記載の重鎖CDR2配列を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号18、19、20、および21から選択される重鎖CDR3配列を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される軽鎖および重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3配列のいずれかを含む抗体を提供する。
【0167】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号1および2から選択される軽鎖可変領域を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号4、5、6、および7から選択される重鎖可変領域を含む抗フィラミンA抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される軽鎖および重鎖可変領域配列のいずれかを含む抗体を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、配列番号3または配列番号23を含む定常軽鎖領域を含む抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号11または配列番号28を含む定常重鎖領域を含む抗体を提供する。
【0168】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号1に記載の軽鎖可変領域および配列番号4に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B185を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号1に記載の軽鎖可変領域および配列番号6に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B405を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号1に記載の軽鎖可変領域および配列番号5に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B406を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号1に記載の軽鎖可変領域および配列番号7に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B407を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号2に記載の軽鎖可変領域および配列番号4に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B408を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号2に記載の軽鎖可変領域および配列番号6に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B409を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号2に記載の軽鎖可変領域および配列番号5に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B410を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号2に記載の軽鎖可変領域および配列番号7に記載の重鎖可変領域を含む、抗フィラミンA抗体B411を提供する。一部の実施形態では、抗体B411は、それぞれ、配列番号13、14、および15に記載の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにそれぞれ、配列番号16、17、および21に記載の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0169】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される軽鎖および重鎖可変領域を含む細胞内抗体を提供する。一部の実施形態では、細胞内抗体は、本明細書において提供されるscFv配列を含む。本明細書において提供される例示的な細胞内抗体のアミノ酸配列およびDNA配列は、以下で表1Bにおいて提供される。一部の実施形態では、scFvまたは細胞内抗体は、配列番号67および69から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvまたは細胞内抗体は、配列番号68および70から選択されるDNA配列を含む。
表1B.例示的なscFvまたは細胞内抗体配列
【表1B-1】
【表1B-2】
【0170】
別の態様では、本開示の抗体または抗体断片を使用して、対象の組織内の乳癌を検出することができる。一部の実施形態では、本開示の抗体または抗体断片を使用して、例えば、生検試料、血漿または血清などの患者由来の任意の試料における癌を検出することができる。
【0171】
本開示のさらなる態様は、組織標本、可溶性形態のフィラミンA抗原に優先的に結合することができる抗体と、当該標本内の可溶性形態のフィラミンA抗原の間の抗体と抗原の複合体を含む、組成物を提供する。本開示の一態様では、組織標本は、フィラミンAおよびその相同体の遺伝子産物の発現によって特徴付けられる疾患に罹患している患者由来のものである。本開示のさらなる態様では、患者は、乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、または脳癌に罹患している。本開示の別の態様では、可溶性形態のフィラミンA抗原は、当該組織標本において過剰発現される。一態様では、本開示は、フィラミンAおよびその相同体の遺伝子産物の発現によって特徴付けられる、患者における疾患を検出するための当該組成物の使用を提供する。本開示の一態様では、当該組成物の免疫組織化学染色は、患者における疾患の存在を示す。本開示の一態様では、当該疾患は、乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、または頭頸部癌である。別の態様では、疾患は、乳癌、胃癌、大腸癌である。一態様では、疾患は、乳癌である。
【0172】
一態様では、本開示のフィラミンA抗体は、治療から利益を得る可能性が高いフィラミンA抗体陽性癌細胞(転移性または非転移性)のサブセットを同定することができる。本開示のこのようなフィラミンA抗体は、治療から利益を得るであろう癌を有する患者のような、それを必要とする対象を同定する方法において使用することができる。本開示の方法は、本開示のフィラミンA抗体を使用して、血液、血漿、または血清中のより低いレベルのフィラミンAを検出する方法を含み得る。一態様では、方法は、現在利用可能な試験より疾患経過のより早期において、血漿中のフィラミンAを検出する。
【0173】
抗体および抗体断片は、任意で、固相上に固定化され、検出可能に標識されるか、または細胞傷害性放射性核種、細胞傷害性薬物、もしくは細胞傷害性タンパク質などに結合され得る。
【0174】
本開示の抗体および抗体断片は、細胞、哺乳類細胞、哺乳類癌細胞、ヒト細胞、およびヒト癌細胞によるフィラミンA抗原の発現を標的にすることができる。例示的な癌としては、ヒト乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、血液、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺および脳癌細胞の固形腫瘍が挙げられる。一態様では、抗体または抗体断片は、ヒト乳房、胃、および結腸細胞を標的にする。例示的な癌には、非固形癌も含まれる。例えば、癌には、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)およびヘアリー細胞白血病などの急性白血病および慢性白血病を含む白血病;皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)などのリンパ腫、非皮膚末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ栄養性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、ホジキン疾患および非ホジキンリンパ腫;ならびに多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。発現されたフィラミンA抗原は、任意の形態の遺伝子産物を含み得るが、特定の態様は、可溶性形態または分泌された形態のフィラミンAの検出に関する。かかる抗原はまた、フィラミンA遺伝子の遺伝子産生された相同体、および癌細胞によって発現される改変フィラミンA抗原を含み得る。
【0175】
一態様では、本開示は、重鎖CDR抗原結合部位のアミノ酸配列および軽鎖CDR抗原結合部位のアミノ酸配列を含む、フィラミンA抗原の優先結合を有する抗体または抗体断片を含む。本開示はまた、一つまたは複数の重鎖CDR抗原結合部位アミノ酸配列および一つまたは複数の軽鎖CDR抗原結合部位アミノ酸配列を含む、フィラミンA抗原の優先結合を有する抗体または抗体断片を含む。
【0176】
本開示は、重鎖と軽鎖の両方のCDRのうちの一つまたは複数を有する抗原結合部位を有する、フィラミンA抗体または抗体断片を含む。本開示はまた、これらと実質的に相同であるか、または実質的に類似する結合特性をもたらす抗原結合部位を含有するフィラミンA発現産物に特異的な抗体および抗体断片も含む。かかる抗体またはその断片は、本開示のフィラミンA抗体由来のCDR重鎖または軽鎖のうちの一つまたは複数と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、または80%同一であり得る。
【0177】
本開示はまた、正常細胞または癌細胞によって発現されるフィラミンA抗原に特異的である、新規タンパク質発現細胞株、およびそれらが分泌するモノクローナル抗体分子を含む。前述された通り、本明細書において作製される抗体は、一実施形態では、癌細胞、例えば、乳癌細胞によって産生される可溶性形態または分泌された形態のフィラミンAに結合することができる。しかしながら、他の実施形態では、本明細書において作製される抗体は、癌細胞、例えば、乳癌細胞によって産生されるか、または関連する膜結合形態または膜関連形態のフィラミンAと結合することができる。一部の実施形態では、本明細書において作製される抗体は、FLNaの可溶性または膜関連断片に結合することができる。
【0178】
本開示は、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体を含む。本開示はまた、抗体断片、ならびに他の改変抗体および抗体断片を含む。
【0179】
本開示はまた、フィラミンA抗原への優先結合を有するが、表1Aに含まれるものとは同一ではないFWRおよび/またはCDR抗原結合部位のアミノ酸配列を有する抗体および抗体断片を包含する。かかる抗体は、本開示のフィラミンA抗原またはその抗体断片に対して少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも50倍高い親和性でフィラミンA抗原に対して優先選択性であり得る。一態様では、本開示の抗体または抗体断片のバリアントは、本開示の非バリアント抗体または抗体断片としてフィラミンA抗原に対して特異的であり得るか、またはより特異的であり得る。
【0180】
フィラミンAに特異的であるが、表1Aに含まれるものと同一ではないFWRおよび/またはCDR抗原結合部位アミノ酸配列を有し、表1Aに含まれるFWRおよび/またはCDRと同じまたは異なる特異性決定領域(SDR)を有し得る抗体および抗体断片が含まれる。
【0181】
表1Aに記載されるアミノ酸配列に対する改変は、FWR配列およびCDR配列のいずれかまたは両方で起こり得る。一態様では、改変を別のフィラミンA抗体に行い、表1Aに記載される抗原結合部位の一つまたは複数のアミノ酸配列に一致させることができる。本開示の特定の態様によれば、抗体または抗体断片のバリエーションは、それらが実質的に相同なアミノ酸配列を有するか、抗体が、実質的に類似する結合特性を有するか、または両方の場合に生じ得る。本開示の一態様では、CDR抗原結合部位における単一のアミノ酸変化が存在し得る。フィラミンA抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切なヌクレオチド変化をフィラミンA抗体核酸に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。かかる修飾には、例えば、フィラミンA抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれらへの挿入および/または置換が含まれる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを成して、最終コンストラクトに到達するが、但し、最終コンストラクトは、所望の特性を有する。アミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数または位置を変更することのような、フィラミンA抗体の翻訳後プロセスを変更してもよい。
【0182】
アミノ酸置換バリアントは、異なる残基によって置換された、フィラミンA抗体分子における少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。置換変異誘発について最大の興味があるも部位は、超可変領域またはCDRを含むが、FWR領域における改変も企図される。
【0183】
保存的置換は、類似の電荷または疎水性、例えば、(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)無電荷の極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);および(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)を有するものでアミノ酸を置換することを含む。
【0184】
あるいは、天然に生じる残基は、共通の側鎖特性:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性の疎水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Pheに基づいてグループに分けられてもよい。
【0185】
特に具体化されたタイプの置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の一つまたは複数の超可変領域残基を置換することを含む。概して、さらなる開発のために選択される得られるバリアントは、それらが生成される親抗体と比較して、改善された生物学的特性を有する。
【0186】
本開示の抗体または抗体断片のヒト化バリアントは、AHO1402などのマウス抗体またはその抗体断片と比較したとき、低減したマウス含有量、および潜在的に、低減した免疫原性を含有し得る。ヒト化バリアントには、元の抗体または抗体断片のものと実質的に類似する結合親和性を保持するものが含まれる。本開示の態様は、1、2、3、4、5、または6つの(三つの重鎖および三つの軽鎖)CDRがヒト化されている、ヒト化フィラミンA抗体または抗体断片のCDRバリアントを提供する。別の態様では、本開示は、フィラミンA抗体および抗体断片の少なくとも一つのCDRの特異性決定残基(SDR)のみが、ヒト化抗体に存在する、ヒト化フィラミンA抗体および抗体断片のSDRバリアントを企図する。
【0187】
CDRバリアントは、ヒト化フィラミンA抗体および抗体断片の少なくとも一つのCDRを、ヒト抗体由来の対応するCDRで置換することによって形成することができる。一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、または六つのCDRが、ヒト抗体由来の対応するCDRによって置換され、親フィラミンA mAbの結合親和性と実質的に類似する生物活性を保持するCDRバリアント。本開示のCDRバリアントは、親フィラミンA抗体または抗体断片の結合親和性より25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、63%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である結合親和性を有し得る。
【0188】
CDRバリアントは、フィラミンA抗体および抗体断片と比較したとき、変化した免疫原性を有し得、ヒト抗体および抗体断片の可変軽(VL)および可変重(VH)フレームワークに、本開示のフィラミンA抗体および抗体断片由来の全六つの(三つの重鎖および三つの軽鎖)CDRを移植することによって形成され得る。しかしながら、本開示の抗体が活性を保持するのを依然として可能にしながら、本開示のフィラミンA抗体および抗体断片のCDRの全六つ未満が存在する。特異性決定残基(SDR)などの抗原接触に直接関与する残基を精製することができる。SDRバリアントは、フィラミンA抗体または抗体断片の少なくとも一つのSDRを、ヒト抗体由来の対応する位置の残基で置換することによって形成される。なお、全てのCDRがSDRを含む必要はない。
【0189】
一態様では、本抗体および抗体断片のバリアントは、ヒトにおける低減した免疫原性およびフィラミンAに対する親抗体または抗体断片のものと実質的に類似する結合親和性を有するバリアントを生成するためのCDRおよび/またはSDR置換の組み合わせを含む。
【0190】
本明細書に具体的に記述されるバリアントに加えて、他の「実質的に相同な」改変された免疫グロブリンは、様々な組み換えDNA技術を使用して容易に設計し、製造することができる。例えば、フレームワーク領域(FWR)は、一次構造レベルで変化させることができる。さらに、様々な異なるヒトフレームワーク領域は、バリアントの基礎として単独でまたは組み合わせて使用することができる。概して、遺伝子の修飾は、部位特異的変異誘発およびランダム変異誘発などの様々な技術によって容易に達成され得る。
【0191】
あるいは、一次抗体構造の一部のみを含むポリペプチド断片を作製することができ、断片は、バリアントの免疫反応性特性を実質的に保持する。かかるポリペプチド断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解切断により産生される断片、または部位特異的変異誘発を使用して所望の位置のヌクレオチド配列に終止コドンを挿入することによって産生される断片を含む。少なくともバリアントの免疫反応性断片を含む、一本鎖抗体および融合タンパク質も、本開示の範囲内に含まれる。
【0192】
本開示による抗体およびそのバリアントは、治療活性を有するエフェクター部分に直接的または間接的に付着することができる。適切なエフェクター部分は、サイトカイン、細胞毒、放射性核種、薬物、免疫調節剤、治療用酵素、抗増殖剤などを含む。かかるエフェクターに抗体を付着させる方法は、当該技術分野で公知である。これらの結合した抗体は、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭、首、肺、血液、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺および脳の癌などの癌を含む、フィラミンAの発現によって特徴付けられる疾患の治療において使用するための医薬組成物を含む、任意の組成物に取り込むことができる。一態様では、細胞は、ヒト乳房、卵巣、頭部、頸部、または脳由来である。医薬組成物は、疾患を治療するために、このような治療を必要とするヒト患者を含み得る、哺乳動物に投与される。
【0193】
抗体および抗体断片は、標識されるか、または標識されないかのいずれかであってもよい。標識されていない抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域に特異的な抗体などの、ヒト化抗体と反応性である他の標識された抗体(第二の抗体)と組合わせて使用することができる。あるいは、抗体は、直接標識することができる。放射性核種、フッ素、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、リガンド(特に、ハプテン)などのような、多種多様な標識を用いることができる。多数のタイプのイムノアッセイが利用可能である。
第二の実施形態の配列およびCDR領域
【0194】
本開示の追加の配列は、以下の表2~5において見ることができる。
【0195】
これらの配列は、特に、表1Aにおいて前述された配列由来の代替のCDR結合ドメイン領域に対応する。さらに、これらの結合ドメイン配列および全体的な抗体配列内のそれらの位置は、
図28~31においてマッピングされる。
【0196】
図28~31は、ヒトキメラ軽鎖可変CDR結合ドメイン領域(
図28)、ヒトキメラ重鎖可変CDR結合ドメイン領域(
図29)、マウス軽鎖可変CDR結合ドメイン領域(
図30)、およびマウス重鎖可変CDR結合ドメイン領域(
図31)について、Chothia、ABM、Kabat、およびContactにより予測されるCDR領域間の一致アライメント表す。
表2:ヒトキメラ軽鎖可変CDR結合ドメイン領域
【表2-1】
【表2-2】
表3:ヒトキメラ重鎖可変CDR結合ドメイン領域
【表3】
表4:マウス軽鎖可変CDR結合ドメイン領域
【表4-1】
【表4-2】
表5:マウス重鎖可変CDR結合ドメイン領域
【表5-1】
【表5-2】
【0197】
CDR境界の同定を頻繁に使用して、多くが、抗原の抗体結合に重要であると考える配列を指摘する。したがって、CDRの定義は、超可変性の領域に焦点を当てる傾向があるが、抗体配列の鍵となるアミノ酸および位置も含む。結果として、これらの領域の境界は、配列データベースの解析のための基準の1設定に依存して変化し得る。データベース自体の組成も、結果に影響を与え得る。この点に関して、CDRを定義する境界は、システムごとに異なり得る。さらに、CDR/超可変領域の外側に位置するアミノ酸が、抗原の直接結合にも関与し得る既知の例もあるが、これは、必ずしもその特定のアミノ酸を含有する全ての抗体についての場合であるとは限らない。このため、抗原と直接相互作用し得るCDRおよび抗体位置を同定するいくつかの方法がある。
【0198】
一態様では、本開示の範囲内で利用される配列データベースは、PDBからの構造データに加えて、Kabat、IMGT、PDBデータベースを含むいくつかのデータベースからの配列データを統合する、Abysisデータベース(www.bioinf.org.uk)である。Abysisシステムの使用において、医師は、Kabat、Chothia、Martin(強化されたChothia)、および接触情報によって定義されるCDR境界を同時に取得することができる。Kabatおよび他の抗体配列ナンバリングシステムは、異なってもよい。ナンバリングシステムに焦点を当てるよりむしろ、異なるシステム下でCDRを定義する実際のアミノ酸配列に焦点を当てる。Abysisデータベースに関する一般的な情報は、インターネットアドレスワールドワイドウェブ:bioinf.org.uk/abs/で見ることができ、これは、参照によりその全体で全ての目的のため本明細書に組み込まれる。
【0199】
Abysis解析におけるCDR定義は、以下:(1)最も一般的に使用されるシステムである、配列変動に基づくKabat;(2)構造ループ領域の位置に基づく、Chothia;(3)Oxford Molecularの抗体モデリングソフトウェアに基づくKabatとChothiaの定義との間の妥協点である、Abysis-Martin(AbM);および(4)利用可能な複合体抗体と抗原結晶構造の分析に基づき、移植および変異誘発に有用である可能性が高い、Contactを含む。
【0200】
結果は、前述のシステム間で常に100%一致しているわけではないが、これらの異なるシステムを使用することにより、抗原結合に重要であり得る抗体の領域をより良く理解することができる。本開示の抗体に関して、Abysis解析の結果は、表2~5および
図28~31に詳述される。
【0201】
抗原および本開示の抗体の結合領域
本開示の抗体およびその断片は、フィラミンA抗原に結合することができる。
【0202】
前述のように、本開示の一部の実施形態は、可溶性または分泌されたフィラミンA抗原に結合する。特定の態様では、可溶性または分泌されたフィラミンA抗原は、ヒト乳癌細胞に由来する。
【0203】
一部の態様では、本開示の抗体によって結合される抗原は、参照によりその全体が全ての目的のため本明細書に組み込まれる、Alperら、「Novel anti-filamin-A antibody detects a secreted variant of filamin-A in plasma from patients with breast carcinoma and high-grade astrocytoma」、Cancer Sci.、100(9)巻、1748~1756頁、2009年において考察される抗原である。したがって、一部の態様では、本開示は、教示された抗体が、FLNaのカルパイン切断部位の上流(N末端)に結合し、約180kDa(p180、カルパイン部位のN末端)および約100kDa(p100、切断部位のC末端)のサイズの二つの断片を作製する、フィラミンA抗原モデルを提案する。このモデルでは、教示された抗体は、p100 C末端切断産物には結合しないがp280(全長)およびp180断片には結合しないように思われる。Alperら、2009年の
図1cを参照されたい。
【0204】
一部の態様では、本開示の抗体によって結合される抗原は、参照によりその全体が全ての目的のため本明細書に組み込まれる、Bachmanら、「Actin-binding protein filamin A is displayed on the surface of human neuroblastoma cells」、Cancer Sci.、97(12)巻、1359~1365頁、2006年において考察された、膜結合または膜関連フィラミンA抗原である。したがって、一部の態様では、本開示は、FLNaのC末端が、細胞外基質に曝露され、FLNaのN末端が、細胞質内に位置する、フィラミンA抗原モデルを提案する。このモデルでは、N末端のアクチン結合ドメインは、アクチン細胞骨格と会合し、一方、表面提示部分は、本明細書において教示される抗体を含む様々な細胞外リガンドとの相互作用を可能にする。
【0205】
核酸分子および宿主細胞
本開示の抗体または抗体断片のいずれも、核酸によってコードされ得る。本開示は、かかる分子、かかる分子の断片、およびベクターに含まれるかかる分子などを含む。核酸分子はまた、かかる核酸分子の補体を含む。DNA分子とRNA分子の両方が、核酸分子の例である。
【0206】
別の態様では、本開示は、抗体分子の重鎖をコードする、単離DNA配列を提供し、抗体分子は、少なくともフィラミンAを含むフィラミンA抗原に優先結合を有し、重鎖の可変ドメインは、少なくとも一つ、二つ、または三つのCDRの抗原結合部位アミノ酸配列を有するCDRを含む。
【0207】
なお別の態様では、本開示は、抗体分子の軽鎖をコードする、単離DNA配列を提供し、抗体分子は、少なくともフィラミンAを含むフィラミンA抗原に優先結合を有し、さらに、軽鎖の可変ドメインは、少なくとも一つ、二つ、または三つのCDRの抗原結合部位アミノ酸配列を有するCDRを含む。
【0208】
別の態様では、本開示は、宿主細胞中の核酸分子を含む。かかる核酸分子は、宿主細胞のゲノム内に組み込まれ得るか、またはプラスミドもしくはウイルスベクターなどのベクターに存在し得る。本開示の核酸分子は、こうした宿主細胞に一過性に存在してもよい。一態様では、宿主細胞は、大腸菌;バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)を含むバチルス;サルモネラ、セラチアおよびシュードモナス、サッカロミセスを含む酵母を含む腸内細菌;ピキア・パストリス(Pichia pastoris);Sf9昆虫細胞;Sp2/0、VEROおよびHeLa細胞、ヒト胚性腎(HEK)細胞株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株;W138、BHK、COS-7およびMDCK細胞株からなる群から選択される。一態様では、宿主細胞は、SKBR3、MCF-7、MDA-MB-231、MDA-MB-435、およびZR75B細胞などの乳癌細胞株から選択される。別の態様では、宿主細胞は、PC3、DU145およびLNCap細胞などの前立腺癌細胞株から選択される。別の態様では、宿主細胞は、HT-29細胞などの大腸癌細胞株から選択される。別の態様では、宿主細胞は、A431細胞などの皮膚癌細胞株から選択される。別の態様では、宿主細胞は、BHK-21またはCOS-7細胞などの腎臓癌細胞株から選択される。別の態様では、宿主細胞は、A2780、A2780ADR、またはA2780cis細胞などの卵巣癌細胞株から選択される。別の態様では、これは、CHO細胞である。別の態様では、これは、肺癌細胞(例えば、A549細胞株)である。
【0209】
フィラミンA抗体、細胞内抗体、または抗体断片を作製する方法
本開示のフィラミンA抗体または抗体断片は、例えば、MDA-MB-231乳癌細胞株からのタンパク質調製物で動物を免疫することによって発生させることができる。
【0210】
本開示は、組み換えDNAテクノロジーを使用してヒト化抗体を含む、モノクローナルキメラを作製するプロセスを含む。例えば、Antibodies、A Laboratory Manual(HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Press、1988年)を参照のこと、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0211】
本開示のフィラミンA抗体または抗体断片は、フィラミンAに特異的な抗体または抗体断片を産生するマウスハイブリドーマを作製することを含むが、これに限定されない、任意の公知の方法によって産生され得る。ハイブリドーマは、例えば、マウス融合パートナー細胞とフィラミンAに対して免疫化されたマウス由来の脾細胞の融合によって形成され得る。マウスを免疫するために、様々な異なる従来のプロトコルに従うことができる。例えば、マウスは、抗原性調製物の一次免疫およびブースト免疫を受けることができる。
【0212】
本開示は、細胞内抗体を作製する方法を提供する。フィラミンA特異的細胞内抗体は、例えば、細胞内でフィラミンA特異的scFvを発現させることを含む任意の公知の方法によって産生されてもよく、scFvは、細胞内局在化のために改変される。例えば、scFvをタンパク質とN末端および/またはC末端で融合させて、発現を補助し、安定性を増加させ、細胞内環境に対する抵抗性を増加させ、および/または特定の細胞内構造もしくは領域にscFvを標的化してもよい。一部の実施形態では、細胞内抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に、可変軽鎖領域、リンカー、および可変重鎖領域を含む。一部の実施形態では、細胞内抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に、可変重鎖領域、リンカー、および可変軽鎖領域を含む。リンカーは、当該技術分野で公知の任意の融合タンパク質リンカーであってもよい。例えば、一部の実施形態では、リンカーは、可撓性リンカーである。一部の実施形態では、リンカーは、例えば、(GGGS)3(配列番号71)または(GGGGS)3(配列番号72)などのグリシン-セリンリンカーである。本明細書において提供される細胞内抗体の例示的なアミノ酸配列は、表1Bにおいて提供される。一部の実施形態では、scFvの可変重鎖および/または軽鎖は、ポリヒスチジンタグ、FLAGタグ、または当技術分野で抗体の他のタグなどのタグを含むか、またはそれらに連結される。したがって、一部の実施形態では、本開示は、ヒスチジンタグ付き抗フィラミンA細胞内抗体を提供する。一部の実施形態では、細胞内抗体は、細胞内抗体の発現を助けるための融合タンパク質を含む。例えば、一部の実施形態では、融合タンパク質は、核、ER、ゴルジ装置、ミトコンドリア、リソソーム、または他の細胞内構造もしくは領域などの細胞内構造または領域に細胞内抗体を標的化する、GST、Ig-Fc、またはタンパク質配列などのscFvのN末端および/またはC末端に融合物を含む。
【0213】
一部の実施形態では、細胞内抗体コンストラクトは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、ルシフェラーゼ、またはその他などのレポーター遺伝子に遺伝子的に連結されている。一部の実施形態では、連結されたレポーター遺伝子は、それ自身のプロモーターによって駆動される。一部の実施形態では、連結されたレポーター遺伝子は、細胞内抗体プロモーターからの発現を駆動するためのIRES配列を介して駆動される。したがって、一部の実施形態では、細胞内抗体は、可変重鎖および軽鎖、タグ、ならびにレポーター遺伝子(例えば、Vh-Vl-His-IRES-GFPまたはVl-Vh-His-IRES-GFP)を含むフィラミンA特異的scFvを含む。一部の実施形態では、細胞内抗体は、EFプロモーターによって駆動される可変重鎖および軽鎖、タグ(例えば、Hisタグ)、ならびにIRES配列(例えば、EF-Vh-Vl-His-IRES-GFPまたはEF-Vl-Vh-His-G-IRE)によって駆動されるレポーター遺伝子(例えば、GFP)を含むフィラミンA特異的scFvを含む。一部の実施形態では、細胞内抗体は、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターを介して送達される。一部の実施形態では、細胞内抗体は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Reiserら、「Development of Multigene and Regulated Lentivirus Vectors」、Journal of Virology、74(22)巻、10589~99頁(2000年)のような、二相性レンチウイルスベクターを介して送達される。
【0214】
一部の実施形態では、細胞内抗体は、細胞透過ペプチド、細胞膜を超えて細胞内抗体を転座させるための他の化学的部分またはナノキャリア送達システムを介して細胞に送達されるか、または転座されるタンパク質である。例示的な細胞透過ペプチド、他の化学的部分などは、当該技術分野で公知であり、アンテナペプチド配列、TAT、HIV-Tat、ペネトラチン、Antp-3A(Antp変異体)、バフォリンII、トランスポータン、MAP(モデル両親媒性ペプチド)、K-FGF、Ku70、プリオン、pVEC、Pep-1、SynB1、Pep-7、HN-1、BGSC(ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール、およびBGTC(ビスグアニジニウム-トレン-コレステロール)を含むが、これらに限定されない。したがって、一部の実施形態では、本開示は、本明細書において提供される抗体、例えば、scFvに融合されたタンパク質形質導入ドメインを含む融合タンパク質を提供する。ナノキャリア送達システムは、脂質ベースのナノキャリア(例えば、リポソームおよび他の脂質ベースのナノ粒子)、ポリマーベースのナノキャリア(例えば、ポリマーベースのリポソームまたはポリマーソーム)、無機ナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子)、微粒子、および改変ウイルスまたはウイルス様粒子を含む。本明細書において提供される細胞内抗体は、当技術分野で公知の転位システムのいずれかを介してタンパク質として細胞に送達されてもよい。
【0215】
細胞融合は、免疫学の分野の当業者に公知の手法によって達成され得る。融合パートナー細胞株およびハイブリドーマを融合させ、選択する方法ならびに抗体もしくは抗体断片をスクリーニング方法が、知られている。
【0216】
本開示の抗体または抗体断片は、例えば、抗体を分泌するハイブリドーマ細胞をマウスの腹腔内に注射し、適切な時間後、高力価の抗体または抗体断片を含有する腹水を回収し、そこから抗体または抗体断片を単離することによって、大量に産生することができる。あるいは、インビトロでハイブリドーマ細胞を培養し、分泌された抗体または抗体断片を細胞培養培地から単離することによって、抗体および抗体断片を産生することができる。
【0217】
本開示のフィラミンA抗体または抗体断片はまた、配列が発現制御配列に作動可能に連結された後、宿主細胞において適切なDNA配列を発現させることによっても産生され得る。このような発現ベクターは、多くの場合、エピソームとして、または宿主染色体DNAの不可欠な部分として、宿主生物において複製可能である。発現ベクターは、多くの場合、複製起点などの宿主細胞と互換可能な発現制御配列を含有する。さらに、発現ベクターは、遺伝子の発現を制御するためのプロモーターを、任意選択で、オペレーター配列と共に含み、転写および翻訳を開始し、完了するためのリボソーム結合部位配列等を有することができる。適切なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーター、ラクトースプロモーターシ系、トリプトファンプロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダ由来のプロモーター系を含むが、これらに限定されない。発現ベクターはまた、選択マーカーを含み得る。フィラミンA抗体または抗体断片の軽鎖および重鎖をコードするDNA配列は、別個の発現ベクターに、または同じ発現ベクターに挿入され得る。
【0218】
好適な宿主は、大腸菌;バチルス・スブチリスを含むバチルス、サルモネラ、セラチア、シュードモナスを含む腸内細菌などの原核生物を含むが、これらに限定されない。好適な宿主はまた、サッカロマイセスを含む酵母;ピキア・パストリス;Sf9昆虫細胞;Sp2/0、VEROおよびHeLa細胞、ヒト胚性腎(HEK)細胞株;チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株;W138、BHK、COS-7およびMDCK細胞株を含むが、これらに限定されない。他の適切な宿主はまた、既知の発現技術に従って使用することができる。
【0219】
対象のDNAセグメントを含有するベクターは、細胞宿主のタイプに応じて変化する、任意の方法によって宿主細胞内に運ぶことができる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクション、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーションまたはカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション(DOTAPなど)。首尾よく形質転換された細胞は、リガンドへの受容体の結合を検出するための様々な技術によって同定することができる。
【0220】
発現された遺伝子産物は、硫酸アンモニウム沈殿、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、およびゲル電気泳動を含むが、これらに限定されない、任意の方法に従って精製することができる。少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の実質的に純粋な免疫グロブリンが、想定される。
【0221】
単離または精製されたDNA配列は、クローニングベクターまたは発現ベクターに組み込まれ、順に、宿主細胞を形質転換するために使用することができる。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞の培養およびそれらが産生する抗体分子の単離を含む、フィラミンA抗原に対する特異性を有する抗体分子の産生のプロセスにおいて使用され得る。
【0222】
キメラ抗原受容体形態のフィラミンA抗体
細胞外免疫療法として使用するため、フィラミンA抗体は、膜の細胞外側からのアクセスを必要とし得る。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、膜の細胞外側でフィラミンAに結合し、CAR-T療法などの細胞免疫療法において有用である。したがって、一部の実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)形式でフィラミンA特異的抗体を提供する。例えば、本開示は、抗体、CAR、CARを発現する細胞を提供し、抗体、CAR、CARを発現する細胞は、細胞表面上で発現したフィラミンAに特異的に結合する。例えば、一部の実施形態では、本開示は、フィラミンA抗体またはその断片(例えば、scFv)を含むフィラミンA特異的CARポリペプチドを提供する。さらなる実施形態では、CARポリペプチドは、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通型ドメイン、および一つまたは複数の細胞外ドメインを含み、少なくとも一つの細胞外ドメインは、フィラミンA抗体またはその断片である。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメイン(例えば、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、NKG2D、B7-H3、およびそれらの任意の組み合わせ)ならびに/またはT細胞受容体(TCR)ゼータ鎖シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドのフィラミンA抗体またはその断片は、本明細書において提供される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR領域を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドのフィラミンA抗体またはその断片は、本明細書において提供される重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示は、本明細書において記載されるCARポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供する。一部の実施形態では、フィラミンA抗体またはその断片を含むCARポリペプチドは、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NK-T細胞、B細胞、マクロファージ、または幹細胞)上に発現される。さらなる実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。したがって、一部の実施形態では、本開示は、細胞表面上でフィラミンAを発現する細胞にT細胞を標的化するCAR-T細胞などの操作された細胞を提供する。他の実施形態では、本開示は、フィラミンA CARを介して、細胞表面上でフィラミンAを発現する細胞にNK細胞またはNK-T細胞を標的化する操作されたNK細胞またはNK-T細胞を提供する。他の実施形態では、本開示は、CAR形式のフィラミンA抗体またはその断片を発現する操作されたマクロファージを提供し、操作されたマクロファージは、マクロファージが、細胞表面上でフィラミンAを発現する細胞を貪食するよう標的にする。一部の実施形態では、フィラミンA特異的抗体またはその断片(例えば、CAR発現免疫細胞上に発現される)は、細胞外フィラミンAを発現する癌細胞に優先的に結合する。
【0223】
診断方法、アッセイ、およびキット
さらなる態様では、本開示は、本開示の抗体または抗体断片を含むフィラミンA抗原を検出するためのイムノアッセイを含む。
【0224】
本開示はまた、表1Aにおいて記載される重鎖または軽鎖CDR抗原結合部位アミノ酸配列の一つまたは複数を有するモノクローナル抗体に結合する、フィラミンA抗原を含む、一つまたは複数のフィラミンA抗原を優先的に検出するためのイムノアッセイを含む。
【0225】
かかるイムノアッセイは、(a)試料を、有効結合量の本開示の抗体または抗体断片の一つと接触させること、および(b)フィラミンA抗原への抗体の結合を検出することによって抗原を検出することを含むが、これらに限定されない、任意の適切な様式で使用され得る。本開示のイムノアッセイを使用して、フィラミンA抗原を発現する癌細胞、特に、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、血液、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺および脳がんからなる群から選択される癌、腫瘍、癌腫細胞または新生物疾患細胞を検出することができる。
【0226】
さらなる態様では、本開示は、(a)本開示の抗体または抗体断片;および(b)検出可能な標識に結合された二次抗体を含む、癌の免疫組織化学的検出のためのキットを提供する。
【0227】
さらなる態様では、本開示は、(a)表1Aにおいて記載される重鎖または軽鎖CDR抗原結合部位アミノ酸配列の一つまたは複数を有するモノクローナル抗体;および(b)検出可能な標識に結合された二次抗体を含む、癌の免疫組織化学的検出のためのキットを提供する。
【0228】
キットは、フィラミンA抗原の試料をアッセイするための試薬を含み得、こうしたキットは、抗体、またはその断片もしくは模倣体などのフィラミンA抗原特異的親和性試薬、および/あるいは抗体、酵素基質などのような、シグナル産生システムの同じメンバーを含むイムノアッセイ装置;対象の検出アッセイを行うのに使用するための様々な緩衝液;試料中の一つまたは複数のフィラミンA抗原の量を決定するための参照などを含む。キットまたはキット形式の他の例は、参照によりその全体が全ての目的のため本明細書に組み込まれる、2008年8月8日に出願された米国特許出願第12/189,051号に対応する、米国特許出願公開第2008/0293162A1号において見られる。
【0229】
さらなる態様では、本開示は、(a)癌を有すると疑われる患者から標本を取り出すこと;(b)標本を本開示の抗体または抗体断片と接触させること;および(c)抗原と抗体の複合体の存在を検出することを含む、ヒトにおける癌を診断する方法を提供する。一部の態様では、標識が使用され、検出される。癌を診断するこうした方法は、インビボまたはインビトロで実施することができる。
【0230】
さらなる態様では、本開示は、(a)癌を有すると疑われる患者から標本を取り出すこと;(b)表1Aにおいて記載される重鎖または軽鎖CDR抗原結合アミノ酸配列の一つまたは複数を有するモノクローナル抗体と標本を接触させること;および(c)抗原と抗体の複合体の存在を検出することを含む、ヒトにおける癌を診断する方法を提供する。一部の態様では、標識が使用され、検出される。癌を診断する方法は、インビボまたはインビトロで実施することができる。
【0231】
診断される癌は、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺、および脳の固形腫瘍からなる群から選択される癌を含む。細胞は、ヒト乳房、卵巣、頭部、頸部、および脳細胞をさらに含み得る。
【0232】
一態様では、フィラミンAレベルは、年齢が一致した健康な対照と比較して、早期の乳癌患者においてより高い。別の態様では、フィラミンAレベルは、年齢が一致した健康な対照と比較して、中期の乳癌患者においてより高い。別の態様では、フィラミンAレベルは、年齢が一致した健康な対照と比較して、後期の乳癌患者においてより高い。一態様では、フィラミンAのレベルは、年齢が一致した健康な対照と比較して早期乳癌患者においてより高く、後期の乳癌において健康な対照レベルと類似する。フィラミンAレベルにおける増加は、一部の態様では、それらが、年齢が一致した健康な対照と比較して統計的に有意であることを意味する。健康な対照レベルと類似するレベルは、レベルが統計的に有意ではないことを意味し得る。一態様では、フィラミンAのレベルにおける統計的有意差は、マン・ホイットニー検定もしくはスチューデントt検定、または当技術分野で公知の任意の他の統計検定によって測定される、p<0.05のp値を有する。別の態様では、フィラミンAのレベルにおける統計的有意差は、マン・ホイットニー検定もしくはスチューデントt検定、または当技術分野で公知の任意の他の統計検定によって測定される、p<0.01のp値を有する。さらなる態様では、フィラミンAのレベルにおける統計的有意差は、マン・ホイットニー検定もしくはスチューデントt検定、または当技術分野で公知の任意の他の統計検定によって測定される、p<0.005のp値を有する。さらなる態様では、フィラミンAのレベルにおける統計的有意差は、マン・ホイットニー検定もしくはスチューデントt検定、または当技術分野で公知の任意の他の統計検定によって測定される、p<0.001のp値を有する。一部の実施形態では、患者間のレベルは、統計的に有意ではないが、結果は、依然として定量可能であり、癌を有する患者と正常な非癌性個体の間の差を示すことができる。
【0233】
さらなる態様では、本開示は、(a)当該対象由来の標本を本開示の抗体または抗体断片と接触させること;および(b)乳癌を有する患者におけるフィラミンAの増加を検出すること、このような乳癌が、早期、中期、または後期であり得る、を含む、それを必要とする対象における乳癌を診断する方法を提供する。乳癌を診断するこうした方法は、インビボまたはインビトロで実施することができる。
【0234】
診断される乳癌は、早期、中期または後期乳癌、またはその組み合わせのいずれかであり得る。
【0235】
追加の態様では、本開示は、フィラミンAまたはその相同体の遺伝子産物の発現によって特徴付けられる疾患の治療、診断、または治療と診断の両方に有用な薬物を開発する方法を含む。これらの方法は、フィラミンAおよびその相同体によって発現される遺伝子産物を同定すること、およびフィラミンA抗体および抗体断片、阻害ペプチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ワクチン、ならびに遺伝子産物を特異的に標的とする化合物からなる群から選択される薬物の開発および同定におけるバイオマーカーとして、遺伝子産物を利用することを含む。
【0236】
抗体および抗体断片は、フィラミンAの存在について、血清、痰、滲出物、尿、脳脊髄液などの体液をスクリーニングするためにイムノアッセイにおいて使用することができる。抗体および抗体断片は、適切な放射標識で標識されたとき、腫瘍細胞の原発または転移性病巣を検出するために、スキャンまたは放射撮像のため使用することができる。さらに、抗体は、疾患におけるリンパ節の関与を検出するためのリンパシンチグラフィーに有用である。
【0237】
フィラミンA関連遺伝子産物に特異的な抗体または抗体断片のいずれかまたはすべて、および/またはそのヒト化などのキメラ、もしくは他のバリアントを含み得る、フィラミンA抗体または抗体断片は、治療上、またはアッセイ、インビボもしくはインビトロでの診断手法、および撮像の開発ならびに実施において使用され得る。抗体は、単独または医薬的に許容されるもしくは診断可能な担体製剤と組み合わせて使用することができる。フィラミンA抗体または抗体断片は、懸濁液または溶液として、医薬上または診断上許容可能な無毒性の無菌の担体に取り込まれ得る。これらは、別々に投与される組成物として、または化学療法剤もしくは免疫抑制剤と併せて投与され得る。
【0238】
本開示は、医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と組み合わせて本開示の抗体または抗体断片を含む治療用および診断用組成物を含む。本開示はまた、本開示の抗体分子を医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と混合することを含む、治療用および診断用組成物の調製プロセスを含む。抗体分子は、治療用組成物または診断用組成物中の唯一の有効成分であり得るか、または他の抗体成分、例えば、抗T細胞、抗IFNγもしくは抗LPS抗体、またはキサンチンなどの非抗体成分を含む他の活性成分を伴ってもよい。組成物は、固形腫瘍、特に、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺および脳の固形腫瘍を含むが、これらに限定されない、フィラミンAの発現によって特徴付けられる疾患を診断または治療するためのキットに組み込まれ得る。細胞はまた、ヒト乳房、卵巣、頭部、頸部、または脳細胞であり得る。
【0239】
本開示の抗体または抗体断片は、試料におけるフィラミンAまたはフィラミンAを生じる細胞を検出または定量するイムノアッセイに有用である。こうしたイムノアッセイは、典型的には、腫瘍抗原を同定することができる本開示の検出可能に標識された抗体の存在下で、それを必要とする対象由来の生物学的試料をインキュベートすること、および試料における結合する標識された抗体を検出することを含む。
【0240】
本開示の一態様では、フィラミンA分布の観察を使用して、特定の疾患、例えば、乳癌と関連する段階を検出することができる。組織標本は、フィラミンA抗体とインキュベートされ得、得られたフィラミンA-抗原とフィラミンA抗体の複合体は、標準的な免疫組織化学染色を使用して検出され得る。
【0241】
本開示の抗体が検出可能に標識され得る方法の一つは、それを酵素に連結させることによって検出可能に標識され、酵素免疫アッセイ(EIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で使用することができる。この酵素は、その後、その基質に曝露されたとき、例えば、分光光度手段、蛍光手段、または視覚手段によって検出され得る、化学的部分を生じる基質と反応する。代替の実施形態では、酵素を使用して、本開示の抗体の結合パートナーを標識する。かかる結合パートナーは、異種抗マウス免疫グロブリン抗体などの本開示の抗体の定常領域または可変領域に対する抗体であり得る。あるいは、結合パートナーは、本開示の抗体に結合することができる非抗体タンパク質であり得る。
【0242】
本開示の抗体を放射性標識することによって、放射免疫アッセイ(RIA)の使用を通じてフィラミンAを検出することができる。放射性同位元素は、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段により、またはオートラジオグラフィーにより検出することができる。本開示の目的に特に有用である同位体は、当技術分野で公知である。
【0243】
本開示の抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識された抗体が、適切な波長光に曝露されたとき、次に、その存在は、蛍光に起因して検出することができる。本開示の抗体はまた、化学発光化合物に結合させることによって検出可能に標識され得る。次いで、化学発光標識された抗体の存在は、化学反応の過程で発生する発光の存在を検出することによって決定される。生物発光化合物を使用して、本開示の抗体を標識することもできる。生体発光は、触媒タンパク質が、化学発光反応の効率を増加させる、生体系に見られる化学発光の一種である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識の目的に重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびセコリンである。
【0244】
抗体、断片または誘導体の検出は、例えば、検出可能な標識が放射性ガンマエミッターである場合、シンチレーションカウンターによって、または例えば、標識が蛍光材料である場合、蛍光光度計によって達成され得る。酵素標識の場合、検出は、酵素の基質を用いる比色法によって達成することができる。検出は、同様に調製された標準と比較して、基質の酵素反応の程度の視覚的比較によっても達成することができる。
【0245】
生体内原位置での検出は、患者から標本を取り出すこと、標識抗体、または非標識抗体およびこのような標本の標識結合パートナーを用意することによって達成することができる。こうした手順の使用を通じて、抗原の存在だけでなく、調べた組織におけるその分布も決定することが可能である。本開示を使用して、当業者であれば、多種多様な組織学的方法(染色手法など)のいずれかが、そのような組織原位置での検出を達成するために改変され得ることを容易に認識するであろう。かかる方法は、例えば、免疫組織化学染色手法を含む。一態様では、アビジン-ビオチン免疫ペルオキシダーゼ染色システムを使用することができ、このシステムを利用するキットも意図されているが、本開示の方法は、当該技術分野で公知の任意の適切な染色手法を利用することができる。
【0246】
本開示によるキットは、解凍することにより、または液体ビークル中で懸濁することにより再構成されるべき凍結または凍結乾燥された抗体を含み得る。キットはまた、担体または緩衝液を含み得る。別の実施形態では、キットは、抗体を再構成および使用するための指示書も含む。本開示のキメラ抗体およびヒト化抗体を含む抗体を用いるキットは、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、血液、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺、および脳の癌を含む、癌の免疫組織化学的評価のため使用することができる。細胞はまた、ヒト乳房、卵巣、頭部、頸部、および脳細胞であり得る。
【0247】
免疫組織化学解析に必要な試薬を含むキットは、以下の通り提供することができる:(a)本開示のフィラミンA抗体もしくは抗体断片、またはそのキメラもしくはヒト化バリアント;(b)ブロッキング試薬(例えば、ヤギ血清の形態)および二次抗体(例えば、ヤギ抗マウス抗体など);(c)検出可能なマーカー(例えば、免疫ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなど);および(d)開発中の試薬。一次抗体(フィラミンA抗体もしくは抗体断片またはそのバリアント)は、一つより多くの二次抗体に結合することができる抗原として機能する。二次抗体は、一次抗体と、検出可能なマーカーおよび開発中の試薬(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ-アンチペルオキシダーゼ複合体)によって形成される複合体との間に「架橋」を形成する。
【0248】
任意の適切な検出システムを、本開示の方法およびキットに従って使用することができる。このような検出システムは、免疫蛍光用途で広く使用され、フローサイトメトリー、顕微鏡、ウェスタンブロット、およびELISAを含むが、これらに限定されない技術を使用して撮像することができる。適切な検出システムは、順に、特異的な標的を検出するために使用される(本開示の文脈において、標的は、フィラミンA発現産物である)、一次タンパク質からのシグナルを増幅する(本開示の文脈において、増幅される一次タンパク質シグナルは、例えば、ビオチンなどのタンパク質で標識することができるか、またはできない、フィラミンA抗体に結合する)ために、二次抗体の結合体、コロイド状金の結合体、または二次タンパク質の結合体を利用することができる。
【0249】
本開示の方法およびキットにおける使用に適切な二次結合体は、二次抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素の酵素結合体;アビジンまたはストレプトアビジンと西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素の酵素結合体;タンパク質Aまたはタンパク質Gと西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素の酵素結合体;コロイド状金と二次抗体の結合体;コロイド状金とアビジンまたはストレプトアビジンの結合体;磁気粒子と二次抗体の結合体;および二次抗体と蛍光色素およびビオチンなどの標識の結合体を含み得るが、これらに限定されない。本開示は、任意の特定の検出システムに限定されず、本開示に従って、これらまたは他の検出システムを利用することは、当業者の能力の範囲内とみなされる。これらの二次結合体(本開示の文脈において標識とも呼ばれる)は、抗原と抗体の複合体を可視化するのに有用である。
【0250】
本開示の抗体または抗体断片はまた、「二つの部位」または「サンドイッチ」アッセイとしても知られる、免疫測定アッセイにおける利用に適合され得る。典型的な免疫測定アッセイでは、非標識抗体(または抗体の断片)の量は、試験される流体中で不溶性である固体支持体に結合し、検出可能に標識された可溶性抗体の量が、固相抗体、抗原と標識された抗体の間で形成される三元複合体の検出および/または定量を可能にするよう適合される。
【0251】
本開示の抗体または抗体断片を使用したヒト乳房、卵巣、頭部、頸部、および脳癌ならびに他の癌を含む、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、血液、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺および脳のインビボ撮像の目的のため、当業者に公知の多くの異なる標識および標識方法が存在する。本開示で使用され得る標識の種類の例は、放射性同位体、常磁性同位体、および陽電子放出断層撮影(PET)によって撮像され得る化合物を含む。
装置
【0252】
上述のように、対象の方法の実践における使用を見い出す装置も提供される。対象の方法を実施するための装置は、少なくとも、フィラミン分析物のための対象由来の試料をアッセイするための試薬を含み、このような装置は、固体支持体の表面に固定された抗体、またはその断片もしくは模倣体などのフィラミン分析物特異的親和性試薬を含み得る。一部の実施形態では、フィラミン分析物は、フィラミンA分析物である。
【0253】
装置を用いて実施される方法において要求されるか、または所望される追加の品目が存在してもよく、追加の項目は、患者試料を得るための手段、例えば、シリンジ;ヘパリン、 Ficoll-Hypaque、溶解緩衝液、プロテアーゼ阻害剤等のような、患者由来試料の調製に必須の一つまたは複数の試薬;対象の装置を使用して対象の方法を行うための指示書;異常なレベルのフィラミン分析物を含む新生物疾患の存在を検出し、および/または特徴決定するために使用される追加の生化学アッセイ由来の一つまたは複数の試薬を含むが、これらに限定されない。
【0254】
多数のこうした装置が、当該技術分野で公知である。一つの非限定的な例では、装置は、少なくとも三つの領域、流体輸送領域、試料領域、および測定領域を有する、好適なフィルターまたは膜の連続的な流路を概して採用する。試料領域は、試料を受け取る前に、流路の他の部分と流体移動接触することを妨げる。試料領域が、試料を受け取った後、他の領域と流体移動関係に持ち込まれ、流体と接触した流体移動領域は、試薬溶液が、試料領域を通り、測定領域内に入ることを可能にする。測定領域は、それを第一の親和性試薬、ならびにアッセイされる試料および上述のように行われるサンドイッチアッセイと組み合わせた第二の標識された親和性試薬と結び付け得る。
【0255】
別の、フィラミン分析物に特異的に結合する、抗体、またはその断片もしくは模倣体などの親和性試薬に結合する表面に限定される例では、装置はディップスティックである。こうした例示的な装置では、ディップスティックは、ディップスティックに結合した親和性試薬へのフィラミン分析物の結合を可能にするのに十分な時間、対象由来の試料(例えば、血液、血清、または尿)に直接挿入される。次いで、ディップスティックは、抜去され、必要に応じて洗浄されて、非特異的に結合した物質を除去してもよい。次いで、ディップスティックは、フィラミン分析物に特異的に結合する、抗体、またはその断片もしくは模倣体などの検出可能に標識された第二の親和性試薬を含有する容器に挿入される。フィラミン分析物と親和性試薬の複合体への第二の抗体の結合に十分な時間インキュベーションした後、ディップスティックは、洗浄され、第二の親和性試薬の結合が、標準的な手段によって検出されてもよい。第二の抗体の検出に必要な場合、ディップスティックは、第二の抗体上の検出可能な標識を活性化する試薬を含有する第二の容器に挿入されてもよい。
【0256】
医薬組成物および治療方法
本開示の別の態様は、任意選択で、医薬的に許容される担体と組み合わせた、開示された抗体のいずれかを含む組成物を提供する。別の態様では、本開示の抗体は、任意選択で、一つまたは複数の有効な剤、薬物、他の抗体、またはホルモンと組み合わされる。
【0257】
本開示はまた、乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、結腸、胃、腎臓、肝臓、頭部、頸部、肺、血液、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺および脳、ならびにヒト乳房、卵巣、頭部、頸部、および脳、特に、ヒト乳房細胞の固形腫瘍などの、フィラミンAを発現する癌に罹患しているか、またはリスクがあるヒトまたは動物対象を治療する方法を提供し、方法は、対象に、治療有効量の本開示の抗体、または治療上有効量の本開示の抗体を含む医薬組成物を投与することを含む。本開示はまた、フィラミンAを発現する癌に罹患しているか、またはリスクがあるヒトまたは動物対象を治療する方法における本明細書において提供される抗体の使用;およびフィラミンAを発現する癌に罹患しているか、またはリスクがあるヒトまたは動物対象を治療するための医薬の製造における本明細書において提供される抗体の使用を提供する。さらに、本開示は、フィラミンAを発現する癌に罹患するか、またはリスクのあるヒトまたは動物対象を治療する方法における使用のための、本明細書において開示される抗体、および/または本明細書において開示される抗体を提供する。
【0258】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒト患者または対象を含む、治療を必要とする任意の対象を指す。
【0259】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、標的の疾患もしくは状態を治療するか、改善するか、もしくは予防するため、または検出可能な治療もしくは予防効果を示すために必要な治療剤の量を指す。
【0260】
任意の抗体について、治療有効用量は、まず、細胞培養アッセイにおいて、または通常齧歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、または霊長類における動物モデルのいずれかにおいて推定することができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。次いで、こうした情報を使用して、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0261】
ヒト対象の有効量は、疾患状態の重症度、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の回数および頻度、薬物併用、反応感受性および療法に対する抵抗性/応答に依存し得、日常的な実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。概して、有効用量は、約0.001mg/kg~約100mg/kg、または約0.01mg/kg~約50mg/kg、または約0.1mg/kg~約20mg/kg、または約1mg/kg~約15mg/kgであり得る。
【0262】
組成物は、患者に個別に投与することができ、または他の薬剤、薬物、抗体、またはホルモンと組み合わせて投与することができる。一部の態様によれば、抗体は、これらの薬剤と結合され得る。本開示の抗体が治療上使用され得る方法の概要は、補体細胞またはエフェクター細胞のいずれかによって媒介されるか、または抗腫瘍薬、毒素、および放射性核種に結合された抗体による直接細胞毒性を含む。したがって、本開示は、本開示の抗体を投与することを含む癌を治療する方法を提供し、抗体は、癌細胞を標的とし、ADCCおよび/またはCDCを誘導する。さらに、本開示は、標的治療薬に連結されたか、または結合された本開示の抗体を投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、細胞によって貪食され、これにより、フィラミンA発現細胞に標的治療薬を送達することができる。したがって、本開示は、医薬的に許容される担体中に本明細書において提供される抗体、ならびに医薬的に許容される担体において、治療剤に連結または結合されたコンジュゲートされる本明細書において提供される抗体を含む医薬組成物を提供する。抗体は、血液循環または骨髄から腫瘍細胞の生体外除去にも使用することができる。
【0263】
細胞傷害性タンパク質は、リシンA、シュードモナス毒素、ジフテリア毒素、および腫瘍壊死因子を含み得るが、これらに限定されない。診断用放射性核種および細胞傷害性放射性核種などの細胞傷害性薬剤、薬物およびタンパク質も、本開示の抗体に結合され得る。抗体に結合され、抗原のインビボ部位に選択的に送達され得る放射性核種の例は、特に212Bi、131I、186Re、および90Yを含む。放射性核種は、放射線療法の技術分野で公知である、細胞を局所的に照射することによってその細胞傷害性効果を発揮し、これにより、様々な細胞内病変をもたらし得る。抗体に結合され、その後インビボ療法に使用され得る細胞障害性薬物の例は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびマイトマイシンCを含むが、これらに限定されない。細胞傷害性薬物は、DNA、RNA、およびタンパク質合成を含む重要な細胞プロセスと干渉し得る。
【0264】
本開示の抗体分子が投与される用量は、治療されるべき状態の性質、および抗体分子が、予防的に使用されているか、または既存の状態を治療するために使用されているかどうかに依存する。予防的に、すなわちワクチンとして投与される場合、抗体は、対象において免疫応答を誘発するのに有効な量で投与される。
【0265】
抗体分子が、短い半減期(例えば、2~10時間)を有する場合、1日当たり1回または複数の用量を与えるのに必要であり得る。あるいは、抗体分子が、長い半減期(例えば、2~15日)を有する場合、1日1回、週1回、または1か月もしくは2か月に1回のみ投与することが必要であり得る。
【0266】
医薬組成物はまた、抗体の投与のための医薬的に許容される担体を含有し得る。担体は、それ自体、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を誘導するべきではなく、毒性であるべきではない。好適な担体は、当該技術分野で公知のものを含み、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、および不活性ウイルス粒子などの大型のゆっくりと代謝される巨大分子から選択され得るが、好適な担体は、これらの例に限定されない。
【0267】
一実施形態では、投与のための形態は、例えば、注射または注入による、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注射または注入用である場合、油性または水性ビークル中の懸濁液、溶液、またはエマルションの形態をとり得、懸濁剤、保存剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合剤を含有し得る。あるいは、抗体分子は、適切な無菌の液体を用いた使用前に再構成するための、乾燥形態であってもよい。
【0268】
一旦製剤化されると、本開示の組成物は、対象に直接投与され得る。治療されるべき対象は、動物またはヒトであり得る。
【0269】
本開示の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所的、舌下、膣内または直腸経路を含むが、これらに限定されない、任意の数の経路によって投与され得る。皮下噴霧器を使用して、本開示の医薬組成物を投与することができる。治療用組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製することができる。注射前の液体ビークル中の溶液または懸濁液に適した固体形態も調製され得る。
【0270】
組成物の直接送達は、概して、皮下、腹腔内、静脈内、もしくは筋肉内注射により達成されるか、または組織の間質腔に送達され得る。投与処置は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。
【0271】
抗体または抗体断片組成物が、消化管を使用した経路によって投与されるべきであるとき、組成物は、分解から抗体を保護するが、消化管から吸収されたら抗体を放出する追加の薬剤を含有し得る。こうした追加の薬剤は、当業者に周知である。
【0272】
本開示の抗体はまた、遺伝子療法を行う方法で投与され得る。これを達成するために、適切な発現成分の制御下で抗体分子の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列は、抗体鎖が核酸配列から発現され、その場で構築されるように、患者に導入される。例えば、細胞内抗体コンストラクトは、プラスミドコンストラクト(例えば、細胞内抗体発現をもたらすための真核生物のプロモーターを含むプラスミド)、ウイルスベースのコンストラクト(例えばレンチウイルスもしくはレトロウイルスベクター)、または非ウイルスベースの送達ビークル(例えば、脂質ベースまたはぴりまーベースの送達ビークル)として細胞内に送達されてもよい。細胞内抗体コンストラクトは、DNAまたはRNAとして送達されてもよい。あるいは、組み換え細胞内抗体タンパク質コンストラクトは、細胞膜膜透過ペプチドを有するタンパク質を介して、または化学的もしくは機械的送達システムを介して細胞に送達されてもよい。
【0273】
本開示の抗体はまた、免疫細胞を介してCAR形式で投与することができる。一部の実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含む医薬組成物を提供し、CARは、本明細書において提供されるフィラミンA結合ドメインを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞、または幹細胞)を含む。さらなる実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。したがって、一部の実施形態では、本開示は、細胞表面上でフィラミンAを発現する細胞にT細胞を標的化するCAR-T細胞を含む医薬組成物を提供する。
【実施例0274】
実施例1:ヒトキメラフィラミンA抗体の調製
モノクローナルマウスフィラミンA IgG1k抗体であるAHO1402を、95%BSAおよび5%抗体の溶液においてLife Technologies社から得た。BSAを除去し、抗体を精製するために、抗体を単離し、ゲル電気泳動で精製し、サイズで分離し、ゲルから切り出した。
【0275】
抗体を含むゲルスライスを、次いで、配列を再構築するための重複ペプチド配列解析により編集される配列情報を得るための高分解能MS/MSペプチド決定を利用する、データベース支援ショットガンシーケンシング(DASS)技術を利用した新規シーケンシングに供した。DASS法は、一般に、Creative Biolabsのウェブサイト(http://www.creative-biolabs.com/next-generation-antibody-sequencing.html)に記載される。
【0276】
次いで、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメイン用に構築したアミノ酸配列を、本発明者が選択したマウス定常領域配列およびヒト定常領域配列に付加した。特定のアミノ酸選択を、軽鎖CDR1の位置31で、ならびに重鎖CDR3の位置101および102で行った。様々な変異を示すアミノ酸配列を、上記表1Aにおいて提供する。
【0277】
次いで、これらのアミノ酸配列を、哺乳類細胞発現のためのコドン最適化を用いて逆翻訳した。再構成した遺伝子の核酸配列を、さらなる使用前に忠実性について確認し、次いで、発現ベクターにクローニングした。次いで、発現ベクター中のクローニングした遺伝子を、HEK293細胞に遺伝子導入し、組み換えmAbタンパク質を精製した。
【0278】
実施例2:scFvの調製および特徴決定
重鎖可変領域および軽鎖可変領域をscFvベクターシステムにサブクローニングして、二つの可能な配向、軽鎖-重鎖(VL-VHまたはvl-vh)および重鎖-軽鎖(VH-VLまたはvh-vl)でscFvを生成した。
【0279】
得られた単鎖抗体を、細胞の免疫蛍光染色、細胞運動性、増殖、アポトーシス、および機能的生物活性を評価する他のアッセイを含むアッセイで試験する。
【0280】
scFvを、診断検査および疾患、例えば、乳癌を治療する方法における使用のためにさらに評価する。
【0281】
実施例3:細胞運動アッセイ
細胞運動アッセイを、本開示の作製したmAb(マウス抗体B186、ヒトキメラ抗体B185、およびヒトキメラ抗体B411)の機能活性を探索する際に利用した。
【0282】
活性の根拠を、マウスとヒトキメラ抗体の両方を用いて得た。しかしながら、驚くべきことに、ヒトキメラmAbは、マウスmAbよりも強い生物活性を示した。効果はまた、コラーゲン被覆表面よりもフィブロネクチン被覆組織培養表面でより顕著であった。
【0283】
細胞運動アッセイは、http://www.platypustech.com/discoverAssay.htmlで一般的に記載される、Platypus Technologies ORIS(商標)細胞遊走アッセイプラットフォームを利用した。
【0284】
3D反復を含むこうした運動アッセイは、癌細胞の浸潤性および悪性と相関していると認識され、したがって、癌転移および他の活性の代替である。
【0285】
具体的には、本開示のフィラミンA抗体を、三重被覆96ウェルプレート(Platypus # CMATR1.101)を使用したORIS(商標)細胞遊走アッセイにおいて評価した。細胞を約50,000細胞/ウェルで播種した。HEK-293細胞の場合、DMEMにおいて、MDA-MB-231細胞の場合、10%のFBSを含有するL-15において、細胞を37℃、CO2なしで一晩インキュベートした。細胞増殖チャンバを覆うストッパーを、ORIS(商標)ストッパーツールを使用して取り除き、成長培地を取り除き、ウェルを無菌PBS100マイクロリットルでやさしく洗浄した。染色工程が、遊走前の対照としての役目を果たすまで、参照ウェル内にストッパーを定位置に置いた。洗浄後、特定の処理を含有する新鮮培養培地の体積100マイクロリットルを各ウェルに加えた。次いで、細胞を一晩インキュベートさせた。インキュベーション期間の終了時に、細胞をカルセインAMで30分間蛍光染色した。次いで、蛍光を、検出マスクを定位置に置いたマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0286】
図1および
図2は、各状態についての検出ゾーンに存在する相対蛍光単位(RFU)を示す(平均±標準偏差、n=2ウェル/状態)。
【0287】
細胞を含有するウェルは、三つの形態:コラーゲンで被覆、フィブロネクチンで被覆、または組織培養(TC)処理で存在した。
【0288】
ウェル処理は、以下の通りであった:抗体対照なし、マウス抗体(mAb FLNA 1mcg/ml)、マウス抗体(mAb FLNA 20mcg/ml)、ヒトキメラ抗体(hAb FLNA 1mcg/ml)、ヒトキメラ抗体(hAb FLNA 20mcg/ml)、アピシン(100nM)、サイトカラシンB(30マイクロモル);
図1を参照。RFU数の増加は、細胞運動性の増加と相関する。
【0289】
細胞運動アッセイの結果
細胞遊走は、コラーゲンまたはフィブロネクチンで被覆したウェルにおいて最大であった。組織培養処理ウェルに関して、細胞骨格線維の相互作用を中断することが知られており、したがって運動性を阻害すると予想される、サイトカラシンBを除き、処理全体に渡って効果はほとんどないようである。
【0290】
TC表面上の抗体処理に対する応答の明らかな欠如は、おそらく、細胞接着を補助し、細胞シグナル伝達およびプロセス、ならびに遊走に影響を与えることが知られている、コラーゲンまたはフィブロネクチンなどの細胞外タンパク質の欠如によるものである。抗体は、毒性であるとは予想されず、したがって、毒性成分はない。したがって、細胞は遊走し、フィラミンA抗体によって影響を受けない。
図2を参照のこと。
【0291】
フィブロネクチンおよびコラーゲン被覆ウェル内では、細胞遊走は、より低濃度の抗体(すなわち、1μg/mL対20μg/mL)で最も少ない。
【0292】
コラーゲン被覆ウェル中のマウス抗体は、判定時点で大きな差異をもたらさなかった。しかしながら、ヒトキメラ抗体は、コラーゲン被覆ウェルにおける細胞運動性に対する阻害効果を示した。
図1および
図2を参照のこと。
【0293】
フィブロネクチンについて、マウスおよびヒトキメラ抗体の両方を用いた細胞運動の減少が、より低い濃度(1μg/mL)で存在する。しかしながら、ヒトキメラ抗体は、マウス抗体よりも実質的に低いレベルの細胞運動性をもたらすと見ることができる。実際に、ヒトキメラ抗体は、マウス抗体と比較して、細胞の運動性の阻害においてほぼ100%の差異、すなわち、マウス抗体については191.34RFU、ヒトキメラ抗体については106.26RFUを示した。
図1および
図2を参照のこと。
【0294】
1検査当たり2点のみの場合、コラーゲンまたはフィブロネクチンによって増強された細胞拡大および運動性に対するモノクローナル抗体の効果を示す傾向が見られる。
【0295】
図2に見られる全体的な傾向は、ヒトキメラ抗フィラミンA抗体が、マウスフィラミンA抗体と比較して優れた結果をもたらすことである。
【0296】
1μg/mL濃度では、ヒトキメラmAbは、コラーゲンとフィブロネクチン処理ウェルの両方で細胞遊走の減少をもたらした。これは、コラーゲン処理ウェルにおける細胞遊走の減少につながらず、特定の終点読取りでのヒトキメラmAbと比較して、フィブロネクチン処理ウェルにおける低減の喪失につながる、マウスmAbとは対照的である。
【0297】
より高い抗体濃度における効果の欠如の原因は不明であるが、価数相互作用によって説明し得る。より低い抗体濃度で、単一の抗体分子が、細胞表面またはプレート表面で二つのフィラミンA分子を架橋し、結合することができる可能性がより高い。より高い抗体濃度で、全ての結合部位を、1個の抗体当たり一つのフィラミンA結合のみを有する別個の抗体によって取り込んでもよく、そのため架橋結合は生じない。したがって、架橋結合は、フィラミンA運動機能に干渉し得る。これは、投与の最適条件を示唆する。
【0298】
実施例4:免疫蛍光(IF)アッセイ
MDA-MB-231乳癌細胞株を用いた免疫蛍光アッセイを使用して、フィラミンA
mAbの特徴決定を行った。これは、Life Technologies AHO1402 mAbの選択をもたらしたマウスを免疫化する抗原調製物を生成する際に利用する細胞株である。比較のため、AHO1402 mAbおよび別の市販のmAbであるTI10(Millipore MAB1680-C)を同時にアッセイした。TI10およびAHO1402 mAbが、細胞上の異なる染色パターンをもたらし、これが、異なる形態のフィラミンAタンパク質を認識することを示していることが、既にしめされた(Alperら、2009年)。
【0299】
本開示のマウスとヒトキメラ抗体の両方は、p280またはクローン209#13としても知られる、市販のAHO1402で観察したものと類似する点状染色パターンをもたらした。TI10の染色パターンは異なり、細胞質の一般的な染色を明らかにした。この結果に基づき、マウスmAbおよびヒトキメラmAbの結合は、AHO1402 mAbの結合と類似したと結論付けた。
【0300】
免疫蛍光アッセイで利用し一次抗体は、以下の通りであった:
抗フィラミンA、クローンTI10(Millipore,p/n MAB1680-C)
抗フィラミンA、クローン209#13(Life Technologies社、p/n AHO1402)
抗フィラミンA、マウスmAb
抗フィラミンA、ヒトキメラmAb
抗ベータアクチン、ウサギポリクローナル(Rockland、p/n 600-401-886S)。
【0301】
免疫蛍光染色の二つの主要な方法を利用した。第一の方法は、Alperら、2009年において記載される、 固定剤としてのメタノールおよび透過化剤として0.2%トリトンを用いた単一染色または二重染色を含む。第二の方法は、固定剤として2%パラホルムアルデヒドおよび透過化剤として0.2%トリトンを用いた二重染色技術を利用する。
【0302】
一次抗体を、濃度1.25mcg/mlで、室温で1時間、固定および透過処理した細胞と共にインキュベートした。一つまたは複数の洗浄工程後、二次抗体を、室温で1時間、細胞とインキュベートした。対応する濃度を使用したアッセイで利用した二次抗体は、以下の通りである:
1.25μg/ml抗マウスIgG(H&L)(ロバ) DYLIGHT(商標)4885.0μg/mL抗ヒトIgG(H&L)(ロバ)フルオレセイン
1.25μg/ml F(ab’)2 抗ウサギIgG[H&L](ロバ)ローダミン。
【0303】
メタノールおよびトリトン固定/透過技術を用いた第一の方法を利用することは、細胞の完全性を有意に損ない、DAPI染色を核から漏出させる、
図3~18を参照のこと。第一の方法を利用することにより、Alperら、2009年によって記載される染色パターンと一致する、クローンTI10(
図3、11、および12)ならびにAHO1402(
図4、13、および14)における点状染色パターンが明らかになる。
【0304】
同じ方法を使用しながら、マウス(
図5、15、および16)およびヒトキメラ(
図6、17、および18)モノクローナル抗体は、前述の抗体に見られる点状染色パターンを再現した。
【0305】
したがって、マウスmAbおよび開発したヒトキメラmAbは、前述のAHO1402抗体と類似の形態のフィラミンAに結合するように思われる。
【0306】
ベータ-アクチン染色(
図7)は、二次抗体単独によって生成されるバックグラウンド蛍光と異なるとは思えず、
図8~10を参照のこと。
【0307】
パラホルムアルデヒドおよびトリトン固定/透過技術を用いた第二の方法を利用することは、第一の方法によって観察されるDAPI漏出およびそうでなければ再現された染色パターンをもたらさず、
図19~27を参照のこと。
【0308】
実施例5:本開示の抗体のさらなる特徴決定
本開示の抗体を、免疫組織化学、ELISA、および生検組織試料(例えば、腫瘍試料、血液、または血液由来画分、尿など)上の抗体を利用する他の診断方法を含む診断方法において、疾患の診断において利用される能力について評価する。
【0309】
本開示の抗体は、ELISA、免疫ブロッティング技術、細胞染色(例えば、免疫蛍光、フローサイトメトリー)、免疫組織化学での抗体の特徴決定におけるさらなる解析の対象にする。細胞ベースのアッセイは、細胞運動、細胞増殖、アポトーシス、および様々な細胞シグナル伝達アッセイに対する効果の評価を含む。
【0310】
本開示は、運動アッセイにさらに利用する多数の細胞タイプを提供する。本開示の抗体の特徴決定は、細胞外基質に見出され得る様々なタンパク質付加物用いた、または用いない3D MATRIGELアッセイにおける運動性の解析を含む。コラーゲンおよびフィブロネクチンに加えて、これらには、とりわけ、フィラミンA、プラスミン、ラミニン、ケラチン、エラスチン、プロテオグリカン、コンドロイチン、インテグリンなどの分子を含むが、これらに限定されない。追加の分子は、プロテアーゼ、ならびにとりわけ、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、キモトリプシン、マトリクスメタロプロテイナーゼなどの他の因子を含み得る。
【0311】
加えて、さらなるアッセイを、追加の細胞株および組織、抗体滴定、抗体誘導体(例えば、抗体と薬物の結合体、scFv、および他の抗体フォーマット)を用いた細胞運動性アッセイとの関連で行う。
【0312】
実施例6.B411v.シェルフ試薬を用いて行った追加研究
追加の細胞アッセイを、B411抗体ならびに乳癌細胞株MDA-MB-231およびSKBR3を使用して行った。具体的には、フィラミンA抗体B411を、三重被覆96ウェルプレート(Platypus # CMATR1.101)を使用したORIS(商標)細胞遊走アッセイにおいて評価した。細胞を、約25,000または50,000細胞/ウェルで播種した。SKBR3細胞の場合、McCoy’sにおいて、細胞を37℃、CO2でMDA-MB-231細胞の場合、10%のFBSを含有するL-15において、細胞をCO2なしで一晩インキュベートした。細胞増殖および遊走ゾーンを覆うストッパーを、ORIS(商標)ストッパーツールを使用して取り除き、成長培地を取り除き、ウェルを無菌PBS100マイクロリットルでやさしく洗浄した。染色工程が、遊走なしの対照としての役目を果たすまで、参照ウェル内にストッパーを定位置に置いた。洗浄後、特定の処理を含有する新鮮培養培地の体積100マイクロリットルを各ウェルに加えた。次いで、細胞を一晩インキュベートさせた。インキュベーション期間の終了時に、細胞を以下の通り蛍光染色した:
・ 残りの培地をウェルから慎重に取り出し、PBS100μLで洗浄する。PBSを除去する。
・ 各ウェルに1×カルセインAM(eBioscience、65-0853-78)溶液100μLを加える。
・ プレートを37℃で30分間インキュベートする。次いで、蛍光を、検出マスクを定位置に置いたマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
・ カルセインAMを慎重に除去し、PBS100μLで洗浄する。PBSを除去する。
・ ヨウ化プロピジウム(死細胞検出用)およびヘキスト33342(アポトーシス細胞検出用)を含有するPBS100μL(それぞれ、1:3,000および1:4,000希釈)を各ウェルに加える。室温で5~10分間インキュベートする。
・ 代表的なウェルの蛍光画像(青色、緑色、赤色のチャネル)を5×倍率で撮影する。
【0313】
図32に見られるように、抗フィラミンA B411抗体で処理したMDA-MB-231乳癌細胞上のヘキスト33342染色(青色)の増加が存在し、これは、アポトーシス様表現型を有する細胞の増加を示唆する(ヘキスト33342染色は、正常細胞中のクロマチンよりもアポトーシス細胞中に凝縮されたクロマチンを明るく染色する)。さらに、カルセインAM染色(緑色)には、非常に強く染色された細胞および全く染色されていない細胞を伴うものがあり、抗フィラミンA抗体処理での代謝活性の有意な変化を示唆する。死細胞を、ヨウ化プロピジウム(赤色)による核の染色によって同定する。
【0314】
実施例7.フィラミンA特異的細胞内抗体
フィラミンA抗原に特異的な細胞内抗体を作製し、細胞内抗体の発現および機能性を試験するための実験を行う。細胞内抗体コンストラクトは、細胞株(例えば、MDA-MB-231、HEK392、HeLa、または他の細胞株)において一過性に発現する。遺伝子導入した細胞を評価して、ウェスタンブロッティングを介して抗体(例えば、scFv)の発現を確認する。例えば、タグ付けした細胞内抗体について、scFv発現を、タグを介して(例えば、抗Hisまたは抗GSTタグ抗体を使用して)または抗scFv抗体もしくは他の抗細胞内抗体コンストラクト抗体を介して確認してもよい。あるいはまたは加えて、免疫蛍光アッセイを使用して、scFv発現を確認する(例えば、抗Hisタグ、抗GST、抗scFv、または他の細胞内抗体コンストラクト抗体での染色および検出による)。
【0315】
細胞表現および代謝の差を、遺伝子導入した細胞においてモニターし、遺伝子導入していない細胞と比較するか、または抗フィラミンA抗体断片(例えば、抗体成分を有さないGST融合パートナー)を有さないベクターなどの無関係なコンストラクトで遺伝子導入した細胞と比較する。細胞表現および代謝の評価は、例えば、非限定的に、細胞内抗体、融合パートナー、および/または細胞マーカーの発現をモニターするか、または指示する細胞形態、増殖速度、接着、遊走、生/死細胞数および比、代謝速度、ウェスタンブロットおよび/または免疫組織化学、ならびにフローサイトメトリーを含む。
【0316】
細胞内抗体発現、機能性、および有効性も、インビボで試験する。例えば、免疫不全マウスに癌細胞を(例えば、腹腔内、皮下、または同所性に)接種する、癌の異種移植片モデルを利用してもよい。腫瘍の成長をモニターし、腫瘍の発生の前または後に、潜在的な治療細胞内抗体または診断細胞内抗体を投与する。例えば、乳癌の同所性モデルでは、抗フィラミンA抗原細胞内抗体の投与または細胞内発現の前、または同時に、癌細胞を、免疫不全マウスの鼠径部乳腺脂肪パッドに移植する。例えば、抗フィラミンA細胞内抗体コンストラクトを、プラスミド、ウイルスベースまたは非ウイルスベースの送達ビークルを介して細胞内発現のため乳癌細胞に送達してもよい。一部の実施形態では、抗フィラミンA細胞内抗体コンストラクトを、細胞膜透過ペプチドを介して乳癌細胞にタンパク質として送達してもよい。ベクター対照、または無関係な細胞内抗体を投与した対照動物と比較して、抗フィラミンA細胞内抗体の存在の腫瘍成長に対する効果を測定する。研究の結果は、抗フィラミンA細胞内抗体の投与および細胞内発現が、癌の異種移植片モデルにおいて、腫瘍体積を低減するか、または腫瘍の成長を遅らせるか、または腫瘍の発生を妨げることを示す。
【0317】
実施例8.細胞生存率アッセイ
抗体B411とのインキュベーション後の細胞生存を評価するための試験を行った。DU145(ヒト前立腺癌細胞株)およびHEK293A(ヒト胚性腎細胞株)細胞を、96ウェルプレート(104細胞/ウェル)に播種し、37℃で4時間インキュベートした。B411(エンドトキシン除去、1.2EU/mL)1μgまたは10μgを、ウェルに加え、24時間または48時間インキュベートした。両方の細胞タイプについての未処理群も含めた。CellCountzEZ(商標)細胞生存アッセイキットを使用して、細胞生存を検出し、OD412をOD650を参照して読み取ることによって結果を決定した。
【0318】
研究の結果を、
図33において提供し、B411が、DU145(癌)細胞増殖を阻害したことを示した。用量1μgで、B411は、DU145の無処理群と比較したとき、24時間でDU145細胞成長の増殖に対する有意な阻害効果を示した(*p<0.01)が、48時間での統計上有意な効果はなかった。B411の用量1μgは、いずれの時点でもHEK293A細胞株に対する効果を有さなかった(24時間または48時間)。用量10μgで、B411は、DU145の無処理群と比較したとき、24時間および48時間の両方の時点でDU145の増殖に対する有意な阻害効果を示した。HEK293細胞増殖の阻害も、10μgで観察した。
【0319】
24時間および48時間におけるDU145のB411による阻害の比率は、それぞれ、7.8%および14.6%であり、両方とも有意であった(*p<0.01)。24時間および48時間におけるHEK293の阻害の比率は、9.3%および17.7%であり、また有意であった(*p<0.01)。
【0320】
実施例9.フィラミンA細胞内抗体は、癌細胞におけるFLNAタンパク質レベルを低減し、癌細胞増殖を低減する
単一ベクターにおいて二つの遺伝子を同時発現させるための二色性レンチウイルスベクターを使用して、細胞内抗体を作製した。ベクターを、LV-EF-intrabodyFLNA/Histag-IRES-GFPと指定した。ベクターを細胞に送達するとき、第一の遺伝子産物である細胞内抗体FLNAを、EFプロモーターによって駆動させ、IRESは、第二の遺伝子産物であるGFPの翻訳を開始する。種々の癌細胞タイプに対する例示的なフィラミンA細胞内抗体の効果を評価するための研究を行った。GFPレポーター遺伝子を含む二つのレンチウイルスベクターFLNA細胞内抗体コンストラクトを試験した:LV-FLNA_1-GFPは、VH-VL配向でB411の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、LV-FLNA_2-GFPは、逆の配向であるVL-VHでB411の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。GFP発現レンチウイルス対照ベクター(LV-GFP)も、研究に使用した。
【0321】
肺癌
【0322】
A549(肺癌細胞株)細胞を、リポフェクタミン3000を使用して、DNA(LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFP)1μgで遺伝子導入するか、または偽遺伝子導入した。遺伝子導入の72時間後に細胞を回収し、生細胞解析および死細胞解析のため、それそれ、カルセイン-ディープ-レッドまたはEthD-1で染色した。細胞生存率をフローサイトメトリーにより評価した。
【0323】
細胞生存率アッセイの結果を、
図34~38に提供する。
図34A~Eは、遺伝子導入の72時間後に遺伝子導入した細胞におけるGFP発現を示す。
図34Aは、偽遺伝子導入した細胞においてGFP発現を示さない。
図34B、C、およびDは、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞におけるGFPを示す。
図34Eは、
図34A~Dにおけるヒストグラムの上書きである。
【0324】
図35A~Fは、遺伝子導入の72時間後のGFPゲート化細胞の生細胞解析を示す。
図35AおよびBは、無染色対照(
図35A)および陽性対照細胞(カルセインディープレッド(CDR)生細胞染色)(
図35B)を示す。
図35C、D、およびEは、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFPでの遺伝子導入の72時間後のGFP陽性細胞におけるCDR陽性染色を示す。
図35Fは、
図35C、D、およびEの生細胞解析のヒストグラムの上書きである。
図36は、GFP陽性細胞集団におけるCDR陽性(生)細胞の総数を示す。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、生細胞数を有意に低減した(p<0.0001)。
【0325】
図37A~Eは、遺伝子導入の72時間後のGFPゲート化細胞の死細胞解析を示す。
図37AおよびBは、無染色対照(
図37A)および陽性対照細胞(EthD-1死細胞染色)(
図37B)を示す。
図37C、D、およびEは、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFPでの遺伝子導入の72時間後のGFP陽性細胞におけるEthD-1染色を示す。
図38Aは、
図37C、D、およびEの死細胞解析のヒストグラムの上書きである。
図38Bは、GFP陽性細胞集団におけるEthD-1陽性(死)細胞の総数を示す。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、LV対照と比較して死細胞の数を有意に増加させた(それぞれ、p<0.005およびp<0.0001)。LV-FLNA_2-GFPは、LV対照とLV-FLNA_1-GFPの両方と比較して死細胞の数を有意に増加させた(p<0.0001)。
【0326】
細胞増殖アッセイについて、DNA2.5μgを、リポフェクタミン3000を使用した6ウェルプレートの各ウェルのA549細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入の72時間後に細胞を回収し、EdU試薬と共に2時間インキュベートした。EdU試薬と接触していない細胞は、陰性対照として役立った。増殖をフローサイトメトリーにより評価した。
【0327】
増殖アッセイの結果を、
図39に提供する。
図39Aは、無染色対照である。
図39Bは、ベクター対照で遺伝子導入した細胞の増殖を示す。
図39Cおよび39Dは、それぞれ、LV-FLNA_1-GFPおよびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞の増殖を示す。
図39Eは、各群におけるパーセントEdU陽性(増殖)細胞を示すグラフである。LV-FLNA_2-GFPは、LV-GFPと比較してA549細胞の増殖を有意に低減した(p<0.0001)。
【0328】
顕微鏡研究のため、DNA2.5μgを、リポフェクタミン3000を使用して6ウェルプレートの各ウェルのA549細胞に遺伝子導入し、細胞を、共焦点顕微鏡を使用して遺伝子導入の24時間後に撮像した。
図40は、結果を提供する。
図40A1、B1、およびC1は、それぞれ、LV-GFPで遺伝子導入した細胞、LV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞、およびLV-FLNA_1-GFPで遺伝子導入した細胞の蛍光画像を示す。
図40A2、B2、およびC2は、それぞれ、LV-GFPで遺伝子導入した細胞、LV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞、およびLV-FLNA_1-GFPで遺伝子導入した細胞の明視野画像を示す。
図40D1および40D2は、それぞれ、
図40C1および40C2における選択した視野(白色の三角形)の拡大視野を示す。
図40D3は、
図40D1および40D2の混合視野である。白色の矢印は、A549細胞におけるFLNAのGFPとの共発現を示唆する。
【0329】
さらに、A549細胞におけるFLNA細胞内抗体処理の効果を非癌MRC-5細胞と比較するための試験をさらに行った。DNA2.5μgを、リポフェクタミン3000を使用して6ウェルプレートの各ウェルのA549細胞に遺伝子導入し、細胞を、共焦点顕微鏡を使用して遺伝子導入の72時間後に撮像した。
図41は、結果を提供する。LV-FLNA_2-GFPで処理したA549細胞(
図41A2)において目に見える細胞死があったが、対照LV-GFPで処理したA549細胞においてはなかった(
図41A1)。対照的に、LV-FLNA_2-GFPで処理したMRC-5細胞において目に見える細胞死はなかった(
図41B2)。研究の結果は、FLNA細胞内抗体処置によって誘発された細胞死が、癌細胞に特異的であることを示す。
【0330】
神経膠芽腫
【0331】
U87MG(神経膠芽腫細胞株)細胞を、リポフェクタミン3000を使用して、12ウェルプレートにおいてDNA(LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFP)1μgで遺伝子導入するか、または偽遺伝子導入した。遺伝子導入の72時間後に細胞を回収し、生細胞解析および死細胞解析のため、それそれ、カルセイン-ディープ-レッドまたはEthD-1で染色した。細胞生存率をフローサイトメトリーにより評価した。
【0332】
細胞生存率アッセイの結果を、
図42~44に提供する。
図42において、左列は、LV-GFP(上部)、LV-FLNA_1-GFP(中央)、およびLV-FLNA_2-GFP(下部)で遺伝子導入した細胞における生細胞数を示す。中央の列は、LV-GFP(上部)、LV-FLNA_1-GFP(中央)、およびLV-FLNA_2-GFP(下部)で遺伝子導入した細胞における死細胞数を示す。右の列は、LV-GFP(上部)、LV-FLNA_1-GFP(中央)、およびLV-FLNA_2-GFP(下部)で遺伝子導入した細胞における生/死細胞数(カラム1および2の混合)を示す。この研究は、FLNA細胞内抗体でのU87MG細胞の遺伝子導入の際の生細胞から死細胞へのシフトを示す。
【0333】
図43Aおよび43Bは、遺伝子導入の72時間後の生細胞解析を示す。
図43Aは、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞の生細胞解析染色のヒストグラム上書きである。
図43Bは、CDR陽性(生)細胞の総数を示す。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、生細胞数を有意に低減した(p<0.0001)。
【0334】
図44Aおよび44Bは、遺伝子導入の72時間後のGFPゲート化細胞の死細胞解析を示す。
図44Aは、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞の死細胞解析染色のヒストグラム上書きである。
図44Bは、EthD-1陽性(死)細胞の総数を示す。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、LV対照と比較して死細胞の数を有意に増加させた(それぞれ、p<0.005およびp<0.0001)。
【0335】
神経膠芽腫細胞株と非癌HBEC-5i細胞の間でのFLNA細胞内抗体処理の効果を比較するための試験を行った。結果を、
図45に提供する。遺伝子導入の72時間後、FLNA細胞内抗体処理は、LN229細胞(神経膠芽腫細胞株;
図45A)において細胞死をもたらしたが、HBEC-5i細胞(非癌細胞株;
図45B)ではもたらさなかった。研究の結果は、FLNA細胞内抗体処置によって誘発された細胞死が、癌細胞に特異的であることを示した。
【0336】
顕微鏡研究のため、DNA2.5μgを、リポフェクタミン3000を使用して6ウェルプレートの各ウェルのU87MG細胞に遺伝子導入し、細胞を、共焦点顕微鏡を使用して遺伝子導入の24および72時間後に撮像した。
図46および
図47は、結果を提供する。
図46A1、B1、およびC1は、遺伝子導入の24時間後の、それぞれ、LV-GFPで遺伝子導入した、LV-FLNA_1-GFPで遺伝子導入した、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入したU87MG細胞の蛍光画像を示す。
図46A2、B2、およびC2は、遺伝子導入の24時間後の、それぞれ、LV-GFPで遺伝子導入した、LV-FLNA_1-GFPで遺伝子導入した、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入したU87MG細胞の明視野画像を示す。
図47Aおよび47Bは、遺伝子導入の72時間後のLV-GFPで遺伝子導入したU87MG細胞の蛍光および明視野画像を示す。
図47Cおよび47Dは、遺伝子導入の72時間後のLV-FLNA_1-GFPで遺伝子導入したU87MG細胞の蛍光および明視野画像を示し、
図47Eおよび47Fは、遺伝子導入の72時間後のLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入したU87MG細胞の蛍光および明視野画像を示す。同様に、
図48A~Fは、72時間での、LV-GFP(
図48A、48B)、LV-FLNA_1-GFPで遺伝子導入した(
図48C、48D)、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した(
図48E、48F)細胞の明視野画像を示す。画像は、72時間での、LV-FLNA_1-GFPおよびLV-FLNA_2-GFP処理が、細胞接着の喪失およびU87MG神経膠芽腫細胞の死をもたらしたことが示される。
【0337】
免疫細胞化学(ICC)によってFLNA細胞内抗体で処理したU87MG細胞におけるFLNA。細胞をチャンバースライドに播種し、遺伝子導入の72時間後に4%ホルムアルデヒドで固定した。次いで、PBS中の0.5%のトリトンX-100を使用して細胞を透過させた。PBS中の5%BSAを使用して、室温で1時間、ブロッキングを行った。抗フィラミン一次抗体インキュベーションを、4℃で一晩行い、二次抗体インキュベーションを、室温で1時間行った。細胞も核DAPI染色で染色した。結果を、
図49に提供する。FLNA細胞内抗体で処理したU87MG細胞は、遺伝子導入の72時間後にFLNAタンパク質の破損を示す。
【0338】
図50は、細胞内抗体上のHisタグおよびGFPについての免疫細胞化学(ICC)染色による、LV-FLNA_2細胞内抗体で遺伝子導入したU87MG細胞におけるFLNA scFvの解析を示す。
図50の最上の行は、抗His(第一パネル)、抗GFP(第二パネル)、DAPI染色(第三パネル)、およびFLNA細胞内抗体とGFPの共発現を示す混合画像を示す。
図50の下部の行は、LV-GFP対照を示す。データは、FLNA細胞内抗体が、GFPと共発現していることを示す(白色の矢印を参照)。
【0339】
前立腺癌
【0340】
細胞生存率アッセイも、FLNA細胞内抗体で処理したDU145(前立腺癌細胞株)細胞でも行った。DU145細胞を、リポフェクタミン3000を使用して、DNA(LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFP)0.5μgで遺伝子導入するか、または偽遺伝子導入した。遺伝子導入の72時間後に細胞を回収し、生細胞解析および死細胞解析のため、それそれ、カルセイン-ディープ-レッドまたはEthD-1で染色した。細胞生存率をフローサイトメトリーにより評価した。
【0341】
細胞生存率アッセイの結果を、
図51~55に提供する。
図51A~Eは、遺伝子導入の72時間後に遺伝子導入した細胞におけるGFP発現を示す。
図51Aは、偽遺伝子導入した細胞においてGFP発現を示さない。
図51B、C、およびDは、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入した細胞におけるGFPを示す。
図51Eは、
図51A~Dにおけるヒストグラムの上書きである。
【0342】
図52A~Cは、遺伝子導入の72時間後のGFPゲート化DU145細胞の生細胞解析を示す。LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFPでの遺伝子導入の72時間後のGFP陽性細胞におけるCDR陽性染色を、それぞれ、
図52A、52B、および52Cに示す。
図53Aは、
図52A~Cの生細胞解析のヒストグラムの上書きである。
図53Bは、GFP陽性細胞集団におけるCDR陽性(生)細胞の総数を示す。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、LV-GFP遺伝子導入と比較して生DU145細胞の数を有意に低減した(それぞれ、p<0.0005およびp<0.0001)。
【0343】
図54A~Cは、遺伝子導入の72時間後のGFPゲート化DU145細胞の死細胞解析を示す。LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFPでの遺伝子導入の72時間後のEthD-1陽性染色を、それぞれ、
図54A、54B、および54Cに示す。
図55Aは、
図54A~Cの死細胞解析のヒストグラムの上書きである。
図55Bは、GFP陽性細胞集団におけるEthD-1陽性(死)細胞の総数を示す。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、LV対照と比較して死細胞の数を有意に増加させた(それぞれ、p<0.05およびp<0.0001)。
【0344】
乳癌
【0345】
MDA-MB-231(乳癌細胞株)細胞を、リポフェクタミン3000を使用して、DNA(LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFP)2.5μgで遺伝子導入するか、または偽遺伝子導入した。細胞増殖および顕微鏡研究のため、遺伝子導入の72時間後に、細胞を回収した。細胞増殖アッセイのため、遺伝子導入の72時間後に、細胞を回収し、EdU試薬と共に2時間インキュベートした。EdU試薬と接触していない細胞は、陰性対照として役立った。増殖をフローサイトメトリーにより評価した。
【0346】
MDA-MB-231細胞の遺伝子導入の72時間後のGFP発現を、
図56に提供する。
図56Aは、偽遺伝子導入である。
図56Bは、LV-GFP対照で遺伝子導入したMDA-MB-231細胞の増殖を示す。
図56Cおよび56Dは、それぞれ、LV-FLNA_1-GFPおよびLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入したMDA-MB-231細胞の増殖を示す。
図56Eは、
図56A~Dにおけるデータのヒストグラムの上書きである。
図57は、遺伝子導入の72時間後のGFPゲート化細胞におけるEdU染色により測定した増殖を示す。
図57Aは、無染色対照である。
図57B、57C、および57Dは、それぞれ、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFPでの遺伝子導入の72時間後のGFP+細胞におけるEdU染色を示す。
図57Eは、増殖研究のグラフィカル表現である。LV-FLNA_1-GFPとLV-FLNA_2-GFPの両方が、LV-GFPと比較してMDA-MB-231細胞の増殖を有意に低減した(それぞれ、p< 0.001およびp<0.0001)。
【0347】
顕微鏡研究について、共焦点顕微鏡を使用して、遺伝子導入の24時間後に細胞を撮像した。
図58は、結果を提供する。GFPは、全ての三つの群すべてについて24時間でMDA-MB-231細胞において発現した。
【0348】
MDA-MB-231細胞の細胞内抗体処理後のFLNAタンパク質レベルを、ウェスタンブロットにより評価した。細胞を遺伝子導入の48時間後に溶解し、1試料当たりタンパク質35μgを、SDS-PAGEに供した。一次抗フィラミンA抗体を、1:500に希釈し、抗GAPDH抗体を、1:3000に希釈した。フィラミンA検出のための二次抗体は、1:1000に希釈したHRP結合ロバ抗マウスであった。GAPDHについての二次抗体は、1:1000に希釈した、HRP結合ヤギ抗ラットであった。研究の結果を、
図59に提供する。FLNA細胞内抗体での処理は、MDA-MB-231細胞における減少したFLNAタンパク質レベルをもたらした。
【0349】
実施例10.毒性研究
正常なヒト星状細胞(N7805100)を24ウェルプレートに播種し、LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、またはLV-FLNA_2-GFPで遺伝子導入するか、または偽遺伝子導入した。溶解対照群および陰性対照群も含んだ。遺伝子導入の24時間後、フローサイトメトリーのため細胞を回収して、遺伝子導入効率を解析した。遺伝子導入の72時間後、異なるウェルからの細胞を使用して、LDH細胞障害性アッセイを行った。
【0350】
研究の結果を、
図60~62に提供する。
図60A~Eは、遺伝子導入の24時間後の正常なヒト星状細胞におけるGFP発現を確認する。
図61A~Cは、遺伝子導入の24時間後の正常なヒト星状細胞の顕微鏡的解析を提供する。GFP発現を、全三つの群:LV-GFP、LV-FLNA_1-GFP、およびLV-FLNA_2-GFPにおいて観察した。
図62は、LDH細胞障害性アッセイの結果を提供する。パーセント細胞傷害を、市販のキットプロトコール(ThermoFisher社、88954)を使用して計算した。正常細胞では、%細胞傷害性は低く、群間での%細胞傷害性に差異はなかった。
【0351】
実施例11.癌細胞上でのB411表面染色
いくつかの異なる細胞タイプでB411表面染色を行った。細胞を、1ウェル当たり50万個~100万個の細胞の濃度で播種し、一晩インキュベートした。次いで、細胞をウェルから持ち上げ、洗浄し、氷上で1時間、一次抗体2μgを含むフローサイトメトリー培地中に再懸濁した。細胞を洗浄し、二次抗体(5μg/ml)と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を再び洗浄し、フローサイトメトリーにより解析した。
【0352】
図63は、SKNAS(ヒトニューロブラストーマ)細胞株の結果を提供する。左のパネルは、B411についての陽性染色、およびアイソタイプ対照についての陰性染色、一次抗体対照なし、ならびに無染色細胞を示すヒストグラムである。右の二つのパネルは、各群における陽性細胞の%(上部)および各群における陽性細胞の総数(下部)を示す。
【0353】
図64は、SKBR3(乳腺癌)細胞株の結果を提供する。左のパネルは、B411についてのいくつかの陽性染色、ならびに一次抗体対照なし、および無染色細胞についての陰性染色を示すヒストグラムである。右の二つのパネルは、各群における陽性細胞の%(上部)および各群における陽性細胞の総数(下部)を示す。
【0354】
図65は、HeLa細胞(卵巣癌)の結果を提供する。左のパネルは、B411についての陽性染色、ならびに一次抗体対照なし、および無染色細胞についての陰性染色を示すヒストグラムである。右の二つのパネルは、各群における陽性細胞の%(上部)および各群における陽性細胞の総数(下部)を示す。
【0355】
図66は、SKOV3細胞株(卵巣癌)の結果を提供する。左のパネルは、B411についての陽性染色、ならびに一次抗体対照なし、および無染色細胞についての陰性染色を示すヒストグラムである。右の二つのパネルは、各群における陽性細胞の%(上部)および各群における陽性細胞の総数(下部)を示す。
【0356】
研究の結果は、B411が、様々な癌細胞株において表面フィラミンAを検出することができることを示した。SKBR3細胞株について、B411の陽性染色が存在したが、試験した他の細胞株と比較して弱かった。B411についての高い陽性染色を、SKNAS、SKOV3、およびHeLa細胞株で観察した。
【0357】
実施例12.貪食
抗体B411が、細胞によって貪食されるかどうかを決定するための実験を行った。250,000個の細胞/ウェルを播種し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。12μg/mL抗体を、製造業者のプロトコルに従い、Zenon pHrodoキット(ヒト緑色)を用いて、暗所で5分間室温で標識した。次いで、播種細胞を標識抗体と共に、24時間、37℃、5%CO2でインキュベートした。次いで、細胞を手動擦過によりはがし、フローサイトメトリーによる分析の前に洗浄した。
【0358】
図67~68は、結果を提供する。パーセント貪食陽性SKBR3細胞(乳腺癌)およびHEK細胞(非癌)を、
図67に示される。
図68は、貪食についての陽性細胞の総数を示す。B411の貪食を、抗体と共にインキュベートしたSKBR3細胞(乳腺癌)において検出した(
図67、左パネル)。より多くのSKBR3細胞が、HEK細胞よりもB411について陽性であり(
図68)、SKBR3細胞が、HEK(非癌)細胞と比較して、より高いレベルのB411結合フィラミンAの貪食を有することを示唆している。研究の結果は、本明細書において提供されるフィラミンA抗体の貪食を使用して、処置のための標的治療薬を送達することができることを示した。
【0359】
参照による組み込み
本明細書において引用される全ての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、および特許出願は、全ての目的のためその全体が参照により組み込まれる。
【0360】
しかしながら、本明細書において引用される任意の参考文献、記事、刊行物、特許、特許公開、および特許出願の言及は、それらが、妥当な先行技術を構成するか、または世界の任意の国における共通の一般的な知識の一部を形成する知識または任意の形態の示唆ではなく、そのように受け取られるべきではない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
フィラミンA抗原に結合する抗体であって、
a.CDR1、CDR2、およびCDR3を含む三つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変ドメインであって、前記軽鎖CDR1が、配列番号12および13から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン;および
b.CDR1、CDR2、およびCDR3を含む三つのCDRを含む重鎖可変ドメインであって、前記重鎖CDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号18、19、20、および21から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン、を含む、抗体。
(項目2)
前記軽鎖CDR1が、配列番号13を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号21を含む、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号2を含み、前記重鎖可変ドメインが、配列番号7を含む、項目1に記載の抗体。
(項目4)
前記軽鎖および重鎖可変領域が、軽鎖-重鎖の配向である、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体。
(項目5)
前記軽鎖および重鎖可変領域が、重鎖-軽鎖の配向である、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体。
(項目6)
c.配列番号3を含む軽鎖定常ドメイン;および
d.配列番号11を含む重鎖定常ドメインをさらに含む、項目1~5のいずれか1項に記載の抗体。
(項目7)
前記抗体がヒトキメラ抗体である、項目1~6のいずれか1項に記載の抗体。
(項目8)
前記抗体がscFvである、項目1~5のいずれか1項に記載の抗体。
(項目9)
前記抗体が細胞内抗体である、項目1~5のいずれか1項に記載の抗体。
(項目10)
前記フィラミンA抗原が、FLNA遺伝子、またはその相同体によりコードされる遺伝子産物である、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目11)
前記フィラミンA抗原が、およそ280kDaの乳癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原である、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目12)
前記抗体が、乳癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原に優先的に結合することができ、前記優先結合が、非乳癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原と比較である、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目13)
前記抗体が、乳癌細胞により分泌された可溶性フィラミンA抗原に10
-7
M~10
-11
Mの特異的親和性で結合することができる、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目14)
前記フィラミンA抗原が、およそ280kDaの乳癌細胞膜関連フィラミンA抗原である、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目15)
前記抗体が、乳癌細胞膜関連フィラミンA抗原に優先的に結合することができ、前記優先結合が、非乳癌細胞膜関連フィラミンA抗原と比較である、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目16)
前記抗体が、乳癌細胞膜関連フィラミンA抗原に、10
-7
M~10
-11
Mの特異的親和性で結合することができる、項目1~9のいずれか1項に記載の抗体。
(項目17)
項目1~16のいずれか1項に記載の抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチドDNA配列。
(項目18)
項目17に記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
(項目19)
項目18に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
(項目20)
項目19に記載の宿主細胞を培養すること、前記抗体を発現させること、および前記宿主細胞により発現された前記抗体を回収することを含む方法により産生される、抗体。
(項目21)
固相に固定される、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目22)
前記抗体が検出可能に標識される、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目23)
前記抗体が放射性核種に結合される、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目24)
前記抗体が化学療法剤に結合される、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目25)
前記抗体がタンパク質に結合される、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目26)
前記抗体が、細胞内フィラミンA抗原、細胞膜関連フィラミンA抗原、および/または可溶性フィラミンA抗原に結合する、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目27)
a.項目1~16のいずれか1項に記載の抗体;および
b.医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
(項目28)
a.一次抗体として項目1~16のいずれか1項に記載の抗体;および
b.前記一次抗体に結合する二次抗体であって、検出可能な標識に結合される二次抗体、を含む、癌を診断するためのキット。
(項目29)
前記癌が乳癌である、項目28に記載のキット。
(項目30)
患者における癌を診断する方法であって、
a.生物学的試料を患者から得ること;
b.前記生物学的試料を項目1-16のいずれか1項に記載の抗体と接触させること;および
c.前記抗体が、前記試料中のフィラミンA抗原に結合するかどうかを検出することであって、前記抗体とフィラミンA抗原の間の正の結合相互作用が、癌の指標である、検出すること、を含む、方法。
(項目31)
前記癌が乳癌である、項目30に記載の方法。
(項目32)
患者における癌を治療する方法であって、
有効量の項目1~16のいずれか1項に記載の抗体をそれを必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目33)
前記癌が乳癌である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体が、癌細胞の抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害活性(CDC)を誘導する、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記抗体が、癌細胞により貪食される、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記抗体が、治療剤に連結されるか、または結合される、項目32に記載の方法。
(項目37)
フィラミンA抗原を発現する腫瘍細胞の成長を防ぐか、または低減する方法であって、
a.それを必要とするヒト患者に、有効量の抗体を投与することであって、前記抗体が、
i.配列番号1または配列番号2を含む、軽鎖可変ドメイン;
ii.配列番号3を含む、軽鎖定常ドメイン;
iii.配列番号4、5、6、または7を含む重鎖可変ドメイン;および
iv.配列番号11を含む、重鎖定常ドメインを含む、投与することを含む、方法。
(項目38)
前記癌が乳癌である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記抗体が、分泌された可溶性フィラミンA抗原に優先的に結合する、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記抗体が、膜関連フィラミンA抗原に優先的に結合する、項目37に記載の方法。
(項目41)
前記抗体が、細胞内フィラミンA抗原に優先的に結合する、項目37に記載の方法。
(項目42)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目37に記載の方法。
(項目43)
前記抗体が、ヒトキメラ抗体である、項目37に記載の方法。
(項目44)
前記抗体が、ヒト化抗体である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記抗体が、フィラミンAに対するマウス抗体と比較して、低減した免疫原性を示し、前記患者から負の免疫応答を導かない、項目43または44に記載の方法。
(項目46)
前記抗体が、細胞内抗体である、項目37に記載の方法。
(項目47)
前記抗体が、細胞内局在化のため改変されている、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体。
(項目48)
細胞内に局在化しているフィラミンA抗原に結合する、細胞内抗体。
(項目49)
a.CDR1、CDR2、およびCDR3を含む三つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変ドメインであって、前記軽鎖CDR1が、配列番号12および13から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン;および
b.CDR1、CDR2、およびCDR3を含む三つのCDRを含む重鎖可変ドメインであって、前記重鎖CDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号18、19、20、および21から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン、を含む、項目48に記載の細胞内抗体。
(項目50)
前記軽鎖CDR1が、配列番号13を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号21を含む、項目48に記載の細胞内抗体。
(項目51)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号2を含み、前記重鎖可変ドメインが、配列番号7を含む、項目48に記載の細胞内抗体。
(項目52)
前記フィラミンA抗原が、FLNA遺伝子、またはその相同体によりコードされる遺伝子産物である、項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体。
(項目53)
前記細胞内抗体が、フィラミンAに、10
-7
M~10
-11
Mの特異的親和性で結合することができる、項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体。
(項目54)
前記細胞内抗体が、scFvである、項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体。
(項目55)
項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体をコードする、単離されたRNA。
(項目56)
項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチドDNA配列。
(項目57)
項目55に記載のRNAまたは項目56に記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
(項目58)
項目57に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
(項目59)
項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体および前記細胞内抗体を細胞膜を超えて転座させるためのタンパク質を含む、融合タンパク質。
(項目60)
項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体および前記細胞内抗体を細胞内構造に標的化するためのタンパク質を含む、融合タンパク質。
(項目61)
前記細胞内抗体が検出可能に標識される、項目48~51のいずれか1項に記載の単離された細胞内抗体。
(項目62)
前記細胞内抗体が放射性核種に結合される、項目48~51のいずれか1項に記載の単離された細胞内抗体。
(項目63)
前記細胞内抗体が化学療法剤に結合される、項目45~51のいずれか1項に記載の単離された細胞内抗体。
(項目64)
前記細胞内抗体がタンパク質に結合される、項目48~51のいずれか1項に記載の単離された細胞内抗体。
(項目65)
前記細胞内抗体が、細胞膜透過ペプチドもしくはタンパク質、または他の化学的部分に連結されるか、または結合される、項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体。
(項目66)
a.項目48~51のいずれか1項に記載の単離された細胞内抗体;および
b.医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
(項目67)
a.項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体をコードするDNAまたはRNAを含む送達システム;および
b.医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
(項目68)
前記送達システムが、プラスミド、RNA、ウイルスベクター、または非ウイルス送達システムを含む、項目67に記載の医薬組成物。
(項目69)
前記プラスミドが、真核生物のプロモーターを含む細菌プラスミドである、項目68に記載の医薬組成物。
(項目70)
前記送達システムが、RNAを含む、項目68に記載の医薬組成物。
(項目71)
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスまたはレトロウイルスベクターである、項目68に記載の医薬組成物。
(項目72)
前記非ウイルス送達システムが、カチオン性脂質またはポリマーを含む、項目68に記載の医薬組成物。
(項目73)
前記非ウイルス送達システムが、トランスポゾンを含む、項目68に記載の医薬組成物。
(項目74)
患者における癌を治療する方法であって、有効量の項目48~51のいずれか1項に記載の単離された細胞内抗体または項目48~51のいずれか1項に記載の細胞内抗体を発現する核酸を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目75)
前記癌が乳癌である、項目74に記載の方法。
(項目76)
項目1~16のいずれか1項に記載の第一の抗体および免疫細胞上で発現された抗原に結合する第二の抗体を含む、二重特異性または多重特異性抗体。
(項目77)
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、またはマクロファージである、項目76に記載の二重特異性または多重特異性抗体。
(項目78)
前記抗原が、T細胞抗原である、項目76に記載の二重特異性または多重特異性抗体。
(項目79)
前記T細胞抗原が、CD3、CD2、CD4、CD5、CD6、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD69、およびCD90からなる群から選択される、項目78に記載の二重特異性または多重特異性抗体。
(項目80)
項目1~16のいずれか1項に記載の第一の抗体およびCD3に結合する第二の抗体を含む、二重特異性抗体。
(項目81)
フィラミンA抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド。
(項目82)
前記フィラミンA抗原結合ドメインが、
a.CDR1、CDR2、およびCDR3を含む三つの相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変ドメインであって、前記軽鎖CDR1が、配列番号12および13から選択されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン;および
b.CDR1、CDR2、およびCDR3を含む三つのCDRを含む重鎖可変ドメインであって、前記重鎖CDR1は、配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR3は、配列番号18、19、20、および21から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン、を含む、項目81に記載のCARポリペプチド。
(項目83)
前記軽鎖CDR1が、配列番号13を含み、前記重鎖CDR3が、配列番号21を含む、項目81に記載のCARポリペプチド。
(項目84)
前記フィラミンA抗原結合ドメインが、配列番号2を含む軽鎖可変ドメインおよび配列番号7を含む重鎖可変ドメインを含む、項目81のいずれか1項に記載のCARポリペプチド。
(項目85)
細胞内シグナル伝達ドメインおよび膜貫通型ドメインをさらに含む、項目81~84のいずれか1項に記載のCARポリペプチド。
(項目86)
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、NKG2D、B7-H3、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される共刺激ドメインを含む、項目85に記載のCARポリペプチド。
(項目87)
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、T細胞受容体(TCR)ゼータ鎖シグナル伝達ドメインである、項目85に記載のCARポリペプチド。
(項目88)
項目81~87のいずれか1項に記載のCARを発現する細胞。
(項目89)
前記細胞が、T細胞、NK細胞、NK-T細胞、B細胞、マクロファージ、または幹細胞からなる群から選択される、項目88に記載の細胞。
(項目90)
前記細胞がT細胞である、項目89に記載の細胞。
(項目91)
それを必要とする対象における癌を治療する方法であって、前記対象に項目88に記載の細胞を投与することを含む、方法。