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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031410
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】高純度液化メタンの製造装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/02 20060101AFI20240229BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 7/09 20060101ALI20240229BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20240229BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F25J3/02 B
C07C9/04
C07C7/09
C07C7/04
F02M21/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134946
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】福永 峻之
【テーマコード(参考)】
4D047
4H006
【Fターム(参考)】
4D047AA10
4D047AB08
4D047BA08
4D047CA06
4D047CA09
4D047DA04
4H006AA04
4H006AB84
4H006AD11
4H006AD18
4H006BD84
(57)【要約】
【課題】液化天然ガスから高純度液化メタンを製造する装置であって、ロケットなど内燃機関を備えた移動体の配置場所の近郊に建設でき、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンを製造できる装置を提供する。
【解決手段】液化天然ガスから、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンの製造装置であって、液化天然ガスを貯留する液化天然ガス貯留槽と、液化天然ガスからメタンガスを分離する精留塔と、メタンガスを液化するメタンガス凝縮器と、液化メタンを貯留する液化メタン貯留槽とを備えており、前記精留塔の直近1年間における稼働率が60%以下である高純度液化メタンの製造装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスから、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンの製造装置であって、
前記液化天然ガスを貯留する液化天然ガス貯留槽と、
前記液化天然ガスからメタンガスを分離する精留塔と、
メタンガスを液化するメタンガス凝縮器と、
液化メタンを貯留する液化メタン貯留槽と、
を備えており、
前記精留塔の直近1年間における稼働率が60%以下である高純度液化メタンの製造装置。
【請求項2】
前記液化メタン貯留槽が再液化装置を備えており、
前記再液化装置には、熱媒体を供給する熱媒体供給経路が接続されており、
前記再液化装置は、前記熱媒体と前記液化メタン貯留槽内のメタンガスとの間における熱交換により液化メタンを生成するものである請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記精留塔が熱交換器を備えており、
前記再液化装置において熱交換された熱媒体を当該精留塔の熱交換器に供給する経路を有する請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを前記精留塔に供給する第1ボイルオフガス供給経路を備える請求項1に記載の製造装置。
【請求項5】
前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを前記液化メタン貯留槽に供給する第2ボイルオフガス供給経路を備える請求項1に記載の製造装置。
【請求項6】
前記第2ボイルオフガス供給経路に、該第2ボイルオフガス供給経路内のメタン濃度を特定できる装置が備えられている請求項5に記載の製造装置。
【請求項7】
前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを前記精留塔に供給する第1ボイルオフガス供給経路を備える請求項6に記載の製造装置。
【請求項8】
前記液化天然ガス貯留槽内の液化天然ガスを前記精留塔に供給する液化天然ガス供給経路を備える請求項1に記載の製造装置。
【請求項9】
前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを排出する排出経路を備える請求項1に記載の製造装置。
【請求項10】
前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスが窒素を含むものである請求項9に記載の製造装置。
【請求項11】
前記液化メタン貯留槽内に生じるボイルオフガスを排出する排出経路を備える請求項1に記載の製造装置。
【請求項12】
前記液化メタン貯留槽内に生じるボイルオフガスが窒素を含むものである請求項11に記載の製造装置。
【請求項13】
前記高純度液化メタンの純度は、99mol%以上である請求項1に記載の製造装置。
【請求項14】
前記移動体が、ロケットである請求項1に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスから、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンは、化学プロセスに使用する原料として用いられており、通常、純度が99.9999%以上の超高純度液化メタンが用いられている。メタンの原料は、液化天然ガス(LNG)であり、LNGの主成分はメタンである。LNG中のメタン濃度は、LNGの産地によってバラついており、例えば、オーストラリア産のLNGは87%程度のメタンを含有し、インドネシア産やマレーシア産のLNGは89%程度のメタンを含有し、アラスカ産のLNGは99%程度のメタンを含有している。そのため、化学プロセスの原料にメタンを用いるには、LNGを精製し、メタンの純度が99.9999%以上の超高純度液化メタンにする必要がある。
【0003】
LNGを精製してメタンの純度が99.9999%以上の超高純度メタンを製造できる装置が特許文献1、2に記載されている。特許文献1には、コンデンサ及びリボイラを備え、内部に液化天然ガスが導入される高沸点成分分離用の第1蒸留装置と、コンデンサ及びリボイラを備え、底液が超高純度メタンとして取り出される低沸点成分分離用の第2蒸留装置と、上記第1蒸留装置の頂部から窒素及びメタンの混合流体を取出し、上記第2蒸留装置に送るための移送通路と、上記第1蒸留装置の底部の液を少なくとも一方の蒸留装置のコンデンサに通し、このコンデンサで蒸発されるためのコンデンサ冷却通路とを備えた超高純度メタンの製造装置が記載されている。特許文献2には、天然ガスを粗精製するための粗メタン精留塔と、該粗メタン精留塔で粗精製されたメタンを更に精製するメタン精留塔とを備える高純度メタンの精製装置が記載されている。
【0004】
メタンは、都市ガスの主成分でもあり、工業用や家庭用の燃料としても用いられている。都市ガスに要求されるメタン濃度は90%程度であるため、LNGをそのまま用いることができるが、LNG中のメタン濃度が基準値を下回る場合は、精製してメタン濃度を90%程度に高める必要がある。
【0005】
メタンは、化学プロセスに使用する原料や工業用や家庭用の燃料として用いられる他に、近年では、ロケットなど内燃機関を備えた移動体の燃料として用いられている。ロケットなど内燃機関を備えた移動体の燃料には、純度が99%以上の高純度液化メタンが用いられている。アラスカ産のLNGは、メタンを99%程度含有するため、アラスカ産のLNGであれば、そのまま用いることができ、精製してメタンの純度を高める必要はない。しかし、アラスカ産のLNGが常に入手できる訳ではなく、また、LNGは天然物であるためメタン濃度が変動し、99%を下回ることがある。こうした場合には、メタン濃度が99%未満のLNGを精製してメタン濃度を99%程度に高める必要がある。メタン濃度を高めるには、上述した特許文献1や2に記載されている装置を用いればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-225778号公報
【特許文献2】特開2010-275215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載の装置で得られるメタンの純度は99.9999%以上の超高純度であるため、ロケットなど内燃機関を備えた移動体の燃料として用いるにはオーバースペックである。また、特許文献1、2に記載されている装置では、メタン純度を99.9999%以上に高めるために、大型の精留塔が必要となる。精留塔が大型化することにより予冷等に時間がかかり、高純度液化メタンの製造に時間がかかる。また、大型の装置を建設するには、広大な敷地が必要となるため、精留装置を液化メタンが使用される場所ごとに建設することは難しい。そのため、精製設備で所定の純度に精製された液化メタンをトラックなどに積載し、液化メタンが使用される場所まで輸送する必要がある。
【0008】
ロケットの開発は、従来は国の機関が主であったが、近年では民間企業も参入しており、民間人を宇宙空間に輸送する事業が既に始まっている。日本国内においても国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)だけでなく、民間企業が宇宙開発やロケット産業に乗り出している。こうしたロケットなど内燃機関を備えた移動体の燃料は、精製工場で所定の純度に精製された液化メタンを、移動体が配置されている場所までトラックなどで輸送する必要がある。このように民間企業が参入することにより、液化メタンの輸送先は広範囲となり、輸送距離が伸びる。輸送距離が伸びると、輸送時に液化メタンが気化し、資源のロスになる。また、ロケットなど内燃機関を備えた移動体の燃料は、定常的に必要とされるわけではなく、必要になったときに不定期に用いられる。そのため、移動体の配置場所に輸送された液化メタンは、必要になるまで液化天然ガス貯留槽で保管する必要がある。液化天然ガス貯留槽に貯留された液化天然ガスは液体状であるが、貯留槽内の温度が変化すると、液化天然ガスに含まれる成分の一部が気化し、資源のロスになる。そこで、輸送時や保管時のロスを削減するには、ロケットなど内燃機関を備えた移動体の配置場所の近くで液化メタンを精製することが望まれる。
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、液化天然ガスから高純度液化メタンを製造する装置であって、ロケットなど内燃機関を備えた移動体の配置場所の近郊に建設でき、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンを製造できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の通りである。
[1] 液化天然ガスから、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンの製造装置であって、前記液化天然ガスを貯留する液化天然ガス貯留槽と、前記液化天然ガスからメタンガスを分離する精留塔と、メタンガスを液化するメタンガス凝縮器と、液化メタンを貯留する液化メタン貯留槽と、を備えており、前記精留塔の直近1年間における稼働率が60%以下である高純度液化メタンの製造装置。
[2] 前記液化メタン貯留槽が再液化装置を備えており、前記再液化装置には、熱媒体を供給する熱媒体供給経路が接続されており、前記再液化装置は、前記熱媒体と前記液化メタン貯留槽内のメタンガスとの間における熱交換により液化メタンを生成するものである[1]に記載の製造装置。
[3] 前記精留塔が熱交換器を備えており、前記再液化装置において熱交換された熱媒体を当該精留塔の熱交換器に供給する経路を有する[2]に記載の製造装置。
[4] 前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを前記精留塔に供給する第1ボイルオフガス供給経路を備える[1]~[3]のいずれかに記載の製造装置。
[5] 前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを前記液化メタン貯留槽に供給する第2ボイルオフガス供給経路を備える[1]~[4]のいずれかに記載の製造装置。
[6] 前記第2ボイルオフガス供給経路に、該第2ボイルオフガス供給経路内のメタン濃度を特定できる装置が備えられている[5]に記載の製造装置。
[7] 前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを前記精留塔に供給する第1ボイルオフガス供給経路を備える[6]に記載の製造装置。
[8] 前記液化天然ガス貯留槽内の液化天然ガスを前記精留塔に供給する液化天然ガス供給経路を備える[1]~[7]に記載の製造装置。
[9] 前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスを排出する排出経路を備える[1]~[8]のいずれかに記載の製造装置。
[10] 前記液化天然ガス貯留槽内に生じるボイルオフガスが窒素を含むものである[9]に記載の製造装置。
[11] 前記液化メタン貯留槽内に生じるボイルオフガスを排出する排出経路を備える[1]~[10]のいずれかに記載の製造装置。
[12] 前記液化メタン貯留槽内に生じるボイルオフガスが窒素を含むものである[11]に記載の製造装置。
[13] 前記高純度液化メタンの純度は、99mol%以上である[1]~[12]のいずれかに記載の製造装置。
[14] 前記移動体が、ロケットである[1]~[13]のいずれかに記載の製造装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、液化天然ガスを貯留する液化天然ガス貯留槽と、液化天然ガスからメタンガスを分離する精留塔と、メタンガスを液化するメタンガス凝縮器と、液化メタンを貯留する液化メタン貯留槽と、を備えている。装置構成がシンプルであるため、装置は比較的小型となり、液化メタンが使用される場所の近郊に建設できる。その結果、精製した液化メタンの輸送距離を短くすることができるため、輸送時のロスを削減できる。また、液化天然ガスから高純度液化メタンを簡便に製造できるため、製造装置は、高純度の液化メタンが必要になったときのみ稼働させればよく、常時稼働させる必要がない。そのため、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、精留塔の直近1年間における稼働率が60%以下となる。その結果、高純度液化メタンの製造装置のランニングコストを低減できると共に、輸送されてきた高純度液化メタンを必要になるまで長期保管する必要がないため、保管時のロスを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における実施の形態1を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における実施の形態2を示す模式図である。
図3図3は、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における実施の形態3を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、液化天然ガスから、内燃機関を備えた移動体向けの高純度液化メタンの製造装置であって、液化天然ガスを貯留する液化天然ガス貯留槽と、液化天然ガスからメタンガスを分離する精留塔と、メタンガスを液化するメタンガス凝縮器と、液化メタンを貯留する液化メタン貯留槽と、を備えるものであり、前記精留塔の直近1年間における稼働率は60%以下である。
【0014】
本発明に係る高純度液化メタン製造装置は、装置構成がシンプルであるため、装置は比較的小型となり、液化メタンが使用される場所の近郊に建設できる。その結果、精製した液化メタンの輸送距離を短くすることができるため、輸送時のロスを削減できる。また、液化天然ガスから高純度液化メタンを簡便に製造できるため、製造装置は、高純度の液化メタンが必要になったときのみ稼働させればよく、常時稼働させる必要がない。そのため、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における精留塔は、直近1年間における稼働率を60%以下とすることを前提としている。その結果、高純度液化メタンの製造装置のランニングコストを低減できると共に、輸送されてきた液化メタンを必要になるまで長期保管する必要がないため、保管時のロスを削減できる。
【0015】
以下、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置に関して、実施の形態を示す図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明は図示例に限定される訳ではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0016】
(実施の形態1)
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における実施の形態1について図1を用いて説明する。実施の形態1における高純度液化メタンの製造装置は、液化天然ガスを貯留する液化天然ガス貯留槽1と、液化天然ガスからメタンガスを分離する精留塔2と、メタンガスを液化するメタンガス凝縮器3と、液化メタンを貯留する液化メタン貯留槽4と、を備えている。
【0017】
液化天然ガス貯留槽1は、液化天然ガスを貯留する容器である。液化天然ガス貯留槽1に貯留する液化天然ガス中のメタン濃度は特に限定されず、例えば、85mol%未満であってもよいが、85mol%以上が好ましい。メタン濃度は、より好ましくは89mol%以上、更に好ましくは90mol%以上である。メタン濃度の上限は特に限定されないが、例えば、99.9mol%であってもよい。
【0018】
液化天然ガス貯留槽1内は、液化天然ガスに含まれる液化メタンが気化しない条件(即ち、温度および圧力)に管理することが好ましい。具体的には、メタンの沸点以下(常圧の場合、-161℃以下)に管理することが好ましい。メタンの沸点以下に管理することにより、液化天然ガスに含まれるメタンの気化を抑えることができる。
【0019】
精留塔2は、液化天然ガスからメタンガスを分離する装置である。精留塔2は、下部に熱交換器13を備えていることが好ましい。
【0020】
メタンガス凝縮器3は、精留塔2で分離されたメタンガスを冷却し、液化し、液化メタンを生成する装置である。メタンガス凝縮器3は、容器3aに備えられている。
【0021】
液化メタン貯留槽4は、メタンガス凝縮器3で得られた液化メタンを貯留する容器である。液化メタン貯留槽4内は、液化メタンが気化しない条件(即ち、温度および圧力)に管理することが好ましい。具体的には、メタンの沸点以下(常圧の場合、-161℃以下)に管理することが好ましい。メタンの沸点以下に管理することにより、メタンの気化を抑えることができる。
【0022】
液化メタン貯留槽4には、該液化メタン貯留槽4内に貯留されている液化メタンを移動体に備えられた内燃機関の燃料タンクへ供給するための経路が接続されていることが好ましい。液化メタンは、液化メタン貯留槽4から、直接、内燃機関の燃料タンクへ供給してもよいし、液化メタンをランタンクなどの容器に移し替え、間接的に内燃機関の燃料タンクへ供給してもよい。
【0023】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、更に、熱媒体貯留槽5を備えていることが好ましい。熱媒体貯留槽5は、メタンの沸点よりも温度が低い熱媒体を貯留する容器である。メタンの沸点よりも温度が低い熱媒体の形態は、液体が好ましく、具体的には、酸素、アルゴン、窒素、ヘリウムなどの液体が挙げられる。これらのなかでも、安全面やコストの面で、液化窒素が好ましい。
【0024】
液化天然ガス貯留槽1と精留塔2は、液化天然ガス貯留槽1内の液化天然ガスを精留塔2に供給する液化天然ガス供給経路103で接続されている。精留塔2とメタンガス凝縮器3は、経路114で接続されており、メタンガス凝縮器3と液化メタン貯留槽4は、経路116で接続されている。熱媒体貯留槽5と、精留塔2に備えられた熱交換器13は、経路111で接続されている。該経路111は、途中で分岐しており、分岐路115は、メタンガス凝縮器3を備えた容器3aに接続されている。
【0025】
液化天然ガス貯留槽1に貯留された液化天然ガスは、液化天然ガス供給経路103を経て精留塔2に供給される。精留塔2に供給された液化天然ガスは、精留塔2に備えられた熱交換器13において、該熱交換器13に接続された経路111から供給される熱媒体との間で熱交換される。
【0026】
経路111を経て熱交換器13に供給される熱媒体の温度は、メタンの沸点以上であることが好ましい。熱媒体の温度を、メタンの沸点以上とすることにより、精留塔2に供給された液化天然ガスに含まれるメタンを気化させることができる。熱媒体の温度は、具体的には、-161℃以上に管理すればよい。一方、熱媒体の温度の上限は特に限定されないが、熱媒体の温度は、例えば、35℃以下に管理することが好ましい。熱媒体の温度は、エタンの沸点未満(具体的には、-88℃未満)に管理してもよい。熱媒体の温度を、エタンの沸点未満とすることにより、精留塔2に供給された液化天然ガスに含まれるメタンよりも炭素数が多い炭化水素の気化を抑えることができるため、精留塔2から排出されるメタンの純度を高めることができる。
【0027】
熱交換器13に供給される熱媒体の温度を上記範囲に制御するために、熱媒体貯留槽5と精留塔2に備えられた熱交換器13とを接続する経路111の途中に、熱媒体貯留槽5から供給される液体を気化させる気化器7を配することが好ましい。気化器7において、熱媒体貯留槽5から供給される熱媒体と大気との間で熱交換することにより、熱媒体の温度を上記範囲に制御できる。
【0028】
経路111を経て精留塔2の熱交換器13に供給され、該熱交換器13で熱交換された熱媒体は、経路113を経て系外へ排出すればよい。経路113から排出した熱媒体は、例えば、計装ガスや、プロセス中のパージガスなどに利用できる。
【0029】
熱交換器13で熱交換されて気化して得られた気体は、精留塔2内を上昇し、精留塔2の上部に溜まる。精留塔2の上部には、精留塔2内で生じた気体を取り出すための排出口が設けられている。該排出口には、経路114が接続されており、該経路114は、メタンガス凝縮器3に接続されている。
【0030】
メタンガス凝縮器3を備えた容器3aには、熱媒体貯留槽5から分岐路115を経て熱媒体が供給されている。メタンガス凝縮器3では、分岐路115を経て供給される熱媒体と、経路114を経て供給される気体との間で熱交換される。熱交換された気体に含まれるメタンガスは、冷却されて液化し、得られた液化メタンは、経路116を経て液化メタン貯留槽4へ供給され、貯留される。
【0031】
容器3aには、容器3aの上部に溜まった気体を取り出すための排出口が設けられていることが好ましい。該排出口には、経路118が接続されており、該経路118は、熱媒体貯留槽5と、精留塔2の熱交換器13とを接続する経路111のうち、該経路111の途中に設けられた気化器7よりも下流側で、熱交換器13よりも上流側に接続されていることが好ましい。容器3aの上部に溜まった気体を経路118および経路111を経て精留塔2の熱交換器13へ供給することにより、容器3aの上部に溜まった気体を熱媒体として再利用できる。
【0032】
精留塔2において分離されたメタンより重質の炭化水素を含む液体は、精留塔2内を下降し、精留塔2の下部に溜められる。精留塔2の底には、精留塔2の下部に溜まった液体を取り出すための排出口が設けられていることが好ましい。該排出口には、経路112が接続されており、精留塔2の下部に溜まった液体は経路112から系外へ排出される。経路112から排出された液体は、例えば、他の設備の燃料として利用できる。
【0033】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における精留塔2の直近1年間における稼働率は60%以下(0%を含まない)である。本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、内燃機関を備えた移動体用に高純度液化メタンを製造する装置であるため、該装置は、高純度液化メタンを使用する際に稼働させればよい。そのため、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置を稼働させる時間は、1年間のうちおおよそ60%以下であり、1年間のうち稼働させていない時間が非常に長い。高純度液化メタンの製造装置を稼働させているかどうかは、精留塔2が稼働しているかどうかで判断すればよい。精留塔2が稼働しているかどうかは、液化メタン貯留槽4に液化メタンを、経路116を通して供給しているかどうかで判断でき、液化メタンを液化メタン貯留槽4に供給している時間に基づいて稼働率を算出すればよい。精留塔2の直近1年間における稼働率は、例えば、50%以下でもよい。
【0034】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置において、精留塔2の数は、複数でもよいが、1つで充分である。
【0035】
精留塔2は、内部に精留手段が設けられていることが好ましい。精留手段としては、例えば、精留棚や充填物が挙げられる。充填物としては、例えば、規則充填物や不規則充填物が挙げられる。
【0036】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、メタンガス凝縮器3と液化メタン貯留槽4とを接続する経路116の途中に、気液分離器6を備えてもよい。気液分離器6において、メタンガス凝縮器3から経路116を経て供給された液体を気液分離し、該液体から気体を分離することにより、液体に含まれるメタン純度を一層高めることができる。一方、気液分離器6において液体から分離された気体は、該気液分離器6の上部に備えられている排出口に接続された経路121から系外へ排出すればよい。
【0037】
気液分離器6内の温度は、容器3a内に供給した熱媒体の沸点よりも高く、且つメタンの沸点以下の温度域となるように制御することが好ましい。これにより、液化メタンに含まれ、メタンよりも低沸点の物質(例えば、窒素など)を気化させることができるため、メタンの純度を高めることができる。
【0038】
気液分離器6と液化メタン貯留槽4とを接続する経路116は、途中で分岐していてもよく、分岐している場合の分岐路117は、精留塔2に接続されていることが好ましい。気液分離器6で分離された液体を、分岐路117を経て精留塔2に返送し、該精留塔2において再度精製することにより、液化メタンの純度を一層高めることができる。
【0039】
液化メタン貯留槽4内は、上述したように、液化メタンが気化しない条件(即ち、温度および圧力)に管理されるが、液化メタン貯留槽4内にもボイルオフガスが生じることがある。ボイルオフガスとは、液化メタン貯留槽4内に貯留されている液化メタンの一部が蒸発して気化した気体である。液化メタン貯留槽4内に生じたボイルオフガスは、従来では大気中へ排気されていた。
【0040】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置は、液化メタン貯留槽4が再液化装置12を備えており、該再液化装置12には、熱媒体を供給する熱媒体供給経路119が接続されていることが好ましい。熱媒体供給経路119は、熱媒体貯留槽5と、液化メタン貯留槽4に備えられた再液化装置12とを接続する経路であり、例えば、熱媒体貯留槽5と、精留塔2の熱交換器13とを接続する経路111を途中で分岐させた分岐路を熱媒体供給経路119とすればよい。
【0041】
再液化装置12は、該再液化装置12に供給される熱媒体と、液化メタン貯留槽4内で生成したメタンガスとの間で熱交換し、液化メタンを生成する装置である。液化メタン貯留槽4内で生成したメタンガスを再液化することにより、液化メタン貯留槽4内に貯留している液化メタンの損失を削減できる。
【0042】
液化メタン貯留槽4は、該液化メタン貯留槽4内に生じるボイルオフガスを排出する排出経路105を備えてもよい。排出経路105は、液化メタン貯留槽4の上部に設けられた排出口に接続されていることが好ましい。排出経路105からボイルオフガスを系外へ排出することにより、液化メタン貯留槽4内に貯留されている液化メタン中のメタン純度を高めることができる。
【0043】
排出経路105から排出するボイルオフガスは、メタンの沸点よりも沸点が低い物質を含むことが好ましく、例えば、窒素を含むことが好ましい。
【0044】
再液化装置12において熱交換された熱媒体は、該再液化装置12に接続された経路120を経て系外へ排出すればよい。経路120は、例えば、精留塔2に備えられた熱交換器13に接続されていてもよく、図1に示すように、経路120は、気化器7と、精留塔2の熱交換器13とを接続する経路111に接続されていてもよい。再液化装置12において熱交換された熱媒体を、経路120を経て精留塔2に備えられた熱交換器13に供給することにより、熱媒体を再利用できる。
【0045】
(実施の形態2)
次に、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における実施の形態2について図2を用いて説明する。図2において、図1と重複する箇所には同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。
【0046】
液化天然ガス貯留槽1内は、上述したように、液化天然ガスに含まれる液化メタンが気化しない条件(即ち、温度および圧力)に管理されるが、液化天然ガス貯留槽1内には、ボイルオフガスが生じる。ボイルオフガスとは、液化天然ガス貯留槽1内に貯留されている液化天然ガスの一部が蒸発して気化した気体である。液化天然ガス貯留槽1内に生じたボイルオフガスは、従来では大気中へ排気されていた。
【0047】
本発明の実施の形態2では、液化天然ガス貯留槽1内に生じるボイルオフガスを精留塔2に供給する第1ボイルオフガス供給経路101を備えている。第1ボイルオフガス供給経路101は、液化天然ガス貯留槽1の上部に設けられたボイルオフガス排出口に接続されている。液化天然ガス貯留槽1内に生じるボイルオフガスは、第1ボイルオフガス供給経路101を経て精留塔2に供給され、該精留塔2内で精製されることにより、ボイルオフガスに含まれるメタンガスと、メタンより重質の炭化水素を含む液体に分離される。その結果、ボイルオフガスに含まれるメタンを有効活用できる。
【0048】
液化天然ガス貯留槽1は、上記第1ボイルオフガス供給経路101とは別に、液化天然ガス貯留槽1内に生じるボイルオフガスを系外へ排出する排出経路104を備えていてもよい。排出経路104は、液化天然ガス貯留槽1の上部に設けられた排出口に接続されていることが好ましい。排出経路104からボイルオフガスを系外へ排出することにより、液化天然ガス貯留槽1内に貯留されている液化天然ガス中のメタン純度を高めることができる。
【0049】
排出経路104から排出するボイルオフガスは、メタンの沸点よりも沸点が低い物質を含むことが好ましく、例えば、窒素を含むことが好ましい。
【0050】
(実施の形態3)
次に、本発明に係る高純度液化メタンの製造装置における実施の形態3について図3を用いて説明する。図3において、図1図2と重複する箇所には同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。
【0051】
実施の形態2では、上記第1ボイルオフガス供給経路101を備えているのに対し、実施の形態3では、液化天然ガス貯留槽1内に生じるボイルオフガスを液化メタン貯留槽4に供給する第2ボイルオフガス供給経路102を備えている点で実施の形態2と相違している。液化天然ガス貯留槽1内に生じたボイルオフガスに含まれるメタン濃度が高い場合は、実施の形態2のように、ボイルオフガスを精留塔2へ供給するのではなく、液化メタン貯留槽4へ供給することにより、液化メタンとして有効活用できる。液化天然ガス貯留槽1内に生じたボイルオフガスは、気体状態で液化メタン貯留槽4へ供給し、該液化メタン貯留槽4内に備えられた再液化装置12で液化し、液化メタンを生成してもよいし、第2ボイルオフガス供給経路102の途中にメタンガス凝縮器(図示せず)を設け、液体状態としたものを液化メタン貯留槽4へ供給してもよい。なお、第2ボイルオフガス供給経路102は、液化天然ガス貯留槽1の上部に設けられたボイルオフガス排出口に接続されていればよい。
【0052】
実施の形態3においては、液化メタン貯留槽4が再液化装置12を備えており、該再液化装置12には、熱媒体を供給する熱媒体供給経路119が接続されている。再液化装置12において、該再液化装置12に供給される熱媒体と、液化メタン貯留槽4内で生成したメタンガスおよび第2ボイルオフガス供給経路102から供給されたボイルオフガスとの間で熱交換し、液化メタンを生成する。液化メタン貯留槽4内で生成したメタンガスおよび第2ボイルオフガス供給経路102から供給されたボイルオフガスを再液化することにより、液化メタン貯留槽4内に貯留している液化メタンの損失を削減でき、しかも液化天然ガス貯留槽1から供給されたボイルオフガスを資源として有効活用できる。
【0053】
第2ボイルオフガス供給経路102には、該第2ボイルオフガス供給経路102を経て液化メタン貯留槽4に供給するボイルオフガス中のメタン濃度を特定できる装置が備えられていることが好ましい。メタン濃度を特定できる装置を備え、ボイルオフガス中のメタン濃度が所定値未満になった場合には、液化天然ガス貯留槽1から液化メタン貯留槽4へのボイルオフガスの供給を停止すればよい。これにより、メタン濃度が所定値未満のボイルオフガスが液化メタン貯留槽4へ流入することを防止できるため、液化メタン貯留槽4内における液化メタンの純度を維持できる。ボイルオフガス中のメタン濃度が所定値未満になった場合のボイルオフガスは、系外へ排出すればよい。
【0054】
メタン濃度を特定できる装置の構成は特に限定されず、ボイルオフガス中のメタン濃度を測定できる濃度計であってもよいし、ボイルオフガス中のメタン以外の濃度(例えば、窒素などの不純物ガスの濃度)を測定できる濃度計であってもよい。ボイルオフガス中のメタン以外の濃度を測定できる濃度計を配する場合は、該濃度計で測定されたメタン以外の濃度を、100mol%から引くことにより、ボイルオフガス中のメタン濃度を算出できる。
【0055】
液化天然ガス貯留槽1から液化メタン貯留槽4へのボイルオフガスの供給を停止するか否かのメタン濃度の閾値は、例えば、99mol%とすることが好ましい。メタン濃度が99mol%以上の場合は、液化天然ガス貯留槽1から液化メタン貯留槽4へのボイルオフガスの供給を継続し、メタン濃度が99mol%未満の場合は、液化天然ガス貯留槽1から液化メタン貯留槽4へのボイルオフガスの供給を停止することが好ましい。メタン濃度が99mol%未満の場合は、例えば、液化天然ガス貯留槽1内に生成したボイルオフガスを、排出経路104を経て系外へ排出し、液化天然ガス貯留槽1内におけるボイルオフガス中のメタンガス濃度を高めることが好ましい。なお、メタン濃度の閾値は、例えば、98mol%や97mol%であってもよいし、99.5mol%であってもよい。
【0056】
メタン濃度を特定できる装置を配する位置は、特に限定されず、液化天然ガス貯留槽と第2ボイルオフガス供給経路102との接続位置でもよいし、第2ボイルオフガス供給経路102と液化メタン貯留槽4との接続位置でもよい。もちろん、第2ボイルオフガス供給経路102の途中であってもかまわない。
【0057】
第2ボイルオフガス供給経路102に、液化メタン貯留槽4に供給するボイルオフガス中のメタン濃度を特定できる装置が備えられている場合は、高純度液化メタンの製造装置は、更に、第1ボイルオフガス供給経路101aを備えることが好ましい。
【0058】
第1ボイルオフガス供給経路101aは、例えば、第2ボイルオフガス供給経路102とは別に、液化天然ガス貯留槽1と精留塔2を接続する経路として備えてもよいが、液化天然ガス貯留槽1と液化メタン貯留槽4を接続する第2ボイルオフガス供給経路102の分岐路として備えることが好ましい。第2ボイルオフガス供給経路102の分岐路として第1ボイルオフガス供給経路101aを備える場合は、第2ボイルオフガス供給経路102と第1ボイルオフガス供給経路101aとの接続位置に、弁122を配することが好ましい。ボイルオフガス中のメタン濃度を特定できる装置により検知されたメタン濃度が閾値未満となった場合、弁122を切り替え、液化天然ガス貯留槽1内におけるボイルオフガスを精留塔2へ供給し、精留塔2で精製することにより、メタン濃度を高めることができる。
【0059】
以上の通り、実施の形態2と実施の形態3では、液化天然ガス貯留槽1内に生じるボイルオフガスの供給先が相違しているが、液化天然ガス貯留槽1内に生じるボイルオフガスを有効活用している点で一致している。
【0060】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置によれば、メタンの純度が99mol%以上の高純度液化メタンを製造できる。メタンの純度は、より好ましくは99.9mol%以上、更に好ましくは99.99mol%以上、特に好ましくは99.999mol%以上である。メタンの純度は、例えば、99.9999mol%未満が好ましい。
【0061】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置で製造される高純度液化メタンは、内燃機関を備えた移動体の燃料として用いることができ、移動体としては、例えば、ロケットが挙げられる。
【0062】
本発明に係る高純度液化メタンの製造装置を用いれば、ボイルオフガス(BOG)の大気への放出量を削減でき、液化天然ガス(LNG)から高純度液化メタンを高収率で製造できる。そのため、地球温暖化ガスを削減でき、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献できる。
【符号の説明】
【0063】
1 液化天然ガス貯留槽
2 精留塔
3 メタンガス凝縮器
3a 容器
4 液化メタン貯留槽
5 熱媒体貯留槽
6 気液分離器
7 気化器
12 再液化装置
13 熱交換器
101 第1ボイルオフガス供給経路
102 第2ボイルオフガス供給経路
103 液化天然ガス供給経路
104、105 排出経路
111~114、116、118、120 経路
115、117 分岐路
119 熱媒体供給経路
図1
図2
図3