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特開2024-31411頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法、頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法、頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラム、及び、装具の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031411
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法、頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法、頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラム、及び、装具の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/04 20060101AFI20240229BHJP
   A42C 1/00 20060101ALI20240229BHJP
   A42C 5/04 20060101ALI20240229BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A42B3/04
A42C1/00 K
A42C1/00 P
A42C5/04 A
A61F5/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134948
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】521407050
【氏名又は名称】株式会社Berry
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
【テーマコード(参考)】
3B107
4C098
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107DA04
4C098AA02
4C098BB20
4C098BC01
4C098BC48
4C098BD15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個々の装着者に合った形状の頭蓋形状矯正ヘルメットを効率的に製造することを可能とする頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法を提供すること。
【解決手段】シェル2と、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3と、を備え、頭蓋の変形を矯正する頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法は、装着者200の頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位のデータに基づいて、インナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと、前記シェルの内面側に配置されるインナーライナと、を備え、頭蓋の変形を矯正するために装着者の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法であって、
装着者の頭部の3次元データに基づいて、前記シェルの3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、
装着者の頭部の3次元データに基づいて、前記シェルの内面側に配置される前記インナーライナの3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、
前記インナーライナの3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された前記切り込み部位のデータに基づいて、前記インナーライナの3次元データを展開して前記インナーライナの2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える、
頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項2】
前記シェルが、前記シェルの3次元データに基づいて3次元加工機により加工される3次元加工ステップと、
前記インナーライナが、前記インナーライナの2次元データに基づいて2次元加工機により加工される2次元加工ステップと、を更に備える、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項3】
前記インナーライナ3次元データ作成ステップにおいて、前記インナーライナの3次元データは、前記シェルの3次元データに基づいて作成される、
請求項1又は請求項2に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項4】
前記シェルは、上側開口部及び下側開口部を有し、
前記インナーライナは、前記シェルの前記上側開口部側に位置する上縁と前記シェルの前記下側開口部側に位置する下縁を有し、
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記切り込み部位のデータとして、前記上縁と前記下縁とを結ぶ方向に伸びる前記切り込み部位のデータが作成される、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項5】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記上縁と前記下縁とを結ぶ方向に伸びる前記切り込み部位のデータとして、前記上縁に開放し、前記下縁に開放していない第1の切り込み部位のデータが作成される、
請求項4に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項6】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記上縁と前記下縁とを結ぶ方向に伸びる前記切り込み部位のデータとして、前記下縁に開放し、前記上縁に開放していない第2の切り込み部位のデータが作成される、
請求項4に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項7】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記上縁と前記下縁とを結ぶ方向に伸びる前記切り込み部位のデータとして、前記上縁に開放し、前記下縁に開放していない第1の切り込み部位のデータと、前記下縁に開放し、前記上縁に開放していない第2の切り込み部位のデータと、が作成される、
請求項4に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項8】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記上縁と前記下縁とを結ぶ方向に伸びる前記切り込み部位のデータとして、前記上縁及び前記下縁に開放している第3の切り込み部位のデータが作成される、
請求項4に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項9】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記第1の切り込み部位のデータは、装着者の頭部の3次元データの後頭部の位置に対応する位置に作成される、
請求項5に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項10】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記第1の切り込み部位のデータは、装着者の頭部の3次元データの前頭部の位置に対応する位置に作成される、
請求項5に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項11】
前記シェルは、前記上側開口部から前記下側開口部まで上下方向に伸びるスリットを有し、
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記上縁と前記下縁とを結ぶ方向に伸びる第2の切り込み部位のデータは、前記シェルの前記スリットの位置の頭部反対側の位置に対応する位置に作成される、
請求項6に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項12】
前記シェルは、前記上側開口部から前記下側開口部まで上下方向に伸びるスリットを有し、
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記第3の切り込み部位のデータは、前記シェルの前記スリットの位置に対応する位置に作成される、
請求項8に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項13】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記切り込み部位のデータとして、装着者の頭部の3次元データの耳に対応する位置から後頭部に対応する位置に向かって伸びる第4の切り込み部位のデータが作成される、
請求項4に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項14】
前記切り込み部位データ作成ステップにおいて、前記インナーライナの3次元データを構成する面の曲率が大きな領域に、前記切り込み部位のデータを作成する、
請求項4に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項15】
前記シェルは、触診に用いられる複数の触診孔と、前記触診孔よりも小さい開口径の複数のシェル通気孔と、を有し、
前記シェルの3次元データに、前記触診孔のデータ及び前記シェル通気孔のデータを作成する孔データ作成ステップを更に備え、
前記触診孔のデータは、装着者毎に異なる頭部の3次元データの特徴形状に基づき作成される、
請求項1又は請求項2に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項16】
前記インナーライナの3次元データに、開口部を作成するステップを更に備え、
前記開口部のデータは、前記シェルの触診孔のデータが作成された位置に対応する位置に作成される、
請求項1又は請求項2に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【請求項17】
シェルと、前記シェルの内面側に配置されるインナーライナと、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法であって、
頭部の3次元データに基づいて、前記シェルの3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、
頭部の3次元データに基づいて、前記シェルの内面側に配置される前記インナーライナの3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、
前記インナーライナの3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、
作成された前記切り込み部位のデータに基づいて前記インナーライナの3次元データを展開して前記インナーライナの2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える、
頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法。
【請求項18】
シェルと、前記シェルの内面側に配置されるインナーライナと、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラムであって、
頭部の3次元データに基づいて、前記シェルの3次元データを作成するシェル3次元データ作成機能と、
頭部の3次元データに基づいて、前記シェルの内面側に配置される前記インナーライナの3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成機能と、
前記インナーライナの3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成機能と、
作成された前記切り込み部位のデータに基づいて、前記インナーライナの3次元データを展開して前記インナーライナの2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成機能と、
をコンピュータに実現させる、
頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラム。
【請求項19】
硬質部と、前記硬質部よりも人体側に配置される軟質部と、を備える装具の製造方法であって、
人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、前記硬質部の3次元データを作成する硬質部3次元データ作成ステップと、
人体の前記装具装着部位の3次元データに基づいて、前記軟質部の3次元データを作成する軟質部3次元データ作成ステップと、
前記軟質部の3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、
作成された前記切り込み部位のデータに基づいて、前記軟質部の3次元データを展開して、前記軟質部の2次元データを作成する軟質部2次元データ作成ステップと、を備える、
装具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法、頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法、頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラム、及び装具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児や幼児に、例えば斜頭、短頭、長頭等の治療を要する頭蓋変形が生じる場合がある。斜頭は頭蓋が左右対称ではなく片側に傾斜している変形形状である。短頭は、頭蓋の前後方向寸法が著しく短い変形形状である。長頭は、頭蓋の前後方向寸法が著しく長い変形形状である。このような頭蓋変形を治療する装具として、頭部に被ることにより、頭蓋の成長に伴って頭蓋の形状が矯正されるように変形を促す頭蓋形状矯正ヘルメットが、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
矯正すべき頭蓋の外形に基づいて該シェルが粉末焼結積層造形法によって成形され、次いで該シェルの内面に発泡合成樹脂、好ましくは連続気泡発泡合成樹脂から形成されるインナーライナが配設される。シェル外縁の厚肉補強部を除き、インナーライナはシェルの内面における全面に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-169510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
頭蓋形状矯正ヘルメットは、個々の装着者に合わせて製造されることが好ましい。よって、シェルの形状は個々に異なる。そのため、シェルの内側の曲率も個々に異なっている。各ヘルメットに対してぴったりと貼り付けられるような形状にインナーライナをカットすることは手動では難しい。このため、曲率の影響が小さくなるように、インナーライナは複数に分割して貼り付けられ、その後に手動で細かな切断と調整とが行われていた。このように、個々の装着者に合わせて頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルおよびインナーライナを製造するのには手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、個々の装着者に合った形状の頭蓋形状矯正ヘルメットを効率的に製造することを可能とする頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法は、シェルと、シェルの内面側に配置されるインナーライナと、を備え、頭蓋の変形を矯正するために装着者の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法であって、装着者の頭部の3次元データに基づいて、シェルの3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、装着者の頭部の3次元データに基づいて、シェルの内面側に配置されるインナーライナの3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、インナーライナの3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位のデータに基づいて、インナーライナの3次元データを展開してインナーライナの2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える。
【0008】
(2)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法は、シェルが、シェルの3次元データに基づいて3次元加工機6により加工される3次元加工ステップと、インナーライナが、インナーライナの2次元データに基づいて2次元加工機により加工される2次元加工ステップと、を更に備える。
【0009】
(3)(1)又は(2)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、インナーライナ3次元データ作成ステップにおいて、インナーライナの3次元データは、シェルの3次元データに基づいて作成される。
【0010】
(4)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、シェルは、上側開口部及び下側開口部を有し、 インナーライナは、シェルの上側開口部側に位置する上縁とシェルの下側開口部側に位置する下縁を有し、切り込み部位データ作成ステップにおいて、切り込み部位のデータとして、上縁と下縁とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位のデータが作成される。
【0011】
(5)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁と下縁とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位のデータとして、上縁に開放し、下縁に開放していない第1の切り込み部位のデータが作成される。
【0012】
(6)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁と下縁とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位のデータとして、下縁に開放し、上縁に開放していない第2の切り込み部位のデータが作成される。
【0013】
(7)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁と下縁とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位のデータとして、上縁に開放し、下縁に開放していない第1の切り込み部位のデータと、下縁に開放し、上縁に開放していない第2の切り込み部位のデータと、が作成される。
【0014】
(8)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁と下縁とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位のデータとして、上縁及び下縁に開放している第3の切り込み部位のデータが作成される。
【0015】
(9)(5)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、第1の切り込み部位のデータは、装着者の頭部の3次元データの後頭部の位置に対応する位置に作成される。
【0016】
(10)(5)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、第1の切り込み部位のデータは、装着者の頭部の3次元データの前頭部の位置に対応する位置に作成される。
【0017】
(11)(6)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、シェルは、上側開口部から下側開口部まで上下方向に伸びるスリットを有し、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁と下縁とを結ぶ方向に伸びる第2の切り込み部位のデータは、シェルのスリットの位置の頭部反対側の位置に対応する位置に作成される。
【0018】
(12)(8)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、シェルは、上側開口部から下側開口部まで上下方向に伸びるスリットを有し、切り込み部位データ作成ステップにおいて、第3の切り込み部位のデータは、シェルのスリットの位置に対応する位置に作成される。
【0019】
(13)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、切り込み部位のデータとして、装着者の頭部の3次元データの耳に対応する位置から後頭部に対応する位置に向かって伸びる第4の切り込み部位のデータが作成される。
【0020】
(14)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法は、切り込み部位データ作成ステップにおいて、インナーライナの3次元データを構成する面の曲率が大きな領域に、切り込み部のデータを作成する。
【0021】
(15)(1)又は(2)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、シェルは、触診に用いられる複数の触診孔と、触診孔よりも小さい開口径の複数のシェル通気孔と、を有し、シェルの3次元データに、触診孔のデータ及びシェル通気孔のデータを作成する孔データ作成ステップを更に備え、触診孔のデータは、装着者毎に異なる頭部の3次元データの特徴形状に基づき作成される。
【0022】
(16)(1)又は(2)の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法において、インナーライナの3次元データに、開口部のデータを作成するステップを更に備え、開口部のデータは、シェルの触診孔のデータが作成された位置に対応する位置に作成される。
【0023】
(17)頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法は、シェルと、シェルの内面側に配置されるインナーライナと、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成方法であって、頭部の3次元データに基づいて、シェルの3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、頭部の3次元データに基づいて、シェルの内面側に配置されるインナーライナの3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、インナーライナの3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位のデータに基づいて、インナーライナの3次元データを展開してインナーライナの2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える。
【0024】
(18)頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラムは、シェルと、シェルの内面側に配置されるインナーライナと、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットの加工用データ作成プログラムであって、頭部の3次元データに基づいて、シェルの3次元データを作成するシェル3次元データ作成機能と、頭部の3次元データに基づいて、シェルの内面側に配置されるインナーライナの3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成機能と、インナーライナの3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成機能と、作成された切り込み部位のデータに基づいて、インナーライナの3次元データを展開してインナーライナの2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成機能と、をコンピュータに実現させる。
【0025】
(19)装具の製造方法は、硬質部と、硬質部よりも人体側に配置される軟質部と、を備える装具の製造方法であって、人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、硬質部の3次元データを作成する硬質部3次元データ作成ステップと、人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、軟質部の3次元データを作成する軟質部3次元データ作成ステップと、軟質部の3次元データに切り込み部位のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位のデータに基づいて、軟質部の3次元データを展開して、軟質部の2次元データを作成する軟質部2次元データ作成ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、個々の装着者に合った形状の頭蓋形状矯正ヘルメットを効率的に製造することを可能とする頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットが装着者に装着された状態を示す左前頭部からの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るインナーライナが装着者に装着された状態を示す左前頭部からの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法に係るハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本発明に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】本発明に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルが装着者に装着された状態を示す正面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルが装着者に装着された状態を示す側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルが装着者に装着された状態を示す背面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルが装着者に装着された状態を示す、右前頭部からの斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係るインナーライナが装着者に装着された状態を示す、右前頭部からの斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルが装着者に装着された状態を示す、右後頭部からの斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に係るインナーライナが装着者に装着された状態を示す、右後頭部からの斜視図である。
図14】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルが装着者に装着された状態を示す、左後頭部からの斜視図である。
図15】本発明の一実施形態に係るインナーライナが装着者に装着された状態を示す、左後頭部からの斜視図である。
図16A】本発明の一実施形態に係るインナーライナの3次元データを示す斜視図である。
図16B】本発明の一実施形態に係るインナーライナの3次元データが展開された2次元データを示す平面図である。
図17】本発明の一実施形態に係るインナーライナが平面上に置かれた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態1に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1が装着者200に装着された状態を示す斜視図である。頭蓋形状矯正ヘルメット1はシェル2とインナーライナ3とを備える。図2は、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3が装着者200に装着された状態を示す斜視図である。
【0030】
シェル2が頭蓋形状矯正ヘルメット1の外形を構成している。インナーライナ3は、シェル2の内表面に配置されて装着者200の頭部に接触する。インナーライナ3は、シェル2に重ねられる。インナーライナ3は、矯正対象の頭部が固いシェル2に直接押し付けられる場合に生じる頭皮へのダメージを和らげる働きを有する。インナーライナ3は、シェル2の内表面に、例えば面ファスナー(不図示)を介して着脱自在に装着される。インナーライナ3は、図1及び図2に示すように切り込み部位32を備える。この切り込み部位32を閉じるように2次元の板状体が変形されることにより、インナーライナ3は3次元形状を有する。
【0031】
頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造にあたっては、図3に示すように、3次元スキャナ4、情報処理装置5、3次元加工機6、2次元加工機7が用いられる。3次元スキャナ4は、装着者200の頭部の形状をスキャンして頭部の3次元情報を取得する。頭部の3次元情報は、頭蓋を覆う頭皮と頭髪とを含んだ情報である。3次元加工機6は、与えられた3次元データに基づいて3次元形状物を造形する。2次元加工機7は、与えられた2次元データに基づいて、板状体を2次元形状に切り取る。情報処理装置5は、詳細は後述するが、3次元スキャナ4で得られた装着者200の頭部形状に基づいて矯正により得られる頭蓋形状を割り出し、シェル2の3次元データを作成し、3次元加工機6に当該3次元データを送る。3次元加工機6はシェル2を造形する。情報処理装置5は、装着者200の頭部の形状の3次元データ或いはシェル2の3次元データに基づいてインナーライナ3の2次元データを作成する。そして、情報処理装置5は2次元加工機7にインナーライナ3の2次元データを送る。2次元加工機7はインナーライナ3を板状体から切り出す。
【0032】
図4は、本発明に係る情報処理装置5のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置5は、制御部10と、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、を備える。制御部10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インタフェース15とを有する。情報処理装置5は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータであってもよいし、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
【0033】
プロセッサ11は、各種演算及び処理を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。或いは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。又、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0034】
プロセッサ11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。プロセッサ11は、ROM12に記録されているプログラム又はRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていてもよい。
【0035】
バス14は入出力インタフェース15にも接続される。入出力インタフェース15には、入出力部16と、通信手段17と、記憶部18と、が接続されている。
【0036】
入出力部16は、有線又は無線により電気的に入出力インタフェース15に接続される。入出力部16は例えばキーボード及びマウス等の入力部と画像を表示するディスプレイ及び音声を拡声するスピーカ等の出力部とによって構成される。なお、入出力部16はタッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0037】
通信手段17は、プロセッサ11が、本発明の実施形態に係る3次元スキャナ4と、有線、或いは、図示されないインターネット等のネットワークを介して通信を行うための装置である。通信手段17は、3次元スキャナ4が接続されたコンピュータと、有線、或いは、ネットワークを介して接続されていてもよい。記憶部18は、プログラム、頭部の3次元データ、シェル2及びインナーライナ3の3次元データ、インナーライナ3の2次元データ等を記憶する例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体ドライブ(SSD)等の記憶装置である。
【0038】
図4に示したハードウェア構成は、あくまで一例であり、特にこの構成に限定されるわけではない。シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを、プロセッサとしての機能的構成を実現するものとして採用してもよい。情報処理装置5が記憶部18を有するのではなく、記憶部18が別途設けられる構成が採用されてもよい。
【0039】
情報処理装置5は、端末機能を有する他の情報処理装置とデータを送受信しクラウド型システムを構成してもよい。
【0040】
図5は、本発明に係る情報処理装置5の機能的構成を示すブロック図である。図5に示す各機能は、図4に示す情報処理装置5の有するプロセッサ11等により実現される。情報処理装置5は、機能ブロックとして、頭部3次元データ受付部101と、シェル3次元データ作成部102と、インナーライナ3次元データ作成部103と、切り込み部位データ作成部104と、インナーライナ2次元データ作成部105と、を有する。
【0041】
頭部3次元データ受付部101は、3次元スキャナ4がスキャンして得る頭部3次元データを受け付ける。シェル3次元データ作成部102は、装着者200の頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成する。インナーライナ3次元データ作成部103は、装着者200の頭部の3次元データに基づいて、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成する。切り込み部位データ作成部104は、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位32のデータを作成する。インナーライナ2次元データ作成部105は、インナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成する。入出力部16、通信手段17、記憶部18を通して、情報処理装置5の外部装置との間でデータが交換される。
【0042】
図6は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法の流れを示すフローチャートである。頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法について、図6のフローチャートを中心に、図7から図17を適宜参照して説明する。
【0043】
図7は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル2が装着者200に装着された状態を示す正面図である。図8は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル2が装着者200に装着された状態を示す側面図である。図9は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル2が装着者200に装着された状態を示す背面図である。図10は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル2が装着者200に装着された状態を示す、右前頭部からの斜視図である。図11は、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3が装着者200に装着された状態を示す、右前頭部からの斜視図である。図12は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル2が装着者200に装着された状態を示す、右後頭部からの斜視図である。図13は、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3が装着者200に装着された状態を示す、右後頭部からの斜視図である。図14は、本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1のシェル2が装着者200に装着された状態を示す、左後頭部からの斜視図である。図15は、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3が装着者200に装着された状態を示す、左後頭部からの斜視図である。図16Aは、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3の3次元データを示す斜視図である。図16Bは、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3の3次元データが展開された2次元データを示す平面図である。図17は、本発明の一実施形態に係るインナーライナ3が平面上に置かれた状態の斜視図である。
【0044】
製造方法がスタートすると(図6、スタート)、装着者200の頭部形状が3次元スキャナ4によりスキャンされる(図6、ステップS101)。3次元スキャンの方法としては、多くの方法が提案されている。例えば、レーザを装着者200の頭部に縦横に網の目状にスキャンし、頭部におけるレーザの反射パターンを撮影する。その後、撮影された網の目パターンの歪みに基づいて矯正された頭蓋形状が計算される。或いは、目印のついた帽子を装着者200の頭部に被せ、目印の位置を撮影する。その後、撮影された目印の位置に基づいて頭部の頭蓋形状が計算される。3次元スキャナ4は、症例によって異なる形状を有する個々の患者の頭部の3次元情報を取得する。頭部の3次元情報は、複数の静止画であってもよいし、動画情報であってもよい。3次元スキャナ4により取得されたデータは、情報処理装置5にそのまま送信されてもよい。この場合は、情報処理装置5は、不図示の頭部3次元データ作成部を有している。或いは、3次元スキャナ4により取得されたデータは、3次元スキャナ4に接続されているコンピュータによって装着者200の頭部の3次元データに変換された後に、情報処理装置5に送信されてもよい。この場合は、3次元スキャナ4に接続されているコンピュータは、頭部3次元データ作成部を有している。
【0045】
情報処理装置5の制御部10の頭部3次元データ受付部101は、3次元スキャナ4が取得したデータに基づく装着者200の頭部の3次元データを取得する3次元データ取得処理を実行する(図6、ステップS102)。頭部3次元データ受付部101は、症例によって異なる形状を有する個々の患者の頭部の3次元データを取得する。
【0046】
シェル3次元データ作成部102は、頭部の3次元データに基づいて、矯正後の頭蓋形状の目安となる丸い頭部3次元データを作成する。例えば、成長が進んで出っ張っている頭部の位置を基準にして丸い頭蓋形状が求められる。ここでは、例えば、頭蓋の出っ張っている部分に圧力を加えるというのではなく、それ以上出っ張らないように丸い頭蓋形状が策定される。シェル3次元データ作成部102は、上記の丸い頭蓋形状に基づいて、シェル2の3次元データを作成する。ここで、例えば、上記の丸い頭蓋形状がインナーライナ3の装着者側の面の3次元形状となる。シェル3次元データ作成部102は、インナーライナ3がシェル2の内面に装着された状態で装着者200に対して最適となるように、シェル2の形状を3次元データとして策定する、シェル3次元データ作成処理を実行する(図6、ステップS103)。
【0047】
装着者200の頭蓋で成長が遅れている部分においては、上記の丸い頭部形状とシェル2との間に隙間がある。例えば、斜頭症においては、斜めに大きく伸びた頭蓋の方向が成長方向であり、伸びていない方向が成長が遅れた方向であり、成長が遅れた部分において平坦な部位が例えば観察され得る。例えば、この平坦な位置に隙間が生じる。この隙間を触診し、矯正度合いを見積もるために、図7から図9に示すように触診孔22がシェル2に設けられる。触診孔22は、頭がゆがんでいる箇所に大きく空いているボロノイ形状で設けられる。これにより通気性が向上していることに加え、医師が指等で成長具合を確認することができる。又、頭部から発生する汗を蒸散させるために、シェル通気孔21がシェル2に設けられる。ボロノイ形状を構成するシェル2の部位にシェル通気孔21が重なるとボロノイ形状が損なわれ、結果としてシェル2の強度が損なわれる可能性がある。これを考慮して、触診孔22とその周囲を避けてシェル通気孔21の位置が設計される。このように、シェル3次元データ作成部102は、症例によって異なる形状を有する個々の患者の頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成する。
【0048】
シェル2の3次元データは通信手段17を通して、3次元加工機6に送られる。3次元加工機6としては、好ましくは3次元プリンタが用いられる。3次元加工機6は、例えば、紫外線硬化型の3次元プリンタである。紫外線硬化型の3次元プリンタにおいては、紫外線照射部位に紫外線硬化樹脂が固化固定され、設計に対して正確な造形が可能である。このため紫外線硬化型の3次元プリンタが特に好ましい。但し、3次元加工機6は、紫外線硬化型以外の3次元プリンタでもよいし、3次元プリンタ以外であってもよい。3次元加工機6によりシェル2が製造される、シェル3次元加工処理が実行される(図6、ステップS107)。
【0049】
インナーライナ3次元データ作成部103は、上記丸い頭部3次元データ、或いは/及びシェル2の3次元データに基づいてインナーライナ3の頭蓋側の面の3次元データを設計、作成する。インナーライナ3次元データ作成処理が実行される(図6、ステップS104)。球面状のデータを1枚の2次元データとして展開する場合、展開のための切り込みの3次元データへの入れ方に依存してインナーライナ3の形状が大きく変化し、シェル2に貼り付けてもうまくサイズが合わない。
【0050】
切り込み部位データ作成部104は、インナーライナ3の3次元データに基づいてインナーライナ3の3次元データに切り込みを入れ、切り込み部位32を設計、作成する。切り込み部位データ作成処理が実行される(図6、ステップS105)。切り込み部位データ作成部104は、頭部の3次元データ、シェル2の3次元データに基づいて、切り込み部位32を作成してもよい。
【0051】
シェル2は図1に示すように、上側開口部23及び下側開口部24とを有する。これらに対応して、インナーライナ3は、図2に示すように、シェル2の上側開口部23の側に位置する上縁33と、シェル2の下側開口部24の側に位置する下縁34とを有する。インナーライナ3次元データ作成部103は、図2に示すように、切り込み部位32のデータとして、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータを作成する。
【0052】
切り込み部位データ作成部104は、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、上縁33に開放し、下縁34に開放していない第1の切り込み部位32aのデータを作成する。第1の切り込み部位32aのデータは、例えば、図13に示すように、装着者200の頭部の3次元データの後頭部の位置に対応する位置に作成される。特に、第1の切り込み部位32aは、図13に示すように、後頭部の位置に対応する位置の2か所に作成されることが好ましい。第1の切り込み部位32aのデータは、例えば、図2或いは図11に示すように、装着者200の頭部の3次元データの前頭部の位置に対応する位置に作成される。特に、第1の切り込み部位32aは、図2或いは図11に示すように、前頭部の位置に対応する装着者200の前頭部中央の位置の1か所に作成されることが好ましい。
【0053】
切り込み部位データ作成部104は、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、下縁34に開放し、上縁33に開放していない第2の切り込み部位32bのデータを、例えば図2図15に示すように作成する。シェル2は、上側開口部23から下側開口部24まで上下方向に伸びるスリット25を、例えば図10及び図12に示すように、有する。インナーライナ3次元データ作成部103は、第2の切り込み部位32bのデータをシェル2のスリット25の位置の頭部反対側の位置に対応する位置に、例えば図2或いは図15に示すように、作成する。
【0054】
切り込み部位データ作成部104は、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、上縁33及び下縁34に開放している第3の切り込み部位32cのデータを作成する。シェル2は、上側開口部23から下側開口部24まで上下方向に伸びるスリット25を、例えば図10及び図12に示すように有する。切り込み部位データ作成部104は、シェル2のスリット25の位置に対応する位置に第3の切り込み部位32cのデータを、例えば図11及び図13に示すように、作成する。
【0055】
第3の切り込み部位32cのデータは、1か所であることが好ましい。これにより、頭部およびシェル2の形状にフィットするインナーライナ3を、1枚のインナーライナ3で形成することができる。但し、第3の切り込み部位32cのデータは、2か所以上であってもよい。好ましくは、第3の切り込み部位32cのデータは2か所以下である。これにより、頭部およびシェル2の形状にフィットするインナーライナ3を、1枚または2枚のインナーライナ3で形成することができる。これにより、出来上がったインナーライナ3の管理および交換も簡単となる。
【0056】
切り込み部位データ作成部104は、切り込み部位32のデータとして、装着者200の頭部の3次元データの耳に対応する位置から後頭部に対応する位置に向かって伸びる第4の切り込み部位32dのデータを図13に示すように作成する。
【0057】
切り込み部位データ作成部104は、インナーライナ3の3次元データを構成する面の曲率が大きな領域、即ち曲率半径の小さい領域に、切り込み部位32のデータを作成する。ここで、曲率が大きな領域の判別には、例えば、インナーライナ3の3次元データの各点について、周りのデータとの関係から、曲率を計算する。曲率の極大となっている点と上縁33或いは下縁34との近い側とを結んで、上縁33或いは下縁34と垂直に切り込み部位32を設ける。このように、切り込み部位データ作成部104は、症例によって異なる形状を有する個々の患者の頭部の3次元データに基づいて、インナーライナ3の切り込み部位32を作成する。
【0058】
シェル2は、図14に示すように、触診に用いられる複数の触診孔22と、触診孔22よりも小さい開口径の複数のシェル通気孔21と、を有する。シェル3次元データ作成部102は、シェル2の3次元データに、触診孔22のデータ及びシェル通気孔21のデータを作成する。触診孔22のデータは、装着者200毎に異なる頭部の3次元データの特徴形状に基づき作成される。触診孔22は、成長の遅れている頭蓋部分に設けられる。例えば斜頭の場合には、斜めに伸びている頭蓋において、中心からの距離が短い部分に設けられる。例えば右斜め後頭部に触診孔22は設けられる。例えば短頭の場合には、前後に頭蓋が短い即ち成長が遅れているので、後頭部に触診孔22は設けられる。切り込み部位データ作成部104は、インナーライナ3の3次元データに、開口部35及び開口部35から下縁34まで伸びる第5の切り込み部位32eのデータを作成するステップを更に備える。開口部35のデータは、シェル2の触診孔22のデータが作成された位置に対応する位置に作成される。例えば、図14で触診孔22が複数設けられているが、これら触診孔22を包含するように開口部35が図15に示すように設けられる。更に、開口部35で最も下縁34に近い部位から下縁34に対して、開口部35と下縁34との双方に略垂直となるように第5の切り込み部位32eのデータが作成される。図15に示す例においては、開口部35が左耳に対応する下縁34の近傍に位置するため、第5の切り込み部位32eは、第4の切り込み部位32dを兼ねる。
【0059】
開口部35は、図14では閉じた略円形を成している。開口部35は、開口部35の一部が上縁33あるいは下縁34の一部にかかり、インナーライナ3を大きく欠いた切り欠きの形になっている場合も含む。
【0060】
インナーライナ2次元データ作成部105は、切り込み部位32のデータの加えられたインナーライナ3の3次元データに基づいて、インナーライナ3の3次元データを展開し、インナーライナ3の2次元データを作成する。インナーライナ2次元データ作成処理が実行される(図6、ステップS106)。例えば、図16Aに示されるインナーライナ3の3次元データが展開されて、図16Bに示されるインナーライナ3の2次元データが作成される。ここで、図16A及び図16Bにおいては、インナーライナ通気孔31の図示が省略されている。
【0061】
インナーライナ2次元データは、通信手段17を通して、2次元加工機7に送られる(図6、ステップS108)。2次元加工機7は、例えば、NCルータ加工機である。2次元加工機7は、自動でデータに基づいてカットを行う。レーザ加工の場合には、レーザ光線が目に危険であり、インナーライナ3の材料が溶ける、焦げる等が発生し、臭いがつくとともに切り口がガタガタになるという問題が生じることがある。NCルータ加工機によるカットではこれらの問題は生じない。但し、2次元加工機7は、NCルータ加工機に限らず、レーザ加工機等、他の加工機であってもよい。又、インナーライナ3の角は、とがらないように丸みを持たせることが好ましい。乳児の頭部或いは頭皮に優しい頭蓋形状矯正ヘルメット1が実現される。
【0062】
上記実施形態では、頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法について説明した。その中で、頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データの作成方法も併せて説明されている。頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成方法は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3と、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成方法であって、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位32のデータを作成し、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、インナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える。
【0063】
上記実施形態では、頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法について説明した。その中で、頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラムが情報処理装置5に頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データの作成を実行させている。頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラムは、シェル2と、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3と、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラムであって、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成するシェル3次元データ作成機能と、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成機能と、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位32のデータを作成し、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、インナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成機能と、をコンピュータに実行させる。
【0064】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、頭蓋形状矯正ヘルメット1に限定されていた。上記の製造方法及び加工用データ作成方法は、頭蓋形状矯正ヘルメット1に限定されず、硬質部と、硬質部よりも人体側に配置される軟質部と、を備える装具の製造方法及び加工用データ作成方法として有効である。
【0065】
装具とは、例えばギブスである。硬質部は適用箇所が動かないように固定する例えば硬質プラスチック、例えばアクリル製或いはポリカーボネートの板状物質である。硬質部は固定箇所の形状に合わせて成形されている。この板状の硬質部を直接人体に適用すると点或いは線での接触部により痛みを伴ったり皮膚が赤化する等の問題が生じ得る。軟質部は例えばポリウレタンフォームである。ポリウレタンフォームは柔軟性があり、面でギブスが人体に接触するように働く。軟質部としてのポリウレタンフォームが存在することにより、仮に硬質部が人体に接触するような場合に生じ得る上述の問題の発生を低減する。
【0066】
装具の製造方法は、硬質部と、硬質部よりも人体側に配置される軟質部と、を備える装具の製造方法であって、人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、硬質部の3次元データを作成する硬質部3次元データ作成ステップと、人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、軟質部の3次元データを作成する軟質部3次元データ作成ステップと、軟質部の3次元データに切り込み部位32のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、軟質部の3次元データを展開して、軟質部の2次元データを作成する軟質部2次元データ作成ステップと、を備える。
【0067】
人体に装着される装具は、個々の装着部位に合わせて製造されることが好ましい。よって、硬質部の内側の3次元的な形状も個々に異なることになる。この場合、装着部位毎の個々の硬質部に対してフィットするような形状の軟質部を製造するのには手間がかかる。上述の装具の製造方法によれば、個々の装着部位に合った形状の装具を効率的に製造することが可能となる。また、これにより、硬質部の3次元データと当該硬質部にフィットする軟質部の2次元データとが容易に作成され得る。
【0068】
(変形例3)
装具、或いは、曲面を有する硬質部と重なって配置される曲面を有する軟質部を備える構造体、の加工用データ作成方法が開示される。
【0069】
曲面を有する硬質部と、硬質部と重なって配置される曲面を有する軟質部と、を備える構造体の加工用データ作成方法であって、構造体の加工用データ作成方法は、構造体によって少なくとも一部が覆われる、曲面を有する対象物の3次元データを取得するステップと、対象物の3次元データに基づいて、硬質部の3次元データを作成する硬質部3次元データ作成ステップと、対象物の3次元データに基づいて、硬質部と重なって配置される軟質部の3次元データを作成する軟質部3次元データ作成ステップと、軟質部の3次元データに切り込み部位32のデータを作成し、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、軟質部の3次元データを展開して軟質部の2次元データを作成する軟質部2次元データ作成ステップと、を備える。この加工用データ作成方法は、例えば、硬質部と、硬質部よりも対象物側に配置される軟質部と、を備える構造体の製造方法にも適用できる。
【0070】
硬質部及び硬質部よりも対象物側に配置される軟質部を備える構造体が、個々の対象物の形状に合わせて製造される場合、硬質部の内側の3次元的な形状も個々に異なってくる。この場合、対象物毎の個々の硬質部に対してフィットするような形状の軟質部を製造するのには手間がかかる。上述の加工用データ作成方法によれば、個々の対象物に合った形状の構造体を効率的に製造することを可能とする加工用データを作成することができる。また、上記データ作成方法により、硬質部と軟質部とを備える構造体の加工用データを容易に作成することができる。
【0071】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。又、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0072】
以上説明した実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法、頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成方法、頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラム、及び装具の製造方法によれば以下のような効果が奏される。
【0073】
(1)頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3と、を備え、頭蓋の変形を矯正するために装着者200の頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法であって、装着者200の頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、装着者200の頭部の3次元データに基づいて、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位32のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、インナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える。
【0074】
これにより、個々の装着者200に合った形状の頭蓋形状矯正ヘルメット1を効率的に製造することを可能とする頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法が提供される。また、頭部への良好な装着性と良好な形状矯正効果とを有する頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法が提供される。同一の患者の3次元データに基づいて、シェル2とインナーライナ3の両方が製造される。インナーライナ3の3次元データをから2次元データへ展開する際、事前に3次元データに切れ目をいれておくことで、2次元に展開したインナーライナ3をシェル2に張り付ける際にしわができず、サイズもぴったりとフィットする。
【0075】
(2)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法は、シェル2が、シェル2の3次元データに基づいて3次元加工機6により加工される3次元加工ステップと、インナーライナ3が、インナーライナ3の2次元データに基づいて2次元加工機7により加工される2次元加工ステップと、を更に備える。
【0076】
これにより、インナーライナ3は適切な形状に自動的に加工され得る。
【0077】
(3)(1)又は(2)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、インナーライナ3次元データ作成ステップにおいて、インナーライナ3の3次元データは、シェル2の3次元データに基づいて作成される。
【0078】
これにより、シェル2に対して適合し、皺や隙間なく貼り付けることができるインナーライナ3が実現され得る。
【0079】
(4)(1)から(3)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、シェル2は、上側開口部23及び下側開口部24を有し、インナーライナ3は、シェル2の上側開口部23側に位置する上縁33とシェル2の下側開口部側に位置する下縁34を有し、切り込み部位データ作成ステップにおいて、切り込み部位32のデータとして、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータが作成される。
【0080】
これにより、上縁33と下縁34とが同一平面上にないインナーライナ3を、単一平面上に展開し得る形状に変換し得る形が実現され得る。
【0081】
(5)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、上縁33に開放し、下縁34に開放していない第1の切り込み部位32aのデータが作成される。
【0082】
これにより、3次元立体形状を有する上縁33を平面上に展開し得る形状に変換し得る。
【0083】
(6)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、下縁34に開放し、上縁33に開放していない第2の切り込み部位32bのデータが作成される。
【0084】
これにより、3次元立体形状を有する下縁34を平面上に展開し得る形状に変換し得る。
【0085】
(7)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、上縁33に開放し、下縁34に開放していない第1の切り込み部位32aのデータと、下縁34に開放し、上縁33に開放していない第2の切り込み部位32bのデータと、が作成される。
【0086】
これにより、3次元立体形状を有する上縁33と下縁34とを同時に平面上に展開し得る形状に変換し得る。
【0087】
(8)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる切り込み部位32のデータとして、上縁33及び下縁34に開放している第3の切り込み部位32cのデータが作成される。
【0088】
これにより、環状のインナーライナ3を帯状に変換し、平面状に変換し得る。インナーライナ3は1枚のクッションとして切り出せるようになり、脱着の利便性が向上する。
【0089】
(9)(5)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、第1の切り込み部位32aのデータは、装着者200の頭部の3次元データの後頭部の位置に対応する位置に作成される。
【0090】
これにより、特に丸く高い曲率を有する後頭部に対応するインナーライナ3を平面状に変換し得る。
【0091】
(10)(5)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、第1の切り込み部位32aのデータは、装着者200の頭部の3次元データの前頭部の位置に対応する位置に作成される。
【0092】
これにより、特に、フィット感に敏感な前頭部においてインナーライナ3の皺やシェル2との間への間隙の発生が抑えられ、フィット感に優れた頭蓋形状矯正ヘルメット1が実現され得る。
【0093】
(11)(6)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、シェル2は、上側開口部23から下側開口部24まで上下方向に伸びるスリット25を有し、切り込み部位データ作成ステップにおいて、上縁33と下縁34とを結ぶ方向に伸びる第2の切り込み部位32bのデータは、シェル2のスリット25の位置の頭部反対側の位置に対応する位置に作成される。
【0094】
これにより、環状のインナーライナ3において、切断線と反対側に生じる大きな応力或いはそれに伴う歪みが逃がされ、インナーライナ3の全体において、皺の発生が抑えられる。
【0095】
(12)(8)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、シェル2は、上側開口部23から下側開口部24まで上下方向に伸びるスリット25を有し、切り込み部位データ作成ステップにおいて、第3の切り込み部位32cのデータは、シェル2のスリット25の位置に対応する位置に作成される。
【0096】
これにより、インナーライナ3はスリット25の位置を基準に切断されることとなり、インナーライナ3をスリット25を有するシェル2に位置を合わせて貼り付けることができる。
【0097】
(13)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、切り込み部位データ作成ステップにおいて、切り込み部位32のデータとして、装着者200の頭部の3次元データの耳に対応する位置から後頭部に対応する位置に向かって伸びる第4の切り込み部位32dのデータが作成される。
【0098】
これにより、耳にシェル2及びインナーライナ3がかかることのないように、耳に対応する位置に設けられるインナーライナ3の切り欠きに起因する皺或いは歪みが軽減され得る。
【0099】
(14)(4)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法は、切り込み部位データ作成ステップにおいて、インナーライナ3の3次元データを構成する面の曲率が大きな領域に、切り込み部位32のデータを作成する。
【0100】
これにより、曲率の大きな領域に発生し得る皺や歪みが軽減され得る。
【0101】
(15)(1)から(14)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、シェル2は、触診に用いられる複数の触診孔22と、触診孔22よりも小さい開口径の複数のシェル通気孔21と、を有し、シェル2の3次元データに、触診孔22のデータ及びシェル通気孔21のデータを作成する孔データ作成ステップを更に備え、触診孔22のデータは、装着者200毎に異なる頭部の3次元データの特徴形状に基づき作成される。
【0102】
これにより、装着者200毎に異なる頭部に対応して、個々の装着者200に対応した適切な頭蓋形状矯正ヘルメット1が実現され得る。
【0103】
(16)(1)から(14)の頭蓋形状矯正ヘルメット1の製造方法において、インナーライナ3の3次元データに、開口部35を作成するステップを更に備え、開口部35のデータは、シェル2の触診孔22のデータが作成された位置に対応する位置に作成される。
【0104】
これにより、頭がゆがんでいる箇所に大きく空いているボロノイ形状の触診孔22を避ける形でインナーライナ3はカットされている。通気性が向上していることに加え、医師が指等で成長具合を確認することができる。
【0105】
(17)頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成方法は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3と、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成方法であって、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成するシェル3次元データ作成ステップと、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成ステップと、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位32のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位32のデータに基づいてインナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成ステップと、を備える。
【0106】
これにより、個々の装着者200に合った形状の頭蓋形状矯正ヘルメット1を効率的に製造することを可能とする頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成方法が提供される。インナーライナ3の3次元データをから2次元データへ展開する際、事前に3次元データに切れ目をいれておくことで、2次元に展開したインナーライナ3をシェル2に張り付ける際にしわができず、サイズもぴったりとフィットする。
【0107】
(18)頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラムは、シェル2と、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3と、を備え、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラムであって、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の3次元データを作成するシェル3次元データ作成機能と、頭部の3次元データに基づいて、シェル2の内面側に配置されるインナーライナ3の3次元データを作成するインナーライナ3次元データ作成機能と、インナーライナ3の3次元データに切り込み部位32のデータを作成する切り込み部位データ作成機能と、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、インナーライナ3の3次元データを展開してインナーライナ3の2次元データを作成するインナーライナ2次元データ作成機能と、をコンピュータに実現させる。
【0108】
これにより、個々の装着者200に合った形状の頭蓋形状矯正ヘルメット1を効率的に製造することを可能とする頭蓋形状矯正ヘルメット1の加工用データ作成プログラムが提供される。インナーライナ3の3次元データをから2次元データへ展開する際、事前に3次元データに切れ目をいれておくことで、2次元に展開したインナーライナ3をシェル2に張り付ける際にしわができず、貼合位置が整合する。
【0109】
(19)硬質部と、硬質部よりも人体側に配置される軟質部と、を備える装具の製造方法であって、人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、硬質部の3次元データを作成する硬質部3次元データ作成ステップと、人体の装具装着部位の3次元データに基づいて、軟質部の3次元データを作成する軟質部3次元データ作成ステップと、軟質部の3次元データに切り込み部位32のデータを作成する切り込み部位データ作成ステップと、作成された切り込み部位32のデータに基づいて、軟質部の3次元データを展開して、軟質部の2次元データを作成する軟質部2次元データ作成ステップと、を備える、装具の製造方法。
【0110】
これにより、人体への良好な装着性を有する装具の製造方法が提供される。軟質部の3次元データをから2次元データへ展開する際、事前に3次元データに切れ目をいれておくことで、2次元データに展開した軟質部を硬質部に張り付ける際にしわができず、サイズもぴったりとフィットする。
【符号の説明】
【0111】
1 頭蓋形状矯正ヘルメット
2 シェル
10 制御部
11 プロセッサ
12 ROM
13 RAM
14 バス
15 入出力インタフェース
16 入出力部
17 通信手段
18 記憶部
21 シェル通気孔
22 触診孔
23 上側開口部
24 下側開口部
25 スリット
3 インナーライナ
31 インナーライナ通気孔
32 切り込み部位
32a 第1の切り込み部位
32b 第2の切り込み部位
32c 第3の切り込み部位
32d 第4の切り込み部位
32e 第5の切り込み部位
33 上縁
34 下縁
35 開口部
4 3次元スキャナ
5 情報処理装置
6 3次元加工機
7 2次元加工機
101 頭部3次元データ受付部
102 シェル3次元データ作成部
103 インナーライナ3次元データ作成部
104 切り込み部位データ作成部
105 インナーライナ2次元データ作成部
200 装着者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17