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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031417
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】複数事業所の災害一元管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 23/00 20060101AFI20240229BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20240229BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G08B23/00 510D
H04M11/04
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134958
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】玉田 善久
(72)【発明者】
【氏名】藤村 裕人
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅之
(72)【発明者】
【氏名】村上 滋
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5K201
【Fターム(参考)】
5C086AA12
5C086AA13
5C086AA22
5C086BA20
5C086DA14
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087BB74
5C087DD02
5C087DD20
5C087EE05
5C087EE18
5C087FF01
5C087GG08
5C087GG66
5K201BA03
5K201CC04
5K201CC08
5K201CC09
5K201DC04
5K201EC06
5K201ED09
5K201EF09
5K201FA03
(57)【要約】
【課題】多数の事業所に対する自然災害の一元管理システムに関し、各事業所にコスト負担を生じさせることなく、被災のおそれのある事業所を自動で検知し、更に被災の態様の推測も可能にする。
【解決手段】各事業所の稼働データを継続的に取得しているシステムにおいて、気象データの取得手段を備え、当該手段が取得した気象データの異常を判別して各観測地点の周囲の災害発生の可能性のある対象区域を定め、対象区域内の事業所の稼働データの変化から被害の有無及び被災態様を推測し、適切かつ速やかな復旧作業の支援ができるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の事業所の稼働情報を各事業所毎に記録するデータセンタを備えた管理元に設置される災害管理システムであって、観測地点情報を含む気象データの取得手段と、災害発生の可能性のある異常気象データを受信したときにその異常気象データの地点情報に対応して予め設定された被災可能性区域内に所在する事業所を抽出し、前記データセンタから取得した抽出された事業所の稼働情報と観測された異常気象のデータとを表示する、複数事業所の災害一元管理システム。
【請求項2】
前記事業所が貯蔵タンクを備えた石油等の給油所であり、前記表示される稼働情報が、異常気象データの受信前後の、貯蔵タンクからの出庫量を計測している計量器の稼働率、前記計量器の計測量及び貯蔵タンクの貯蔵量とを含んでいる、請求項1記載の災害一元管理システム。
【請求項3】
前記気象データが、所定の各観測地点で計測された震度、最大風速及び降水量を含むデータである。請求項1又は2記載の災害一元管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広範囲の地域に多数の事業所を展開してそれらの事業所の一元管理を行っている管理元の災害管理システムに関するもので、特に自然災害に対する傘下の事業所の被災のおそれや有無ないし被災状況を速やかに把握できるようにした上記システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
全国的に多数の給油所を展開してこれらの事業所に石油等を供給している石油元売り業者や石油等販売業者は、傘下の事業所(給油所など)の貯蔵タンクの入庫量、POS(ポイントオブセールス)情報に含まれる貯蔵タンクからの出庫量、貯蔵タンクの液面計の検出値ないし当該検出値から算出したタンクの貯蔵量(在庫量)などの稼働データを受信して記録及び管理を行っている。
【0003】
図3、4に示すように、各給油所2は、販売データなどの送受信機21を備え、タンクローリーで受け入れた石油等を地下に設けた貯蔵タンク22に貯蔵し、計量器23で計量・販売した出庫量をPOS端末24から管理元1のデータセンタ10に送ると共に、タンク22に設けた液面計25の検出値ないし当該検出値から算出した在庫量を管理元1のデータセンタ10に送って記録している。
【0004】
管理元1は、データセンタ10の記録を見ることにより、各給油所の販売量や販売頻度、タンク22の在庫量や入庫量などを元に、各給油所の稼働状態を知ることができ、入庫量と出庫量の差と貯蔵量とからタンク22の健全性を推測することもできる。
【0005】
データセンタ10に記録されているデータ(以下、「稼働データ」という。)は、例えば図1に示すように、POS稼働情報、日計精算データ、給油取引データ、タンク在庫データ、給油所基本台帳、オーソリ取引データなどで、これらは各給油所毎に記録されている。
【0006】
このようなデータセンタを所有する管理元1は、地震や風水害などの災害が発生したときには、各種メディアで報道される被災区域に存在する給油所2に電話などで被災の有無及び程度を確認し、被災があった給油所には、営業を継続ないし再開するのに必要な復旧計画を立案してその遂行を実施ないし補助している。
【0007】
被災の有無や程度を判断する手段として、災害発生時に各給油所等に電話などで状況を確認する手段のほか、被災状況を検知する手段として、特許文献1は、災害対策する工場や石油・ガスなどの貯蔵施設などの各所に火災感知器、原油やガスなどの貯蔵物の漏洩感知器、地震計、傾斜計、温度計、湿度計などを配置することを挙げている。
【0008】
また特許文献2では、複数の給油所の状況データを一元管理しているデータセンタが各給油所の計量機に設置された感震センサから災害発生の通知を受けたときに、給油所の集中監視装置のデータを受信し、給油所の作業員が所持している携帯端末に被害状況を通知するように促し、これらから得られた被害状況を当該地域の車両の携帯端末に通知する給油所システムが提案されている。
【0009】
なお本願出願人は、特許文献3において、地下タンク内の液体の貯蔵量を計測する液面計と、タンクからの出庫量を計測する計量手段とを備えた液体タンクに採用されるシステムであって、早期にタンクの漏洩の発見並びに定常時及び非常時におけるタンクの稼働状態の監視をより速やかにかつ正確に行うことができる液体タンクの監視システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-077084号公報
【特許文献2】特開2018-184200号公報
【特許文献3】特開2019-131291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、石油元売り業者等の管理元1は、地震、大雪、台風などの災害が発生するおそれがあると判断したとき、被災の可能性がある事業所の営業可否の状況や貯蔵タンクの被災状況を電話で聴取したり現地に行って確認しており、手間と時間がかかり、速やかな被災態様の把握や復旧作業の遅延の要因となっている。
【0012】
特許文献1、2のように、各給油所に設置した感震センサなどの各種センサで災害発生を自動で検知する手段では、雨量を検出する降雨計、風速を検出する風速計など、災害の種類毎にセンサと当該センサの計測値を送信する装置を事業所毎に設置しなければならないため、大口の事業所などの少数の事業所にしか採用できず、多数の事業所に対しては従来と同様に、各事業所の従業者の携帯電話などに被災の有無や程度を問い合わせることになる。
【0013】
この発明は、多数の事業所に災害の種類毎に特定のセンサを設置するなどの膨大なコスト負担を生じさせることなく、自然災害が発生したときに多数の給油所などの事業所の中から被災のおそれのある事業所を自動で検知し、更に被災の態様の推測も可能なシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、自然災害が発生したときに、石油元売り業者などの管理元1が収集している傘下の事業所2の稼働データと気象庁3が発表している気象データ31やハザードマップのデータから、個々の事業所2の被害の有無及び被災態様を推測し、客観的で適切かつ速やかな復旧作業の支援ができるようにしたものである。
【0015】
この発明の複数事業所の災害一元管理システムは、観測地点情報を含む気象データの取得手段13と、取得した気象データが異常気象データで有るかどうかを判別するために設定された閾値を記憶する閾値メモリ15と、各観測地点の周囲の災害発生の可能性のある区域(以下、「対象区域」と言う。)を定めるための対象区域設定手段16とを備えている。
【0016】
そして、気象庁3が公開している最大風速、震度、降水量などの気象データ31から被害を受ける可能性がある対象区域を自動で判別し、対象区域に立地する事業所のPOSデータなどから得られる営業状態や出庫量、タンクの液面計などから得られる在庫量のデータなどを自動で収集し、事業所の被害の有無及び被害の態様、対象区域の被災に起因する営業状況の変化などで対象事業所の被害状況を把握する。
【0017】
具体的には、気象庁3がインターネット5上で発表する地震の震度、台風や竜巻の風速、降水量や降雪量について、それぞれについて予め設定した閾値を超えた気象の観測地点から想定される対象区域内の事業所を自動抽出し、抽出した事業所からの稼働データ20の受信の有無及び災害発生後に受信した稼働データと発生前の稼働データと対比して、被災の可能性を自動判別することにより、各事業所の被災状況を把握することで、速やかな復旧・支援が可能になる。
【0018】
災害発生後のデータとして、電話などで取得した被災情報を入力して管理サーバ11のメモリ19に記録することも容易であり、更に、被災状況を地図アプリで表示する、被災状況を集計管理する、SIR(Statistical Inventory Reconciliation)分析会社などのデータ分析会社4に稼働データや被災情報を提供して詳細な分析をするなどして、災害に対する総合的ないし長期的に対応することも可能になる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、災害発生時に被災のおそれのある事業所の速やかな抽出が可能で、災害発生前の稼働データと災害発生後のデータとを対比することで、被災の態様を推測することもでき、多数の事業所2を管理している管理元1が各事業所の被災の可能性を客観的かつ速やかに判断することができるから、被災した事業所に対する適切な復旧計画の策定や実施ないし援助を行うことができるという効果がある。
【0020】
また、この発明のシステムで取得した各事業者毎の被災履歴や災害発生時の稼働履歴を管理元のデータセンタに記録しておくことにより、総合的かつ長期的な災害対応も可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の一実施例を示すシステム構成図
図2図1のシステムにおける災害発生時のデータ処理手順を示すフローチャート
図3】複数事業所と管理元のデータセンタを示す模式図
図4】事業所の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照してこの発明の被災事業所管理システムの実施形態を説明する。図の被災事業所管理システムは、災害管理サーバ11及び災害管理PC12で構成されている。災害管理サーバ11は、気象データ取得手段13を備え、気象庁3が定期的に公表する各観測地点の気象データを受信している。受信する気象データは、各観測地点毎の例えば現在気象庁がXML形式でインターネット5上に公開している各観測地点毎の震度、最大風速、降水量、降雪量などの気象データである。
【0023】
災害管理サーバ11には、データセンタ10が記憶している各事業所毎の稼働データ20から価格情報や顧客情報などを除いた、各事業所毎の計量器稼働情報、石油等の入出庫情報、在庫情報などの事業所稼働情報をデータセンタ10から取得して記憶する稼働データ選択取得手段14を備えている。
【0024】
更に管理サーバ11は、気象データの種類、すなわち震度、降水量、降雪量などの種類毎に、災害のおそれの有無を判断する際の閾値を設定する閾値メモリ15を備えている。閾値メモリ15の閾値は、災害管理PC12から入力されて災害管理サーバ11に記憶される。
【0025】
災害管理PC12には、各観測地点に対応して被災のおそれがある対象区域、例えば隣接する観測地点との境界で区画された区域、各観測地点から設定距離以内の区域などの対象区域設定手段16を備えている。対象区域は、災害の種類毎に設定することもでき、また、特に降水量に対する対象区域は、異常気象データを継続して受信しているときには対象区域を広げる設定とすることもできる。
【0026】
災害管理サーバ11は、気象データ31を受信する毎に、受信した震度、最大風速、降水量、降雪量を設定されている閾値とを比較して、閾値を超える気象データを検出したときに災害発生と判断して災害管理PC12の被災検出プログラム17を起動する。
【0027】
被災検出プログラム17は、図2に示した手順で被災の可能性のある事業所を自動抽出して災害管理PC12のディスプレイ18に表示する。すなわち、災害管理サーバ11にアクセスして閾値を超えた気象データを計測した観測地点を取得し、その観測地点と要すれば閾値を超えた程度から当該観測地点を中心とする被害のおそれのある対象区域を設定し、当該対象区域内にある事業所を抽出し、抽出した事業所の所在地、電話番号などの基本データと、POS稼働状況、計量器稼働データなどの営業状況、タンク在庫などを災害管理サーバ11から取得して、ディスプレイ18に表示する。
【0028】
災害管理PC12は、更に、抽出した事業所の稼働データを災害発生前データと災害発生後データとに区分して両者を対比することにより、計量器が作動していないにもかかわらずタンク22の液面が低下している、POS端末24の稼働率が低下しているなどの事象に基づいて、たとえばタンクないしその配管が損傷したおそれがあるとか、事業所周りの車の通行に支障が出ているとかの、被災の態様を推測して表示することもできる。
【0029】
災害管理PC12のオペレータは、表示された情報に基づいて検出対象事業所に電話などで被災の有無ないし程度を聴取し、聴取した被災情報を入力して管理サーバ11の被災情報メモリ19に登録する。
【0030】
災害管理PC12のオペレータは、ディスプレイに表示されたデータを参照して、必要な事業所に電話をかけるなどして得られた情報を入力する。入力された被災情報は、災害管理サーバの被災情報メモリ19に事業所の基本台帳に関連づけて記憶される。災害管理サーバ11は、この被災情報を参照して、該当事業所の災害の種類毎の被災危険度係数を設けて、被災の可能性のある事業所の検出の際に利用することができる。
【0031】
また、必要に応じてSIR分析会社などのデータ分析会社に管理サーバのデータを送信して、タンクその他の機器の微少な異常の発見や災害による損傷箇所の特定などを行うことができる。
【0032】
以上説明したように、この発明により、多数の事業所から被災のおそれのある事業所を自動検出することができ、自動およびオペレータによる該当事業所の被災状況の推測や確認も可能で、自然災害による傘下の事業所の被災状況を一元集約管理でき、被災事業所に対する速やかで適切な対応をすることが可能になる。
【0033】
なお、上記の実施例の説明では、本発明のシステムを管理サーバ11と管理PCとで構成しているが、両者を一体にすること、更にはデータセンタ10と一体にして構成することも可能であり、また、システムを構成する装置を分散してインターネットを介してデータの授受を行うシステムとすることも可能である。
【0034】
また、上記実施例の構成に加えて、自治体のハザードマップの情報をディスプレイに表示する地図アプリに入れることで、事前に風水害の際にリスクの高い給油所を確認して防災対策を立てることができる、被災の際にも要注意給油所が一目でわかる、風水害被災エリアの選定精度があがる、タンクローリー配送の効率化に使用する、スマホの位置や時間情報を入手し、道路の混み具合や災害時のう回路を確認する、などの被災対応も可能になる。
【符号の説明】
【0035】
1 管理元
2 事業所
3 気象庁
4 データ分析会社
5 インターネット
11 管理サーバ
13 気象データの取得手段
15 閾値メモリ
16 対象区域設定手段
20 稼働データ
19 メモリ
31 気象データ
図1
図2
図3
図4