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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031424
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】漏洩位置推定装置、漏洩位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20240229BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01M3/16 M
G01V3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134967
(22)【出願日】2022-08-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中里 直人
(72)【発明者】
【氏名】土井 敏行
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 文也
(72)【発明者】
【氏名】及川 靖広
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 琢登
【テーマコード(参考)】
2G067
2G105
【Fターム(参考)】
2G067AA14
2G067BB26
2G067BB36
2G067CC04
2G067DD27
2G067EE08
2G067EE11
2G105AA01
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC04
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG01
2G105HH04
2G105KK06
2G105LL02
(57)【要約】
【課題】遮蔽物の一方側に配置された配管の漏洩位置を、遮蔽物の他方側から簡易に特定することが可能な漏洩位置推定装置、漏洩位置推定方法を提供する。
【解決手段】漏洩位置推定装置30は、床14の一方側の配管10内における漏洩位置L1に配置されたワイヤ先端における信号発信部26からの電磁波信号を、床14の他方側で、第1コイル受信アンテナ34A、第2コイル受信アンテナ34B、第3コイル受信アンテナ34Cの3方向のコイル軸S1、S2、S3で受信し、複数の異なる地点における、3方向のコイル軸S1、S2、S3で受信された第3電磁波信号の各々の強度に対応する電磁波強度K0を、受信位置と共に各々位置信号強度情報D1として取得し、複数の位置信号強度情報D1に基づいて、信号発信部26の位置を漏洩位置L1として推定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽物の一方側の配管内における漏洩が確認された位置に配置されたワイヤ先端の発信コイルアンテナから出力される電磁波信号を、前記遮蔽物の他方側で、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた前記第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで受信する受信器と、
複数の異なる地点における、前記第1コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第2コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第3コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、の各々の強度に対応する電磁波強度を、受信位置と共に各々位置信号強度情報として記憶する記憶部と、
複数の前記位置信号強度情報に基づいて、前記発信コイルアンテナの位置を漏洩位置として推定する推定部と、
を備えた漏洩位置推定装置。
【請求項2】
前記第1方向と前記第2コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下であり、前記遮蔽面と前記第3コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下である、請求項1に記載の漏洩位置推定装置。
【請求項3】
前記第1コイル受信アンテナ、前記第2コイル受信アンテナ、前記第3コイル受信アンテナ、により同一地点で受信された前記電磁波信号の強度平均を当該地点の前記電磁波強度とする、
請求項1に記載の漏洩位置推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度の対称中心を前記漏洩位置と推定する、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の漏洩位置推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度のピーク部を漏洩位置と推定する、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の漏洩位置推定装置。
【請求項6】
遮蔽物の一方側の配管内における漏洩が確認された位置に配置されたワイヤ先端の発信コイルアンテナから出力される電磁波信号を、前記遮蔽物の他方側で、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた前記第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで受信し、
複数の異なる地点における、前記第1コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第2コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第3コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、の各々の強度に対応する電磁波強度を、受信位置と共に各々位置信号強度情報として取得し、
複数の前記位置信号強度情報に基づいて、前記発信コイルアンテナの位置を漏洩位置として推定する、
漏洩位置推定方法。
【請求項7】
前記第1方向と前記第2コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下であり、前記遮蔽面と前記第3コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下である、請求項6に記載の漏洩位置推定方法。
【請求項8】
前記第1コイル受信アンテナ、前記第2コイル受信アンテナ、前記第3コイル受信アンテナ、により同一地点で受信された前記電磁波信号の強度平均を当該地点の前記電磁波強度とする、
請求項6に記載の漏洩位置推定方法。
【請求項9】
前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度の対称中心を前記漏洩位置と推定する、
請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の漏洩位置推定方法。
【請求項10】
前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度のピーク部を漏洩位置と推定する、
請求項6~請求項8のいずれか1項記載の漏洩位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩位置推定装置、漏洩位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスを供給する配管における漏洩が検知された場合には、その位置を特定する必要がある。下記特許文献1には、配管内の流体の流速を検出し、流速の変化に基づいて流体の漏洩位置を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-101231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように配管内の漏洩位置を特定する方法については様々な技術が提案されているが、配管自体が遮蔽物に覆われている場合、例えば、建物内部において床や壁によって覆われている場合には、漏洩位置を直接見ることができない。したがって、遮蔽物を介して漏洩位置を特定する必要があり、正確な位置の特定は難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、遮蔽物の一方側に配置された配管の漏洩位置を、遮蔽物の他方側から簡易に特定することが可能な漏洩位置推定装置、漏洩位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る漏洩位置推定装置は、遮蔽物の一方側の配管内における漏洩が確認された位置に配置されたワイヤ先端の発信コイルアンテナから出力される電磁波信号を、前記遮蔽物の他方側で、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた前記第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで受信する受信器と、複数の異なる地点における、前記第1コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第2コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第3コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、の各々の強度に対応する電磁波強度を、受信位置と共に各々位置信号強度情報として記憶する記憶部と、複数の前記位置信号強度情報に基づいて、前記発信コイルアンテナの位置を漏洩位置として推定する推定部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る漏洩位置推定装置では、遮蔽物の一方側の配管内に配置された発信コイルアンテナから出力される電磁波信号を、遮蔽物の他方側で受信器により受信する。受信器は、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナを有する。第1コイル受信アンテナ、第2コイル受信アンテナ、第3コイル受信アンテナの各々で受信された電磁波信号の強度に対応する電磁波強度が、受信位置と共に各々位置信号強度情報として記憶部に記憶され、複数の位置信号強度情報に基づいて、推定部により、発信コイルアンテナの位置が漏洩位置として推定される。
【0008】
発信及び受信にコイルアンテナを用いた場合、発信コイルアンテナに近い位置では電磁波の分布にムラがある。そこで、発信コイルアンテナからの電磁波信号を受信する場合に、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで受信する。このようにコイル軸を3軸として受信することにより、遮蔽物の一方側に配置された発信コイルアンテナからの電磁波の分布ムラの影響が緩和され、1軸の場合と比較して、発信コイルアンテナの位置と電磁波信号の強度との関係を推定しやすくなる。そして、推定部により、複数の位置信号強度情報に基づいて、発信コイルアンテナの位置を、推定することができる。
【0009】
また、比較的安価な発信及び受信にコイルアンテナを用いて、簡易に発信コイルアンテナの位置を、推定することができる。
【0010】
請求項2に係る漏洩位置推定装置は、前記第1方向と前記第2コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下であり、前記遮蔽面と前記第3コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下である。
【0011】
このように、第1方向と第2コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度、及び、遮蔽面と第3コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度を設定することにより、発信コイルアンテナからの電磁波の分布ムラの影響を緩和することができる。
【0012】
請求項3に係る漏洩位置推定装置は、前記第1コイル受信アンテナ、前記第2コイル受信アンテナ、前記第3コイル受信アンテナ、により同一地点で受信された前記電磁波信号の強度平均を当該地点の前記電磁波強度とする。
【0013】
請求項3に係る漏洩位置推定装置によれば、電磁波強度を、3方向のコイル軸の受信アンテナ、により同一地点で受信された前記電磁波信号の強度平均とすることにより、発信コイルアンテナからの電磁波の分布ムラの影響を緩和することができる。
【0014】
請求項4に係る漏洩位置推定装置は、前記推定部が、前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度の対称中心を前記漏洩位置と推定する。
【0015】
請求項4に係る漏洩位置推定装置によれば、発信コイルアンテナを中心として電磁波信号の強度が対称に分布されていることに基づいて、漏洩位置を推定することができる。
【0016】
請求項5に係る漏洩位置推定装置は、前記推定部は、前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度のピーク部を漏洩位置と推定する。
【0017】
請求項5に係る漏洩位置推定装置によれば、発信コイルアンテナ付近に電磁波強度のピーク部があることに基づいて、漏洩位置を推定することができる。
【0018】
請求項6に係る漏洩位置推定方法は、遮蔽物の一方側の配管内における漏洩が確認された位置に配置されたワイヤ先端の発信コイルアンテナから出力される電磁波信号を、前記遮蔽物の他方側で、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽物の遮蔽面に沿わせた前記第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を前記遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで受信し、複数の異なる地点における、前記第1コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第2コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、前記第3コイル受信アンテナで受信された前記電磁波信号、の各々の強度に対応する電磁波強度を、受信位置と共に各々位置信号強度情報として取得し、複数の前記位置信号強度情報に基づいて、前記発信コイルアンテナの位置を漏洩位置として推定する。
【0019】
請求項6に係る漏洩位置推定方法では、遮蔽物の一方側の配管内に配置された発信コイルアンテナから出力される電磁波信号を、遮蔽物の他方側で受信する。受信は、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで行われる。第1コイル受信アンテナ、第2コイル受信アンテナ、第3コイル受信アンテナの各々で受信された電磁波信号の強度に対応する電磁波強度が、受信位置と共に各々位置信号強度情報として取得され、複数の位置信号強度情報に基づいて、発信コイルアンテナの位置が漏洩位置として推定される。
【0020】
発信及び受信にコイルアンテナを用いた場合、発信コイルアンテナに近い位置では電磁波の分布にムラがある。そこで、発信コイルアンテナからの電磁波信号を受信する場合に、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向に配置した第1コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽物の遮蔽面に沿わせた第1方向と交差する方向に配置した第2コイル受信アンテナ、コイル軸を遮蔽面と交差する方向に配置した第3コイル受信アンテナで受信する。このようにコイル軸を3軸として受信することにより、遮蔽物の一方側に配置された発信コイルアンテナからの電磁波の分布ムラの影響が緩和され、1軸の場合と比較して、発信コイルアンテナの位置と電磁波信号の強度との関係を推定しやすくなる。そして、複数の位置信号強度情報に基づいて、発信コイルアンテナの位置を、推定することができる。
【0021】
また、比較的安価な発信及び受信にコイルアンテナを用いて、簡易に発信コイルアンテナの位置を、推定することができる。
【0022】
請求項7に係る漏洩位置推定方法は、前記第1方向と前記第2コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下であり、前記遮蔽面と前記第3コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度は80度以上90度以下である。
【0023】
このように、第1方向と第2コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度、及び、遮蔽面と第3コイル受信アンテナのコイル軸とがなす角度を設定することにより、発信コイルアンテナからの電磁波の分布ムラの影響を緩和することができる。
【0024】
請求項8に係る漏洩位置推定方法は、前記第1コイル受信アンテナ、前記第2コイル受信アンテナ、前記第3コイル受信アンテナ、により同一地点で受信された前記電磁波信号の強度平均を当該地点の前記電磁波強度とする。
【0025】
請求項8に係る漏洩位置推定方法によれば、電磁波強度を、3方向のコイル軸の受信アンテナ、により同一地点で受信された前記電磁波信号の強度平均とすることにより、発信コイルアンテナからの電磁波の分布ムラの影響を緩和することができる。
【0026】
請求項9に係る漏洩位置推定方法は、前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度の対称中心を前記漏洩位置と推定する。
【0027】
請求項9に係る漏洩位置推定方法によれば、発信コイルアンテナを中心として電磁波信号の強度が対称に分布されていることに基づいて、漏洩位置を推定することができる。
【0028】
請求項10に係る漏洩位置推定方法は、前記電磁波信号を受信した複数の地点を含む受信領域内において、前記複数の地点における電磁波強度のピーク部を漏洩位置と推定する。
【0029】
請求項10に係る漏洩位置推定方法によれば、発信コイルアンテナ付近に電磁波強度のピーク部があることに基づいて、漏洩位置を推定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る漏洩位置推定装置、漏洩位置推定方法によれば、遮蔽物の一方側に配置された配管内の漏洩位置を、遮蔽物の他方側から簡易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態の漏洩位置推定装置が用いられる建物の一部構成を示す図である。
図2A】本実施形態で使用する探索具の概略図である。
図2B】探索具で配管の漏洩位置を探索している状態を示す図である。
図3A】本実施形態で使用する発信具の概略図である。
図3B】発信具の信号発信部を漏洩位置に配置した状態を示す図である。
図4A】本実施形態の漏洩位置推定装置をカメラ側からみた斜視図である。
図4B】本実施形態の漏洩位置推定装置を表示部側からみた斜視図である。
図5】本実施形態の漏洩位置推定装置の制御系を示すブロック図である。
図6】本実施形態の漏洩位置推定装置で漏洩位置付近の信号を受信している状態を示す図である。
図7】コントローラで実行される漏洩位置推定処理プログラムのフローチャートである。
図8】本実施形態の漏洩位置推定装置の表示部に対象画像の半分の走査が完了した状態が表示された図である。
図9】本実施形態の漏洩位置推定装置の表示部に対象画像の全面の走査が完了した状態が表示された図である。
図10】本実施形態の対称中心推定処理のフローチャートである。
図11】(A)は対象画像の各々のマス目に強度情報が表示された状態を示す図であり、(B)は有効情報が表示された状態を示す図である。
図12】(A)は有効情報に基づいてX方向の対称位置を決定する手順を説明する図であり、(B)はX方向及びY方向の対称位置の交点が表示された状態を示す図である。
図13】コントローラで実行されるピーク位置推定処理プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る漏洩位置推定装置、方法の実施形態について説明する。本実施形態では、建物内においてガスの漏洩を検知する場合を例に説明する。
【0033】
図1に示されるように、対象となる配管10は、建物の壁12及び床14に沿って配設されており、不図示のガス消費器具へガスを供給している。壁12は、互いに平行な内壁12Aと外壁12Bを有している。内壁12Aは室内側に配置されて室内を区画し、外壁12Bは外部と壁内12Dを区画している。内壁12A及び床14が本発明の遮蔽物に対応する。本実施形態では、外壁12Bに点検口12Cが設けられており、点検口12Cに対応する位置に配管10の開口10Aが設けられている。この点検口12C、開口10Aから、配管10内にアクセスすることができる。
【0034】
配管10は、内壁12A及び床14を挟んで一方側に配設されている。内壁12A及び床14を挟んで他方側が室内、すなわち作業空間Rとなる。
【0035】
配管10の漏洩位置L1は、予め捜索具16を用いて、以下の方法で特定することができる。図2Aに示されるように、捜索具16は、空気管16A、バルーン16Bを有している。バルーン16Bは、空気管16Aの先端に取り付けられている。空気管16Aは、一端がバルーン16Bの入口に接続され他端側から例えばゴム球16Cなどの送風手段を用いて、バルーン16Bへ空気を送り込むことができる。
【0036】
図2Bに示されるように、捜索具16での漏洩位置L1の捜索は、バルーン16Bの空気を抜いた状態で、バルーン16B側から空気管16Aを点検口12Cから配管10へ挿入する。そして、任意の位置で空気を送ってバルーン16Bで配管10を閉塞させ、閉塞位置よりも下流側の気密状態を確認することで、閉塞位置よりも下流側に漏洩があるか否かを判断する。バルーン16Bの位置を変えて当該作業を繰り返すことにより、気密状態が保たれているバルーン16Bの位置と、気密状態が保たれないバルーン16Bの位置とを近づけて行き、気密状態が保たれる最も消費器機に近いバルーン16Bの位置を漏洩位置L1と判断することができる。捜索具16の空気管16Aの挿入長さにより、点検口12Cから漏洩位置L1までの距離が確認できる。
【0037】
次に、発信具20について説明する。
【0038】
発信具20は、図3Aに示されるように、電源部22、ワイヤ24、及び、信号発信部26を有している。信号発信部26は、ワイヤ24の先端に設けられており、コイル26Aを含むアンテナで構成されている(発信コイルアンテナ)。コイル26Aの軸方向Sはワイヤ24の延出方向(配管10の延在方向)に沿って配置されている。コイル26Aの最大径26Rは、配管10の内径よりも小さく設定されている。電源部22から電流を流すことにより、信号発信部26から電磁波が発生し、当該電磁波が信号となって発信される。
【0039】
発信具20は、図3Bに示されるように、点検口12C、開口10Aを介して、信号発信部26側からワイヤ24を配管10へ挿入する。ワイヤ24の挿入長さを、捜索具16で漏洩位置L1を検知したときの挿入長さと同じにすることにより、信号発信部26を漏洩位置L1に配置することができる。
【0040】
次に、本実施形態の漏洩位置推定装置30について説明する。本実施形態の漏洩位置推定装置30は、図4A及び図4Bに示されるように、本体部32、受信器34、連結バー36、カメラ38、位置測位機48、及び、表示部50を有している。
【0041】
連結バー36は棒状とされており、先端に受信器34が取り付けられている。連結バー36の基端側には、取付部37を介して、本体部32が取り付けられている。
【0042】
受信器34は、第1コイル受信アンテナ34A、第2コイル受信アンテナ34B、第3コイル受信アンテナ34Cを含んで構成されており、信号発信部26からの電磁波信号を受信する。第1コイル受信アンテナ34Aのコイル軸S1は、連結バー36の延在方向に対して角度をもって(本実施形態では略90°)配置されている。第2コイル受信アンテナ34Bのコイル軸S2は、連結バー36の延在方向に対して第1コイル受信アンテナ34Aと同様の角度をもち、且つ第1コイル受信アンテナ34Aと直交する方向に配置されている。第3コイル受信アンテナ34Cのコイル軸S3は、第1コイル受信アンテナ34A及び第2コイル受信アンテナ34Bと直交する方向に配置されている。なお、後述する測定作業において、第1コイル受信アンテナ34Aのコイル軸S1、及び第2コイル受信アンテナ34Bのコイル軸S2は、床14近くで床面に沿う方向(床面と平行)に配置される。
【0043】
連結バー36の受信器34近傍には、マイクロコントローラ35が設けられている。マイクロコントローラ35は、CPU、ROM、RAMなど(図示省略)を含んで構成されており、第1コイル受信アンテナ34A、第2コイル受信アンテナ34B、第3コイル受信アンテナ34Cと接続されている。マイクロコントローラ35は、各地点で取得された、第1コイル受信アンテナ34Aで受信された第1電磁波信号の強度K1、第2コイル受信アンテナ34Bで受信された第2電磁波信号の強度K2、第3コイル受信アンテナ34Cで受信された第3電磁波信号の強度K3を取得し、その平均値(強度平均)を当該位置における電磁波強度K0として算出する。算出は、K0=(K1+K2+K3)/3、で行うことができる。マイクロコントローラ35は、通信機能を有しており(wifi、Bluetooth等)、電磁波強度K0を後述するコントローラ40へ送信する。
【0044】
なお、本実施形態では、第1コイル受信アンテナ34A、第2コイル受信アンテナ34B、第3コイル受信アンテナ34Cを互いに近い位置に配置しており、同一タイミングで受信された第1電磁波信号、第2電磁波信号、第3電磁波信号を同一位置における電磁波強度K0として扱う。第1コイル受信アンテナ34A、第2コイル受信アンテナ34B、第3コイル受信アンテナ34Cが、位置補正を要する程度に離間している場合には、各アンテナ毎に受信タイミングと位置を補正して電磁波強度K0を算出する。
【0045】
本体部32は、正面視で略方形状とされており、厚みの薄い直方体形状とされている。本体部32は、筐体39、コントローラ40、カメラ38、位置測位機48、及び表示部50を備えている。コントローラ40、位置測位機48、及び表示部50は、筐体39内に収納されている。筐体39は、表示部50で表示される情報が外部から視認可能なように、表示部50に対応する部分は透明となっている。表示部50は、本体部32の一方面32Aに配置され、カメラ38は、本体部32の表示部50と反対側の他方面32Bに配置されている。カメラ38により取り込まれた画像が、コントローラ40を経て、表示部50に表示される。カメラ38による画像の取り込み範囲には、受信器34が写るようになっている。カメラ38で取り込まれた画像内において、受信器34の位置は特定され、その位置で受信した電磁波強度K0は位置測位機48で測位された位置情報P1と共に、位置信号強度情報D1として、後述する記憶部45に記憶される。
【0046】
筐体39は、本体部32の外形を構成し、厚み方向に筐体39を挟むように、取付部37が取り付けられている。取付部37は、連結バー36を挿入するポケット37Aと、筐体39に固定される固定部37Bを有している。
【0047】
位置測位機48は、受信器34の位置を測位し、位置情報P1をコントローラ40へ出力する。位置測位は、GPS、LiDAR等を利用して実施することができる。また、カメラ38での認識用に、マーカーやQRコード(不図示)を受信器34に取り付けて位置測位してもよい。
【0048】
コントローラ40は、図5に示されるように、カメラ38、位置測位機48、及び表示部50と電気的に接続されている。また、コントローラ40は、マイクロコントローラ35と通信接続されている。図5は、本実施形態に係るコントローラ40の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図5に示すように、コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、入出力インターフェース(I/O)44と、記憶部45と、を備えている。
【0050】
CPU41、ROM42、RAM43、及びI/O44は、バス46を介して各々接続されている。I/O44には、記憶部45を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O44を介して、CPU41と相互に通信可能とされる。
【0051】
記憶部45としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部45には、漏洩位置推定装置30の各部を制御するための制御プログラムや、各種のデータが記憶される。なお、この制御プログラム、各種データは、ROM42に記憶されていてもよい。
【0052】
本実施形態では、制御プログラムの一部として、位置推定処理プログラム等が格納されている。また、この処理に使用されるデータとして、位置信号強度情報D1、電磁波強度K0、位置情報P1等が格納される。
【0053】
次に、本実施形態の漏洩位置推定装置30の作用について説明する。
【0054】
漏洩位置推定装置30は、図6に示されるように、作業空間R内で用いられる。予め、発信具20の信号発信部26を漏洩位置L1に配置しておき、電源部22から電流を流す。これにより、信号発信部26から電磁波信号が発信される。
【0055】
作業者は、漏洩位置推定装置30の受信器34を、床14近くの低い位置で漏洩位置L1があると推定される付近に、第1コイル受信アンテナ34Aのコイル軸S1及び第2コイル受信アンテナ34Bのコイル軸S2が床面に沿うように配置し、不図示の電源をオンにする。当該電源オンにより、カメラ38での画像の取り込みが開始され、所定のレートで取り込まれた画像(対象画像G)が表示部50に表示される。
【0056】
また、受信器34での電磁波信号の受信が開始され、位置測位機48により、受信器34の位置が測位される。また、カメラ38やLiDAR等により空間形状の取得が開始され、空間マップが作成され、自己位置推定が行われる。そして、コントローラ40では、図7に示される、漏洩位置推定処理プログラムが実行される。
【0057】
漏洩位置推定処理プログラムでは、対象画像G内をマス目状に区画し、各々のマス目に対応した位置の電磁波強度K0を順次取得していく。そのため、作業者は、受信器34を対象画像Gのマス目に沿って移動させ(走査)、電磁波強度K0を取得する。電磁波強度K0は、第1電磁波信号の強度K1、第2電磁波信号の強度K2、第3電磁波信号の強度K3の平均値であり、マイクロコントローラ35で算出される。なお、対象画像Gは、発信具20のワイヤ24の挿入長さ等から、予め漏洩位置L1を含むと推定される位置に設定された対象領域に対応する画像であり、1つのマス目は、対象画像G上の画素となる。
【0058】
ステップS10で、位置測位機48で測位した受信器34の位置情報P1を取得し、ステップS12で、マイクロコントローラ35から送信されてくる電磁波強度K0を取得し、ステップS14で、取得した位置情報P1に電磁波強度K0を対応づけた位置信号強度情報D1を作成し記憶部45に記憶する。
【0059】
次に、ステップS16で、表示部50に電磁波強度K0を表示する。電磁波強度K0の表示は、位置情報P1に基づいて、表示部50に表示されている対象画像Gのマス目状に区画した各区画の各々の対応位置に、電磁波強度K0を表示することにより行われる(マッピング表示)。図8及び図9では、濃淡で電磁波強度K0を表現しており、濃い部分の強度は低く、淡色(白色)になるほど強度は高く表現されている。
【0060】
作業者は、対応位置に電磁波強度K0が表示されたことを確認して、次のマス目へ表示して受信器34の位置を移動させる。
【0061】
次に、ステップS18で、対象領域において走査が終了したかどうか、すなわち、すべてのマス目の電磁波強度K0が取得されたかどうかを判断する。判断が否定された場合には、ステップS20へ進み、受信器34の位置移動(作業者による次の位置への移動)が完了したかどうかを判断する。位置移動が完了していない場合には、位置移動が完了するまで待機する。位置移動が完了していれば、ステップS10へ戻り上記の処理を繰り返す。これにより、対象画像Gの各マス目位置における電磁波強度K0を得ることができる。図8では、対象画像Gにおいて約半分の位置の電磁波強度K0の取得が実行済みであり、図9では、対象画像Gにおけるすべてのマス目の電磁波強度K0の取得が実行済みであることが示されている。
【0062】
ステップS18で、判断が肯定された場合には、ステップS30へ進み、図10に示される対称中心推定処理が実行される。
【0063】
対称中心推定処理では、まずステップS32で、対象画像Gにおけるすべてのマス目の電磁波強度K0の平均値を求め、ステップS34で、平均値以上の部分のみを有効領域として残す。図11(A)は、対象画像G上のすべてのマス目の電磁波強度K0が表示されている図であり、図11(B)は、ステップS34の処理で残された有効領域のみ電磁波強度K0が表示されている図である。
【0064】
次に、ステップS36で、対象画像におけるX方向の電磁波強度K0の対称位置を算出する。対称位置の算出は、有効領域のX方向における任意の位置(図12(A)では上下の直線と×で示されている)から、両側(左右)の各マス目(画素)の「距離×電磁波強度K0」を求め、求めた値の直線を挟んで一方側(左側)の総和と他方側(右側)の総和を比較する。一方側の総和を他方側の総和の差分が最も小さい位置を対象画像におけるX方向の電磁波強度K0の対称位置とする。
【0065】
次に、ステップS38で、対象画像におけるY方向における電磁波強度K0の対称位置を算出する。対称位置の算出は、ステップS36と同様に、有効領域のY方向における任意の位置から、両側(上下)の各マス目(画素)の「距離×電磁波強度K0」を求め、求めた値の直線を挟んで一方側(上側)の総和と他方側(下側)の総和を比較する。一方側の総和と他方側の総和の差分が最も小さい位置を対象画像におけるY方向の電磁波強度K0の対称位置とする。
【0066】
次に、ステップS40で、算出したX方向の対称位置とY方向の対称位置の交点を対称中心として決定する。図12(B)では、×の位置となる。ステップS40の処理で、対称中心推定処理を終了し、図7に示されるステップS22へ進み、対称中心を漏洩推定位置として表示部50に表示し、漏洩位置推定処理プログラムを終了する。
【0067】
本実施形態の漏洩位置推定処理プログラムによれば、位置信号強度情報D1に基づいて、漏洩位置L1を容易に推定することができる。
【0068】
ここで、発信具20のコイル軸Sと、漏洩位置推定装置30のコイル軸S1、S2、S3の角度について説明する。発信具20の信号発信部26は、床14の下側に配設された配管10内に挿入されているが、その向きは不明である。コイル軸Sと受信側のコイル軸とのなす角度が大きくなると、電磁波分布の関係から、場所によっては、信号発信部26からの距離が近くても受信される電磁波強度が弱くなる現象が生じる。そこで、本実施形態では、床14の床面と平行になるように配置するコイル軸S1、S2を互いに90°の角度で設定する。また、床14の床面と直交するように配置するコイル軸S3を設定する。このように、3軸を設定し、各々のコイル軸で受信された電磁波強度を用いることにより、コイル軸Sと受信側のコイル軸とのなす角度に起因する電磁波分布のムラの影響を低減することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、マス目の各々の電磁波強度K0を取得したが、必ずしもマス目に合わせて電磁波強度K0を得る必要はなく、任意の位置で電磁波強度K0を得てもよい。任意の位置における電磁波強度K0に基づいて、対称中心推定処理を実行してもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、対称中心推定処理により対称中心と決定して、漏洩位置L1を推定したが、対象画像G内において、電磁波強度K0のピーク部PEを漏洩位置L1と推定してもよい。ここでの「ピーク部PE」は、該当マス目部分の電磁波強度K0が、周囲のマス目部分よりも明確に高い部分をいう。ピーク部PEを漏洩位置L1と推定する場合には、図13に示すピーク位置推定処理プログラムが実行される。
【0071】
ステップS10~ステップS20までは、前述のとおりに実行する。ステップS18で判断が肯定された場合には、ステップS22へ進み、ピーク部PEを漏洩推定位置として表示部50に表示し、漏洩位置推定処理プログラムを終了する。
【0072】
このように、漏洩位置L1を特定することにより、修理の際に床14を破断して形成する開口を小さくすることができ、作業コストも抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、電磁波信号の電磁波強度K0を漏洩位置推定装置30の表示部50に表示したが、対象画像Gを他の端末の表示部に表示してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、コイル軸S1とコイル軸S2とが直交するように、コイル軸S3がコイル軸S1及びコイル軸S2と直交するように、第1コイル受信アンテナ34A、第2コイル受信アンテナ34B、第3コイル受信アンテナ34Cを配置したが、必ずしも3軸を直交させる必要はない。但し、コイル軸S1とコイル軸S2とのなす角度80度以上90度以下、コイル軸S3とコイル軸S1及びコイル軸S2とのなす角度80度以上90度以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0075】
12A 内壁(遮蔽物)
14 床(遮蔽物)
26 信号発信部(発信コイルアンテナ)
30 漏洩位置推定装置
34 受信器
34A 第1コイル受信アンテナ
34B 第2コイル受信アンテナ
34C 第3コイル受信アンテナ
40 コントローラ(推定部)
45 記憶部
D1 位置信号強度情報
K0 電磁波強度
L1 漏洩位置
PE ピーク部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13