IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本航空電子工業株式会社の特許一覧

特開2024-31430コネクタ及びそれに用いられるハウジング
<>
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図1
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図2
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図3
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図4
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図5
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図6
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図7
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図8
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図9
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図10
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図11
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図12
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図13
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図14
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図15
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図16
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図17
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図18
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図19
  • 特開-コネクタ及びそれに用いられるハウジング 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031430
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】コネクタ及びそれに用いられるハウジング
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134974
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】森下 雲也
(72)【発明者】
【氏名】小幡 雄介
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF03
5E087FF13
5E087GG26
5E087GG32
5E087MM05
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】 リテーナのヒンジが疲労破壊してもコンタクトの抜け落ちを防止できるハウジングを備えるコネクタを提供すること。
【解決手段】
ハウジング30の端子収容部340は、端子保持部34を前後方向に貫通している。凹部342は、横方向において端子保持部34を貫通し、かつ上方に開口している。凹部342は、その底部360に形成された開口366を通して端子収容部340と連通している。端子収容部340の被ラッチ部344は、凹部342内に張り出している。リテーナ38の凸部382には、ラッチ部394と抜け止め部396とが設けられている。凸部382が凹部342に収容されると、凸部382は、凹部342の底部360の上側に位置する。ラッチ部394は、被ラッチ部344の下側に位置する。抜け止め部396は、端子の被抜け止め部242の後方に位置し、被抜け止め部242と対向する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子とハウジングとを備えるコネクタであって、
前記端子は、被抜け止め部を有しており、
前記ハウジングは、端子保持部とリテーナとを有しており、
前記端子保持部には、端子収容部と、凹部と、被ラッチ部とが形成されており、
前記端子収容部は、前記端子保持部を前後方向に貫通しており、
前記端子収容部には、前記前後方向において後方から前記端子が挿入されており、
前記凹部は、前記前後方向と直交する幅方向において前記端子保持部を貫通するとともに、前記前後方向と前記幅方向の双方と直交する上下方向において上方に開口しており、
前記凹部には、前記上下方向において上方に向いた底部が設けられており、
前記底部には、開口が形成されており、
前記凹部は、前記開口を通して、前記端子収容部と連通しており、
前記被ラッチ部は、前記前後方向において前記凹部内に張り出しており、
前記リテーナは、腕部と、凸部とを有しており、
前記腕部は、前記端子保持部から延びており、移動可能となるように前記凸部を支持しており、
前記凸部は、前記凹部に収容可能であり、
前記凸部には、ラッチ部と抜け止め部とが設けられており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記凸部は、前記凹部の前記底部と接しているか又は前記凹部の前記底部よりも前記上下方向において上側に位置しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記ラッチ部は、前記前後方向に張り出しており、かつ前記上下方向において前記被ラッチ部の下側に位置しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記抜け止め部は、前記前後方向において前記端子の前記被抜け止め部の後方に位置しており、かつ前記被抜け止め部と対向している
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記凸部は、頭部と首部とを有しており、
前記首部は、前記腕部から延びており、かつ前記頭部を支持しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記頭部は、前記前後方向において前記首部のサイズより大きなサイズを有しており、
前記ラッチ部と前記抜け止め部は、前記頭部に設けられている
コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記端子保持部には、ガイド部が設けられており、
前記ガイド部は、前記凹部と連続するとともに前記凹部から前記上下方向において上方に延びており、かつ前記前後方向において前記被ラッチ部と対向している
コネクタ。
【請求項4】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記凸部は、前記幅方向に延びる端面を有しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記端面は、前記上下方向において前記凸部の最下端に位置しており、かつ前記凹部の前記底部と対向している
コネクタ。
【請求項5】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記凸部は、前記幅方向と直交する面内において一定の断面を有している
コネクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のコネクタであって、
前記腕部には、被規制部が設けられており、
前記端子保持部には、規制部が設けられており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記規制部は、前記幅方向において前記被規制部と対向しており、前記被規制部の幅方向における移動を規制している
コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のコネクタであって、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記端子保持部は、前記腕部と対向する対向上面を有しており、
前記規制部は、前記対向上面から前記上下方向において上方に突出しており、
前記被規制部は、前記腕部に形成されたスリットを規定する一対の側面部であり、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記規制部は、前記スリット内に少なくとも部分的に受容されている
コネクタ。
【請求項8】
請求項1に記載されたコネクタに用いられるハウジングであって、
前記ハウジングは、前記凸部と前記端子保持部とを連結する連結部を有している
ハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特にコネクタに用いられるハウジングの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクト(端子)と、そのコンタクトを保持するハウジングとを備えるコネクタの一例として、特許文献1に記載されたコネクタがある。
【0003】
図18から図20を参照すると、特許文献1に記載されたコネクタ90のハウジング92は、コンタクト93がハウジング92から抜けるのを防止するリテーナ94、95を有している。リテーナ94、95は、ハウジング92の側壁921、923とそれぞれ一体に形成されている。
【0004】
図18に示されるように、リテーナ94は、側壁921に設けられたヒンジ941と、リテーナ板943と、リテーナ板943に設けられた押え部945とを有している。同様に、リテーナ95は、側壁923に設けられたヒンジ951と、リテーナ板953と、リテーナ板953に設けられた押え部955とを有している。
【0005】
図18に示されるように、側壁921、923にはそれぞれ開口925、927が設けられている。開口925、927は、コンタクト93を収容するキャビティ931、933に夫々通じている。リテーナ94、95は、夫々ヒンジ941、951を軸として揺動可能である。
【0006】
図19及び図20から理解されるように、コンタクト93はハウジング92のキャビティ931、933に収容される。その状態で、リテーナ94、95をキャビティ931、933に向かって押すことで、押え部945,955は少なくとも部分的に開口925,297を通してキャビティ931、933内に突出する。その結果、押え部945,955は、キャビティ931、933内に収容されたコンタクト93に係り、コンタクト93がハウジング92から抜けることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-88405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンタクト93を交換する度にリテーナ94、95が揺動を繰り返すと、ヒンジ941、951が疲労する。疲労したヒンジ941、951は、使用環境によっては劣化破壊するおそれがある。例えば、コネクタ90が車載される場合、コンタクト93は厳しい使用環境に置かれる可能性がある。そして、ヒンジ941、951に劣化破壊が生じると、リテーナ94、95は、キャビティ931、933内に突出した状態を維持できなくなり、ハウジング92から脱落する。その結果、コンタクト93は、ハウジング92から抜け落ち可能な状態となる。それゆえ、たとえリテーナのヒンジが疲労破壊してもコンタクトの抜け落ちを防止することができるハウジングを備えたコネクタが求められている。
【0009】
本発明は、リテーナのヒンジが疲労破壊してもコンタクトの抜け落ちを防止できるハウジング及びそれを備えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1のコネクタとして、端子とハウジングとを備えるコネクタであって、
前記端子は、被抜け止め部を有しており、
前記ハウジングは、端子保持部とリテーナとを有しており、
前記端子保持部には、端子収容部と、凹部と、被ラッチ部とが形成されており、
前記端子収容部は、前記端子保持部を前後方向に貫通しており、
前記端子収容部には、前記前後方向において後方から前記端子が挿入されており、
前記凹部は、前記前後方向と直交する幅方向において前記端子保持部を貫通するとともに、前記前後方向と前記幅方向の双方と直交する上下方向において上方に開口しており、
前記凹部には、前記上下方向において上方に向いた底部が設けられており、
前記底部には、開口が形成されており、
前記凹部は、前記開口を通して、前記端子収容部と連通しており、
前記被ラッチ部は、前記前後方向において前記凹部内に張り出しており、
前記リテーナは、腕部と、凸部とを有しており、
前記腕部は、前記端子保持部から延びており、移動可能となるように前記凸部を支持しており、
前記凸部は、前記凹部に収容可能であり、
前記凸部には、ラッチ部と抜け止め部とが設けられており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記凸部は、前記凹部の前記底部と接しているか又は前記凹部の前記底部よりも前記上下方向において上側に位置しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記ラッチ部は、前記前後方向に張り出しており、かつ前記上下方向において前記被ラッチ部の下側に位置しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記抜け止め部は、前記前後方向において前記端子の前記被抜け止め部の後方に位置しており、かつ前記被抜け止め部と対向している
コネクタを提供する。
【0011】
また、本発明は、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記凸部は、頭部と首部とを有しており、
前記首部は、前記腕部から延びており、かつ前記頭部を支持しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記頭部は、前記前後方向において前記首部のサイズより大きなサイズを有しており、
前記ラッチ部と前記抜け止め部は、前記頭部に設けられている
コネクタを提供する。
【0012】
また、本発明は、第3のコネクタとして、第2のコネクタであって、
前記端子保持部には、ガイド部が設けられており、
前記ガイド部は、前記凹部と連続するとともに前記凹部から前記上下方向において上方に延びており、かつ前記前後方向において前記被ラッチ部と対向している
コネクタを提供する。
【0013】
また、本発明は、第4のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記凸部は、前記幅方向に延びる端面を有しており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記端面は、前記上下方向において前記凸部の最下端に位置しており、かつ前記凹部の前記底部と対向している
コネクタを提供する。
【0014】
また、本発明は、第5のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記凸部は、前記幅方向と直交する面内において一定の断面を有している
コネクタ提供する。
【0015】
また、本発明は、第6のコネクタとして、第1から第5のコネクタのうちのいずれかであって、
前記腕部には、被規制部が設けられており、
前記端子保持部には、規制部が設けられており、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記規制部は、前記幅方向において前記被規制部と対向しており、前記被規制部の幅方向における移動を規制している
コネクタを提供する。
【0016】
また、本発明は、第7のコネクタとして、第6のコネクタであって、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記端子保持部は、前記腕部と対向する対向上面を有しており、
前記規制部は、前記対向上面から前記上下方向において上方に突出しており、
前記被規制部は、前記腕部に形成されたスリットを規定する一対の側面部であり、
前記凸部が前記凹部に収容された状態において、前記規制部は、前記スリット内に少なくとも部分的に受容されている
コネクタを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、第1のハウジングとして、第1のコネクタに用いられるハウジングであって、
前記ハウジングは、前記凸部と前記端子保持部とを連結する連結部を有している
ハウジングを提供する。
【発明の効果】
【0018】
リテーナの凸部が端子保持部の凹部に収容された状態において、凸部のラッチ部は、前後方向に張り出しており、かつ上下方向において端子保持部の被ラッチ部の下側に位置している。そのため、たとえリテーナの腕部が端子保持部から切り離されていたとしても、凸部は、少なくとも上下方向において、凹部から出ていくことができない。このとき、凸部の抜け止め部は、前後方向において端子の被抜け止め部の後方に位置し、端子の被抜け止め部と対向している。換言すると、抜け止め部は、被抜け止め部の移動を規制している。こうして、リテーナの腕部が端子保持部から切り離された状態であっても、ハウジングからの端子が抜け落ちを防止することができる。
【0019】
加えて、端子保持部の凹部は、幅方向において端子保持部を貫通しているので、ハウジングの製造に使用される金型の構造を単純にすることができる。その結果、ハウジングの製造コストの上昇を招くことなく、上述した端子の抜け落ち防止効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態によるコネクタを示す正面斜視図である。
図2図1のコネクタを示す正面図である。
図3図2のコネクタを示すA-A線断面図である。リテーナの凸部及びその周辺が拡大して描かれている。
図4図2のコネクタを示すB-B線断面図である。リテーナの凸部及びその周辺が拡大して描かれている。
図5図1のコネクタに含まれるハウジングを示す正面斜視図である。リテーナの凸部と端子保持部とは、連結部によって連結されている。
図6図5のハウジングを示す背面斜視図である。
図7図5のハウジングを示す側面図である。
図8図5のハウジングを示す正面図である。
図9図8のハウジングを示すC-C線断面図である。
図10図5のハウジングを示す別の正面斜視図である。リテーナの凸部は、端子保持部の凹部に収容されている。
図11図10のハウジングを示す背面斜視図である。
図12図10のハウジングを示す側面図である。
図13図10のハウジングを示す正面図である。
図14図13のハウジングを示すD-D線端面図である。
図15図13のハウジングを示すE-E線断面図である。
図16図1のコネクタの組立て途中の状態を示す正面図である。
図17図16のコネクタを示すF-F線断面図である。端子は、所定位置に達していない。リテーナの凸部と端子保持部とは、連結部によって連結されている。
図18】特許文献1に記載されたコネクタに使用されるハウジングを示す断面図である。
図19】特許文献1に記載されたコネクタの組立て途中の状態を示す断面図である。
図20】特許文献1に記載されたコネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明の一実施の形態によるコネクタ10は、ケーブル40の一端に接続されている。コネクタ10は、前後方向において、相手側コネクタ(図示せず)と嵌合可能なコネクタである。本実施の形態において、前後方向は、Y方向である。-Y方向が前方であり、+Y方向が後方である。
【0022】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施の形態によるコネクタ10は、複数の端子20と、端子20を保持するハウジング30とを備えている。端子20の夫々は、金属製であり、ハウジング30は絶縁樹脂製である。本実施の形態において、端子20の数は二つである。ただし、本発明は、これに限られない。端子20の数は、一つでもよいし、三つ以上であってもよい。
【0023】
図5及び図6を参照すると、ハウジング30は、嵌合部32と、端子保持部34と、リテーナ38とを有している。本実施の形態において、嵌合部32と端子保持部34とリテーナ38は、一体成形されている。
【0024】
図5図8及び図9に示されるように、嵌合部32は、前後方向において端子保持部34の前方に位置し、前方へ開いている。嵌合部32は、受容部320を規定し、受容部320は、コネクタ10と相手側コネクタ(図示せず)とが嵌合したとき、相手側コネクタを部分的に受容する。本実施の形態において、嵌合部32の形状は、前方から見たとき略正方形である。ただし、本発明は、これに限れない。嵌合部32の形状は、長方形、円形、レーストラック形など、正方形以外の形状であってもよい。
【0025】
図6から図9までの図に示されるように、端子保持部34には、複数の端子収容部340と、凹部342と、被ラッチ部344とが形成されている。本実施の形態において、端子収容部340の数は二つである。端子収容部340は、端子20にそれぞれ対応している。本実施の形態において、端子収容部340は、幅方向に配置されている。本実施の形態において、幅方向は、X方向である。
【0026】
図8及び図9から理解されるように、端子収容部340の夫々は、端子保持部34を前後方向に貫通し、嵌合部32の受容部320と連通している。図6に示されるように、本実施の形態において、端子収容部340の形状は、後方から見たとき略矩形である。ただし、本発明は、これに限られない。端子収容部340の形状は、円形など、略矩形以外の形状であってもよい。
【0027】
図7及び図9から理解されるように、凹部342は、前後方向において、端子保持部34の略中央に位置している。凹部342は、前後方向と直交する幅方向において端子保持部34を貫通している。また、凹部342は前後方向及び幅方向の双方と直交する上下方向において上方に開口している。このような凹部342の構成は、ハウジング30の製造に使用される金型の構造の簡略化に貢献する。本実施の形態において、上下方向はZ方向である。+Z方向が上方であり、-Z方向が下方である。
【0028】
図5及び図6に示されるように、凹部342には、上下方向において上方に向いた底部360が設けられている。また、図7及び図9に示されるように、凹部342には、前後方向において前方に向いた後壁362と、後方に向いた前壁364とが設けられている。図5図6及び図9から理解されるように、底部360には、二つの開口366が形成されている。開口366は、端子収容部340と夫々対応している。凹部342は、開口366を通して、端子収容部340と連通している。開口366の夫々は、前壁364及び後壁362の夫々において上方へ広がっている。
【0029】
図7及び図9に示されるように、被ラッチ部344は、凹部342の後壁362の上端近傍に設けられた突起である。被ラッチ部344は、前後方向において凹部342内に張り出している。本実施の形態において、被ラッチ部344は、幅方向において中央部に位置し、幅方向に延びている。被ラッチ部344は、幅方向において凹部342の両端に達していない。ただし、本発明は、これに限られない。被ラッチ部344は、幅方向において凹部342の両端に達していてもよい。
【0030】
図7及び図9に示されるように、本実施の形態において、端子保持部34には、さらにガイド部346が設けられている。ガイド部346は、凹部342の前壁364に連続する壁であり、上下方向において上方へ延びる壁である。このように、ガイド部346は、凹部342と連続するともに凹部342から上下方向において上方へ延びている。また、ガイド部346は、前後方向において、ラッチ部394と対向している。
【0031】
図5及び図6に示されるように、本実施の形態において、端子保持部34は、上下方向において上方に向いた対向上面348を有している。加えて、図7及び図9に示されるように、端子保持部34には、規制部350が設けられている。規制部350は、対向上面348から上下方向において上方に突出する板状部である。幅方向において、規制部350は、端子保持部34の中央に位置している。
【0032】
図7及び図9に示されるように、リテーナ38は、腕部380と凸部382とを有している。腕部380は、端子保持部34から延びている。図5及び図6に示されるように、腕部380は、略矩形の板状であり、長手方向の一端が端子保持部34の後端壁352に連結されている。腕部380は、端子保持部34の後端壁352から少なくとも前方へ延びている。加えて、本実施の形態において、腕部380には、長手方向に延びるスリット384が形成されている。腕部380は、ヒンジを有さないが、少なくともその一部がヒンジに代わる働きをする。詳しくは、腕部380は、少なくとも部分的に弾性変形可能であり、片持ちバネのように機能する。これにより、腕部380は、少なくとも上下方向において移動可能となるように凸部382を支持する。
【0033】
図7及び図9に示されるように、リテーナ38の凸部382は、腕部380の長手方向の他端の近傍に設けられている。リテーナ38の凸部382は、幅方向に長い形状を有している。図5から理解されるように、凸部382は、幅方向と直交する面内において、一定の断面を有している。換言すると、凸部382は、幅方向と直交する平面に沿って切断した場合、その切断位置によらずに同一の形状を有している。これは、凸部382の成形を容易にし、ひいてはハウジング30の成形を容易にするためである。ただし、本発明は、これに限られない。凸部382は、幅方向と直交する面内において、一定の断面を有していなくてもよい。例えば、凸部382は、幅方向に二分割されていてもよい。
【0034】
図7及び図9に示されるように、凸部382は、頭部390と首部392とを有している。首部392は、腕部380の長手方向の他端の近傍から延びて、頭部390を支持している。頭部390は、所定方向において、首部392のサイズより大きなサイズを有している。換言すると、首部392は、所定方向において、頭部390のサイズより小さいサイズを有している。所定方向は、図3に示される状態において、前後方向と一致する。即ち、凸部382が凹部342に収容された状態において、頭部390は、前後方向において、首部392のサイズより大きなサイズを有している。幅方向に沿ってみたとき、凸部382はハンマー状の形状を有している。所定方向において、首部392のサイズが頭部390のサイズより小さいので、首部392は容易に弾性変形可能である。これにより、首部392は、頭部390が腕部380に対して移動可能となるように頭部390を支持する。
【0035】
図5図7及び図9に示されるように、ハウジング単体として出荷される時点のハウジング30において、凸部382と端子保持部34とは連結部388によって連結されている。換言すると、ハウジング30は、凸部382と端子保持部34とを連結する連結部388を有している。連結部388は、例えば、ガイド部346から後方へ延びる水平部と、凸部382から下方へ延びる垂直部とを有している。その場合、水平部と垂直部との連結部分は比較的薄く、リテーナ38に外力を加えることで容易に破断させることができる。
【0036】
図10及び図11から理解されるように、リテーナ38の凸部382は、端子保持部34の凹部342に収容可能である。換言すると、凸部382は、凹部342に収容可能な形とサイズを有している。凸部382の形とサイズは、腕部380及び首部392の弾性変形がないとしたならば、凸部382が凹部342に対する進入及び退出が、困難又は不可能となるように設計される。凸部382には、一端凹部342に収容された凸部382が意図せず凹部342から出ること防止するラッチ部394が設けられている。本実施の形態において、ラッチ部394は、頭部390の一部である。詳しくは、図12に示されるように、凸部382が凹部342に収容された状態において、ラッチ部394は前後方向において後方へ突出する突起である。
【0037】
図5及び図7に示されるように、凸部382には、さらにハウジング30の端子収容部340に収容された端子20(図3参照)の抜けを防止する抜け止め部396が設けられている。本実施の形態において、抜け止め部396は、凸部382の頭部390に設けられている。詳しくは、抜け止め部396は、頭部390の表面の一部である。図12から図14までの図から理解されるように、凸部382が凹部342に収容された状態において、抜け止め部396は、前後方向において前方へ向かう面である。
【0038】
図12及び図14から理解されるように、本実施の形態において、凸部382の頭部390は、幅方向に延びる端面398を有している。端面398は、凸部382が凹部342に収容された状態において、上下方向において凸部382の最下端に位置し、凹部342の底部360と対向する。
【0039】
図7及び図12を参照して、リテーナ38の凸部382を下方へ移動させるようにリテーナ38の腕部380に外力を加えると、腕部380が弾性変形し、凸部382と端子保持部34とを連結する連結部388は破断する。これにより、リテーナ38の凸部382は、少なくとも下方への移動が可能になる。なお、凸部382及び端子保持部34の夫々には、連結部388の破断痕が残される。
【0040】
図7図9図12及び図14から理解されるように、リテーナ38の凸部382を端子保持部34の凹部342に収容させるとき、首部392が弾性変形する。首部392が弾性変形することで、凸部382を破損させることなく、ラッチ部394は、被ラッチ部344を乗り越えることができる。このとき、端子保持部34のガイド部346は、首部392が過度に曲げられて座屈するのを防止する。こうして、凸部382は破損することなく、端子保持部34の凹部342に収容される。
【0041】
図14に示されるように、リテーナ38の凸部382が端子保持部34の凹部342に収容された状態において、対向上面348は、腕部380と対向する。また、図10図11及び図15に示されるように、リテーナ38の凸部382が端子保持部34の凹部342に収容された状態において、規制部350は、スリット384内に少なくとも部分的に受容される。このとき、規制部350は、幅方向において、スリット384を規定する一対の側面部386の夫々と対向する。この状態で、腕部380が幅方向へ移動しようとすると、規制部350は、側面部386のいずれか一方に突き当たる。換言すると、規制部350は、腕部380が端子保持部34に対して幅方向に移動することを規制する。このとき、スリット384の側面部386は、規制部350により移動を規制される被規制部として機能する。このように、腕部380には、被規制部が設けられており、規制部350は、幅方向において被規制部と対向し、被規制部の幅方向における移動を規制する。
【0042】
再び図3を参照すると、端子20は、前から順に、接触部22、被保持部24及び接続部26を有している。接触部22は、相手側コネクタ(図示せず)の相手側端子(図示せず)と接触する部分である。被保持部24は、端子保持部34に保持される部分である。接続部26は、ケーブル40の一端に接続される部分である。被保持部24は、前後方向において後方に向いた被抜け止め部242を有している。本実施の形態において、被抜け止め部242は、前後方向において後方に向いた面である。本実施の形態において、端子20単体を前後方向において後方から見たとき、被抜け止め部242は視認可能である。このように、端子20は、被抜け止め部242を有している。
【0043】
図3に加え、図9図16及び図17から理解されるように、端子20は、前後方向において後方から端子保持部34の端子収容部340に挿入される。このとき、端子20の一部は、端子保持部34の凹部342を横切る。端子20が、所定位置まで挿入されると、端子保持部34の凹部342内に被抜け止め部242が露出する。抜け止め部396は、前後方向において、凹部342の前壁364と同じ位置にあるか又はその近傍に位置する。また、抜け止め部396は、上下方向において、少なくとも部分的に底部360よりも上方に位置する。
【0044】
図3及び図4に示すように、リテーナ38の凸部382が端子保持部34の凹部342に収容された状態において、凸部382は、凹部342の底部360と接しているか又は凹部342の底部360よりも上下方向において上側に位置している。また、この状態において、ラッチ部394は、前後方向に張り出しており、かつ上下方向において被ラッチ部344の下側に位置している。さらに、この状態において、抜け止め部396は、前後方向において端子20の被抜け止め部242の後方に位置しており、かつ被抜け止め部242と対向している。加えて、リテーナ38の腕部380の先端は、ガイド部346に面している。この構成により、リテーナ38の凸部382の抜け止め部396は、前後方向において、端子20の被抜け止め部242の後方への移動を規制する。その結果、端子20がハウジング30の端子収容部340から抜け落ちることが防止される。また、被ラッチ部344は、上下方向において、ラッチ部394の上方への移動を規制する。その結果、凸部382の凹部342からの退出が防止される。これは、腕部380のヒンジに代わる部分に疲労破壊が生じても維持される。したがって、腕部380のヒンジに代わる部分に疲労破壊が生じても、端子20がハウジング30の端子収容部340から抜け落ちることが防止される。
【0045】
本実施の形態において、リテーナ38の凸部382は、幅方向と直交する面内において、一定の断面を有している。また、端子保持部34の凹部342は、幅方向に端子保持部34を貫通している。そのため、凹部342に収容された凸部382が幅方向に自由に移動可能であるならば、凸部382は、凹部342から脱落する可能性がある。そのような可能性をなくすため、本実施の形態の端子保持部34には規制部350が設けられ、腕部380には被規制部(側面部386)が設けられている。規制部350と被規制部は、凸部382の幅方向の移動を規制し、凹部342からの凸部382の脱落を防止する。この横方向への凸部382の脱落防止と、上述した上方への凸部382の退出防止とにより、たとえ腕部380が破断したとしても、凸部382は凹部342内に維持される。こうして、ハウジング30から端子20が脱落することを防止することができる。
【0046】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。
【0047】
例えば、上記実施の形態において、規制部350は、対向上面348から上方に突出する板状部であるが、円柱状や角柱状の突起であってもよい。また、上記実施の形態において、被規制部としてスリット384が用いられているが、被規制部は、規制部350の形状に対応する孔であってもよい。
【0048】
また、規制部350として、スリット又は孔を用い、被規制部として、スリット又は孔に対応する突起を用いてもよい。
【0049】
さらに、規制部350として端子保持部34の幅方向両端に壁部を立設し、腕部380の幅方向両端縁を被規制部として用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 コネクタ
20 端子
22 接触部
24 被保持部
242 被抜け止め部
26 接続部
30 ハウジング
32 嵌合部
320 受容部
34 端子保持部
340 端子収容部
342 凹部
344 被ラッチ部
346 ガイド部
348 対向上面
350 規制部
352 後端壁
360 底部
366 開口
362 後壁
364 前壁
38 リテーナ
380 腕部
382 凸部
384 スリット
386 側面部
388 連結部
390 頭部
392 首部
394 ラッチ部
396 抜け止め部
398 端面
40 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20