(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031438
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】回転往復駆動アクチュエーター
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20240229BHJP
G02B 26/10 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
H02K33/16 B
H02K33/16 A
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134985
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 雅春
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】正本 佳
【テーマコード(参考)】
2H045
5H633
【Fターム(参考)】
2H045AB03
2H045AB23
2H045AB38
2H045AB43
2H045AB62
5H633BB08
5H633BB18
5H633GG02
5H633GG04
5H633GG07
5H633GG23
5H633HH03
5H633HH06
5H633HH09
5H633JA09
5H633JB05
(57)【要約】
【課題】可動対象物をより好適に高振幅で駆動すること。
【解決手段】一端部側で可動対象物が接続される軸部と他端部側で軸部に固定されたマグネットとを有し、軸周りに往復回転可能に支持された可動体と、一端部側で軸受けを介して軸部を回転自在に支持し、可動対象物を挟むように配置された一対の壁部を有するベース部と、マグネットを挟むようにマグネットの外周に対向する複数の磁極を有するコア体と、コア体に巻回され、マグネットと相互作用する磁束を通電により発生して可動体を往復回転させるコイル体と、マグネットとの間に磁気吸引力を発生して往復回転の基準位置を規定するマグネット位置保持部とを有し、一対の壁部のうちの他方の壁部に取り付けられたコア組立体と、一対の壁部のうちの一方の壁部に取り付けられ、軸部の回転角度を検知するセンサーが実装され、センサーを一方の壁部側に向けて一端部側から一方の壁部に配置されるセンサー基板と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部側で可動対象物が接続される軸部と他端部側で前記軸部に固定されたマグネットとを有し、軸周りに往復回転可能に支持された可動体と、
前記一端部側で軸受けを介して前記軸部を回転自在に支持し、前記可動対象物を挟むように配置された一対の壁部を有するベース部と、
前記マグネットを挟むように前記マグネットの外周に対向する複数の磁極を有するコア体と、前記コア体に巻回され、前記マグネットと相互作用する磁束を通電により発生して前記可動体を往復回転させるコイル体と、前記マグネットとの間に磁気吸引力を発生して前記往復回転の基準位置を規定するマグネット位置保持部とを有し、前記一対の壁部のうちの他方の壁部に取り付けられたコア組立体と、
前記一対の壁部のうちの一方の壁部に取り付けられ、前記軸部の回転角度を検知するセンサーが実装され、前記センサーを前記一方の壁部側に向けて前記一端部側から前記一方の壁部に配置されるセンサー基板と、
を備える、
回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項2】
前記複数の磁極の極数は2極である、
請求項1記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項3】
前記センサーは、光センサーである、
請求項1記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項4】
前記一方の壁部の前記一端部側には、前記センサーを囲むとともに、前記センサー基板を取り付けて保持する基板保持部と、
を有する、
請求項1記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項5】
前記可動対象物は、走査光を反射するミラーである、
請求項1記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転往復駆動アクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合機、レーザービームプリンタ等の光走査装置に使用されるアクチュエーターとして、回転往復駆動アクチュエーターが使用されている。具体的には、回転往復駆動アクチュエーターは、スキャナーのミラーを往復回転させることで、レーザー光の反射角度を変更して対象物に対する光走査を実現する。
【0003】
この種の回転往復駆動アクチュエーターとしてガルバノモーターを用いたものが、特許文献1に開示されている。ガルバノモーターとしては、特許文献1に開示された構造のタイプのものや、コイルをミラーに取り付けたコイル可動タイプの他、様々なタイプのものが知られている。
【0004】
特許文献1には、4つの永久磁石が、ミラーが取り付けられる回転軸に、回転軸径方向に着磁するように設けられ、コイルが巻回された磁極を有するコアが、回転軸を挟むように配置されたビームスキャナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転往復駆動アクチュエーターにおいては、特許文献1にも記載されているように、ミラーに接続された回転軸の回転角度を検出する角度センサーが設けられる。スキャナーとしてのスキャン精度は、この角度センサーの検知精度に大きく依存する。角度センサーの検知精度を高めるためには、角度センサーと、ミラー等の回転往復駆動アクチュエーターの他の構成部品との相対関係が決まった関係となるように、高精度で角度センサーの組み付け位置を調整する必要がある。
【0007】
角度センサーが、回転軸を支持する軸受近傍に配置されていない場合では、軸ブレの影響を受けて、回転軸の回転角度を精度高く検出することが困難となる。また、角度センサーをモータに近接配置する場合、モータからの電磁ノイズや発熱等の影響により好適な測定が行うことが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、可動対象物をより好適に高振幅で駆動できる回転往復駆動アクチュエーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転往復駆動アクチュエーターの一つの態様は、
一端部側で可動対象物が接続される軸部と他端部側で前記軸部に固定されたマグネットとを有し、軸周りに往復回転可能に支持された可動体と、
前記一端部側で軸受けを介して前記軸部を回転自在に支持し、前記可動対象物を挟むように配置された一対の壁部を有するベース部と、
前記マグネットを挟むように前記マグネットの外周に対向する複数の磁極を有するコア体と、前記コア体に巻回され、前記マグネットと相互作用する磁束を通電により発生して前記可動体を往復回転させるコイル体と、前記マグネットとの間に磁気吸引力を発生して前記往復回転の基準位置を規定するマグネット位置保持部とを有し、前記一対の壁部のうちの他方の壁部に取り付けられたコア組立体と、
前記一対の壁部のうちの一方の壁部に取り付けられ、前記軸部の回転角度を検知するセンサーが実装され、前記センサーを前記一方の壁部側に向けて前記一端部側から前記一方の壁部に配置されるセンサー基板と、
を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動対象物に接続される軸の回転を正確に検出できるので可動対象物をより好適に高振幅で駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る一実施の形態の回転往復駆動アクチュエーターの外観斜視図。
【
図2】同回転往復駆動アクチュエーターの軸心を通る縦断面図。
【
図3】
図2において、駆動ユニットの正面側端面から左側の部材を外したA-A線部分の端面図。
【
図4】同回転往復駆動アクチュエーターの分解斜視図。
【
図6】予圧用ばねの変形例であるウェーブスプリングを示す図。
【
図10】コイル体におけるコイルの結線状態を示す斜視図。
【
図12】回転往復駆動アクチュエーターにおける角度センサー部の外観斜視図。
【
図15】回転往復駆動アクチュエーターの磁気回路の動作の説明に供する図。
【
図16】回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の外観斜視図。
【
図17】回転往復駆動アクチュエーターの変形例1を示す縦断面図。
【
図18】回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の分解斜視図。
【
図19】回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の表面側の壁部の斜視図。
【
図20】同一端部側の壁部に配置されるセンサー部の表面側分解斜視図。
【
図21】回転往復駆動アクチュエーターを用いたスキャナーシステムの要部構成を示す図。
【
図26】マグネットの変形例4を有する回転往復駆動アクチュエーターのコア組立体を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る実施の形態1の回転往復駆動アクチュエーター1の外観斜視図であり、
図2は、同回転往復駆動アクチュエーター1の軸心を通る縦断面図である。また、
図3は、
図2において、駆動ユニット4の内部が見えるように正面側端面から左側の部材を外したA-A線部分の端面図であり、
図4は、同回転往復駆動アクチュエーター1の分解斜視図である。
【0014】
回転往復駆動アクチュエーター1は、例えば、ライダー(LiDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)装置に用いられる。なお、回転往復駆動アクチュエーター1は、複合機、レーザービームプリンタ等の光走査装置にも適用可能である。
【0015】
回転往復駆動アクチュエーター1は、大きく分けて、可動体10と、可動体10を回転自在に支持するとともに角度センサー部70が取り付けられたベース部21と、ベース部21に対して可動体10を往復回転駆動する駆動ユニット4と、を備える。ベース部21と駆動ユニット4は、可動体10を往復回転駆動自在支持する固定体20を構成する。
【0016】
また、回転往復駆動アクチュエーター1では、可動体10をベース部21に取り付けて本体ユニット2を構成し、回転往復駆動アクチュエーター1は、本体ユニット2の一方の端部に駆動ユニット4を有する。
【0017】
図1に示すように回転往復駆動アクチュエーター1では、可動体10をベース部21に装着した本体ユニット2と、駆動ユニット4とが、止着部材81により、接合されている。なお、止着部材81は、本体ユニット2と駆動ユニット4とを一体に固定できればどのような部材でもよいが、例えば、ビス、ねじ等の雄ねじやボルトナットを用いてもよい。
【0018】
可動体10は、
図4に示すように、回転軸13、ミラー部12及び可動マグネット(以下、単に「マグネット」と称する)32を有する。なお、マグネット32についての詳細は、後述する駆動ユニット4とともに詳細に説明する。
【0019】
ミラー部12は、回転往復駆動アクチュエーター1における可動対象物であり、回転軸13に接続される。ミラー部12は、例えば、ミラーホルダー122の一面にミラー121を貼り付けることで形成される。回転軸13は、ミラーホルダー122の挿通孔122aに挿通され、固着される。ミラー部12は、走査光を反射する。
【0020】
ベース部21は、平板状の底部213と、互いに離間して配置される一対の壁部211、212とを有する。底部213は、平板状であり、軸方向に延在して設けられ、底部213の両端のそれぞれに、一対の壁部211、212が互いに対向するように立設されている。ベース部21は、底部213及び一対の壁部211、212により断面が略コ字状(U字状)に形成されている。
【0021】
一対の壁部211、212は、それぞれ矩形板状であり、その中央部には、挿通孔211a、212aが形成されている(
図4参照)。挿通孔211a、212aには軸受22、23が内嵌され、軸受22、23には、回転軸13が挿通されている。
【0022】
なお、挿通孔211a、212aには、壁部211、212の軸方向外側の開口縁部にそれぞれ、貫通する部分よりも径が大きいざぐり部が設けられている。このざぐり部には、軸受22、23のフランジ224、234が嵌合する。
【0023】
軸受22、23では、ドーナッツ状の軸受本体222、232の一方側の開口縁にフランジ224、234が設けられている。軸受22、23が、ベース部21の壁部211、212の挿通孔211a、212aに対して軸方向外側から嵌め込まれることで、フランジ224、234がざぐり部に嵌合する。軸受22、23は、軸受22、23の嵌合方向の抜けを防止された状態で、ベース部21に圧入等で固定されている。
【0024】
これにより、ベース部21に対して軸受22、23の軸受本体222、232が壁部211、212から外側に突出することがなく、ベース部21の壁部211、212を薄型化し、ひいては、回転往復駆動アクチュエーター1の全長の短縮小型化を図ることができる。
【0025】
また、軸受22、23のフランジ224、234が、挿通孔211a、212aの軸方向外側(壁部211、212の外面側)のざぐり部と嵌合している。これにより、本体ユニット2の組み立て中に、フランジ224、234と挿通孔211a、212aとの嵌合状態を、壁部211、212の外側から容易に視認、計測できる。
【0026】
軸受22、23は、ベース部21用の転がり軸受(例えば、ボールベアリング)や滑り軸受で構成されてよい。例えば、軸受22、23が、転がり軸受であれば、摩擦係数が低く、回転軸13をスムーズに回転させることができるので、回転往復駆動アクチュエーター1の駆動性能が向上する。これにより、回転軸13は、軸受22、23を介して、回転自在にベース部21に取り付けられ、一対の壁部211、212の間には、可動対象物であるミラー部12が配置される。
【0027】
軸受22、23には回転軸13が挿通され、回転軸13の両端部は、軸方向で軸受22、23のそれぞれから外側に突出している。軸受22、23は、回転軸13をベース部21に軸周りに回動自在に支持させる。
【0028】
回転軸13の一端部131には、ベース部21の一対の壁部211、212間に挿通された部位に、可動対象であるミラー部12が固着され、回転軸13の他端部132側には、マグネット32が固着されている。これにより回転軸13は、ベース部21の一対の壁部211、212に軸支される。ベース部12は、回転軸13を介して一対の壁部211、212の間に配置されたミラー部12を両側から支持しているので、回転軸を片持ちで軸支された回転軸でミラー部12を支持する構成よりも強固に支持でき、耐衝撃性や耐振動性が高められている。
【0029】
マグネット32は、後述する駆動ユニット4内に配置され、駆動ユニット4により発生される磁束によって往復回転駆動される。なお、回転軸13は、駆動ユニット4とマグネット32の相互電磁作用によりミラー部12を往復回転させる。
【0030】
回転軸13において、軸受23の外側に突出する一端部131には、嵌合溝133に止め部(止め輪)14が嵌め込まれ、この止め部14により、回転軸13は、他端部132側への移動が規制される。また、回転軸13は、一端部131は、一端部側の壁部212を挿通しており、壁部212の外面側で、角度センサー部70に接続されている。角度センサー部70は回転軸13の角度を検出するものであり、回転往復駆動アクチュエーター1では、ミラー部12を駆動ユニット4と挟むように配置されている。すなわち、角度センサー部70は、駆動ユニット4の磁気回路から離間し、軸受23の近傍に配置されている。この角度センサー部70についての詳細は後述する。
【0031】
回転軸13には、ミラー部12のミラーホルダー122と、一対の壁部のうちの一端部131側の壁部212との間の部位に、筒状のストッパ部15が外挿されている。
【0032】
ストッパ部15は、回転軸13に対して固定されている。回転軸13の一端部131側への移動は、軸受23により規制され、回転軸13の他端部132側への移動は、止め部14に規制されている。回転軸13に固着されているミラー部12は、止め部14を介してベース部21に対して軸方向の他端部132側への移動が規制されている。
【0033】
ストッパ部15は、ミラー部12を介して、回転軸13が軸受23から軸方向一端部側、つまり、外側に抜けることを防止する。
【0034】
ストッパ部15は、止め部14とともに、ミラー部12、回転軸13及びマグネット32を含む可動体10の軸方向の移動を、公差等を含めた所定の範囲となるように規制しており、ベース部21からの抜けが防止されている。
【0035】
回転軸13は、ベース部21において他端部132側が軸受22を挿通して壁部211からベース部21の外側に突出するように、ベース部21に配置されている。壁部211から突出する部分は、駆動ユニット4内を挿通する。
【0036】
回転軸13の他端部132側に固着されたマグネット32は、ベース部21の壁部211から外側に突出する部位に配置されている。
【0037】
回転軸13において、壁部211から他端部132側に突出する部位には、壁部211側から順に、予圧用ばね35、環状受け部37及びマグネット32が配設されている。
【0038】
予圧用ばね35は、軸方向に伸縮して軸受22を軸方向に付勢する。
予圧用ばね35は、例えば、
図5に示すように、予圧用ばね35が配置されるスペースに対応した所定の長さL1を有し且つ所定の長さ方向で離間する両端にフラット面が形成された円筒コイルスプリングである。
【0039】
予圧用ばね35は、回転軸13に外挿して配置され、壁部211に嵌合する軸受22からマグネット32を離間する方向に付勢する。
予圧用ばね35は、回転軸13が挿通された状態で、マグネット32に隣接する環状受け部37と軸受22との間で介在する。
【0040】
予圧用ばね35は、軸受22に定圧予圧を付与する。予圧用ばね35が軸受22に定圧予圧を付与することにより、荷重の変動や回転中の回転軸13とベース部21との温度差による回転軸13の伸縮等をばねで吸収して、予圧量の変動が少なく、安定した予圧量を得ることができる。よって、予圧用ばね35は、回転軸13の高速回転及び回転軸13の軸方向の振動を防止し、定位置予圧と比較して高速で回転駆動させることができ、軸方向の振動を防止できる。
【0041】
予圧用ばね35は、軸受(特に、ボールベアリング)22、23に予圧を付与することにより回転軸13の回転駆動の低摺動性及び高信頼性を維持し、安定した駆動を行うことができる。
【0042】
なお、予圧用ばね35は、強固に固定されている部品に当接して、当該部品で予圧を受ける構造とすることが望ましい。環状受け部37は、圧入リングであり、回転軸13に対して、回転軸13の外周部分に圧入されることにより回転軸13に固着されている。
【0043】
環状受け部37は、一端部側で軸受22に当接する予圧用ばね35の一端部を受けることにより、接着固定部品であるマグネット32に直接衝撃が付与されることを防止する。これにより、マグネット32への不要な力がかかることが防止され、信頼性を高めることができる。
【0044】
また、予圧用ばね35は回転往復駆動アクチュエーター1の内部に配置されているので、回転往復駆動アクチュエーター1の外部から影響を受けず安定した予圧の設計を確保できる。
【0045】
なお、予圧用ばね35は、丸状鋼線を螺旋状に巻いてなる円筒状のコイルスプリングに変えて、伸縮方向、つまり、ばねとしての高さの低いばねとして、板状鋼線を螺旋状あるいは円環状に巻いて波を加えた形状のウェーブスプリングを用いてもよい。
【0046】
例えば、予圧用ばね35としての軸方向の長さL1の円筒コイルスプリングよりも軸方向の長さが短い予圧用ばね350として、
図6に示すウェーブスプリングとしての予圧用ばね350を用いてもよい。
【0047】
ウェーブスプリングである予圧用ばね350では、伸縮方向である軸方向の長さL2が、円筒コイルスプリングの長さL1よりも短く伸縮する長さが短い。
【0048】
予圧用ばね350は、壁部211と環状受け部37の長さL0が、長さL2<L0<L1の範囲等の条件に対応させる場合、予圧用ばね350を長さL2の方向で複数重ねることで、その伸縮長を変更できる。
【0049】
このように予圧用ばね35、350は、その設置箇所または予圧対象に応じて適宜変更して予圧力を調整して、好適な高速回転、軸方向の振動を防止して安定して駆動させることができる。
【0050】
<駆動ユニット4>
図2~
図4及び
図7に示す駆動ユニット4は、ベース部21の軸方向で離間する両端部のうちの一方に設けられ、固定体20の一部を構成する。駆動ユニット4は、ベース部21を軸方向で角度センサー部70とで挟むように配置されている。駆動ユニット4は、マグネット32とともに駆動部30を構成し、可動体10を可動する。駆動ユニット4は、ボトムカバー50、コア組立体40及びトップカバー60を有する。駆動ユニット4は、例えば、正面視正方形状の直方体状に形成されている。
【0051】
<コア組立体40>
図3、
図4及び
図14に示すコア組立体40は、コイル44、45と、コイル44、45が巻回されたボビン46、47と、コア体400と、回転角度位置保持部48とを有する。
【0052】
コア組立体40は、本実施の形態では、内側に磁極410a、410bが配設された矩形枠型のブロック状(詳細には、直方体形状)に形成されている。コア組立体40は、枠状の外周部分で、外周部分の内側に配置された磁極410a、410bを囲むように形成されている。コア組立体40は、例えば、ベース部21の壁部211において軸方向から見た壁面の矩形領域内においてマグネット32を挟む磁極410a、410bのそれぞれから折り返して延在し、磁極410a、410bを囲む一本の磁路を形成する。
【0053】
<コア体400>
コア体400は、マグネット32を囲むように配置された磁路を含む磁気回路を構成する。コア体400は、複数の磁極410a、410b及びC字状の磁路部(接続辺部412及び側辺部413)を含む一体構造の第1コア41と、第1コア41の側辺部413の一端部間に架設するように配置される第2コア42と、枠状の第3コア43とを有する。コア体400は、第1~第3コアを磁気的に結合して一体化されている。
【0054】
第1コア41~第3コア43は、コイル44、45に通電したときに発生する磁束を複数の磁極410a、410bに通過させる。第1コア41~第3コア43は、例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板(積層部材)を積層してなる積層コアである。コア体400を積層構造とすることにより、低コストで、且つ、複雑な形状を有する第1コア41~第3コア43を構成することができる。
【0055】
<第1コア41>
第1コア41は、棒状部411(411a、411b)、接続辺部412及び側辺部413を含む。第1コア41は、対向する磁極410a、410bを先端部に夫々有し、互いに平行に配置される複数の棒状部411(411a、411b)を夫々有する。棒状部411(411a、411b)の基端部に、それらの延在方向と垂直に延在する接続辺部412が接続されている。接続辺部412の両端部には、それぞれ垂直に両側辺部413a、413bが突設されている。接続辺部412には、棒状部411a、411bの間に、且つ、棒状部411a、411bと平行となるように延在する補極部414が設けられている。
【0056】
棒状部411(411a、411b)、接続辺部412、側辺部413(413a、413b)及び補極部414は、一体構造であり、第1コア41は、櫛歯形状である。
【0057】
棒状部411a、411bは、それぞれ先端部の側面部に磁極が配設され、棒状部411a、411bの外周の基端部側にボビン46、47が外挿されている。これにより、コイル44、45は棒状部411a、411bを巻回するように配置されている。
【0058】
コイル44、45への通電により励磁したときに、棒状部411a、411bの先端部の磁極は、通電方向に応じた極性を生じる。磁極は、それぞれマグネット32と対向して配置され、磁極は、それぞれマグネット32の外周面に沿って湾曲する形状を有している。これら湾曲する形状は、例えば、棒状部411a、411bの延在方向と直交する方向で対向するように配置される。
【0059】
棒状部411a、411bは、例えば、ボビン46、47を、先端側から外挿可能な外形寸法を有する。これにより、棒状部411a、411bの延在方向の先端側、つまり、磁極410a、410bの先端から、ボビン46、47を外挿して、棒状部411a、411bの基端部側の位置で、それらを囲むように位置させることができる。外挿されたボビン46、47はそれぞれ、側辺部413と補極部414との間に配置される。
【0060】
接続辺部412は、矩形状のコア体400の一辺部を構成し、棒状部411a、411bの基端部で接続し、棒状部411a、411bの並行方向と直交する方向に延在して配設されている。
【0061】
接続辺部412は、主に、棒状部411a、411bの基端部と、両側辺部413a、413bとを接続する。両側辺部413a、413bは、第2コア42の両端部に密着していることが好ましいが、ここでは両側辺部413a、413bのそれぞれと第2コア42の両端部のそれぞれのとの間に隙間が開くように配置されている。
接続辺部412及び両側辺部413a、413bは、第2コア42とともに、第3コア43に軸方向で密着した状態で積層するように設けられている。
【0062】
補極部414は、回転角度位置保持部48に対向配置され、マグネット32が回転角度位置保持部48を吸引する場合に、マグネット32の別極と引き合い、回転角度位置保持部48との吸引状態を補強する。
【0063】
具体的には、補極部414は、磁性体により構成され、例えば、磁極410a、410b及び回転角度位置保持部48とともにマグネット32を四方で囲むように配置される。
補極部414は、マグネット32(より具体的には極32b)との間で磁気吸引力を発生し、マグネット32において、回転角度位置保持部48に吸引する極32aとは異なる極32bを、対向する位置に移動させる。補極部414は、この作用により、回転角度位置保持部48における磁気吸引力により可動体10に作用する軸径方向荷重を相殺する。なお、「軸径方向荷重を相殺する」は、「軸径方向荷重を相殺するようにする」ことも含む。
【0064】
なお、補極部414においてマグネット32の外周面と対向する補極面は、マグネット32の外周面の形状に対応した湾曲面であり、マグネット32の外周面との間に全面的に均一なギャップを有する。なお、補極部414は、回転角度位置保持部48とともに、コア組立体40内で、マグネット32を囲むように配置されているので、最少のスペースでレイアウトされた状態となり、より小型化された回転往復駆動アクチュエーター1を実現できる。
【0065】
<第2コア42>
第2コア42は、第1コア41とともに、棒状部411a、411bの先端部の磁極を四方から囲むように配置される磁路を構成する。第2コア42は、角柱状に形成され、コイル44、45へ通電した際に、磁極410a、410bに磁束が通過する磁路を形成する。
【0066】
第2コア42は、両側辺部413a、413bと同じ厚み(軸方向の長さ)を有する。
第2コア42は、第1コア41の接続辺部の両端部に設けられた取付孔(止着孔)402と同様の取付孔(止着孔)402に挿入される止着部材86を介して第3コア43に密着した状態で、ボトムカバー50及びトップカバー60に固定されている(
図13参照)。取付孔402は、ボトムカバー50の貫通孔54と同径であり、回転軸13と平行に延在するように形成されている。
【0067】
第2コア42には、延在方向の中央部で且つマグネット32と対向する部位に回転角度位置保持部48が取り付けられている。第2コア42の両端部に接合するように、他のコアが配置され、第2コア42は、マグネット32及び磁極410a、410bを、他のコアと囲む位置に配置される。
【0068】
<第3コア43>
第3コア43は、第1コア41の接続辺部412、側辺部413と、第2コア42とともに、複数の磁極を囲み、且つ複数の磁極を連絡する磁路を形成する。
第3コア43は、矩形枠板状をなし、第1コア41及び第2コア42の双方で構成される矩形枠状部分に面接触して取り付けられる。
【0069】
具体的には、第3コア43は、回転軸13の延在方向で第1コア41の接続辺部412及び両側辺部413a、413bと対面して互いに面接触する。加えて第3コア43は、回転軸13を中心に第1コア41の棒状部411a、411bの複数の磁極を、位置決めした状態で、第1コア41に組み付けられる。また、第3コア43は、回転軸13の延在方向で第2コア42と対面して面接触する。
【0070】
これにより、第3コア43は、棒状部411a、411bの磁極及びコイル44、45を包囲するよう回転軸13の周囲に配置され、回転軸13周りでシームレスの磁路を構成する。第1~第3コア41~43は、コイル44、45を包囲する包囲部を有し、一方の磁極から第1コア41+第3コア43、第3コア43、第3コア43+第2コア42、第3コア43+第1コア41の他方の磁極の順に通る磁束の流れを形成できる。また、第1~第3コア41~43で、磁極と、磁極の間のマグネット32とを環状で包囲しているので、外部からコイル44、45への接触を防ぐことができる。
【0071】
駆動ユニット4を組み立てた状態では、磁極で囲まれた空間に回転軸13が挿通される。また、この空間に、回転軸13に取り付けられたマグネット32が位置し、このマグネット32に対して、正確な位置で磁極がエアギャップGを介して対向する。
【0072】
マグネット32は、S極32a及びN極32bが周方向に交互に配置されているリング型マグネットである。マグネット32は、回転往復駆動アクチュエーター1を組み立てた状態において、コア体400の磁極410a、410bで囲まれた空間に位置するように、回転軸13の周面に取り付けられる。マグネット32は回転軸13の外周を囲むように固定されている。コイル44、45に通電が行われると、棒状部411a、411bを含む第1コア41、第2コア42及び第3コア43が励磁されて磁極410a、410bに通電方向に応じた極性が生じる。これにより、磁極410a、410bとマグネット32との間で磁気力(吸引力及び反発力)が発生する。
【0073】
本実施の形態では、マグネット32は、回転軸13の軸方向に沿う平面を境界として異なる極性に着磁されている。すなわち、マグネット32は、S極32aとN極32bに等分割されるように着磁された2極マグネットである。マグネット32の磁極の数(本実施の形態では2つ)は、コア体400の磁極410a、410bの数と等しい。なお、マグネット32は、可動時の振幅に応じて2極以上に着磁されていてもよい。この場合、コア体400の磁極部は、マグネット32の磁極に対応して設けられる。
【0074】
<マグネット32>
マグネット32は、S極32aとN極32bとの境界部分32c、32d(以下、「磁極切替部」と称する)で極性が切り替わる。磁極切替部32c、32dは、マグネット32の一方の端面に、軸心を通るように延在する溝状に形成されている。磁極切替部32c、32dは、マグネット32が中立位置で保持されているとき、磁極410a、410bのそれぞれと正対する。なお、磁極切替部32c、32dは、回転往復駆動アクチュエーター1を組み立てる際の各部の構成要素の位置決めの基準として機能する。
【0075】
特に回転軸13にマグネット32が固定されているので、磁極切替部32c、32dの溝に、治具を軸方向で当てて、マグネット32の回転を制限し、ミラー部12と、センサー部品との位置関係を調整して決定できる。また、回転往復駆動アクチュエーター1の中心となる回転軸13を基準に規定できるので他の部品の寸法も設定しやすく精度高く製造できる。
【0076】
磁極切替部32c、32dが溝状に形成されていれば、この溝を基準として、回転往復駆動アクチュエーター1の組立時或いはメンテナンス時等において、回転軸13に固定される各部品の位置関係を調整できる。特に、マグネット32の磁極切替部32c、32dの位置に合わせて、回転軸13に対してミラー部12の位置、角度センサー部70のエンコーダーの取付位置等を好適に精度良く規定できる。例えば、溝に軸方向で治具を当てて、溝に突起を嵌合して回転軸13の軸周りの回転を規制して不動にし、回転軸13に取り付けられる他の構成要素の基準位置となる。特にミラーのマグネット32の極に対する角度調整には精度が必要であり、これを可能とする。
【0077】
中立位置において、マグネット32の磁極切替部32c、32dが、磁極410a、410bと正対することにより、駆動ユニット4は最大トルクを発生して可動体10を安定して駆動することができる。
【0078】
また、マグネット32を2極マグネットで構成することにより、コア体400との協働により、可動対象物を高振幅で駆動しやすくなるとともに、駆動性能の向上を図ることができる。すなわち、可動対象であるミラー部12をワイドアングルで駆動できる。なお、実施の形態では、マグネット32が一対の磁極切替部32c、32dを有する場合について説明したが、二対以上の磁極切替部を有していてもよい。
【0079】
<コイル体(コイルとボビン)>
コイル44、45は、筒状のボビン46、47に巻回される。コイル44、45及びボビン46、47からなるコイル体が、第1コア41の棒状部411a、411bに外挿されることにより、コイル44、45は、棒状部411a、411bを巻回するように配置される。こうして、コイル44、45は、棒状部411a、411bの先端部の磁極に隣り合うように配置されている。
【0080】
コイル44、45の巻線方向は、通電が行われた際に、第1コア41の複数の磁極の一方から他方に向かって好適に磁束が生じるように設定される。
【0081】
図8は、コイル体の斜視図であり、
図9は、コイル体の分解図であり、
図10は、コイル体におけるコイルの結線状態を示す斜視図である。
【0082】
コイル44が巻回されたボビン46であるコイル体と、コイル45が巻回されたボビン47の構成は同様であるので、コイル44が巻回されたボビン46を有するコイル体の説明を行い、コイル45及びボビン47を有するコイル体の説明は省略する。
【0083】
コイル体49は、コイル44が巻回されるボビン部492と、端子496を支持し、ボビン部492と一体に設けられる端子支持部494とを有する。
【0084】
ボビン部492は、棒状部411(411a、411b)が挿通する貫通孔を有し、ボビン部492の一方側の開口縁部のフランジに端子支持部494が突設されている。
【0085】
端子支持部494は各筒状を有し、内部に端子496が挿入されており、当該端子496を保持している。
【0086】
端子496は、L字状であり、一辺部4962でコイル44の端部を絡げて接続し、他辺部4964の基端部が端子支持部494に挿通されて支持され、他辺部4964の先端部側が端子支持部494から外部に突出する。
【0087】
他辺部4964の先端部側で、コイル44に電源を供給する外部機器或いは、隣り合うコイルの端部に接続する。本実施の形態では、端子496は、一辺部4962の延在方向をコイル44の軸方向と平行にし、他辺部4964の延在方向を、コイル44の軸方向と直交する方向としている。
【0088】
コイル体49では、ボビン部492の開口部の開口方向に、端子496の一辺部4962が延在するように配置され、他辺部4964がボビン部492のフランジの張出方向に延在して配置されている。
【0089】
一辺部4962では半田などからなる結線部Hでコイル44の両端のコイル線がそれぞれ結線されている。
【0090】
このように、端子496は、L字状であり、一方の辺部である一辺部4962にコイル巻線を結線(フィレットである結線部H)し、他辺部4964でセンサー基板72と接合される。
【0091】
端子496は、L字状であるので、センサー基板結線側と、コイル結線側で分離してそれぞれ結線でき、特に、半田によりコイル巻線を結線する結線部(フィレット)Hを形成するときの作業を、半田や巻線の干渉がなく簡単に行うことができる。
【0092】
すなわち、センサー基板72の結線作業と、同一の端子496の巻線を固定する作業とが生じる場合でも、巻線を導通する際の半田が付着する等の基板との結線工程の阻害要因となることがない。センサー基板72と端子496との結線は、駆動ユニット4に対して、軸方向でセンサー基板72を配置することで、位置決めしつつ、コンタミ対応を行うことができ、光センサー76を軸方向垂直に容易に配置できる。
【0093】
<回転角度位置保持部(マグネット位置保持部)48>
図2~
図4に示す回転角度位置保持部48は、回転往復駆動アクチュエーター1を組み立てた状態において、マグネット32とエアギャップGを介して対向するようにコア組立体40に組み込まれる。回転角度位置保持部48は、例えば、第2コア42に、磁極がマグネット32に対向する姿勢で取り付けられている。
【0094】
回転角度位置保持部48は、例えば、磁極をマグネット32に向けたマグネットを用いて、マグネット32との間に磁気吸引力を生じさせ、マグネット32を吸引する。すなわち、回転角度位置保持部48は、棒状部411a、411bとともに、マグネット32との間に磁気バネを形成する。この磁気バネにより、コイル44、45への通電が行われていない常態時(非通電時)には、マグネット32の回転角度位置、すなわち、回転軸13の回転角度位置が中立位置に保持される。
【0095】
このとき、回転角度位置保持部48と引き合うマグネット32の磁極32a(
図3ではS極)とは反対側の磁極32b(
図3で示すN極)が、近接する磁性体である第1コア41の補極部414を吸引する。これにより、より効果的にマグネット32、つまり、可動対象物であるミラー部12が、中立位置に保持される。
【0096】
中立位置とは、マグネット32の往復回転動作の基準位置、すなわち、往復回転(揺動)の中心位置であり、往復回転する際に、軸周りに左右に回転する際に同一回転角度となる位置である。マグネット32が中立位置に保持されているとき、マグネット32の磁極切替部32c、32dは、棒状部411a、411bの磁極と正対する。
【0097】
また、マグネット32が中立位置にある状態を基準にして、ミラー部12の取付け姿勢が調整される。なお、回転角度位置保持部48は、マグネット32との間に磁気吸引力を発生する磁性体で構成されてもよい。
【0098】
<ボトムカバー50及びトップカバー60>
図1、
図2、
図4~
図6及び
図11~
図14に示すボトムカバー50及びトップカバー60は、非磁性を有し通電性の高い電気伝導材からなることが好ましく、電磁シールドとして機能する。
【0099】
ボトムカバー50及びトップカバー60は、コア組立体40の軸方向(厚み方向)の両側に、それぞれ配置されている。
【0100】
ボトムカバー50及びトップカバー60は、コア組立体40へのノイズの入射及びコア体400から外部へのノイズの出射を抑制することができる。
【0101】
ボトムカバー50及びトップカバー60は例えばアルミ合金等の非磁性であり通電性を有し熱伝導率の高い材料等により形成される。アルミ合金は設計の自由度が高く、容易に所望の剛性を付与することができる。したがって、ボトムカバー50及びトップカバー60をアルミ合金にすれば、トップカバー60を、回転軸13を支持する支持体として機能させる場合に好適である。
【0102】
図11にボトムカバーの正面側斜視図を示す。ボトムカバー50は、壁部211の外面に重なるように取り付けられる。ボトムカバー50は壁部211の外形に対応して矩形板状に形成されている。ボトムカバー50は矩形板状のカバー本体52を有し、カバー本体52の中央部には、回転軸13が挿通される開口部53が形成されている。開口部53は、軸受22と対向する位置に配置され、開口部53の内径はマグネット32の外径より大きい。ボトムカバー50は、開口部53内にマグネット32を装着した回転軸13を挿通させて、マグネット32を、コア組立体40内に挿入して配置できる。
【0103】
開口部53内には、回転軸13が挿通されるとともに回転軸13に外挿された予圧用ばね35が配設されている(
図2参照)。
【0104】
ボトムカバー50のカバー本体52には、貫通孔54、ベース部21に固定するための貫通孔55、位置決め孔56、位置調整孔57及びコア保持用突起58が設けられている。貫通孔54には、ボトムカバー50をコア組立体40、トップカバー60とともに駆動ユニット4として一体化する止着部材86が挿通される。貫通孔55は、壁部211に取り付けられる取り付け部522に形成されている。なお、取り付け部522は、カバー本体52において軸方向と直交する方向で離間する左右の辺部を構成しており、カバー本体52の4つの角部を含む。これら角部にそれぞれ貫通孔55が形成されている。
【0105】
開口部53、貫通孔54、55、位置決め孔56及び位置調整孔57は、回転軸13の軸方向と平行に形成されている。止着部材81、86を貫通孔54、55に挿通して、ベース部21への組み付け或いは駆動ユニット4の組み立て、ひいては、回転往復駆動アクチュエーター1の組立を、軸方向の一方向で行うことができる。
【0106】
貫通孔54は、
図7及び
図11に示すように、カバー本体52の裏面に凹状のざぐり部541が形成され、ざぐり部541は、ねじ等の止着部材86の頭部を収容する。
【0107】
コア保持用突起58は、カバー本体52において開口部53を挟む位置から軸方向に突設され、コア組立体40と組み合わせる際に、コア組立体40と嵌合して位置決めする。(
図3及び
図4参照)
【0108】
コア保持用突起58は、棒状部411a、411bと、両側辺部413a、413bとの間に挿入され、双方間を流れる磁束の漏れを防止する。
【0109】
また、ボトムカバー50の裏面には、
図6に示すように、位置決め突起59が突設されている。位置決め突起59は、ボトムカバー50がベース部21に、互いの中心同士が一致した状態で当接した際に、壁部211に形成された凹部218(
図2及び
図4参照)に係合する。
【0110】
位置決め突起59は、例えば、環状突起である。一方、壁部211の凹部218は、
図2及び
図4に示すように、ベース部21において挿通孔211aを囲むように形成された環状の溝である。位置決め突起59は、環状の溝の凹部218に係合し、壁部212と駆動ユニット4との双方が位置決めされる。
【0111】
トップカバー60は、ボトムカバー50とともにコア組立体40を軸方向両側から挟み、止着部材86で一体的に固定されて、駆動ユニット4を構成する。本実施の形態のトップカバー60は、
図2及び
図4に示すように、可動体10、つまり回転軸13の回転角度を検出する光センサー76を収容するセンサー用収容部65として機能する。
【0112】
トップカバー60は、コア組立体40の先端側の面を覆うトップカバー本体62と、トップカバー本体62の外周縁部から軸方向の他端部132側に突出する周壁部64とを有する。
【0113】
トップカバー本体62は、軸方向からみて正方形をなし、コア組立体40側に向けて開口する凹状部621を有する板状体である。トップカバー本体62は、トップカバー本体62は正方形の板状体であり、周壁部64は、トップカバー本体62の外周部から立ち上がる矩形枠状に形成されている。
【0114】
トップカバー60のトップカバー本体62には、貫通孔66が設けられている。貫通孔66は、ボトムカバー50の開口部53、ベース部21の軸受22、23と同一軸を有するようにトップカバー本体62に配設されている。貫通孔66には裏面側(一端部131側)から、回転軸13が挿通されたブッシュ39が内嵌されている。これにより、ブッシュ39は、移動方向が規制された状態でトップカバー本体62に取り付けられている。なお、ブッシュ39と回転軸13とは互いに摺動するように配置されてもよいし、隙間を空けて配置されてもよい。
【0115】
ブッシュ39は、回転軸13の他端部132側を支持する。ブッシュ39は、回転軸13が衝撃を受けた際等、その衝撃で軸ブレしないように他端部132側のトップカバー60で支持する。ブッシュ39は、その他端部が貫通孔66に内嵌し、一端部が凹状部621内に位置するように、トップカバー60に取り付けられている。
【0116】
トップカバー本体62には、貫通孔66の他に、ボビン46、47と係合するボビン係合孔67が軸方向に貫通して設けられている。
【0117】
ボビン係合孔67には、ボビン46、47を有するコイル体49の端子支持部494内嵌される。これにより、端子支持部494がトップカバー本体62に挿入され、端子支持部494から他辺部4964が突出して配置される。
【0118】
ボビン係合孔67と端子支持部494との係合は、コア組立体40とトップカバー60とを組み付ける際の位置決めとしても機能する。
【0119】
トップカバー60、コア組立体40(コア体400)及びボトムカバー50は、止着孔402、貫通孔54等の軸方向に連続する同径の孔を介して止着部材86により固定されている。
【0120】
<角度センサー部70>
図12は、回転往復駆動アクチュエーター1における角度センサー部の外観斜視図であり、
図13は、角度センサー部の表面側分解斜視図であり、
図14は、角度センサー部の裏面側分解斜視図である。
【0121】
角度センサー部70は、ベース部21の一端部側の壁部212の外面21aに設けられている。
【0122】
角度センサー部70は、マグネット32及び回転軸13を含む可動体10(ミラー部12も同様)の回転角度を検知する。回転往復駆動アクチュエーター1は、角度センサー部70の検知結果に基づいて、制御部を介して、駆動時の可動体、具体的には、可動対象物であるミラー部12の回転角度位置及び回転速度を制御することができる。
【0123】
角度センサー部70は、磁気式や光学式のいずれの方式のセンサーでもよい。本実施の形態では、角度センサー部70は、センサー部品と、センサー基板72と、基板保持部73と、を有する。
【0124】
角度センサー部70が備えるセンサー部品は、例えば、エンコーダーディスク74と、光源及び受光素子等を有する光センサー(センサー)76であり、光センサー76は、例えば、センサー基板72に実装される。
【0125】
基板保持部73は、取り付けられるセンサー基板72を保持するとともに、センサー基板72と壁部212とにより、センサー部品を配置する配置空間(センサ配置部701)を形成する。
【0126】
基板保持部73は、例えば、中央に開口部732を有する板状体であり、壁部212の外面21aに固定されて、内部に回転軸13が挿通する凹状のセンサー配置部701を構成する。基板保持部73には、内部空間を覆うようにセンサー基板72が取り付けられている。これにより基板保持部73は、コンタミを防止した状態でセンサー部品を収容可能である。
【0127】
基板保持部73は、枠状に形成されているが、これに限らず、回転軸13が挿通されるともに、センサー部品を配置可能な空間を形成するものであれば、凹状に形成されてもよい。基板保持部73は、止着孔702を挿通する止着部材85を壁部212の止着孔215に挿入して嵌合(例えば、螺合)することにより、壁部212に固定されている。
【0128】
エンコーダーディスク74は、中央部の取付部(エンコーダハブ)742を介して、回転軸13の一端部131側に固定されているとともに、基板保持部73の開口部732内(センサー配置部701内)に配置されている。
【0129】
エンコーダーディスク74は、回転軸13の回転数を検出するためのものであり、マグネット32及びミラー部12と一体に回転する。エンコーダーディスク74の軸周りの回転位置は、回転軸13の回転位置と同一となる。
【0130】
光センサー76は、エンコーダーディスク74に対向して配置される。光センサー76は、エンコーダーディスク74に光を出射しその反射光に基づいてエンコーダーディスクの回転位置(角度)を検出する。これにより、マグネット32及びミラー部12の回転位置を高分解能での正確な回転位置を検出できる。
【0131】
光センサー76は、センサー基板72の裏面に実装されている。センサー基板72が基板保持部73に取り付けられることにより、光センサー76は、センサー配置部701内で、エンコーダーディスク74と軸方向で対向するように配置されている。光センサー76は、光センサー配置部701内で、エンコーダーディスク74に対して、その回転数、回転位置を検出可能に配置されている。
【0132】
センサー基板72は、一端部131側から基板保持部73の開口部732を塞ぐように配置され、閉塞されたセンサー配置部701を構成する。
【0133】
センサー基板72は、中央部に開口部724を有し、この開口部724には、エンコーダーディスク74を取り付ける取付軸部(エンコーダハブ)742及び回転軸13が挿入されており、これらをセンサ基板72は支持可能である。止着孔723を介して止着部材84が基板保持部73の止着孔703に止着されることで、センサー基板72は、基板保持部73に固定される。これにより、センサー基板72は、壁部212に固定される基板保持部73に固定されているので、基板保持部73を介して壁部212に固定されている。
【0134】
なお、壁部212、基板保持部73、センサー基板72には、壁部212に角度センサー部70を好適な位置に位置決め固定するために用いられる位置決め孔205、705、725と位置調整孔207、707、727が設けられている。
【0135】
位置決め孔205、705、725同士は、回転軸13と平行な同一軸上に同径(略同径含む)で配設されている。位置調整孔207、707、727同士は、回転軸13と平行な同軸上に同形状で配設され、棒状の調整部材(図示省略)が挿通された際に隙間ができる形状である。
【0136】
これらの構成により、壁部212、基板保持部73、センサー基板72を止着部材84で止着する前に、位置調整孔207、707、727に調整部材(図示省略)を挿入する。この状態で、壁部212、基板保持部73、センサー基板72を移動させて好適な位置に調整しつつ、位置決め孔205、705、725の夫々を挿通するように、棒状の位置決め材を挿通することができる。これにより、壁部212に対して、基板保持部73、センサー基板72は、回転軸13を中心に好適な位置に位置決めされる。この状態で、基板保持部73、センサー基板72は壁部212に好適な位置で固定できる。
【0137】
センサー基板72は、実装する光センサー76が開口部732内でエンコーダーディスク74に対向するように、止着孔703を挿通する止着部材84を介して基板保持部73に固定されている。
【0138】
センサー基板72は、基板保持部73に取り付けるだけで、光センサー76やエンコーダーディスク74を含む角度センサー部70のセンシング部分にゴミなど外部からの不要物の侵入を防止できる。
【0139】
次に、回転往復駆動アクチュエーター1の動作について、
図3及び
図15を用いて説明する。
図15は、回転往復駆動アクチュエーター1の磁気回路の動作の説明に供する図である。
【0140】
コア組立体40のコア体400の2つの棒状部411a、411bの磁極410a、410bは、エアギャップGを空けてマグネット32を挟むように配置されている。コイル44、45への非通電時は、
図3に示すように、マグネット32は、回転角度位置保持部48との間の磁気吸引力により、中立位置に保持される。
【0141】
この中立位置では、マグネット32のS極32a及びN極32bの一方(
図20でS極32a)が回転角度位置保持部48に吸引される(
図20の磁気バネトルクFM参照)。このとき、磁極切替部32c、32dは、コア体400の磁極410a、410bの中心位置と対向する。また、補極部414がマグネット32のS極32a及びN極32bの他方(
図20でN極32b)と引き合う。これにより、マグネット32は、より効果的に中立位置に移動する。
【0142】
コイル44、45に対して通電が行われると、コア体400が励磁され、磁極410a、410bに通電方向に応じた極性が生じる。例えば、
図20に示すようにコイル44、45への通電が行われると、コア体400の内部に磁束が生じ、磁極410aはN極、磁極410bはS極となる。
【0143】
これにより、N極に磁化された磁極410aは、マグネット32のS極32aと引き合い、S極に磁化された磁極410bは、マグネット32のN極32bと引き合う。そして、マグネット32には回転軸13の軸回りにF方向のトルクが発生し、マグネット32はF方向に回転する。これに伴い、回転軸13もF方向に回転し、回転軸13に固定されているミラー部12もF方向に回転する。
【0144】
次に、コイル44、45に対して逆向きに通電が行われると、コア体400の内部に生じる磁束の流れは
図15で示す方向とは逆方向になり、磁極410aは、S極、磁極410bはN極となる。S極に磁化された磁極410aは、マグネット32のN極32bと引き合い、N極に磁化された磁極410bは、マグネット32のS極32aと引き合う。そして、マグネット32には回転軸13の軸回りにF方向とは逆向きのトルク-Fが発生し、マグネット32は-F方向に回転する。これに伴い、回転軸13も回転し、回転軸13に固定されるミラー部12も
図15に示すよう方向とは逆方向に回転する。
回転往復駆動アクチュエーター1は、以上の動作を繰り返すことで、ミラー部12を回転往復駆動する。
【0145】
実際上、回転往復駆動アクチュエーター1は、電源供給部(例えば
図21の駆動信号供給部103に相当)からコイル44、45に入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル44、45の通電方向は周期的に切り替わる。通電方向の切り替わり時には、回転角度位置保持部48とマグネット32との間の磁気吸引力、つまり磁気バネの復元力(
図20で示す磁気バネトルクFMとその逆方向のトルクである「-FM」)により、マグネット32は中立位置に戻るように付勢される。これにより、可動体10には、軸回りにF方向のトルクと、F方向とは逆の方向(-F方向)のトルクが交互に作用する。これにより、可動体10は、回転往復駆動される。
【0146】
以下に、回転往復駆動アクチュエーター1の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター1では、可動体(可動体10)の慣性モーメントをJ[kg・m2]、磁気バネ(磁極410a、410b、回転角度位置保持部48及びマグネット32)のねじり方向のバネ定数をKsp[N・m/rad]とした場合、可動体は、固定体(固定体20)に対して、式(1)によって算出される共振周波数Fr[Hz]で振動(往復回転)する。
【0147】
【0148】
可動体は、バネマス系の振動モデルにおけるマス部を構成するので、コイル44、45に可動体の共振周波数Frに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル44、45に対して、可動体の共振周波数Frと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体を効率良く振動させることができる。
【0149】
回転往復駆動アクチュエーター1の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。回転往復駆動アクチュエーター1は、式(2)で示す運動方程式及び式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0150】
【0151】
【0152】
すなわち、回転往復駆動アクチュエーター1における可動体の慣性モーメントJ[kg・m2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数Kt[N・m/A]、電流i(t)[A]、バネ定数Ksp[N・m/rad]、減衰係数D[N・m/(rad/s)]、負荷トルクTLoss[N・m]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0153】
このように、回転往復駆動アクチュエーター1は、可動体の慣性モーメントJと磁気バネのバネ定数Kspにより決まる共振周波数Frに対応する交流波によりコイルへの通電を行った場合に、効率良い大きな振動出力を得ることができる。
【0154】
<変形例1>
図16は、回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の外観斜視図であり、
図17は、回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の軸心を通る縦断面図である。また、
図18は、回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の分解斜視図であり、
図19は、回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の一端部側の壁部の斜視図である。また、
図20は、同一端部側の壁部に配置されるセンサー部の表面側分解斜視図である。
【0155】
変形例1の回転往復駆動アクチュエーター1Aは、略同様に構成された回転往復駆動アクチュエーター1と比較して、ベース部21Aの一端部側の壁部212A側に取り付けられる角度センサー部70Aにおける基板保持部を、壁部212Aに設けた構成のみが異なり、その他の構成は同様である。よって、同機能を有する同名称には同符号を付して説明は省略し、異なる点のみ説明する。
【0156】
図16~
図20に示す回転往復駆動アクチュエーター1Aでは、可動体10Aをベース部21Aに取り付けて本体ユニット2Aを構成する。なお、本体ユニット2Aは、可動体10を、ベース部21Aに装着して構成される。また、ベース部21Aと駆動ユニット4は、可動体10を往復回転駆動自在支持する固定体20Aを構成する。回転往復駆動アクチュエーター1Aは、本体ユニット2Aの一方の端部である壁部212Aに角度センサー部70Aを有し、本体ユニット2Aの他方の端部側に配置された壁部211Aに、駆動ユニット4を有している。また、角度センサー部70Aは、エンコーダーディスク74、光センサー76、センサー基板72を有する。
【0157】
回転往復駆動アクチュエーター1Aは、回転往復駆動アクチュエーター1と比較して、基板保持部を有しておらず、基板保持部の機能を壁部212Aに一体に設けたものである。壁部212Aは、壁部211Aとともに、底部213と同様に構成される平板状の底部213Aの両端部の夫々から垂直に立設し、互いに離間して対向する。ベース部21Aの壁部212Aに、他端部131の方向に開口する凹状のセンサー配置部230が設けられている。
【0158】
具体的には、ベース部21と同様に構成されたベース部21Aの他端部側の壁部212Aが、基板保持部73と同様の機能を有する枠状周壁部240を有する。壁部212Aの外面21aでは、枠状周壁部240に囲まれる中央部に凹状のセンサー配置部230が設けられている。センサー配置部230には、壁部212Aを挿通する回転軸13の一端部131が突出されている。
【0159】
このセンサー配置部230は、実施の形態のものと同様に、内部で回転軸13に、取付軸部742を介してエンコーダーディスクが74が固定されている。また、センサー配置部230内で、センサー基板72に実装された光センサー76がエンコーダーディスク74を向くように、センサー基板72は、壁部212Aに取り付けられている。
【0160】
センサー基板72は、止着部材84により、止着孔723、215を介して、壁部212Aの外面21aに、センサー配置部230を覆うように取り付けられている。回転往復駆動アクチュエーター1Aの構成によれば、実施の形態と同様の効果を有するとともに、基板保持部として別体の部材を用いる必要がないので、部品点数を少なくして製作時間も短くできる。なお、センサー基板72を壁部212Aに取り付ける際に、壁部212、センサー基板72に設けられた位置決め孔205、725と位置調整孔207、727とにより、センサー基板72を壁部212Aに、回転軸13を中心とした好適な位置で位置決めできる。
【0161】
<スキャナーシステム100>
図21は、回転往復駆動アクチュエーター1を用いたスキャナーシステム100の要部構成を示すブロック図である。
【0162】
スキャナーシステム100は、回転往復駆動アクチュエーター1、1Aのいずれかであり、これら回転往復駆動アクチュエーター1、1Aに加えて、レーザー発光部101、レーザー制御部102、駆動信号供給部103及び位置制御信号計算部104を有する。
【0163】
レーザー発光部101は、例えば、光源となるLD(レーザーダイオード)と、この光源から出力されるレーザー光を収束するためのレンズ系などを有する。レーザー制御部102は、レーザー発光部101を制御する。レーザー発光部101から照射されたレーザー光は、回転往復駆動アクチュエーター1のミラー121に入射される。
【0164】
位置制御信号計算部104は、角度センサー部70により取得された回転軸13(ミラー121)の角度位置と、目標角度位置とを参照して、回転軸13(ミラー121)を目標角度位置となるように制御する駆動信号を生成して出力する。例えば、位置制御信号計算部104は、取得した回転軸13(ミラー121)の角度位置と、図示しない波形メモリに格納されているのこぎり波形データ等を用いて変換された目標角度位置を示す信号とに基づいて位置制御信号を生成する。位置制御信号計算部104は、生成した位置制御信号を駆動信号供給部103に出力する。
【0165】
駆動信号供給部103は、位置制御信号に基づいて、回転往復駆動アクチュエーター1のコイル44、45に、回転軸13(ミラー121)の角度位置が所望の角度位置となるような駆動信号を供給する。これにより、スキャナーシステム100は、回転往復駆動アクチュエーター1から所定の走査領域に走査光を出射することができる。
【0166】
<まとめ>
以上説明したように、本実施の形態に係る回転往復駆動アクチュエーター1は、ミラー部(可動対象物)が接続される回転軸(軸部)13と、回転軸13に固定されたマグネット32とを有する可動体10を有する。なお、マグネット32は、外周面においてS極32a及びN極32bが周方向に交互に配置されているリング型マグネットである。加えて、回転往復駆動アクチュエーター1は、コア組立体40を有する固定体20を有する。
【0167】
回転軸13はベース部21の一対の壁部211、212により回動自在に支持されている。コア組立体40は、一対の壁部211、212のうちの他方の壁部211に取り付けられ、一対の壁部211、212のうちの一方の壁部212には、回転軸13の回転角度を検知する角度センサー部70が配置される。角度センサー部70では、センサー(光センサー)76が実装され、センサーを前記一方の壁部側に向けて一端部131側から一方の壁部212にセンサー基板72が取り付けられている。
【0168】
このように、角度センサー部品(エンコーダーディスク等)は、コア組立体40から離間した位置で軸受23近傍に配置されているので、駆動時においてコア組立体からの電磁ノイズや発熱の影響や機械的な影響の懸念がなく、回転軸13の軸ブレの影響なく、角度検出を好適に行うことができる。よって、可動対象物に接続される軸の回転を正確に検出でき、可動対象物をより好適に高振幅で駆動できる。
【0169】
センサー基板72は、センサー配置部701、230よりも外側で、センサー部品の検出部(エンコーダーディスク)を覆う。これにより、センサー基板72によりセンサー配置部701、230内へのコンタミを防止できる。このように、センサー配置部701、230内への異物の混入を防止して、正確な回転角度検出の行い好適に可動対象物を駆動させることができる。
【0170】
また、角度センサー部70は、回転軸13の一端部131に被検出部であるエンコーダーディスク74を配置し、回転軸13の軸方向でセンサー基板76に実施された光センサー76を対向することにより構成されている。この構成により、角度センサー部70が配設される構成の寸法が最小となるレイアウトになり、回転往復駆動アクチュエーター1自体の小型化を図ることができるとともに光センサー76を安定して保持できる。
【0171】
また、角度センサー部70をメンテナンスする際に、止着部材84を外すだけで、不具合時に高額部品であるセンサー部品を外部に露出させて、容易に回収或いは交換を行うことができる。
【0172】
また、センサー部が光学センサーである場合、別途遮光部材を用いることなく、センサー配置部(センサーを収容する収容部でもよい)701、230への光の干渉を防止できる。
【0173】
駆動ユニット4を本体ユニット2に固定する際に、回転軸13を基準とした場合、その基準から寸法を規定できる位置で固定することが望ましい。また、軸を垂直に立てて回転往復駆動アクチュエーターを製品の筐体に固定する際に、軸と平行な方向から、位置決め・固定して、回転往復駆動アクチュエーターの組み立て、回転往復駆動アクチュエーターの筐体への取り付けを行うことができる。これにより、軸方法と異なる方向で組み立てたりする場合によりも、追い寸法が少なく高精度の位置決め・固定を行うことができる。
【0174】
また、ブッシュ39と、回転軸13の外周との間には、マグネット32とコア組立体40とのエアギャップよりも狭い隙間(クリアランス)が設けられていてもよい。この場合、ブッシュ39と回転軸13との摺動が無くなり耐衝撃を確保できる。またブッシュ39と回転軸13とが摺動する構成であれば、確実に衝撃を受けて、センサー部へ衝撃を防止でき可動体の不要振動を減衰して、低騒音化を図ることができる。
【0175】
また、可動対象物は、走査光を反射するミラー部12(特にミラー121)である。これにより、回転往復駆動アクチュエーター1を、光走査を行うスキャナーの用途に使用することができる。
【0176】
また、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター1、1Aのリング状のマグネット32は、磁極切替部32c、32dを、
図22に示すように、一方側の端面322に形成されたU字状の溝で構成しているが、U字状の溝で構成しなくてもよい。磁極切替部は、マグネット32において磁極が替わる位置を示すものであればどのように構成されてもよい。マグネット32の変形例を、
図22~
図26を参照して説明する。
【0177】
図22~
図26は、回転往復駆動アクチュエーター1、1Aにおけるマグネットの変形例1~4を示す。なお、
図23~
図25の各
図A、
図Bは、それぞれ変形例としてのマグネットの正面図、右側面図を示し、
図26は、変形例4を有する回転往復駆動アクチュエーターのコア組立体を示す図であり、マグネット32を有する回転往復駆動アクチュエーターの
図2のA-A線部分の端面図に対応する。
【0178】
図23~
図25に示すマグネット320、320A、320Bは、夫々リング形状であり、夫々中央に回転軸13が挿通される開口部321を有する。
【0179】
図23に示すマグネット320は、一方の端面322の直径部分上に、突状の磁極切替部32e、32fを一体に有する。磁極切替部32e、32fは、端面322上で開口部321を挟み、同一直線上に形成された突状体(突条)であり、その先端面は丸みを帯びてもよいし、平らな先端面であってもよい。
【0180】
磁極切替部32e、32fによりマグネット320は、その形状でマグネット320における磁極の切り替わり位置を判定させることができる。
【0181】
また、
図24に示すマグネット320Aは、マグネット320と比較して、リング状の本体の端面322に、断面U字状に変えて断面V字状の磁極切替部32g、32hを有する。
【0182】
磁極切替部32g、32hによりマグネット320Aは、その形状でマグネット320Aにおける磁極の切り替わり位置を判定させることができる。
【0183】
ここで、マグネット32に加え、マグネット320、320Aの磁極方向の組立精度は、可動対象物であるミラー部12の角度基準や角度センサー76の角度基準に合わせバランス良く配置することが望ましい。各角度基準にずれが発生すると、回転軸13の回転角度により特性の変化が起こり、性能ばらつきの要因となるという問題がある。
【0184】
これに対し、本実施の形態では、マグネット32、320、320Aにおいて磁極切替部32c~32hはU字型、突状型、V字型等に形成されており、マグネット32、320、320Aは、着磁方向に凹凸する形状を有する。
【0185】
よって、U字型、突状型、V字型等に対応するピンを有する位置決め治具を用いて、これら磁極切替部32c、32d、32e、32f、32g、32hを基準として他部品等を組み付けたり回転往復駆動アクチュエーターを組み立てたりすることができる。
【0186】
すなわち、凹凸部(磁極切替部32c、32d、32e、32f、32g、32h)を基準として、回転往復駆動アクチュエーター1の組立時或いはメンテナンス時等において、回転軸13に固定される各部品の位置関係を調整できる。回転往復駆動アクチュエーター1では、ミラー部12の角度精度、角度センサー部70の角度基準及びマグネット32の磁極の基準を容易に揃えることが出来、高精度な組立を容易に実現することができる。
【0187】
また、マグネット32では、凹凸が着磁方向に設けられる構成にすれば、外周面で対向する磁極410a、410b、回転角度位置保持部(磁気ばね)48への影響は小さく、トルクへの影響が少なく、また、回転角度位置保持部48の磁気吸引力の特性がばらつくことがない。
【0188】
例えば、
図25に示すマグネット320Bは、外周面326の一部を切り欠いた形状のフラット面328を有する。フラット面328は、マグネット320Bにおいて異なる磁極の一方の外周面の一部として設けられる。
【0189】
マグネット320Bを有するコア組立体40Bが、回転往復駆動アクチュエーター1に設けられた場合、
図26に示す回転角度位置保持部48に対向する磁極32aと反対側の磁極32bにフラット面328を有するように配置される。このフラット面328は、補極部414の湾曲面と対向する。具体的には、マグネット320Bが基準位置にある場合、フラット面328は、その周方向(水平方向)の長さの中心と、補極部414の周方向(水平方向)の中心とが、開口部321(或いは回転軸13)の中心を通り、フラット面328と直交する線上に位置するように配置される。
【0190】
マグネット320Bにおいて、例えばフラット面328を回転角度位置保持部48やコア(磁極410a、410b)側に対向配置すると、マグネット320Bにおいて一部分しかないフラット部分であるので、発生する磁束の流れはアンバランスであり、磁気回路特性への影響や、性能が劣化することが考えられる。
【0191】
これに対して本実施の形態では、マグネット320Bのフラット面328は、非通電状態時、例えば、基準位置にあるとき、回転角度位置保持部48と回転軸13を挟み反対側に配置されるように構成されている。これによりフラット面328は、回転角度位置保持部48に影響を避けて、つまり、トルク発生のアンバランスを避けて補極部414との間で磁気吸引力を発生させることができる。なお、フラット面328を用いてマグネット320Bを基準として他部品等を組み付けたり回転往復駆動アクチュエーターを組み立てたりすることもできる。
【0192】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0193】
例えば、実施の形態では、可動対象物がミラー部12である場合について述べたが、可動対象物はこれに限らない。可動対象物は、例えば、カメラなどの撮像装置であってもよい。
【0194】
また例えば、実施の形態では、回転往復駆動アクチュエーター1を共振駆動する場合について説明したが、本発明は、非共振駆動する場合にも適用できる。
【0195】
また、駆動ユニット4の構成は、実施の形態で説明したものに限定されない。例えば、コアは、コイルへの通電により励磁され極性を生じる磁極部を有し、回転軸を固定体に取り付けたときに、磁極部とマグネットの外周面とがエアギャップを介して対向するようになっていればよい。また、コイルは、通電したときに、コアの磁極部の一方から他方に向かって好適に磁束を生じさせる構成を有していればよい。
【0196】
さらに、固定体20に設けられる回転角度位置保持部48を、第2コア42に取り付けた構成としたが、これに限らず、固定体20の他の構成要素に設ける構成としてもよい。また、例えば、回転角度位置保持部48は、第2コア42に取り付けた位置と同じ位置に配置されるように、カバー本体52の表面或いはトップカバー本体62の裏面から突出するように設けてもよい。また、これらの場合、回転角度位置保持部48は、駆動ユニット4内に収容されるようにしてもよい。
【0197】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明は、例えばLiDAR装置やスキャナーシステム等に用いられるものとして好適である。
【符号の説明】
【0199】
1、1A 回転往復駆動アクチュエーター
2 本体ユニット
4 駆動ユニット
10、10A 可動体
12 ミラー部
13 回転軸
14 止め部
15、15A ストッパ部
20 固定体
21、21A ベース部
21a 外面
22、23 軸受
30 駆動部
32、320、320A、320B マグネット
32a、32b、410a、410b 磁極
32c、32d、32e、32f、32g、32h 磁極切替部
35 予圧用ばね
37 環状受け部
39 ブッシュ
40 コア組立体
41 第1コア
42 第2コア(架橋部)
43 第3コア
44、45 コイル
46、47 ボビン
48 回転角度位置保持部
49 コイル体
50 ボトムカバー
52 カバー本体
53、321、732 開口部
54、55、66 貫通孔
56、205、705、725 位置決め孔
57、207、707、727 位置調整孔
58 位置決め突起
60 トップカバー
62 トップカバー本体
64 周壁部
67 ボビン係合孔
70、70A 角度センサー部
72 センサー基板
73 基板保持部
74 エンコーダーディスク(被検出部)
76 光センサー(センサー)
81、84、85、86 止着部材
100 レーザーシステム
101 レーザー発光部
102 レーザー制御部
103 駆動信号供給部
104 位置制御信号計算部
121 ミラー
122 ミラーホルダー
122a、211a、212a 挿通孔
131 一端部
132 他端部
133 嵌合溝
203、215、402、702、703、723 止着孔
211、211A、212、212A 壁部
211a、211Aa、212a 挿通孔
213、213A 底部
218 凹部
222、232 軸受本体
224、234 フランジ
230、701 センサー配置部
322 端面
326 外周面
328 フラット面
400 コア体
411、411a、411b 棒状部
412 接続辺部
413、413a、413b 側辺部
414 補極部
492 ボビン部
494 端子支持部
496 端子
522 取り付け部
541 ざぐり部
621 凹状部
742 取付軸部
4964 他辺部
4962 一辺部