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特開2024-31440水切りネット、および、水切りネットの製造方法
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  • 特開-水切りネット、および、水切りネットの製造方法 図1
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  • 特開-水切りネット、および、水切りネットの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031440
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】水切りネット、および、水切りネットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65F 1/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B65F1/00 102F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134989
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】397021039
【氏名又は名称】三山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】米富 英幸
【テーマコード(参考)】
3E023
【Fターム(参考)】
3E023FA03
3E023FA05
(57)【要約】
【課題】水切りをスムーズに行うことができる水切りネットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部2と、ネット本体部2の表面に形成された撥水性を有する表面処理部3と、を有する水切りネット1、または、水と撥水性を付与する加工剤とを混合した処理液の中に、生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部2を浸漬する浸漬工程と、前記処理液から取り出したネット本体部2を脱水した上で、90度以上190度以下の温度範囲で、30分以上60分以下の時間キュアリングする処理工程と、を有し、ネット本体部2の表面に撥水性を有する表面処理部3が形成された水切りネットの製造方法を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部(2)と、
前記ネット本体部(2)の表面に形成された撥水性を有する表面処理部(3)と、
を有する水切りネット。
【請求項2】
前記表面処理部(3)がさらに撥油性を有する請求項1に記載の水切りネット。
【請求項3】
水と撥水性を付与する加工剤とを混合した処理液の中に、生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部(2)を浸漬する浸漬工程と、
前記処理液から取り出した前記ネット本体部(2)を脱水した上で、90度以上190度以下の温度範囲で、30分以上60分以下の時間キュアリングする処理工程と、
を有し、前記ネット本体部(2)の表面に撥水性を有する表面処理部(3)が形成された水切りネットの製造方法。
【請求項4】
前記処理工程において、前記ネット本体部(2)を脱水した後、かつ、キュアリングの前に、天日干し乾燥を行う請求項3に記載の水切りネットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家庭などの厨房で用いられる水切りネット、および、水切りネットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭などの厨房においては、調理の際に生じた野菜の切れ端などの生ゴミをシンク内に一時的に貯めておくための水切りネット(例えば、下記特許文献1~3を参照)が設けられることがある。この水切りネットは、ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなる、比較的目が細かい袋状の部材であって、シンクの隅に設けられた三角コーナやシンクの排水溝に取り付けられる。そして、水切りネット内のゴミが満杯になったときなどのタイミングで三角コーナなどから取り外されてゴミ箱に捨てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3234000号公報
【特許文献2】実用新案登録第3209288号公報
【特許文献3】実用新案登録第3198040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に示す水切りネットは比較的目が細かい部材であるため、この水切りネットの表面で生ゴミ中の水がその表面張力によって膜状となり、流れることなく長時間残留しやすい。このため、水切りネットを三角コーナなどから取り外してゴミ箱に移す際に、水切りネットに残留した水がしばらくの間滴り落ちて周囲を濡らし、不衛生になるおそれがある。そこで、水が滴り落ちないように、新聞紙などで水切りネットを受けながらシンクからゴミ箱に移動したり、一旦シンク内で水切りネットを絞って水分を除去してからゴミ箱に移動したりする必要があるが、その作業は煩雑である。
【0005】
そこで、この発明は、水切りネットの水切りをスムーズに行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、この発明では、
生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部と、
前記ネット本体部の表面に形成された撥水性を有する表面処理部と、
を有する水切りネットを構成した。
【0007】
このように表面処理部を有すると、生ゴミ中の水分が水切りネットの表面で膜状となりにくく、三角コーナなどに取り付けられた状態で、水切りネット内の水分が速やかに水切りされる。このため、水切りネットをシンクからゴミ箱に移す際に、生ゴミ中の水分が水切りネットから滴り落ちにくく、周囲を濡らすおそれが低い。
【0008】
上記の水切りネットにおいては、前記表面処理部がさらに撥油性を有する構成とすることもできる。このようにすると、生ゴミ中の油分も水切りネットから速やかに排出されるため、この油分によって周囲が汚れるのを防止することができる。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、この発明では、
水と撥水性を付与する加工剤とを混合した処理液の中に、生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部を浸漬する浸漬工程と、
前記処理液から取り出した前記ネット本体部を脱水した上で、90度以上190度以下の温度範囲で、30分以上60分以下の時間だけキュアリングする処理工程と、
を有し、前記ネット本体部の表面に撥水性を有する表面処理部が形成された水切りネットの製造方法を構成した。
【0010】
このようにすると、浸漬工程でネット本体部に付着した加工剤が、処理工程でこのネット本体部の表面に安定的に定着するため、水切りネットの撥水性を確実に発揮させることができる。
【0011】
上記の水切りネットの製造方法においては、前記処理工程において、前記ネット本体部を脱水した後、かつ、キュアリングの前に、天日干し乾燥を行う構成とすることもできる。このようにすると、キュアリングの前にネット本体部の表面に加工剤をさらに安定的に付着させることができ、キュアリングによる定着作用を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、水切りネットの撥水性が高まるため、水切りネットの水切りをスムーズに行うことができる。このため、例えばシンクからゴミ箱に水切りネットを移すときに、水が滴り落ちるのを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に係る水切りネットの一実施形態を示す斜視図
図2図1に示す水切りネットの要部の正面図
図3】この発明に係る水切りネットの製造方法のフローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る水切りネット1の一実施形態を図面に基づいて説明する。この水切りネット1は、一般家庭などの厨房において、調理の際に生じた野菜の切れ端などの生ゴミをシンク内に一時的に貯めておく際に用いられるものであって、一般的には、シンクの隅に設けられた三角コーナやシンクの排水溝に取り付けて使用される。
【0015】
この水切りネット1は、図1および図2に示すように、生ごみを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部2と、ネット本体部2の表面に形成された撥水性を有する表面処理部3と、を有している。
【0016】
ネット本体部2は、この実施形態においては、ポリエステル糸を緯編み(丸編みを含む)することで編成された、高い伸縮性を有するストッキング生地(約5~50デニール、約3~200メッシュ)で構成されている。このストッキング生地の底部は縫製され、上端部が開口した袋状となっている。その開口部には、ストッキング生地自体の弾性よりも高弾性の環状の弾性部材4が編み込まれており、この弾性部材4の弾性によって水切りネット1の使用時に開口部が三角コーナなどに係止されるよう構成されている。
【0017】
ストッキング生地のデニール値が5を下回るとネット本体部2の十分な強度が得られないため、50を上回るとネット本体部2の透水性が低下するおそれがあるため、約5~50デニールの範囲とするのが好ましい。また、メッシュ値が3を下回るとネット本体部2の目の間の隙間から細かい生ゴミが脱落するおそれがあるため、200を上回るとネット本体部2の透水性が低下するおそれがあるため、約3~200メッシュの範囲とするのが好ましい。
【0018】
表面処理部3は、ネット本体部2の生地(ポリエステル糸)の表面を覆う薄い皮膜層である。この表面処理部3は、後述するように、ネット本体部2を水と撥水性を有する加工剤を混合した処理液に浸漬した後にキュアリングを行うことによって形成される。この実施形態においては、加工剤として非フッ素系撥水加工剤を用いている。
【0019】
この発明に係る水切りネット1の製造方法について説明する。この製造方法は、図3に示すように、浸漬工程(ステップS1)と処理工程(ステップS2)とを有している。
【0020】
浸漬工程は、水と撥水性を付与する加工剤とを混合した処理液の中に、生ゴミを保持しつつ水分を通過させる素材からなるネット本体部2を浸漬する工程である。この加工剤として、この実施形態においては、非フッ素系撥水加工剤(商品名「ユニダインXF-5005」(ダイキン工業株式会社製))を採用した。浸漬時間は適宜決定することができ、例えば3分以上20分以下の範囲内とすることができる。浸漬時間が3分を下回るとネット本体部2に十分な撥水性を付与できないため、20分を超えると生産性が低下するため、上記の時間範囲内とするのが好ましい。
【0021】
ここで採用した非フッ素系撥水加工剤は、アクリルポリマーを主成分としている。常温の水に対しこの非フッ素系撥水加工剤を1~20体積%の割合で混合することにより処理剤を作成した。この混合割合は例示に過ぎず、ネット本体部2の素材や加工剤の種類、撥水性の強さなどに対応して適宜変更することができる。さらに、この処理剤の浴中pHを4.0以上7.0未満、好ましくは5.0以上5.5以下の酸性に調整することでpHの最適化を行った。なお、加工剤の種類によっては、pHの調整が不要の場合もある。
【0022】
また、非フッ素系撥水加工剤の代わりに、例えばフッ素系樹脂エマルションを主成分とするフッ素系撥水加工剤(例えば、商品名「クインガードF-90K」(コタニ化学工業株式会社製))を採用しても同様の効果を期待できる。
【0023】
処理工程は、処理液から取り出したネット本体部2を脱水した上で、90度以上190度以下の温度範囲で、30分以上60分以下の時間キュアリングする工程である。この温度範囲およびキュアリングの時間はネット本体部2に用いられる素材の特性(耐熱性など)や、浸漬工程で用いられる加工剤の種類によって適宜変更される。この処理工程を行うことにより、ネット本体部2の表面に撥水性を有する表面処理部3が形成される。なお、キュアリングの温度範囲は、95度以上160度以下の範囲内とするのが好ましく、95度以上135度以下の範囲内とするのがさらに好ましい。
【0024】
この処理工程においては、必要に応じて、ネット本体部2を脱水した後、かつ、キュアリングの前に、天日干し乾燥を行う工程が追加される。天日干し乾燥を行うことで、キュアリングの前にネット本体部2の表面に加工剤をさらに安定的に付着させることができ、キュアリングによる定着作用を高めることができる。
【0025】
上記の水切りネット1の製造方法で製造した水切りネット1の水切り試験(室温20℃、湿度65%)を実施した。この水切り試験においては、三角コーナに水切りネット1を取り付けた上で、野菜の切れ端などの生ゴミの代用としての100gのイオン交換水を含ませた球形のスポンジを水切りネット1内に設け、このスポンジおよび水切りネットからの水切れの程度によって評価を行った。三角コーナから滴下する水は、ビーカで受け止めた。
【0026】
評価項目は表1に示す通りである。なお、表1に記載の値は同じ試験を3回繰り返したときの平均値である。この水切り試験においては、同じ水切りネット1を繰り返し使用(例えば、1回目(昼食)の際に用いた水切りネット1を静置して自然乾燥させた上で、4時間後の2回目(夕食)の際にそのまま使用)したときの撥水性の耐久性の評価も併せて行った。
【0027】
【表1】
【0028】
1回目(昼食後想定)および2回目(夕食後想定)の評価結果から、比較例(撥水加工なし)に対して、実施例(撥水加工あり)の水切りネット1に付着したまま残留する水分量が、1/4から1/5程度に減少することが確認できた(評価項目「水切り後の水切りネットの残留水分率(ネットの重量比)」を参照)。また、比較例に対して実施例の水切れのスピードは、約1.35倍速いことが確認できた(評価項目「1分当たりの水切れ水分量」を参照)。さらに、比較例に対して実施例の水切れ水分量は、約1.3倍から1.4倍多いことが確認できた(評価項目「水切りされた水分量(三角コーナへの付着分含む)」を参照)。
【0029】
また、1回目(昼食後想定)および2回目(夕食後想定)の評価結果から、実施例に係る水切りネット1の撥水性は、繰り返し使用してもそれほど低下しないことが確認できた(評価項目「水切りされた水分量(三角コーナへの付着分含む)」、「1分当たりの水切れ水分量」などを参照)。
【0030】
この発明に係る水切りネット1によると、生ゴミ中の水分が水切りネット1の表面で膜状となりにくく、三角コーナに取り付けられた状態で水切りネット1内の水分が、速やかに水切りされる。このため、水切りネット1をシンクからゴミ箱に移す際に、生ゴミ中の水分や水切りネット1に残留、付着した水分が水切りネット1から滴り落ちて周囲を濡らすのを減らすことができる。
【0031】
また、少なくとも2回程度繰り返し使用しても撥水性がほとんど低下しないため、水切りネット1の交換頻度を下げることができ経済的である。この水切りネット1は、三角コーナのみならず種々の形状の排水口に適用可能(排水口用、浅型用、深型用、あるいは兼用型)なように加工することができる。
【0032】
また、この発明に係る水切りネット1の製造方法によると、浸漬工程でネット本体部2に付着した加工剤を、処理工程でこのネット本体部2の表面に安定的に定着させることができるため、その撥水性を確実に発揮させることができる。
【0033】
上記の水切りネット1は、ネット本体部2の表面に形成された撥水性を有する表面処理部3を形成したが、この表面処理部3にさらに撥油性を付与することもできる。また、水切りネット1の用途によっては、撥水性の代わりに撥油性のみを付与することもできる。
【0034】
また、上記の水切りネット1は、ネット本体部2の素材としてストッキング生地を採用したが、さらに網目の大きなネットタイプ(例えば網目の大きさが数ミリメートル程度)を採用することもできる。
【0035】
また、上記の水切りネット1の製造方法においては、加工剤として非フッ素系またはフッ素系の撥水加工剤を採用した場合について説明したが、その種類は限定されず、シリコン系、ワックスなどのいずれの加工剤も適用できる可能性がある。
【0036】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
1 水切りネット
2 ネット本体部
3 表面処理部
4 弾性部材
図1
図2
図3