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特開2024-31449電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031449
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20240229BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20240229BHJP
   H03K 17/689 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02M1/00 J
H02M1/00 H
H03K17/00 B
H03K17/689
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135001
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 恒毅
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740KK04
5H740MM11
5J055AX36
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX59
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY17
5J055EZ09
5J055EZ25
5J055GX01
5J055GX02
(57)【要約】
【課題】短絡電流保護する際に拡大故障を防止する。
【解決手段】実施形態の半導体電力変換装置は、第1半導体スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、第1半導体スイッチング素子に直列接続された第2半導体スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、第1駆動回路と第2駆動回路との間で絶縁双方向通信可能であり、第1半導体スイッチング素子が故障した旨の第1故障検出信号又は第2半導体スイッチング素子が故障した旨の第2故障検出信号が伝送された場合に他方の駆動回路に伝送する通信回路と、を備え、第1駆動回路は、第2駆動回路から第2故障検出信号が伝送された場合に第1半導体スイッチング素子をオフ状態とし、第2駆動回路は、第1駆動回路から第1故障検出信号が入力された場合に第2半導体スイッチング素子をオフ状態とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、
前記第1半導体スイッチング素子に直列接続された第2半導体スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との間で絶縁双方向通信可能であり、前記第1半導体スイッチング素子が故障した旨の第1故障検出信号又は前記第2半導体スイッチング素子が故障した旨の第2故障検出信号が入力された場合に他方の駆動回路に伝送する通信回路と、を備え、
前記第1駆動回路は、前記第2駆動回路から前記第2故障検出信号が伝送された場合に前記第1半導体スイッチング素子をオフ状態とし、
前記第2駆動回路は、前記第1駆動回路から前記第1故障検出信号が伝送された場合に前記第2半導体スイッチング素子をオフ状態とする、
半導体電力変換装置。
【請求項2】
前記第1半導体スイッチング素子の電圧が第1閾値を超えた場合に前記第1故障検出信号を出力する第1故障検出回路と、
前記第2半導体スイッチング素子の電圧が第2閾値を超えた場合に前記第2故障検出信号を出力する第2故障検出回路と、
を備えた請求項1に記載の半導体電力変換装置。
【請求項3】
前記第1故障検出回路は、前記第1半導体スイッチング素子を駆動する電源の電圧が所定の閾値電圧を下回った場合にも前記第1故障検出信号を出力し、
前記第2故障検出回路は、前記第2半導体スイッチング素子を駆動する電源の電圧が所定の閾値電圧を下回った場合にも前記第2故障検出信号を出力する、
請求項2に記載の半導体電力変換装置。
【請求項4】
前記第1故障検出信号及び前記第2故障検出信号は、負論理の信号として生成される、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体電力変換装置。
【請求項5】
第1半導体スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、前記第1半導体スイッチング素子に直列接続された第2半導体スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、を備えた電力変換装置の制御方法であって、
前記第1半導体スイッチング素子が故障した旨又は前記第2半導体スイッチング素子が故障した旨を他方の駆動回路に伝送するステップと、
前記第1半導体スイッチング素子が故障した旨が伝送された場合に前記第1半導体スイッチング素子をオフ状態とするステップと、
前記第2半導体スイッチング素子が故障した旨が伝送された場合に前記第2半導体スイッチング素子をオフ状態とするステップと、
を備えた電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置及び電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイドギャップ半導体を用いたパワー半導体素子が実用化され、素子の高耐圧化が進んでいる。高耐圧化により、従来IGBTなどのバイポーラ素子が適用されていた分野にも、MOSFETのようなユニポーラ素子を適用できるようになったため、高速動作が可能になり、さらなる損失低減や高周波スイッチングに貢献している。
このようなパワー半導体素子をスイッチング素子として用いる場合には、スイッチング素子のオン電圧降下を観測し、オン電圧が閾値を超過したら、過電流と判断して保護動作に移行させる短絡保護動作がなされていた。
この短絡保護動作においては、スイッチング素子に対して、オン/オフ制御信号を出力する制御装置に対し、故障信号を出力する。
これにより、制御装置はそれを受けて、他の健全素子の動作を停止させるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-065039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、SiC等のワイドギャップ半導体を用いたMOSFETのような、1μs以下で高速オンオフできるスイッチング素子に適用した場合、制御装置を経由して他の健全素子の動作を停止させても、信号の伝達が遅く、間に合わない可能性がある。
上記課題を解決する技術として、一方のアームで短絡故障を検出したら他方のアームをオフさせるが提案されているが、一般に、半導体電力変換装置上下アームのスイッチをオンオフするゲートドライブ回路のグランド電位は異なるため、単純に上下各アームのゲートドライブ回路を接続することはできず、構成が複雑になる虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、短絡電流保護する際に拡大故障を防止することが可能な電力変換装置及び制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体電力変換装置は、第1半導体スイッチング素子を駆動する第1駆動回路と、第1半導体スイッチング素子に直列接続された第2半導体スイッチング素子を駆動する第2駆動回路と、第1駆動回路と第2駆動回路との間で絶縁双方向通信可能であり、第1半導体スイッチング素子が故障した旨の第1故障検出信号又は第2半導体スイッチング素子が故障した旨の第2故障検出信号が入力された場合に他方の駆動回路に伝送する通信回路と、を備え、第1駆動回路は、第2駆動回路から第2故障検出信号が伝送された場合に第1半導体スイッチング素子をオフ状態とし、第2駆動回路は、第1駆動回路から第1故障検出信号が入力された場合に第2半導体スイッチング素子をオフ状態とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の半導体電力変換装置の概要構成図である。
図2図2は、ゲートドライブ回路の構成例の説明図である。
図3図3は、第1ゲートドライブ回路における送信データの出力回路の構成例の説明図である。
図4図4は、アーム間絶縁通信回路の構成例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して好適な実施形態について説明する。
図1は、実施形態の半導体電力変換装置の概要構成図である。
図1は、理解の容易のため、単相ハーフブリッジ型インバータを備えた半導体電力変換装置を例として説明するが、これに限られず、例えば、三相ハーフブリッジ型インバータを備えた半導体電力変換装置であっても同様に適用が可能である。
【0009】
実施形態の半導体電力変換装置10は、大別すると、ゲート制御回路11、第1ゲートドライブ回路12、第2ゲートドライブ回路13、第1NチャネルMOSトランジスタ14、第2NチャネルMOSトランジスタ15、第1故障検出回路16、第2故障検出回路17、アーム間絶縁通信回路18及びコントローラ19を備えている。
【0010】
上記構成において、ゲート制御回路11は、コントローラ19の制御下で第1ゲートドライブ回路12及び第2ゲートドライブ回路13を制御している。
【0011】
そしてゲート制御回路11は、第1ゲートドライブ回路12に対して、第1ゲート駆動制御信号DS1を出力し、第1ゲートドライブ回路12から第1故障検出信号E1Xが入力される。
【0012】
また、ゲート制御回路11は、第2ゲートドライブ回路13に対して、第2ゲート駆動制御信号DS2を出力し、第2ゲートドライブ回路13から第2故障検出信号E2Xが入力される。
【0013】
第1ゲートドライブ回路12は、ゲート制御回路11から入力された第1ゲート駆動制御信号DS1に基づいて、第1NチャネルMOSトランジスタ14を駆動する。
【0014】
第2ゲートドライブ回路13は、ゲート制御回路11から入力された第2ゲート駆動制御信号DS2に基づいて、第2NチャネルMOSトランジスタ15を駆動する。
【0015】
ここで、第1ゲートドライブ回路12及び第2ゲートドライブ回路13の具体例について説明する。
第1ゲートドライブ回路12及び第2ゲートドライブ回路13は、同様の構成である野で、第1ゲートドライブ回路12を例として説明する。
【0016】
図2は、ゲートドライブ回路の構成例の説明図である。
第1ゲートドライブ回路12は、フォトカプラ51、AND回路52、コンプリメンタリ出力回路53、NOT回路54、ゲート抵抗55及びプルダウンスイッチ(プルダウントランジスタ)56を備えている。
【0017】
フォトカプラ51は、第1ゲート駆動制御信号DS1が入力されるLED51Aと、光電変換を行ってゲート駆動信号として出力する受光素子であるフォトトランジスタ51Bと、を備えている。
【0018】
AND回路52の第1の入力端子には、フォトカプラ51の出力端子が接続され、第2の入力端子には、第1故障検出信号E1Xが入力され、第3の入力端子には、伝送された第2故障検出信号E2Xが入力されている。
【0019】
コンプリメンタリ出力回路53は、コレクタ端子が高電位側電源に接続され、ベース端子がAND回路52の出力端子に接続されたNPNトランジスタ53Aと、エミッタ端子がNPNトランジスタ53Aのエミッタ端子に接続され、コレクタ端子が低電位側電源に接続され、ベース端子がAND回路52の出力端子に接続されたPNPトランジスタ53BAと、を備えている。
【0020】
NOT回路54は、AND回路52の出力の否定をとって出力する。
ゲート抵抗55は、第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子の電圧の急激な変動を抑制して、第1NチャネルMOSトランジスタ14の動作の安定化を図る。
【0021】
プルダウンスイッチ56は、NOT回路54の出力が“H”レベルとなった場合にオン状態となって、第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子を低電位側電源に接続することにより、第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子を確実に“L”レベルとして、第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート電位を固定して、第1NチャネルMOSトランジスタ14をオフ状態として、第1NチャネルMOSトランジスタ14の保護を図る。
以上の説明では、プルダウンスイッチ56は低電位側電源に接続する(短絡する)構成としていたが、第1NチャネルMOSトランジスタ14の低電位側の端子に接続(短絡)する構成とすることも可能である。
【0022】
図3は、第1ゲートドライブ回路における送信データの出力回路の構成例の説明図である。
図3(A)は、正論理で送信データを出力する送信データ出力回路の構成例である。
【0023】
より具体的には、送信データ出力回路12Aは、一方の入力端子に第1故障検出信号E1が入力され、他方の入力端子に当該第1ゲートドライブ回路12の電源電圧低下検知信号LPが入力され、第1故障検出信号E1と電源電圧低下検知信号LPの論理和をとって第1故障検出信号E1Xとして出力するOR回路12A1を備えている。
【0024】
一般に、半導体スイッチング素子である、第1NチャネルMOSトランジスタ14及び、第2NチャネルMOSトランジスタ15に異常が生じる場合は、第1ゲートドライブ回路12及び第2ゲートドライブ回路13において、電源回路電圧がなくなることが多い。すなわち、電源電圧低下検知信号LPが“H”レベルとなる。
【0025】
このような構成を採ることにより、第1ゲートドライブ回路12においては、第1故障検出信号E1と、電源電圧低下検知信号LPと、の論理和をとって正論理(“H”の場合に故障検出)の第1故障検出信号E1Xとして出力することにより、正論理の回路構成において、より実態に即した第1故障検出信号E1Xを出力することができる。
【0026】
図3(B)は、負論理で送信データを出力する送信データ出力回路の構成例である。
より具体的には、送信データ出力回路12Aは、一方の入力端子に第1故障検出信号E1が入力され、他方の入力端子に当該第1ゲートドライブ回路12の電源電圧低下検知信号LPが入力され、第1故障検出信号E1と電源電圧低下検知信号LPの論理和の否定をとって第1故障検出信号E1Xとして出力するNOR回路12A2を備えている。
【0027】
一般に、半導体スイッチング素子である、第1NチャネルMOSトランジスタ14及び、第2NチャネルMOSトランジスタ15に異常が生じる場合は、第1ゲートドライブ回路12及び第2ゲートドライブ回路13において、電源回路電圧がなくなることが多い。すなわち、電源電圧低下検知信号LPが“H”レベルとなる。
【0028】
このような構成を採ることにより、第1ゲートドライブ回路12においては、第1故障検出信号E1と、電源電圧低下検知信号LPと、の論理和の否定をとって負論理(“L”の場合に故障検出)の第1故障検出信号E1Xとして出力することにより、電源電圧が低下して、“H”レベルの信号の送出が困難となる場合であっても、確実に故障状態を出力することができ、より実態に即した第1故障検出信号E1Xを出力することができる。
【0029】
第1NチャネルMOSトランジスタ14は、ソース端子が高電位側電源PHに接続され、ドレイン端子が出力端子OUTに接続され、ゲート端子が第1ゲートドライブ回路12に接続されて第1ゲート駆動制御信号DS1が入力されて、オン/オフ制御がなされている。
【0030】
第2NチャネルMOSトランジスタ15は、ソース端子が低電位側電源PLに接続され、ドレイン端子が出力端子OUTに接続され、ゲート端子が第2ゲートドライブ回路13に接続されて第2ゲート駆動制御信号DS2が入力されて、オン/オフ制御がなされている。
【0031】
第1故障検出回路16は、第1逆流防止ダイオード21、第1分圧回路22、第1バッファ回路23、第1コンパレータ24及び第1ラッチ回路25を備えている。
第1逆流防止ダイオード21は、第1NチャネルMOSトランジスタ14のソース端子にアノード端子が接続されている。
【0032】
第1分圧回路22は、一端が第1逆流防止ダイオード21のカソードに接続された第1抵抗素子22Aと、一端が第1抵抗素子22Aの他端が接続され、他端が低電位側電源PLに接続された第2抵抗素子22Bと、を備えている。
【0033】
第1バッファ回路23は、第1分圧回路22の出力電圧をそのまま第1コンパレータ24に出力する。
第1コンパレータ24は、第1バッファ回路23の出力電圧を第1基準電圧Vref1と比較して、第1故障検出信号E1を第1ラッチ回路25に出力する。
【0034】
第1ラッチ回路25は、コントローラの制御下で、所定のタイミングで第1コンパレータ24の出力である第1故障検出信号E1を取り込んで、保持し、第1ゲートドライブ回路12に出力する。
【0035】
第2故障検出回路17は、第2逆流防止ダイオード31、第2分圧回路32、第2バッファ回路33、第2コンパレータ34及び第2ラッチ回路35を備えている。
第2逆流防止ダイオード31は、第2NチャネルMOSトランジスタ15のドレイン端子にアノード端子が接続されている。
【0036】
第2分圧回路32は、一端が第2逆流防止ダイオード31のカソードに接続された第1抵抗素子32Aと、一端が第1抵抗素子32Aの他端が接続され、他端が低電位側電源PLに接続された第2抵抗素子32Bと、を備えている。
第2バッファ回路33は、第2分圧回路32の出力電圧をそのまま第2コンパレータ34に出力する。
【0037】
第2コンパレータ34は、第2バッファ回路33の出力電圧を第2基準電圧Vref2と比較して、第2故障検出信号E2を第2ラッチ回路35に出力する。
【0038】
第2ラッチ回路35は、コントローラの制御下で、所定のタイミングで第2コンパレータ34の出力である第2故障検出信号E2を取り込んで、保持し、第2ゲートドライブ回路13に出力する。
【0039】
次にアーム間絶縁通信回路18について説明する。
図4は、アーム間絶縁通信回路の構成例の説明図である。
アーム間絶縁通信回路18は、第1ゲートドライブ回路12からの第2ゲートドライブ回路への第1故障検出信号E1Xを伝送する第1光カプラ18Aと、第2ゲートドライブ回路13からの第1ゲートドライブ回路12への第2故障検出信号E2Xを伝送する第2光カプラ18Bと、を備えている。
【0040】
上記構成によれば、第1故障検出信号E1及び第2故障検出信号E2の伝送は、アーム間絶縁通信回路18を介して絶縁状態で行われるため、第1ゲートドライブ回路12と第2ゲートドライブ回路13とが動作している電位レベルの差の影響を受けることなく確実に通信を行うことができる。
【0041】
この場合において、第1NチャネルMOSトランジスタ14及び第2NチャネルMOSトランジスタ15を含む半導体電力変換装置の主回路には高電圧が印加されるため、JIS等の規格に従い高い絶縁耐圧(例えば直流1500Vの装置であれば、絶縁耐圧として交流5400V/1分間)が要求される。
【0042】
一方、ゲート制御回路11は、低耐圧の集積回路などで構成される低圧回路であるためである。従って、両者を絶縁するフォトカプラ51には、主回路と同等の絶縁耐圧性能が必要とされる。
【0043】
これに対し、図4に示したアーム間絶縁通信回路18には、主回路と同等の絶縁耐圧性能が必要とされない。
【0044】
何故なら、送信側、受信側ともに高電圧回路であり、最大でも第1NチャネルMOSトランジスタ14及び第2NチャネルMOSトランジスタ15の定格電圧(例えば直流1500Vの装置であれば3300V)が印加されるだけであるからである。一般に、第1NチャネルMOSトランジスタ14及び第2NチャネルMOSトランジスタ15の定格電圧は、第1NチャネルMOSトランジスタ14及び第2NチャネルMOSトランジスタ15の絶縁耐圧より低い。
したがって、アーム間絶縁通信回路18の絶縁耐圧性能は、第1ゲートドライブ回路12及び第2ゲートドライブ回路13の絶縁耐圧より低くても問題がない。
これらの結果、アーム間絶縁通信回路18を簡素、且つ、コンパクトに構成することができる。
【0045】
次に実施形態の動作を説明する。
ゲート制御回路11は、コントローラ19の制御下で第1ゲートドライブ回路12に対して、第1ゲート駆動制御信号DS1を出力する。
【0046】
これにより、第1ゲートドライブ回路12のフォトカプラ51のLED51Aは、入力された第1ゲート駆動制御信号DS1に基づいて、電光変換を行って、第1ゲート駆動制御信号DS1をフォトトランジスタ51Bに光として伝送する。
これによりフォトトランジスタ51Bは、光電変換を行って第1ゲート駆動制御信号DS1をAND回路52の第1の入力端子に出力する。
【0047】
このとき、AND回路52の第2の入力端子には、第1ラッチ回路25から第1故障検出信号E1Xが入力されており、第3の入力端子には、アーム間絶縁通信回路18を介して第2ゲートドライブ回路13から伝送された第2故障検出信号E2Xが入力されている。
【0048】
この場合において、第1故障検出信号E1X及び第2故障検出信号E2Xは、負論理の信号であるとすると、故障が検出されていない場合には、両者とも“H”レベルとなっている。
【0049】
したがって、故障が検出されていない場合には、AND回路52は、第1ゲート駆動制御信号DS1が“H”レベルになると“H”レベルの信号を出力し、第1ゲート駆動制御信号DS1が“L”レベルになると“L”レベルの信号を出力する。すなわち、第1ゲート駆動制御信号DS1がそのまま出力されることと等価となっている。
【0050】
そして、第1ゲート駆動制御信号DS1=“H”レベルである場合には、コンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオン状態となる。
このとき、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオフ状態となる。
【0051】
さらにNOT回路54の出力は“L”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、オフ状態となっている。
したがって、コンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子には、“H”レベルの信号が印加されて、第1NチャネルMOSトランジスタ14はオン状態となる。
【0052】
一方、第1ゲート駆動制御信号DS1=“L”レベルである場合には、コンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオフ状態となる。
このとき、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオン状態となる。
【0053】
さらにNOT回路54の出力は“H”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、オン状態となっている。
したがって、コンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子には、“L”レベルの信号が印加されて、第1NチャネルMOSトランジスタ14はオフ状態となる。
【0054】
また、第1故障検出信号E1Xは、第1故障検出回路16において故障が検出されている場合には、“L”レベルとなっている。
したがって、第1故障検出回路16において故障が検出されている場合には、AND回路52は、第1ゲート駆動制御信号DS1の信号レベル及び第2故障検出信号E2Xの信号レベルにかかわらず、常に “L”レベルの信号を出力する。
【0055】
これにより、第1ゲート駆動制御信号DS1のレベル及び第2故障検出信号E2Xの信号レベルにかかわらず、コンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオフ状態となり、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオン状態となる。
【0056】
さらにNOT回路54の出力は、第1ゲート駆動制御信号DS1のレベルにかかわらず、常に“H”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、常にオン状態となっている。
【0057】
したがって、コンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子には、“L”レベルの信号が印加されて、第1NチャネルMOSトランジスタ14は常にオフ状態となる。
すなわち、第1故障検出信号E1Xは、故障が検出されると、直ちに“L”レベルとなって、第1NチャネルMOSトランジスタ14をオフ状態とする。
【0058】
このとき、第1故障検出信号E1Xは、アーム間絶縁通信回路18にも出力されており、アーム間絶縁通信回路18は、第1ゲートドライブ回路12から第2ゲートドライブ回路へ第1光カプラ18Aを介して、第1故障検出信号E1Xを伝送する。
【0059】
この結果、第1故障検出回路16において故障が検出されている場合には、第2ゲートドライブ回路13のAND回路52においては、“L”レベルの第1故障検出信号E1Xが入力されることとなり、第2ゲート駆動制御信号DS2の信号レベル及び第2故障検出信号E2Xの信号レベルにかかわらず、第2ゲートドライブ回路13のAND回路52は“L”レベルの信号を出力する。
【0060】
これにより、第1ゲート駆動制御信号DS1のレベル及び第2故障検出信号E2Xの信号レベルにかかわらず、第2ゲートドライブ回路13のコンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオフ状態となり、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオン状態となる。
【0061】
さらに第2ゲートドライブ回路13のNOT回路54の出力は、第1ゲート駆動制御信号DS1のレベルにかかわらず、常に“H”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、オン状態となっている。
【0062】
したがって、第2ゲートドライブ回路13のコンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第2NチャネルMOSトランジスタ15のゲート端子には、“L”レベルの信号が印加されて、第2NチャネルMOSトランジスタ15はオフ状態となる。
【0063】
すなわち、第1故障検出信号E1Xが“L”レベルとなると、第1光カプラ18Aを介して、第1故障検出信号E1Xが伝送されて、第2NチャネルMOSトランジスタ15もオフ状態となり、第1NチャネルMOSトランジスタ14の故障の影響を避けることができる。
【0064】
上記動作と並行して、ゲート制御回路11は、コントローラ19の制御下で第2ゲートドライブ回路13に対して、第2ゲート駆動制御信号DS2を出力する。
【0065】
これにより、第2ゲートドライブ回路13のフォトカプラ51のLED51Aは、入力された第2ゲート駆動制御信号DS2に基づいて、電光変換を行って、第2ゲート駆動制御信号DS2をフォトトランジスタ51Bに光として伝送する。
これによりフォトトランジスタ51Bは、光電変換を行って第2ゲート駆動制御信号DS2をAND回路52の第1の入力端子に出力する。
【0066】
このとき、AND回路52の第3の入力端子には、第2ラッチ回路35から第2故障検出信号E2Xが入力されており、第2の入力端子には、アーム間絶縁通信回路18を介して第1ゲートドライブ回路12から伝送された第1故障検出信号E1Xが入力されている。
【0067】
そして、故障が検出されていない場合には、AND回路52は、第2ゲート駆動制御信号DS2が“H”レベルになると“H”レベルの信号を出力し、第2ゲート駆動制御信号DS2が“L”レベルになると“L”レベルの信号を出力する。すなわち、第2ゲート駆動制御信号DS2がそのまま出力されることと等価となっている。
【0068】
そして、第2ゲート駆動制御信号DS2=“H”レベルである場合には、コンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオン状態となる。
このとき、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオフ状態となる。
【0069】
さらにNOT回路54の出力は“L”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、オフ状態となっている。
したがって、コンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第2NチャネルMOSトランジスタ15のゲート端子には、“H”レベルの信号が印加されて、第2NチャネルMOSトランジスタ15はオン状態となる。
【0070】
一方、第2ゲート駆動制御信号DS2=“L”レベルである場合には、コンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオフ状態となる。
【0071】
このとき、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオン状態となり、NOT回路54の出力は“H”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、オン状態となっている。
【0072】
したがって、コンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第2NチャネルMOSトランジスタ15のゲート端子には、“L”レベルの信号が印加されて、第2NチャネルMOSトランジスタ15はオフ状態となる。
【0073】
また、第2故障検出信号E2Xは、第2故障検出回路17において故障が検出されている場合には、“L”レベルとなっている。
したがって、第2故障検出回路17において故障が検出されている場合には、AND回路52は、第2ゲート駆動制御信号DS2の信号レベル及び第1故障検出信号E1Xの信号レベルにかかわらず、常に“L”レベルの信号を出力する。
【0074】
これにより、第2ゲート駆動制御信号DS2のレベル及び第1故障検出信号E1Xの信号レベルにかかわらず、コンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオフ状態となり、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオン状態となる。
【0075】
さらにNOT回路54の出力は、第2ゲート駆動制御信号DS2のレベルにかかわらず、常に“H”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、常にオン状態となっている。
【0076】
したがって、コンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第2NチャネルMOSトランジスタ15のゲート端子には、“L”レベルの信号が印加されて、第2NチャネルMOSトランジスタ15は常にオフ状態となる。
【0077】
すなわち、第2故障検出信号E2Xは、故障が検出されると、直ちに“L”レベルとなって、第2NチャネルMOSトランジスタ15をオフ状態とする。
このとき、第2故障検出信号E2Xは、アーム間絶縁通信回路18にも出力されており、アーム間絶縁通信回路18は、第2ゲートドライブ回路13から第1ゲートドライブ回路12へ第2光カプラ18Bを介して、第2故障検出信号E2Xを伝送する。
【0078】
この結果、第2故障検出回路17において故障が検出されている場合には、第1ゲートドライブ回路12のAND回路52においては、“L”レベルの第2故障検出信号E2Xが入力されることとなり、第1ゲート駆動制御信号DS1の信号レベル及び第1故障検出信号E1Xの信号レベルにかかわらず、第1ゲートドライブ回路12のAND回路52は “L”レベルの信号を出力する。
【0079】
これにより、第1ゲート駆動制御信号DS1のレベル及び第1故障検出信号E1Xの信号レベルにかかわらず、第1ゲートドライブ回路12のコンプリメンタリ出力回路53のNPNトランジスタ53Aがオフ状態となり、コンプリメンタリ出力回路53のPNPトランジスタ53Bはオン状態となる。
【0080】
さらに第1ゲートドライブ回路12のNOT回路54の出力は、第1ゲート駆動制御信号DS1のレベルにかかわらず、常に“H”レベルとなっている。したがって、プルダウンスイッチ56は、オン状態となっている。
【0081】
したがって、第1ゲートドライブ回路12のコンプリメンタリ出力回路53からゲート抵抗55を介して第1NチャネルMOSトランジスタ14のゲート端子には、“L”レベルの信号が印加されて、第1NチャネルMOSトランジスタ14はオフ状態となる。
【0082】
すなわち、第2故障検出信号E2Xが“L”レベルとなると、第2光カプラ18Bを介して、第2故障検出信号E2Xが伝送されて、第1NチャネルMOSトランジスタ14もオフ状態となり、第2NチャネルMOSトランジスタ15の故障の影響を避けることができる。
【0083】
以上の説明のように、外部の制御装置(例えば、コントローラ19)に依存することなく、対向アームを構成している第1NチャネルMOSトランジスタ14及び第2NチャネルMOSトランジスタ15を高速に保護することでき、半導体電力変換装置10における故障の拡大防止を図ることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0084】
以上の説明においては、電気的絶縁を確保するためにフォトカプラを用いていたが、パルストランス、光ファイバ等により電気的絶縁を確保することが可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 半導体電力変換装置
11 ゲート制御回路
12 第1ゲートドライブ回路
12A 送信データ出力回路
13 第2ゲートドライブ回路
14 第1NチャネルMOSトランジスタ
15 第2NチャネルMOSトランジスタ
16 第1故障検出回路
17 第2故障検出回路
18 アーム間絶縁通信回路
18A 第1光カプラ
18B 第2光カプラ
19 コントローラ
21 第1逆流防止ダイオード
22 第1分圧回路
22A 第1抵抗素子
22B 第2抵抗素子
23 第1バッファ回路
24 第1コンパレータ
25 第1ラッチ回路
31 第2逆流防止ダイオード
32 第2分圧回路
32A 第1抵抗素子
32B 第2抵抗素子
33 第2バッファ回路
34 第2コンパレータ
35 第2ラッチ回路
51 フォトカプラ
51A LED
51B フォトトランジスタ
52 AND回路
53 コンプリメンタリ出力回路
53A NPNトランジスタ
53B PNPトランジスタ
53BA PNPトランジスタ
54 NOT回路
55 ゲート抵抗
56 プルダウンスイッチ
12A1 OR回路
12A2 NOR回路
LP 電源電圧低下検知信号
OUT 出力端子
PH 高電位側電源
PL 低電位側電源
DS1 第1ゲート駆動制御信号
DS2 第2ゲート駆動制御信号
E1 第1故障検出信号
E1X 第1故障検出信号
E2 第2故障検出信号
E2X 第2故障検出信号
Vref1 第1基準電圧
Vref2 第2基準電圧
図1
図2
図3
図4