(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031456
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】量子ドット集合体および光検出装置ならびに電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 31/08 20060101AFI20240229BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240229BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20240229BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L31/08 K
H01L27/146 E
B82Y20/00
H01L31/08 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135014
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水島 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】田邊 守
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 修一
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正弘
【テーマコード(参考)】
4M118
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AB01
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(57)【要約】
【課題】暗電流を低減させること可能な量子ドット集合体および光検出装置ならびに電子機器を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態の量子ドット集合体は、化合物半導体からなるコア部と、コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子およびコア部の、1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、隣り合う複数の量子ドットは、1または複数の有機配位子または酸化膜を介して隣接している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体からなるコア部と、
前記コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子および前記コア部の、前記1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、
隣り合う前記複数の量子ドットは、前記1または複数の有機配位子または前記酸化膜を介して隣接している
量子ドット集合体。
【請求項2】
前記コア部は、IV-VI族、III-V族、II-VI族、I-VI族もしくはI-III-VI族からなる化合物半導体、または、I族、III族、IV族、V族およびVI族元素のうちの3種以上の組み合わせからなる化合物半導体からなる、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項3】
前記1または複数の有機配位子は、塩基性基および弱酸性基の一方または両方を有している、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項4】
前記1または複数の有機配位子は、炭素数5以下のチオール基およびカルボキシル基のうちの一方または両方を有している、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項5】
前記1または複数の有機配位子の長さは0.6nm以下である、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項6】
前記コア部と前記シェル層とは同じ元素を含む、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項7】
前記酸化膜は前記コア部の表面酸化膜である、請求項6に記載の量子ドット集合体。
【請求項8】
X線光電子分光分析による、前記コア部を構成する元素の中で最も原子番号が小さい元素と酸素との結合に由来する第1のピークの面積強度は、前記コア部と前記1または複数の有機配位子との結合に由来する第2のピークの面積強度に対して0.1以上0.3以下である、請求項6に記載の量子ドット集合体。
【請求項9】
前記シェル層の膜厚は0.6nm以下である、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項10】
前記シェル層は非晶質構造を含む、請求項1に記載の量子ドット集合体。
【請求項11】
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、量子ドット集合体からなる光電変換層とを備え、
前記量子ドット集合体は、
化合物半導体からなるコア部と、
前記コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子および前記コア部の、前記1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、
隣り合う前記複数の量子ドットは、前記1または複数の有機配位子または前記酸化膜を介して隣接している
光検出装置。
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、量子ドット集合体からなる光電変換層とを有し、
前記量子ドット集合体は、
化合物半導体からなるコア部と、
前記コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子および前記コア部の、前記1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、
隣り合う前記複数の量子ドットは、前記1または複数の有機配位子または前記酸化膜を介して隣接している
光検出装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子ドット集合体および光検出装置ならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、半導体基板の主面に量子ドットおよび量子ドットを内包しているマトリックスにより構成されてなる量子ドット層を有する太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光検出装置では、暗電流の低減が求められている。
【0005】
暗電流を低減させること可能な量子ドット集合体および光検出装置ならびに電子機器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態の量子ドット集合体は、化合物半導体からなるコア部と、コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子およびコア部の、1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含むものであり、隣り合う複数の量子ドットは、1または複数の有機配位子または酸化膜を介して隣接している。
【0007】
本開示の一実施形態の光検出装置は、第1電極と対向配置された第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられると共に、量子ドット集合体からなる光電変換層とを備えたものであり、量子ドット集合体として、上記本開示の一実施形態の量子ドット集合体を有するものである。
【0008】
本開示の一実施形態の電子機器は、上記本開示の一実施形態の光検出装置を備えたものである。
【0009】
本開示の一実施形態の量子ドット集合体および一実施形態の光検出装置ならびに一実施形態の電子機器では、化合物半導体からなるコア部の表面に1または複数の有機配位子を配位させると共に、有機配位子が配位していないコア部の表面を酸化膜で覆うようにした。これにより、量子ドットの表面欠陥を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る量子ドットの構成を表す断面模式図である。
【
図2】
図1に示した量子ドットからなる集合体内における複数の量子ドットの態様を説明する図である。
【
図3】本開示の一実施の形態に係る光検出装置の全体構成を表すブロック図である。
【
図4】
図3に示した光検出装置の各単位画素の構成を表す断面模式図である。
【
図5】
図3に示した光検出装置の各単位画素の等価回路図である。
【
図6】本開示の変形例に係る光検出装置の各単位画素の構成を表す断面模式図である。
【
図7】
図1に示した光検出装置を用いた電子機器の構成の一例を表すブロック図である。
【
図8A】
図1に示した光検出装置を用いた光検出システムの全体構成の一例を表す模式図である。
【
図8B】
図8Aに示した光検出システムの回路構成の一例を表す図である。
【
図9】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図10】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.実施の形態(量子ドットを用いた光電変換層を有する光検出装置の例)
1-1.量子ドットの構成
1-2.量子ドットの製造方法
1-3.光検出装置の構成
1-4.作用・効果
2.変形例
3.適用例
4.応用例
【0012】
<1.実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係る量子ドット(量子ドット120)の構成を表す断面模式図である。量子ドット120は、例えば、後述する光検出装置1の光電変換層12の材料として用いられるものである(例えば、
図4参照)。本実施の形態の量子ドット120は、コア部121とシェル層122とから構成されたコア・シェル型の量子ドットであり、シェル層122は、コア部121の表面に配位した1または複数の有機配位子122Aと、1または複数の有機配位子122Aが配位していないコア部121の表面に形成された酸化膜122Bとからなる。量子ドット120を複数用いて層状に形成された光電変換層12(量子ドット集合体)では、層内の複数の量子ドット120は、有機配位子122Aまたは酸化膜122Bを介して隣接している(
図2参照)。
【0013】
(1-1.量子ドットの構成)
量子ドット120は、上記のように、コア部121とコア部121の表面を覆うシェル層122とから構成されている。
【0014】
コア部121は、化合物半導体により形成された半導体ナノ粒子である。具体的には、コア部121は、例えば、IV-VI族、III-V族、II-VI族、I-VI族もしくはI-III-VI族からなる化合物半導体、または、I族、III族、IV族、V族およびVI族元素のうちの3種以上の組み合わせからなる化合物半導体により形成されている。
【0015】
例えば、IV-VI族化合物半導体としては、PbO、PbS、PbSe、PbTe等が挙げられる。例えば、III-V族化合物半導体としては、GaAs、InAs、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInP等が挙げられる。例えば、II-VI族化合物半導体としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgTe等が挙げられる。例えば、I-III-VI族化合物半導体としては、CuInGaSe、CuInSe2、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuZnSnSSe、ZnCuInSe、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2等のカルコパライト系半導体が挙げられる。この他、コア部121を構成する化合物半導体としては、GaP、InN、InSb、InGaAs、InGaAsP、GaN、CdSeS、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、HgS、TiO2、AgS、AgSe、AgTe等が挙げられる。
【0016】
シェル層122は、1または複数の有機配位子122Aと酸化膜122Bとからなり、例えば、非晶質構造を有している。シェル層122は、例えば、コア部121と同じ元素を含んでいる。
【0017】
1または複数の有機配位子122Aは、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物である。1または複数の有機配位子122Aは、化合物半導体からなるコア部121に配位結合することにより、コア部121の表面に存在する反応性が高い欠陥(ダングリングボンド)を不活性化している。1または複数の有機配位子122Aは、塩基性基および弱酸性基の一方または両方を有している。具体的には、1または複数の有機配位子122Aは、炭素数5以下のチオール基およびカルボキシル基のうちの一方または両方を有している。
【0018】
なお、1または複数の有機配位子122Aの長さが長くなると、量子ドット120間の電荷キャリアの移動度が低下する虞がある。そのため、1または複数の有機配位子122Aの長さは、例えば0.6nm以下であることが好ましい。
【0019】
酸化膜122Bは、1または複数の有機配位子122Aが配位してないコア部121の表面を覆うものである。酸化膜122Bは、コア部121の表面を酸化した表面酸化膜であり、これにより、コア部121の表面の欠陥が抑制される。酸化膜122Bの厚みは、1または複数の有機配位子122Aの長さと同様に、例えば0.6nm以下であることが好ましい。
【0020】
即ち、シェル層122の厚みは、0.6nm以下であることが好ましい。
【0021】
本実施の形態の量子ドット120は、X線光電子分光分析によってコア部121を構成する各元素と酸素との結合状態が検出される。更に、コア部121を構成する元素の中で最も原子番号が小さい元素において、酸素との結合に由来するピーク(第1のピーク)の面積強度は、コア部121と1または複数の有機配位子122Aとの結合に由来するピーク(第2のピーク)の面積強度に対して0.1以上0.3以下となっている。即ち、コア部121の表面における酸化膜122B成分に対する1または複数の有機配位子122A成分の比(酸化膜122B成分/コア部121成分+1または複数の有機配位子122A成分)は、0.1以上0.3以下となっている。これは、強度比が0.1よりも小さくなると、酸化膜122Bが薄すぎて欠陥抑制の効果が十分に発揮されないことがあるためである。また、強度比が0.3よりも大きくなると、酸化膜122Bが厚すぎて電荷キャリアの移動度に悪影響を及ぼすことがあるためである。
【0022】
なお、上記成分比の式にコア部121成分が含まれるのは、測定の検出深さによるためである。測定結果には、量子ドット120の表面に形成される有機配位子122Aおよび酸化膜122Bに加えて、その少し内側のコア部121の寄与も含まれる。
【0023】
複数の量子ドット120を、例えば層状に形成した量子ドット集合体では、層内の複数の量子ドット120は、
図2に示したように、有機配位子122Aまたは酸化膜122Bを介して隣接している。
【0024】
(1-2.量子ドットの製造方法)
量子ドット120は、例えば、以下の2つの方法を用いて形成することができる。
【0025】
[量子ドットの製造方法1]
まず、長リガンドが配位したコア部121を含む量子ドットインクを基板上に塗布して膜を形成する。続いて、膜上に有機配位子122Aに相当する短リガンドの分散液を塗布する。これにより、コア部121表面のリガンドは、長リガンドから短リガンドへ交換される。その後、酸素分圧20%~100%の雰囲気下で40℃~150℃の範囲で加熱する。これにより、コア部121の表面に、1または複数の有機配位子122Aと酸化膜122Bとからなるシェル層122が形成される。
【0026】
[量子ドットの製造方法2]
まず、長リガンドが配位したコア部121を含む量子ドットインクに塩を加えて長リガンドを除去する。続いて、イオン化した量子ドットインクに有機配位子122Aに相当する短リガンドの分散液を追加し、コア部121に短リガンドを配位させた後、この量子ドットインクを基板に塗布する。その後、酸素分圧20%~100%の雰囲気下で40℃~150℃の範囲で加熱する。これにより、コア部121の表面に、1または複数の有機配位子122Aと酸化膜122Bとからなるシェル層122が形成される。
【0027】
上記の方法を用いて形成された量子ドット120のシェル層122の形成前後の酸化膜122B成分に対する1または複数の有機配位子122A成分の比(酸化膜122B成分/コア部121成分+1または複数の有機配位子122A成分)および層状に形成した量子ドット120の集合体のシェル層122の形成前後の暗電流は、表1に示したように変化する。なお、暗電流については、形成前の値を1.0とした場合の相対値として記している。
【0028】
【0029】
(1-3.光検出装置の構成)
図3は、本開示の一実施の形態に係る光検出装置(光検出装置1)の全体構成の一例を表したものである。光検出装置1は、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の電子機器(電子機器1000、
図7参照)に用いられるものである。
【0030】
光検出装置1は、例えば、光学レンズ系(図示せず)を介して被写体からの入射光(像光)を取り込んで、撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力するものである。光検出装置1は、半導体基板20上に、撮像エリアとしての画素部100Aを有すると共に、この画素部100Aの周辺領域に、例えば、垂直駆動回路111、カラム信号処理回路112、水平駆動回路113、出力回路114、制御回路115および入出力端子116を有している。
【0031】
画素部100Aは、例えば、行列状に2次元配置された複数の単位画素Pを有している。この単位画素Pには、例えば、画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、単位画素Pからの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、垂直駆動回路111の各行に対応した出力端に接続されている。
【0032】
垂直駆動回路111は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部100Aの各単位画素Pを、例えば、行単位で駆動する画素駆動部である。垂直駆動回路111によって選択走査された画素行の各単位画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通してカラム信号処理回路112に供給される。カラム信号処理回路112は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0033】
水平駆動回路113は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、カラム信号処理回路112の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この水平駆動回路113による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線117に出力され、当該水平信号線117を通して半導体基板20の外部へ伝送される。
【0034】
出力回路114は、カラム信号処理回路112の各々から水平信号線117を介して順次供給される信号に対して信号処理を行って出力するものである。出力回路114は、例えば、バッファリングのみを行う場合もあるし、黒レベル調整、列ばらつき補正および各種デジタル信号処理等が行われる場合もある。
【0035】
垂直駆動回路111、カラム信号処理回路112、水平駆動回路113、水平信号線117および出力回路114からなる回路部分は、半導体基板20上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブル等により接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0036】
制御回路115は、半導体基板20の外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータ等を受け取り、また、光検出装置1の内部情報等のデータを出力するものである。制御回路115はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に垂直駆動回路111、カラム信号処理回路112および水平駆動回路113等の周辺回路の駆動制御を行う。
【0037】
入出力端子116は、外部との信号のやり取りを行うものである。
【0038】
図4は、
図3に示した光検出装置1の各単位画素Pの断面構成の一例を模式的に表したものである。
図5は、
図4に示した光検出装置1の各単位画素Pの等価回路図である。
【0039】
光検出装置1は、例えば、対向する一対の面(面20S1および面20S2)を有する半導体基板20の光入射側S1となる面20S1側に、選択的な波長域(例えば、400nm以上1600nm未満の可視光領域および近赤外領域)の波長の一部または全部に対応する光を吸収して励起子(電子-正孔対)を発生させる光電変換部10が設けられたものである。光電変換部10は、対向配置された下部電極11(例えば、第1電極)と上部電極13(例えば、第2電極)との間に光電変換層12を有している。光電変換部10では、光電変換によって生じた電子正孔対のうち、例えば、電子が信号電荷として下部電極11側から読み出される。以下では、信号電荷として電子を下部電極11側から読み出す場合を例に、各部の構成や材料等について説明する。
【0040】
下部電極11は、例えば、光透過性を有する導電膜により構成されている。下部電極11の構成材料としては、例えば、ドーパントとしてスズ(Sn)を添加したIn2O3であるインジウム錫酸化物(ITO)が挙げられる。下部電極11の構成材料としては、上記以外にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO2)系材料、例えば、ドーパントとしてSbを添加したATO、ドーパントとしてフッ素を添加したFTOが挙げられる。また、酸化亜鉛(ZnO)あるいはドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。ZnO系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)を添加したガリウム亜鉛酸化物(GZO)、ホウ素(B)を添加したホウ素亜鉛酸化物およびインジウム(In)を添加したインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。更に、ドーパントとしてインジウムとガリウムを添加した亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)を用いてもよい。加えて、下部電極11の構成材料としては、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIN2O4、CdO、ZnSnO3またはTiO2等を用いてもよいし、スピネル形酸化物やYbFe2O4構造を有する酸化物を用いてもよい。
【0041】
また、下部電極11に光透過性が不要である場合には、低い仕事関数(例えば、φ=3.5eV~4.5eV)を有する単金属または合金を用いることができる。具体的には、アルカリ金属(例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)等)およびそのフッ化物または酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)等)およびそのフッ化物または酸化物が挙げられる。この他、アルミニウム(Al)、Al-Si-Cu合金、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タリウム(Tl)、Na-K合金、Al-Li合金、Mg-Ag合金、Inおよびイッテリビウム(Yb)等の希土類金属、または、それらの合金が挙げられる。
【0042】
更に、下部電極11を構成する材料としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびモリブデン(Mo)等の金属、または、それらの金属元素を含む合金、あるいは、それらの金属からなる導電性粒子、それらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料、酸化物半導体、カーボン・ナノ・チューブ、グラフェン等の導電性物質が挙げられる。この他、下部電極11を構成する材料としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)が挙げられる。また、上記材料をバインダー(高分子)に混合してペーストまたはインクとしたものを硬化させ、電極として用いてもよい。
【0043】
下部電極11は、上記材料からなる単層膜あるいは積層膜として形成することができる。下部電極11の積層方向の膜厚(以下、単に厚みとする)は、例えば20nm以上200nm以下であり、好ましくは30nm以上150nm以下である。
【0044】
光電変換層12は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、少なくとも可視光領域から近赤外領域に含まれる所定の波長を、例えば60%以上吸収して電荷分離するものである。光電変換層12は、例えば、400nm以上1600nm未満の可視光領域および近赤外光領域の一部または全ての波長の光を吸収する。光電変換層12は、本開示の「量子ドット集合体」の一具体例に相当するものであり、光電変換層12は、上述した複数の量子ドットからなる。
【0045】
光電変換層12の厚みは、例えば、10nm以上300nm以下であり、好ましくは30nm以上150nm以下である。
【0046】
上部電極13は、下部電極11と同様に、例えば、光透過性を有する導電膜により構成されている。上部電極13の構成材料としては、例えば、ドーパントとしてスズ(Sn)を添加したIn2O3であるインジウム錫酸化物(ITO)が挙げられる。そのITO薄膜の結晶性は、結晶性が高くても、低く(アモルファスに近づく)てもよい。上部電極13の構成材料としては、上記以外にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO2)系材料例えば、ドーパントとしてSbを添加したATO、ドーパントとしてフッ素を添加したFTOが挙げられる。また、酸化亜鉛(ZnO)あるいはドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。ZnO系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)を添加したガリウム亜鉛酸化物(GZO)、ホウ素(B)を添加したホウ素亜鉛酸化物およびインジウム(In)を添加したインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。さらにドーパントとしてインジウムとガリウムを添加した亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)を用いてもよい。加えて、上部電極13の構成材料としては、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIN2O4、CdO、ZnSnO3またはTiO2等を用いてもよいし、スピネル形酸化物やYbFe2O4構造を有する酸化物を用いてもよい。
【0047】
また、上部電極13に光透過性が不要である場合には、高い仕事関数(例えば、φ=4.5eV~5.5eV)を有する単金属または合金を用いることができる。具体的には、例えば、Au、Ag、Cr、Ni、Pd、Pt、Fe、イリジウム(Ir)、ゲルマニウム(Ge)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、テルル(Te)およびそれらの合金が挙げられる。
【0048】
更に、上部電極13を構成する材料としては、Pt、Au、Pd、Cr、Ni、Al、Ag、Ta、W、Cu、Ti、In、Sn、Fe、CoおよびMo等の金属、または、それらの金属元素を含む合金、あるいは、それらの金属からなる導電性粒子、それらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料、酸化物半導体、カーボン・ナノ・チューブ、グラフェン等の導電性物質が挙げられる。この他、上部電極13を構成する材料としては、PEDOT/PSSといった有機材料(導電性高分子)が挙げられる。また、上記材料をバインダー(高分子)に混合してペーストまたはインクとしたものを硬化させ、電極として用いてもよい。
【0049】
上部電極13は、上記材料からなる単層膜あるいは積層膜として形成することができる。上部電極13の厚みは、例えば20nm以上200nm以下であり、好ましくは30nm以上150nm以下である。
【0050】
なお、下部電極11と上部電極13との間には、他の層が設けられていてもよい。例えば、下部電極11と光電変換層12との間には、正孔ブロック層や下引き層を設けるようにしてもよい。光電変換層12と上部電極13との間には、電子ブロック層や仕事関数調整層を設けるようにしてもよい。正孔ブロック層は、光電変換層12において発生した電荷キャリアのうち、電子を選択的に下部電極11へ輸送すると共に、下部電極11側からの正孔の注入を阻害するものである。電子ブロック層は、光電変換層12において発生した電荷キャリアのうち、正孔を選択的に上部電極13へ輸送すると共に、上部電極13側からの電子の注入を阻害するものである。仕事関数調整層は、上部電極13の仕事関数よりも大きな電子親和力または仕事関数を有するものである。
【0051】
光電変換部10では、上部電極13側から光電変換部10に入射した光は光電変換層12において吸収される。これによって生じた励起子は励起子分離して電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷キャリア(電子および正孔)は、電荷キャリアの濃度差による拡散や、陽極(例えば、上部電極13)と陰極(例えば、下部電極11)との仕事関数の差による内部電界によってそれぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流として検出される。電子および正孔の輸送方向は、下部電極11と上部電極13との間に電位を印加することによって制御される。
【0052】
半導体基板20は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成されている。半導体基板20の面20S1には、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD(半導体基板20内の領域21C)と、アンプトランジスタ(変調素子)AMPと、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSELと、素子分離領域24とが設けられている。また、半導体基板20の周辺部には、ロジック回路等からなる周辺回路(図示せず)が設けられている。
【0053】
半導体基板20の面20S1と光電変換部10の下部電極11との間には、例えば、絶縁層25、層間絶縁層26,27,28が面20S1側この順に設けられている。光電変換部10の上部電極13上には平坦化層14が設けられており、平坦化層14上には、オンチップレンズ15等の光学部材が配設されている。
【0054】
フローティングディフュージョンFD(領域21B)の隣にはリセットトランジスタRSTのリセットゲート21が配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFDに蓄積された電荷キャリアを、リセットトランジスタRSTによりリセットすることが可能となる。
【0055】
リセットトランジスタRSTは、光電変換部10からフローティングディフュージョンFDに転送された電荷キャリアをリセットするものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。具体的には、リセットトランジスタRSTは、リセットゲート21と、チャネル形成領域21Aと、ソース/ドレイン領域21B,21Cとから構成されている。リセットゲート21は、リセット線に接続され、リセットトランジスタRSTの一方のソース/ドレイン領域21Cは、フローティングディフュージョンFDを兼ねている。リセットトランジスタRSTを構成する他方のソース/ドレイン領域21Bは、電源VDDに接続されている。
【0056】
アンプトランジスタAMPは、光電変換部10で生じた電荷量を電圧に変調する変調素子であり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。具体的には、アンプトランジスタAMPは、アンプゲート22と、チャネル形成領域22Aと、ソース/ドレイン領域22B,22Cとから構成されている。アンプゲート22は、層間絶縁層26に設けられたビアおよび貫通配線31と、層間絶縁層27に設けられた配線32および貫通配線33と、層間絶縁層28に設けられた配線34およびコンタクト35等を介して下部電極11およびリセットトランジスタRSTの一方のソース/ドレイン領域21C(フローティングディフュージョンFD)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域22Cは、リセットトランジスタRSTを構成する他方のソース/ドレイン領域21Bと領域を共有しており、電源VDDに接続されている。
【0057】
選択トランジスタSELは、選択ゲート23と、チャネル形成領域23Aと、ソース/ドレイン領域23B,23Cとから構成されている。選択ゲート23は、選択線に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域23Vは、アンプトランジスタAMPを構成する他方のソース/ドレイン領域22Bと領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域23Bは、信号線(データ出力線)VSLに接続されている。
【0058】
リセット線および選択線は、それぞれ、駆動回路を構成する行走査部131に接続されている。信号線(データ出力線)VSLは、駆動回路を構成する水平選択部133に接続されている。
【0059】
素子分離領域24は、STI(Shallow Trench Isolation)構造を有しており、例えば、酸化シリコンにより構成されている。
【0060】
絶縁層25は、正の固定電荷を有する膜でもよいし、負の固定電荷を有する膜でもよい。負の固定電荷を有する膜の材料としては、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン等が挙げられる。また上記以外の材料としては酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化正孔ミウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0061】
層間絶縁層26,27,28は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0062】
リセットゲート21、アンプゲート22、選択ゲート23、貫通配線31,33、配線32,34およびコンタクト35は、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料またはアルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属材料により構成されている。
【0063】
平坦化層14は、光透過性を有する材料により構成され、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン等のうちのいずれかよりなる単層膜あるいはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。平坦化層14の厚みは、例えば、100nm~30000nmである。オンチップレンズ15は、平坦化層14と同様に、光透過性を有する材料により構成されている。
【0064】
(1-4.作用・効果)
本実施の形態の量子ドット120では、コア部121の表面を覆うシェル層122を、コア部121の表面に配位する1または複数の有機配位子122Aと、1または複数の有機配位子122Aが配位していないコア部121の表面に形成された酸化膜122Bとから構成するようにした。これにより、量子ドット120の表面欠陥を抑制する。以下、これについて説明する。
【0065】
コロイド状量子ドットを光センサに応用する場合、移動度を向上させるために、量子ドットのみで構成される集合体において量子ドット間の距離の短縮が求められる。そのためのプロセスとして、量子ドットの表面に配位するリガンドをより短いものへと交換する必要がある。しかしながら、リガンド交換の際に量子ドットの表面に欠陥が発生しやすく、その量子ドットの集合体を用いたセンサ素子では暗電流が増加するという課題があった。
【0066】
これに対して本実施の形態では、コア部121と、シェル層122とから構成されたコア・シェル型の量子ドット120において、コア部121の表面を覆うシェル層122を、コア部121の表面に配位する1または複数の有機配位子122Aと、1または複数の有機配位子122Aが配位していないコア部121の表面に形成された酸化膜122Bとから構成するようにした。これにより、この量子ドット120を例えば層状に形成した量子ドット集合体の層内における電荷キャリアの移動度を低減させることなく、量子ドット120の表面欠陥が抑制される。
【0067】
以上により、本実施の形態の量子ドット120およびこの量子ドット120の集合体からなる光電変換層12を備えた光検出装置1では、暗電流を低減することが可能となる。
【0068】
次に、本開示の変形例および適用例ならびに応用例について説明する。なお、上記実施の形態の光検出装置1に対応する構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
<2.変形例>
図6は、本開示の変形例に係る光検出装置(光検出装置1A)の断面構成の一例を模式的に表したものである。光検出装置1Aは、上述した光検出装置1と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の電子機器(電子機器1000、
図7参照)に用いられるものである。本変形例の光検出装置1Aは、下部電極11が複数の電極(例えば、読み出し電極11Aおよび蓄積電極11Bの2つ)からなり、下部電極11と光電変換層12との間に、例えば絶縁膜16を設けた点が光検出装置1とは異なる。
【0070】
読み出し電極11Aは、光電変換層12内で発生した電荷をフローティングディフュージョンFD(領域21C)に転送するためのものである。読み出し電極11Aは、例えば、貫通配線31,33、配線32,34およびコンタクト35を介してフローティングディフュージョンFDに接続されている。
【0071】
蓄積電極11Bは、光電変換層12内で発生した電荷キャリアのうち、電子を信号電荷としてその上方に蓄積するためのものである。蓄積電極11Bは、読み出し電極11Aよりも大きいことが好ましく、これにより、多くの電荷を蓄積することができる。蓄積電極11Bは、例えば、配線36およびコンタクト37等の配線を介して電圧印加部(図示せず)に接続されている。
【0072】
絶縁膜16は、蓄積電極11Bと光電変換層12とを電気的に分離するためのものである。絶縁膜16は、下部電極11を覆うように、例えば、層間絶縁層28上に設けられている。絶縁膜16には、読み出し電極11A上に開口が設けられており、これにより、読み出し電極11Aと光電変換層12とは電気的に接続されている。
【0073】
絶縁膜16は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。絶縁膜16の厚みは、例えば、20nm以上500nm以下である。
【0074】
なお、絶縁膜16と光電変換層12との間には、他の層が設けられていてもよい。例えば、絶縁膜16と光電変換層12との間には、光電変換層12よりも電荷の移動度が高く、且つ、バンドギャップの大きな半導体層を設けるようにしてもよい。半導体層の材料としては、例えば、IGZO等の酸化物半導体および有機半導体等が挙げられる。有機半導体としては、例えば、遷移金属ダイカルコゲナイド、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、グラフェン、カーボン・ナノ・チューブ、縮合多環炭化水素化合物および縮合複素環化合物等が挙げられる。上記材料によって構成された半導体層を設けることにより、光電変換層12内で発生した信号電荷は、半導体層内に蓄積されるようになり、電荷蓄積時における電荷の再結合が低減され、転送効率を向上させることが可能となる。
【0075】
このように、光検出装置の構成は上記実施の形態の光検出装置1に限定されず、本変形例の光検出装置1Aにおいても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
<3.適用例>
(適用例1)
上述した、例えば光検出装置1は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像システム、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0077】
図7は、電子機器1000の構成の一例を表したブロック図である。
【0078】
図7に示すように、電子機器1000は、光学系1001、光検出装置1、DSP(Digital Signal Processor)1002を備えており、バス1008を介して、DSP1002、メモリ1003、表示装置1004、記録装置1005、操作系1006および電源系1007が接続されて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0079】
光学系1001は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの入射光(像光)を取り込んで光検出装置1の撮像面上に結像するものである。
【0080】
光検出装置1としては、上述した光検出装置1や光検出装置1Aが適用される。光検出装置1は、光学系1001によって撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号としてDSP1002に供給する。
【0081】
DSP1002は、光検出装置1からの信号に対して各種の信号処理を施して画像を取得し、その画像のデータを、メモリ1003に一時的に記憶させる。メモリ1003に記憶された画像のデータは、記録装置1005に記録されたり、表示装置1004に供給されて画像が表示されたりする。また、操作系1006は、ユーザによる各種の操作を受け付けて電子機器1000の各ブロックに操作信号を供給し、電源系1007は、電子機器1000の各ブロックの駆動に必要な電力を供給する。
【0082】
(適用例2)
図8Aは、光検出装置(例えば、光検出装置1)を備えた光検出システム2000の全体構成の一例を模式的に表したものである。
図8Bは、光検出システム2000の回路構成の一例を表したものである。光検出システム2000は、赤外光L2を発する光源部としての発光装置2001と、受光部としての光検出装置2002とを備えている。光検出装置2002としては、上述した、例えば光検出装置1を用いることができる。光検出システム2000は、さらに、システム制御部2003、光源駆動部2004、センサ制御部2005、光源側光学系2006およびカメラ側光学系2007を備えていてもよい。
【0083】
光検出装置2002は光L1と光L2とを検出することができる。光L1は、外部からの環境光が被写体(測定対象物)2100(
図8A)において反射された光である。光L2は発光装置2001において発光されたのち、被写体2100に反射された光である。光L1は例えば可視光であり、光L2は例えば赤外光である。光L1は、光検出装置2002における光電変換部において検出可能であり、光L2は、光検出装置2002における光電変換領域において検出可能である。光L1から被写体2100の画像情報を獲得し、光L2から被写体2100と光検出システム2000との間の距離情報を獲得することができる。光検出システム2000は、例えば、スマートフォン等の電子機器や車等の移動体に搭載することができる。発光装置2001は例えば、半導体レーザ、面発光半導体レーザ、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)で構成することができる。発光装置2001から発光された光L2の光検出装置2002による検出方法としては、例えばiTOF方式を採用することができるが、これに限定されることはない。iTOF方式では、光電変換部は、例えば光飛行時間(Time-of-Flight;TOF)により被写体2100との距離を測定することができる。発光装置2001から発光された光L2の光検出装置2002による検出方法としては、例えば、ストラクチャード・ライト方式やステレオビジョン方式を採用することもできる。例えばストラクチャード・ライト方式では、あらかじめ定められたパターンの光を被写体2100に投影し、そのパターンのひずみ具合を解析することによって光検出システム2000と被写体2100との距離を測定することができる。また、ステレオビジョン方式においては、例えば2以上のカメラを用い、被写体2100を2以上の異なる視点から見た2以上の画像を取得することで光検出システム2000と被写体との距離を測定することができる。なお、発光装置2001と光検出装置2002とは、システム制御部2003によって同期制御することができる。
【0084】
<4.応用例>
(内視鏡手術システムへの応用例)
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0085】
図9は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0086】
図9では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0087】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0088】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0089】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0090】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統
括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0091】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0092】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0093】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0094】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0095】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0096】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0097】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を
照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織に
その試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0098】
図10は、
図9に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0099】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0100】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0101】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するため
の1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0102】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0103】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0104】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0105】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0106】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0107】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0108】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0109】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0110】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0111】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0112】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0113】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0114】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0115】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0116】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0117】
(移動体への応用例)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0118】
図11は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0119】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図11に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0120】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0121】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0122】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0123】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0124】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0125】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0126】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0127】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0128】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図11の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0129】
図12は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0130】
図12では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0131】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0132】
なお、
図12には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0133】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0134】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0135】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0136】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0137】
以上、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、上記実施の形態およびその変形例に係る光検出装置(例えば、光検出装置1)は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、ノイズの少ない高精細な撮影画像を得ることができるので、移動体制御システムにおいて撮影画像を利用した高精度な制御を行うことができる。
【0138】
以上、実施の形態、変形例および適用例ならびに応用例を挙げて本技術を説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、信号電荷として電子が下部電極11側から読み出される例を示したがこれに限らず、正孔を信号電荷として下部電極11側から読み出すようにしてもよい。
【0139】
また、本開示の光検出装置として挙げた光検出装置1等では、半導体基板20に、光電変換部10とは異なる波長域の光を検出する1または複数の光電変換部(無機フォトダイオード)を設けるようにしてもよい。
【0140】
更に、上記実施の形態等では、表面照射型の撮像素子の構成を例示したが、本開示内容は裏面照射型の撮像素子にも適用可能である。
【0141】
更にまた、本開示の光検出装置1および電子機器1000では、上記実施の形態等で説明した各構成要素を全て備えている必要はなく、また逆に他の構成要素を備えていてもよい。例えば、電子機器1000には、光検出装置1への光の入射を制御するためのシャッターを配設してもよいし、電子機器1000の目的に応じて光学カットフィルターを具備してもよい。
【0142】
また、上記実施の形態等では、量子ドット120を光検出装置1に応用した例を示したが、本開示の量子ドット120は、太陽電池に適用してもよい。太陽電池に適用する場合には、量子ドット120の集合体からなる光電変換層12は、例えば、400nm~800nmの波長をブロードに吸収するように設計することが好ましい。
【0143】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0144】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。以下の構成の本技術によれば、化合物半導体からなるコア部の表面に1または複数の有機配位子を配位させると共に、有機配位子が配位していないコア部の表面を酸化膜で覆うようにした。これにより、量子ドットの表面欠陥が抑制され、暗電流を低減させること可能となる。
(1)
化合物半導体からなるコア部と、
前記コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子および前記コア部の、前記1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、
隣り合う前記複数の量子ドットは、前記1または複数の有機配位子または前記酸化膜を介して隣接している
量子ドット集合体。
(2)
前記コア部は、IV-VI族、III-V族、II-VI族、I-VI族もしくはI-III-VI族からなる化合物半導体、または、I族、III族、IV族、V族およびVI族元素のうちの3種以上の組み合わせからなる化合物半導体からなる、前記(1)に記載の量子ドット集合体。
(3)
前記1または複数の有機配位子は、塩基性基および弱酸性基の一方または両方を有している、前記(1)または(2)に記載の量子ドット集合体。
(4)
前記1または複数の有機配位子は、炭素数5以下のチオール基およびカルボキシル基のうちの一方または両方を有している、前記(1)乃至(3)のうちのいずれか1つに記載の量子ドット集合体。
(5)
前記1または複数の有機配位子の長さは0.6nm以下である、前記(1)乃至(4)のうちのいずれか1つに記載の量子ドット集合体。
(6)
前記コア部と前記シェル層とは同じ元素を含む、前記(1)乃至(5)のうちのいずれか1つに記載の量子ドット集合体。
(7)
前記酸化膜は前記コア部の表面酸化膜である、前記(6)に記載の量子ドット集合体。
(8)
X線光電子分光分析による、前記コア部を構成する元素の中で最も原子番号が小さい元素と酸素との結合に由来する第1のピークの面積強度は、前記コア部と前記1または複数の有機配位子との結合に由来する第2のピークの面積強度に対して0.1以上0.3以下である、前記(6)または(7)に記載の量子ドット集合体。
(9)
前記シェル層の膜厚は0.6nm以下である、前記(1)乃至(8)のうちのいずれか1つに記載の量子ドット集合体。
(10)
前記シェル層は非晶質構造を含む、前記(1)乃至(9)のうちのいずれか1つに記載の量子ドット集合体。
(11)
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、量子ドット集合体からなる光電変換層とを備え、
前記量子ドット集合体は、
化合物半導体からなるコア部と、
前記コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子および前記コア部の、前記1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、
隣り合う前記複数の量子ドットは、前記1または複数の有機配位子または前記酸化膜を介して隣接している
光検出装置。
(12)
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、量子ドット集合体からなる光電変換層とを有し、
前記量子ドット集合体は、
化合物半導体からなるコア部と、
前記コア部の表面に配位した1または複数の有機配位子および前記コア部の、前記1または複数の有機配位子が配位していない表面を覆う酸化膜からなるシェル層とからなる複数の量子ドットを含み、
隣り合う前記複数の量子ドットは、前記1または複数の有機配位子または前記酸化膜を介して隣接している
光検出装置を備えた電子機器。
【符号の説明】
【0145】
1,1A…光検出装置、10…光電変換部、11…下部電極、11A…読み出し電極、11B…蓄積電極、12…光電変換層、13…上部電極、14…平坦化層、15…オンチップレンズ、16…絶縁膜、20…半導体基板、21…リセットゲート、22…アンプゲート、23…選択ゲート、24…素子分離領域、25…絶縁層、26,27,28…層間絶縁層、31,33…貫通配線、32,34…配線、35…コンタクト、120…量子ドット、121…コア部、122…シェル層、122A…有機配位子、122B…酸化膜、1000…電子機器、2000…光検出システム。