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特開2024-31459点検計画支援システムおよび点検計画支援方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031459
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】点検計画支援システムおよび点検計画支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240229BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240229BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q50/06
G21C17/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135018
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉原 有里
(72)【発明者】
【氏名】新間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】大野 茂樹
【テーマコード(参考)】
2G075
5L049
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA16
2G075CA02
2G075DA20
2G075GA16
5L049CC06
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】安全措置工程と設備点検工程を含めた全体工程の最適化にかかる工数を低減できる点検計画支援システムを提供する。
【解決手段】原子力プラントの点検計画を支援する点検計画支援システム100であって、プラント設備の構造物の情報に基づき安全措置範囲を計画する安全措置計画部11と、安全措置計画部で作成された計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成する制約条件作成部12と、制約条件作成部12で作成された制約条件に基づき安全措置工程および設備点検工程を最適化する工程最適化部13を備える。工程最適化部13は、制約条件に基づいて、作業期間の最小化を目的関数とする数理最適化問題を定式化し、安全措置工程および設備点検工程を計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの点検計画を支援する点検計画支援システムであって、
プラント設備の構造物の情報に基づき安全措置範囲を計画する安全措置計画部と、
前記安全措置計画部で作成された計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成する制約条件作成部と、
前記制約条件作成部で作成された制約条件に基づき前記安全措置工程および前記設備点検工程を最適化する工程最適化部を備える
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の点検計画支援システムであって、
前記安全措置計画部は、点検対象機器、隔離操作対象機器、隔離範囲の少なくとも一つを入力として、隔離範囲および当該隔離範囲内の機器を特定する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の点検計画支援システムであって、
前記安全措置計画部は、CADまたは点群の少なくとも一方を用いて前記プラント設備間の接続関係を計算する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の点検計画支援システムであって、
前記安全措置計画部は、CADまたは点群の少なくとも一方を用いて指定の区画領域内に存在する機器を計算する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の点検計画支援システムであって、
前記制約条件作成部は、前記安全措置計画部で作成された安全措置範囲に基づいて、安全措置工程と設備点検工程の少なくとも一方に関する作業順序または並行作業禁止の制約条件を作成する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項6】
請求項4に記載の点検計画支援システムであって、
前記制約条件作成部は、前記指定の区画領域毎の持込重量制限、作業空間の干渉を制約条件として作成する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の点検計画支援システムであって、
前記工程最適化部は、計算された工程と、設備接続関係または設備の空間配置を示すCADまたは点群の少なくとも一方を表示部に表示する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の点検計画支援システムであって、
前記工程最適化部は、前記制約条件に基づいて、作業期間の最小化を目的関数とする数理最適化問題を定式化し、安全措置工程および設備点検工程を計算する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項9】
請求項8に記載の点検計画支援システムであって、
前記工程最適化部は、前記制約条件の数式を、隔離間の制約条件、隔離と機器点検の制約条件、点検作業間の制約条件に基づいて生成する
ことを特徴とする点検計画支援システム。
【請求項10】
原子力プラントの点検計画を支援する点検計画支援方法であって、
プラント設備の構造物の情報に基づき安全措置範囲を計画し、前記計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成し、前記制約条件に基づき前記安全措置工程および前記設備点検工程を最適化する
ことを特徴とする点検計画支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検計画支援システムおよび点検計画支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、稼働率向上に向け定期検査の工期短縮が重要となっている。定期検査の工程は、点検中におけるプラント安全に関わる安全措置計画と、機器点検に関わる点検工程計画の双方を考慮する必要がある。しかし、工程の大規模性ゆえに、安全措置作業と機器点検作業間に存在する順序関係といった制約条件の成立性評価に時間がかかり、全体工程の最適化が困難である。そこで、安全措置計画と機器点検計画の両方の成立性を評価しつつ、全体工程を最適化する方法が重要である。
【0003】
特許文献1の定期検査工程作成支援装置は、複数のグループで実施するプラントの定検についての定検工程表の作成を支援する定期検査工程作成支援装置であって、入力部及び表示部と、定検期間中の実施作業情報と、点検機器データと、保安規定データとを格納するデータベースと、データベースに格納された情報に基づいて件名毎のメインワークオーダーと作業形態等に分類されたサブワークオーダーIDに紐づけられた情報とするワークオーダー制御部と、定検工程表を作成するための工程表作成機能と、工程表作成機能部で作成された定検工程表の工程と、実際の定検工程との進捗情報を監視する工程監視部と、ネットワークに接続され、複数のグループとの間の通信を可能とし、工程監視部における進捗情報を、複数のグループにおいて閲覧可能とする通 信機能と、を具備することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-144517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、作業エリアにおける系統運用・アイソレーションや溢水ハザードなどのリスク事象を表示する方法を提供している。しかしながら、工程表作成者は、点検機器の点検時期を主要工程表の中に割り当てて、全体の定検工程表を作成する必要がある。また、工程の最適化機能が無いため、リスク上問題がある場合には人手で工程を修正する必要がある。そのため、計画に工数がかかることが課題である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、安全措置工程と設備点検工程を含めた全体工程の最適化にかかる工数を低減できる点検計画支援システムおよび点検計画支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の点検計画支援システムは、原子力プラントの点検計画を支援する点検計画支援システムであって、プラント設備の構造物の情報に基づき安全措置範囲を計画する安全措置計画部と、前記安全措置計画部で作成された計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成する制約条件作成部と、前記制約条件作成部で作成された制約条件に基づき前記安全措置工程および前記設備点検工程を最適化する工程最適化部を備えることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、点検計画支援システムにおいて、安全措置工程と設備点検工程の制約条件の作成工数を低減し、工程最適化が可能な点検計画支援システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る点検計画支援システムの構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る点検計画支援システムの処理を示すフローチャートである。
図3】P&ID DBの配管計装図の例を示す図である。
図4】CADモデルDBのデータ構造を示す図である。
図5】機器DBのデータ構造を示す図である。
図6】標準工程DBのデータ構造を示す図である。
図7】安全措置計画部で作成される隔離関連DBのデータ構造を示す図である。
図8】制約条件作成部で作成される制約条件DBのデータ構造を示す図である。
図9図2の安全措置範囲の特定の方法1を示す図である。
図10図2の安全措置範囲の特定の方法2を示す図である。
図11図2の安全措置範囲の特定の方法3を示す図である。
図12図2の工程の最適化で求解された工程を示す図である。
図13A】制約条件の変更により得られる工程を示す図である。
図13B】制約条件を変更する画面を示す図である。
図14A】隔離範囲を変更した場合の例を示す図である。
図14B】隔離範囲を変更した場合の工程への影響を示す図である。
図15】第2実施形態に係るCADモデルの例を示す図である。
図16】第2実施形態に係る防護区画を空間的に特定する例を示す図である。
図17】第2実施形態に係る防護区画内の機器リストを示す図である。
図18】第2実施形態に係る防護区画の制約テンプレートを示す図である。
図19】第2実施形態に係る防護区画の持込重量制約データを示す図である。
図20】第2実施形態に係る作業空間の干渉制約リストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0011】
<<第1実施形態>>
図1は、第1実施形態に係る点検計画支援システム100の構成を示す図である。点検計画支援システム100は、処理部10、記憶部20、ユーザからの入力を受け付ける入力部91、計算結果を出力する出力部92、通信部93を有する。処理部10は、プラント設備構造物の情報に基づき安全措置計画を作成する安全措置計画部11、安全措置計画部11で作成された計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成する制約条件作成部12、制約条件作成部12で作成された制約条件に基づき安全措置工程および設備点検工程を最適化する工程最適化部13等を有する。
【0012】
図1において、処理部10は、中央演算処理装置(CPU)であり、RAMやHDD等に格納される各種プログラムを実行する。記憶部20は、HDDであり、点検計画支援システム100が処理を実行するための各種データを保存する。入力部91は、キーボードやマウス等のコンピュータに指示を入力するための装置であり、プログラム起動などの指示を入力する。出力部92は、ディスプレイ等であり、点検計画支援システム100による処理の実行状況や実行結果などを表示する。通信部93は、ネットワークを介して、他の装置と各種データやコマンドを交換する。
【0013】
記憶部20には、P&ID DB30(図3参照)、CADモデルDB40(図4参照)、機器DB50(図5参照)、標準工程DB60(図6参照)、安全措置計画部11が作成した隔離関連DB70(図7参照)、制約条件作成部12が作成した制約条件DB80(図8参照)等が記憶されている。なお、P&IDは、Piping & Instrumentation Diagramの略である。
【0014】
図3は、P&ID DB30の配管計装図31の例を示す図である。配管計装図31は、配管P01,P02,P03,P04,P05,P06、弁V01,V02,V03,ポンプE01等から構成されている。
【0015】
図4は、CADモデルDB40のデータ構造を示す図である。CADモデルデータのテーブル41は、配管計装図31に対応するID(機器ID)、種類、座標1、座標2、形状1、形状2等で構成されている。
【0016】
図5は、機器DB50のデータ構造を示す図である。機器データのテーブル51は、機器IDと機器種類とで構成されている。機器接続関係データのテーブル52は、上流機器IDと下流機器IDとで構成されている。点検対象機器データのテーブル53は、点検対象機器IDで構成されている。
【0017】
図6は、本実施形態における隔離作業や機器点検作業の標準工程DB60のデータ構造を示す図である。標準工程のテーブル61は、機器ID、標準作業ID、作業ID、作業名、工数、工具重量等を含んで構成されている。なお、標準工程とは、点検WBS(Work Breakdown Structure)ともいわれ、作業分解構造を示す。
【0018】
制約テンプレートのテーブル62は、ID、制約名、制約種類、標準作業、制約内容等を含んで構成されている。なお、テーブル62中のFS(Finish-to-Start)の詳細は後述する。
【0019】
図7は、安全措置計画部11で作成される隔離関連DB70のデータ構造を示す図である。隔離リストのテーブル71は、隔離ID、隔離名、系統等を含んで構成されている。隔離範囲機器リストのテーブル72は、隔離IDと機器IDで構成されている。
【0020】
図8は、制約条件作成部12で作成される制約条件DB80のデータ構造を示す図である。隔離間の制約条件のテーブル81は、制約条件ID、作業ID1、作業ID2、制約内容で構成されている。隔離と機器点検の制約条件のテーブル82は、制約条件ID、作業ID1、作業ID2、制約内容で構成されている。点検作業間の制約条件のテーブル83は、制約条件ID、作業ID1、作業ID2、制約内容で構成されている。
【0021】
図2は、本実施形態に係る点検計画支援システム100の処理を示すフローチャートである。適宜図1を参照して説明する。安全措置計画部11は、安全措置範囲を特定する(ステップS11)。次に、制約条件作成部12は、点検工程計画に必要となる工程制約条件を生成する(ステップS12)。次に、工程最適化部13は、工程の最適化をする(ステップS13)。具体的には、工程を計算する最適化問題の定式化および求界し、工程表を出力部92(表示部)に出力する。また、工程最適化部13は、ステップS13において生成された工程のボトルネックを評価する(ステップS14)。
【0022】
制約条件作成部12は、工程制約条件の変更があるか否かを判定し(ステップS15)、工程制約条件の変更がある場合(ステップS15,Yes)、ステップS16に進み、工程制約条件の変更がない場合(ステップS15,No)、処理を終了する。
【0023】
ステップS16において、制約条件作成部12は、安全に関する制約条件の変更があるか否かを判定し、安全に関する工程制約条件の変更がある場合(ステップS16,Yes)、ステップS11に戻り、安全に関する工程制約条件の変更がない場合(ステップS16,No)、ステップS12に戻る。
【0024】
以下、図2に関する各ステップの処理を詳細に説明する。
<安全措置範囲の特定(ステップS11)>
安全措置計画部11は、前記したように、安全措置範囲を特定する(ステップS11)。安全措置範囲の例として、系統隔離範囲について説明する。
【0025】
(系統隔離範囲の特定)
安全措置範囲の一例である隔離範囲を説明する。例系統隔離範囲を特定する方法は以下の3つがある。
(方法1):隔離対象機器を指定し、当該機器の最小隔離範囲を特定する(図9参照)。
(方法2):隔離操作可能な機器を指定し、当該機器に囲まれる機器を自動的に探索する(図10参照)
(方法3):多角形で隔離範囲を指定する(図11参照)。
それぞれの方法について説明する。
【0026】
(方法1):隔離対象機器を指定し、当該機器の最小隔離範囲を特定
図9は、図2の安全措置範囲の特定の方法1を示す図である。(方法1)の隔離範囲特定方法は、点検対象となる隔離対象機器を入力すると、当該機器を隔離するための最小隔離範囲を特定するものである。
【0027】
図9のステップS111は、隔離対象機器を入力する様子を示す。当該機器の入力方法は、入力部91を用いて機器IDを文字列として入力するか、または、図3のようなCAD等でシステム化されたP&ID上で隔離対象機器の位置をピック(選択)するなどして入力する。
【0028】
次に、図9のステップS112~S115は、前記入力された隔離対象機器を隔離するための最小隔離範囲を探索する様子を示す。これらのステップにおいて、安全措置計画部11は、隔離対象機器の上流および下流方向に接続する機器を取得し、弁のように隔離操作可能な機器が見つかるまで探索する。
【0029】
具体的には、まず、安全措置計画部11は、前記入力された隔離対象機器の機器IDをキーとして、図5に示す機器接続関係データのテーブル52から当該機器IDの上流機器IDおよび下流機器IDを取得する。さらに、安全措置計画部11は、取得された上流機器IDおよび下流機器IDの一方をキーとして、機器データのテーブル51から当該機器IDの機器種類を取得する。安全措置計画部11は、当該機器種類が弁のように隔離操作可能な機器である場合には探索を停止する。一方、配管のように隔離操作可能な機器でない場合には、安全措置計画部11は、当該機器IDをキーとして、さらに機器接続関係データのテーブル52から上流機器IDまたは下流機器IDのいずれか一方を取得する。これを繰り返すことで、隔離操作可能な機器をすべて探索できる。
【0030】
安全措置計画部11は、接続関係を探索したすべての機器IDに対して、図7に示す隔離範囲機器リストのテーブル72として保持しておく。さらに、当該隔離範囲機器リストのテーブル72に登録された機器を確認しやすくするため、当該機器の機器IDを有するCADオブジェクトを着色して出力部92(表示部)に表示してもよい。
【0031】
(方法2):隔離操作可能な機器を指定し、当該機器に囲まれる機器を自動的に探索
図10は、図2の安全措置範囲の特定の方法2を示す図である。(方法2)の隔離範囲入力方法は、弁のような隔離操作可能な機器を複数指定し、当該機器に囲まれる機器を自動的に探索するものである。
【0032】
図10のステップS121は、隔離操作可能な対象機器を入力する様子を示す。隔離操作可能な機器の指定方法は、(方法1)の隔離範囲入力方法における、隔離対象機器(点検対象機器)の指定方法と同様である。
【0033】
次に、図10のステップS122~S124は、前記入力された隔離操作可能な対象機器に囲まれる機器を自動的に探索する様子を示す。安全措置計画部11は、隔離対象機器が複数指定された際に、当該機器同士の接続関係を探索する。これは、(方法1)の隔離範囲入力方法における、最小隔離範囲の特定方法と同様に、機器接続関係DBを用いて、上流および下流方向に接続する機器を辿っていき、複数の隔離対象機器IDのいずれか一方が見つかるまで繰り返せばよい。見つかった場合には、安全措置計画部11は、隔離対象機器同士が接続するとみなし、当該接続ルート上にあるすべての機器を隔離範囲機器リストのテーブル72に登録しておく。さらに、安全措置計画部11は、当該隔離範囲機器リストのテーブル72に登録された機器について、出力装置を用いて当該機器の機器IDを有するCADオブジェクトを着色して出力部92(表示部)に表示してもよい。
【0034】
(方法3):多角形で隔離範囲を指定
図11は、図2の安全措置範囲の特定の方法3を示す図である。(方法3)の方法は、隔離範囲を領域で指定するものである。図11のステップS131は、隔離範囲を領域で指定する様子を示す。次に、図11のステップS132~S134は、前記指定された領域内の機器を自動的に探索する様子を示す。
【0035】
まず、隔離したい範囲を多角形で囲まれると、安全措置計画部11は、当該多角形内に含まれる隔離対象機器および隔離操作可能な機器を取得し、当該機器を基点に(方法1)または(方法2)の方法により隔離範囲を探索するものである。
【0036】
隔離したい範囲を多角形で囲み、当該多角形内に含まれる隔離対象機器および隔離操作可能な機器を取得するためには、CADのようなシステム上で範囲選択機能を用いればよい。具体的には、安全措置計画部11は、選択されたオブジェクトIDをキーとして機器データのテーブル51から機器種類を取得し、ポンプのような隔離対象機器か、または、弁のような隔離操作可能な機器を判別する。安全措置計画部11は、隔離対象機器または隔離操作可能な機器であると判別された場合には、当該機器を選択し、(方法1)または(方法2)により隔離範囲を探索する。
【0037】
以上3つの方法を用いて作成された前記隔離範囲機器リストのテーブル72に対してユーザは入力部91を用いて文字列などにより隔離IDを入力する。
【0038】
<工程制約条件の生成(ステップS12)>
次に、図1の制約条件作成部12が実行する図2の工程制約条件の生成(ステップS12)では、点検工程計画に必要となる工程制約条件を生成する。ここでは、入力として点検対象機器データのテーブル53(図5参照)、隔離範囲機器リストのテーブル72(図7参照)、標準工程のテーブル61(図6参照)、制約テンプレートのテーブル62(図6参照)を入力データとして、制約条件作成部12は、図8に示す隔離間の制約条件のテーブル81、隔離と機器点検の制約条件のテーブル82、点検作業間の制約条件のテーブル83を出力する。
【0039】
工程制約条件とは、隔離範囲毎の隔離作業開始時刻・復旧時刻に関わる遵守すべき条件(テーブル81参照)、および、機器毎の点検作業の開始時刻・終了時刻に関する遵守すべき条件(テーブル82、テーブル83参照)である。
【0040】
制約テンプレートとは、図6のテーブル62に示すように、系統Aと系統Bを同時に隔離しないといった制約条件の原型が記されたものである。制約テンプレートには、ID、制約名、制約種別、作業1、作業2、制約内容が含まれる。制約内容は作業1と作業2の開始時刻および終了時刻に関する制約条件を表し、具体的には、
終了してから開始型:FS(Finish-to-Start)、
終了してから終了型:FF(Finish-to-Finish)、
開始してから開始型:SS(Start-to-Start)、
開始してから終了型:SF(Start-to-Finish)、
並行作業禁止、がある。
前記入力データから出力データを生成するために、当該ステップS12では以下の手順を実施する。
【0041】
まず、隔離範囲毎の隔離作業開始時刻・復旧時刻に関する工程制約条件(テーブル81)の生成について説明する。はじめに、制約テンプレートのテーブル62の中で制約種別に「隔離-隔離」と入力された制約条件を取得する。ここでは、ID=TC1の制約条件を例とする。次に、制約テンプレートのテーブル62の標準作業1と標準作業2に格納された値である系統名を取得する。具体的には標準作業1=系統Aと標準作業2=系統Bである。次に、当該系統名をキーとして図7に示す隔離リストのテーブル71から隔離IDを取得する。具体的には系統AをキーにI01、I02、I03、I04、系統BをキーにI11を取得する。
【0042】
次に、ID=TC1の制約テンプレートである「系統Aと系統Bを同時に隔離しない」に相当する工程制約条件は、具体的には系統Aの隔離作業であるI01~I04と系統Bの隔離作業であるI11を同時に実行しないと解釈し、テーブル81のようにI01~I04とI11の並行作業禁止制約として生成される。このとき、同時に実行しないという制約は、制約テンプレートのテーブル62および隔離間制約条件のテーブル81の制約内容により表現できる。具体的には、制約テンプレートのテーブル62に格納されているID=TC1の制約内容である「並行禁止」を隔離間制約条件のテーブル81に生成した工程制約条件C01~C04の制約内容にコピーするなどにより、生成された工程制約条件の内容を把握することができる。
【0043】
次に、図8の隔離-点検制約条件のテーブル82に示す機器毎の点検作業の開始時刻・終了時刻に関する工程制約条件の生成について説明する。これは、隔離作業実施後に当該隔離範囲内にある機器の点検を開始したり、当該機器の点検完了後に前記隔離範囲を復旧するといった制約条件である。具体的には、隔離-点検制約条件のテーブル82では、隔離I01と作業W01および作業W02の間にFSの制約条件が存在することを示し、これは、I01の終了時刻以降にW01およびW02の開始時刻がくることを表す。
【0044】
また、同様に作業W01および作業W02と隔離復旧IR01の間にFSの制約条件が存在し、W01およびW02の終了時刻以降にIR01の開始時刻がくることを表す。これらの制約条件を生成するためには、はじめに、制約テンプレートのテーブル62の中で制約種別に「隔離-点検」と入力された制約条件を取得する。ここでは、ID=TC2の制約条件を例とする。
【0045】
次に、制約テンプレートのテーブル62の作業1と作業2に格納された値である作業名を取得する。具体的には標準作業1=ポンプ隔離と標準作業2=ポンプ点検である。次に、当該作業名をキーとして隔離リストのテーブル71から隔離IDを取得する。具体的には、ポンプ隔離をキーとして隔離ID=I01を取得する。次に、当該隔離IDをキーとして、隔離範囲機器リストのテーブル72から点検対象機器IDを取得する。具体的には、隔離ID=I01をキーとして、点検対象機器ID=E01を取得する。次に、当該点検対象機器IDをキーとして、標準工程のテーブル61から作業IDを取得する。具体的には機器ID=E01をキーとして3つの作業ID=W01、W02、W03を取得する。
【0046】
最後に、当該作業IDと前記隔離ID、および、制約テンプレートの制約内容を用いて、隔離と機器点検の制約条件を生成する。具体的には、隔離-点検制約条件のテーブル82のように隔離I01と2つの作業W01,W02の間に、制約テンプレートのテーブル62中のTC2の制約内容FSの制約条件を生成する。
【0047】
次に、点検間制約条件のテーブル83に示す点検作業間の制約条件について説明する。これは、複数の点検作業間に存在する開始時刻および終了時刻に関する制約条件を表す。具体的には、制約条件C21の場合、作業E01-W01とE01-W02の間にFSの制約条件が存在することを示し、これは、作業E01-W02の開始時刻が作業E01-W01の終了時刻以降でなければならないことを表す。
【0048】
これらの制約条件を生成するためには、はじめに、制約テンプレートのテーブル62の中で制約種別に点検-点検と入力された制約条件を取得する。ここでは、ID=TC3の制約条件を例とする。当該制約テンプレートはポンプ点検の作業順序を示し、標準作業W01と標準作業W02の間にFSの制約条件が存在することを表す。すなわち標準作業W01の終了日以降に標準作業W02の開始日が来ることを表す。次に、標準作業IDをキーとして、標準工程のテーブル61(点検WBS)から作業IDを取得する。具体的には、標準作業ID=W01をキーとして作業IDのE01-W01を、標準作業ID=W02をキーとして作業IDのE01-W02を取得する。この結果、作業E01-W01および作業E01-W02の間にFSの制約条件を生成することができる。
【0049】
<工程の最適化(ステップS13>
次に、図1の工程最適化部13が実行する図2の工程の最適化(ステップS13)について説明する。適宜図5図8を参照する。隔離間制約条件のテーブル81、隔離-点検制約条件のテーブル82、点検間制約条件のテーブル83、隔離リストのテーブル71、標準工程のテーブル61、点検対象機器データのテーブル53を入力データとし、工程を計算する最適化問題の定式化および求界し、工程表を出力する。
【0050】
工程の最適化のため、例えば混合整数計画問題などの数理最適化問題として定式化することで、公知の数理最適化ツールを用いて解を計算することができる。また、組合せ最適化問題として定式化して、メタヒューリスティック手法を用いて解を計算してもよい。
【0051】
本実施形態では、変数は隔離作業および点検作業の開始時刻および終了時刻、各作業の投入人員である。また、目的関数は最終作業終了時刻の最小化とするが、投入人員の最小化を加えてもよい。数理最適化問題の定式化における制約条件の数式は、隔離間の制約条件のテーブル81、隔離と機器点検の制約条件のテーブル82、点検作業間の制約条件のテーブル83に基づいて工程最適化部13が生成する。さらに、各作業に要する作業時間を決定するための制約条件を必要に応じて追加する。
【0052】
変数は、隔離リストのテーブル71の隔離ID毎、標準工程のテーブル61(点検WBS)の作業ID毎に開始時刻と終了時刻を表す変数を作成する。ここでは、作業iの開始時刻変数をST(i)、終了時刻変数をFT(i)とする。
【0053】
例えば、隔離ID=I01に対して開始時刻変数ST(I01)と終了時刻変数FT(I01)を、作業ID=E01-W01に対して開始時刻変数ST(E01-W01)と終了時刻変数FT(E01-W01)を生成する。また、必要に応じて、各作業iの作業人員を表す変数M(i)を追加する。
【0054】
目的関数については、全体作業期間の最小化を目的とする場合には、最後の作業の終了時刻max(FT(i))を最小化するmin(max(FT(i)))を目的関数とする。また、作業毎に必要な人員M(i)が与えられている場合には、ピーク人員max(M(i))の最小化を目的として、min(max(M(i)))を目的関数としてもよい。
【0055】
制約条件は、
(1)作業ID=iと作業ID=kが並行禁止の場合には、
FT(i)<ST(k)、または、FT(k)<ST(i)
のいずれか一方を満たす制約式を追加する。一方、
(2)作業ID=iと作業ID=kが、FS(Finish-to-Start)の場合は、
FT(i)<=ST(k)、
(3)作業ID=iと作業ID=kが、FF(Finish-to-Finish)の場合は、
FT(i)<=FT(k)、
(4)作業ID=iと作業ID=kが、SS(Start-to-Start)の場合は、
ST(i)<=ST(k)、
(5)作業ID=iと作業ID=kが、SF(Start-to-Finish)の場合は、
ST(i)<=FT(k)
となる制約式を追加する。
【0056】
また、各作業に要する作業時間を決定するための制約式として、
FT(i)-ST(i)=MH(i)/M(i)
を追加する。ここで、MH(i)は作業iの作業工数であり、標準工程のテーブル61(点検WBS)から取得する。M(i)は前記のように作業iの投入人員である。
【0057】
以上のように、最適化問題を求解することで得られるST(i),FT(i)は、ガントチャート形式で出力される。具体例を図12に示す。
【0058】
図12は、図2の工程の最適化(ステップS13)で求解された工程を示す図である。図12は最適化された安全措置工程と設備点検工程を表す。I01、I02、IR02、IR01は、安全措置工程に対応し、E01-W01、E01-W02、V01-W11、V01-W12は、設備点検工程に対応する。長方形は作業工程アクティビティを示し、安全措置工程としては隔離作業I01とI02、隔離復旧作業IR01とIR02の作業開始時刻と終了時刻が示されている。また、設備点検工程としては、ポンプE01の点検E01-W01と起動試験E01-W02、弁V01の分解V01-W11と点検V01-W12の作業開始時刻と終了時刻が示されている。図中矢印は作業間の順序制約を表す。
【0059】
<工程の評価(ステップS14)>
次に、図1の工程最適化部13が実行する図2の工程の評価(ステップS14)では、前記工程の最適化(ステップS13)で生成された工程のボトルネックを評価する。具体的な評価の方法は、まず、一般的なクリティカルパスメソッドを用いて工程上のクリティカルパスを計算する。次に、当該クリティカルパスに含まれる工程アクティビティ、および、その制約条件を抽出する。そして、出力部92を用いて、当該工程アクティビティと制約条件を着色するなどによりハイライト表示する。
【0060】
さらに、ステップS14では、前記最適化された工程表が工期やコストといった指標を満足すると工程作成者(ユーザ)判断した場合には、ステップS15を介して処理を終了する。一方で、前記最適化された工程表が工期やコストといった指標を満足しないと工程作成者(ユーザ)が判断した場合には、以下の方法により、工程を改善する。
【0061】
1つ目の工程改善方法は、ユーザが入力部91を介して、ユーザが工程の投入人員を増減する、特定の制約条件を除去するといった、工程制約条件に変更を加えることである。この操作の例を図13A図13Bに示す。
【0062】
図13Aは、制約条件の変更により得られる工程を示す図である。図13Bは、制約条件を変更する画面を示す図である。出力部92により表示された工程表上で、特定の作業工程アクティビティまたは制約条件をクリックして選択する。選択された対象が作業工程アクティビティの場合には、図13Bに示す投入人員変更画面97が表示される。
【0063】
投入人員を変更するには、ユーザは手作業で投入人員を入力し、変更ボタン97Bを押す。一方、選択された対象が矢印すなわち制約条件の場合には、図13Bに示す制約条件変更画面98が表示される。制約条件の種類(FF、FS、SS、SF)を変更するには、変更後の制約条件の種類をユーザが手作業で入力し、変更反映ボタン98Bを押す。制約条件を削除する場合には、削除ボタン98Dを押す。このようにして、安全に関係しない工程制約条件が変更された場合には、工程制約条件の生成(ステップS12)に戻り、ステップS12で変更された制約条件を反映する。そして、工程の最適化(ステップS13)により、変更された制約条件の下で工程を最適化する。結果として図13Aの制約変更後に示すように、工期が短縮された工程表が出力される。
【0064】
2つ目の工程改善方法は、隔離範囲の修正である。当該方法のイメージを図14A図14Bに示す。図14Aは、隔離範囲を変更した場合の例を示す図である。図14Bは、隔離範囲を変更した場合の工程への影響を示す図である。
【0065】
この場合には、まず、隔離範囲の特定(ステップS11)に戻り、工程作成者(ユーザ)が入力部91を介して隔離範囲の修正を実施する。図14Aでは、隔離I01と隔離I02を統合して隔離I01vへと修正している。そして、隔離範囲特定(ステップS11)、工程制約条件の生成(ステップS12)、工程の最適化(ステップS13)、工程の評価(ステップS14)では、前記と同様の方法により、当該隔離範囲の修正結果に応じて最適化された工程表が計算される。その結果、図14Bに示すように、安全措置工程の作業アクティビティ数が減少し、点検措置工程との順序制約の数が減少することで、スムーズな点検が可能となり、工程短縮の効果を得ることができる。
【0066】
<<第2実施形態>>
前記した第1実施形態では、安全措置範囲の一例である隔離範囲について、説明した。この第2実施形態では、図14A図14B図15図20を参照して、図2に示す安全措置範囲の特定(ステップS11)において、防護区画を対象とする実施形態について説明する。防護区画は建屋内の場所に基づいて設計されるため、範囲の特定には2Dまたは3Dの設計CADモデルを用いる。
【0067】
図15は、第2実施形態に係るCADモデルの例を示す図である。3つの部屋(R1,R2,R3)が存在し、部屋R1にはポンプ・配管・弁が、部屋R2および部屋R3には配管・弁が存在する。
【0068】
<隔離範囲入力方法:CAD上で多角形領域を指定>
図16は、第2実施形態に係る防護区画を空間的に特定する例を示す図である。図16は、図15に示したCADモデルを用いて防護区画A1および防護区画A2を入力するイメージ図である。防護区画は工程作成者(ユーザ)が入力部91を用いて多角形の領域指定およびその高さ指定などにより入力する。
【0069】
図17は、第2実施形態に係る防護区画内の機器リストを示す図である。安全措置計画部11は、入力された領域内に存在する機器を取得し、図17に示すような区画範囲機器リストのテーブル75を作成する。これは、防護区画ごとにCADオブジェクト同士の干渉チェックにより実現できる。具体的には、入力された防護区画A1(または防護区画A2)の多角形領域と高さ情報から多角柱オブジェクトを生成し、機器オブジェクトとの干渉チェックを実行する。これは一般的なCADが有する機能を利用すればよい。そして、安全措置計画部11は、多角柱オブジェクトと干渉している機器オブジェクトのIDを取得し、工程作成者(ユーザ)が入力した領域名と対応付けて区画範囲機器リストのテーブル75に登録する。
【0070】
なお、CADオブジェクトは点群データであってもよい。機器IDの情報が付与された点群データと指定の区画領域の多角柱オブジェクトの干渉チェックにより、前記CADオブジェクトの場合と同じ効果が得られる。
【0071】
<工程制約条件の生成>
本実施形態の工程制約条件の生成(ステップS12)では、第1実施形態で記載の制約条件(図6参照)に加えて、区画毎に設定される持込重量制約と、点検作業空間の干渉制約を作成する。それぞれの制約テンプレートは図18のようになる。
【0072】
図18は、第2実施形態に係る防護区画の制約テンプレートを示す図である。制約テンプレートのテーブル65は、ID、制約名、制約州別、標準作業1、標準作業2、制約内容等を含んで構成されている。図18において、TC21が持込重量制約であり、TC22が作業空間干渉制約である。
【0073】
図19は、第2実施形態に係る防護区画の持込重量制約データを示す図である。区画の重量制約条件データのテーブル95は、区画ごとの持込重量の上限データ(持込重量制限)を示し、これらは工程作成者(ユーザ)が入力部91を用いて入力する。
【0074】
テーブル96は、作業毎の工具重量データである。当該作業毎の工具重量データは次のようにして作成される。まず、安全措置計画部11は、区画範囲機器リストのテーブル75と点検対象機器データのテーブル53を照合して、各区画内の点検対象機器を取得する。そして、第1実施形態の工程制約条件の生成(ステップS12)と同様の方法により、標準工程のテーブル61から各機器の点検作業IDおよび作業工具重量データを取得することで、作業毎の工具重量データを作成する。
【0075】
図20は、第2実施形態に係る作業空間の干渉制約リストを示す図である。テーブル85は、点検に必要な作業空間の干渉を、制約条件作成部12がCADモデルを用いて計算することで作成する。具体的には、まず、各機器のCADオブジェクトを覆う直方体を生成する。当該直方体は点検に必要な作業空間を表し、機器のCADオブジェクトの大きさに対して、直方体の大きさにどの程度余裕を持たせるかは事前にユーザが決め、入力部91を用いて入力しておく。次に、制約条件作成部12は、各機器を覆う直方体同士の干渉チェックを実施する。これは、一般的なCADが有する干渉チェック機能を用いればよい。そして、直方体が干渉する機器同士は作業空間が干渉するとみなし、作業空間の干渉制約リストのテーブル85に追加する。
【0076】
<工程の最適化>
本実施形態では、工程最適化部13による工程の最適化(ステップS13)について、第1実施形態との差分である持込重量制約と作業空間干渉制約の2種類の制約条件の定式化について説明する。その他の定式化や求解については第1実施形態と同様である。
【0077】
まず、持込重量制約は、区画の重量制約データのテーブル95と、作業毎の工具重量データのテーブル96を用いて、次の(A)のように定式化できる。
(A)持込重量制約:任意の時刻tに対して以下が成立する。
G01×I(E01-W01, t)+G02×I(E01-W02, t)
+G11×I(V01-W11, t)+G12×I(V01-W12, t) ≦ G-A01
ここで、I(k,t)は時刻tにおいて作業kを実施する場合に1、実施しない場合に0を取る変数である。
【0078】
本式は、各時刻tにおいて防護区画A1で実施される全作業に必要な工具の総重量が、上限値G-A01以下であることを示す制約式となっている。このような制約式を各区画に対して作成する。
【0079】
また、作業空間の干渉制約は、作業空間の干渉制約リストのテーブル85を用いて、次の(B)のように定式化できる。
(B)作業空間の干渉制約
FT(E01-W01)<ST(V01-W11) または FT(V01-W11)<ST(E01-W01)
FT(E01-W01)<ST(V01-W12) または FT(V01-W12)<ST(E01-W01)
FT(E01-W02)<ST(V01-W11) または FT(V01-W11)<ST(E01-W02)
FT(E01-W02)<ST(V01-W12) または FT(V01-W12)<ST(E01-W02)
ここで、干渉制約は第1実施形態の並行禁止制約と同等であるため、同様の制約式で記述できるため説明は省略する。
【0080】
<工程の評価>
本実施形態での工程の評価(ステップS14)は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0081】
以上、本実施形態の点検計画支援システム100は、次の特徴を有する。
(1)原子力プラントの点検計画を支援する点検計画支援システム100であって、プラント設備の構造物の情報に基づき安全措置範囲を計画する安全措置計画部11と、安全措置計画部で作成された計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成する制約条件作成部12と、制約条件作成部12で作成された制約条件に基づき安全措置工程および設備点検工程を最適化する工程最適化部13を備えることを特徴とする。これにより、安全措置工程と設備点検工程の制約条件の作成工数を低減し、工程最適化が可能な点検計画支援システムを実現することができる(図13A図14B参照)。なお、本実施形態では、点検計画支援システムとして説明したが、点検計画支援装置としてもよい。
【0082】
(2)(1)において、安全措置計画部11は、点検対象機器、隔離操作対象機器、隔離範囲の少なくとも一つを入力として、隔離範囲および当該隔離範囲内の機器を特定する(図9図11参照)。
【0083】
(3)(1)において、安全措置計画部11は、CADまたは点群の少なくとも一方を用いてプラント設備間の接続関係を計算する(図9図11参照)。
【0084】
(4)(1)において、安全措置計画部11は、CADまたは点群の少なくとも一方を用いて指定の区画領域内に存在する機器を計算する(図9図11参照)。
【0085】
(5)(1)において、制約条件作成部12は、安全措置計画部11で作成された安全措置範囲に基づいて、安全措置工程と設備点検工程の少なくとも一方に関する作業順序または並行作業禁止の制約条件を作成する(図8参照)。
【0086】
(6)(4)において、制約条件作成部12は、指定の区画領域毎の持込重量制限、作業空間の干渉を制約条件として作成する(図15図20参照)。
【0087】
(7)(1)において、工程最適化部13は、計算された工程と、設備接続関係または設備の空間配置を示すCADまたは点群の少なくとも一方を表示部に表示することができる(図3図12参照)。
【0088】
(8)(1)から(7)において、工程最適化部13は、制約条件に基づいて、作業期間の最小化を目的関数とする数理最適化問題を定式化し、安全措置工程および設備点検工程を計算する(ステップS13参照)。
【0089】
(9)(8)において、工程最適化部13は、制約条件の数式を、隔離間の制約条件、隔離と機器点検の制約条件、点検作業間の制約条件に基づいて生成する。
【0090】
(10)原子力プラントの点検計画を支援する点検計画支援方法であって、プラント設備の構造物の情報に基づき安全措置範囲を計画し、計画に基づき安全措置工程および設備点検工程における制約条件を作成し、制約条件に基づき安全措置工程および設備点検工程を最適化することを特徴とする。これにより、安全措置工程と設備点検工程の制約条件の作成工数を低減し、工程最適化が可能な点検計画支援システムを実現することができる(図13A図14B参照)。
【符号の説明】
【0091】
10 処理部
11 安全措置計画部
12 制約条件作成部
13 工程最適化部
20 記憶部
30 P&ID DB
40 CADモデルDB
50 機器DB
60 標準工程DB
70 隔離関連DB
80 制約条件DB
91 入力部
92 出力部(表示部)
93 通信部
100 点検計画支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20