(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031465
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】表示装置用筐体および表示装置用筐体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240229BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240229BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135032
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 拓也
【テーマコード(参考)】
3D020
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BC01
4F202AD04
4F202AD08
4F202AD20
4F202AG03
4F202AH17
4F202AH25
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB20
4F202CK12
4F202CK42
4F202CQ01
4F206AA45
4F206AD04
4F206AD08
4F206AD20
4F206AG03
4F206AH17
4F206AH25
4F206AR07
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面パネルに設けられた加飾層の損傷を抑制できる構造の表示装置用筐体および表示装置用筐体の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス板のパネル本体21を有する表面パネル20とフレーム10とがインサート成型法で一体化されている。フレーム10はエラストマーで形成され、フレーム10の内面支持部12に形成された内面密着面14の表面パネル中央側に位置する密着エッジ部14aが、加飾層22と接着機能樹脂層23の双方に重なる位置に設けられている。その結果、密着エッジ部14aから加飾層22に直接に応力が作用するのを抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示用の開口部を有するフレームと、前記開口部に固定された表面パネルと、を有する表示装置用筐体において、
前記表面パネルは、透明材料で形成されたパネル本体と、前記パネル本体の周囲領域の筐体内方に向く内面に密着する有色の加飾層と、前記加飾層の内面に重ねられた接着機能樹脂層と、を有し、
前記フレームは、前記表面パネルに密着して硬化した合成樹脂材料で形成されて、前記表面パネルの端面に密着する端面密着面と、前記表面パネルの周囲領域の内面に密着する内面密着面と、を有しており、
前記内面密着面の前記表面パネル中央に向く密着エッジ部が、前記加飾層および前記接着機能樹脂層の双方と重なる位置に形成されていることを特徴とする表示装置用筐体。
【請求項2】
前記接着機能樹脂層の前記表面パネル中央に向く樹脂エッジ部が、前記加飾層の前記表面パネル中央に向く加飾エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置にあり、前記密着エッジ部が、前記樹脂エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置にある請求項1記載の表示装置用筐体。
【請求項3】
前記フレームに、前記表示装置用筐体内方に向く内面支持部が設けられ、前記内面支持部が、前記内面密着面と、前記表面パネル中央に向く内端面を有しており、
前記内端面の前記表示装置用筐体内方に向く内端エッジ部が、前記密着エッジ部よりも前記端面に近い位置にある請求項1記載の表示装置用筐体。
【請求項4】
前記内端面には、前記密着エッジ部に連続する凹面が形成されている請求項3記載の表示装置用筐体。
【請求項5】
前記フレームは、引張弾性率が100MPa以上で500MPa以下のエラストマーで形成される請求項1記載の表示装置用筐体。
【請求項6】
前記フレームは、曲げ弾性率が200MPa以上で1000MPa以下のエラストマーで形成される請求項1記載の表示装置用筐体。
【請求項7】
前記フレームにリアカバーが連結されて前記表示装置用筐体が構成されており、前記リアカバーは前記フレームよりも引張弾性率および曲げ弾性率が大きく、前記リアカバーの表面積が前記フレームの表面積よりも大きい請求項5または6記載の表示装置用筐体。
【請求項8】
表示用の開口部を有するフレームと、前記開口部に固定された表面パネルと、を有する表示装置用筐体の製造方法において、
透明材料で形成されたパネル本体と、前記パネル本体の周囲領域の筐体内方に向く内面に密着する有色の加飾層と、前記加飾層の内面に重ねられた接着機能樹脂層と、を有する表面パネルを使用し、
前記表面パネルを金型内に固定して、合成樹脂材料によって、前記表面パネルの端面に密着する端面密着面と、前記表面パネルの周囲領域の内面に密着する内面密着面とを有する前記フレームを成型し、
前記内面密着面の前記表面パネル中央に向く密着エッジ部を、前記加飾層および前記接着機能樹脂層の双方と重なる位置に形成することを特徴とする表示装置用筐体の製造方法。
【請求項9】
前記接着機能樹脂層の前記表面パネル中央に向く樹脂エッジ部を、前記加飾層の前記表面パネル中央に向く加飾エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置に形成し、前記密着エッジ部を、前記樹脂エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置に形成する請求項8記載の表示装置用筐体の製造方法。
【請求項10】
前記フレームに、前記内面密着面と、前記表面パネル中央に向く内端面を有して、前記表示装置用筐体内方に向く内面支持部を形成し、
前記内端面の前記表示装置用筐体内方に向く内端エッジ部を、前記密着エッジ部よりも前記端面に近い位置に形成する請求項8記載の表示装置用筐体の製造方法。
【請求項11】
前記内端面に、前記密着エッジ部に連続する凹面を形成する請求項10記載の表示装置用筐体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な表面パネルと合成樹脂製のフレームとが、いわゆるインサート成型法によって一体化された表示装置用筐体および表示装置用筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図14にガラス一体型成形品が記載されている。このガラス一体型成形品は、ガラス板の周囲領域の下面に加飾層が形成され、加飾層の下面に接着層が重ねて形成されている。
図15などに示されているように、ガラス一体型成形品の製造方法では、一方の金型にガラス板の内面を吸着して、型締めされた2つの金型内にガラス板を固定するとともに、金型内に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を硬化させて枠体を成形する。加飾層は、ガラス板の外面を通して視認でき、加飾機能が発揮される。
【0003】
特許文献1の段落[0049]に記載されているように、このガラス一体型成形品は、加飾層の幅W3が接着層の幅W4よりも広く、接着層の幅W4は、枠体においてガラス板を支持している縁部の上面よりも狭くなっている。その結果、枠体の縁部が、接着層の側部まで回りこみ、枠体の縁部が接着層を覆いつつ加飾層の下面と接触する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス一体型成形品では、枠体を構成している樹脂材料とガラス基板との間に線膨張係数の差があるため、使用環境に大きな温度変化が生じると、枠体とガラス基板との密着部に熱応力が作用する。特許文献1の
図14に記載された構造では、枠体の縁部の一部がガラス板の内面に形成された加飾層に直接に接触しているため、枠体の縁部との接触部で加飾層に熱応力が集中しやすい。その結果、加飾部の前記縁部と接触している部分に亀裂が発生し、さらに加飾部のうちの枠体の縁部からはみ出している部分がガラス板から剥離するなどの問題が発生するおそれがある。
【0006】
また、ガラス一体型成形品をインサート成型する工程では、ガラス板が2つの金型の間に挟まれるが、
図14に示す構造では、加飾層の一部が金型で直接に加圧されるため、型締めの際、加飾層が損傷を受けやすくなる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、パネル本体に形成された加飾層に、型締めによる傷つきが発生しにくく、また完成後には、加飾層に熱応力に起因する亀裂や剥離が生じにくい表示装置用筐体および表示装置用筐体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示用の開口部を有するフレームと、前記開口部に固定された表面パネルと、を有する表示装置用筐体において、
前記表面パネルは、透明材料で形成されたパネル本体と、前記パネル本体の周囲領域の筐体内方に向く内面に密着する有色の加飾層と、前記加飾層の内面に重ねられた接着機能樹脂層と、を有し、
前記フレームは、前記表面パネルに密着して硬化した合成樹脂材料で形成されて、前記表面パネルの端面に密着する端面密着面と、前記表面パネルの周囲領域の内面に密着する内面密着面と、を有しており、
前記内面密着面の前記表面パネル中央に向く密着エッジ部が、前記加飾層および前記接着機能樹脂層の双方と重なる位置に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の表示装置用筐体は、前記接着機能樹脂層の前記表面パネル中央に向く樹脂エッジ部が、前記加飾層の前記表面パネル中央に向く加飾エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置にあり、前記密着エッジ部が、前記樹脂エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置にあるものとして構成される。
【0010】
本発明の表示装置用筐体は、前記フレームに、前記表示装置用筐体内方に向く内面支持部が設けられ、前記内面支持部が、前記内面密着面と、前記表面パネル中央に向く内端面を有しており、
前記内端面の前記表示装置用筐体内方に向く内端エッジ部が、前記密着エッジ部よりも前記端面に近い位置にあることが好ましい。
【0011】
たとえば、前記内端面には、前記密着エッジ部に連続する凹面が形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の表示装置用筐体は、前記フレームが、引張弾性率が100MPa以上で500MPa以下のエラストマーで形成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の表示装置用筐体は、前記フレームが、曲げ弾性率が200MPa以上で1000MPa以下のエラストマーで形成されることが好ましい。
【0014】
この場合、前記フレームにリアカバーが連結されて前記表示装置用筐体が構成されており、前記リアカバーは前記フレームよりも引張弾性率および曲げ弾性率が大きく、前記リアカバーの表面積が前記フレームの表面積よりも大きいものとして構成できる。
【0015】
さらに、本発明は、表示用の開口部を有するフレームと、前記開口部に固定された表面パネルと、を有する表示装置用筐体の製造方法において、
透明材料で形成されたパネル本体と、前記パネル本体の周囲領域の筐体内方に向く内面に密着する有色の加飾層と、前記加飾層の内面に重ねられた接着機能樹脂層と、を有する表面パネルを使用し、
前記表面パネルを金型内に固定して、合成樹脂材料によって、前記表面パネルの端面に密着する端面密着面と、前記表面パネルの周囲領域の内面に密着する内面密着面とを有する前記フレームを成型し、
前記内面密着面の前記表面パネル中央に向く密着エッジ部を、前記加飾層および前記接着機能樹脂層の双方と重なる位置に形成することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の表示装置用筐体の製造方法は、前記接着機能樹脂層の前記表面パネル中央に向く樹脂エッジ部を、前記加飾層の前記表面パネル中央に向く加飾エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置に形成し、前記密着エッジ部を、前記樹脂エッジ部と同じ位置かそれよりも前記端面に近い位置に形成するものである。
【0017】
本発明の表示装置用筐体の製造方法は、前記フレームに、前記内面密着面と、前記表面パネル中央に向く内端面を有して、前記表示装置用筐体内方に向く内面支持部を形成し、
前記内端面の前記表示装置用筐体内方に向く内端エッジ部を、前記密着エッジ部よりも前記端面に近い位置に形成することが好ましい。
【0018】
例えば、前記内端面に、前記密着エッジ部に連続する凹面を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表示装置用筐体は、フレームの一部である内面密着面の表面パネル中央に向く密着エッジ部が、パネル本体の内面に形成された加飾層および接着機能樹脂層の双方と重なる位置に形成されている。そのため、パネル本体とフレームとの線膨張係数の違いによる熱応力が作用したときに、接着機能樹脂層がクッション層として機能し、加飾層に直接にダメージを与えるのを抑制できる。
【0020】
本発明の表示装置用筐体の製造方法は、金型の内部で表面パネルを挟持するときに、表面パネルの内面を保持する金型の縁部が接着機能樹脂層に当たり、金型の縁部が加飾層に直接に接触しないため、金型の縁部による加圧力の集中によって加飾層に損傷が与えられるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の表示装置用筐体を含む表示装置の一例として車載用表示装置を示す半断面図、
【
図2】本発明の表示装置用筐体の実施形態を示す部分拡大断面図、
【
図3】本発明の表示装置用筐体の製造方法の実施形態を示す部分拡大断面図、
【
図4】(A)、(B)は、表示装置用筐体の変形例を示す部分拡大断面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の表示装置用筐体2を含む表示装置の一例として車載用表示装置1を示す半断面図である。車載用表示装置1は、Z1方向が前方でZ2方向が後方であり、Z1方向が自動車の車室内に向けられる表示方向である。X1-X2は横方向であり、X1方向が左方向でX2方向が右方向である。車載用表示装置1は、前方(Z1方向)の位置から後方(Z2方向)を見たときの正面形状が長方形であり、X1-X2方向は長辺方向である。
図1以下では、車載用表示装置1を、向かって左側部分のみの半断面図で示しているため、X1方向が表面パネルの左側の端面に向く方向であり、X2方向が表面パネルのパネル中央に向く方向である。Z2方向は筐体内方である。
【0023】
図1に示される車載用表示装置1は、表示装置用筐体2を有している。表示装置用筐体2は、フレーム10と、フレーム10の開口部11に固定された表面パネル20と、フレーム10の後方に連結されたリアカバー30とを有している。フレーム10は前方から見た正面形状が長方形で、開口部11も長方形である。したがって、この開口部11に固定される表面パネル20も長方形である。フレーム10と表面パネル20の各面は、Z2方向に向く面が内面であり、Z1方向に向く面が外面である。表示装置用筐体2の内部では、表面パネル20の内面20bに、光学接着剤を使用して表示セル3が接着されている。また、表面パネル20の内面20bと表示セル3との間、または表面パネル20の外面20aに、シート状のタッチセンサが貼られている。タッチセンサは人の指の接近や接触を検知する静電容量検知式センサである。表示装置用筐体2の内部に、合成樹脂製または軽金属製の支持基台4が固定されている。表示セル3はカラー液晶表示セルであり、支持基台4にバックライトユニット5が固定されている。なお、表示セル3は有機ELセルなどであってもよい。支持基台4には回路基板6,7が固定されている。また表示装置用筐体2の内部には、フレーム10とリアカバー30の接合部を内側から補強する補強部材8が設けられている。
【0024】
図2には、表示装置用筐体2のX1側の一部が拡大して示されている。表示装置用筐体2のフレーム10は合成樹脂材料で形成されている。フレーム10が形成された後の合成樹脂は引張弾性率(縦弾性率)および曲げ弾性率が比較的低いエラストマーである。表面パネル20は透明であり、フレーム10と表面パネル20は、いわゆるインサート成型法により一体に成形されている。リアカバー30は、フレーム10よりも縦弾性係数ならびに曲げ弾性率が高く剛性の高い硬質の合成樹脂材料で形成され、あるいは軽金属材料を用いてダイキャスト成型されている。フレーム10とリアカバー30は、互いに嵌合されて接着剤で固定され、あるいはねじ止めで固定されている。
【0025】
フレーム10は、引張弾性率(縦弾性率)が100MPa以上で500MPa以下、引張破断強さが5MPa以上で40MPa以下のエラストマーで形成されている。フレーム10を構成するエラストマーの曲げ弾性率は、200MPa以上で1000MPa以下が好ましく、さらには200MPa以上で500MPa以下が好ましい。フレーム10を構成する合成樹脂材料は、例えば東レ・デュポン株式会社製の熱可塑性ポリエステルエラストマー(製品名「ハイトレル」)が使用される。これは、ブチレンフタレートとポリ(アルキレンエーテル)フタレートとの共重合体であり、JISK7113(1995)で測定した引張弾性率(縦弾性率)が150MPa以上で310MPa以下、引張破断強さが10MPa以上で35MPa以下である。
【0026】
電子装置の筐体を成形する一般的な合成樹脂材料を比較例として挙げると、ABSは、引張弾性率が3000MPa程度、曲げ弾性率が3000MPa程度である。PMMAは、引張弾性率が3300MPa程度、曲げ弾性率が3300MPa程度である。POMは、引張弾性率が2300MPa程度、曲げ弾性率が2200MPa程度である。これら比較例と比較すると、本発明の実施形態のフレーム10は、弾性変形可能なきわめて柔軟な構造である。
【0027】
図2に示されるように、表面パネル20は、透明なガラス板であるパネル本体21と、パネル本体21の周囲領域の内面21aに密着する加飾層22と、加飾層22の内面に密着する接着機能樹脂層23を有している。加飾層22は、黒色などに着色された非透光性のスクリーンインキであり、パネル本体21の内面にスクリーン印刷で形成されている。接着機能樹脂層23はスクリーンインキであり、加飾層22の内面にスクリーン印刷で形成されている。インサート成型法による製造工程において、フレーム10を構成する溶融樹脂に接すると、溶融樹脂の熱で接着機能樹脂層23が溶融して融着可能なバインダーとして機能し、溶融樹脂が硬化すると、フレーム10と表面パネル20とが接着機能樹脂層23を介して互いに固着される。
【0028】
フレーム10に形成された開口部11の縁部には、表面パネル20のパネル中央に向けて張り出す内面支持部12が一体に形成されている。内面支持部12の外面は、表面パネル20の内面20bすなわち接着機能樹脂層23の内面に密着する内面密着面14となっている。フレーム10の開口部11の縁部は、表面パネル20の4辺の端面20cに密着する端面密着面13となっている。
【0029】
図2には、加飾層22の表面パネル中央(X2方向)に向く加飾エッジ部22aの横方向(X1-X2方向)での位置が(a)で示され、接着機能樹脂層23の表面パネル中央に向く樹脂エッジ部23aの横方向での位置が(b)で示されている。また、内面密着面14の表面パネル中央に向く密着エッジ部14aの位置が(c)で示されている。樹脂エッジ部23aは、横方向において、加飾エッジ部22aと同じ位置にあるか、または好ましくは、
図2に示されるように、加飾エッジ部22aよりも表面パネル20の端面20cに近い位置にある。密着エッジ部14aは、横方向において、樹脂エッジ部23aと同じ位置にあるか、または好ましくは、
図2に示されるように、樹脂エッジ部23aよりも表面パネル20の端面20cに近い位置にある。すなわち、内面密着面14の密着エッジ部14aは、加飾層22と接着機能樹脂層23の双方と重なる位置にある。
【0030】
フレーム10に形成された内面支持部12の表面パネル中央(X2方向)に向く内端面15は凹面となっている。すなわち内端面15の断面形状は、表面パネル20の端面20cに近づく方向(X1方向)に向けて窪む凹曲線である。その結果、内端面15の筐体内方(Z2方向)に向く内端エッジ部15aは、密着エッジ14aよりも、さらに表面パネル20の端面20cに近い位置となる。
【0031】
図2に示されるように、フレーム10の外面には、表面パネル20の外面20aと同一平面となって連続する枠平坦面18と、前後方向(Z1-Z2方向)に延びる側面17と、枠平坦面18と側面17とを繋ぐ突曲面16と、が形成されている。枠平坦面18は、横方向(X1-X2方向)に所定の幅Wとなるように形成されている。また、フレーム10の後方(Z2方向)の端部は、リアカバー30との連結部19となっている。
【0032】
図3に、フレーム10と表面パネル20とを、いわゆるインサート成型法で一体に成形する製造工程(製造方法)が示されている。インサート成型法では、第1金型40と第2金型50とが使用される。第1金型40には、表面パネル20の内面20bを挟持する挟持平面41と、挟持平面41に通じる吸着孔45が形成されている。第1金型40は、フレーム10の内面を成形する内面成形面42を有している。内面成形面42のZ1側には、フレーム10の内面支持部12の内端面15を成形するための突曲面43が設けられている。
図3では、挟持平面41と突曲面43との境界部に、加飾層22と接着機能樹脂層23の厚さ分に相当する段差部43aが形成されているかのように図示されている。ただし、実際は、パネル本体21を構成するガラス板の厚さ寸法に比べて、加飾層22と接着機能樹脂層23の厚さ寸法は微小であるため、第1金型40に段差部43aは形成されておらず、突曲面43と平面である挟持平面41は滑らかに連続している。
【0033】
第2金型50は、表面パネル20の外面20aを挟持する挟持平面51と、フレーム10の外面を成形する外面成形面52を有している。
図3に示されるように、パネル本体21を、吸着孔45を介してエアー吸着して挟持平面41に保持した状態で、第1金型40と第2金型50とを型締めする。型締め状態では、表面パネル20が金型内に挟持されて固定されるとともに、第1金型の内面成形面42と第2金型50の外面成形面52および表面パネル20の端面20cおよび内面20bの一部とで囲まれたキャビティ60が形成される。
【0034】
第1金型40と第2金型50を型締めした状態で、湯口からキャビティ60に、前記エラストマーとなる溶融樹脂を射出し、冷却して樹脂を硬化させ、フレーム10を成型する。金型から取り出した状態では、フレーム10は端面密着面13において表面パネル20の端面20cに密着し、内面密着面14において表面パネル20の内面20bの周囲領域に密着している。
【0035】
表示装置用筐体2では、フレーム10を形成している合成樹脂材料と、パネル本体21を構成しているガラス板との間に線膨張係数の差があり、車載用表示装置1の使用環境に大きな温度変化が生じると、フレーム10とパネル本体21との接合部に熱応力が作用する。しかし、
図2に示されるように、フレーム10の内面密着面14の表面パネル中央に向く密着エッジ部14aが、加飾層22と接着機能樹脂層23の双方と重なる位置に形成され、内面密着面14のほぼ全面が接着機能樹脂層23に密着し、内面密着面14と加飾層22とが直接に接触していない。そのため、前記熱応力が作用したときに、接着機能樹脂層23が干渉層として機能し、加飾層22に作用する熱応力を緩和することができる。仮に、密着エッジ部14aが加飾層22に直接に接触していると、熱応力により、密着エッジ部14aとの接触部分で加飾層22に亀裂などが生じ、加飾層22の一部がパネル本体21から剥離するなどの問題が生じる可能性があるが、前記表示装置用筐体2では、接着機能樹脂層23がクッション機能を発揮して干渉層として機能するため、加飾層22の損傷を防止しやすい。
【0036】
図2に示されるように、フレーム10の一部である内面支持部12の内端面15は、内端エッジ部15aが密着エッジ部14aよりも、表面パネル20の端面20cに近い側(X1側)に位置している。
図2に示す実施形態では、内端面15の断面形状が、X1側に向けて窪む凹部、すなわち凹曲線形状となっている。内端面15をこのような形状とすることで、密着エッジ部14aに作用する熱応力を低減でき、密着エッジ部14aの接合部分で熱応力が集中するのを防止でき、接着機能樹脂層23の干渉機能と相まって、加飾層22の損傷を抑制できるようになる。
【0037】
図4(A)、(B)には、内面支持部12の内端面15の変形例が示されている。
図4(A)に示される変形例は、内端面115の内端エッジ部115aが密着エッジ部14aよりもX1側に位置できるように、内端面115の断面形状が直線的な傾斜線となっている。
図4(B)に示される変形例は、内端面215の内端エッジ部215aが密着エッジ部14aよりもX1側に位置できるように、内端面215が階段状の形状となっている。
図2および
図4(A)、(B)に示される実施形態では、いずれも、内面支持部12のZ1-Z2方向の厚さ寸法Tに比較して、密着エッジ部14aにおける内面支持部12の同方向の厚さ寸法が小さくなっている。そのため、熱応力が内端面15,115,215の変形により吸収されやすくなり、密着エッジ部14aでの熱応力の集中を緩和できるようになっている。
【0038】
なお、接着機能樹脂層23の樹脂エッジ部23aの位置(b)が、加飾層22の加飾エッジ部22aの位置(a)と同じ位置か、それよりも端面20cに近いX1側に位置しているため、表面パネル20を前方から見たときに、接着機能樹脂層23が加飾層22に覆われ、接着機能樹脂層23が直接に目視されるのを防止することができる。
【0039】
フレーム10は、引張弾性率(縦弾性率)が100MPa以上で500MPa以下、引張破断強さが5MPa以上で40MPa以下、さらに曲げ弾性率が、200MPa以上で1000MPa以下のエラストマーで形成されている。そのため、フレーム10と表面パネル20との線膨張係数の差による熱応力が、フレーム10自体の弾性変形により吸収されやすい。よって、熱応力により表面パネル20に作用する応力が緩和され、表面パネル20の歪みも発生しにくい。また、車載用表示装置1として組み立てられるとき、また組立後にフレーム10に外力が作用しても、フレーム10の柔軟性により、表面パネル20に大きな応力が作用するのを抑制できる。
【0040】
図1に示されるように、表示装置用筐体2は、表面パネル20と固定されているフレーム10がエラストマーで形成され、フレーム10の後方に連結されているリアカバー30が、フレーム10のエラストマーよりも、引張弾性係数および曲げ弾性係数が大きい剛性の高い材料で形成されている。例えば、リアカバー30は、ABS樹脂により射出成型され、あるいは軽金属材料でダイキャスト成型されたものであり、リアカバー30は、引張弾性係数および曲げ弾性係数が、フレーム10の5倍以上であり、好ましくは8倍以上である。また、表示装置用筐体2では、リアカバーの表面積がフレーム10の表面積よりも大きくなっている。したがって、フレーム10にエラストマーは使用されていても、表示装置用筐体2の全体の剛性を高く維持することができる。
【0041】
図3に示される製造方法では、第1金型40に段差部43aが実際には存在していないため、フレーム10をインサート成型法で成形する際に、第1金型40の挟持平面41と突曲面43との境界部が、接着機能樹脂層23の内面に当たり、この境界部が加飾層22に直接に当たることがない。そのため、型締めの際に、加飾層22の一部に圧力が集中することがなく、成型時に加飾層22が損傷することも生じにくくなる。
【0042】
図2に示されるように、フレーム10の外面には、表面パネル20の外面20aと同一平面となって連続する幅寸法Wの枠平坦面18が形成され、枠平坦面18と側面17との間に突曲面16が形成されている。幅寸法Wの枠平坦面18を形成すると、
図3に示す型締め状態において、パネル本体21の外面のエッジ部21bが、第2金型50の外面成型面52の平面部に当たって曲面部に当たらないため、エッジ部21bによる金型の損傷が生じることがなく、パネル本体21のエッジ部21bの破損も防止できる。
【符号の説明】
【0043】
1 車載用表示装置
2 表示装置用
10 フレーム
11 開口部
12 内面支持部
13 端面密着面
14 内面密着面
14a 密着エッジ部
15 内端面
15a 内端エッジ部
20 表面パネル
20a 外面
20b 内面
20c 端面
21 パネル本体
22 加飾層
22a 加飾エッジ部
23 接着機能樹脂層
23a 樹脂エッジ部
30 リアカバー
40 第1金型
50 第2金型