IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社川本製作所の特許一覧

特開2024-31466プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法
<>
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図1
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図2
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図3
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図4
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図5
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図6
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図7
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図8
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図9
  • 特開-プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031466
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】プレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20240229BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F04D29/22 H
F04D15/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135034
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山下 英吾
(72)【発明者】
【氏名】大杉 洋人
(72)【発明者】
【氏名】森田 魁成
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝司
【テーマコード(参考)】
3H020
3H130
【Fターム(参考)】
3H020BA10
3H130AA20
3H130AB12
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB46
3H130AB69
3H130AC30
3H130BA95C
3H130CB05
3H130CB09
3H130CB19
3H130DD01Z
3H130EA01C
3H130EB01C
3H130EB02C
3H130ED01C
(57)【要約】
【課題】部品の兼用化が可能なプレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法を提供すること。
【解決手段】プレスインペラは、基部、前記基部の一方の主面に形成された挿入部、及び、前記基部に周方向に等間隔に形成されたバランスホールを有するインペラハブと、前記挿入部が挿入される第1開口、及び、前記第1開口の周囲に、周方向に等間隔に複数設けられ、前記バランスホールと対向する第2開口が形成された主板と、前記主板と対向して設けられる側板と、前記主板及び前記側板の間に配置される複数の羽根と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部、前記基部の一方の主面に形成された挿入部、及び、前記基部に周方向に等間隔に形成されたバランスホールを有するインペラハブと、
前記挿入部が挿入される第1開口、及び、前記第1開口の周囲に、周方向に等間隔に複数設けられ、前記バランスホールと対向する第2開口が形成された主板と、
前記主板と対向して設けられる側板と、
前記主板及び前記側板の間に配置される複数の羽根と、
を備えるプレスインペラ。
【請求項2】
前記バランスホールは、径方向で前記側板に形成される吸込口の内側に配置される、請求項1に記載のプレスインペラ。
【請求項3】
前記第2開口は、隣り合う羽根の間に設けられる、請求項2に記載のプレスインペラ。
【請求項4】
前記基部の外径は、前記吸込口の口径よりも大径に形成される、請求項3に記載のプレスインペラ。
【請求項5】
前記主板及び前記側板の少なくとも一方は、外周縁に形成された切欠を有する、請求項1に記載のプレスインペラ。
【請求項6】
ポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングに収容される請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のプレスインペラと、
前記プレスインペラに接続される回転軸と、
を備えるポンプ装置。
【請求項7】
主板の第1開口にインペラハブの挿入部を、前記インペラハブに形成された複数のバランスホールを、前記主板の前記第1開口の周囲に形成された複数の第2開口と対向させるか又はずらして挿入し、
前記主板及び前記インペラハブを溶接する、
プレスインペラの製造方法。
【請求項8】
主板の第1開口にインペラハブの挿入部を挿入し、
前記主板及び前記インペラハブを溶接し、
前記インペラハブの前記主板の前記第1開口の周囲に形成された複数の第2開口と対向する部位に複数のバランスホールを加工する、プレスインペラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工した部材を溶接することで形成されるプレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、インペラとして、鋼板をプレス加工し、主板及び側板の間に複数の羽根を配置して、主板、側板及び複数の羽根をレーザ溶接することで製造する、所謂プレスインペラが知られている
また、ポンプのスラスト荷重低減のために、インペラにバランスホールを設ける技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、インペラの主板の外形状を星形にし、スラスト荷重がかかる面積を低減させるとともに、バランスホールを主板に設ける技術や、ボスに複数のキー溝を設け、いずれか一つをキー溝として用い、他をバランスホールとして用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6948198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術では、以下の問題がある。例えば、バランスホールを主板に設ける構成とすると、バランスホールを設けないインペラと、バランスホールを設けるインペラで、主板を兼用することができないことから、部品管理数が増加する。また、バランスホールをプレス加工で設けずに、キリ穴加工で設けることも考えられるが、キリ穴加工において、主板に変形が生じることがあり、生産性がダウンする。キリ穴加工において、主板の変形を抑制するために、主板の板厚を増加させることも考えられるが、材料の使用量の増加、インペラ重量の増加、溶接出力の増加等の要因となり、生産性が低下するとともに、製造設備が制限される問題もある。また、キリ穴加工において、主板に変形が生じると、主板とインペラハブの間に隙間が生じ、異物混入による摩耗の懸念もある。
【0005】
また、例えば、インペラハブであるボスに複数のキー溝を設ける構成とすると、溶接強度等のボス強度と性能面を両立させることが難しく、設計の自由度が低下する、という問題がある。ボス強度を増加させるためには、ボスサイズの向上や溶接表面積の向上が必要であるが、羽根をボスに干渉させないように設計する必要がある。性能面を考慮して、羽根のかかりを増やすために、羽根入口径を小さくすると、ボスとの干渉が発生するため、ボスサイズの向上等には限度が有る。
【0006】
そこで、本発明は、部品の兼用化が可能なプレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るプレスインペラは、基部、前記基部の一方の主面に形成された挿入部、及び、前記基部に周方向に等間隔に形成されたバランスホールを有するインペラハブと、前記挿入部が挿入される第1開口、及び、前記第1開口の周囲に、周方向に等間隔に複数設けられ、前記バランスホールと対向する第2開口が形成された主板と、前記主板と対向して設けられる側板と、前記主板及び前記側板の間に配置される複数の羽根と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品の兼用化が可能なプレスインペラ、ポンプ装置及びプレスインペラの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の構成を一部断面で示す側面図。
図2】同ポンプ装置に用いられるインペラの構成を側板側から示す斜視図。
図3】同インペラの構成を主板側から示す斜視図。
図4】同インペラの構成を側板側から示す平面図。
図5】同インペラの構成を示す断面図。
図6】同インペラであって、第3中間成形品の構成を側板側から示す平面図。
図7】同インペラの主板の構成を示す平面図。
図8】同インペラのインペラハブの構成を示す斜視図。
図9】同インペラの製造方法の一例を示す流れ図。
図10】同インペラであって、第3中間成形品のバランスホールを有する構成及びバランスホールを有さない構成の例を並べて示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るポンプ装置1及びインペラ33の構成について、図1乃至図10を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置1の構成を一部断面で示す側面図であり、図2は、ポンプ装置1に用いられるインペラ33の構成を側板42側から示す斜視図であり、図3は、インペラ33の構成を主板41側から示す斜視図である。図4は、インペラ33の構成を側板42側から示す平面図であり、図5は、インペラ33の構成を示す断面図である。図6は、インペラ33であって、第3中間成形品の構成を側板42側から示す平面図である。図7は、インペラ33の主板41の構成を示す平面図であり、図8は、インペラ33のインペラハブ44の構成を示す斜視図である。図9は、インペラ33の製造方法の一例を示す流れ図であり、図10は、インペラ33であって、第3中間成形品のバランスホール51aを有する構成及びバランスホール51aを有さない構成の例を並べて示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、ポンプ装置1は、例えば、モータ11と、ポンプ12と、軸継手13と、軸カバー14と、を備える。ポンプ装置1は、例えば、モータ11及びポンプ12を固定するベース15を備える。図1に示す例では、ポンプ装置1は、横軸ポンプであるが、縦軸ポンプであっても良い。
【0012】
モータ11は、モータケーシング21と、モータケーシング21に収容される固定子と、固定子により回転する回転子と、回転子に固定されるモータ軸22と、を備える。モータ11は、ポンプ12に接続され、モータ軸22が回転することで、ポンプ12を駆動する。モータケーシング21は、ベース15に固定される。モータ軸22は、軸継手13を介してポンプ12に接続される。
【0013】
ポンプ12は、ポンプケーシング31と、ケーシングカバー32と、インペラ33と、回転軸34と、を備える。また、ポンプ12は、1つ又は2つのライナリング35と、メカニカルシール等の軸封部材36と、を備える。ポンプ12は、軸継手13を介して回転軸34がモータ軸22に接続される。ポンプ12は、インペラ33を単数有する単段ポンプであってもよく、また、インペラ33を複数有する多段ポンプであってもよい。
【0014】
ポンプケーシング31は、例えば、ベース15に固定される。ポンプケーシング31は、吸込口31a及び吐出口31bを有する。また、ポンプケーシング31は、インペラ33を収容する。ポンプケーシング31は、軸方向で一端側に吸込口31aを有し、軸方向で他端側がインペラ33を挿入可能な開口31cが形成される。また、ポンプケーシング31の周面、例えば、上端には、吐出口31bが形成されるとともに、下端に、ベース15に固定する脚部31dが形成される。
【0015】
ケーシングカバー32は、ポンプケーシング31の開口31cを覆う。ケーシングカバー32は、回転軸34を挿入可能、且つ、軸封装置を取り付け可能に形成される。
【0016】
図2及び図3に示すように、インペラ33は、主板41と、側板42と、複数の羽根43と、インペラハブ44と、を備える。インペラ33は、金属材料をプレス加工することで形成された主板41、側板42、複数の羽根43及びインペラハブ44をレーザ溶接により一体に組みたてられた、所謂プレスインペラである。
【0017】
主板41は、1枚又は複数枚設けられる。例えば、図2及び図3の例においては、主板41が1枚用いられる例を示す。主板41は、平板状、且つ、円板状に形成される。主板41は、中央に形成され、インペラハブ44が配置される開口41aを有する。また、主板41は、複数の羽根43を配置する複数の溝や孔を有する構成であってもよい。
【0018】
開口41aは、インペラハブ44が配置される円形状の第1開口41bと、第1開口41bの周囲に設けられ、周方向に等間隔に配置される複数の第2開口41cと、を含む。開口41aは、主板41のプレス加工時に形成される。
【0019】
複数の第2開口41cは、羽根43の枚数と同数設けられる。複数の第2開口41cは、例えば、第1開口41bと連続して形成され、主板41の径方向に延びる。換言すると、開口41aは、第1開口41b及び複数の第2開口41cにより、スプライン形状に形成される。
【0020】
第2開口41cは、例えば、主板41の径方向に直交する幅が、第1開口41bと連続する端部から径方向外方の端部側まで一定に形成されるとともに、径方向外方の端部において漸次小さくなる。例えば、第2開口41cの径方向外方の端部は、半円状、三角形状等に形成される。第2開口41cの開口面積は、インペラハブ44の後述するバランスホール51aを配置可能に、バランスホール51aの開口面積よりも大きく設定される。また、第2開口41cの主板41の周方向における幅は、バランスホール51aの直径、即ち、バランスホール51aのインペラハブ44の周方向における幅よりも大きく設定される。また、第2開口41cは、周方向において、隣り合う二枚の羽根43の間に配置される。
【0021】
側板42は、円板状に形成される。側板42は、中央に形成された吸込口42aを有する。側板42は、複数の羽根43を配置する複数の溝や孔を有する構成であってもよい。円板状に形成される側板42は、外周縁から径方向内方の中途部まで平板状に形成される平板部42bと、平板部42b及び吸込口42aを連続する、平板部42bに対して直線状に傾斜する傾斜部42cと、を備える。
【0022】
吸込口42aの内径(口径、入口径)は、主板41の開口41aの内径よりも大径に形成される。また、例えば、吸込口42aの内径は、インペラハブ44の複数のバランスホール51aのインペラ33の径方向における端部を通る仮想円の径よりも大径に形成される。換言すると、吸込口42aは、吸込口42aの開口にバランスホール51aが対向する形状に形成される。さらに換言すると、バランスホール51aは、インペラ33の径方向で吸込口42aよりも内側に配置される。
【0023】
平板部42bは、環状に形成される。傾斜部42cは、環状に形成され、平板部42b及び吸込口42aと一体に形成される。例えば、側板42は、平板部42b及び傾斜部42cを一枚の平板からプレス加工することで形成される。なお、吸込口42aは、平板部42b及び傾斜部42cとともに、一枚の平板からプレス加工を行っても良く、また、平板部42b及び傾斜部42cとは別に成形し、その後、傾斜部42cの中央に溶接により固定される構成であってもよい。
【0024】
主板41及び側板42の対向方向における幅(羽根43の高さ)は、中心側から外周縁に向かって、傾斜部42cの傾斜方向に沿って漸次小さくなり、そして、平板部42bにおいて一定となる。即ち、主板41及び側板42の対向方向における幅は、インペラ33の隣り合う羽根43間に形成される流路の入口(インペラ33の中心側の開口)から出口(インペラ33の外周縁側の開口)に向かって漸次小さくなり、そして、傾斜部42c及び平板部42bの稜部(以下、側板絞り始点部42d)で最も小さくなり、その後、平板部42bにおいて、一定となる。
【0025】
複数の羽根43は、例えば、周方向に等間隔に配置される。羽根43は、レーザ溶接等の溶接によって、主板41及び側板42に固定される。例えば、主板41及び複数の羽根43、並びに、側板42及び複数の羽根43は、主板41及び側板42のそれぞれ外主面側から溶接される。羽根43は、例えば、厚さが一定に形成され、一以上の曲率中心を有する所定の曲率半径で湾曲する。複数の羽根43は、軸方向(主板41及び側板42の対向方向)に沿って延びる所謂二次元形状であってもよく、また、軸方向に対して傾斜する所謂三次元形状であってもよい。
【0026】
羽根43の主板41側の端面は、例えば、主板41の主面に沿った方向(軸方向に直交する方向)に延びる。また、羽根43の側板42側の端面は、平板部42bと対向する部位において、主板41の主面に沿った方向(軸方向に直交する方向)に延び、側板絞り始点部42dから吸込口42aに向かって、即ち傾斜部42cと対向する部位において、傾斜部42cと同じ傾斜角度θで軸方向に対して傾斜して延びる。
【0027】
羽根43のインペラ33の中央側の端部は、吸込口42aと略同じ位置か、又は、吸込口42aの内周面よりも若干中央側に配置される。換言すると、複数の羽根43のインペラ33の中央側の端部を通る仮想円の径は、例えば、吸込口42aと同じか、又は、若干小径に設定される。
【0028】
また、羽根43のインペラ33の外周縁側の端部は、主板41及び側板42の外周縁と同じか、又は、主板41及び側板42の外周縁よりも若干インペラ33の中央側に配置される。換言すると、複数の羽根43のインペラ33の外周縁側の端部を通る仮想円の径は、主板41及び側板42の外径と同じか、又は、若干小径に設定される。
【0029】
なお、主板41及び側板42は、主板41を成形するためにプレス加工した主板プレス品41A及び側板42を成形するためにプレス加工した側板プレス品42Aよりも小径に形成される。即ち、主板41及び側板42は、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの外周縁を切削加工することで形成される。
【0030】
主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの具体例について、以下説明する。
【0031】
図6及び図10に示すように、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aは、複数の羽根43の主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの外周縁側の端部を通る仮想円の径よりも大径に形成される。主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの少なくとも一方は、外周縁に形成された、例えば半円状の切欠45を複数有する。本実施形態においては、図6に示すように、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの双方に切欠45が形成される例を示す。
【0032】
主板プレス品41Aに形成される切欠45及び側板プレス品42Aに形成される切欠45は、例えば、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aに同数形成され、軸方向で対向して配置される。また、切欠45のインペラ33の径方向で中央側の端部を通る仮想円の径は、例えば、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aを切削加工した後のインペラ33の外径よりも大径に形成される。主板プレス品41Aに形成される切欠45及び側板プレス品42Aに形成される切欠45は、例えば、それぞれ二つずつ設けられる。
【0033】
主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの各二つの切欠45は、例えば、図6に示すように、それぞれ異なる形状に形成され、対称位置を避けた位置に配置される。なお、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの各二つの切欠45の構成は、これに限定されず、それぞれ異なる形状に形成され、対称位置に配置される構成でもよく、同形状に形成され、対称位置を避けた位置に配置される構成でもよい。即ち、切欠45の数、形状及び配置は、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aを型等に配置したときに、表裏及び周方向の位置が所定の位置に案内できる構成であれば、適宜設定できる。
【0034】
このような主板プレス品41A及び側板プレス品42Aは、主板41及び側板42と、外径寸法が異なり、そして、切欠45を有する構成が異なるが、その他の構成は同一構成である。
【0035】
インペラハブ44は、外径が部分的に異なる円筒状に形成され、主板41の中心に設けられる。インペラハブ44は、レーザ溶接等の溶接によって、主板41に固定される。図8に示すように、インペラハブ44は、例えば、基部51と、基部51の一方の主面側の中央に形成された挿入部52と、挿入部52の中央に形成されたボス部53と、基部の他方の主面側に形成された筒部54と、を備える。
【0036】
基部51は、円板状に形成される。基部51の外径は、挿入部52、ボス部53及び筒部54の外径よりも大径に形成される。また、基部51の外径は、主板41の外径よりも小径であって、且つ、主板41の第1開口41bの内径、及び、複数の第2開口41cの径方向外方の端部を通る仮想円の径よりも大径に形成される。また、基部51の外径は、側板42の吸込口42aの口径よりも大径に形成される。
【0037】
基部51は、挿入部52よりも径方向で外径側に形成された、周方向に等間隔に並んだ複数のバランスホール51aを有する。複数のバランスホール51aは、インペラハブ44が主板41に固定されたときに、主板41の第2開口41cと対向可能な位置に形成される。なお、複数のバランスホール51aは、インペラハブ44の成形加工時に形成してもよく、また、主板41、側板42、羽根43及びインペラハブ44を一体に溶接した後に形成してもよい。バランスホール51aは、羽根43と同数設けられる。また、例えば、バランスホール51aは、第2開口41cに対向配置されたときに、隣り合う二枚の羽根43の間に配置される。
【0038】
挿入部52は、円柱状に形成される。挿入部52は、主板41の第1開口41bに挿入可能に形成される。挿入部52の外径は、第1開口41bの内径と同一径か、若干小径に形成され、好ましくは、第1開口41bに嵌め合い公差を有する。
【0039】
ボス部53は、円筒状に形成される。ボス部53の外径は、挿入部52の外径よりも小径に形成される。ボス部53は、求められる強度等に応じて、主板41の側板42と対向する主面から突出するか、又は、主板41の両主面から突出する。ボス部53は、回転軸34を挿入する孔部53aと、孔部53aの内周面の一部に形成されたキー溝53bと、を有する。なお、ボス部53は、円筒状の例を説明したが、これに限定されず、ボス部53は、挿入部52側から先端に向かって外径が漸次縮径する形状、例えば、円錐台形筒状等に形成されていてもよい。
【0040】
筒部54は、基部51から軸方向に延びる円筒状に形成される。筒部54の外径は、基部51の外径と同じか、又は、小径に形成される。また、筒部54の内径は、複数のバランスホール51aのインペラハブ44の径方向で端部を通る仮想円の径、及び、ボス部53の外径よりも大径に形成される。即ち、筒部54は、複数のバランスホール51aと径方向で離間する。
【0041】
回転軸34は、一端側にインペラ33を固定する。回転軸34は、ケーシングカバー32から外部へと配置され、他端側に軸継手13が設けられる。
【0042】
ライナリング35は、ポンプケーシング31及び/又はケーシングカバー32とインペラ33との間に設けられる。具体例として、ライナリング35は、ポンプケーシング31及びケーシングカバー32のそれぞれに固定される。ポンプケーシング31に固定されたライナリング35は、インペラ33の吸込口42aと所定の隙間を空けて対向する。ケーシングカバー32に固定されたライナリング35は、インペラ33の筒部54と所定の隙間を空けて対向する。
【0043】
メカニカルシール36は、回転軸34とケーシングカバー32との間を軸封する。
【0044】
軸継手13は、モータ軸22及び回転軸34を接続する。
【0045】
軸カバー14は、モータ軸22、回転軸34及び軸継手13を覆う。例えば、軸カバー14は、ポンプケーシング31及びベース15に固定される第1カバー61と、ベース15に固定される第2カバー62と、を備える。第1カバー61は、例えば、複数の軸受け部材61aを有し、回転軸34を回転可能に支持する。第1カバー61は、例えば、メカニカルシール36からの水の漏洩を確認可能に、一部が開口する。第2カバー62は、回転軸34の一部及びモータ軸22の一部及び軸継手13を覆う。
【0046】
ベース15は、ポンプ装置1の設置個所に固定される。ベース15は、ネジ穴を複数有し、モータ11、ポンプ12及び軸カバー14をボルト等の締結部材によって固定可能に形成される。
【0047】
次に、インペラ33の製造方法の一例を、図9に示す流れ図を用いて説明する。先ず、金属板からプレス型及びプレス機を用いて、プレス加工を行うことで、主板プレス品41A、側板プレス品42A及び複数の羽根43がそれぞれ成形される(ステップST1)。次に、溶接用の取り付け型に側板プレス品42Aを配置し、羽根43を側板プレス品42Aに配置する(ステップST2)。このとき、側板プレス品42Aは、例えば、取り付け型の突起と切欠45とを係合させることで、位置合わせが行われる。次に、側板42に複数の羽根43を溶接し、第1中間成形品を形成する(ステップST3)。
【0048】
次に、第1中間成形品を取り付け型に配置することで複数の羽根43及び主板41を配置する(ステップST4)。このとき、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aは、例えば、取り付け型の突起と切欠45とを係合させることで、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの周方向の位置合わせが行われる。次に、第1中間成形品の複数の羽根43及び主板41を溶接し、第2中間成形品を形成する(ステップST5)。
【0049】
次に、第2中間成形品の主板プレス品41Aの第1開口41bにインペラハブ44の挿入部52を挿入し、主板プレス品41Aにインペラハブ44を配置する(ステップST6)。
【0050】
ステップST6において、インペラ
、第2開口41cと対向させるか否かを決し、インペラハブ44の周方向の位置を調整する。
【0051】
即ち、インペラハブ44に複数のバランスホール51aが形成されている場合であって、インペラ33がバランスホール51aを有する構成である場合には、図10の(バランスホール有)に示すように、インペラハブ44は、バランスホール51aが主板プレス品41Aの第2開口41cと対向する位置に配置される。インペラハブ44に複数のバランスホール51aが形成されている場合であって、インペラ33がバランスホール51aを有さない構成である場合には、図10の(バランスホール無)に示すように、インペラハブ44は、バランスホール51aが主板プレス品41Aの第2開口41cを避けて、主板プレス品41Aの主面と対向する位置に配置される。
【0052】
なお、インペラハブ44に複数のバランスホール51aが形成されていない場合には、インペラハブ44の周方向の位置は調整しなくてもよい。
【0053】
次に、第2中間成形品とインペラハブ44を溶接することで、第3中間成形品を形成する(ステップST7)。このとき、主板プレス品41Aの側板プレス品42Aと対向する主面とは反対側の主面と、インペラハブ44の基部51の外周縁とを溶接する。
【0054】
次に、第3中間成形品の外周縁を所定の半径に切削することで、インペラ33が形成される(ステップST8)。なお、インペラハブ44に複数のバランスホール51aが形成されていない場合であって、且つ、インペラ33がバランスホール51aを有する場合には、さらに、インペラハブ44の基部51であって、第2開口41cと対向する位置に、バランスホール51aをキリ穴加工等により形成する。
【0055】
なお、溶接は、オペレータによる手作業により行う構成であってもよく、また、プログラムによって溶接機により自動的に行う構成であってもよい。
【0056】
このように構成されたインペラ33及びポンプ装置1によれば、バランスホール51aを有するインペラ33とする場合には、主板41に形成されたスプライン形状の開口41aの第2開口41cに対向する位置のインペラハブ44にキリ穴加工等でバランスホール51aを形成するか、又は、バランスホール51aが形成されたインペラハブ44を、第2開口41cにバランスホール51aを対向させた状態で主板41(主板プレス品41A)に溶接することでインペラ33が形成される。また、バランスホール51aを有さないインペラ33とする場合には、インペラハブ44にバランスホール51aを形成しないか、又は、バランスホール51aが形成されたインペラハブ44を第2開口41cに対向せず、周方向で第2開口41cからずれた位置に配置して、インペラハブ44を主板41に溶接することでインペラ33が形成される。
【0057】
このように、インペラ33は、インペラハブ44にバランスホール51aを追加工による形成の有無、又は、バランスホール51aが形成されたインペラハブ44の周方向の位置により、インペラ33の製造工程において、選択的にバランスホール51aの有無を変更可能となる。これにより、インペラ33は、バランスホール51aの有無に関わらず、部品の兼用化が可能となる。
【0058】
また、バランスホール51aをキリ穴加工により形成する場合には、バランスホール51aは、インペラハブ44に形成されることから、主板41の変形や隙間などが生じることが無く、ポンプ性能の低下やインペラ33の強度低下を防止できる。
【0059】
また、バランスホール51aの有無は、インペラハブ44の追加工か、又は、インペラハブ44の周方向の位置合わせで変更可能であることから、インペラ33を容易に製造可能となるとともに、主板41の兼用化が可能となり、インペラ33の各構成部品は、バランスホールの有無によらず、使用することができる。よって、インペラ33は、種々の製品への対応が容易に可能となる。
【0060】
また、各種インペラハブ44への対応や羽根43の入口径を小さくできる等、インペラハブ44にバランスホール51aを設けることで、インペラ33の強度面及び性能面の両立が可能となる。
【0061】
また、インペラハブ44にバランスホール51aを設ける構成であることから、各種外径のインペラ33においても、スラスト荷重を低減することが可能となることから、各種構成部品の兼用化が可能となる。
【0062】
また、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aに、位置決め用の切欠45を設けることで、インペラ33の製造において、位置決めが容易となり、生産性を向上することが可能となる。
【0063】
また、インペラハブ44の製造時にバランスホール51aを形成する構成とすれば、キリ穴加工の追加孔が不要となることから、インペラ33の加工時間の短縮や、周方向の位置によって、バランスホール51aの有無を選択できることから、インペラハブの管理品番数の削減等の効果も生じる。
【0064】
上述したように本実施形態に係るインペラ33及びインペラ33を用いたポンプ装置1によれば、インペラハブ44にバランスホール51aを設け、主板41(主板プレス品41A)にバランスホール51aと選択的に対向できる第2開口41cを設けることで、部品の兼用化が可能となる。
【0065】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの外周縁に位置決め用の切欠45を有する構成を説明し、そして、インペラ33の製造時に、切欠45を含む主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの外周部を切削する構成を説明した。
【0066】
しかしながら、切欠45は、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの一方に設ける構成であってもよく、また、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aに設けない構成であってもよい。但し、インペラ33の製造において、位置合わせを容易とするために設けることが好ましい。また、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aの位置合わせであれば、切欠45に変えて、型及び主板プレス品41A及び側板プレス品42Aに位置合わせ用のマークを設ける構成としてもよい。また、主板プレス品41A及び側板プレス品42Aは、外周部を切削せずに、主板41及び側板42として用いる構成としても良い。この場合には、切欠45は、インペラ33の性能に影響を及ぼさない形状や大きさとするか、又は、切欠45を設けずに位置合わせ用のマークを設ける構成とすればよい。
【0067】
また、上述した例では、主板41(主板プレス品41A)に形成される開口41aは、第1開口41b及び第1開口41bに連通する複数の第2開口41cを有するスプライン形状の例を説明したがこれに限定されない。即ち、主板41に形成される開口41aは、インペラハブ44の挿入部52を挿入可能な第1開口41b及びインペラハブ44のバランスホール51aを選択的に加工又は対向配置な第2開口41cを有する構成であれば、スプライン形状に限定されず、また、第1開口41b及び第2開口41cは連続せず、離間する構成であってもよい。
【0068】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0069】
1…ポンプ装置、11…モータ、12…ポンプ、13…軸継手、14…軸カバー、15…ベース、21…モータケーシング、22…モータ軸、31…ポンプケーシング、31a…吸込口、31b…吐出口、31c…開口、31d…脚部、32…ケーシングカバー、33…インペラ、34…回転軸、35…ライナリング、36…軸封部材、41…主板、41A…主板プレス品、41a…開口、41b…第1開口、41c…第2開口、42…側板、42A…側板プレス品、42a…吸込口、42b…平板部、42c…傾斜部、42d…側板絞り始点部、43…羽根、44…インペラハブ、45…切欠、51…基部、51a…バランスホール、52…挿入部、53…ボス部、53a…孔部、53b…キー溝、54…筒部、61…第1カバー、61a…軸受け部材、62…第2カバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10