(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031471
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車載通信システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/28 20060101AFI20240229BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240229BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240229BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20240229BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01Q1/22 C
H01Q21/24
H01Q1/22 A
H04B7/0413
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135041
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】523220503
【氏名又は名称】セントラル硝子プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平林 幹也
(72)【発明者】
【氏名】奥井 隆雄
【テーマコード(参考)】
5J021
5J047
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA04
5J021AA13
5J021AB02
5J021AB03
5J021HA06
5J021HA10
5J021JA02
5J021JA05
5J047AA02
5J047AB01
5J047AB07
5J047AB17
5J047EA01
5J047EC00
(57)【要約】
【課題】非常事態でも通信が可能な車載通信システムを提供する。
【解決手段】車両に搭載される車載通信システムであって、車載通信機と、前記車載通信機と接続される第1アンテナ及び第2アンテナとを含む複数のアンテナとを備え、前記第1アンテナは、前記車両のインスツルメントパネルの内部又は前記インスツルメントパネルの上に設けられ、前記第2アンテナは、前記車両の前面窓ガラスに設けられ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、複数のアンテナで電波を送受信するMIMOを構成しており、410MHz~7GHzの周波数において、前記第1アンテナと前記第2アンテナの相関係数は0.3以下であることを特徴とする車載通信システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載通信システムであって、
車載通信機と、
前記車載通信機と接続される第1アンテナ及び第2アンテナとを含む複数のアンテナとを備え、
前記第1アンテナは、前記車両のインスツルメントパネルの内部又は前記インスツルメントパネルの上に設けられ、
前記第2アンテナは、前記車両の前面窓ガラスに設けられ、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、複数のアンテナで電波を送受信するMIMOを構成しており、
410MHz~7GHzの周波数において、前記第1アンテナと前記第2アンテナの相関係数は0.3以下であることを特徴とする車載通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記第2アンテナは、前記前面窓ガラスの上辺側に設けられることを特徴とする車載通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車載通信システムであって、
前記第2アンテナは、前記前面窓ガラスの上辺から120mm以内に設けられることを特徴とする車載通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の車載通信システムであって、
前記第2アンテナは、前記前面窓ガラスの上辺から、前記前面窓ガラスの上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられることを特徴とする車載通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機は、
前記インスツルメントパネルの内部に設けられ、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナで送受信される電波を処理する無線回路を有することを特徴とする車載通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記第2アンテナは、使用周波数帯において、車両に搭載されない状態で水平偏波と垂直偏波で測定したアンテナ感度を合成した平均値が-5dBi以上であることを特徴とする車載通信システム。
【請求項7】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記第2アンテナは、410MHz~7GHzの間の複数の使用周波数帯で電波を送信又は受信するアンテナであることを特徴とする車載通信システム。
【請求項8】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記第1アンテナは、前記車載通信機の近傍に設けられる、又は前記車載通信機と一体に構成されることを特徴とする車載通信システム。
【請求項9】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、二つのアンテナによって電波を送信又は受信する2×2MIMOを構成することを特徴とする車載通信システム。
【請求項10】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機と接続される第3アンテナ及び第4アンテナをさらに備え、
前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナは、四つのアンテナによって電波を送受信する4×4MIMOを構成することを特徴とする車載通信システム。
【請求項11】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機と接続され、前記車両の後面窓ガラスに設けられる第3アンテナをさらに備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項12】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機と接続され、前記前面窓ガラスに設けられる第4アンテナをさらに備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項13】
請求項1に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機は、
エアバックの作動に伴って出力される信号を前記車両に搭載された電子制御装置から受信し、
一つ又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信することを特徴とする車載通信システム。
【請求項14】
請求項13に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機は、
前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、
前記確認信号が所定時間検出できない場合、一又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信することを特徴とする車載通信システム。
【請求項15】
請求項13に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機は、
前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、
前記確認信号が所定時間検出できない場合、前記第2アンテナが設けられた前記前面窓ガラスが前記車両の事故によって破損したかを判定し、
前記前面窓ガラスが前記車両の事故によって破損した場合、一又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信することを特徴とする車載通信システム。
【請求項16】
請求項13に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機は、
前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、
前記確認信号が所定時間検出できず、かつ、前記電子制御装置の動作を確認できない場合、前記車両の事故に起因して前記前面窓ガラスが破損したと判定し、一又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信することを特徴とする車載通信システム。
【請求項17】
請求項13に記載の車載通信システムであって、
前記車載通信機は、
前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、
前記確認信号が所定時間検出できない場合、前記車両に事故が発生しているかを乗員に問い合わせることを特徴とする車載通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載通信システムに関し、特に、複数のアンテナを有する車載通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話システムでは、空間的に離間した場所に設置したアンテナを用いたMIMO(Multi Input Multi Output)が採用されている。このため、車載通信システムでは、車内外の境界となるガラス窓や、車体の屋根上に複数のアンテナが設置される。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(国際公開2017/7025号)には、車両の無線通信に用いられる車載アンテナであって、水平偏波アンテナと、水平偏波アンテナから所定距離離間された垂直偏波アンテナとを含み、前記車載アンテナは、前記水平偏波アンテナと前記垂直偏波アンテナとを用いて受信した複数の信号から、偏波技術を用いて同時に送信された複数の信号を取得する車載アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2017/7025号
【特許文献2】国際公開2022/163447号
【特許文献3】国際公開2019/151407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、車両に緊急通報システムを搭載する要求がある。例えば、5G携帯電話システムでは4本のアンテナでMIMOを構成して信号を送受信するが、エアバックが展開する事故が生じても、緊急通報システムによる通信を可能とする必要がある。
【0006】
本開示は、非常事態でも通信が可能な車載通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本開示(1)は、車両に搭載される車載通信システムであって、車載通信機と、前記車載通信機と接続される第1アンテナ及び第2アンテナとを含む複数のアンテナとを備え、前記第1アンテナは、前記車両のインスツルメントパネルの内部又は前記インスツルメントパネルの上に設けられ、前記第2アンテナは、前記車両の前面窓ガラスに設けられ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、複数のアンテナで電波を送受信するMIMOを構成しており、410MHz~7GHzの周波数において、前記第1アンテナと前記第2アンテナの相関係数は0.3以下であることを特徴とする車載通信システムである。
【0008】
また、本開示(2)は、本開示(1)に記載の車載通信システムであって、前記第2アンテナは、前記前面窓ガラスの上辺側に設けられる車載通信システムでもよい。
【0009】
また、本開示(3)は、本開示(2)に記載の車載通信システムであって、前記第2アンテナは、前記前面窓ガラスの上辺から120mm以内に設けられる車載通信システムでもよい。
【0010】
また、本開示(4)は、本開示(3)に記載の車載通信システムであって、前記第2アンテナは、前記前面窓ガラスの上辺から、前記前面窓ガラスの上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられる車載通信システムでもよい。
【0011】
また、本開示(5)は、本開示(1)~(4)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記車載通信機は、前記インスツルメントパネルの内部に設けられ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナで送受信される電波を処理する無線回路を有する車載通信システムでもよい。
【0012】
また、本開示(6)は、本開示(1)~(5)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記第2アンテナは、使用周波数帯において、車両に搭載されない状態で水平偏波と垂直偏波で測定したアンテナ感度を合成した平均値が-5dBi以上である車載通信システムでもよい。
【0013】
また、本開示(7)は、本開示(1)~(6)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記第2アンテナは、410MHz~7GHzの間の複数の使用周波数帯で電波を送信又は受信するアンテナである車載通信システムでもよい。
【0014】
また、本開示(8)は、本開示(1)~(7)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記第1アンテナは、前記車載通信機の近傍(望ましくは、第1アンテナと車載通信機の間のケーブル長が100cm以下、好ましくは60cm以下)に設けられる、又は前記車載通信機と一体に構成される車載通信システムでもよい。
【0015】
また、本開示(9)は、本開示(1)~(8)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、二つのアンテナによって電波を送信又は受信する2×2MIMOを構成する車載通信システムでもよい。
【0016】
また、本開示(10)は、本開示(1)~(8)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記車載通信機と接続される第3アンテナ及び第4アンテナをさらに備え、前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、前記第3アンテナ及び前記第4アンテナは、四つのアンテナによって電波を送受信する4×4MIMOを構成する車載通信システムでもよい。
【0017】
また、本開示(11)は、本開示(1)~(9)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記車載通信機と接続され、前記車両の後面窓ガラスに設けられる第3アンテナをさらに備える車載通信システムでもよい。
【0018】
また、本開示(12)は、本開示(1)~(9)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記車載通信機と接続され、前記前面窓ガラスに設けられる第4アンテナをさらに備える車載通信システムでもよい。
【0019】
また、本開示(13)は、本開示(1)~(12)のいずれか一つに記載の車載通信システムであって、前記車載通信機は、エアバックの作動に伴って出力される信号を前記車両に搭載された電子制御装置から受信し、一つ又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信する車載通信システムでもよい。
【0020】
また、本開示(14)は、本開示(13)に記載の車載通信システムであって、前記車載通信機は、前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、前記確認信号が所定時間検出できない場合、一又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信する車載通信システムでもよい。
【0021】
また、本開示(15)は、本開示(13)に記載の車載通信システムであって、前記車載通信機は、前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、前記確認信号が所定時間検出できない場合、前記第2アンテナが設けられた前記前面窓ガラスが前記車両の事故によって破損したかを判定し、前記前面窓ガラスが前記車両の事故によって破損した場合、一又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信することを特徴とする車載通信システムでもよい。
【0022】
また、本開示(16)は、本開示(13)に記載の車載通信システムであって、前記車載通信機は、前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、前記確認信号が所定時間検出できず、かつ、前記電子制御装置の動作を確認できない場合、前記車両の事故に起因して前記前面窓ガラスが破損したと判定し、一又は全部の前記アンテナへ緊急通報用の信号を送信することを特徴とする車載通信システムでもよい。
【0023】
また、本開示(17)は、本開示(13)に記載の車載通信システムであって、前記車載通信機は、前記第2アンテナとの接続が確認可能な確認信号を送受信しており、前記確認信号が所定時間検出できない場合、前記車両に事故が発生しているかを乗員に問い合わせる車載通信システムでもよい。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様によれば、車両に非常事態が生じても車載通信システムで通信できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1の車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例1において、車両に設置される機器の配置を示す図である。
【
図3】実施例2において、車両に設置される機器の配置を示す図である。
【
図4】実施例3において、車両に設置される機器の配置を示す図である。
【
図5】実施例3の前面窓ガラスにおける第2アンテナの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施例1>
図1は、本開示の実施例1の車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【0027】
実施例1の車載通信システムは、車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、第2アンテナ2Aとを有する。車載通信機10は、第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aと接続されており、第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aで2×2MIMO(Multi Input Multi Output)を構成して通信する。第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aは、410MHz~7GHzの間で複数の使用周波数帯で電波を送信又は受信するアンテナである。車載通信機10は、携帯電話システムの通信装置であり、4Gと5Gの両方に対応する通信装置でも、4G、5Gの何れか一方に対応する通信装置でもよい。車載通信機10は、TCU(Telematics Control Unit)、DCM(Data Communication Module)等と称される通信装置であり、ベースバンド処理部11と、無線回路部12と、制御部13とを有する。ベースバンド処理部11は、デジタル信号の変復調処理を実行する。無線回路部12は、ベースバンド処理部11で変調されたデジタル信号を無線周波数に変換及び増幅して、第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aに出力する。また、無線回路部12は、第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aが受信した信号を増幅し、ベースバンド信号に変換する。制御部13は、ベースバンド処理部11及び無線回路部12を含め、車載通信機10の動作を制御する。
【0028】
エアバッグECU20は、マイコン21と、出力部22と、通信インターフェース23とを有する電子制御装置である。マイコン21は、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムやデータを記憶するメモリとを有し、エアバッグ25の動作を制御する。出力部22は、エアバッグ25と接続されており、エアバッグ25へ動作信号を出力する。通信インターフェース23は、CAN(Controller Area Network)、FlexRay、イーサネットなどの所定のプロトコルで、他のECUや車載通信機10と通信する。エアバッグECU20は、接続されたセンサ(図示省略)が大きな加速度や大きな圧力を検出すると、エアバッグ25に動作信号を出力する。
【0029】
エアバッグ25は、エアバッグECU20から出力される動作信号によって、着火剤に点火して、展開する。
【0030】
車載通信機10は、エアバッグECU20と接続されており、エアバッグECU20との生死確認通信が途絶したり、エアバッグECU20から緊急通信要求信号を受けると、所定の相手先に緊急通信を発信する。例えば、エアバッグECU20は、エアバッグ25の動作に伴って緊急通信要求信号を車載通信機10に送信する。緊急通信要求信号は、エアバッグ25の動作信号そのものでも、エアバッグECU20がエアバッグ25の動作を検出して送信する信号でもよい。車載通信機10は、使用可能な一部のアンテナ又は全部のアンテナへ緊急通報用の信号を送信する。この緊急通信は、音声通信でもデータ通信でもよい。
【0031】
車載通信機10のエアバッグECU20との生死確認通信は、通常のヘルスチェック手順が用いられ、所定のタイミングで車載通信機10から送信された生死確認要求に対するエアバッグECU20から生死確認応答が途切れた、エアバッグECU20から所定のタイミングで送信される生死確認通信が途切れた、他のECUによる生死監視結果が異常となったなどで、エアバッグECU20の動作停止を判定できる。
【0032】
また、車載通信機10は、微弱な高周波信号(前述した使用周波数帯外であるとよい)を接続確認信号として第2アンテナ2Aに送信して、当該高周波信号の反射レベルを検出して、第2アンテナ2Aとの接続を確認する。そして、車載通信機10は、第2アンテナ2Aとの接続確認信号が所定時間検出できない場合、使用可能な一部のアンテナ又は全部のアンテナへ緊急通報用の信号を送信する。車載通信機10から第2アンテナ2Aへの接続確認信号は、所定のタイミング(例えば、連続的又は間欠的)に送信されるとよい。
【0033】
また、車載通信機10は、第2アンテナ2Aとの接続確認信号が所定時間検出できない場合、第2アンテナ2Aが設けられた前面窓ガラス41が車両100の事故によって破損したかを判定し、前面窓ガラス41が車両100の事故によって破損した場合、使用可能な一部のアンテナ又は全部のアンテナへ緊急通報用の信号を送信してもよい。
【0034】
車両100の事故によって前面窓ガラス41が破損したかを判定する方法としては、エアバッグECUの動作を確認する方法が考えられる。すなわち、車載通信機10は、第2アンテナ2Aとの接続確認信号が所定時間検出できず、かつ、エアバッグECU20との生死確認信号が途絶して、エアバッグECU20の動作が確認できなければ、車両100の事故に起因して前面窓ガラス41が破損したと判定し、使用可能な一部のアンテナ又は全部のアンテナへ緊急通報用の信号を送信してもよい。
【0035】
車両100の事故によって前面窓ガラス41が破損したかを判定する方法としては、乗員に問い合わせる方法が考えられる。すなわち、車載通信機10は、第2アンテナ2Aとの接続確認信号が所定時間検出できない場合、乗員に対して車両100に事故が発生しているかの入力を促す画面を操作パネル又はナビゲーション装置に表示したり、乗員に対して車両100に事故が発生しているかを問い合わせる音声を発したりするなどして、事故の発生を乗員に問い合わせてもよい。
【0036】
図2は、実施例1において、車両100に設置される機器の配置を示す図であり、車両100を上方から見た様子を示す。
【0037】
車両100には、少なくとも車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、第2アンテナ2Aと、エアバッグECU20とが設けられる。車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、エアバッグECU20はインスツルメントパネル30の近傍に配置されるとよい。例えば、車載通信機10とエアバッグECU20は、インスツルメントパネル30の内部(例えば、スピードメーターの奥)や、下側(例えば、助手席側の足元)に取り付けられるとよく、第1アンテナ1Aは、インスツルメントパネル30の内部や上に取り付けられてもよい。インスツルメントパネル30は、運転席の前方に設けられる計器類、スイッチ類、モニターなどが収められている場所や領域を覆い、前面窓ガラス41の下に取り付けられる内装部材である。第1アンテナ1Aは、車載通信機10の近傍(例えば、第1アンテナ1Aと車載通信機10の間のケーブル長が100cm以下、好ましくは60cm以下)に設けられてもよく、車載通信機10と一体に構成されてもよい。第1アンテナ1Aは、1本のアンテナで構成されても、複数のアンテナで構成されてもよい。第1のアンテナ1Aとしては、例えば、ボウタイアンテナのように広帯域に送受信できるアンテナや、使用する複数の周波数帯の送受信に適したように最適化された複数のエレメントから構成されるアンテナを使用することがでる。
【0038】
第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41の上辺側に設けられる。
図5に示すように、第2アンテナ2Aは、望ましくは、前面窓ガラス41の上辺から120mm以内に設けられる。また、第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41の上辺から、前面窓ガラス41の上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられてもよい。また、第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41が取り付けられた車両100のボディフランジ(ボディ開口部の端部)から100mm以内に設けられてもよい。第2のアンテナ2Aとしては、国際公開2022/163447号に開示される、2辺の長さが異なるL字型、三角形型、四角形型の面状エレメントと、芯線側給電部とを持つアンテナ装置を使用することができる。面状エレメントは、導電性物質が中実の面状に形成されてもよいし、メッシュ状の面状に形成されてもよい。第2アンテナ2Aは、ガラス面上に銀などの金属の粉末を含む導電性のセラミックペーストによって印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼き付けて形成されてもよい。樹脂フィルム上に形成された導電性パターンによってアンテナ導体を形成し、樹脂フィルムをガラス板に貼付して構成してもよい。また、第2アンテナ2Aは、立体的に形成された導体によって構成されるアンテナ(例えば、パッチアンテナ、ケースに収容されたアンテナ、国際公開2019/151407号に開示される折り曲げられた金属板)でもよい。また、第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41に取り付けられる前方監視カメラのブラケットやカバーに取り付けられてもよい。
【0039】
第2アンテナ2Aは、使用周波数帯域の一部の周波数で特性が良好であり、信号を送信又は受信するものでもよいし、使用周波数帯域のうち全帯域で特性が良好であり、信号を送信又は受信するものでもよい。
【0040】
実施例1では、このように第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aとが配置されることによって、410MHz~7GHzの周波数において、第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aとの相関係数は0.3以下となり、MIMOにおいて十分な特性が得られる。
【0041】
また、第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aとのどちらかまたは両方のアンテナが、使用周波数帯(410MHz~7GHzの間で車載通信機10が使用する周波数帯、特に700~960MHz)において、車両に搭載されない状態で水平偏波と垂直偏波で測定したアンテナ感度を合成した平均値が-5dBi以上であるとよい。
【0042】
次に、実施例1の変形例を説明する。実施例1の変形例では、二つの第1アンテナ1Aが設けられている。具体的には、インスツルメントパネル30内に設けられたアンテナユニットに二つの第1アンテナ1Aが設けられる。
【0043】
<実施例2>
実施例2の車載通信システムでは、車載通信機10に4本のアンテナが接続されており、この4本のアンテナで、4×4MIMOを構成する。なお、実施例2において、前述した実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と同じ構成には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0044】
図3は、実施例2において、車両100に設置される機器の配置を示す図であり、車両100を上方から見た様子を示す。
【0045】
実施例4の車載通信システムは、車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、第2アンテナ2Aと、第3アンテナ3と、第4アンテナ4とを有する。
【0046】
車両100には、少なくとも車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、第2アンテナ2Aと、第3アンテナ3と、第4アンテナ4と、エアバッグECU20とが設けられる。車載通信機10の無線回路部12には、第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aの他、第3アンテナ3及び第4アンテナ4が接続される。無線回路部12は、無線周波数の信号を第1アンテナ1Aと、第2アンテナ2Aと、第3アンテナ3と、第4アンテナ4に出力し、第1アンテナ1Aと、第2アンテナ2Aと、第3アンテナ3と、第4アンテナ4が受信した信号を増幅及び検波する。
【0047】
実施例2の車載通信機10は、第1アンテナ1A、第2アンテナ2A、第3アンテナ3及び第4アンテナ4で4×4MIMO(Multi Input Multi Output)を構成して通信する。第1アンテナ1A、第2アンテナ2A、第3アンテナ3及び第4アンテナ4は、410MHz~7GHzの間で複数の使用周波数帯で電波を送信又は受信するアンテナである。車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、エアバッグECU20はインスツルメントパネル30の下に配置されるとよい。なお、第1アンテナ1Aは、インスツルメントパネル30の裏面に取り付けられるとよく、インスツルメントパネル30の上や近傍に取り付けられてもよい。第1アンテナ1Aは、車載通信機10の近傍に設けられてもよく、車載通信機10と一体に構成されてもよい。第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41の上辺側に設けられる。
図5に示すように、第2アンテナ2Aは、望ましくは、前面窓ガラス41の上辺から120mm以内に設けられる。また、第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41の上辺から、前面窓ガラス41の上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられてもよい。
【0048】
第2アンテナ2Aは、ガラス面上に導電性のセラミックペーストによって各線条の幅を約0.7mmで印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼き付けて形成される。光透過性の樹脂フィルム上に形成された導電性パターンによってアンテナ導体を形成し、樹脂フィルムをガラス板に貼付して構成してもよい。
【0049】
第3アンテナ3は、後部窓ガラス42の上辺側に設けられ、望ましくは、後部窓ガラス42の上辺から120mm以内に設けられる。また、第3アンテナ3は、後部窓ガラス42の上辺から、後部窓ガラス42の上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられてもよい。
【0050】
第4アンテナ4は、車体の屋根に設けられ、例えば、ホイップアンテナや、平板エレメントを内蔵したシャークフィンアンテナを用いるとよい。第4アンテナ4が格納されるシャークフィンには、第4のアンテナ4以外に、FMやAMのラジオ受信用、GPS、ITS、V2Xのアンテナを収容してもよい。
【0051】
実施例2では、このように第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aと第3アンテナ3と第4アンテナ4とが配置されることによって、410MHz~7GHzの周波数において、第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aと第3アンテナ3と第4アンテナ4との相関係数はそれぞれ0.3以下となり、MIMOにおいて十分な特性が得られる。
【0052】
また、第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aと第3アンテナ3と第4アンテナ4との一部または全部のアンテナが、使用周波数帯(410MHz~7GHzの間で車載通信機10が使用する周波数帯、特に700~960MHz)において、車両に搭載されない状態で水平偏波と垂直偏波で測定したアンテナ感度を合成した平均値が-5dBi以上であるとよい。
【0053】
<実施例3>
実施例3の車載通信システムでは、車載通信機10に6本のアンテナが接続されており、2本のアンテナで4G用の2×2MIMOを構成し、4本のアンテナで、5G用の4×4MIMOを構成する。なお、実施例3において、前述した実施例1、2との相違点を主に説明し、実施例1、2と同じ構成には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0054】
図4は、実施例3において、車両100に設置される機器の配置を示す図であり、車両100を上方から見た様子を示す。
【0055】
実施例3の車載通信システムは、車載通信機10と、第1アンテナ1A、1Bと、第2アンテナ2A、2Bと、第3アンテナ3と、第4アンテナ4とを有する。
【0056】
車両100には、少なくとも車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、第1アンテナ1Bと、第2アンテナ2Aと、第2アンテナ2Bと、第3アンテナ3と、第4アンテナ4と、エアバッグECU20とが設けられる。車載通信機10の無線回路部12には、第1アンテナ1A及び第2アンテナ2Aの他、第1アンテナ1B、第2アンテナ2B、第3アンテナ3及び第4アンテナ4が接続される。
【0057】
実施例3の車載通信システムでは、例えば、第1アンテナ1B及び第4アンテナ4で4G通信用の2×2MIMOを構成し、第1アンテナ1A、第2アンテナ2A、第2アンテナ2B及び第3アンテナ3で4×4MIMO(Multi Input Multi Output)を構成して通信する。第1アンテナ1A、1B、第2アンテナ2A、2B、第3アンテナ3及び第4アンテナ4は、410MHz~7GHzの間で複数の使用周波数帯で電波を送信又は受信するアンテナである。車載通信機10と、第1アンテナ1Aと、第1アンテナ1Bと、エアバッグECU20はインスツルメントパネル30の下に配置されるとよい。なお、第1アンテナ1A、1Bは、インスツルメントパネル30の裏面に取り付けられるとよく、インスツルメントパネル30の上や近傍に取り付けられてもよい。第1アンテナ1A、1Bは、車載通信機10の近傍に設けられてもよく、車載通信機10と一体に構成されてもよい。第2アンテナ2A、2Bは、前面窓ガラス41の上辺側に設けられるとよい。第2アンテナ2A、2Bの配置は、
図5を参照して後述する。
【0058】
第3アンテナ3は、後部窓ガラス42の上辺側に設けられ、望ましくは、後部窓ガラス42の上辺から120mm以内に設けられる。また、第3アンテナ3は、後部窓ガラス42の上辺から、後部窓ガラス42の上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられてもよい。
【0059】
第4アンテナ4は、車体の屋根に設けられ、例えば、ホイップアンテナや、平板エレメントを内蔵したシャークフィンアンテナを用いるとよい。第4アンテナ4が格納されるシャークフィンには、第4アンテナ4以外に、FMやAMのラジオ受信用、GPS、ITS、V2Xのアンテナを収容してもよい。
【0060】
実施例3では、このように第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aと第3アンテナ3と第4アンテナ4とが配置されることによって、410MHz~7GHzの周波数において、第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aとの相関係数は0.3以下となり、MIMOにおいて十分な特性が得られる。
【0061】
また、第1アンテナ1Aと第2アンテナ2Aと第3アンテナ3と第4アンテナ4との一部または全部のアンテナも、使用周波数帯(410MHz~7GHzの間で車載通信機10が使用する周波数帯、特に700~960MHz)において、車両に搭載されない状態で水平偏波と垂直偏波で測定したアンテナ感度を合成した平均値が-5dBi以上であるとよい。
【0062】
図5は、実施例3の前面窓ガラス41における第2アンテナ2Aの配置を示す図である。
【0063】
前面窓ガラス41は、略台形の曲面ガラスであり、その周辺に有色セラミックを焼成したセラミック層41Bが設けられる。第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41の上辺側に設けられ、望ましくは、前面窓ガラス41の上辺から120mm以内に設けられるとよい。また、第2アンテナ2Aは、前面窓ガラス41の上辺から、前面窓ガラス41の上辺と下辺の距離の20%以内の位置に設けられてもよい。
【0064】
以上に説明したように、前述した実施例によると、車載通信システムの少なくとも一つのアンテナ1Aをインスツルメントパネル30の近傍(下、裏面、上など)に配置し、少なくとも一つのアンテナ2Aを前面窓ガラス41ガラスに配置するので、複数のアンテナを用いて高速かつ大容量の通信を可能とし、衝突によって前面窓ガラス41が破損しても、アンテナ1Aを用いて通信できる。
【0065】
以上、本開示を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本開示はこのような具体的構成に限定されるものではなく、添付した請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。
【符号の説明】
【0066】
1A、1B 第1アンテナ
2A、2B 第2アンテナ
3 第3アンテナ
4 第4アンテナ
10 車載通信機
11 ベースバンド処理部
12 無線回路部
13 制御部
20 エアバッグECU
21 マイコン
22 出力部
23 通信インターフェース
25 エアバッグ
30 インスツルメントパネル
41 前面窓ガラス
41B セラミック層
42 後部窓ガラス
100 車両