(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031487
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ワイヤ放電加工装置のワーク保持構造
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20240229BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23H7/02 H
B23Q3/06 301K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135063
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 智典
【テーマコード(参考)】
3C016
3C059
【Fターム(参考)】
3C016CA08
3C016CB06
3C016CE05
3C059AA01
3C059AB05
3C059JA02
3C059JA03
(57)【要約】
【課題】ワイヤ放電加工における生産性をできる限り高くすることができるワーク保持構造を提供する。
【解決手段】テーブルと協働してワークWが配置されるワーク配置領域PRを形成するブリッジ20と、ブリッジ20に取付ボルト101を介してそれぞれ固定され、ワークWにおける加工されない領域をそれぞれ保持することで、ワークWを保持する複数の保持具30と、を備え、各保持具30は、ワーク配置領域PR側に突出しかつワークWを下側から支持するワーク支持部を有する下側保持部31と、下側保持部31と協働して、ワークWを挟持する上側保持部32と、をそれぞれ有し、さらに各保持具30は、固定位置をブリッジ20の長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工するワイヤ電極と、上下に対向する一対のノズルとを有するワイヤ放電加工装置のワーク保持構造であって、
水平方向に対向する一対の台座部を有するテーブルと、
前記一対の台座部を橋渡すように前記テーブル上に固定されて、前記テーブルと協働して前記ワークが配置されるワーク配置領域を形成するブリッジと、
前記ブリッジに固定部材を介してそれぞれ固定され、前記ワークにおける加工されない領域である非加工領域をそれぞれ保持することで、前記ワークを保持する複数の保持具と、を備え、
前記各保持具は、
前記ブリッジ上に載置されかつ前記固定部材により前記ブリッジに固定される載置部と、前記ブリッジから前記ワーク配置領域側に突出しかつ前記ワークの非加工領域を下側から支持するワーク支持部と、を有する下側部材と、
前記下側部材の上側に配置されかつ該下側部材と協働して前記ワークを挟持する上側部材と、
をそれぞれ有し、
さらに前記各保持具は、前記固定部材による固定が解除されたときには、前記ブリッジに対する固定位置を、該ブリッジの長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されていることを特徴とするワイヤ放電加工装置のワーク保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤ放電加工装置のワーク保持構造において、
前記ブリッジは、前記長手方向及び上下方向に直交する幅方向に延びかつ前記テーブルに固定するためのボルトが挿通される段付きの長孔を有するとともに、前記ボルトを緩めたときに該長孔に沿って前記幅方向に移動可能であることを特徴とするワイヤ放電加工装置のワーク保持構造。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤ放電加工装置のワーク保持構造において、
前記ブリッジは、前記幅方向に延びかつ前記載置部が係合する複数の溝を有し、
前記各溝は、前記長手方向に互いに間隔を空けて配置されており、
前記各保持具は、前記載置部が係合する前記溝を変えることで、前記ブリッジに対する固定位置を、該ブリッジの長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されていることを特徴とするワイヤ放電加工装置のワーク保持構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載のワイヤ放電加工装置のワーク保持構造において、
前記下側部材及び前記ブリッジの一方は、他方に向かって突出する第1突出部を有し、
前記下側部材及び前記ブリッジの他方は、前記第1突出部と係合する第1係合溝を有し、
前記各保持具は、前記固定部材による固定が解除されたときには、前記第1突出部及び前記第1係合溝の一方が、他方に対してスライド移動することで、前記ブリッジに対する固定位置を、該ブリッジの長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されていることを特徴とするワイヤ放電加工装置のワーク保持構造。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤ放電加工装置のワーク保持構造において、
前記第1係合溝は、溝幅方向に突出する第2突出部を有し、
前記第1突出部は、前記第2突出部と係合しかつ該第1突出部の延びる方向に延びる第2係合溝を有し、
前記固定部材は、前記下側部材に設けられたボルト孔に螺合しかつ先端が前記ブリッジの上面に当接するボルトであり、
前記各保持具は、前記ボルトにより前記下側部材が前記ブリッジから離れる方向に移動されて、前記第2突出部と前記第2係合溝の溝壁とが互いに押圧することで、前記ブリッジにそれぞれ固定されることを特徴とするワイヤ放電加工装置のワーク保持構造。
【請求項6】
請求項1または2に記載のワイヤ放電加工装置のワーク保持構造において、
前記ブリッジは断面矩形状をなし、
前記載置部は、前記ブリッジの幅方向全体に亘って延びており、
前記下側部材は、
前記載置部から前記ブリッジの前記ワーク配置領域側の面である第1面に沿って下側に延びかつ前記載置部と前記ワーク支持部とを連結する連結部と、
前記載置部から前記ブリッジの前記第1面と対向する第2面に沿って下側に延びるテール部と、
を有し、
前記固定部材は、前記テール部に設けられたボルト孔に螺合しかつ先端が前記第2面に当接するボルトであり、
前記各保持具は、前記ボルトにより前記テール部が前記ブリッジから離れる方向に移動されて、前記連結部と前記第1面とが互いに押圧することで、前記ブリッジにそれぞれ固定されることを特徴とするワイヤ放電加工装置のワーク保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ワイヤ放電加工装置のワーク保持構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワイヤ放電加工では、ワークにおける加工されない領域である非加工領域の部分を保持具により保持した状態で加工が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ワーク加工領域を取り囲むテーブルと、先端がワーク加工領域に突出する姿勢でテーブルに固定されたワーク固定用治具と、を備え、ワークの非加工領域にボルト孔を設けて、各ワーク固定用治具とワークとをボルトでそれぞれ連結させることでワークをワーク加工領域に配置した状態で保持する構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、ワーク加工領域を形成するテーブルと、ワークの周囲を取り囲みかつワークの外面を圧迫して保持固定する取付具と、テーブルと協働して取付具を保持する固定用部材を備え、取付具を介して、ワークをワーク加工領域に配置した状態で保持する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-114725号公報
【特許文献2】特開2001-138155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構造では、ワーク自体にボルト孔を形成する必要があるため、非加工領域を比較的大きく形成しておく必要がある。このため、ワーク自体の大きさを最終加工品の大きさよりも大きくする必要があり、材料歩留まりが悪化して生産性の低下が懸念される。また、ボルト孔を形成した後では、ワークを保持する位置を変更することが困難であるため、ボルト孔を形成する位置を厳密に計算する必要があり、そのための作業工数が必要となる。
【0007】
前記特許文献2に記載の構造では、ワークの外面を圧迫して保持固定する取付具があるため、予め取付具の内側にワイヤを配置しておくなど、ワイヤの位置を考慮しながら取付具を配置する必要があり、面倒である。また、加工に伴いワークが変形したときには、取付具からの圧のかかり方が変化するため、ワークを適切に保持できなくなるおそれがある。
【0008】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイヤ放電加工における生産性をできる限り高くすることができるワーク保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、ワークを加工するワイヤ電極と、上下に対向する一対のノズルとを有するワイヤ放電加工装置のワーク保持構造を対象として、水平方向に対向する一対の台座部を有するテーブルと、前記一対の台座部を橋渡すように前記テーブル上に固定されて、前記テーブルと協働して前記ワークが配置されるワーク配置領域を形成するブリッジと、前記ブリッジに固定部材を介してそれぞれ固定され、前記ワークにおける加工されない領域である非加工領域をそれぞれ保持することで、前記ワークを保持する複数の保持具と、を備え、前記各保持具は、前記ブリッジ上に載置されかつ前記固定部材により前記ブリッジに固定される載置部と、前記ブリッジから前記ワーク配置領域側に突出しかつ前記ワークの非加工領域を下側から支持するワーク支持部と、を有する下側部材と、前記下側部材の上側に配置されかつ該下側部材と協働して前記ワークを挟持する上側部材と、をそれぞれ有し、さらに前記各保持具は、前記固定部材による固定が解除されたときには、前記ブリッジに対する固定位置を、該ブリッジの長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記ブリッジは、前記長手方向及び上下方向に直交する幅方向に延びかつ前記テーブルに固定するためのボルトが挿通される段付きの長孔を有するとともに、前記ボルトを緩めたときに該長孔に沿って前記幅方向に移動可能であることを特徴とする。
【0011】
ここに開示された技術の第3の態様は、第1または2の態様において、前記ブリッジは、前記幅方向に延びかつ前記載置部が係合する複数の溝を有し、前記各溝は、前記長手方向に互いに間隔を空けて配置されており、前記各保持具は、前記載置部が係合する前記溝を変えることで、前記ブリッジに対する固定位置を、該ブリッジの長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されていることを特徴とする。
【0012】
ここに開示された技術の第4の態様は、第1または2の態様において、前記下側部材及び前記ブリッジの一方は、他方に向かって突出する第1突出部を有し、前記下側部材及び前記ブリッジの他方は、前記第1突出部と係合する第1係合溝を有し、前記各保持具は、前記固定部材による固定が解除されたときには、前記第1突出部及び前記第1係合溝の一方が、他方に対してスライド移動することで、前記ブリッジに対する固定位置を、該ブリッジの長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されていることを特徴とする。
【0013】
ここに開示された技術の第5の態様は、第4の態様において、前記第1係合溝は、溝幅方向に突出する第2突出部を有し、前記第1突出部は、前記第2突出部と係合しかつ該第1突出部の延びる方向に延びる第2係合溝を有し、前記固定部材は、前記下側部材に設けられたボルト孔に螺合しかつ先端が前記ブリッジの上面に当接するボルトであり、前記各保持具は、前記ボルトにより前記下側部材が前記ブリッジから離れる方向に移動されて、前記第2突出部と前記第2係合溝の溝壁とが互いに押圧することで、前記ブリッジにそれぞれ固定されることを特徴とする。
【0014】
ここに開示された技術の第6の態様は、第1または2の態様において、前記ブリッジは断面矩形状をなし、前記載置部は、前記ブリッジの幅方向全体に亘って延びており、前記下側部材は、前記載置部から前記ブリッジの前記ワーク配置領域側の面である第1面に沿って下側に延びかつ前記載置部と前記ワーク支持部とを連結する連結部と、前記載置部から前記ブリッジの前記第1面と対向する第2面に沿って下側に延びるテール部と、を有し、前記固定部材は、前記テール部に設けられたボルト孔に螺合しかつ先端が前記第2面に当接するボルトであり、前記各保持具は、前記ボルトにより前記テール部が前記ブリッジから離れる方向に移動されて、前記連結部と前記第1面とが互いに押圧することで、前記ブリッジにそれぞれ固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
前記第1の態様によると、複数の保持具によりワークを保持する構成であるため、各保持具を小さい構成とすることができる。これにより、ワークの非加工領域を大きく設定する必要がないことに加えて、ワークの周囲をできる限り開放した状態にすることができる。また、保持具は、下側部材と上側部材とでワークの非加工領域を挟持する構成であるため、ワーク自体を加工する必要がない。また、保持具は、ブリッジの長手方向に沿って固定位置を変えることができるため、ワークの大きさ、形状、及び加工形状に応じて設定された非加工領域に保持位置を合わせて、ワークを適切に保持することができる。したがって、ワークを高い歩留まりでもって、効率的に加工することができるため、ワイヤ放電加工における生産性をできる限り高くすることができる。
【0016】
前記第2の態様によると、ブリッジを保持具ごと幅方向に移動させることができるため、種々の大きさ及び形状のワークを適切に保持することができるようになる。これにより、ワイヤ放電加工における生産性をより高くすることができる。
【0017】
前記第3の態様によると、保持具を溝と係合させることで、保持具をブリッジに固定した状態で、保持具がブリッジの長手方向に不意に移動してしまうのを適切に抑制することができる。これにより、ワークをより適切に保持することができる。
【0018】
前記第4の態様によると、保持具のワーク支持部の位置をブリッジの長手方向に平行移動させることができる。これにより、保持具のブリッジに対する固定位置の調整が容易になるため、ワークの保持作業を効率的に行うことができる。この結果、ワイヤ放電加工における生産性をより高くすることができる。
【0019】
前記第5及び第6の態様によると、保持具のブリッジに対する固定位置を連続的に変更することができるため、ブリッジにボルト孔を設けて、保持具をブリッジに対してボルト止めするような場合と比較して、保持具のブリッジに対する固定位置の自由度が高くなる。ワークに対する保持具の保持位置を適切位置に調整しやすくなるため、ワイヤ放電加工における生産性をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態1に係るワーク保持構造を有するワイヤ放電加工装置の一部を示す平面図である。
【
図2】
図2は、ワーク配置領域を拡大して示す拡大平面図である。
【
図3】
図3は、ブリッジをワーク配置領域とは反対側から見た側面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線相当の平面で切断した断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る保持構造を示す
図1相当の平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線相当の平面で切断した断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係る保持構造を示す
図1相当の平面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線相当の平面で切断した断面図である。
【
図9】
図9は、
図8の状態から第2取付ボルトを締めた状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態4に係る保持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、図面における前側、後側、右側、左側、上側、及び下側は、説明を簡単にするために便宜上設定している方向であり、実際のワイヤ放電加工装置及びワークの保持構造の配置を限定するものではない。
【0022】
〔実施形態1〕
(ワイヤ放電加工装置)
図1は、本実施形態1に係るワイヤ放電加工装置1を模式的に示す。ワイヤ放電加工装置1は、板状のワークWを通電させたワイヤにより所望の形状に切断する加工装置である。
【0023】
ワイヤ放電加工装置1は、平面視で枠状をなすテーブル10と、テーブル10に取付固定された一対のブリッジ20とを有する。
【0024】
テーブル10は、前後方向に対向する第1台座部11と、左右方向に対向する第2台座部12と、第1台座部11と第2台座部12とを連結する4つのコーナー部13により、枠状をなしている。各第1台座部11、各第2台座部12、及び各コーナー部13は、それぞれ複数の第1ボルト孔14を有する。第1ボルト孔14は、ブリッジ20を取り付けるための、第1取付ボルト100が締結される孔である。
【0025】
各ブリッジ20は、第1台座部11を橋渡すようにテーブル10の第1台座部11に固定されている。各ブリッジ20は、長尺の直方体でそれぞれ構成されていて、断面矩形状をなしている(
図4等参照)。各ブリッジ20は前後方向及び左右方向に線対称に構成されている。
【0026】
各ブリッジ20は、長手方向(ここでは前後方向)の両側端部に幅方向(ここでは左右方向)に延びかつ第1取付ボルト100の一部が挿通される長孔21をそれぞれ有している。長孔21は、下側部分の幅が上側部分の幅よりも狭くなっている段付きの長孔である。長孔21の下側部分の幅は、第1取付ボルト100の軸部が挿通可能な一方で、第1取付ボルト100の頭部が挿通できない幅になっている。第1取付ボルト100の軸部が長孔21を挿通して第1ボルト孔14に締結したときには、第1取付ボルト100の頭部が長孔21の上側部分を第1台座部11または第2台座部12に向かって押圧するようになる。これにより、各ブリッジ20が、第1台座部11もしくは第2台座部12と第1取付ボルト100の頭部とで挟持された状態となって、テーブル10に取付固定される。各ブリッジ20は、各第1取付ボルト100を緩めたときには、長孔21に沿って幅方向に移動可能になる。このとき、各第1取付ボルト100の軸部を各長孔21に挿通したままにしておけば、該軸部がガイドのような役割を果たすため、ブリッジ20を幅方向に平行に移動させることができる。
【0027】
各ブリッジ20がテーブル10に固定されることで、ワークWが配置されるワーク配置領域PRが形成される。本実施形態では、平面視で、一対の第1台座部11と一対のブリッジ20とで囲まれた領域がワーク配置領域PRとなる。尚、一対のブリッジ20が、一対の第2台座部12を橋渡すようにテーブル10の第2台座部12に固定されているときには、一対の第2台座部12と一対のブリッジ20とで囲まれた領域がワーク配置領域PRとなる。
【0028】
図3に示すように、各ブリッジ20は、複数の溝22を有する。各溝22は、ブリッジ20の幅方向全体にそれぞれ延びている。各溝22は、ブリッジ20の長手方向に等間隔にそれぞれ並んで形成されている。各溝22は、複数(ここでは3つ)の第2ボルト孔22aをそれぞれ有する。第2ボルト孔22aは、後述する保持具30をブリッジ20に取付固定するための第2取付ボルト101が締結される孔である。
【0029】
ワイヤ放電加工装置1は、
図1及び
図4に示すように、上下一対のノズル40を有する(
図1及び
図4で下側のノズル40のみを示している)。下側のノズル40は、その上側端部がブリッジ20の底面と同じ高さになるように、言い換えると、テーブル10の上面と同じ高さになるように設置されている。一対のノズル40は、上下に対向するように配置されかつその間に加工用のワイヤ41が配置される。ワイヤ41は、導電性のワイヤであって、電流が流れた際の放電熱によりワークWを加工する。ワークWが加工される際には、ノズル40からワークWに向かって水が噴射される。これにより、ワークの加工部を冷却しつつ、加工部から加工屑を除去する。
【0030】
(保持具)
ワイヤ放電加工装置1は、
図1~
図4に示すように、ワークWをワーク配置領域PR内に保持するための複数(ここでは4つ)の保持具30を有する。各保持具30は、ブリッジ20に第2取付ボルト101を介してそれぞれ固定され、ワークWにおける加工されない領域である非加工領域NPRをそれぞれ保持することで、ワークWを保持する。ここでは、ワークWの加工形状として
図1及び
図2に示すような円柱形を想定しており、非加工領域NPRは、ワークWのコーナー部分に設定される。ワークWの加工形状が異なれば、それに応じて非加工領域NPRの位置が変わり、各保持具30がワークWを保持する位置も変わる。
【0031】
以下、保持具30の構成について詳細に説明する。各保持具30の構成は同じであるため、以下では、
図1及び
図2の右後側の保持具30についてのみ詳細に説明し、他の保持具30については説明を省略する。このため、以下では、保持具30について、ワーク配置領域PR側を単に左側といい、ワーク配置領域PRとは反対側を右側ということがある。
【0032】
図4に示すように、保持具30は、下側保持部31と、該下側保持部31の上側に配置された上側保持部32とを有する。保持具30は、下側保持部31と上側保持部32とでワークWを挟持することで、ワークWを保持する。
【0033】
下側保持部31は、側面視でS字状をなしている。具体的には、下側保持部31は、ブリッジ20の溝22と係合した状態でブリッジ20上に載置されかつ第2取付ボルト101によりブリッジ20に固定される載置部31aと、ワークWの非加工領域NPRを下側から支持するワーク支持部31bと、載置部31aの左側端部とワーク支持部31bの右側端部とを上下方向に連結する連結部31cとを有する。載置部31aの前後方向の幅は、溝22の溝幅よりも僅かに小さい幅になっている。載置部31aの左右方向の長さは、溝22の左右方向の長さと同じである。載置部31aの厚みは、溝22の溝深さと同じである。載置部31aの右側の部分には、第2取付ボルト101が螺合する第1固定用ボルト孔31dが形成されている。第1固定用ボルト孔31dは、連結部31cがブリッジ20と接触したときに、第2ボルト孔22aと上下に連通する位置に設けられている。下側保持部31は、第2取付ボルト101が第1固定用ボルト孔31dと第2ボルト孔22aとに締結することよりブリッジ20と共締めされる。
【0034】
ワーク支持部31bは、水平方向に真っ直ぐに延びている。ワーク支持部31bの上面にワークWの非加工領域NPRが載置する。ワーク支持部31bの底面は、ブリッジ20の底面、すなわちテーブル10の上面よりも上側に位置する。これにより、ワークWの底面はテーブル10の上面よりも上側に位置するようになり、ワークWとノズル40との間には隙間S1が形成される。尚、ワーク支持部31bの底面は、ブリッジ20の底面と面一であってもよい。この場合でも、ワーク支持部31bの厚みの分だけ、ワークWとノズル40との間には隙間S1が形成される。ワーク支持部31bの前後方向の幅は、載置部31aの前後方向の幅と同じであり、ワークWの前後方向の幅、特にワークの非加工領域NPRの前後方向の幅に対して十分に小さい幅に設定されている。
【0035】
連結部31cは、載置部31a及びワーク支持部31bの両方と直交するように上下方向に延びている。これにより、連結部31cは、ブリッジ20のワーク配置領域PR側の面(ここでは左側の面)である第1面20aに沿って延びるようになる。連結部31cがブリッジ20の第1面20aに沿って配置されることで、ブリッジ20とワークWとの間には、隙間S2が形成される。隙間S2は、連結部31cの厚み程度の大きさの隙間である。
【0036】
上側保持部32は、細長い板をなしている。上側保持部32の長手方向の中央部には第2取付ボルト101の軸部が挿通される挿通孔32aが形成されている。挿通孔32aは、ネジ切りが形成されておらず、第2取付ボルト101は、挿通孔32aとは螺合していない。上側保持部32の右側の端部には、調整用ボルト102が螺合する調整用ボルト孔32bが形成されている。調整用ボルト102は、保持具30によるワークWの挟持力、より詳しくは、上側保持部32によるワークWの押圧力を調整するためのボルトである。調整用ボルト102は、全ネジで構成されていて、その下端は載置部31aの上面と当接する。上側保持部32の挿通孔32aよりも左側の部分は、ワークWを下側に向かって押圧する押圧部32cとなっている。
【0037】
保持具30は、第2取付ボルト101によるブリッジ20に対する固定が解除されたときには、ブリッジ20に対する固定位置を、ブリッジ20の長手方向に沿って変更可能である。具体的には、第2取付ボルト101と第2ボルト孔22aとの締結を解除して、保持具30を溝22から外す。そして、保持具30をブリッジ20の長手方向に移動させて、別の溝22と係合させた後、第2取付ボルト101を、挿通孔32a及び第1固定用ボルト孔31dを介して第2ボルト孔22aに締結させれば、保持具30の固定位置が変更される。
【0038】
次に、保持具30によりワークWを挟持する手順について説明する。尚、以下で説明する手順は、一例であり、各工程の順序が異なっていてもよい。また、以下の説明では、テーブル10には、予め各ブリッジ20が固定されている状態を想定している。
【0039】
まず、載置部31aを所望の位置の溝22と係合させる。このとき、連結部31cの右側の面とブリッジ20の第1面20aとを接触させるまで、下側保持部31を溝22に沿って移動させる。これにより、第1固定用ボルト孔31dと、第2ボルト孔22aとが上下に連通する。
【0040】
次に、第1固定用ボルト孔31dと挿通孔32aとが上下に連通するように、上側保持部32を配置する。
【0041】
次いで、第2取付ボルト101を、挿通孔32aを挿通させて、第1固定用ボルト孔31d及び第2ボルト孔22aに締結させる。これにより、保持具30がブリッジ20に対して固定される。
【0042】
次に、上側保持部32を第2取付ボルト101に沿って上側に移動させて、ワーク支持部31bと押圧部32cとの間をワークWの厚みに応じて調整した後、ワーク支持部31bにワークWを載置させる。このとき、ワークWの非加工領域NPRをワーク支持部31bに載置させる。
【0043】
次いで、第2取付ボルト101を、第2取付ボルト101の頭部が上側保持部32の上面と接触するまで締める。これにより、ワークWの非加工領域NPRがある程度の力でもってワーク支持部31bと押圧部32cとで挟持される。
【0044】
そして、調整用ボルト102を調整用ボルト孔32bに螺合させる。調整用ボルト102の下端が載置部31aの上面と接触した状態で調整用ボルト102を更に締めると、上側保持部32における挿通孔32aよりも右側の部分が上側に持ち上げられる。これにより、上側保持部32における挿通孔32aよりも左側の部分は、第2取付ボルト101の頭部を支点にして、下側に移動する。この結果、押圧部32cが杆のようにワークWの非加工領域NPRを上側から押圧するため、ワークWがワーク支持部31bと押圧部32cとでより強い力でもって挟持される。調整用ボルト102を締める量を大きくすれば、押圧部32cによる押圧力が大きくなって、ワークWに対する挟持力も大きくなる。
【0045】
以上のようにして、右後側の保持具30によりワークWが保持される。ここで説明した前述の手順を他の3つの保持具30についても行うことで、保持具30により、ワークWがワーク配置領域PRに位置したまま保持される。尚、ワーク配置領域PRを挟んで反対側に配置されている各保持具30(ここでは左側の各保持具30)については、左右方向が前述の説明とは逆になる。
【0046】
保持具30のワークWに対する保持位置を変更するときには、調整用ボルト102及び第2取付ボルト101を緩めて、保持具30をワークWから外す。その後、第2取付ボルト101を第2ボルト孔22aから外して、保持具30を適切な位置の溝22に移動させて、前述と同様にして、保持具30によりワークWを再度挟持させる。
【0047】
以上のように、本実施形態1では、水平方向に対向する一対の第1台座部11を有するテーブル10と、一対の第1台座部11を橋渡すようにテーブル10上に固定されて、テーブル10と協働してワークWが配置されるワーク配置領域PRを形成するブリッジ20と、ブリッジ20に第2取付ボルト101を介してそれぞれ固定され、ワークWにおける加工されない領域である非加工領域NPRをそれぞれ保持することで、ワークWを保持する複数の保持具30と、を備え、各保持具30は、ブリッジ20上に載置されかつ第2取付ボルト101によりブリッジ20に固定される載置部31aと、ブリッジ20のワーク配置領域PR側の端よりもワーク配置領域PR側に突出しかつワークWの非加工領域NPRを下側から支持するワーク支持部31bと、を有する下側保持部31と、下側保持部31の上側に配置されかつ該下側保持部31と協働してワークWを挟持する上側保持部32と、をそれぞれ有し、さらに各保持具30は、第2取付ボルト101による固定が解除されたときには、ブリッジ20の長手方向に沿って固定位置を変更可能にそれぞれ構成されている。このように、本実施形態1に係るワーク保持構造は、複数の保持具30によりワークWを保持する構成であるため、各保持具30を小さい構成とすることができる。特に、保持具30の幅を、ワークWの幅に対して十分に小さくすることができる。これにより、非加工領域NPRを大きく設定する必要がないことに加えて、ワークWの周囲をできる限り開放した状態にすることができる。また、各保持具30は、ワークWを下側保持部31と上側保持部32とでワークWの非加工領域NPRをそれぞれ挟持する構成であるため、ワークW自体を加工する必要がない。また、各保持具30は、ブリッジの20長手方向に沿って固定位置を変えることができるため、ワークWの大きさ、形状、及び加工形状に応じて形成された非加工領域NPRに保持位置を合わせて適切に保持する。したがって、ワークWを高い歩留まりでもって、効率的に加工することができるため、ワイヤ放電加工における生産性をできる限り高くすることができる。
【0048】
また、本実施形態1に係るワーク保持構造では、水平方向において、ブリッジ20とワークWとの間に隙間S2が形成される。これにより、放電加工時におけるワイヤ41とブリッジ20との干渉が抑制されるため、ワークWの加工領域を、ワークWの端まで寄せることができる。この結果、ワークWをより高い歩留まりでもって、効率的に加工することができる。
【0049】
また、本実施形態1では、下側のノズル40の上端部は、テーブル10の上面と同じ高さに設定されており、ワーク支持部31bの底面は、ブリッジ20の底面、すなわちテーブル10の上面よりも上側に位置する。この構成によっても、ノズル40とワーク支持部31bとが干渉しないため、ワークWの加工領域を、ワークWの端まで寄せることができる。この結果、ワークWをより高い歩留まりでもって、効率的に加工することができる。
【0050】
また、本実施形態1では、ワークWがワーク支持部31bに下側から支持されることで、ワークWとノズル40との間に隙間S1が形成される。これにより、ワークWがワイヤ41により加工された際に発生する加工屑を適切に排除することができる。この結果、ワークWをより効率的に加工することができる。
【0051】
また、本実施形態1では、ブリッジ20は、長手方向及び上下方向に直交する幅方向に延びかつテーブル10に固定するための第1取付ボルト100が挿通される段付きの長孔21を有するとともに、第1取付ボルト100を緩めたときに長孔21に沿って幅方向に移動可能である。これにより、ブリッジ20を保持具30ごと幅方向に移動させることができるため、種々の大きさ及び形状のワークWを適切に保持することができるようになる。これにより、ワイヤ放電加工における生産性をより高くすることができる。
【0052】
また、本実施形態1では、ブリッジ20は、幅方向に延びかつ載置部31aが係合する複数の溝22を有し、各溝22は、ブリッジ20の長手方向に互いに間隔を空けて配置されており、各保持具30は、載置部31aが係合する溝22を変えることで、ブリッジ20に対する固定位置を、ブリッジ20の長手方向に沿って変更可能にそれぞれ構成されている。保持具30を溝22と係合させることで、保持具30をブリッジ20に固定した状態で、保持具30がブリッジ20の長手方向に不意に移動してしまうのを適切に抑制することができる。これにより、ワークWをより適切に保持することができる。
【0053】
〔実施形態2〕
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態2では、
図5及び
図6に示すようにブリッジ220及び保持具230の構成が実施形態1とは異なる。具体的には、各保持具230の下側保持部231は、ワーク配置領域PRとは反対側の端部に、ブリッジ220に向かって突出する第1突出部233をそれぞれ有する。また、各ブリッジ220は、第1突出部233に対応する位置に該第1突出部233と係合する第1係合溝223をそれぞれ有する。第1係合溝223は、
図5に示すように、ブリッジ220の長手方向に延びている。
【0055】
各ブリッジ220は、幅方向における第1係合溝223よりもワーク配置領域PR側に、第2取付ボルト101が締結される複数の第3ボルト孔224をそれぞれ有する。複数の第3ボルト孔224は、ブリッジ220の長手方向に等間隔に並んで形成されている。
【0056】
各保持具230の構成は、下側保持部231に第1突出部233が形成されている点以外は、前述の実施形態1と同じである。
【0057】
尚、図示は省略しているが、本実施形態2でも、保持具230がワークWを保持した状態で、ワークWとノズル40との間には隙間S1が形成される。
【0058】
本実施形態2では、第2取付ボルト101と第3ボルト孔224との締結を解除して、保持具230を、第1突出部233が第1係合溝223に対してスライド移動するように移動させることで、ブリッジ220の長手方向に沿って、保持具230のブリッジ220に対する固定位置を変更可能である。本実施形態2の構成では、保持具230をブリッジ220の長手方向に移動させる際に保持具230を持ち上げる必要がないため、保持具230のブリッジ220に対する固定位置の変更がより容易になる。特に、ワーク支持部231bがワークWを支持した状態でも、保持具230をブリッジ220の長手方向に移動させることができるため、保持具230のワークWに対する保持位置の変更が容易になる。
【0059】
〔実施形態3〕
以下、実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施形態3では、
図7~
図9に示すようにブリッジ320の第1係合溝323及び保持具330の第1突出部333の構成が実施形態1及び2とは異なる。
【0061】
具体的には、各ブリッジ320は、
図8及び
図9に示すように、第1係合溝323における左右両側の溝壁の上端部に、互いに近づくように溝幅方向に突出した一対の第2突出部324を有する。各第2突出部324は、上側ほど互いに近づくように突出している。具体的には、各第2突出部324の上面は、ブリッジ320の上面と面一になるように水平に延びている一方で、各第2突出部324の下面は、上側に向かって互いに近づくように延びる傾斜突出面となっている。一対の第2突出部324は、第1係合溝323の延びる方向、すなわちブリッジ320の長手方向にそれぞれ延びている。
【0062】
各ブリッジ320は、第1係合溝323の長手方向の両側端部に、ワーク配置領域PRに向かって延びる挿入溝325をそれぞれ有する。各挿入溝325は、第2突出部324を有していない。各挿入溝325は、保持具330の第1突出部333が第1係合溝323と係合可能なように、第1突出部333を挿入するための溝である。
【0063】
また、各ブリッジ320には、前記実施形態1及び2とは異なり、第2取付ボルト101が締結されるボルト孔が形成されていない。このため、第2取付ボルト101は、
図8及び
図9に示すように、保持具330の第1固定用ボルト孔331dと螺合した状態で、ブリッジ320の上面と当接する。
【0064】
各保持具330の第1突出部333は、載置部331a側の端部におけるブリッジ320の幅方向の両側部分に、各第2突出部324とそれぞれ係合する一対の第2係合溝334をそれぞれ有する。一対の第2係合溝334は、第1突出部333における載置部331a側の端部が他の部分よりも前記幅方向に狭くなるように、互いに前記幅方向に近づくように凹んでいる。具体的には、第2係合溝334の上側の溝壁は、載置部331aの下面と面一になるように延びている一方で、第2係合溝334の下側の溝壁は、上側に向かって互いに近づくように延びる傾斜溝壁となっている。一対の第2係合溝334は、第2突出部324の延びる方向、すなわちブリッジ320の長手方向にそれぞれ延びている。
【0065】
次に、本実施形態3において、保持具330をブリッジ320に固定する手順を
図8及び
図9を参照しながら説明する。尚、以下で説明する手順は、一例であり、各工程の順序が異なっていてもよい。また、ワーク配置領域PRを挟んで反対側に配置されている各保持具330(ここでは左側の各保持具330)については、左右方向が以下の説明とは逆になる。
【0066】
まず、保持具330の第1突出部333を後側の挿入溝325に挿入して、保持具330を右側に押し込む。これにより、第1突出部333と第1係合溝323とが当接して、第1突出部333と第1係合溝323、及び第2突出部324と第2係合溝334との左右方向の位置合わせが完了する。
【0067】
次に、保持具330を前側に向かってスライドさせる。これにより、第1突出部333と第1係合溝323とが係合するとともに、第2突出部324と第2係合溝334とが係合する。
【0068】
この状態では、第2取付ボルト101が十分には締められておらず、
図8に示すように、第2突出部324の傾斜突出面と第2係合溝334の傾斜溝壁との間には隙間が形成されている。これにより、保持具330を、第1係合溝323に沿ってブリッジ320の長手方向に容易にスライドさせることができる。
【0069】
次いで、ワークWの非加工領域NPRの位置に応じて、保持具330の前後方向の位置を合わせる。
【0070】
そして、第2取付ボルト101を締める。
図9に示すように、第2取付ボルト101がブリッジ320の上面に当接した状態で第2取付ボルト101を締めると、下側保持部331がブリッジ320から離れるように上側に持ち上げられる。そして、
図9に示すように、第2突出部324の傾斜突出面と第2係合溝334の傾斜溝壁とが当接して、傾斜突出面と傾斜溝壁とが互いに押圧する。これにより、傾斜突出面と傾斜溝壁との間に強い摩擦力が生じて、保持具330がブリッジ320に対して固定される。
【0071】
以上のようにして、保持具330がブリッジ320に固定される。
図9の状態から第2取付ボルト101を再度緩めたときには、傾斜突出面と傾斜溝壁との間に再度隙間が生じるため、保持具330の固定位置をブリッジ320の長手方向に沿って変更することができる。
【0072】
尚、図示は省略しているが、本実施形態3でも、保持具330がワークWを保持した状態で、ワークWとノズル40との間には隙間S1が形成される。
【0073】
この実施形態3の構成では、各ブリッジ320にボルト孔が設けられておらず、保持具330のブリッジ320に対する固定位置を連続的に変更することができる。これにより、各保持具330は、ワークWの大きさ、形状、及び加工形状に応じて形成された非加工領域NPRに保持位置を適切に合わせることができ、より適切にワークWを保持することができる。
【0074】
〔実施形態4〕
以下、実施形態4について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1~3と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0075】
実施形態4は、
図10に示すように、前記実施形態2及び3とは異なり、各ブリッジ420に第1突出部426及び第2係合溝427がそれぞれ設けられる一方、各保持具430に第1係合溝435及び第2突出部436がそれぞれ設けられている。
【0076】
保持具430の載置部431aの厚みは、第1係合溝435を形成可能な程度の厚みに設定される。
【0077】
本実施形態4において、保持具430の各第2突出部436は、下側ほど互いに近づくように突出している。具体的には、各第2突出部436の下面は、載置部431aの下面と面一になるように水平に延びている一方で、各第2突出部436の上面は、下側に向かって互いに近づくように延びる傾斜突出面となっている。また、ブリッジ420の第2係合溝427は、下側ほど互いに近づくように突出している。具体的には、各第2係合溝427の下面は、ブリッジ420の上面と面一になるように水平に延びている一方で、各第2係合溝427の上面は、下側に向かって互いに近づくように延びる傾斜溝壁となっている。
【0078】
図10では、各第2突出部436の傾斜突出面と各第2係合溝427の傾斜溝壁との間に隙間が設けられている。この
図10の状態から更に第2取付ボルト101を締めることにより、保持具430の載置部431aがブリッジ420から離れるように上側に移動して、傾斜溝壁と傾斜突出面とが互いに押圧する。これにより、傾斜突出面と傾斜溝壁との間に強い摩擦力が生じて、保持具430がブリッジ420に対して固定される。第2取付ボルト101を緩めたときには、傾斜突出面と傾斜溝壁との間に再度隙間が生じるため、保持具430の固定位置をブリッジ420の長手方向に沿って変更することができる。
【0079】
本実施形態4において、保持具430をブリッジ420に固定する手順は、前記実施形態3の手順と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0080】
尚、図示は省略しているが、本実施形態4でも、保持具430がワークWを保持した状態で、ワークWとノズル40との間には隙間S1が形成される。
【0081】
したがって、この実施形態4の構成でも、保持具430のブリッジ420に対する固定位置を連続的に変更することができる。これにより、各保持具430は、ワークWの大きさ、形状、及び加工形状に応じて形成された非加工領域NPRに保持位置を適切に合わせることができ、より適切にワークWを保持することができる。
【0082】
〔実施形態5〕
以下、実施形態5について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1~4と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0083】
本実施形態5では、
図11~
図13に示すようにブリッジ520及び保持具530の構成が実施形態1~4とは異なる。
【0084】
具体的には、各ブリッジ520には、各保持具530を固定するためのボルト孔や、各保持具530が係合する溝が設けられていない。
【0085】
各保持具530には、載置部531aにおけるワーク配置領域PRとは反対側の端部に、下側に向かって延びるテール部537がそれぞれ設けられている。テール部537は、ブリッジ520のワーク配置領域PRとは反対側の面(
図12,
図13では右側の面)である第2面520bに沿って延びている。テール部537には、保持具530をブリッジ520に対して固定するための固定用ボルト103が締結する第2固定用ボルト孔537aが設けられている。下側保持部531に設けられかつ第2取付ボルト101が螺合するボルト孔は、第2取付ボルト101の頭部の高さ位置を調整するための高さ調整用ボルト孔531dとなっている。尚、
図12及び
図13では、第2取付ボルト101の先端がブリッジ520の上面に当接しているが、本実施形態5では、第2取付ボルト101の先端は、必ずしもブリッジ520の上面に当接している必要はない。
【0086】
次に、本実施形態5において、保持具530をブリッジ520に固定する手順を
図12及び
図13を参照しながら説明する。尚、以下で説明する手順は、一例であり、各工程の順序が異なっていてもよい。また、ワーク配置領域PRを挟んで反対側に配置されている各保持具530(ここでは左側の各保持具530)については、左右方向が以下の説明とは逆になる。
【0087】
まず、保持具530の下側保持部531を、連結部531c、載置部531a、及びテール部537でブリッジ520の上部を上側から覆うように、ブリッジ520に嵌合させる。
【0088】
次に、ワークWの非加工領域NPRの位置に応じて、保持具530の前後方向の位置を合わせるように、保持具530を前後方向に向かってスライドさせる。この状態では、固定用ボルト103が十分には締められておらず、
図12に示すように、連結部531cの右側の面とブリッジ520の第1面520aとの間には隙間が形成されている。これにより、保持具530を、ブリッジ320の長手方向に沿って容易にスライドさせることができる。
【0089】
そして、固定用ボルト103を締める。
図13に示すように、固定用ボルト103がブリッジ520の第2面520bに当接した状態で固定用ボルト103を締めると、下側保持部531が右側にスライドして、テール部537がブリッジ520の第2面520bから離れるとともに、連結部531cがブリッジ520の第1面520aに近づく。そして、
図13示すように、連結部531cが第1面520aに当接して、連結部531cと第1面520aとが互いに押圧する。これにより、連結部531cと第1面520aとの間に強い摩擦力が生じて、保持具530がブリッジ520に対して固定される。
【0090】
以上のようにして、保持具530がブリッジ520に固定される。
図13の状態から固定用ボルト103を再度緩めたときには、連結部531cと第1面520aとの摩擦力が低下するため、保持具530の固定位置をブリッジ520の長手方向に沿って変更することができる。
【0091】
尚、図示は省略しているが、本実施形態5でも、保持具530がワークWを保持した状態で、ワークWとノズル40との間には隙間S1が形成される。
【0092】
したがって、この実施形態5の構成でも、保持具530のブリッジ520に対する固定位置を連続的に変更することができる。これにより、各保持具530は、ワークWの大きさ、形状、及び加工形状に応じて形成された非加工領域NPRに保持位置を適切に合わせることができ、より適切にワークWを保持することができる。
【0093】
特に、本実施形態5では、ブリッジ520に溝を設ける必要がないため、製造コスト及びメンテナンス性の面で有利になる。
【0094】
〔その他の実施形態〕
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0095】
例えば、実施形態1~5では、下側保持部31,231,331,431,531と、上側保持部32,232,332,432,532とでワークWを挟持する構成となっていた。これに限らず、
図14に示す変形例のように、上側保持部632に設けられた保持用ボルト104と下側保持部631のワーク支持部631bとでワークWを挟持する構成としてもよい。この構成では、全ネジで構成された連結用ボルト105が、下側保持部631と上側保持部632との両方と螺合することで、下側保持部631と上側保持部632との相対位置が決まるようになっている。保持具630は、第2取付ボルト101が、載置部631aのワーク配置領域PRとは反対側(
図14では右側)の部分に設けられた固定用ボルト孔631dとブリッジ20に形成された第2ボルト孔22aとの両方に締結することで、ブリッジ20に対して固定される。尚、この
図14では、実施形態1に変形例を採用した場合を示しているが、実施形態2~5に対しても、この変形例のように保持用ボルト104とワーク支持部231b,331b,431b,531bとで、ワークWを挟持する構成としてもよい。
【0096】
また、実施形態2及び3では、下側保持部231,331の載置部231a,331aに第1突出部233,333が設けられていた。これに限らず、連結部231c,331cに第1突出部233,333が設けられていてもよい。この場合、各ブリッジ220,320の第1面の部分に第1係合溝223,323が形成される。
【0097】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
ここに開示された技術は、ワークを加工するワイヤ電極と、上下に対向する一対のノズルとを有するワイヤ放電加工装置のワーク保持構造として有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 ワイヤ放電加工装置
10 テーブル
11 第1台座部
12 第2台座部
20,220,320,420,520 ブリッジ
20a,520a 第1面
21 長孔
30,230,330,430,530,630 保持具
31,231,331,431,531,631 下側保持部(下側部材)
31a,231a,331a,431a,531a,631a 載置部
31b,231b,331b,431b,531b,631b ワーク支持部
32,232,332,432,532,632 上側保持部(上側部材)
40 ノズル
41 ワイヤ
100 第1取付ボルト
101 第2取付ボルト(固定部材)
103 固定用ボルト(固定部材)
104 保持用ボルト(上側部材)
223,323 第1係合溝
233,333 第1突出部
324 第2突出部
334 第2係合溝
426 第1突出部
427 第2係合溝
435 第1係合溝
436 第2突出部
520b 第2面
537 テール部
NPR 非加工領域
PR ワーク配置領域
W ワーク