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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031498
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/28 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E03D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135076
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】谷本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 知祥
(72)【発明者】
【氏名】松崎 貴
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 勝美
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD06
(57)【要約】
【課題】便器本体に対する貯水タンクのがたつきを抑制しつつ、製造コストを抑制して貯水タンクを確実に固定することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、汚物を受けるボウル部6と、このボウル部に入口8aが接続されてボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部8と、を備えた便器本体2と、この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置4と、を有し、このタンク装置は、便器本体の一部に収容されるように取り付けられて便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンク14を備えており、便器本体は、貯水タンクの平面視における外形14aよりも内側の領域A2内で貯水タンクを支持又は固定するタンク受部20a,20bを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部に入口が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、
このタンク装置は、上記便器本体の一部に収容されるように取り付けられて上記便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンクを備えており、
上記便器本体は、上記貯水タンクの平面視における外形よりも内側の領域内で上記貯水タンクを支持又は固定するタンク受部を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記貯水タンクは、この貯水タンクに対して一体又は別体に設けられて上記便器本体の一部を内包する内包部を含む取付部を備えており、上記タンク受部は、平面視において、上記取付部の外形よりも上記貯水タンクの重心位置に近接するように配置されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
さらに、上記内包部又は上記便器本体に対して一体又は別体に設けられたブラケットを有し、上記貯水タンクは、上記ブラケット及び上記タンク受部を介して上記便器本体に対して支持又は固定されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記便器本体は、その後方側が壁面に固定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記ブラケットは、上記内包部の内縁から内側に突出して上記タンク受部を下方から支持又は固定する突出部を備えている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記ブラケットは、上記内包部の内縁から上下方向に突出して上記タンク受部を水平方向から支持又は固定する突出部を備えている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記タンク受部は、上記排水トラップ部に設けられている請求項5又は6に記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記内包部は、その内側に上記排水トラップ部の一部を上下方向に貫通可能にする開口を形成している請求項7記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンクが、便器本体におけるボウル部及び排水トラップ部の外側を取り囲むスカート部の一部に固定されているものが知られている。
より具体的には、上述した特許文献1、2に記載されている従来の水洗大便器においては、貯水タンクの前端が、便器本体におけるボウル部の下方かつ前方側のスカート部の内部に固定されている。一方、貯水タンクの後端は、排水トラップ部の後方側のスカート部に固定されている。これにより、貯水タンクは、便器本体のボウル部の下方のスペース内に収容されるようになっている。
また、上述した従来の水洗大便器においては、貯水タンクの形状がその前後、左右、上下の各方向に対して非対称な形状であるため、貯水タンク内の洗浄水量が便器本体の洗浄状況に応じて変化した際には、貯水タンクの重心の位置についても変化するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-114635号公報
【特許文献2】特開2014-37725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の水洗大便器においては、貯水タンク内の洗浄水量の変化に応じた貯水タンクの重心位置の変化により、貯水タンクの自重等により姿勢が傾いたり、貯水タンクが弾性的な変形(たわみ変形等)が生じたりする場合がある。
また、このように貯水タンクの傾きや変形等は、貯水タンクのがたつきを誘発し、異音の発生原因にもなるという問題がある。
特に、便器本体が陶器製である場合には、便器本体の製造誤差により便器本体と貯水タンクとの固定部にがたつきが発生しやすいという問題もある。
したがって、貯水タンク内の洗浄水量の変化に応じて重心位置が変化し、傾きや変形が生じやすい貯水タンクについて、タンク容量を確保し、製造誤差のある陶器製の便器本体に対するがたつきをいかに抑制しつつ、製造コストを抑制しながら貯水タンクをいかに固定するかが近年要請されている課題ともなっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請されている課題を解決するためになされたものであり、便器本体に対する貯水タンクのがたつきを抑制しつつ、製造コストを抑制して貯水タンクを確実に固定することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部に入口が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、このタンク装置は、上記便器本体の一部に収容されるように取り付けられて上記便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンクを備えており、上記便器本体は、上記貯水タンクの平面視における外形よりも内側の領域内で上記貯水タンクを支持又は固定するタンク受部を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、便器本体のタンク受部が、タンク装置の貯水タンクの平面視における外形よりも内側の領域内で貯水タンクを支持又は固定することができる。
これにより、例えば、洗浄水を貯水した貯水タンクにおいて、その自重等による変形(たわみ変形等)が生ずるような状態であっても、便器本体のタンク受部により、貯水タンクを便器本体に対して支持又は固定する箇所を抑制しつつ、貯水タンクの変形を抑制することができる。
したがって、便器本体の一部に収容されるように取り付けられた貯水タンクの容量を確保しつつ、この貯水タンクを便器本体で支持又は固定する手段に関する部品点数等の製造コストを抑制することができる。
また、貯水タンクをタンク受部により貯水タンクの平面視における外形よりも内側の領域内で支持又は固定することにより、貯水タンクを便器本体の一部に収容することができるため、水洗大便器のローシルエット化等を実現し、水洗大便器のデザイン性を向上することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクは、この貯水タンクに対して一体又は別体に設けられて上記便器本体の一部を内包する内包部を含む取付部を備えており、上記タンク受部は、平面視において、上記取付部の外形よりも上記貯水タンクの重心位置に近接するように配置されている。
このように構成された本発明においては、便器本体のタンク受部が、平面視において、貯水タンクに一体又は別体に設けられて便器本体の一部を内包する内包部を含む取付部の外形よりも貯水タンクの重心位置に近接するように配置させることができた。
これにより、洗浄水を貯水した貯水タンクにおいて、その自重等による変形(たわみ変形等)が生ずるような状態であっても、タンク受部が貯水タンクの変形を抑制しながら、貯水タンクを安定して支持又は固定することができる。
したがって、貯水タンクの容量を比較的大きく確保しつつ、貯水タンクを便器本体で支持又は固定する手段に関する部品点数等の製造コストを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、さらに、上記内包部又は上記便器本体に対して一体又は別体に設けられたブラケットを有し、上記貯水タンクは、上記ブラケット及び上記タンク受部を介して上記便器本体に対して支持又は固定されている。
このように構成された本発明においては、貯水タンクの取付部の内包部又は便器本体に対して一体又は別体にブラケットを設けたことにより、洗浄水を貯水した貯水タンクについて、ブラケット及びタンク受部を介して便器本体で確実に支持又は固定することができると共に、貯水タンクの自重等による変形(たわみ変形等)を抑制することができる。
また、ブラケットとタンク受部とにより、便器本体の一部に収容して取り付けた状態の貯水タンクのがたつきについても抑制することができるため、がたつきによる異音の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記便器本体は、その後方側が壁面に固定されている。
このように構成された本発明においては、便器本体の後方側が壁面に固定されている、いわゆる、「壁掛け式の水洗大便器」であっても、貯水タンクが便器本体の一部に収容されるように取り付けられているため、壁掛け式の水洗大便器のリモデル時等において、壁面よりも表側のみでの施工作業で容易に対応することができる。
また、壁掛け式の水洗大便器のリモデル時等において、貯水タンクを便器本体の後方側の壁面の裏側に設置して隠蔽する等の施工が不要となるため、リモデル時等の施工負担を軽減することができる。
さらに、貯水タンクが便器本体の一部に収容されるように取り付けられているため、貯水タンクが便器本体の外部に取り付けられている壁掛け式の水洗大便器に比べて、便器本体の後方側の壁面の周辺スペースを有効に活用することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記ブラケットは、上記内包部の内縁から内側に突出して上記タンク受部を下方から支持又は固定する突出部を備えている。
このように構成された本発明においては、ブラケットが貯水タンクの取付部の内包部の内縁から内側に突出してタンク受部を下方から支持又は固定する突出部を備えていることにより、貯水タンクをブラケットの突出部を介してタンク受部で確実に支持又は固定することができる。
したがって、タンク受部が、洗浄水を貯水した状態の貯水タンクの変形を抑制しながら、貯水タンクをブラケットの突出部を介して安定して支持又は固定することができる。
また、ブラケットの突出部とタンク受部とにより、便器本体の一部に収容して取り付けた状態の貯水タンクのがたつき(特に、貯水タンクの上下方向のがたつき)についても効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記ブラケットは、上記内包部の内縁から上下方向に突出して上記タンク受部を水平方向から支持又は固定する突出部を備えている。
このように構成された本発明においては、ブラケットが、貯水タンクの取付部における内包部の内縁から上下方向に突出してタンク受部を水平方向から支持する突出部を備えていることにより、貯水タンクをブラケットの突出部を介してタンク受部で確実に支持又は固定することができる。
したがって、タンク受部が、洗浄水を貯水した状態の貯水タンクの変形を抑制しながら、貯水タンクをブラケットの突出部を介して安定して支持又は固定することができる。
また、ブラケットの突出部とタンク受部とにより、便器本体の一部に収容して取り付けた状態の貯水タンクのがたつき(特に、貯水タンクの水平方向のがたつき)についても効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記タンク受部は、上記排水トラップ部に設けられている。
このように構成された本発明においては、貯水タンクの取付部の内包部の内縁から内側又は上下方向に突出してタンク受部を下方又は水平方向から支持又は固定するブラケットの突出部と、便器本体の排水トラップ部に設けられたタンク受部とにより、貯水タンクをブラケットの突出部を介して排水トラップ部のタンク受部で確実に支持又は固定することができる。
したがって、排水トラップ部のタンク受部が、洗浄水を貯水した状態の貯水タンクの変形を抑制しながら、貯水タンクをブラケットの突出部を介して安定して支持又は固定することができる。
また、排水トラップ部の一部であるタンク受部を利用して、貯水タンクを支持又は固定することができるため、排水トラップ部の入口が接続されたボウル部の周辺スペースについても、貯水タンクを収容するための有効スペースとして活用することができると共に、、貯水タンクを支持又は固定するための有効スペースとしても活用することができる。
したがって、貯水タンクの容量を確保しつつ、貯水タンクを便器本体に対して支持又は固定する箇所を抑制して製造コストを抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記内包部は、その内側に上記排水トラップ部の一部を上下方向に貫通可能にする開口を形成している。
このように構成された本発明においては、貯水タンクをブラケットの突出部を介して排水トラップ部のタンク受部で支持又は固定する際に、貯水タンクの取付部の内包部の開口に対して排水トラップ部の一部を上下方向に貫通させることができる。
したがって、貯水タンクの取付部の内包部の開口に挿入された排水トラップ部の一部及び排水トラップ部のタンク受部が、貯水タンクを安定して支持又は固定することができ、貯水タンクの自重等による変形(たわみ変形等)を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水洗大便器によれば、便器本体に対する貯水タンクのがたつきを抑制しつつ、製造コストを抑制して貯水タンクを確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器の概略側面図である。
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器の側面断面図である。
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の底面図である。
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器の底部を斜め下方から見た拡大斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態による水洗大便器の底部を斜め下方から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1図3により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成について概略的に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の概略側面図である。また、図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の分解斜視図である。さらに、図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の側面断面図である。
図1図3に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、その後方側が壁面Wに固定されている、いわゆる、「壁掛け式の水洗大便器」である。
この壁掛け式の水洗大便器1は、後方側が壁面Wに固定される陶器製の便器本体2と、この便器本体2に洗浄水を供給するタンク装置4(詳細は後述する)とを備えている。
【0017】
つぎに、図2及び図3に示すように、便器本体2は、汚物を受けるボウル部6と、このボウル部6の底部に入口8aが接続されてボウル部6内の汚物を排出する排水トラップ部8と、ボウル部6の上縁に形成されるリム部10と、ボウル部6及び排水トラップ部8の外側を取り囲むスカート部12とを備えている。
また、図3に示すように、便器本体2の排水トラップ部8は、ボウル部6の底部に接続された入口8aから後方かつ下方の最低部8bまで下降する下降管路8cと、最低部8bから後方かつ上方の頂部8dまで上昇する上昇管路8eと、頂部8dから後方に延びる後方管路8fとを備えている。
さらに、排水トラップ部8の後方管路8fの下流側(後方側)は、排水ソケット(図示せず)等を介して、壁面Wの裏側から便器本体2側に延びる排水管Dに接続されている。 これにより、本実施形態の水洗大便器1は、便器本体2の排水トラップ部8の後方管路8fから排出された排水が排水ソケット(図示せず)等を介して壁側の排水管Dに排出される、いわゆる、「壁側排水」の排水形態となっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、このような「壁側排水」の排水形態に限られず、便器本体2の排水トラップ部8から排出された排水が、排水ソケット(図示せず)等を介して便器本体2の下方の床面Fの下側の排水管に排出される、いわゆる、「床側排水」の排水形態に対しても適用可能である。
【0018】
つぎに、図2及び図3に示すように、タンク装置4は、水道等の給水源(図示せず)から供給された洗浄水を貯水する貯水タンク14を備えている。この貯水タンク14は、詳細については後述するが、便器本体2及び貯水タンク14の底部に取り付けられる取付部材16を備えている。
ここで、タンク装置4の上流側には、機能部Cが設けられている。この機能部Cは、水道等の給水源(図示せず)から供給される洗浄水が通水する主給水路(図示せず)を開閉するバルブユニット(図示せず)や、このバルブユニット(図示せず)の開閉動作等を制御するコントローラ(図示せず)等を備えている。
【0019】
また、タンク装置4は、貯水タンク14内の洗浄水を便器本体2のリム導水路18及びリム吐水口18aに圧送するポンプ(図示せず)、貯水タンク14内の水位を検知するフロートスイッチ(図示せず)等をそれぞれ備えている。
さらに、ポンプ(図示せず)の作動については、フロートスイッチ(図示せず)が検知した貯水タンク14内の水位に基づいてコントローラ(図示せず)により制御されるようになっている。
これにより、貯水タンク14内に貯水されている洗浄水は、ポンプ(図示せず)が作動することにより、便器本体2のリム導水路18に圧送され、リム吐水口18aから吐水(リム吐水)され、便器洗浄(いわゆる、リム吐水100%による便器洗浄)が行われるようになっている。
【0020】
なお、本実施形態による水洗大便器1は、水道等の給水源(図示せず)から供給されたすべて(100%)の洗浄水が、タンク装置4の貯水タンク14及びポンプ(図示せず)を介して便器本体2のリム吐水口18aに供給される、いわゆる、フルポンプ式の水洗大便器の形態について説明するが、このような形態に限られず、他の形態についても適用可能である。
すなわち、他の形態の水洗大便器として、水道から直圧で供給された洗浄水について、そのまま便器本体のリム吐水口に直接的に供給すると共に、一旦、貯水タンク内に供給して貯水した洗浄水をポンプにより便器本体のゼット吐水口に供給する、いわゆる、ハイブリット式の水洗大便器に適用してもよい。
【0021】
つぎに、図2図5を参照して、本実施形態の水洗大便器1のタンク装置4の貯水タンク14及び取付部材16の詳細、並びに、これらの貯水タンク14及び取付部材16と便器本体2との取付構造について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の底面図である。また、図5は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の底部を斜め下方から見た拡大斜視図である。
【0022】
図2図5に示すように、取付部材16は、貯水タンク14に対して別体に設けられており、貯水タンク14を便器本体に対して取り付けるための取付部として機能するようになっている。
また、取付部材16は、便器本体2の排水トラップ部8の一部(より具体的には、排水トラップ部8における最低部8bを含む下方部分8g)を内包する内包部16aを形成している。
すなわち、取付部材16の内包部16aは、その内側に排水トラップ部8の一部(下方部分8g)を上下方向に貫通可能にする開口A1を形成している。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、取付部材16が貯水タンク14に対して別体に設けられた形態について説明するが、取付部材16が貯水タンク14に対して一体に設けられていてもよい。
【0023】
つぎに、図4に示すように、便器本体2の排水トラップ部8の下方部分8gは、貯水タンク14の平面視における外形(外周部14a)よりも内側の領域A2内で貯水タンク14を支持又は固定する複数(2つ)のタンク受部20,20を備えている。
これらのタンク受部20,20(前側タンク受部20a、後側タンク受部20)は、前後一対配置されている。
また、前側タンク受部20a及び後側タンク受部20bのうちの一方の前側タンク受部20aは、取付部材16の外形(外周部16b)よりも貯水タンク14の重心Gの位置に近接するように配置されている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、タンク受部20が便器本体2の排水トラップ部8に設けられた形態について説明するが、このような形態に限られず、タンク受部20が便器本体2のスカート部12に設けられた形態であってもよい。
【0024】
つぎに、図2図5に示すように、取付部材16は、内包部16aに対して一体に設けられた複数(2つ)のブラケット22,22を備えている。
これらのブラケット22,22(前側ブラケット22a、後側ブラケット22b)は、前側タンク受部20a及び後側タンク受部20bのそれぞれと上下方向に対向するように、前後一対配置されている。
すなわち、各ブラケット22a,22bは、より具体的には、取付部材16の内包部16aの内縁における前端16c及び後端16dのそれぞれから僅かに前後方向内側に突出した後、下方に屈曲して突出した各下端が再び前後方向内側に屈曲して突出する突出部22c,22dを形成している。
そして、互いに上下方向に対向する各タンク受部20a,20bと各ブラケット22a,22bの突出部22c,22dとが、ねじ等の締結部材24,24により固定されるようになっている。
【0025】
これらにより、各タンク受部20a,20bと各ブラケット22a,22bの突出部22c,22dとを各締結部材24,24によって固定するだけで、便器本体2の排水トラップ部8の各タンク受部20a,20bが取付部材16の各ブラケット22a,22bの突出部22c,22dにより下方から支持された状態で、貯水タンク14が便器本体2に対して固定されるようになっている。
また、図3に示すように、貯水タンク14が便器本体2に対して固定された状態では、貯水タンク14が便器本体2のボウル部6の下方に収容された状態となっている。
さらに、図3及び図5に示すように、貯水タンク14が便器本体2のボウル部6の下方に収容された状態では、貯水タンク14が排水トラップ部8の側方及び前方を取り囲みつつ、排水トラップ部8の下方部分8gが取付部材16の内包部16aの内側領域A2内に挿入された状態となっている。
【0026】
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、各ブラケット22a,22bが取付部材16に一体に設けられた形態について説明したが、各ブラケット22a,22bについては、取付部材16に別体に設けられた部材であってもよいし、排水トラップ部8の各タンク受部20a,20b側に一体に設けられてもよい。
さらに、本実施形態の水洗大便器1においては、各タンク受部20a,20bと各ブラケット22a,22bの突出部22c,22dとを各締結部材24,24によって固定した形態について説明したが、締結部材24,24を省略し、各ブラケット22a,22bの突出部22c,22dが少なくとも各タンク受部20a,20bを下方から支持するだけの形態であってもよい。
【0027】
つぎに、図1図5を参照して、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
まず、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2のタンク受部20a,20bが、タンク装置4の貯水タンク14の平面視における外形(外周部14a)よりも内側の領域A2内で貯水タンク14を支持又は固定することができる。
これにより、例えば、洗浄水を貯水した貯水タンク14において、その自重等による変形(たわみ変形等)が生ずるような状態であっても、便器本体2のタンク受部20a,20bにより、貯水タンク14を便器本体2に対して支持又は固定する箇所を抑制しつつ、貯水タンク14の変形を抑制することができる。
したがって、便器本体2の一部に収容されるように取り付けられた貯水タンク14の容量を確保しつつ、この貯水タンク14を便器本体2で支持又は固定する手段に関する部品点数等の製造コストを抑制することができる。
また、貯水タンク14をタンク受部20a,20bにより貯水タンク14の平面視における外形(外周部14a)よりも内側の領域A2内で支持又は固定することにより、貯水タンク14を便器本体2の一部に収容することができるため、水洗大便器1のローシルエット化等を実現し、水洗大便器1のデザイン性を向上することができる。
【0028】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2のタンク受部20a,20bが、平面視において、貯水タンク14に別体に設けられて便器本体2の一部を内包する内包部16aを含む取付部材16の外形(外周部16b)よりも貯水タンク14の重心Gの位置に近接するように配置させることができた。
これにより、洗浄水を貯水した貯水タンク14において、その自重等による変形(たわみ変形等)が生ずるような状態であっても、タンク受部20a,20bが貯水タンク14の変形を抑制しながら、貯水タンク14を安定して支持又は固定することができる。
したがって、貯水タンク14の容量を比較的大きく確保しつつ、貯水タンク14を便器本体2で支持又は固定する手段に関する部品点数等の製造コストを抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク14の取付部材16の内包部16aに対して一体にブラケット22a,22bを設けたことにより、洗浄水を貯水した貯水タンク14について、ブラケット22a,22b及びタンク受部20a,20bを介して便器本体2で確実に支持又は固定することができると共に、貯水タンク14の自重等による変形(たわみ変形等)を抑制することができる。
また、ブラケット22a,22bとタンク受部20a,20bとにより、便器本体2の一部に収容して取り付けた状態の貯水タンク14のがたつきについても抑制することができるため、がたつきによる異音の発生を抑制することができる。
【0030】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2の後方側が壁面Wに固定されている、いわゆる、「壁掛け式の水洗大便器」であっても、貯水タンク14が便器本体2の一部に収容されるように取り付けられている。
これにより、壁掛け式の水洗大便器1のリモデル時等において、壁面Wよりも表側のみでの施工作業で容易に対応することができる。
また、壁掛け式の水洗大便器1のリモデル時等において、貯水タンク14を便器本体2の後方側の壁面Wの裏側に設置して隠蔽する等の施工が不要となるため、リモデル時の施工負担を軽減することができる。
さらに、貯水タンク14が便器本体2の一部(ボウル部6の下方)に収容されるように取り付けられているため、貯水タンク14が便器本体2の外部に取り付けられている壁掛け式の水洗大便器に比べて、便器本体2の後方側の壁面Wの周辺スペースを有効に活用することができる。
【0031】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、各ブラケット22a,22bが貯水タンク14の取付部材16の内包部16aの内縁から内側に突出して各タンク受部20a,20bを下方から支持又は固定する突出部22c,22dを備えている。
これにより、貯水タンク14をブラケット22a,22bの突出部22c,22dを介して各タンク受部20a,20bで確実に支持又は固定することができる。
したがって、タンク受部20a,20bが、洗浄水を貯水した状態の貯水タンク14の変形を抑制しながら、貯水タンク14をブラケット22a,22bの突出部22c,22dを介して安定して支持又は固定することができる。
また、ブラケット22a,22bの突出部22c,22dとタンク受部20a,20bとにより、便器本体2の一部に収容して取り付けた状態の貯水タンク14のがたつき(特に、貯水タンク14の上下方向のがたつき)についても効果的に抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク14の取付部材16の内包部16aの内縁から内側に突出してタンク受部20a,20bを下方から支持又は固定するブラケット22a,22bの突出部22c,22dと、便器本体2の排水トラップ部8に設けられたタンク受部20a,20bとにより、貯水タンク14をブラケット22a,22bの突出部22c,22dを介して排水トラップ部8のタンク受部20a,20bで確実に支持又は固定することができる。
したがって、排水トラップ部8のタンク受部20a,20bが、洗浄水を貯水した状態の貯水タンク14の変形を抑制しながら、貯水タンク14をブラケット22a,22bの突出部22c,22dを介して安定して支持又は固定することができる。
また、排水トラップ部8の一部であるタンク受部20a,20bを利用して、貯水タンク14を支持又は固定することができるため、排水トラップ部8の入口8aが接続されたボウル部6の周辺スペースについても、貯水タンク14を収容するための有効スペースとして活用することができると共に、貯水タンク14を支持又は固定するための有効スペースとしても活用することができる。
したがって、貯水タンク14の容量を確保しつつ、貯水タンク14を便器本体2に対して支持又は固定する箇所を抑制して製造コストを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク14をブラケット22a,22bの突出部22c,22dを介して排水トラップ部8のタンク受部20a,20bで支持又は固定する際に、貯水タンク14の取付部材16の内包部16aの開口A1に対して排水トラップ部8の一部(下方部分8g)を上下方向に貫通させることができる。
したがって、貯水タンク14の取付部材16の内包部16aの開口A1に挿入された排水トラップ部8の一部(下方部分8g)及び排水トラップ部8のタンク受部20a,20bが、貯水タンク14を安定して支持又は固定することができ、貯水タンク14の自重等による変形(たわみ変形等)を確実に抑制することができる。
【0034】
つぎに、図6を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器100について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態による水洗大便器の底部を斜め下方から見た拡大斜視図である。
ここで、図6に示す本発明の第2実施形態による水洗大便器100において、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
図6に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器100においては、取付部材116の一対のブラケット122,122(前側ブラケット122a、後側ブラケット122b)が、内包部116aの内縁の左右方向の一方側(取付部材116を前方側から見て右側)と左右方向の他方側(取付部材116を前方側から見て左側)にそれぞれから下方に突出する突出部122c,122dを形成している構造が、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の取付部材16のブラケット22,22(前側ブラケット22a、後側ブラケット22b)の突出部22c,22dの構造とは異なっている。
また、図6に示すように、本実施形態の水洗大便器100においては、便器本体102のタンク受部120,120(前側タンク受部120a、後側タンク受部120b)のそれぞれが、排水トラップ部8の左右方向の側面から下方に延びている。
【0035】
これらにより、各タンク受部120a,120bと各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dとが、ねじ等の締結部材24,24により左右水平方向から固定されるようになっている。
よって、各タンク受部120a,120bと各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dとを各締結部材24,24によって固定するだけで、便器本体102の排水トラップ部108の各タンク受部120a,120bが取付部材116の各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dにより左右水平方向の内側から支持された状態で、貯水タンク14が便器本体102に対して固定されるようになっている。
【0036】
上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器100によれば、各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dが、貯水タンク14の取付部材116の内包部116aの内縁から上下方向(下方)に突出し、各タンク受部120a,120bを左右水平方向外側から支持することにより、貯水タンク14を各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dを介して各タンク受部120a,120bで確実に支持又は固定することができる。
したがって、各タンク受部120a,120bが、洗浄水を貯水した状態の貯水タンク14の変形を抑制しながら、貯水タンク14を各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dを介して安定して支持又は固定することができる。
また、各ブラケット122a,122bの突出部122c,122dと各タンク受部120a,120bとにより、便器本体102の一部(排水トラップ部108の下方部分108g)に収容して取り付けた状態の貯水タンク14のがたつき(特に、貯水タンク14の水平方向のがたつき)についても効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 便器本体
4 タンク装置
6 ボウル部
8 排水トラップ部
8a 排水トラップ部の入口
8b 排水トラップ部の最低部
8c 排水トラップ部の下降管路
8d 排水トラップ部の頂部
8e 排水トラップ部の上昇管路
8f 排水トラップ部の後方管路
8g 排水トラップ部の下方部分
10 リム部
12 スカート部
14 貯水タンク
14a 貯水タンクの外周部(貯水タンクの外形)
16 取付部材(取付部)
16a 内包部
16b 取付部材の外周部(取付部材の外形)
16c 内包部の内縁の前端
16d 内包部の内縁の後端
18 リム導水路
18a リム吐水口
20 タンク受部
20a 前側タンク受部
20b 後側タンク受部
22 ブラケット
22a 前側ブラケット
22b 後側ブラケット
22c 前側ブラケットの突出部
22d 後側ブラケットの突出部
24 締結部材
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
102 便器本体
108 排水トラップ部
108g 排水トラップ部の下方部分
116 取付部材(取付部)
116a 内包部
120 タンク受部
120a 前側タンク受部
120b 後側タンク受部
122 ブラケット
122a 前側ブラケット
122b 後側ブラケット
122c 前側ブラケットの突出部
122d 後側ブラケットの突出部
A1 取付部材の内包部の開口
A2 貯水タンクの外形よりも内側の領域、取付部材の内包部の内側領域
C 機能部
D 排水管
F 床面
G 貯水タンクの重心
W 壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6