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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031525
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240229BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20240229BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
B23Q3/155 G
B23Q11/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135131
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【テーマコード(参考)】
3C002
3C011
【Fターム(参考)】
3C002HH09
3C011BB11
3C011EE01
(57)【要約】
【課題】工作機械のスライド動作に応じて吐出口から吐出する工作液の吐出量を制御できる工作機械を提供すること。
【解決手段】工作機械は、工作液を供給する供給装置と、複数の洗い流し箇所の各々に工作液を吐出する複数の吐出口と、供給装置と複数の吐出口を接続し、複数の吐出口の各々に工作液を供給する供給路と、供給路に設けられ、複数の吐出口のうち、少なくとも1つの吐出口から吐出する工作液の吐出量を変更する制御弁と、ワークに係わる作業状態に応じてスライド方向へ移動しスライド位置を変更するスライド装置と、スライド装置のスライド位置に応じて制御弁を制御し、複数の吐出口のうち、少なくとも1つの吐出口から吐出する工作液の吐出量を変更する制御装置と、を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作液を供給する供給装置と、
複数の洗い流し箇所の各々に前記工作液を吐出する複数の吐出口と、
前記供給装置と複数の前記吐出口を接続し、複数の前記吐出口の各々に前記工作液を供給する供給路と、
前記供給路に設けられ、複数の前記吐出口のうち、少なくとも1つの前記吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を変更する制御弁と、
ワークに係わる作業状態に応じてスライド方向へ移動しスライド位置を変更するスライド装置と、
前記スライド装置の前記スライド位置に応じて前記制御弁を制御し、複数の前記吐出口のうち、少なくとも1つの前記吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を変更する制御装置と、
を備える工作機械。
【請求項2】
複数の前記吐出口は、
第1吐出口と、
第2吐出口と、
を含み、
前記制御弁は、
前記第1吐出口の吐出量を変更する第1制御弁と、
前記第2吐出口の吐出量を変更する第2制御弁と、
を含み、
前記制御装置は、
前記スライド装置が第1スライド位置に移動するのに応じて、前記第1制御弁を制御して前記第1吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を減らし、
前記スライド装置が前記第1スライド位置とは異なる第2スライド位置に移動するのに応じて、前記第2制御弁を制御して前記第2吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を減らす、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ワークの加工を実行するタレットをさらに備え、
前記スライド装置は、
前記ワークを保持し、前記タレットに近づく方向、及び前記タレットから離れる方向に移動するワーク保持装置であり、前記スライド方向の移動に合わせて伸縮する伸縮カバーを有し、
複数の前記吐出口は、
ワーク保持装置用吐出口を含み、
前記ワーク保持装置用吐出口は、
前記工作液を吐出し、伸びた前記伸縮カバーの上の切粉を流し、
前記制御装置は、
前記ワーク保持装置を制御し前記伸縮カバーを伸ばした状態では、前記ワーク保持装置用吐出口から前記工作液を吐出させ、
前記ワーク保持装置を制御し前記伸縮カバーを縮めた状態では、前記ワーク保持装置用吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を減らす、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
複数の前記吐出口は、
タレット用吐出口を含み、
前記タレット用吐出口は、
前記工作液を吐出し、前記タレットの下に溜った切粉を流し、
前記制御装置は、
前記ワーク保持装置に保持された前記ワークを前記タレットによって加工可能な前記スライド位置であるタレット位置まで前記ワーク保持装置を移動させ前記伸縮カバーを伸ばした状態、及び前記タレットから離れた前記スライド位置である原点位置まで前記ワーク保持装置を移動させ前記伸縮カバーを縮めた状態、の両方の状態において、前記タレット用吐出口から前記工作液を吐出させ、且つ、
前記タレット位置まで前記ワーク保持装置を移動させ前記伸縮カバーを伸ばした状態において、前記ワーク保持装置用吐出口からも前記工作液を吐出させる、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
工具主軸装置をさらに備え、
前記工具主軸装置は、
前記伸縮カバーを縮めた状態では、前記スライド方向において前記タレットを間に挟んで前記ワーク保持装置とは反対側に配置され、
前記制御装置は、
前記ワーク保持装置に保持された前記ワークを前記工具主軸装置によって加工可能な前記スライド位置である工具主軸位置まで前記ワーク保持装置を移動させ前記伸縮カバーを伸ばした状態において、前記ワーク保持装置用吐出口から前記工作液を吐出させる一方、前記タレット用吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を減らす、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
第1主軸を中心にワークを回転させる第1ワーク主軸装置と、
前記第1主軸と平行な方向において、前記第1ワーク主軸装置と互いに対向する位置に配置され、ワークを回転させる第2ワーク主軸装置と、
複数の前記制御弁と、
をさらに備え、
前記第1ワーク主軸装置は、
前記スライド方向の移動に合わせて伸縮する第1主軸カバーを有し、
前記第2ワーク主軸装置は、
前記スライド方向の移動に合わせて伸縮する第2主軸カバーを有し、
複数の前記吐出口は、
第1ワーク主軸装置用吐出口と、
第2ワーク主軸装置用吐出口と、
を含み、
前記第1ワーク主軸装置用吐出口は、
前記工作液を吐出し、伸びた前記第1主軸カバーの上の切粉を流し、
前記第2ワーク主軸装置用吐出口は、
前記工作液を吐出し、伸びた前記第2主軸カバーの上の切粉を流し、
前記供給装置は、
前記第1ワーク主軸装置用吐出口、及び前記第2ワーク主軸装置用吐出口へ前記工作液を供給し、
複数の前記制御弁は、
前記供給装置と前記第1ワーク主軸装置用吐出口を接続する前記供給路に設けられた第1制御弁と、
前記供給装置と前記第2ワーク主軸装置用吐出口を接続する前記供給路に設けられた第2制御弁と、
を含み、
前記制御装置は、
前記第1ワーク主軸装置の前記スライド位置に応じて前記第1制御弁を制御し、前記第1ワーク主軸装置用吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を変更し、
前記第2ワーク主軸装置の前記スライド位置に応じて前記第2制御弁を制御し、前記第2ワーク主軸装置用吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を変更する、請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械において、切粉を洗い流す工作液を吐出口から吐出する制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作液により切粉を洗い流す工作機械について種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、タンクに溜めたクーラントをポンプで吸い上げ、複数の吐出口からクーラントを吐出させ、洗い流し箇所に堆積した切粉を洗い流すクーラント供給装置について記載されている。特許文献1のクーラント供給装置は、複数の吐出口に繋がる第1~第3分岐パイプの各々に第1~第3電磁弁が設けられている。制御装置は、第1~第3電磁弁の各々に接続されたタイマのタイムアップ時間を設定することで、第1~第3電磁弁のON/OFFを切り替え、クーラントの吐出状態を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-030109号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1では、第1~第3電磁弁についてONタイマとOFFタイマを設定することで、第1~第3電磁弁の開閉時間を制御している。しかしながら、特許文献1には、工作機械の具体的な構造が開示されておらず、工作機械の構造や動作との関係において第1~第3電磁弁をどのように開閉するのか記載されていない。一方で、工作機械は、ワークを加工等する工程に合わせて工作機械の各装置を動作させる。このため、あるタイミングでは、吐出口から吐出した工作液によって切粉を洗い流せても、別のタイミングでは、同じ吐出口から工作液を吐出しても適切に切粉を洗い流せない虞があり、不必要に工作液が流されるという問題が発生する。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、工作機械のスライド動作に応じて吐出口から吐出する工作液の吐出量を制御できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、工作液を供給する供給装置と、複数の洗い流し箇所の各々に前記工作液を吐出する複数の吐出口と、前記供給装置と複数の前記吐出口を接続し、複数の前記吐出口の各々に前記工作液を供給する供給路と、前記供給路に設けられ、複数の前記吐出口のうち、少なくとも1つの前記吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を変更する制御弁と、ワークに係わる作業状態に応じてスライド方向へ移動しスライド位置を変更するスライド装置と、前記スライド装置の前記スライド位置に応じて前記制御弁を制御し、複数の前記吐出口のうち、少なくとも1つの前記吐出口から吐出する前記工作液の吐出量を変更する制御装置と、を備える工作機械を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の工作機械によれば、スライド装置は、ワークの作業状態に応じてスライド方向へ移動する。工作機械は、スライド装置が移動することで装置の状態が変化する。このため、スライド装置のスライド位置によっては、吐出口から吐出した工作液が切粉を流し難い状態も発生する。そこで、工作機械の制御装置は、スライド装置のスライド位置に応じて制御弁を制御し、吐出口から吐出する工作液の吐出量を変更する。これにより、工作機
械のスライド動作に応じて吐出口から吐出する工作液の吐出量を制御でき、工作液を有効に活用して切粉を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例に係わる工作機械を正面側の左上方から見た斜視図。
図2】前面カバーの一部を取り外した工作機械を正面側の左上方から見た斜視図。
図3】前面カバーの一部を取り外した工作機械を正面側の右上方から見た斜視図。
図4】前面カバーを取り外した工作機械を正面側の右上方から見た斜視図。
図5】複合加工機の主要な構造を示す斜視図。
図6】複合加工機の主要な構造を示す平面図。
図7】複合加工機の主要な構造を示す右側面図。
図8】工作機械のブロック図。
図9】第1ワーク主軸装置を原点位置に配置した状態を示す正面図。
図10】第1ワーク主軸装置を加工位置に配置した状態を示す正面図。
図11】第1ワーク主軸装置を工具主軸位置に配置した状態を示す正面図。
図12】工作機械が備えるクーラント供給装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の工作機械を具体化した一実施例について、図を参照しつつ詳しく説明する。図1は、本実施例の工作機械1を正面側の左上方から見た斜視図を示している。以下の説明では、図1に示すように、工作機械1を正面から見た方向を基準として、機械幅方向であって装置の設置面に水平な方向を左右方向(Z軸方向)、装置の設置面に平行で左右方向に垂直な方向を前後方向(Y軸方向)、左右方向及び前後方向に垂直な方向を上下方向(X軸方向)と称して説明する。
【0010】
(工作機械1の構成)
図1に示すように、工作機械1は、前面を機体カバー2によって覆われており、機体カバー2の前方に操作盤3が設けられている。操作盤3には、例えば、タッチパネルやスイッチなど、表示や入力を行うユーザインタフェースが設けられ、工作機械1の制御装置15(図8参照)の制御に基づいてタッチパネル等の表示内容を変更し、受け付けた入力情報を制御装置15に出力する。図1は、機械正面の中央に操作盤3を配置した状態を示している。機体カバー2は、工作機械1の前面を覆うパネルと、そのパネルを背面側から支持するフレームを備えている。機体カバー2の内部には、後述する複合加工機21(図5参照)等が収納されている。
【0011】
工作機械1は、機械正面の中央部分を間に挟んだ左右両側に左正面扉4と右正面扉5が設けられている。機械正面の中央の後方には、後述する工具主軸装置27(図5参照)が設けられている。また、左正面扉4は、例えば、スライド扉であり、後述する第1ワーク主軸装置23(図5参照)の第1加工室85A(図6参照)が扉の後方に設けられ、扉を開けることで第1加工室85Aにアクセス可能となっている。右正面扉5は、左正面扉4と同様に、第2ワーク主軸装置24(図5参照)の第2加工室85C(図6参照)が扉の後方に設けられている。操作盤3は、例えば、工作機械1の前面に設けられた移動機構3Aによって支持されている。移動機構3Aは、機械正面の中央から右正面扉5の右端部の位置まで操作盤3を左右方向にスライド移動可能なスライドレールを備えている。また、移動機構3Aは、X軸方向と平行な軸を中心に操作盤3を回転可能に保持する保持部材を備え、この保持部材をスライドレールにスライド移動可能に保持する。また、工作機械1の前面側の上部には、自動工具交換装置6のツールマガジンが設けられている。自動工具交換装置6は、工具主軸装置27の交換用の工具(図5に示す主軸ヘッド工具T1)がツールマガジンに収納され、工具主軸装置27の工具の交換を実行する。また、工作機械1の上部には、ワーク搬送装置7が設けられている。ワーク搬送装置7は、例えば、ガント
リ式の搬送装置であり、把持したワークW(図2参照)をXYZの3軸方向に移動可能に構成されている。ワーク搬送装置7は、制御装置15の制御に基づいて他の工作機械や複合加工機21との間でワークの受け渡しを実行する。
【0012】
図2及び図3は、機体カバー2のうち、左側のカバー部や左正面扉4(図1参照)を取り外した状態を示している。また、図2及び図3は、図1に示すワーク搬送装置7、後述するスピンドルモータ39、フレーム構体87の一部など、工作機械1が備える一部の部材の図示を省略している。また、図2及び図3は、前方に向かって回転する操作盤3の動作状態を連続的に図示している。図2及び図3に示すように、工作機械1は、複合加工機21の各装置(後述する第1ワーク主軸装置23や第1タレット装置25(図5参照)の一部を)第1及び第2伸縮カバー101,102などによって覆われた状態で、チャック機構37やタレット51を第1加工室85A内に配置している。
【0013】
(複合加工機21の構成)
次に、複合加工機21について説明する。図4図7に示すように、本実施例の複合加工機21は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持った加工機である。複合加工機21は、ワークWを把持して回転させる第1及び第2ワーク主軸装置23,24と、ワークWの加工に対応した複数のタレット工具T2を有する第1及び第2タレット装置25,26が、それぞれ左右対称に配置された所謂対向2軸旋盤に加え、旋盤では難しい加工を実行するための工具主軸装置27が機体中央に設けられている。
【0014】
複合加工機21は、第1及び第2ワーク主軸装置23,24(以下、主軸装置23,24と称する場合がある)、第1及び第2タレット装置25,26(以下、タレット装置25,26と称する場合がある)、工具主軸装置27が一つのベッド29に搭載されている。主軸装置23,24は、第2タレット装置25,26の位置に比べ機体前方側に配置されている。主軸装置23,24は、主軸の中心線が機体幅方向であって且つ水平になるよう配置されており、その移動方向は主軸と平行なZ軸方向となっている。タレット装置25,26と工具主軸装置27は、何れも主軸(Z軸)と直交する機体前後方向と機体上下方向に移動する。特に、工具主軸装置27の移動方向が水平なY軸と鉛直なX軸であるのに対し、タレット装置25,26の移動方向は、Y軸及びX軸を45度傾けたYL軸とXL軸である(図7参照)。工具主軸装置27は、左右方向においてタレット装置25,26の間に挟まれるようにして機体中央に配置されている。工具主軸装置27は、左右方向と平行な方向、即ち、主軸と平行な方向において、後述する原点位置に配置した第1ワーク主軸装置23とは第1タレット装置25を間に挟んで反対側に配置され、原点位置に配置した第2ワーク主軸装置24とは第2タレット装置26を間に挟んで反対側に配置されている。
【0015】
複合加工機21は、機体前後方向の寸法を抑えるため、ベッド29がスラントベッド構造であり、主軸装置23,24の搭載面が前を低くした前側傾斜面31となっており、逆に機体後方側に配置されたタレット装置25,26の搭載面が後を低くした後側傾斜面32(図7参照)となっている。そして、装置全体の配置が前傾になるように、前側傾斜面31は低い位置に形成され、後側傾斜面32は高い位置に形成されている。主軸装置23,24は同じ構造であり、円筒形状の主軸台35にスピンドルが回転自在に組み込まれ、そこに加工対象であるワークWを把持及び解放するチャック機構37が組付けられている。チャック機構37は、例えば、ワークWを挟持する複数のチャック爪やコレットチャックを備えている。尚、図4は、チャック機構37の図示を省略している。スピンドルは、スピンドルモータ39の回転軸とプーリを介してベルトが掛け渡されている。主軸装置23,24の各々は、制御装置15(図8参照)によりスピンドルモータ39の回転を制御され、チャック機構37に把持されたワークWを回転させ、加工時の位相決めや所定速度での回転動作を実行する。
【0016】
主軸装置23,24の各々の主軸台35やスピンドルモータ39は、主軸スライド41に搭載されている。主軸装置23,24の各々には、主軸スライド41を前側傾斜面31に沿ってZ軸方向に移動させる駆動機構42(図7参照)が設けられている。一対の駆動機構42は、スピンドルモータ39、一対のガイドレール43、一対のガイドブロック45(図7参照)、ネジ軸47(ボールネジ機構、図5参照)、Z軸サーボモータ49などを備えている。主軸スライド41は、ベッド29の前側傾斜面31に設けられた一対のガイドレール43に沿ってZ軸方向に移動可能となっている。一対のガイドレール43は、前側傾斜面31の左側と右側にそれぞれ設けられ、傾斜方向において所定の間隔を間に設け、Z軸方向と平行な方向に沿った状態で固定されている。主軸スライド41の下面には、一対のガイドブロック45(図7参照)が固定されている。一対のガイドブロック45は、一対のガイドレール43の各々に摺動可能に取り付けられている。主軸スライド41は、下面が前側傾斜面31の傾斜角度に合わせられている。主軸台35及びスピンドルモータ39は、前側傾斜面31から前方側に大きく突き出ないように、上下に搭載されている。
【0017】
主軸装置23,24は、一対の駆動機構42の各ボールネジ機構によってZ軸方向の移動が可能であり、2本のガイドレール43の間にはZ軸に平行なネジ軸47が軸受を介して支持されている。また、一対の駆動機構42の各々は、主軸装置23,24の機体幅方向の外側にZ軸サーボモータ49をそれぞれ設けられている。Z軸サーボモータ49の回転軸は、ネジ軸47に連結されている。一方、主軸スライド41にはネジ軸47が通ったナット部材(図示略)が固定されている。一対の駆動機構42は、制御装置15の制御に基づいてZ軸サーボモータ49をそれぞれ駆動しネジ軸47を回転させることで、主軸スライド41をZ軸方向の任意の位置に直線移動(スライド移動)させることができる。主軸装置23,24、駆動機構42は、本開示のスライド装置の一例である。
【0018】
タレット装置25,26は、複数のタレット工具T2の中から該当するタレット工具T2を旋回割出しによって選択し、ワークWに対する切削など所定の加工を行う。タレット装置25,26の各々は、タレット51、割出し用サーボモータ53を備えている。タレット51は、円盤形状をなし、半径方向の外側の外周面に、タレット工具T2を取り付け可能なホルダが円周方向に等間隔に設けられている。タレット装置25,26の各々は、制御装置15(図8参照)の制御に基づいて割出し用サーボモータ53を回転させ、任意のタレット工具T2を円周上の作業位置に位置決めする(割り出す)。タレット51のタレット工具T2には、バイトやドリルなどが取り付けられており、バイト等の先端を機体幅方向の外側を向けた状態で取り付けられている。従って、加工時には、主軸装置23,24がZ軸方向に移動することにより、向かってくるワークWに対してタレット工具T2が機体中央側から当てられることになる。
【0019】
タレット装置25,26は、タレット工具T2を作業位置へと移動させるため、タレット51をZ軸に直交するXY平面上であって、水平方向及び鉛直方向に対して45度の角度をもったYL軸方向とXL軸方向に移動させるようにした駆動機構が設けられている。図7に示すように、ベッド29にはYL軸に平行な後側傾斜面32が形成され、そこにYL軸ガイドレール55が固定されている。後側傾斜面32の上方には、略三角形状のベーススライド57が設けられている。ベーススライド57は、一辺にYL軸ガイドレール55を摺動するガイド部59が設けられ、90度で隣り合う辺にタレット51を搭載する搭載面を形成され、その搭載面にXL軸ガイドレール61が設けられている。タレット装置25,26の各々は、タレット51や割出し用サーボモータ53を搭載するタレットスライド63を備える。タレットスライド63のガイド部64は、XL軸ガイドレール61に対して摺動可能に噛み合っており、XL軸と平行な加工移動線L1に沿って移動可能となっている。
【0020】
ベーススライド57とタレットスライド63にはボールネジ機構が設けられている。YL軸ガイドレール55及びXL軸ガイドレール61の各々には、YL軸やXL軸と平行なネジ軸が軸受によって支持されている。各ネジ軸はベーススライド57やタレットスライド63に固定されたナット部材に挿入されている。各ネジ軸はYL軸サーボモータ69又はXL軸サーボモータ70の回転軸に連結されている。従って、タレット装置25,26は、YL軸サーボモータ69とXL軸サーボモータ70の駆動制御によってタレット51のYL軸及びXL軸の各方向の移動制御のほか、両軸方向の移動を合成した水平方向の移動制御が可能になっている。
【0021】
次に、工具主軸装置27は、例えば、タレット装置25,26ではできない深さや角度での加工を可能にするものである。工具主軸装置27は、主軸ヘッド71内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵され、その下端部に設けられた工具装着部に対して、自動工具交換装置6(図1参照)に収められた様々な主軸ヘッド工具T1の取り替えが行われるようになっている。主軸ヘッド71は、主軸スライド73(図7参照)に対して回転可能に取り付けられ、B軸モータ75の駆動に応じてY軸方向と平行なB軸を中心に回転し、主軸ヘッド工具T1の角度を調整する。また、工具主軸装置27は、主軸ヘッド工具T1を作業位置へ移動させるための駆動機構として、主軸ヘッド71を水平なY軸方向に移動させるY軸モータ79(図6参照)と、鉛直なX軸方向に移動させるX軸モータ81を備え、主軸ヘッド71をY軸及びX軸に移動可能となっている。
【0022】
また、複合加工機21は、主軸装置23,24で同時にワークWを加工するほか、工具主軸装置27における工具交換も行うことが可能である。そのため、図5及び図6に示すように、各装置がクーラントや切屑などの影響を受けないように、2枚の分離シャッタ83が設けられている。2枚の分離シャッタ83は、工具主軸装置27の左右方向の両側に配置され、サーボモータ等を備えるシャッタ駆動機構84(図8参照)によって機体前後方向に個別に水平移動するよう構成されている。複合加工機21は、この2枚の分離シャッタ83によって、第1加工室85A、工具交換室85B、第2加工室85Cに分離可能となっている。第1加工室85Aは、第1ワーク主軸装置23及び第1タレット装置25を他の装置と分離し、第1ワーク主軸装置23で把持したワークWに対する第1タレット装置25による加工を行なう加工室である。同様に、第2加工室85Cは、第2ワーク主軸装置24のワークWに対する第2タレット装置26による加工を行なう加工室である。工具交換室85Bは、工具主軸装置27を分離し、主軸ヘッド工具T1の交換等を行なう作業室である。制御装置15は、シャッタ駆動機構84を駆動して、分離シャッタ83を前方に出し各部屋を区画する、又は後方に収納し各部屋を開放する。制御装置15は、3つの部屋に区画する制御の他、2枚の分離シャッタ83の一方だけを前方に出すことで、例えば、第1加工室85Aと工具交換室85Bを繋げた広い空間を作り出すこともできる。
【0023】
また、図4に示すように、工作機械1は、ベッド29の幅に合わせて立てられた前後左右の柱に対し、前後左右に延びる梁が接続された櫓型のフレーム構体87を備え、ワーク搬送装置7等をフレーム構体87で支持している。尚、図2図4は、機体カバー2や複合加工機21を見易くするためフレーム構体87のフレーム部材の一部の図示を省略している。ワーク搬送装置7のレール台93は、フレーム構体87の上に固定されている。レール台93は、機体幅方向に延びる2本の走行レール89と、2本の走行レール89の間に設けられた1本の走行用ラック91を有する。ワーク搬送装置7は、2本の走行レール89に沿って摺動可能な走行テーブル(図示略)を有する。走行テーブルには走行用モータが固定され、その回転軸に固定されたピニオンが走行用ラック91と噛合することにより機体幅方向の移動が可能になっている。
【0024】
(制御装置15)
図8に示すように、工作機械1の制御装置15は、CPU15Aと、記憶装置15Bを備え、コンピュータを主体とする処理装置である。記憶装置15Bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク等を備えている。尚、記憶装置15Bは、上記した構成に限らず、SSDやDVDなどの他の記憶媒体を用いた構成でも良い。制御装置15は、各装置(主軸装置23,24やタレット装置25,26等)と駆動回路17を介して接続され、各装置を制御可能となっている。駆動回路17は、例えば、スピンドルモータ39やZ軸サーボモータ49に取り付けられたエンコーダから位置情報を取得し、スピンドルモータ39等に対するフィードバック制御を実行するアンプを含んでいる。また、制御装置15は、後述するクーラント供給装置110(図12参照)の第1~第4ポンプ111~114、電磁弁121~129、チップコンベア131等に接続され、各装置を制御可能なっている。記憶装置15Bには、制御プログラム16が記憶されている。制御プログラム16には、例えば、ワークに対する加工において主軸装置23,24等の各々の動作を制御するNCプログラム、ワーク搬送装置7の動作を制御するプログラム、自動工具交換装置6の動作を制御するプログラム、各種の信号を処理するラダー回路用のプログラム等が含まれている。特に、制御プログラム16には、後述する駆動機構42を駆動して主軸装置23,24のスライド位置を変更するプログラムや、電磁弁121~129(図12参照)を制御するプログラムが含まれている。
【0025】
(第1及び第2伸縮カバー101,102について)
次に、主軸装置23,24等を覆う伸縮カバーについて説明する。図2及び図3に示すように、工作機械1は、主軸装置23を覆う第1伸縮カバー101と、主軸装置23を移動させる駆動機構42(一対のガイドレール43、ネジ軸47など)を覆う第2伸縮カバー102を備えている。装置右側の主軸装置24を覆う第1伸縮カバー101と、主軸装置24を移動させる駆動機構42を覆う第2伸縮カバー102は、カバーの向きを除いて、装置左側の主軸装置23等の第1及び第2伸縮カバー101,102と同一構成となっている。このため、以下の説明では、第1ワーク主軸装置23側について主に説明し、第2ワーク主軸装置24側(右側)の第1及び第2伸縮カバー101,102についての説明を省略する。尚、第1及び第2伸縮カバー101,102の構造は、左右で異なる構造でも良い。
【0026】
図2及び図3に示すように、工作機械1は、Z軸方向で対向する分離シャッタ83と壁部材103を備えている。主軸装置23の第1加工室85Aは、Z軸方向で対向する分離シャッタ83と壁部材103によって区画可能となっている。壁部材103は、例えば、X軸方向及びY軸方向に平行な平面を有する板形状の部材である。壁部材103は、下端部をベッド29によって支持され、上部等をフレーム構体87によって支持されている。Z軸方向における壁部材103の外側(左側)である機械室には、主軸装置23の主軸台35やスピンドルモータ39が設けられている。
【0027】
第1及び第2伸縮カバー101,102は、例えば、所謂、テレスコ(登録商標)カバーであり、複数の類似(相似)した形状の金属カバーを重ね、重ねた金属カバーをZ軸方向にスライドさせることでZ軸方向に伸縮可能となっている。尚、第1及び第2伸縮カバー101,102は、テレスコ(登録商標)カバーに限らない。例えば、第1及び第2伸縮カバー101,102は、弾性部材や金属繊維の布を、所謂、蛇腹折りやミウラ折りのように折り畳み可能な構造でも良い。即ち、本開示の伸縮カバーは、複数のカバーを重ねる構造に限らない。また、工作機械1は、第1及び第2伸縮カバー101,102を備えない構成でも良い。
【0028】
第1伸縮カバー101は、主軸装置23の一部を覆っている。具体的には、第1伸縮カバー101は、壁部材103に対してZ軸方向に挿入された状態で配置され、Z軸方向へ
伸縮可能な状態で壁部材103によって保持されている。第1伸縮カバー101は、例えば、第1カバー101Aと、第2カバー101Bを備えている。第1カバー101Aは、例えば、多角形の筒形状をなしている。壁部材103には、第1カバー101Aの外形に合わせて形成された貫通孔がZ軸方向と平行な方向に沿って形成されている。第1カバー101Aは、壁部材103の貫通孔に挿入され、Z軸方向と平行な方向にスライド移動可能となっている。例えば、第1カバー101Aと壁部材103の貫通孔との間には、摺動部からの切削油の漏れ出しを抑制するためのシール部材105が設けられている。尚、第1伸縮カバー101は、2つのカバーを重ねる構造に限らず、3つ以上のカバーを重ねる構造でも良い。
【0029】
第2カバー101Bは、例えば、第1カバー101Aと相似した多角形の筒状をなし、第1カバー101Aよりも若干だけ小さく形成され、第1カバー101Aに挿入されている。第2カバー101Bは、筒状の第1カバー101Aに対して挿入され、Z軸方向と平行な方向にスライド移動可能となっている。第2カバー101Bには、主軸装置23の主軸台35や主軸スライド41が収納されている。第2カバー101Bの右側の開口は、側壁101Cによって閉塞されている。第2カバー101Bの右側の側壁101Cは、壁部材103の第1加工室85A側の面とともに、第1加工室85Aを区画する壁として機能し、切粉やクーラントの機械室側(主軸台35等側)への進入を抑制する。
【0030】
主軸装置23は、第2カバー101Bの側壁101Cから第1加工室85A内へチャック機構37よりも右側を突出させた状態で配置され、第1加工室85A内においてチャック機構37を回転可能な状態となっている。第1伸縮カバー101は、例えば、主軸装置23と連結されており、主軸装置23の右方向へのスライド移動に合わせて伸び、左方向へのスライド移動に合わせて折りたたまれる。後述するように、第1伸縮カバー101は、壁部材103に対する第1及び第2カバー101A,101Bの位置や、第1及び第2カバー101A,101Bの相対的な位置を変更することで伸縮する(図9図11参照)。
【0031】
第2伸縮カバー102は、第1加工室85Aの下部に設けられ、左右方向に伸縮可能となっている。チャック機構37は、第1加工室85A内において第2伸縮カバー102の上方に配置されている。一対のガイドレール43やネジ軸47は、第2伸縮カバー102によって上から覆われている。第2伸縮カバー102の左端部は、例えば、第2カバー101Bの側壁101Cの下端部に固定されている。第2伸縮カバー102の右側部分は、一対の分離シャッタ83のうち、左側の分離シャッタ83の下方に設けられた区画部材107(図2参照)に挿入されている。第2伸縮カバー102の右端部は、工具主軸装置27の下方に設けられた基部102A(図9参照)と連結されている。第2伸縮カバー102は、例えば、基部102Aを除いて7個のカバーをZ軸方向と平行な方向に重ねて構成され、基部102Aから左側に向かって順番に大きなカバーを重ねて構成されている。第2伸縮カバー102は、主軸装置23の左方向へのスライド移動に合わせて伸び、右方向へのスライド移動に合わせて折りたたまれる。従って、第2伸縮カバー102の伸縮状態は、第1伸縮カバー101の伸縮状態とは逆の状態となる。
【0032】
主軸装置23及び駆動機構42(以下、主軸装置23等という場合がある)が移動するZ軸方向と平行な方向(以下、スライド方向という場合がある)は、本開示のスライド方向の一例である。また、主軸装置23等が移動する位置は、本開示のスライド位置の一例である。図9から図11は、主軸装置23等を移動させ、第1及び第2伸縮カバー101,102を伸縮させた状態を示している。図9から図11は、原点位置P1、タレット位置P2、工具主軸位置P3の3つのスライド位置の状態を示している。図9に示す原点位置P1では、図2及び図3と同様に、主軸装置23等を最も左側へ移動した状態となっており、第1伸縮カバー101を最も折りたたみ、第2伸縮カバー102を最も伸ばした態
となっている。尚、図9から図11は、一部の部材(主軸装置24、第2タレット装置26、ワークWなど)の図示を省略している。
【0033】
原点位置P1は、例えば、主軸装置23等のZ軸方向への移動制御(NC制御)において基準となる位置である。例えば、制御装置15は、システムの起動時において機械室に設けられたストッパ装置108(図2図3参照)により移動が規制される位置まで主軸装置23等を左に移動させ、その位置をZ軸方向の原点、即ち、原点位置P1として設定する。ストッパ装置108及び後述するストッパ装置109は、例えば、ダンパ等を備え、移動する第1伸縮カバー101に係合して移動を規制する装置である。制御装置15は、その後の主軸装置23等の制御において、この原点位置P1を基準としてZ軸方向への移動を制御する。制御装置15は、主軸装置24についても同様に制御する。原点位置P1は、Z軸方向における主軸装置23の移動範囲において、タレット装置25や工具主軸装置27から最も離れた位置である。
【0034】
図10に示すタレット位置P2は、主軸装置23に保持されたワークWをタレット装置25によって加工可能なスライド位置である。制御装置15は、例えば、主軸装置23を原点位置P1に配置し、ワーク搬送装置7から主軸装置23へワークWの受け渡しを実行した後、主軸装置23等をタレット位置P2に移動させる。タレット位置P2において、主軸装置23に保持されたワークWは、タレット装置25のタレット工具T2によって加工可能な位置に配置され回転する。制御装置15は、主軸装置23等のZ軸方向のスライド位置、及びタレット装置25のXL軸、YL軸の位置を変更し、タレット工具T2によってワークWを加工する。また、タレット位置P2では、例えば、第1伸縮カバー101は、第1カバー101Aから第2カバー101Bの一部を右側に突出させている。第2カバー101Bは、例えば、Z軸方向において、壁部材103とタレット51の間に配置される。
【0035】
図11に示す工具主軸位置P3は、主軸装置23に保持されたワークWを工具主軸装置27によって加工可能なスライド位置である。制御装置15は、例えば、工具主軸装置27の主軸ヘッド工具T1でワークWの側面に穴を開ける場合、主軸装置23等を工具主軸位置P3に移動させる。また、上記したように、工具主軸装置27は、B軸を中心に主軸ヘッド71を回転可能となっている。このため、例えば、主軸ヘッド71を図11に示す状態から時計回り方向へ90度回転させ、主軸ヘッド工具T1を左向きに水平にした場合、主軸装置23等は、図11に示す位置よりも左側の位置となる。制御装置15は、例えば、図11に示す位置よりも左側の位置から主軸装置23等を右側に移動させながら、主軸ヘッド工具T1によってワークWに対する穴開け加工等を実行する。第1伸縮カバー101は、主軸装置23等の移動に合わせて右方向に徐々に突出し、タレット装置25の前方に配置される第2カバー101Bの突出量を増大させる。この主軸装置23等をタレット装置25の前方でスライド移動させながら工具主軸装置27によって加工する位置(範囲)も、主軸装置23に保持されたワークWを工具主軸装置27によって加工可能な工具主軸位置P3となる。このため、工具主軸位置P3は、図11に示す側面に穴を開ける間、主軸装置23を固定する1つの位置でも良く、主軸装置23をスライド移動させながら加工を行なう一定の範囲内の複数の位置でも良い。工具主軸位置P3において、主軸装置23に保持されたワークWは、工具主軸装置27の下方、あるいは左下方となる位置に配置される。制御装置15は、主軸装置23のZ軸方向のスライド位置、及び主軸ヘッド71のX軸、Y軸、B軸の位置を変更し、主軸ヘッド工具T1によってワークWを加工する。
【0036】
あるいは、制御装置15は、主軸装置23,24の間でワークWを受け渡す場合、主軸装置23,24を図11に示す工具主軸位置P3より更に右側(中央)の位置(以下、反転位置という)に移動させる。制御装置15は、例えば、主軸装置23のチャック機構3
7で保持したワークWを、主軸装置24のチャック機構37でチャックし、主軸装置23から主軸装置24へワークWを受け渡す。ワークWは、受け渡されることで表裏を反転された状態となる。例えば、制御装置15は、壁部材103の機械室側に設けられたストッパ装置109(図2図3参照)により移動が規制される位置まで主軸装置23等を右に移動させ、主軸装置23等を反転位置に配置する。上記した工具主軸位置P3や反転位置では、例えば、第1カバー101Aから突出した第2カバー101Bは、タレット装置25の前方の下方となる位置に配置される。
【0037】
(クーラント供給装置110について)
次に、工作機械1が備えるクーラント供給装置110について説明する。図12はクーラント供給装置110の構成を示している。クーラント供給装置110は、工作機械1の各装置へクーラントを、例えば、洗浄用、潤滑用あるいは冷却用として供給する装置である。図12に示すように、クーラント供給装置110は、第1~第4ポンプ111~114、クーラントタンク116、クリーン槽118、9個の電磁弁121~129を備えている。
【0038】
工作機械1は、ワークWの加工に際して潤滑・切粉(加工屑)の洗浄・冷却にクーラントを使用し、使用したクーラントを図1に示すクーラントタンク116に溜める。図1に示すように、クーラントタンク116には、チップコンベア131が組み込まれている。チップコンベア131は、使用済みのクーラントから切粉を分けて機外へ搬出する。チップコンベア131は、例えば、クーラントタンク116内に配置された貯留槽132を備えている。貯留槽132は、例えば、ベッド29の前方に設けられ、機体幅方向に長い容器であり、上面に投入口132Aが形成されている。貯留槽132は、例えば、左右方向において、第1及び第2加工室85A,85C、及び工具交換室85Bの前方の下方となる位置に設けられ、投入口132Aを介して第1及び第2加工室85A,85C、及び工具交換室85Bと繋がっている。第1及び第2加工室85A,85C、及び工具交換室85Bを流れたクーラントや切粉は、投入口132Aから貯留槽132内に流さる。
【0039】
チップコンベア131は、貯留槽132の左端部から上方に傾斜した排出ダクト133を備える。排出ダクト133は、機体カバー2の左側の外にまで延び、左端部に排出口133Aが形成されている。貯留槽132及び排出ダクト133内には、無端のコンベアベルトが組み込まれており、コンベアベルトの回転駆動により排出ダクト133を登る傾斜部分では切粉だけが運ばれて、流れ落ちるクーラントは貯留槽132に戻される。コンベアベルトは、排出口133Aで折り返しているため、搬送した切粉を排出口133Aから回収ボックス(図示略)に落下させて集める。
【0040】
クーラントタンク116は、ベッド29の前に設けられ、左右方向において貯留槽132よりも長い貯留槽である。クーラントタンク116は、チップコンベア131の貯留槽132から流れ出たクーラントが溜められるようになっている。貯留槽132には、例えば、微細孔のパンチングメタルなどで塞がれた落し口が形成されている。このため、溢れるようにして落とし口から流れ出たクーラントは、一定の大きさ以上の切屑が取り除かれた状態でクーラントタンク116内に溜められる。クーラントタンク116は、例えば、左右方向においてベッド29よりも長く形成され、左端部がベッド29の端部よりも左側に突き出るようにして配置される。例えば、第1ポンプ111(図12参照)は、この突き出たクーラントタンク116の左端部からクーラントを吸い上げる。
【0041】
第1~第4ポンプ111~114は、クーラントを搬送する装置である。第1~第4ポンプ111~114としては、例えば、定容量の容積式のポンプを採用することができる。具体的には、ギアポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプなどを採用できる。尚、第1~第4ポンプ111~114は、容積式のポンプに限らず、タービンポンプなどの非容積
式のポンプなど、他の形式や構造のポンプでも良い。
【0042】
また、クーラントは、本開示の工作液の一例である。尚、本開示の工作液は、クーラントのような冷却機能を備えた液体に限らず、切削油のように主として潤滑を目的とした液体でも良く、洗浄に特化した洗浄液でも良い。また、工作液は、冷却、洗浄、潤滑の3つの機能を備えた液体でも良く、3つの機能とは別の機能を備えた液体でも良い。また、工作液は、上記した液体に気体(マイクロナノバルブなど)を混ぜた液体でも良い。
【0043】
第1ポンプ111は、クーラントタンク116からクーラントを吸い上げてクリーン槽118に供給する。第1ポンプ111は、例えば、サイクロンフィルタなどのフィルタ機能を備え、クーラントタンク116から吸い上げた使用済みのクーラント(所謂、ダーティ液)に混入した細かい切粉を、フィルタ機能によって除去しクリーン液として分けてクリーン槽118に供給する。尚、クリーン液とダーティ液を分ける方法は、サイクロンフィルタのような遠心分離を用いる方向に限らず、例えば、重力により切粉を沈殿させる方法や、フィルタでろ過する方法でも良い。
【0044】
第2ポンプ112は、クリーン槽118に接続され、例えば、単位時間当たりに所定の容量のクーラントをクリーン槽118から供給路135に供給する。供給路135は、主軸装置23,24、及びタレット装置25,26の各々に設けられた吐出口137と接続されている。主軸装置23,24の各々に設けられた吐出口137は、例えば、主軸装置23,24に保持されたワークWに向けて吐出先を設定されている。また、タレット装置25,26の各々に設けられた吐出口137は、例えば、タレット装置25,26の各々における作業位置に割り出されたタレット工具T2に向けて吐出先を設定されている。第2ポンプ112は、複数の吐出口137の各々からワークWやタレット工具T2に向けてクーラントを吐出する。供給路135は、4つの分岐路136を介して、主軸装置23,24、及びタレット装置25,26の各々の吐出口137と接続されている。4つの分岐路136には、電磁弁121~124がそれぞれ取り付けられている。電磁弁121~124は、この順に第1ワーク主軸装置23、第1タレット装置25、第2ワーク主軸装置24、第2タレット装置26の各々の吐出口137に繋がる分岐路136に接続されている。
【0045】
9個の電磁弁121~129は、例えば、2方弁であり、制御装置15の制御に基づいて分岐路136等のクーラントの供給路を開閉する。制御装置15は、第2ポンプ112を駆動してクーラントを供給させつつ、電磁弁121~124の開閉を制御する。制御装置15は、例えば、主軸装置23及びタレット装置25によりワークWを加工するのに合わせて電磁弁121,122を開き加工を実行する。また、制御装置15は、主軸装置24及びタレット装置26によりワークWを加工するのに合わせて電磁弁123,124を開き加工を実行する。また、制御装置15は、例えば、タレット装置25,26の加工が終了し、切粉の洗い流しなどが終了すると、電磁弁121~124を閉じ、吐出口137からのクーラントの吐出を停止する。尚、以下の説明では、任意の吐出口からクーラントの吐出を開始することを、単に、吐出口の吐出を開始する、という場合がある。同様に、任意の吐出口からクーラントの吐出を停止することを、吐出口の吐出を停止する、という場合がある。
【0046】
また、第3ポンプ113は、クリーン槽118に接続され、例えば、単位時間当たりに所定の容量のクーラントをクリーン槽118から供給路139に供給する。供給路139は、工具主軸装置27に設けられた吐出口138に接続されている。吐出口138は、工具主軸装置27の主軸ヘッド工具T1に向けて吐出先を設定されている。供給路139は、電磁弁125が取り付けられ、制御装置15の制御に基づいて電磁弁125を開閉され、クーラントの吐出の開始と停止を切り替えられる。
【0047】
また、第4ポンプ114は、クーラントタンク116に接続され、例えば、単位時間当たりに所定の容量のクーラントをクーラントタンク116から供給路140に供給する。供給路140は、例えば、4つの分岐路145に分岐している。4つの分岐路145は、第1~第4吐出口141~144の各々に接続されている。4つの分岐路145には、電磁弁126~129がそれぞれ取り付けられている。電磁弁126~129は、この順に第1~第4吐出口141~144の各々に繋がる分岐路145に接続されている。
【0048】
尚、図1及び図12に示すクーラント供給装置110の構成は、一例であり、適宜変更可能である。例えば、チップコンベア131や排出口133Aを、工作機械1の右側に設けても良い。また、第2ポンプ112を、1つの供給路135を4つの分岐路136に分岐させて4つの吐出口137に接続させたが、これに限らない。例えば、4つの吐出口137にそれぞれ接続される供給路135を合計4つ設け、各供給路135に接続される第2ポンプ112を合計4つ設けても良い。同様に、第1~第4吐出口141~144にそれぞれ接続される分岐路145を合計4つ設け、各分岐路145に接続される第4ポンプ114を合計4つ設けても良い。また、第4ポンプ114を、クリーン槽118からクーラントを汲み上げるように構成しても良く、第2ポンプ112、第3ポンプ113をクーラントタンク116からクーラントを汲み上げるように構成しても良い。
【0049】
また、電磁弁121~129は、本開示の制御弁の一例である。電磁弁121~129は、2方弁に限らず、3方弁等の他の電磁弁でも良い。また、本開示の制御弁は、電磁弁に限らず、例えば、モータを駆動源として弁体を駆動する制御弁でも良く、ピエゾ素子を用いた制御弁でも良い。また、本開示の制御弁は、供給路135,139,140の開閉(供給又は停止)の2つの状態を切り替える弁に限らず、供給路135,139,140を流れるクーラントの流量を、制御装置15の制御に基づいて増減させる弁でも良い。また、供給路135,139,140は、金属製の配管でも良く、樹脂性のホースでも良く、それらを組み合わせたものでも良い。
【0050】
図9図11に示すように、第1吐出口141は、第1加工室85A内に配置され、左右方向において、原点位置P1に配置した主軸装置23の第1カバー101Aの右端部となる位置に配置され、上下方向において第1カバー101Aの上部となる位置に配置されている。また、第1吐出口141は、前後方向において、原点位置P1から右側に伸び出した第1及び第2カバー101A,101Bの上面における後端となる位置に配置されている。第1吐出口141は、第1及び第2カバー101A,101Bの上面の後端から前方に向かってクーラントの吐出先が設定されている。第1吐出口141から吐出されたクーラントは、図10の矢印146や図11の矢印147に示すように、伸びだした第1及び第2カバー101A,101Bの上面を前方に流れ、第1及び第2カバー101A,101Bの上の切粉を洗い流し、洗い流した切粉とともに投入口132A(図1参照)に流れ込む。また、第1吐出口141から吐出されたクーラントの一部は、第2伸縮カバー102の上を流れることで、第2伸縮カバー102の上の切粉を投入口132Aへ洗い流す。
【0051】
また、第2吐出口142は、第1加工室85A内に配置され、第1タレット装置25のタレット51の後方且つ上方となる位置に配置されている。第2吐出口142は、下方に向かってクーラントの吐出先が設定されている。第2吐出口142から吐出されたクーラントは、図9の矢印148や図10の矢印149に示すように、タレット51の後方や下方に設けられたタレットカバー151の上の切粉を洗い流し、洗い流した切粉とともに投入口132A(図1参照)に流れ込む。タレットカバー151は、例えば、タレット51の形状に合わせてタレット51を覆うように凹設して形成されたカバーである。また、第2吐出口142から吐出されたクーラントの一部は、第2伸縮カバー102の上を流れる
ことで、第2伸縮カバー102の上の切粉を投入口132Aへ洗い流す。
【0052】
尚、図示は省略するが、主軸装置24側の第3吐出口143は、第1吐出口141と同様に、第2加工室85C内に配置され、左右方向において原点位置P1に配置した主軸装置24の第1カバー101Aの右端部となる位置に配置され、上下方向において主軸装置24の第1カバー101Aの上部となる位置に配置されている。また、第4吐出口144は、第2吐出口142と同様に、第2加工室85C内に配置され、第2タレット装置26のタレット51の後方且つ上方となる位置に配置されている。また、第1吐出口141と第3吐出口143は、上記した左右対称な構成に限らず、左右非対称な位置に配置される構成でも良い。同様に、第2吐出口142と第4吐出口144は、左右対象な構成に限らず、左右非対称な位置に配置される構成でも良い。
【0053】
(クーラントの吐出制御について)
制御装置15は、主軸装置23,24のスライド位置に応じて電磁弁126~129を制御し、第1~第4吐出口141~144から吐出するクーラントの吐出量を変更する。制御装置15は、第3及び第4吐出口143,144の吐出量について、第1及び第2吐出口141,142と同様に、電磁弁128,129を制御することで変更する。このため、以下の説明では、制御装置15が、電磁弁126,127を制御して、第1及び第2吐出口141,142から吐出するクーラントの吐出量を変更する制御について主に説明し、電磁弁128,129の制御の説明については適宜省略する。また、以下の説明では、制御装置15が、電磁弁126,127を開いてクーラントを吐出する状態と、閉じてクーラントの吐出を停止する状態の2つの状態を切り替える場合について説明する。尚、制御装置15は、吐出状態と吐出の停止状態の切り替えずに、第1~第4吐出口141~144の各々から吐出するクーラントの吐出量を変更しても良い。従って、本開示における工作液(実施例ではクーラント)の吐出量を変更するとは、吐出の供給又は停止を切り替えることに限らず、吐出量を増減させることを含む概念である。また、吐出量を減らすとは、吐出量をゼロにすること(吐出を完全に停止すること)に限らず、吐出量を任意の量から別の量まで減らすことを含む概念である。
【0054】
図9図11に示すように、主軸装置23等を原点位置P1側(左側)へ移動させ、第1伸縮カバー101をより縮めると、第1伸縮カバー101は、第1加工室85Aから退避し、全体のほとんどが壁部材103よりも左側に収納される。このため、第1吐出口141から吐出したクーラントは、第1伸縮カバー101をより縮めるほど、洗い流す対象となる第1及び第2伸縮カバー101,102が存在しなくなる。特に、第1伸縮カバー101を原点位置P1まで移動させ最も縮めた状態では、第1吐出口141から吐出されるクーラントが、不必要に垂れ流される状態となる。
【0055】
また、図11に示すように、主軸装置23等を工具主軸位置P3に配置させた状態では、右方向に伸びた第2カバー101B(第1伸縮カバー101)が、タレットカバー151の下流側(前方)に配置されている。第2カバー101Bは、第2吐出口142から吐出されクーランによって流された切粉を、塞き止めるような状態となる。このため、第2吐出口142からクーラントを流しても切粉を洗い流す効率が、第1伸縮カバー101を原点位置P1やタレット位置P2に配置した状態、即ち、タレットカバー151の前方を開放した状態に比べて低下する。
【0056】
そこで、制御装置15は、例えば、図9に示す原点位置P1に主軸装置23等を配置する場合、電磁弁126を閉じて第1吐出口141からのクーラントの吐出を停止する。また、制御装置15は、電磁弁127を開いて第2吐出口142からクーラントを吐出する。例えば、主軸装置23とワーク搬送装置7との間でワークWの受け渡しを実行するため、主軸装置23を原点位置P1に配置する場合など、第1吐出口141の吐出を停止する
。制御装置15が主軸装置23等のスライド位置を検出する方法としては、例えば、Z軸サーボモータ49に取り付けたエンコーダの位置情報に基づく検出方法を採用できる。
【0057】
尚、スライド位置の検出方法としては、モータのエンコーダを用いる方法に限らず、例えば、リニアスケールなどの他の位置情報を検出可能な装置を用いる方法を採用できる。また、制御装置15が、スライド位置に応じて電磁弁126~129を制御する方法は、スライド位置の値に基づく方法に限らない。例えば、スライド位置と、加工の各工程とは対応付け可能である。このため、制御装置15は、加工の各工程、例えば、原点位置P1でのワークW受け渡し工程、タレット位置P2でのタレット装置25による加工工程、工具主軸位置P3での工具主軸装置27の加工工程などに応じて電磁弁126~129の開閉を制御しても良い。この場合、制御装置15は、電磁弁126~129の制御において、主軸装置23のスライド位置の検出をする必要がなくなる。
【0058】
次に、制御装置15は、原点位置P1から図10に示すタレット位置P2に主軸装置23等を移動させると、電磁弁126を開いて第1吐出口141からクーラントを吐出する。また、制御装置15は、原点位置P1からタレット位置P2へ主軸装置23を移動させる間、電磁弁127を開いたままの状態とし第2吐出口142の吐出を継続する。従って、第1タレット装置25による加工を実行している間は、第1及び第2吐出口141,142の両方からクーラントが吐出される。尚、制御装置15は、主軸装置23をタレット位置P2に配置する前から第1吐出口141の吐出を開始しても良い。例えば、制御装置15は、第1吐出口141の吐出先に第2カバー101Bが配置される位置から第1吐出口141の吐出を開始しても良い。あるいは、制御装置15は、原点位置P1とタレット位置P2の中間地点に、第2カバー101Bの右端部が到達した時点から第1吐出口141の吐出を開始しても良い。
【0059】
次に、制御装置15は、タレット位置P2から図11に示す工具主軸位置P3へ主軸装置23等を移動させる間、電磁弁126を開いたままの状態とし第1吐出口141の吐出を継続する。また、制御装置15は、タレット位置P2から工具主軸位置P3に主軸装置23等を移動させると、電磁弁127を閉じ第2吐出口142の吐出を停止する。従って、工具主軸装置27によるワークWの加工や、主軸装置23,24間のワークWの受け渡しを実行する場合、第2吐出口142の吐出は停止される。この工具主軸位置P3は、上記したように、加工内容に応じて図11に示す工具主軸位置P3となる場合や、図11に示す位置よりも左側の位置から開始される場合もある。例えば、上記したように、工具主軸装置27の主軸ヘッド71を図11に示す状態から時計回り方向へ90度だけ回転させ、タレット工具T2を水平にして加工を実行する場合、主軸装置23等は、図11に示す工具主軸位置P3よりも左側の位置となる。従って、制御装置15は、図11に示す工具主軸位置P3よりも左側の位置を、工具主軸位置P3として電磁弁127を閉じても良い。尚、制御装置15は、図11に示すような、ワークWが工具主軸装置27の主軸ヘッド71の下方に配置された場合のみ、電磁弁127を閉じるような制御を実行しても良い。
【0060】
また、上記した説明では、第1伸縮カバー101を伸ばす場合の電磁弁126,127の制御内容について説明したが、第1伸縮カバー101を縮める場合についても同様に電磁弁126,127を制御できる。例えば、制御装置15は、主軸装置23を工具主軸位置P3からタレット位置P2に移動させるのに合わせて、電磁弁126の開放状態を維持しつつ、電磁弁127を開く。また、制御装置15は、主軸装置23をタレット位置P2から原点位置P1に移動させるのに合わせて、電磁弁127の開放状態を維持しつつ、電磁弁126を閉じる。あるいは、制御装置15は、主軸装置23等を原点位置P1から工具主軸位置P3にタレット位置P2を通過させて移動させる場合や、工具主軸位置P3から原点位置P1へタレット位置P2を通過させて移動させる場合も、第1伸縮カバー101の伸縮に応じて電磁弁126,127を制御する。例えば、制御装置15は、主軸装置
23等を原点位置P1から工具主軸位置P3へ移動させる場合、タレット位置P2で電磁弁126を開き、工具主軸位置P3で電磁弁127を閉じる。また、制御装置15は、主軸装置23等を工具主軸位置P3から原点位置P1へ移動させる場合、タレット位置P2で電磁弁127を開き、原点位置P1で電磁弁126を閉じる。
【0061】
従って、制御装置15は、主軸装置23の駆動機構42を制御し第1伸縮カバー101を伸ばした状態では、電磁弁126を開き第1吐出口141からクーラントを吐出させる。一方で、制御装置15は、第1伸縮カバー101を縮めた状態では、電磁弁126を閉じ第1吐出口141の吐出を停止する。これにより、クーラントの不必要な垂れ流しを抑制できる。また、第4ポンプ114から定量でクーラントを供給し続ける状態で電磁弁126を閉じることで第1吐出口141に繋がる分岐路145内の圧力を高めることができる。そして、第1伸縮カバー101を伸ばしクーラントの吐出を開始する時に電磁弁126を開くことで、勢いを増加させて第1吐出口141からクーラントを吐出させ、第1伸縮カバー101上の切粉をより確実に洗い流すことができる。その結果、第1伸縮カバー101と壁部材103の間に切粉が入り込むなどの不具合の発生を抑制できる。さらに、第1吐出口141は、第2~第4吐出口142~144と共通の供給路140に接続されている。このため、第1吐出口141の吐出を停止することで、他の吐出口から吐出するクーラントの吐出量を増やし、潤滑や清掃を効果的に実施できる。
【0062】
さらに、制御装置15は、主軸装置23等を原点位置P1に移動させるのに応じて、電磁弁126を閉じ第1吐出口141の吐出を停止する。また、制御装置15は、主軸装置23を工具主軸位置P3に移動させるのに応じて、電磁弁127を閉じ第2吐出口142の吐出を停止する。これにより、主軸装置23のスライド位置に応じて不要又は効率の悪いクーラントの吐出を停止できる。停止後に供給を再開するときの圧力の増加や、停止中の他の吐出口の突出量の増加を図ることで切粉をより効率良く洗い流すことができる。
【0063】
また、制御装置15は、タレット位置P2まで主軸装置23を移動させ第1伸縮カバー101を伸ばした状態、及び原点位置P1まで主軸装置23を移動させ第1伸縮カバー101を縮めた状態、の両方の状態において、第2吐出口142の吐出を実行する。これにより、第1伸縮カバー101が邪魔にならない間は、第2吐出口142の吐出を行い、タレットカバー151上の切粉を洗い流すことができる。また、制御装置15は、タレット位置P2まで主軸装置23等を移動させ第1伸縮カバー101を伸ばした状態において、第1吐出口141からもクーラントを吐出させる。これにより、第1及び第2吐出口141,142の両方からクーラントを吐出させることで、切粉を効率よく洗い流すことができる。
【0064】
また、制御装置15は、工具主軸位置P3まで主軸装置23を移動させ第1伸縮カバー101を伸ばした状態において、第1吐出口141からクーラントを吐出させる一方、第2吐出口142からのクーラントの吐出を停止する。これにより、第2吐出口142から吐出したクーラントによって洗い流された切粉が第1伸縮カバー101に塞き止められ付着することを抑制できる。
【0065】
また、上記したように、工作機械1は、対向2軸の旋盤を備えている。制御装置15は、電磁弁126,127と同様に、電磁弁128,129についても制御できる。制御装置15は、例えば、主軸装置24等のスライド位置に応じて電磁弁128,129を制御し第3及び第4吐出口143,144から吐出するクーラントの吐出量を変更する。また、第4ポンプ114は、第1~第4吐出口141~144の各々にクーラントを供給する。これにより、各加工装置の動作状況に応じて任意の吐出口からのクーラントの吐出を停止し、他の吐出口からクーラントを勢いよく吐出させることができる。例えば、制御装置15は、ワーク搬送装置7から主軸装置23にワークWを受け取るために、主軸装置23
等を原点位置P1に配置する場合、第1吐出口141を閉じることで、第3及び第4吐出口143,144から吐出するクーラントの吐出量を増加させることができる。即ち、一方の加工装置で加工を実行していない場合に、他方の加工装置の潤滑や洗浄に必要なクーラントの吐出量を増加させることができる。また、例えば、主軸装置23,24の両方を工具主軸位置P3に配置しワークWの反転を実行する場合には、第2及び第4吐出口142,144の吐出を停止できる。これにより、左右両方の第1伸縮カバー101が伸びきった状態で、第1及び第3吐出口141,143の吐出量を増大させ、一対の第1伸縮カバー101の上の切粉をより確実に洗い流すことができる。
【0066】
因みに、主軸装置23,24及び一対の駆動機構42は、スライド装置、ワーク保持装置の一例である。クーラント供給装置110は、供給装置の一例である。第1伸縮カバー101及びタレットカバー151の上は、洗い流し箇所の一例である。第1伸縮カバー101、第2伸縮カバー102は、伸縮カバーの一例である。第1ワーク主軸装置23の第1伸縮カバー101は、第1主軸カバーの一例である。第2ワーク主軸装置24の第1伸縮カバー101は、第2主軸カバーの一例である。電磁弁126~129は、制御弁、第1制御弁、第2制御弁の一例である。第1~第4吐出口141~144は、吐出口、第1吐出口、第2吐出口の一例である。第1吐出口141は、ワーク保持装置用吐出口、第1ワーク主軸装置用吐出口の一例である。第3吐出口143は、ワーク保持装置用吐出口、第2ワーク主軸装置用吐出口の一例である。第2吐出口142、第4吐出口144は、タレット用吐出口の一例である。原点位置P1、タレット位置P2、工具主軸位置P3は、第1スライド位置、及び第2スライド位置の一例である。クーラントは、工作液の一例である。
【0067】
以上、上記した本実施例では、以下の効果を奏する。
本開示の一態様である制御装置15は、主軸装置23,24のスライド位置に応じて電磁弁126~129を制御し、第1~第4吐出口141~144の吐出量を変更する。これによれば、工作機械1のスライド動作に応じて第1~第4吐出口141~144の吐出量を制御でき、クーラントを有効に活用して切粉を流すことができる。
【0068】
また、本開示の内容は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、本開示のスライド装置として主軸装置23,24を採用し、主軸装置23,24の第1伸縮カバー101の伸縮に応じてクーラントの吐出量を制御したが、これに限らない。
例えば、ワーク搬送装置7のヘッドのスライド位置によってはヘッドが切粉を流す流路に介在する場合、制御装置15は、ヘッドのXYZ位置に応じてクーラントの吐出量を制御しても良い。より具体的には、制御装置15は、ワーク搬送装置7のヘッドと主軸装置23との間でワークWの受け渡しを実行するスライド位置にヘッドを移動させた場合、タレット装置25の第2吐出口142の吐出を停止しても良い。
あるいは、制御装置15は、タレット装置25,26のスライド位置に応じて、第2吐出口142の吐出量を制御しても良い。例えば、制御装置15は、第1タレット装置25をXL軸やYL軸(図7参照)に沿って最も後方側に移動させた際に、第2吐出口142の吐出先にタレット51が介在する虞がある場合、第2吐出口142の吐出を停止しても良い。
また、上記実施例の工作機械1は、主軸装置23,24をスライド移動させる構成であったが、これに限らない。例えば、工作機械1は、正面2軸の旋盤で、主軸装置23,24のXYZの位置を固定し、位置を固定した主軸装置23,24に対しタレット装置25,26を前後方向(Y軸方向)及び左右方向(Z軸方向)に移動させる構成でも良い。この場合、工作機械1は、タレット装置25,26のスライド位置に応じて、タレット装置25,26を覆う伸縮カバーの切粉を洗い流すクーラントの吐出量を変更しても良い。こ
の場合、スライド移動するタレット装置25,26は、本開示のスライド装置の一例である。従って、本開示の洗い流し箇所は、工作機械1の構成に応じて適宜変更される。
【0069】
また、上記実施例では、制御装置15は、主軸装置23,24のスライド位置に応じて第1~第4吐出口141~144の吐出量を変更したが、これに限らない。制御装置15は、主軸装置23,24のスライド位置に応じて第1~第4吐出口141~144のうち、少なくとも1つの吐出口の吐出量を変更しても良い。従って、制御装置15は、電磁弁126~129のうち、少なくとも1つ(制御対象の吐出口に応じた電磁弁)のみを備える構成でも良い。従って、上記実施例における制御装置15による電磁弁121~129の制御内容は一例である。
【0070】
また、第1~第4ポンプ111~114は、一定の容量でクーラントを供給したが、制御装置15の制御に基づいて供給量を変更しても良い。
工作機械1は、主軸装置23,24やタレット装置25,26を1組だけ備える構成でも良い。また、工作機械1は、自動工具交換装置6やワーク搬送装置7を備えない装置でも良い。
また、工作機械1は、第1及び第2伸縮カバー101,102を備えない構成でも良い。
また、工作機械1は、対向2軸の旋盤に限らず、平行2軸の旋盤でも良い。また、工作機械1は、加工装置や加工室を1組だけ備える構成や、3組以上備える構成でも良い。また、工作機械1としては、例えば、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、ボール盤など、様々な構成を採用できる。
【0071】
尚、本開示の範囲は、特許請求の範囲に記載された従属関係に限定されない。例えば、本明細書では、請求項6において「請求項1に記載の工作機械」を「請求項1~5の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0072】
1 工作機械、15 制御装置、23 第1ワーク主軸装置(スライド装置、ワーク保持装置)、24 第2ワーク主軸装置(スライド装置、ワーク保持装置)、27 工具主軸装置、42 駆動機構(スライド装置、ワーク保持装置)、51 タレット、101 第1伸縮カバー(伸縮カバー、第1主軸カバー、第2主軸カバー)、102 第2伸縮カバー(伸縮カバー)、110 クーラント供給装置(供給装置)、126~129 電磁弁(制御弁、第1制御弁、第2制御弁)、141 第1吐出口(吐出口、第1吐出口、第2吐出口、ワーク保持装置用吐出口、第1ワーク主軸装置用吐出口)、142 第2吐出口(吐出口、第1吐出口、第2吐出口、タレット用吐出口)、143 第3吐出口(吐出口、第1吐出口、第2吐出口、ワーク保持装置用吐出口、第2ワーク主軸装置用吐出口)、144 第4吐出口(吐出口、第1吐出口、第2吐出口、タレット用吐出口)、140
供給路、P1 原点位置(第1スライド位置、第2スライド位置)、P2 タレット位置(第1スライド位置、第2スライド位置)、P3 工具主軸位置(第1スライド位置、第2スライド位置)、W ワーク。
図1
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図12