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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031528
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】三次元造形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20240229BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240229BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240229BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20240229BHJP
   B29C 64/25 20170101ALI20240229BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20240229BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240229BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240229BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/232
B29C64/25
B29C64/245
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135134
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大毅
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL67
4F213WL72
4F213WL74
4F213WL87
(57)【要約】
【課題】吐出部のメンテナンスを行う場合、ユーザーが吐出部にアクセスし易い三次元造形システムを提供する。
【解決手段】造形材料を吐出するノズルを有する吐出部と、前記造形材料が積層されるステージと、前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する移動部と、前記吐出部および前記ステージを収容する筐体と、前記移動部を制御する制御部と、前記吐出部のメンテナンスに関するモードを受け付ける受付部と、を含み、前記制御部は、前記受付部で受け付けた前記モードに応じて、前記移動部を制御して、前記吐出部を、前記筐体内の設定位置に移動させる、三次元造形システム。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する移動部と、
前記吐出部および前記ステージを収容する筐体と、
前記移動部を制御する制御部と、
前記吐出部のメンテナンスに関するモードを受け付ける受付部と、
を含み、
前記制御部は、前記受付部で受け付けた前記モードに応じて、前記移動部を制御して、前記吐出部を、前記筐体内の設定位置に移動させる、三次元造形システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記吐出部は、
材料を収容する材料収容部と、
前記材料を可塑化して前記造形材料を生成する可塑化部と、
を有し、
前記受付部が、前記モードとして前記材料収容部に前記材料を供給するための材料供給モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記移動部を制御して、前記吐出部を、造形の終了時における前記吐出部の位置よりも低い位置に移動させる、三次元造形システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記設定位置は、ユーザーごとに設定可能である、三次元造形システム。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記筐体は、扉を有し、
前記制御部は、造形の終了後に、前記扉が開かれたか否か判定する、三次元造形システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記ステージ上に積層された前記造形材料を上方から加熱する、貫通孔が形成されたプレート状の加熱部を含み、
前記移動部は、前記貫通孔を介して、前記ノズルを上下に移動させ、
前記受付部が、前記モードとして前記吐出部を着脱するための吐出部着脱モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記移動部を制御して、前記吐出部を、造形の終了時における前記吐出部の位置よりも低い位置であって、前記ノズルのノズル開口が前記加熱部よりも上方となる位置に移動させる、三次元造形システム。
【請求項6】
請求項2において、
前記ステージ上に積層された前記造形材料を上方から加熱する、貫通孔が形成されたプレート状の加熱部を含み、
前記移動部は、前記貫通孔を介して、前記ノズルを上下に移動させ、
前記受付部が、前記モードとして前記材料供給モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記移動部を制御して、前記吐出部を、前記ノズルのノズル開口が前記加熱部よりも下方となる位置に移動させる、三次元造形システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記ステージ上に積層された前記造形材料を上方から加熱する、貫通孔が形成されたプレート状の加熱部を含み、
前記移動部は、前記貫通孔を介して、前記ノズルを上下に移動させ、
前記加熱部よりも上方に設けられ、前記ノズルをクリーニングするクリーニング機構と、
前記クリーニング機構を移動させるクリーニング移動部と、
を含み、
前記筐体は、側面に扉を有し、
前記クリーニング移動部は、前記ノズルのノズル開口よりも前記扉側の第1位置と、前記ノズル開口よりも前記扉から離れた第2位置と、の間で前記クリーニング機構を移動させ、
前記受付部が前記モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記クリーニング移動部を制御して、前記クリーニング機構を、前記第2位置に移動させる、三次元造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化された材料を、ステージに向けて吐出して、硬化させることによって三次元造形物を造形する三次元造形システムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、予熱器で加熱されて溶融した熱可塑性の材料を基台上に押出すための押出ノズルを備え、押出ノズルは、予め設定された形状データにしたがって走査可能性に構成され、基台上で硬化した材料の上に、更に溶融した材料を積層して3次元物体を作成する造形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-192710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された造形装置では、ユーザーが造形装置のメンテナンスを行う場合、造形装置のメンテナンス対象物が、ユーザーにとってアクセスし難い位置にあることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形システムの一態様は、
造形材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する移動部と、
前記吐出部および前記ステージを収容する筐体と、
前記移動部を制御する制御部と、
前記吐出部のメンテナンスに関するモードを受け付ける受付部と、
を含み、
前記制御部は、前記受付部で受け付けた前記モードに応じて、前記移動部を制御して、前記吐出部を、前記筐体内の設定位置に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す斜視図。
図2】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す斜視図。
図3】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
図4】本実施形態に係る三次元造形システムのフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
図5】本実施形態に係る三次元造形システムのバレルを模式的に示す平面図。
図6】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
図7】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
図8】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
図9】本実施形態に係る三次元造形システムの動作を説明するためのフローチャート。
図10】本実施形態に係る三次元造形システムの造形層を形成する処理を説明するための断面図。
図11】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システムを模式的に示す平面図。
図12】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
図13】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システムを模式的に示す平面図。
図14】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
図15】本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システムの動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 三次元造形システム
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形システムについて、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本実施形態に係る三次元造形システム100を模式的に示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る三次元造形システム100を模式的に示す図2のII-II線断面図である。
【0010】
なお、図1図3では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0011】
三次元造形システム100は、図1図3に示すように、例えば、吐出部10と、ステージ20と、移動部30と、支持部材40と、加熱部50と、筐体60と、開閉センサー70と、受付部80と、表示部82と、制御部84と、を含む。
【0012】
なお、便宜上、図2では、筐体60を透視し、開閉センサー70および表示部82の図示を省略している。また、図3では、筐体60、開閉センサー70、および表示部82の図示を省略している。
【0013】
三次元造形システム100は、吐出部10からステージ20に向けて可塑化された造形材料を吐出させつつ、移動部30を駆動して、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形システム100は、ステージ20上に所望の形状の三次元造形物を造形する。三次元造形システム100は、FDM(Fused Deposition
Modeling)(登録商標)方式の三次元造形システムである。
【0014】
なお、図示はしないが、吐出部10は、複数設けられていてもよい。例えば、吐出部10は、2つ設けられていてもよい。この場合、2つの吐出部10は、ともに三次元造形物を構成する造形材料を吐出してもよいし、一方が造形材料を吐出し、他方が三次元造形物を支持するサポート材を吐出してもよい。2つの吐出部10は、X軸方向に並んでいてもよい。
【0015】
吐出部10は、図3に示すように、例えば、材料収容部110と、可塑化部120と、
ノズル160と、を有している。
【0016】
材料収容部110には、ペレット状や粉末状の材料が収容される。材料収容部110は、可塑化部120に材料を供給する。材料収容部110は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料収容部110に収容される材料は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂である。
【0017】
材料収容部110と可塑化部120とは、材料収容部110の下方に設けられた供給路112によって接続されている。材料収容部110に投入された材料は、供給路112を介して、可塑化部120に供給される。図示の例では、「下方」とは、-Z軸方向のことである。「上方」とは、+Z軸方向のことである。
【0018】
可塑化部120は、例えば、スクリューケース122と、駆動モーター124と、フラットスクリュー130と、バレル140と、ヒーター150と、を有している。可塑化部120は、材料収容部110から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル160に供給する。
【0019】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0020】
スクリューケース122は、フラットスクリュー130を収容する筐体である。スクリューケース122の下面には、バレル140が設けられている。スクリューケース122とバレル140とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー130が収容されている。
【0021】
駆動モーター124は、スクリューケース122の上面に設けられている。駆動モーター124は、例えば、サーボモーターである。駆動モーター124のシャフト126は、フラットスクリュー130の上面131に接続されている。駆動モーター124は、制御部84によって制御される。なお、図示はしないが、減速機を介して、駆動モーター124のシャフト126と、フラットスクリュー130の上面131とが、接続されていてもよい。
【0022】
フラットスクリュー130は、回転軸R方向の大きさが、回転軸R方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸Rは、Z軸と平行である。駆動モーター124が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、回転軸Rを中心に回転する。
【0023】
フラットスクリュー130は、上面131と、上面131とは反対側の溝形成面132と、上面131と溝形成面132とを接続する側面133と、を有している。溝形成面132には、第1溝134が形成されている。側面133は、例えば、溝形成面132に対して垂直である。ここで、図4は、フラットスクリュー130を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、図4では、図3に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0024】
フラットスクリュー130の溝形成面132には、図4に示すように、第1溝134が形成されている。第1溝134は、例えば、中央部135と、接続部136と、材料導入部137と、を有している。中央部135は、バレル140に形成された連通孔146と対向している。中央部135は、連通孔146と連通している。接続部136は、中央部
135と材料導入部137とを接続している。図示の例では、接続部136は、中央部135から溝形成面132の外周に向かって渦状に設けられている。材料導入部137は、溝形成面132の外周に設けられている。すなわち、材料導入部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられている。材料収容部110から供給された材料は、材料導入部137から第1溝134に導入され、接続部136および中央部135を通って、バレル140に形成された連通孔146に搬送される。第1溝134は、例えば、2つ設けられている。
【0025】
なお、第1溝134の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝134は、3つ以上設けられていてもよいし、1つだけ設けられていてもよい。
【0026】
また、図示はしないが、可塑化部120は、フラットスクリュー130ではなく、側面に螺旋溝を有する長尺のインラインスクリューを有していてもよい。そして、可塑化部120は、インラインスクリューの回転によって材料を可塑化してもよい。
【0027】
バレル140は、図3に示すように、フラットスクリュー130の下方に設けられている。バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向する対向面142を有している。対向面142の中心には、第1溝134と連通する連通孔146が形成されている。ここで、図5は、バレル140を模式的に示す平面図である。
【0028】
バレル140の対向面142には、図5に示すように、第2溝144と、連通孔146と、が形成されている。第2溝144は、複数形成されている。図示の例では、6つの第2溝144が形成されているが、第2溝144の数は、特に限定されない。複数の第2溝144は、Z軸方向からみて、連通孔146の周りに形成されている。第2溝144は、一端が連通孔146に接続され、連通孔146からバレル140の外周148に向かって渦状に延びている。第2溝144は、可塑化された造形材料を連通孔146に導く機能を有している。
【0029】
なお、第2溝144の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝144は、一端が連通孔146に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝144は、対向面142に形成されていなくてもよい。ただし、連通孔146に可塑化された材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝144は、対向面142に形成されていることが好ましい。
【0030】
ヒーター150は、図3に示すように、バレル140に設けられている。ヒーター150は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を加熱する。ヒーター150の出力は、制御部84によって制御される。可塑化部120は、フラットスクリュー130、バレル140、およびヒーター150によって、材料を連通孔146に向かって搬送しながら加熱して、可塑化された造形材料を生成する。そして、可塑化部120は、生成された造形材料を連通孔146から流出させる。
【0031】
なお、Z軸方向からみて、ヒーター150の形状は、リング状であってもよい。また、ヒーター150は、バレル140ではなく、例えば、バレル140の下方に設けられていてもよい。
【0032】
ノズル160は、バレル140の下方に設けられている。ノズル160には、ノズル流路162が形成されている。ノズル流路162は、連通孔146に連通している。ノズル流路162には、連通孔146から造形材料が供給される。ノズル流路162は、ノズル開口164を有している。ノズル開口164は、ノズル160の先端に形成されている。図示の例では、ノズル開口164は、ノズル160の-Z軸方向の端に形成されている。
ノズル160は、造形材料をノズル開口164からステージ20に向けて吐出する。
【0033】
ステージ20は、図2および図3に示すように、ノズル160の下方に設けられている。図示の例では、ステージ20の形状は、直方体である。ステージ20は、造形材料が堆積される造形面22を有している。造形面22は、ステージ20の上面の領域である。造形面22には、造形材料が積層される。
【0034】
ステージ20の材質は、例えば、アルミニウムなどの金属である。ステージ20は、金属板と、金属板に設けられた密着シートと、によって構成されていてもよい。この場合、造形面22は、密着シートによって構成される。密着シートは、ステージ20と、吐出部10から吐出される造形材料と、の密着性を向上できる。
【0035】
ステージ20は、図示はしないが、溝が形成された金属板と、溝を埋めるように設けられた下地層と、によって構成されていてもよい。この場合、造形面22は、下地層によって構成される。下地層の材質は、例えば、造形材料と同じである。下地層は、ステージ20と、吐出部10から吐出される造形材料と、の密着性を向上できる。
【0036】
移動部30は、ステージ20を支持している。移動部30は、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変更する。図示の例では、移動部30は、ステージ20をX軸方向およびY軸方向に移動させることによって、X軸方向およびY軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変更する。さらに、移動部30は、吐出部10をZ軸方向に移動させることによって、Z軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変更する。
【0037】
移動部30は、例えば、第1電動アクチュエーター32と、第2電動アクチュエーター34と、第3電動アクチュエーター36と、を有している。第1電動アクチュエーター32は、ステージ20をX軸方向に移動させる。第2電動アクチュエーター34は、ステージ20をY軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター36は、吐出部10および加熱部50をZ軸方向に移動させる。
【0038】
なお、移動部30は、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変更することができれば、その構成は、特に限定されない。移動部30は、例えば、ステージ20をZ軸方向に移動し、吐出部10をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよい。または、移動部30は、ステージ20または吐出部10をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0039】
支持部材40は、図2に示すように、移動部30に接続されている。支持部材40は、吐出部10を支持している。図示の例では、支持部材40は、移動部30から吐出部10に向けて、-Y軸方向に延在している。支持部材40は、オルダムカップリングを含んで構成されていてもよい。
【0040】
加熱部50は、ステージ20の上方に設けられている。加熱部50は、吐出部10のステージ20に対する相対的な移動に連動して移動させるように構成されている。加熱部50の形状は、プレート状である。図示の例では、加熱部50の形状は、直方体である。Z軸方向からみて、加熱部50の面積は、ステージ20の面積よりも大きい。
【0041】
加熱部50は、ステージ20上に積層された造形材料を、上方から加熱する。これにより、ステージ20上に堆積された造形材料と、当該造形材料上に堆積された後続の造形材料と、の間の密着性を向上できる。
【0042】
加熱部50は、図3に示すように、例えば、ヒーター52と、断熱部材54と、を有している。
【0043】
ヒーター52は、造形面22と対向している。ヒーター52は、造形面22と断熱部材54との間に設けられている。ヒーター52は、例えば、板状のヒータープレートである。ヒーター52としては、例えば、ラバーヒーターを用いる。ヒーター52は、造形面22を加熱する。
【0044】
なお、図示はしないが、加熱部50は、ヒーター52の下に金属プレートを有していてもよい。金属プレートの材質は、例えば、アルミニウムである。
【0045】
断熱部材54は、ヒーター52上に設けられている。断熱部材54は、例えば、支持部材40に接続されている。断熱部材54は、断熱部材54よりも上方に伝わるヒーター52の熱を低減できる。
【0046】
加熱部50には、貫通孔56が形成されている。貫通孔56は、ヒーター52および断熱部材54を、Z軸方向に貫通している。三次元造形物の造形時において、貫通孔56には、ノズル160が位置する。これにより、Z軸方向からみて、ノズル160の周囲を均一性よく加熱できる。三次元造形物の造形時において、ノズル開口164は、Z軸方向において、加熱部50とステージ20との間に位置している。移動部30は、貫通孔56を介して、ノズル160を上下に移動させる。図示の例では、ノズル160は、移動部30の駆動により、貫通孔56を通ってZ軸方向に移動される。
【0047】
筐体60は、図1および図2に示すように、吐出部10、ステージ20、移動部30、支持部材40、および加熱部50を収容している。筐体60は、例えば、略直方体の形状を有している。
【0048】
筐体60は、図1に示すように、例えば、本体62と、扉64と、把手66と、を有している。
【0049】
本体62は、箱状の形状を有している。本体62は、吐出部10、ステージ20、移動部30、支持部材40、および加熱部50を収容している。
【0050】
扉64は、例えば、図示せぬ蝶番を介して、本体62に接続されている。扉64は、筐体60の側面61に設けられている。図示の例では、側面61は、-Y軸方向を向く面である。扉64は、蝶番を軸として回動可能である。蝶番は、例えば、扉64の-X軸方向の端部に設けられている。扉64は、インターロックを有していてもよい。
【0051】
把手66は、扉64に設けられている。図示の例では、把手66は、扉64の+X軸方向の端部に設けられている。把手66は、扉64の開閉時にユーザーによって把持される。
【0052】
開閉センサー70は、筐体60に設けられている。図示の例では、開閉センサー70は、筐体60の側面61に設けられている。開閉センサー70は、扉64の開閉を検出する。開閉センサー70は、扉64の開閉を検出することができれば、その形態は、特に限定されない。
【0053】
受付部80は、例えば、筐体60の外に設けられている。受付部80は、ユーザーの操作を受け付ける。受付部80は、ユーザーの操作に従って、制御部84に信号を送信する。受付部80は、例えば、マウス、タッチパネル、キーボードなどで構成されている。
【0054】
受付部80は、吐出部10のメンテナンスに関するモードを受け付ける。換言すると、受付部80は、吐出部10のメンテナンスに関する情報を受け付ける。受付部80が受け付ける吐出部10のメンテナンスに関するモードとして、吐出部10の材料収容部110に材料を供給するための材料供給モードがある。
【0055】
さらに、受付部80が受け付ける吐出部10のメンテナンスに関するモードとして、吐出部10を着脱するための吐出部着脱モードがある。吐出部10は、着脱可能に構成されている。吐出部10は、例えば、ノズル160がバレル140から着脱可能に構成されていてもよい。または、吐出部10は、ノズル160およびバレル140がフラットスクリュー130から着脱可能に構成されていてもよい。または、吐出部10は、ノズル160、バレル140、およびフラットスクリュー130がスクリューケース122から着脱可能に構成されていてもよい。または、吐出部10は、支持部材40に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0056】
表示部82は、筐体60に設けられている。図示の例では、表示部82は、筐体60の側面61に設けられている。表示部82は、制御部84からの信号に基づいて、各種の画像を表示する。表示部82は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ、EPD(Electrophoretic Display)などで構成されている。なお、表示部82および受付部80は、一体的に設けられていてもよい。この場合、受付部80は、タッチパネルによって構成されていてもよい。
【0057】
制御部84は、筐体60の外に設けられている。制御部84は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部84は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。具体的には、制御部84は、吐出部10、移動部30、加熱部50、および表示部82を制御する。なお、制御部84は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。また、制御部84、表示部82、および受付部80とは、一体的に設けられていてもよい。
【0058】
1.2. 吐出部の位置
図6図8は、本実施形態に係る三次元造形システム100を模式的に示す図2のA-A線断面図であって、吐出部10のZ軸方向における位置を説明するための断面図である。以下、「Z軸方向における位置」を「高さ」ともいう。なお、便宜上、図6図8では、吐出部10および加熱部50を簡略化して図示している。
【0059】
吐出部10は、図6図8に示すように、支持部材40によって、移動部30に接続されている。移動部30は、例えば、吐出部10をZ軸方向に昇降させる昇降機構38を有している。移動部30の第3電動アクチュエーター36は、昇降機構38を支持している。支持部材40および加熱部50は、昇降機構38に接続されている。昇降機構38は、第3電動アクチュエーター36と支持部材40との間に位置している。昇降機構38は、さらに、第3電動アクチュエーター36と加熱部50との間に位置している。
【0060】
第3電動アクチュエーター36は、図6および図7に示すように、昇降機構38をZ軸方向に移動可能である。これにより、移動部30は、吐出部10と加熱部50との間の距離を一定に保った状態で、吐出部10および加熱部50を、ステージ20に対して、Z軸方向に移動できる。
【0061】
図6に示す状態における吐出部10および加熱部50の高さは、図7に示す状態におけ
る吐出部10および加熱部50の高さより高い。図6に示す状態における吐出部10と加熱部50との間のZ軸方向の距離と、図7に示す状態における吐出部10と加熱部50との間のZ軸方向の距離とは、同じである。
【0062】
昇降機構38は、図6および図8に示すように、加熱部50に対して、支持部材40をZ軸方向に移動可能である。すなわち、昇降機構38は、加熱部50に対して、吐出部10をZ軸方向に移動可能である。これにより、移動部30は、ステージ20と加熱部50との間の距離を一定に保った状態で、吐出部10を、加熱部50に対して、Z軸方向に移動できる。昇降機構38は、リニアブッシュ、およびエアーシリンダーなどを含んで構成されていてもよい。
【0063】
図6に示す状態における吐出部10と加熱部50との間の距離は、図8示す状態における吐出部10と加熱部50との間の距離よりも小さい。図6に示す状態におけるステージ20と加熱部50との間のZ軸方向の距離と、図8に示す状態におけるステージ20と加熱部50との間のZ軸方向の距離とは、同じである。
【0064】
吐出部10の高さは、受付部80が受け付けたモードに応じて変更される。例えば、受付部80が材料供給モードを受け付けた場合、吐出部10の高さは、図7に示すように、吐出部10の可動範囲において、最も低い位置に変更される。受付部80が吐出部着脱モードを受け付けた場合、吐出部10の高さは、図8に示すように、図7に示す状態よりは高い位置であって、吐出部10のノズル開口164が貫通孔56の上方にある位置に変更される。なお、図6は、ノズル160から造形材料を吐出する状態の吐出部10の高さを示している。
【0065】
受付部80が材料供給モードを受け付けた場合の吐出部10の高さ、および受付部80が吐出部着脱モードを受け付けた場合の吐出部10の高さは、ユーザーごとに設定可能であってもよい。ユーザーは、受付部80でモードを入力する前に、ユーザー情報を入力してもよい。これにより、各モードを入力した場合の吐出部10の高さが、ユーザーごとに設定されもよい。
【0066】
受付部80は、ユーザーが吐出部10の高さを任意に設定できるマニュアルモードを受け付けてもよい。ユーザーは、マニュアルモードを選択した後、受付部80に数値を入力することにより、吐出部10を所望の高さに移動できる。
【0067】
1.3. 動作
図9は、三次元造形システム100の動作を説明するためのフローチャートである。具体的には、図9は、制御部84の処理を説明するためのフローチャートである。
【0068】
ユーザーは、例えば、受付部80を操作して、制御部84に処理を開始するための処理開始信号を出力する。制御部84は、処理開始信号を受けると処理を開始する。
【0069】
まず、制御部84は、図9に示すように、ステップS1として、三次元造形物を造形するための造形データを取得する処理を行う。
【0070】
造形データは、例えば、材料収容部110に収容される材料の種類、ステージ20に対する吐出部10の移動経路、吐出部10から吐出される造形材料の量などに関する情報を含む。
【0071】
造形データは、例えば、三次元造形システム100が含むコンピューターにインストールされたスライサーソフトに、形状データを読み込ませることによって作成される。形状
データは、三次元CAD(Computer Aided Design)ソフトや三次元CG(Computer Graphics)ソフトなどを用いて作成された三次元造形物の目標形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式やAMF(Additive Manufacturing File Format)などのデータを用いる。スライサーソフトは、三次元造形物の目標形状を所定の厚さの層に分割して、層ごとに造形データを作成する。造形データは、GコードやMコードなどによって表される。制御部84は、三次元造形システム100に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0072】
次に、制御部84は、ステップS2として、ステージ20の造形面22に、造形材料を吐出して造形層を形成する処理を行う。
【0073】
具体的には、制御部84は、駆動モーター124およびヒーター150を駆動させ、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を可塑化して造形材料を生成させる。そして、制御部84は、ノズル160のノズル開口164から造形材料を吐出させる。制御部84は、例えば、造形層を形成する処理が終了するまで造形材料を生成させ続ける。ここで、図10は、造形層を形成する処理を説明するための断面図である。
【0074】
制御部84は、図10に示すように、取得した造形データに基づいて、移動部30を制御してノズル160とステージ20との相対的な位置を変化させつつ、吐出部10を制御してノズル160からステージ20に向けて造形材料を吐出させる。
【0075】
具体的には、造形層を形成する処理が開始される前、すなわち、第1層目の造形層である造形層L1の形成が開始される前では、ノズル160は、ステージ20の-X軸方向の端部よりも-X軸方向の初期位置に配置されている。造形層を形成する処理が開始されると、図10に示すように、制御部84は、移動部30を制御することによって、例えば、ステージ20に対してノズル160を+X軸方向に相対移動させる。ノズル160がステージ20上を通過する際、ノズル160から造形材料が吐出される。これにより、造形層L1が形成される。図10では、nを任意の自然数として、第n層目の造形層Lnまでを図示している。
【0076】
次に、制御部84は、図9に示すように、ステップS3として、造形データに基づいて、全ての造形層の形成が完了したか否か判定する処理を行う。
【0077】
全ての造形層の形成が完了していないと判定した場合(ステップS3で「NO」)、制御部84は、処理をステップS2に戻す。そして、制御部84は、ステップS3において、全ての造形層の形成が完了したと判定するまで、ステップS2とステップS3とを繰り返す。
【0078】
一方、全ての造形層の形成が完了したと判定した場合(ステップS3で「YES」)、制御部84は、ステップS4として、移動部30を制御して、吐出部10および加熱部50を、可動範囲において最も上方に移動させる処理を行う。これにより、ユーザーが三次元造形物をステージ20から取り出す際に、吐出部10および加熱部50が邪魔になる可能性を小さくできる。
【0079】
次に、制御部84は、ステップS5として、表示部82に、三次元造形物の造形が完了した旨の情報、およびユーザーに三次元造形物を取り出させる旨の情報を表示させる処理を行う。これにより、表示部82には、所望の情報が表示される。
【0080】
次に、制御部84は、ステップS6として、受付部80がユーザーから吐出部10のメ
ンテナンスに関するモード(以下、「メンテナンスモード」ともいう)を受け付けたか否か判定する処理を行う。
【0081】
受付部80が吐出部10のメンテナンスに関するモードを受け付けていないと判定した場合(ステップS5で「NO」)、制御部84は、ステップS6において、受付部80が吐出部10のメンテナンスに関するモードを受け付けたと判定するまで、ステップS6を繰り返す。
【0082】
一方、受付部80が吐出部10のメンテナンスに関するモードを受け付けたと判定した場合(ステップS6で「YES」)、制御部84は、ステップS7として、造形の終了後に、筐体60の扉64が開かれたか否か判定する処理を行う。
【0083】
具体的には、制御部84は、開閉センサー70の検出信号に基づいて、造形の終了後に、扉64が開かれたか否か判定する。「造形の終了後」とは、ステップS3において全ての造形層の形成が完了したと判定した後のことを意味する。
【0084】
より具体的には、制御部84は、開閉センサー70の検出信号に基づく扉64の開閉情報を、図示せぬ記憶部に記憶する。そして、制御部84は、記憶部から扉64の開閉情報を読み出し、造形の終了後に、扉64が開かれた否か判定する。なお、扉64が開かれた際には、ユーザーの安全性を確保するため、制御部84は、吐出部10および移動部30の動作を停止させることが好ましい。
【0085】
造形の終了後に扉64が開かれていないと判定した場合(ステップS7で「NO」)、制御部84は、ステップS7において、造形の終了後に扉64が開かれたと判定するまで、ステップS7を繰り返す。この場合、制御部84は、ステップS5で表示部82に表示させた情報を削除せず、表示させたままにする。または、制御部84は、ステップS5で表示部82に表示させた方法よりも目立つ方法で、再度、表示部82に、扉64を開けて三次元造形物を取り出す旨の情報を表示させる。制御部84は、当該情報を、ホップアップによって表示させてもよい。
【0086】
一方、造形の終了後に扉64が開かれたと判定した場合(ステップS7で「YES」)、制御部84は、ステップS8として、受付部80で受け付けたメンテナンスモードに応じて、移動部30を制御して、吐出部10を、筐体60内の設定位置に移動させる処理を行う。
【0087】
具体的には、受付部80が材料供給モードを受け付けた場合、制御部84は、移動部30を制御して、吐出部10を、図7に示すように、造形の終了時における吐出部10の位置よりも低い位置であって、ノズル開口164が加熱部50よりも下方となる位置に移動させる。
【0088】
受付部80が吐出部着脱モードを受け付けた場合、制御部84は、移動部30を制御して、吐出部10を、図8に示すように、造形の終了時における吐出部10の位置よりも低い位置であって、ノズル開口164が加熱部50よりも上方となる位置に移動させる。
【0089】
そして、制御部84は、処理を終了する。
【0090】
なお、上記では、三次元造形システム100がFDM方式である例について説明したが、本発明に係る三次元造形システムは、IJ(Inkjet)方式であってもよいし、BJ(Binder Jetting)方式であってもよいし、DMD(Direct Metal Deposition)方式であってもよい。
【0091】
また、図示はしないが、三次元造形システム100は、完成した三次元造形物がステージ20から取り出されたか否かを検出するセンサーを含んでいてもよい。当該センサーによって、制御部84は、完成した三次元造形物がステージ20から取り出されたか否かを判定することができる。
【0092】
1.4. 作用効果
三次元造形システム100では、受付部80は、吐出部10のメンテナンスモードを受け付ける。制御部84は、受付部80で受け付けたメンテナンスモードに応じて、移動部30を制御して、吐出部10を、筐体60内の設定位置に移動させる。そのため、三次元造形システム100では、吐出部10のメンテナンスを行う場合、ユーザーが吐出部10にアクセスし易い。したがって、ユーザーは、吐出部10のメンテナンスを容易に行うことができる。よって、ユーザービリティ―を向上できる。
【0093】
例えば、吐出部が高い位置にある場合、ユーザーは、台の上に登って吐出部のメンテナンスを行わなければならない。そのため、メンテナンスの作業が煩雑となる。三次元造形システム100では、吐出部10を、筐体60内の設定位置に移動させることができるため、ユーザーは、台を用いることなく、例えば座ったままで、吐出部10のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0094】
三次元造形システム100では、受付部80が、メンテナンスモードとして材料収容部110に材料を供給するための材料供給モードを受け付けた場合、制御部84は、移動部30を制御して、吐出部10を、造形の終了時における吐出部10の位置よりも低い位置に移動させる。三次元造形システム100では、造形の終了時には、完成した三次元造形物をステージ20から取り出し易くするために、吐出部10が高い位置にある。そのため、吐出部10を、造形の終了時における吐出部10の位置よりも低い位置に移動させることにより、ユーザーは、吐出部10に容易にアクセスできる。これにより、ユーザーは、材料収容部110に材料を容易に供給できる。
【0095】
三次元造形システム100では、吐出部10の設定位置は、ユーザーごとに設定可能である。そのため、例えば身長が高いユーザーであっても低いユーザーであっても、吐出部10に容易にアクセスできる。
【0096】
三次元造形システム100では、制御部84は、造形の終了後に、筐体60の扉64が開かれたか否か判定する。例えば、造形の終了後に、扉64が開かれていないと判定した場合、制御部84は、表示部82に、三次元造形物をステージ20から取り出す旨の情報を表示させる。これにより、三次元造形システム100では、三次元造形物がステージ20から取り出されていない状態で、吐出部10のメンテナンスが行われることを防ぐことができる。三次元造形物が取り出されていない状態で、吐出部のメンテナンスが行われる場合、吐出部と三次元造形物とが接触し、吐出部や三次元造形物が破損する可能性がある。
【0097】
三次元造形システム100では、受付部80が、メンテナンスモードとして吐出部10を着脱するための吐出部着脱モードを受け付けた場合、制御部84は、移動部30を制御して、吐出部10を、造形の終了時における吐出部10の位置よりも低い位置であって、ノズル開口164が加熱部50よりも上方となる位置に移動させる。そのため、三次元造形システム100では、吐出部10を着脱する場合に、ノズル160が加熱部50に接触することを防ぐことができる。ノズルが加熱部に接触すると、ノズルや加熱部が破損する可能性がある。
【0098】
三次元造形システム100では、受付部80が、メンテナンスモードとして材料供給モードを受け付けた場合、制御部84は、移動部30を制御して、吐出部10を、ノズル開口164が加熱部50よりも下方となる位置に移動させる。そのため、三次元造形システム100では、ユーザーが材料収容部110に材料を供給する場合に、吐出部10を、十分に低い位置に移動できる。これにより、ユーザーは、材料収容部110に材料を容易に供給できる。
【0099】
2. 三次元造形システムの変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システムについて、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システム200を模式的に示す平面図である。図12は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システム200を模式的に示す図11のXII-XII線断面図である。図13は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システム200を模式的に示す平面図である。図14は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システム200を模式的に示す図13のXIV-XIV線断面図である。図15は、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システム200の動作を説明するためのフローチャートである。
【0100】
以下、本実施形態の第1変形例に係る三次元造形システム200において、上述した本実施形態に係る三次元造形システム100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0101】
三次元造形システム200では、図11図14に示すように、クリーニング機構90と、クリーニング移動部92と、を含む点において、上述した三次元造形システム100と異なる。
【0102】
クリーニング機構90は、加熱部50よりも上方に設けられている。図示の例では、クリーニング機構90は、加熱部50の+Z軸方向に位置している。クリーニング機構90は、ノズル160をクリーニングする。具体的には、クリーニング機構90は、ノズル160のノズル開口164における造形材料の詰まりを解消する。クリーニング機構90は、例えば、ノズル160と接触するブラシ、およびブラシによって除去された造形材料を収容する収容部などを含んで構成されている。
【0103】
クリーニング移動部92は、加熱部50よりも上方に設けられている。クリーニング移動部92は、クリーニング機構90を支持している。図示の例では、クリーニング移動部92は、昇降機構38に接続されている。クリーニング移動部92は、制御部84によって制御される。
【0104】
クリーニング移動部92は、クリーニング機構90を移動させる。図示の例では、クリーニング移動部92は、クリーニング機構90を、Y軸に沿って移動させる。具体的には、クリーニング移動部92は、第1位置P1と、第2位置P2と、の間でクリーニング機構90をY軸方向に移動させる。
【0105】
図11および図12では、クリーニング機構90が第1位置P1にある状態を示している。図13および図14では、クリーニング機構90が第2位置P2にある状態を示している。
【0106】
第1位置P1は、ノズル開口164よりも筐体60の扉64側の位置である。Z軸方向からみて、第1位置P1は、扉64とノズル開口164との間の位置である。第2位置P2は、ノズル開口164よりも扉64から離れた位置である。第2位置P2とノズル開口
164との間の距離は、第2位置P2と扉64との間の距離よりも小さい。クリーニング移動部92は、例えば、レール、モーターなどを含んで構成されている。
【0107】
制御部84は、図15に示すように、ステップS5において受付部80がメンテナンスモードを受け付け、ステップS6において扉64が開かれたと判定した場合、ステップS8として、クリーニング機構90を制御して、ノズル160をクリーニングさせる処理を行う。
【0108】
具体的には、制御部84は、移動部30を制御して、ノズル開口164が加熱部50よりも上方となる位置に、吐出部10を移動させる。次に、制御部84は、クリーニング移動部92を制御して、クリーニング機構90を第2位置P2に移動させる。次に、制御部84は、クリーニング移動部92を制御して、クリーニング機構90を第2位置P2から第1位置P1へ移動させる。これにより、クリーニング機構90がノズル160と接触し、ノズル160は、クリーニングされる。
【0109】
ステップS9の吐出部10を設定位置に移動させる処理では、制御部84は、クリーニング機構90を第2位置P2に維持させる。なお、図15に示すステップS9の処理は、上述した図9のステップS8の処理と、基本的に同じ処理である。
【0110】
三次元造形システム200では、クリーニング移動部92は、ノズル開口164よりも扉64側の第1位置P1と、ノズル開口164よりも扉64から離れた第2位置P2と、の間でクリーニング機構90を移動させる。受付部80がメンテナスモードを受け付けた場合、制御部84は、クリーニング移動部92を制御して、クリーニング機構90を、第2位置P2に移動させる。そのため、三次元造形システム200では、ユーザーが扉64を開けて吐出部10のメンテナンスを行う場合に、クリーニング機構90が邪魔になり難い。
【0111】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形システムについて説明する。以下、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形システムにおいて、上述した本実施形態に係る三次元造形システム100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0112】
上述した三次元造形システム100では、材料収容部110に収容される材料は、ABS樹脂であった。
【0113】
これに対し、本実施形態の第2変形例に係る三次元造形システムでは、材料収容部110に収容される材料は、ABS樹脂以外の材料、または、ABS樹脂に他の成分が加えられた材料である。
【0114】
材料収容部110に収容される材料としては、熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50質量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0115】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0116】
汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0117】
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0118】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部120において、フラットスクリュー130の回転と、ヒーター150の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル160から堆積された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル160から吐出されることが望ましい。
【0119】
可塑化部120では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部120に投入されることが望ましい。
【0120】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0121】
可塑化部120においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックなどが挙げられる。
【0122】
材料収容部110に収容される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部120において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0123】
材料収容部110に収容される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-
n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0124】
その他に、材料収容部110に収容される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA、PA、PPS、PEEK、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0125】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0126】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成できる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0127】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0128】
三次元造形システムの一態様は、
造形材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記造形材料が積層されるステージと、
前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変更する移動部と、
前記吐出部および前記ステージを収容する筐体と、
前記移動部を制御する制御部と、
前記吐出部のメンテナンスに関するモードを受け付ける受付部と、
を含み、
前記制御部は、前記受付部で受け付けた前記モードに応じて、前記移動部を制御して、前記吐出部を、前記筐体内の設定位置に移動させる。
【0129】
この三次元造形システムによれば、吐出部のメンテナンスを行う場合、ユーザーが吐出部にアクセスし易い。
【0130】
三次元造形システムの一態様において、
前記吐出部は、
材料を収容する材料収容部と、
前記材料を可塑化して前記造形材料を生成する可塑化部と、
を有し、
前記受付部が、前記モードとして前記材料収容部に前記材料を供給するための材料供給モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記移動部を制御して、前記吐出部を、造形の終了時における前記吐出部の位置よりも低い位置に移動させてもよい。
【0131】
この三次元造形システムによれば、ユーザーは、材料収容部に材料を容易に供給できる。
【0132】
三次元造形システムの一態様において、
前記設定位置は、ユーザーごとに設定可能であってもよい。
【0133】
この三次元造形システムによれば、例えば身長が高いユーザーであっても低いユーザーであっても、吐出部に容易にアクセスできる。
【0134】
三次元造形システムの一態様において、
前記筐体は、扉を有し、
前記制御部は、造形の終了後に、前記扉が開かれたか否か判定してもよい。
【0135】
この三次元造形システムによれば、三次元造形物がステージから取り出されていない状態で、吐出部のメンテナンスが行われることを防ぐことができる。
【0136】
三次元造形システムの一態様において、
前記ステージ上に積層された前記造形材料を上方から加熱する、貫通孔が形成されたプレート状の加熱部を含み、
前記移動部は、前記貫通孔を介して、前記ノズルを上下に移動させ、
前記受付部が、前記モードとして前記吐出部を着脱するための吐出部着脱モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記移動部を制御して、前記吐出部を、造形の終了時における前記吐出部の位置よりも低い位置であって、前記ノズルのノズル開口が前記加熱部よりも上方となる位置に移動させてもよい。
【0137】
この三次元造形システムによれば、吐出部を着脱する場合に、ノズルが加熱部に接触することを防ぐことができる。
【0138】
三次元造形システムの一態様において、
前記ステージ上に積層された前記造形材料を上方から加熱する、貫通孔が形成されたプレート状の加熱部を含み、
前記移動部は、前記貫通孔を介して、前記ノズルを上下に移動させ、
前記受付部が、前記モードとして前記材料供給モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記移動部を制御して、前記吐出部を、前記ノズルのノズル開口が前記加熱部よりも下方となる位置に移動させてもよい。
【0139】
この三次元造形システムによれば、ユーザーが材料収容部に材料を供給する場合に、吐出部を、十分に低い位置に移動できる。
【0140】
三次元造形システムの一態様において、
前記ステージ上に積層された前記造形材料を上方から加熱する、貫通孔が形成されたプレート状の加熱部を含み、
前記移動部は、前記貫通孔を介して、前記ノズルを上下に移動させ、
前記加熱部よりも上方に設けられ、前記ノズルをクリーニングするクリーニング機構と、
前記クリーニング機構を移動させるクリーニング移動部と、
を含み、
前記筐体は、側面に扉を有し、
前記クリーニング移動部は、前記ノズルのノズル開口よりも前記扉側の第1位置と、前記ノズル開口よりも前記扉から離れた第2位置と、の間で前記クリーニング機構を移動させ、
前記受付部が前記モードを受け付けた場合、前記制御部は、前記クリーニング移動部を制御して、前記クリーニング機構を、前記第2位置に移動させてもよい。
【0141】
この三次元造形システムによれば、ユーザーが扉を開けて吐出部のメンテナンスを行う場合に、クリーニング機構が邪魔になり難い。
【符号の説明】
【0142】
10…吐出部、20…ステージ、22…造形面、30…移動部、32…第1電動アクチュエーター、34…第2電動アクチュエーター、36…第3電動アクチュエーター、38…昇降機構、40…支持部材、50…加熱部、52…ヒーター、54…断熱部材、56…貫通孔、60…筐体、61…側面、62…本体、64…扉、66…把手、70…開閉センサー、80…受付部、82…表示部、84…制御部、90…クリーニング機構、92…クリーニング移動部、100…三次元造形システム、110…材料収容部、120…可塑化部、122…スクリューケース、124…駆動モーター、126…シャフト、130…フラットスクリュー、131…上面、132…溝形成面、133…側面、134…第1溝、135…中央部、136…接続部、137…材料導入部、140…バレル、142…対向面、144…第2溝、146…連通孔、148…外周、150…ヒーター、160…ノズル、162…ノズル流路、164…ノズル開口、200…三次元造形システム
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