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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031535
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240229BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135170
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 延也
(72)【発明者】
【氏名】小久保 郁也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070CA16
5E070CB13
5E070DA13
(57)【要約】
【課題】層間絶縁膜と導体層が交互に積層されてなるコイル部が素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品において、諸特性をより改善する。
【解決手段】コイル部品1は、磁性素体Mと、磁性素体Mに埋め込まれ、層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3が交互に積層されたコイル部3とを備える。磁性素体Mは、Z方向から見て、X方向を長辺とし、Y方向を短辺とする矩形状である。導体層C0~C3はそれぞれコイルパターンを有し、導体層C0に含まれるコイルパターン100は、X方向に沿った区間が蛇行している。これにより、コイルパターンの蛇行によって、導体層と層間絶縁膜の密着性や、コイルパターンの抵抗値などの諸特性が改善される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体に埋め込まれ、複数の層間絶縁膜と複数の導体層が交互に積層されたコイル部と、を備え、
前記素体は、前記コイル部のコイル軸方向から見て、第1の方向を長辺とし、前記第1の方向と直交する第2の方向を短辺とする矩形状であり、
前記複数の導体層は、それぞれコイルパターンを有し、
前記複数の導体層の少なくとも一つに含まれる所定のコイルパターンは、前記第1の方向に沿った区間が蛇行している、コイル部品。
【請求項2】
前記所定のコイルパターンは、前記第2の方向に沿った区間に比べて、前記第1の方向に沿った区間の方が大きく蛇行している、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記所定のコイルパターンの前記蛇行している部分のパターン幅は、前記コイル軸方向に一定である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記所定のコイルパターンの前記蛇行している部分のパターン幅は、前記コイル軸方向における一方の端面から他方の端面に向かって変化する、請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコイル部品に関し、特に、層間絶縁膜と導体層が交互に積層されてなるコイル部が、素体で埋め込まれた構造を有するチップ型のコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコイル部品は、層間絶縁膜と導体層が交互に積層されてなるコイル部が素体で埋め込まれた構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-155509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコイル部品は、コイル軸方向から見ると素体が矩形状であり、コイルパターンの一部が素体の長辺に沿って直線的に延在している。
【0005】
本開示においては、層間絶縁膜と導体層が交互に積層されてなるコイル部が素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品において、諸特性をより改善する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面によるコイル部品は、素体と、素体に埋め込まれ、複数の層間絶縁膜と複数の導体層が交互に積層されたコイル部とを備え、素体は、コイル部のコイル軸方向から見て、第1の方向を長辺とし、第1の方向と直交する第2の方向を短辺とする矩形状であり、複数の導体層はそれぞれコイルパターンを有し、複数の導体層の少なくとも一つに含まれる所定のコイルパターンは、第1の方向に沿った区間が蛇行している。
【0007】
本開示によれば、コイルパターンの蛇行によって、導体層と層間絶縁膜の密着性や、コイルパターンの抵抗値などの諸特性が改善される。
【0008】
本開示において、所定のコイルパターンは、第2の方向に沿った区間に比べて、第1の方向に沿った区間の方が大きく蛇行していても構わない。これによれば、諸特性をより改善することが可能となる。
【0009】
本開示において、所定のコイルパターンの蛇行している部分のパターン幅は、コイル軸方向に一定であっても構わない。このような形状は、蛇行形状を有するマスクを用いた露光によってレジストを形成した後、コイルパターンを形成することによって得ることができる。
【0010】
本開示において、所定のコイルパターンの蛇行している部分のパターン幅は、コイル軸方向における一方の端面から他方の端面に向かって変化しても構わない。このような形状は、蛇行しないレジストを形成した後、レジストを変形させてからコイルパターンを形成することによって得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本開示によれば、層間絶縁膜と導体層が交互に積層されてなるコイル部が素体で埋め込まれた構造を有するコイル部品において、諸特性をより改善する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を説明するための略斜視図である。
図2図2は、コイル部品1の模式的な断面図である。
図3図3は、導体層C0のパターン形状を説明するための略平面図である。
図4図4は、導体層C1のパターン形状を説明するための略平面図である。
図5図5は、導体層C2のパターン形状を説明するための略平面図である。
図6図6は、導体層C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
図7図7は、コイルパターン100,110,120の蛇行形状について説明するための模式図である。
図8図8は、コイルパターン100,110,120の径方向における中心線L2を示す模式図である。
図9図9(a)~(c)は、仮想線L1に沿ったコイルパターン100の模式的な断面図である。
図10図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図15図15は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図16図16は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図17図17は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図19図19は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図20図20は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態によるコイル部品1の外観を説明するための略斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、Z方向をコイル軸とするコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有するチップ型のコイル部品である。磁性素体Mは、Z方向から見て、X方向を長辺とし、Y方向を短辺とする矩形状である。磁性素体Mは、コイル軸と直交しXY面を構成する実装面4及び上面5を有している。実装面4と上面5は、互いに反対側に位置する。実装面4には端子電極E1,E2が設けられており、実装時においては、実装面4が回路基板と向かい合うよう、端子電極E1,E2が回路基板にハンダ付けされる。つまり、図1に示すコイル部品1の上下方向は、実装時とは180°異なっている。
【0016】
図2は、本実施形態によるコイル部品1の模式的な断面図である。
【0017】
図2に示すように、第1の実施形態によるコイル部品1は、コイル軸方向(Z方向)に交互に積層された層間絶縁膜10~14及び導体層C0~C3からなるコイル部3を有している。導体層C0~C3はCuなどからなる。磁性素体Mは、磁性樹脂層M1,M2からなる。このうち、磁性樹脂層M1はコイル部3の内径領域、コイル部3の径方向における外側領域、並びに、コイル部3のコイル軸方向における一方側に設けられる。磁性樹脂層M2は、コイル部3のコイル軸方向における他方側に設けられる。磁性樹脂層M1,M2は、磁性フィラーとバインダー樹脂を含む複合磁性材料からなる。磁性樹脂層M1を構成する複合磁性材料と磁性樹脂層M2を構成する複合磁性材料は、互いに同じ材料であっても構わないし、互いに異なる材料であっても構わない。磁性フィラーとしては、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などの金属磁性材料を用いることができる。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることができる。
【0018】
磁性樹脂層M1には導体ポストP1,P2が埋め込まれている。導体ポストP1,P2はCuなどからなり、Z方向に延在するピラー状の導体である。このうち、導体ポストP1の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの一端に接続され、導体ポストP2の一端である下面Bは、導体層C0~C3によって構成されるコイルの他端に接続される。一方、導体ポストP1,P2の他端である上面Tは、実装面4と同一平面を構成するよう実装面4から露出し、それぞれ端子電極E1,E2に接続される。導体ポストP1,P2の側面S(Z方向に沿った面)は、ポスト保護膜15で覆われている。これにより、導体ポストP1,P2と磁性素体Mの間にポスト保護膜15が介在することから、導体ポストP1,P2と磁性素体Mの接触が防止され、両者の絶縁が確保される。また、導体ポストP1,P2を有する本実施形態のコイル部品1を回路基板等に実装すると、導体ポストP1,P2によって応力が緩和され、コイル部3へのダメージが低減される。このため、コイル部品1の実装信頼性も向上する。
【0019】
磁性素体Mの実装面4及び上面5は、それぞれカバー絶縁膜21,22で覆われている。このうち、カバー絶縁膜22については上面5のほぼ全面を覆うのに対し、カバー絶縁膜21には導体ポストP1,P2と重なる位置にそれぞれ開口21a,21bが設けられている。これにより、導体ポストP1,P2の上面T(XY面)は、カバー絶縁膜21の開口21a,21bからそれぞれ露出する。カバー絶縁膜21上には、端子電極E1,E2が設けられる。端子電極E1,E2は、例えば、Agなどからなる金属粉とバインダー樹脂を含む樹脂電極31と、樹脂電極31の表面に形成されたNi膜32及びSn膜33によって構成される。端子電極E1,E2は、カバー絶縁膜21の開口21a,21bを介して、それぞれ導体ポストP1,P2の上面Tに接続される。尚、磁性素体Mの実装面4及び上面5をカバー絶縁膜21,22で覆う点は必須でないが、カバー絶縁膜21を設けることにより、端子電極E1,E2と磁性素体Mの接触が防止されることから信頼性が高められる。また、カバー絶縁膜22を設けることにより信頼性が高められるとともに、上面5に方向性マークなどを設けることが可能となる。
【0020】
図3図6は、それぞれ導体層C0~C3のパターン形状を説明するための略平面図である。
【0021】
図3に示すように、導体層C0にはコイルパターン100が設けられる。コイルパターン100は約1ターン周回するパターンであり、その両端は、層間絶縁膜11に設けられたビア11a,11bを介して導体層C1に接続される。コイルパターン100のパターン形状はZ方向から見て略楕円形であるが、長辺であるX方向に延在する区間の一部が内側に蛇行している。
【0022】
図4に示すように、導体層C1にはコイルパターン110及び接続パターン111が設けられる。コイルパターン110は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜11に設けられたビア11bを介して導体層C0のコイルパターン100の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜12に設けられたビア12bを介して導体層C2に接続される。接続パターン111は、導体層C0に設けられたコイルパターン100の一端と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜11に設けられたビア11aを介して導体層C0のコイルパターン100の一端に接続されるとともに、層間絶縁膜12に設けられたビア12aを介して導体層C2に接続される。コイルパターン110のパターン形状はZ方向から見て略楕円形であるが、長辺であるX方向に延在する区間の一部が内側に蛇行している。
【0023】
図5に示すように、導体層C2にはコイルパターン120及び接続パターン121が設けられる。コイルパターン120は約1ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜12に設けられたビア12bを介して導体層C1のコイルパターン110の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜13に設けられたビア13bを介して導体層C3に接続される。接続パターン121は、導体層C1に設けられた接続パターン111と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜12に設けられたビア12aを介して導体層C1の接続パターン111に接続されるとともに、層間絶縁膜13に設けられたビア13aを介して導体層C3に接続される。コイルパターン120のパターン形状はZ方向から見て略楕円形であるが、長辺であるX方向に延在する区間の一部が内側に蛇行している。
【0024】
図6に示すように、導体層C3にはコイルパターン130及び接続パターン131が設けられる。コイルパターン130は約0.5ターン周回するパターンであり、その一端は、層間絶縁膜13に設けられたビア13bを介して導体層C2のコイルパターン120の他端に接続されるとともに、その他端は、層間絶縁膜14に設けられたビア14bを介して導体ポストP2に接続される。接続パターン131は、導体層C2に設けられた接続パターン121と重なる位置に設けられており、層間絶縁膜13に設けられたビア13aを介して導体層C2の接続パターン121に接続されるとともに、層間絶縁膜14に設けられたビア14aを介して導体ポストP1に接続される。
【0025】
これにより、端子電極E1,E2間には、コイルパターン100,110,120,130が直列に接続され、合計で約3.5ターンのコイルが形成される。本実施形態によるコイル部品1は、層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3が交互に積層されてなるコイル部3が磁性素体Mに埋め込まれた構造を有する埋め込み型のコイル部品であり、セラミックなどからなる磁性シートとコイルパターンが交互に積層されてなる積層型のコイル部品とは構造が異なる。例えば、積層型のコイル部品においては、積層方向に隣接するコイルパターン間に磁性シートが介在するが、本実施形態によるコイル部品1は、積層方向に隣接するコイルパターンが層間絶縁膜によって絶縁されており、両者間に磁性素体Mは介在しない。また、プリント基板上にコイルパターンを形成したタイプのシートコイルとも構造が異なる。
【0026】
図7は、コイルパターン100,110,120の蛇行形状について説明するための模式図である。
【0027】
図7に示すように、磁性素体MのX方向における略中心位置においてY方向に延在する仮想線L1を想定した場合、コイルパターン100,110,120は、仮想線L1と交差する部分において内側に蛇行する。図7には、コイルパターン100,110,120が蛇行しない場合の平面位置が破線で示されている。そして、コイルパターン100,110,120の内周壁51は、位置A1にて仮想線L1と交差し、コイルパターン100,110,120の外周壁52は、位置A2にて仮想線L1と交差する。仮に、コイルパターン100,110,120が蛇行しない場合には、内周壁51が位置B1にて仮想線L1と交差し、外周壁52が位置B2にて仮想線L1と交差する。位置B1に対する位置A1のY方向における変位量はW1であり、位置B2に対する位置A2のY方向における変位量はW2である。図7に示す例では、変位量W1の方が変位量W2よりも大きい。
【0028】
図8は、コイルパターン100,110,120の径方向における中心線L2を示す模式図である。
【0029】
図8に示すように、中心線L2を-X方向に沿ってトレースすると、ゆるやかに-Y方向に遷移する区間S1,S3と、ゆるやかに+Y方向に遷移する区間S2,S4が出現する。区間S1と区間S2の境界に位置する変曲点X1、区間S2と区間S3の境界に位置する変曲点X2、並びに、区間S3と区間S4の境界に位置する変曲点X3の前後においては、コイルパターン100,110,120の延在方向が変化する。なお、変曲点X1,X2,X3においては、コイルパターン100,110,120の延在方向が、X方向と平行あるいは略平行になり得る。このように、図8に示す例の場合、コイルパターン100,110,120のX方向に延在する区間の一部が蛇行していることから、X方向に延在する区間に3つの変曲点が出現する。これに対し、図7において破線で示すように、コイルパターン100,110,120が蛇行しない場合には、変曲点は1つとなる。
【0030】
図9(a)~(c)は、仮想線L1に沿ったコイルパターン100の模式的な断面図である。
【0031】
図9(a)に示す例では、仮想線L1上における内周壁51及び外周壁52がいずれも垂直、つまり、Z方向に延在している。この場合、内周壁51の下端及び上端がいずれも位置A1にあり、外周壁52の下端及び上端がいずれも位置A2にある。このため、仮想線L1上におけるコイルパターン100のパターン幅は、コイル軸方向であるZ方向によって変化せず、一定である。このような形状は、コイルパターン100の上端面だけでなく、コイルパターン100の下端面についても蛇行形状とすることによって得られる。そして、コイルパターン100をこのような形状とすれば、コイルパターン100と層間絶縁膜11の接触面積が増加することから、コイルパターン100と層間絶縁膜11の密着性を高めることが可能となる。
【0032】
図9(b)に示す例では、仮想線L1上における外周壁52が垂直、つまり、Z方向に延在しているのに対し、仮想線L1上における内周壁51が内側(コイルパターン100の内径領域側)に傾いている。この場合、内周壁51の上端が位置A1にあるのに対し、内周壁51の下端は位置B1にある。外周壁52については、下端及び上端がいずれも位置B2にある。図9(b)に示す例においては、位置A2は位置B2と等しい。つまり、外周壁52側においては蛇行しておらず、外周壁52側においては図7に示す破線に沿って延在する。これにより、仮想線L1上におけるコイルパターン100のパターン幅は、下端面から上端面に向かって増大する。仮想線L1上におけるコイルパターン100の上端面のパターン幅は、仮想線L1上におけるコイルパターン100の下端面のパターン幅よりも大きく、且つ、コイルパターン100の蛇行しない部分よりもパターン幅よりも大きい。このような形状は、コイルパターン100の下端面を蛇行形状とすることなく、上端面を蛇行形状とすることによって得られる。そして、コイルパターン100をこのような形状とすれば、蛇行部分においてコイルパターン100の断面積が増大することから、コイルパターン100の抵抗値を低減することが可能となる。
【0033】
図9(c)に示す例では、仮想線L1上における内周壁51及び外周壁52がいずれも内側に傾いている。この場合、内周壁51の上端が位置A1にあるのに対し、内周壁51の下端は位置B1にある。また、外周壁52の上端が位置A2にあるのに対し、外周壁52の下端は位置B2にある。このような形状は、コイルパターン100の下端面を蛇行形状とすることなく、上端面を蛇行形状とすることによって得られる。ここで、仮想線L1上における内周壁51の傾きをθとし、仮想線L1上における外周壁52の傾きをθとした場合、図9(c)に示す例では、θ>θである。つまり、内周壁51の方が外周壁52よりも大きく内側に傾いている。これにより、仮想線L1上におけるコイルパターン100のパターン幅は、下端面から上端面に向かって増大する。仮想線L1上におけるコイルパターン100の上端面のパターン幅は、仮想線L1上におけるコイルパターン100の下端面のパターン幅よりも大きく、且つ、コイルパターン100の蛇行しない部分よりもパターン幅よりも大きい。コイルパターン100をこのような形状とすれば、蛇行部分においてコイルパターン100の断面積が増大することから、コイルパターン100の抵抗値を低減することが可能となる。
【0034】
他のコイルパターン110,120の仮想線L1上における断面形状についても、図9(a)~(c)に示す形状と同様であることから、重複する説明は省略する。
【0035】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、コイルパターン100,110,120のX方向に沿った区間が蛇行していることから、コイルパターン100,110,120と層間絶縁膜11~13の密着性を高めることができ、或いは、コイルパターン100,110,120の抵抗値を低減することが可能となる。但し、コイルパターン100,110,120の全てを蛇行させる点は必須でなく、コイルパターン100,110,120の少なくとも一つが蛇行形状を有していれば足りる。また、コイルパターン100,110,120のY方向に延在する区間についても蛇行形状を有していても構わないが、Y方向は短辺であることから、この区間に蛇行形状を形成することは容易ではない場合もある。このため、コイルパターン100,110,120のY方向に延在する区間が蛇行形状を有している場合であっても、Y方向に沿った区間に比べて、X方向に沿った区間の方が大きく蛇行していても構わない。
【0036】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0037】
図10図20は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。図10図20には、1個のコイル部品1に相当する部分のみが示されているが、実際には、集合基板を用いて複数のコイル部品1が同時に作製される。
【0038】
まず、支持基板40を用意し(図10)、その表面に層間絶縁膜10~14と導体層C0~C3を交互に形成することによりコイル部3を形成した後、層間絶縁膜14にビア14a,14bを形成し、さらに導体ポストP1,P2を形成する(図11)。導体層C0~C3は、コイル部3の内径領域及びコイル部3の外側領域に位置する犠牲パターン41を含んでいる。ここで、導体層C0は、コイルパターン100及び犠牲パターン41のネガパターンであるレジスト60を形成した後(図12)、電解メッキを行うことによって形成することができる(図13)。これにより、コイルパターン100と犠牲パターン41を含む導体層C0が形成される。その後、レジスト60を除去し、導体層C0の全面を層間絶縁膜11で覆った後、層間絶縁膜11をパターニングすることによって犠牲パターン41を露出させる。このような工程を繰り返すことによって、導体層C0~C3を形成する。導体ポストP1,P2についても、電解メッキによって形成することができる。
【0039】
ここで、コイルパターン100のX方向に沿った区間を図9(a)に示す断面形状とするためには、蛇行形状を有するマスクを用いて露光することによって、蛇行形状を有するレジスト60を形成すれば良い。一方、コイルパターン100のX方向に沿った区間を図9(b)又は図9(c)に示す断面形状とするためには、蛇行しないマスクを用いて露光した後、レジスト60が内側に傾くよう変形させれば良い。レジスト60を内側に傾くよう変形させるためには、例えば、レジスト60の材料として変形しやすい材料を用いるとともに、レジスト60の現像工程における乾燥条件を調整することにより、乾燥時に生じる収縮現象を利用してレジスト60を内側に傾けることができる。これにより、コイルパターン100のX方向に沿った区間を蛇行させることが可能となる。この場合、コイルパターン100のY方向に沿った区間も蛇行し得るが、短辺であるY方向に沿った区間よりも、長辺であるX方向に沿った区間の方がレジスト60の収縮が大きいことから、X方向に沿った区間の方が大きく蛇行する。
【0040】
次に、導体ポストP1,P2の露出面の全面を覆うポスト保護膜15を形成する(図14)。導体ポストP1,P2の露出面の全面とは、Z方向に沿った側面S及びXY面を構成する上面Tである。次に、この状態でウェットエッチングを行うことにより、犠牲パターン41を除去する(図15)。コイル部3を構成する導体パターンについては、層間絶縁膜10~14で覆われているため、エッチングされることはない。導体ポストP1,P2についても、ポスト保護膜15で覆われているため、エッチングされることはない。これにより、コイル部3の内径領域及び外側領域には、空間42が形成される。
【0041】
次に、犠牲パターン41の除去によって形成された空間42を磁性樹脂層M1で埋め込む(図16)。次に、導体ポストP1,P2が露出するまで、磁性樹脂層M1の表面を研磨する(図17)。この工程により、磁性樹脂層M1の実装面4と導体ポストP1,P2の上面Tが同一平面となる。また、研磨前と比べ、磁性樹脂層M1の実装面4側における平坦性が大幅に高められる。
【0042】
次に、支持基板40を除去した後、層間絶縁膜10を覆うよう、磁性樹脂層M1の下面側に磁性樹脂層M2を形成する(図18)。その後、磁性樹脂層M2の表面を研磨することにより、上面5を平滑化しても構わない。次に、磁性素体Mの実装面4及び上面5にそれぞれカバー絶縁膜21,22を形成した後、導体ポストP1,P2の上面Tの一部が露出するよう、カバー絶縁膜21に開口21a,21bを形成する(図19)。
【0043】
次に、それぞれ導体ポストP1,P2に接続されるよう、カバー絶縁膜21上に端子電極E1,E2を形成する(図20)。そして、ダイシングによって個片化すれば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0044】
このように、本実施形態においては、蛇行形状を有するマスクを用いた露光によってレジスト60を形成し、或いは、蛇行しないマスクを用いて露光した後、レジスト60が内側に傾くよう変形させていることから、コイルパターン100,110,120のX方向に延在する区間の一部を蛇行させることが可能となる。
【0045】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、コイル部3が4層の導体層C0~C3によって構成されているが、コイル部に含まれる導体層の層数については特に限定されない。また、上記実施形態では、各導体層C0~C2に設けられたコイルパターン100,110,120のターン数が約1ターンであるが、各導体層に設けられるコイルパターンのターン数については特に限定されない。また、各導体層C0~C2に設けられたコイルパターン100,110,120において、蛇行形状を有する箇所(例えば、各コイルパターンに含まれる変曲点)は複数個所であってもよく、蛇行形状を形成する位置も特に限定されない。
【0047】
また、上記実施形態では、コイル部3を磁性素体Mに埋め込んでいるが、素体が磁性材料からなる点は必須でなく、非磁性材料からなる素体を用いても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 コイル部品
3 コイル部
4 実装面
5 上面
10~14 層間絶縁膜
11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b ビア
15 ポスト保護膜
21,22 カバー絶縁膜
21a,21b 開口
31 樹脂電極
32 Ni膜
33 Sn膜
40 支持基板
41 犠牲パターン
42 空間
51 内周壁
52 外周壁
60 レジスト
100,110,120,130 コイルパターン
111,121,131 接続パターン
A1,B1 内周壁の位置
A2,B2 外周壁の位置
B 導体ポストの下面
C0~C3 導体層
E1,E2 端子電極
L1 仮想線
L2 中心線
M 磁性素体
M1,M2 磁性樹脂層
P1,P2 導体ポスト
S 導体ポストの側面
S1~S4 区間
T 導体ポストの上面
X1~X3 変曲点
図1
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