(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031542
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B62D55/253 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135179
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】小松 宙夢
(57)【要約】
【課題】 泥はけ性を向上し得る弾性クローラを提供する。
【解決手段】 無端帯状の弾性体からなるクローラ本体2と、クローラ本体2のクローラ厚さ方向cの外周面2aに、クローラ周方向aに間隔を空けて形成された複数のラグ3とを含む弾性クローラ1である。複数のラグ1のそれぞれは、クローラ厚さ方向cの最も外側を規定する頂部4と、クローラ幅方向bにおいて、頂部4を分断する切欠部5とを有している。頂部4は、ラグ長手方向において、切欠部5の一方側に位置する第1頂部4Aと、切欠部5の他方側に位置し、かつ、第1頂部4Aよりもクローラ幅方向bの長さが小さい第2頂部4Bとを含んでいる。第1頂部4Aは、クローラ幅方向bに対し平行に延びる第1部分4aと、クローラ幅方向bに対し一方側に傾斜する第2部分4bと、クローラ幅方向bに対し他方側に傾斜する第3部分4cとを含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラであって、
無端帯状の弾性体からなるクローラ本体と、前記クローラ本体のクローラ厚さ方向の外周面に、クローラ周方向に間隔を空けて形成された複数のラグとを含み、
前記複数のラグのそれぞれは、クローラ厚さ方向の最も外側を規定する頂部と、クローラ幅方向において、前記頂部を分断する切欠部とを有し、
前記頂部は、ラグ長手方向において、前記切欠部の一方側に位置する第1頂部と、前記切欠部の他方側に位置し、かつ、前記第1頂部よりもクローラ幅方向の長さが小さい第2頂部とを含み、
前記第1頂部は、クローラ幅方向に対し平行に延びる第1部分と、クローラ幅方向に対し一方側に傾斜する第2部分と、クローラ幅方向に対し他方側に傾斜する第3部分とを含む、
弾性クローラ。
【請求項2】
前記第2頂部は、クローラ幅方向に対し平行に延びる第4部分と、クローラ幅方向に対し一方側に傾斜する第5部分と、クローラ幅方向に対し他方側に傾斜する第6部分とを含む、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記第6部分は、前記第3部分の仮想延長領域上に設けられる、請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記第1部分は、クローラ幅方向の最も外側に設けられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記第2部分及び前記第3部分のクローラ幅方向に対する傾斜角度は、それぞれ、10°以内である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記第1頂部は、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第1接続部と、前記第2部分と前記第3部分とを接続する第2接続部とを含み、
前記第1接続部及び前記第2接続部は、それぞれ、クローラ平面視において、曲率半径が30mm以上の円弧形状に形成される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記クローラ本体の内部に、クローラ周方向に間隔を空けて埋設された複数の芯体を含み、
前記複数の芯体のそれぞれは、中心部と、前記中心部からクローラ幅方向の外側に延びる一対の翼部とを有し、
前記複数のラグのそれぞれは、クローラ厚さ方向において、前記翼部を包含する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項8】
前記クローラ本体は、駆動輪を噛み合わせるための複数の駆動孔を有し、
前記切欠部は、クローラ平面視においてクローラ周方向に投影したときに、前記複数の駆動孔と重複する部分を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項9】
前記複数のラグは、前記第1頂部がクローラ幅方向の一方側に位置する第1ラグと、前記第1頂部がクローラ幅方向の他方側に位置する第2ラグとを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項10】
前記第1ラグと前記第2ラグとは、クローラ周方向において、交互に配される、請求項9に記載の弾性クローラ。
【請求項11】
前記第1ラグの前記切欠部は、前記第2ラグの前記切欠部よりもクローラ幅方向の一方側に位置する、請求項10に記載の弾性クローラ。
【請求項12】
前記クローラ本体は、クローラ周方向において互いに隣接する前記第1ラグの前記第1部分を接続するクローラ翼部を含み、
前記クローラ翼部は、クローラ幅方向に内側に凹むクローラ凹部を有する、請求項10に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無端帯状の弾性体からなるクローラ本体と、前記クローラ本体のクローラ厚さ方向の外周面に、クローラ周方向に間隔を空けて形成された複数のラグとを含む弾性クローラが知られている。例えば、下記特許文献1は、無端帯状に形成された弾性材料製のクローラ本体と、クローラ本体の接地面側に一体的に形成され、かつ、帯幅方向一端側への延出部分を有するラグと有しないラグとを帯長手方向に交互に配列した梯子型クローラを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弾性クローラは、湿田等の軟弱地から舗装路面に移動したときに、ラグ間に詰まっていた泥が舗装路面上に飛散するという問題があり、泥はけ性に対して、更なる改善の要望があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、泥はけ性を向上し得る弾性クローラを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性クローラであって、無端帯状の弾性体からなるクローラ本体と、前記クローラ本体のクローラ厚さ方向の外周面に、クローラ周方向に間隔を空けて形成された複数のラグとを含み、前記複数のラグのそれぞれは、クローラ厚さ方向の最も外側を規定する頂部と、クローラ幅方向において、前記頂部を分断する切欠部とを有し、前記頂部は、ラグ長手方向において、前記切欠部の一方側に位置する第1頂部と、前記切欠部の他方側に位置し、かつ、前記第1頂部よりもクローラ幅方向の長さが小さい第2頂部とを含み、前記第1頂部は、クローラ幅方向に対し平行に延びる第1部分と、クローラ幅方向に対し一方側に傾斜する第2部分と、クローラ幅方向に対し他方側に傾斜する第3部分とを含む、弾性クローラである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の弾性クローラは、上述の構成を備えることにより、泥はけ性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の弾性クローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の弾性クローラをクローラ外周側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の弾性クローラ1を示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態の弾性クローラ1は、無端帯状のゴム等の弾性体からなるクローラ本体2と、クローラ本体2のクローラ厚さ方向cの外周面2aに、クローラ周方向aに間隔を空けて形成された複数のラグ3とを含んでいる。このような弾性クローラ1は、例えば、農業機械や建設機械等の走行体として好適に用いられ、湿田等の軟弱地の走破性と舗装路面走行時の快適性とを両立することができる。
【0010】
ここで、本明細書において、クローラ周方向aは、弾性クローラ1の回転方向(長手方向)であり、クローラ幅方向bは、弾性クローラ1が車両に装着されるときの駆動輪(図示省略)の軸方向である。また、クローラ厚さ方向cは、クローラ周方向a及びクローラ幅方向bに直交する方向であり、クローラ厚さ方向cのうち、無端帯状の弾性クローラ1の内側が、クローラ内周側ciとされ、無端帯状の弾性クローラ1の外側が、クローラ外周側coとされる。なお、クローラ本体2のクローラ幅方向bの中央位置が、クローラ中心CLである。
【0011】
本実施形態の複数のラグ3のそれぞれは、クローラ厚さ方向cの最も外側を規定する頂部4と、クローラ幅方向bにおいて、頂部4を分断する切欠部5とを有している。このようなラグ3は、泥詰まりを抑制することができ、弾性クローラ1の泥はけ性を向上させることに役立つ。
【0012】
図2は、本実施形態の弾性クローラ1をクローラ外周側coから見た平面図であり、
図3は、
図2のA-A線の断面図である。
図2及び
図3に示されるように、頂部4は、例えば、ラグ長手方向において、切欠部5の一方側に位置する第1頂部4Aと、切欠部5の他方側に位置する第2頂部4Bとを含んでいる。本実施形態の第2頂部4Bは、第1頂部4Aよりもクローラ幅方向bの長さが小さい。
【0013】
このようなラグ3は、長さの大きい第1頂部4Aを含むことで、軟弱地の走破性を向上させることができ、長さの小さい第2頂部4Bを含むことで、弾性クローラ1の泥はけ性を向上させることに役立つ。
【0014】
本実施形態の第1頂部4Aは、クローラ幅方向bに対し平行に延びる第1部分4aと、クローラ幅方向bに対し一方側に傾斜する第2部分4bと、クローラ幅方向bに対し他方側に傾斜する第3部分4cとを含んでいる。
【0015】
このような第1頂部4Aは、第1部分4a、第2部分4b及び第3部分4cにより、屈曲時にクローラ本体2の外周面2aに対して異なる方向に歪みを生じさせることができ、ラグ3間の泥を排出することができる。このため、本実施形態の弾性クローラ1は、泥はけ性を向上することができる。
【0016】
第2頂部4Bは、第1頂部4Aと同様、クローラ幅方向bに対し平行に延びる第4部分4dと、クローラ幅方向bに対し一方側に傾斜する第5部分4eと、クローラ幅方向bに対し他方側に傾斜する第6部分4fとを含むのが望ましい。
【0017】
このような第2頂部4Bは、第4部分4d、第5部分4e及び第6部分4fにより、屈曲時にクローラ本体2の外周面2aに対して異なる方向に歪みを生じさせることができ、ラグ3間の泥を排出することができる。このような弾性クローラ1は、泥はけ性をより向上することができる。
【0018】
より好ましい態様として、弾性クローラ1は、クローラ本体2の内部に埋設された複数の芯体6と、クローラ本体2に抗張力Fを付与するための抗張体7とを含んでいる。抗張体7は、クローラ本体2の芯体6よりもクローラ外周側coに埋設されるのが望ましい。抗張体7は、例えば、クローラ周方向aに延びる複数の金属コード7aがクローラ幅方向bに並べられている。このような抗張体7は、クローラ本体2のクローラ幅方向bに均等に、抗張力Fを付与することができる。
【0019】
芯体6は、クローラ本体2を構成する弾性体よりも硬質の材料からなるのが望ましい。芯体6は、例えば、鋼、鋳鉄等の金属材料により形成されている。芯体6は、硬質樹脂により形成されていてもよい。このような芯体6は、弾性クローラ1に好適に用いられ、クローラ本体2を補強し、クローラ本体2の形状を保持することができる。
【0020】
複数の芯体6のそれぞれは、例えば、中心部6aと、中心部6aからクローラ幅方向bの外側に延びる一対の翼部6bとを有している。中心部6aは、例えば、クローラ中心CL上に位置し、駆動輪(図示省略)からの駆動力を弾性クローラ1に伝達することができる。芯体6の中心部6aには、例えば、クローラ内周側ciに突出する一対のガイド突起6cが設けられている。このガイド突起6cは、駆動輪や転輪(図示省略)のクローラ幅方向bの位置を規制し、脱輪を防止することができる。
【0021】
本実施形態の複数のラグ3のそれぞれは、クローラ厚さ方向cにおいて、翼部6bを包含している。すなわち、複数のラグ3のそれぞれは、例えば、頂部4が第2部分4b、第3部分4c、第5部分4e及び第6部分4fによりジグザグ状に形成される部分であっても、クローラ内周側ciで翼部6bに沿って延びる部分を有している。
【0022】
これにより、本実施形態の翼部6bは、全体がラグ3をクローラ内周側ciに投影した範囲内に位置している。このようなラグ3は、翼部6bのクローラ外周側coに位置する弾性体が薄くなることを抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。
【0023】
本実施形態のラグ3の第1頂部4Aの第1部分4aは、クローラ幅方向bの最も外側に設けられている。第1部分4aは、クローラ厚さ方向cにおいて、翼部6bと重複しない位置に設けられるのが望ましい。このようなラグ3は、軟弱地走行時の牽引力を向上させつつ、第1部分4aによる泥詰まりを抑制することができ、弾性クローラ1の軟弱地走破性と泥はけ性とを両立させることができる。
【0024】
図4は、第1頂部4Aの拡大平面図である。
図4に示されるように、第1頂部4Aの第2部分4bのクローラ幅方向bに対する傾斜角度θ1は、好ましくは、10°以内である。傾斜角度θ1が10°以内であることで、軟弱地走行時の優れた牽引力を維持することができる。
【0025】
第1頂部4Aの第3部分4cのクローラ幅方向bに対する傾斜角度θ2は、好ましくは、10°以内である。傾斜角度θ2が10°以内であることで、軟弱地走行時の優れた牽引力を維持することができる。
【0026】
本実施形態の第3部分4cの傾斜角度θ2は、第2部分4bの傾斜角度θ1よりも小さい。このような第3部分4cは、クローラ幅方向bの中心側の牽引力を大きくすることができ、弾性クローラ1の軟弱地走破性を向上させることができる。第1頂部4Aは、このような態様に限定されるものではなく、第3部分4cの傾斜角度θ2は、例えば、第2部分4bの傾斜角度θ1と等しくてもよく、第2部分4bの傾斜角度θ1よりも大きくてもよい。
【0027】
第1頂部4Aは、第1部分4aと第2部分4bとを接続する第1接続部4gと、第2部分4bと第3部分4cとを接続する第2接続部4hとを含んでいる。このような第1頂部4Aは、第1部分4a、第2部分4b及び第3部分4cを一体的に形成することができ、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。
【0028】
第1接続部4gは、クローラ平面視において、好ましくは、曲率半径R1が30mm以上の円弧形状に形成されている。曲率半径R1が30mm以上であることで、第1接続部4gへの応力の集中を抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。
【0029】
第2接続部4hは、クローラ平面視において、好ましくは、曲率半径R2が30mm以上の円弧形状に形成されている。曲率半径R2が30mm以上であることで、第2接続部4hへの応力の集中を抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。
【0030】
図5は、第2頂部4Bの拡大平面図である。
図5に示されるように、第2頂部4Bの第5部分4eのクローラ幅方向bに対する傾斜角度θ3は、好ましくは、10°以内である。傾斜角度θ3が10°以内であることで、軟弱地走行時の優れた牽引力を維持することができる。
【0031】
第2頂部4Bの第6部分4fのクローラ幅方向bに対する傾斜角度θ4は、好ましくは、10°以内である。傾斜角度θ4が10°以内であることで、軟弱地走行時の優れた牽引力を維持することができる。
【0032】
第6部分4fの傾斜角度θ4は、例えば、第5部分4eの傾斜角度θ3に等しい。このような第2頂部4Bは、クローラ幅方向bにバランスよく歪みを生じさせて泥詰まりを抑制することができ、弾性クローラ1の泥はけ性を向上させることができる。第2頂部4Bは、このような態様に限定されるものではなく、第6部分4fの傾斜角度θ4は、例えば、第5部分4eの傾斜角度θ3よりも小さくてもよく、第5部分4eの傾斜角度θ3よりも大きくてもよい。
【0033】
第2頂部4Bは、第4部分4dと第5部分4eとを接続する第3接続部4iと、第5部分4eと第6部分4fとを接続する第4接続部4jとを含んでいる。このような第2頂部4Bは、第4部分4d、第5部分4e及び第6部分4fを一体的に形成することができ、弾性クローラ1の耐久性を向上させることに役立つ。
【0034】
第3接続部4iは、クローラ平面視において、好ましくは、曲率半径R3が30mm以上の円弧形状に形成されている。曲率半径R3が30mm以上であることで、第3接続部4iへの応力の集中を抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。
【0035】
第4接続部4jは、クローラ平面視において、好ましくは、曲率半径R4が30mm以上の円弧形状に形成されている。曲率半径R4が30mm以上であることで、第4接続部4jへの応力の集中を抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。
【0036】
図2に示されるように、本実施形態の第2頂部4Bの第4部分4dは、第1頂部4Aの第1部分4aの仮想延長領域上に設けられている。同様に、第1頂部4Aの第1部分4aは、第2頂部4Bの第4部分4dの仮想延長領域上に設けられるのが望ましい。本実施形態の第1部分4aと第4部分4dとは、ラグ3のクローラ幅方向bの両端に位置している。このようなラグ3は、軟弱地走行時の牽引力を向上させることができ、弾性クローラ1の軟弱地走破性を向上させることに役立つ。
【0037】
本実施形態の第2頂部4Bの第5部分4eは、第1頂部4Aの第2部分4bと同じ方向に傾斜している。このようなラグ3は、軟弱地走行時の牽引力と泥詰まり抑制とを両立することに役立ち、弾性クローラ1の軟弱地走破性と泥はけ性とを両立させることができる。
【0038】
本実施形態の第2頂部4Bの第6部分4fは、第1頂部4Aの第3部分4cの仮想延長領域上に設けられている。同様に、第1頂部4Aの第3部分4cは、第2頂部4Bの第6部分4fの仮想延長領域上に設けられるのが望ましい。本実施形態の第3部分4cと第6部分4fとは、切欠部5を介して互いに隣接している。このようなラグ3は、軟弱地走行時の牽引力と泥詰まり抑制とを両立することに役立ち、弾性クローラ1の軟弱地走破性と泥はけ性とを両立させることができる。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、クローラ本体2は、駆動輪(図示省略)を噛み合わせるための複数の駆動孔8を有するのが望ましい。駆動輪は、例えば、駆動孔8に噛み合い、駆動力を芯体6の中心部6aに伝達している。駆動孔8は、クローラ中心CL上に位置するのが望ましい。
【0040】
本実施形態の切欠部5は、クローラ平面視においてクローラ周方向aに投影したときに、複数の駆動孔8と重複する部分を有している。すなわち、本実施形態の切欠部5は、駆動孔8のクローラ幅方向bの最外端よりも、クローラ中心CL側の部分を有している。このような切欠部5は、駆動孔8と協働して泥を排出することができ、弾性クローラ1の泥はけ性を向上させることができる。
【0041】
複数のラグ3は、第1頂部4Aがクローラ幅方向bの一方側に位置する第1ラグ3Aと、第1頂部4Aがクローラ幅方向bの他方側に位置する第2ラグ3Bとを含むのが望ましい。このようなラグ3は、第1ラグ3Aと第2ラグ3Bとをクローラ幅方向bにバランスよく配置することができ、舗装路面走行時の快適性を向上させることに役立つ。
【0042】
本実施形態の第1ラグ3Aと第2ラグ3Bとは、クローラ周方向aにおいて、交互に配されている。このようなラグ3は、クローラ幅方向bの最も外側に設けられた第1頂部4Aの第1部分4aが、クローラ周方向aに交互に配することができる。このため、本実施形態のラグ3は、クローラ周方向aに千鳥状に設けられ、弾性クローラ1の軟弱地走破性と泥はけ性とを両立させることに役立つ。
【0043】
第1ラグ3Aの切欠部5は、第2ラグ3Bの切欠部5よりもクローラ幅方向bの一方側に位置するのが望ましい。本実施形態のラグ3は、切欠部5がクローラ周方向aに千鳥状に設けられている。このようなラグ3は、切欠部5により泥詰まりを抑制しつつ、軟弱地走行時の良好な牽引力を発揮することができ、弾性クローラ1の軟弱地走破性と泥はけ性とを両立させることができる。
【0044】
本実施形態のクローラ本体2は、クローラ周方向aにおいて互いに隣接する第1ラグ3Aの第1部分4aを接続するクローラ翼部9を含んでいる。クローラ本体2は、同様に、クローラ周方向aにおいて互いに隣接する第2ラグ3Bの第1部分4aを接続するクローラ翼部9を含んでいる。すなわち、クローラ翼部9は、ラグ3の第2頂部4B側に設けられている。
【0045】
このようなクローラ翼部9は、内部に芯体6や抗張体7が埋設されていないので、変形量が大きく、弾性クローラ1の泥はけ性を向上させることができる。また、このクローラ翼部9とラグ3とを有するクローラ本体2は、軟弱地走行時のけん引力と接地面圧とを両立することができ、弾性クローラ1の軟弱地走破性を向上させることができる。
【0046】
クローラ翼部9は、クローラ幅方向bに内側に凹むクローラ凹部9aを有するのが望ましい。このようなクローラ凹部9aは、軟弱地走行時のけん引力と接地面圧とを両立することに役立ち、弾性クローラ1の軟弱地走破性をより向上させることができる。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0048】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0049】
[本発明1]
弾性クローラであって、
無端帯状の弾性体からなるクローラ本体と、前記クローラ本体のクローラ厚さ方向の外周面に、クローラ周方向に間隔を空けて形成された複数のラグとを含み、
前記複数のラグのそれぞれは、クローラ厚さ方向の最も外側を規定する頂部と、クローラ幅方向において、前記頂部を分断する切欠部とを有し、
前記頂部は、ラグ長手方向において、前記切欠部の一方側に位置する第1頂部と、前記切欠部の他方側に位置し、かつ、前記第1頂部よりもクローラ幅方向の長さが小さい第2頂部とを含み、
前記第1頂部は、クローラ幅方向に対し平行に延びる第1部分と、クローラ幅方向に対し一方側に傾斜する第2部分と、クローラ幅方向に対し他方側に傾斜する第3部分とを含む、
弾性クローラ。
【0050】
[本発明2]
前記第2頂部は、クローラ幅方向に対し平行に延びる第4部分と、クローラ幅方向に対し一方側に傾斜する第5部分と、クローラ幅方向に対し他方側に傾斜する第6部分とを含む、請求項1に記載の弾性クローラ。
【0051】
[本発明3]
前記第6部分は、前記第3部分の仮想延長領域上に設けられる、請求項2に記載の弾性クローラ。
【0052】
[本発明4]
前記第1部分は、クローラ幅方向の最も外側に設けられる、請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0053】
[本発明5]
前記第2部分及び前記第3部分のクローラ幅方向に対する傾斜角度は、それぞれ、10°以内である、請求項1ないし4のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0054】
[本発明6]
前記第1頂部は、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第1接続部と、前記第2部分と前記第3部分とを接続する第2接続部とを含み、
前記第1接続部及び前記第2接続部は、それぞれ、クローラ平面視において、曲率半径が30mm以上の円弧形状に形成される、請求項1ないし5のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0055】
[本発明7]
前記クローラ本体の内部に、クローラ周方向に間隔を空けて埋設された複数の芯体を含み、
前記複数の芯体のそれぞれは、中心部と、前記中心部からクローラ幅方向の外側に延びる一対の翼部とを有し、
前記複数のラグのそれぞれは、クローラ厚さ方向において、前記翼部を包含する、請求項1ないし6のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0056】
[本発明8]
前記クローラ本体は、駆動輪を噛み合わせるための複数の駆動孔を有し、
前記切欠部は、クローラ平面視においてクローラ周方向に投影したときに、前記複数の駆動孔と重複する部分を有する、請求項1ないし7のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0057】
[本発明9]
前記複数のラグは、前記第1頂部がクローラ幅方向の一方側に位置する第1ラグと、前記第1頂部がクローラ幅方向の他方側に位置する第2ラグとを含む、請求項1ないし8のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0058】
[本発明10]
前記第1ラグと前記第2ラグとは、クローラ周方向において、交互に配される、請求項9に記載の弾性クローラ。
【0059】
[本発明11]
前記第1ラグの前記切欠部は、前記第2ラグの前記切欠部よりもクローラ幅方向の一方側に位置する、請求項10に記載の弾性クローラ。
【0060】
[本発明12]
前記クローラ本体は、クローラ周方向において互いに隣接する前記第1ラグの前記第1部分を接続するクローラ翼部を含み、
前記クローラ翼部は、クローラ幅方向に内側に凹むクローラ凹部を有する、請求項10又は11に記載の弾性クローラ。
【符号の説明】
【0061】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
2a 外周面
3 ラグ
4 頂部
4A 第1頂部
4B 第2頂部
4a 第1部分
4b 第2部分
4c 第3部分
5 切欠部