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  • 特開-二次電池の製造方法および二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031547
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240229BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240229BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240229BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240229BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240229BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M50/449
H01M50/489
H01G11/84
H01G11/52
H01M10/04 Z
H01M50/46
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135186
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】前田 智則
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB02
5E078BA09
5E078CA02
5E078CA11
5E078LA07
5H021AA06
5H021CC04
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH04
5H021HH06
5H021HH10
5H028AA05
5H028BB04
5H028BB05
5H028BB15
5H028CC08
5H028EE06
5H028HH00
5H028HH06
5H028HH08
5H028HH09
5H028HH10
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ28
5H029DJ04
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ07
5H029HJ12
5H029HJ14
5H029HJ19
(57)【要約】
【課題】良好な電池性能を有し、電極とセパレータとの接着力が十分である二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】ここで開示される二次電池の製造方法は、正極集電箔上に正極活物質層を備える正極と、負極集電箔上に負極活物質層を備える負極と、接着層を備えるセパレータとを有する電極体と、電解質と、を電池ケースに収容して電池組立体を用意する組立体用意工程と、電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、電池組立体が少なくとも80℃以上となるように保持する高温処理工程と、を含む。ここで、高温処理工程は、セパレータと前記負極活物質層との界面における剥離強度をA(N/m)、負極活物質層と負極集電箔との界面における剥離強度をB(N/m)、負極活物質層内での剥離強度をC(N/m)としたときに、式I:A≧B>C;を満たすように実施する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電箔上に正極活物質層を備える正極と、負極集電箔上に負極活物質層を備える負極と、接着層を備えるセパレータと、を有する電極体と、電解質と、を電池ケースに収容して電池組立体を用意する組立体用意工程と、
前記電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、前記電池組立体が少なくとも80℃以上となるように保持する高温処理工程と、
を含み、
ここで、前記高温処理工程は、
前記セパレータと前記負極活物質層との界面における剥離強度をA(N/m)、
前記負極活物質層と前記負極集電箔との界面における剥離強度をB(N/m)、
前記負極活物質層内での剥離強度をC(N/m)としたときに、
式I:A≧B>C;
を満たすように実施する、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記高温処理工程は、前記電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、前記電池組立体が少なくとも80℃以上となるように加熱する状態を、6時間以上保持する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記高温処理工程は、前記電池組立体の幅広面の面積を100%としたときに、少なくとも60%以上の面積を拘束する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記高温処理工程は、前記電池組立体のSOCが5%未満の状態で実施する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
正極、負極、およびセパレータを備える電極体と、
電解質と、
前記電極体および前記電解質を内部に収容する電池ケースと、
を備える二次電池であって、
前記正極は、正極集電箔上に正極活物質層を備えており、
前記負極は、負極集電箔上に負極活物質層を備えており、
前記セパレータは、該セパレータの表面に接着層を備えており、
前記セパレータと前記負極活物質層との界面における剥離強度をA(N/m)、
前記負極活物質層と前記負極集電箔との界面における剥離強度をB(N/m)、
前記負極活物質層内での剥離強度をC(N/m)としたときに、
式I:A≧B>C;および
式II:A≧10;
を満たす、二次電池。
【請求項6】
前記セパレータと前記負極活物質層との界面における剥離強度Aは、10N/m以上18N/m以下である、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記接着層は、接着剤を含み、
前記接着剤は、アクリル樹脂系接着剤およびフッ素樹脂系接着剤のいずれかである、請求項5または6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記セパレータの透気度が、180sec/100ml以下である、請求項5または6に記載の二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源に好適に用いられている。かかる二次電池は、例えば、正極と負極とセパレータとを有する電極体と、電解質と、当該電極体および電解質とを内部に収容する電池ケースと、を備えている。かかる二次電池の製造方法として、例えば特許文献1では、正極と負極とセパレータとを積層して、当該積層された正極と負極とセパレータとを加熱しながらプレスすることが開示されている。これによって、電極とセパレータとの接着強度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-23488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討した結果によれば、正極と負極とセパレータとを加熱しながらプレスして接着させたとしても、その後に電解質(例えば非水電解液)を注入した場合には、接着力が低下する虞があることを見出した。接着力が低下した場合には、極間距離が局所的に増大して、充放電反応のムラが生じ得る。一方で、電極とセパレータとの接着力を高めるためにプレス圧を強くした場合には、セパレータの透気度を増加させるため、イオンの移動が妨げられてハイレート特性等が低下し得る。このため、このような電池性能の観点からは、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、良好な電池性能を有し、電極とセパレータとの接着力が十分である二次電池の製造方法を提供することにある。また、他の目的は、上記したような特性を有する二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される二次電池の製造方法は、正極集電箔上に正極活物質層を備える正極と、負極集電箔上に負極活物質層を備える負極と、接着層を備えるセパレータとを有する電極体と、電解質と、を電池ケースに収容して電池組立体を用意する組立体用意工程と、上記電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、上記電池組立体が少なくとも80℃以上となるように保持する高温処理工程と、を含む。当該製造方法の上記高温処理工程は、上記セパレータと上記負極活物質層との界面における剥離強度をA(N/m)、上記負極活物質層と上記負極集電箔との界面における剥離強度をB(N/m)、上記負極活物質層内での剥離強度をC(N/m)としたときに、式I:A≧B>C;を満たすように実施する。
【0007】
電極体と電解質とを備える電池組立体に対して、上記したような条件で高温処理を実施することにより、セパレータの接着層に含まれる接着剤が膨潤した状態で拘束され、例えばアンカー効果が発揮される。このため、比較的低い圧力によって拘束を実施しても、電極とセパレータとの接着力を向上させることができる。さらに、比較的低い圧力で拘束するため、セパレータの透気度を過度に増高させることがない。したがって、イオンの移動が良好な状態を維持することができる。かかる構成によれば、良好な電池性能(例えばハイレート特性および入出力特性)を有し、電極とセパレータとが高い接着性を有する二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る二次電池の斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係る二次電池を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B(ここでA、Bは、任意の数値)」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」の意を包含するものとする。
【0010】
本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0011】
ここではまず、ここに開示される二次電池100の構成を説明した後に、ここに開示される製造方法の各工程について説明する。図1は、ここに開示される二次電池100の斜視図である。また、図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは「電池の短辺方向」を示し、符号Yは「電池の長辺方向」を示し、符号Zは「電池の上下方向」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図1および図2に示すように、二次電池100は、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、図示されない電解質と、を備えている。以下、二次電池100の具体的な構成について説明する。
【0013】
電池ケース10は、電極体20と電解質とを収容する筐体である。電池ケース10は、有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。
【0014】
外装体12は、図1に示すように、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の幅広面12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の幅狭面12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12h(図2参照)と対向している。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。
【0015】
図2に示すように、封口板14には、注入孔15と、ガス排出弁17と、が設けられている。注入孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解質を注入するための貫通孔である。注入孔15は、電解質の注入後に封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0016】
電解質は、電極体20とともに、電池ケース10の内部に収容される。電解質としては、従来公知の電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。非水系溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート系溶媒を用いることができる。支持塩としては、LiPF等のフッ素含有リチウム塩を用いることができる。支持塩の濃度は特に制限されないが、例えば、0.1mol/L~1.2mol/Lであり得る。なお、電解質は液状に限られず、ゲル状であってもよく、固体状であってもよい。
【0017】
電極体20は、二次電池100の発電要素であり、正極集電箔22c上に正極活物質層22aが固着した正極と、負極集電箔24c上に負極活物質層24aが固着した負極と、接着層を有するセパレータと、を備えている。電極体20は、図2に示すように、電極体ホルダ29等の絶縁フィルムで覆われた状態で、外装体12の内部に収容されている。電極体20は、ここでは、複数の正極と複数の負極を、つづら折り状に折り返されたセパレータに挟み込むことにより構成されるつづら折り状の積層型電極体である。ただし、電極体は、帯状の正極と帯状の負極とが、2枚の帯状のセパレータを介して絶縁された状態で積層され、巻回軸を中心として長辺方向に巻回された巻回電極体であってもよい。あるいは、電極体は、矩形状の正極と矩形状の負極とが矩形状のセパレータを介して交互に積層された積層型電極体であってもよい。
【0018】
図2に示すように、電極体20の上下方向Zの上端部においては、正極活物質層22aが固着されずに正極集電箔22cの一部が露出した正極集電箔露出部が存在する。正極集電箔露出部には、正極集電部材34が付設されている。正極集電部材34は、正極集電箔22cと同じ金属材料、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の導電性金属から構成され得る。また、電極体20の上下方向Zの上端部においては、負極活物質層24aが固着されずに負極集電箔24cの一部が露出した負極集電箔露出部が存在する。負極集電箔露出部には、負極集電部材44が付設されている。負極集電部材44は、負極集電箔24cと同じ金属材料、例えば銅、銅合金等の導電性金属から構成され得る。
【0019】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図2の左端部)に取り付けられている。正極端子30は、電池ケースの10の内部で正極集電部材34を介して電極体20と電気的に接続されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図2の右端部)に取り付けられている。負極端子40は、電池ケースの10の内部で負極集電部材44を介して電極体20と電気的に接続されている。正極端子30は、導電性に優れる金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されていることが好ましい。また、負極端子40は、導電性に優れる金属、例えば銅または銅合金で形成されていることが好ましい。正極端子30および負極端子40は、それぞれ、ガスケット50およびインシュレータ60によって、封口板14と絶縁されている。ガスケット50およびインシュレータ60は、電気絶縁性を有する樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリプロピレン(PP)等から構成され得る。
【0020】
正極は、帯状の正極集電箔22cと、正極集電箔22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aと、を有する。正極を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電箔22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましい。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。なお、正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0021】
負極は、帯状の負極集電箔24cと、負極集電箔24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電箔24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属から構成されることが好ましい。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。なお、負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、分散剤、増粘剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0022】
上記正極および負極は、セパレータを介して絶縁された状態で対向配置される。セパレータは、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータは、基材と、接着層と、を備えている。セパレータは、基材と接着層とに加えてさらに耐熱層を備えていてもよい。例えばセパレータは、基材と、基材の厚さ方向の一方に設けられた耐熱層を有し、さらに少なくとも片面、好ましくは両面に接着層を有する。
【0023】
セパレータの基材は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、およびアラミドから選択される少なくとも1種を主成分とする多孔質基材で構成されていることが好ましい。かかる基材は、ポリオレフィンで構成されることが好ましく、特にポリエチレン(PE)、およびポリプロピレン(PP)で構成されることが好ましい。
【0024】
セパレータの接着層は、例えば加熱や押圧(典型的にはプレス成形)等によって、電極(正極および/または負極)と接着される。接着層は、接着剤を含んでいる。接着剤としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでも、高い柔軟性を有し、接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えばポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0025】
セパレータの接着層は、接着剤を蒸着等の既存の方法で、セパレータの基材または耐熱層の表面に付与することにより形成される。接着層は、ベタ塗してもよく、あるいは所定のパターンで付与されてもよい。接着層は、平面視で、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、破線状、またはこれらの組み合わせ等の形状を有していてもよい。接着層は、例えば、セパレータの厚さ方向の一方の表面全面に耐熱層を設けた後、当該耐熱層が設けられたセパレータの一方の表面全面および耐熱層が設けられていないセパレータの他方の表面全面に、ドット状の接着剤(ドット状の部分)を印刷等により配置することで形成される。このとき、ドット状の接着剤の面積密度は略一定になるように調整するとよい。また、複数のドット状の接着剤において、各ドット状の接着剤の量は、略同一であるとよい。ドット状の接着剤の個数密度は、セパレータの一方の表面全面および他方の表面全面の両方において、略一定であるとよい。接着剤は、セパレータの一方の表面全面および他方の表面全面の少なくとも一方において面積密度が略一定になるように配置され、セパレータの少なくとも一方の表面上に接着層が設けられる構成でもよい。
【0026】
耐熱層は、正極と負極とが例えば短絡して熱が生じた際にセパレータを保護する等の目的のために設けられる。耐熱層は、基材の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材の上に設けられていてもよい。ただし、耐熱層は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層は、アルミニウム酸化物等の無機物粒子と耐熱層バインダとを含むことが好ましい。耐熱層バインダとしては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。耐熱層バインダの種類は、上記したセパレータの接着層の接着剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
セパレータは、上記したように正極と負極との間(より詳細には、正極活物質層22aと負極活物質層24aとの間)に配置されている。セパレータは、電解質に含まれる電荷担体が通過可能なように多孔質に構成されている。セパレータは、空孔内に電解質(例えば非水電解液)を保持し、正極活物質層22aと負極活物質層24aとの間にイオン電導パスを形成する。ここで、セパレータの透気度(ガーレー値。JIS P8117:2009に準拠して測定される値。以下同じ。)は、例えば、200sec/100ml以下であることが好ましく、180sec/100ml以下であることがより好ましい。これにより、セパレータ内での電荷担体の移動がスムーズになり、例えばハイレート充放電を繰り返すような態様であっても、内部抵抗の増大を好適に抑制することができる。透気度の下限値は特に限定されないが、例えば、30sec/100ml以上程度であるとよい。
【0028】
ここに開示される二次電池100は、セパレータと負極活物質層24aとの界面における剥離強度をA(N/m)、負極活物質層24aと負極集電箔24cとの界面における剥離強度をB(N/m)、負極活物質層24a内での剥離強度をC(N/m)としたときに、式I:A≧B>C;を満たす。ここで、本明細書において、「剥離強度(N/m)」とは、JIS K6854-1:1999(ISO 8519-1:1990)に準じて測定された90°剥離強度のことをいう。セパレータと負極活物質層24aとの界面における剥離強度Aが負極活物質層24aと負極集電箔24cとの界面における剥離強度Bと同等または剥離強度Bよりも大きく、剥離強度Aが負極活物質層24a内の剥離強度Cよりも大きいことにより、セパレータと負極活物質層24aが乖離することが防止される。これにより、二次電池100では、負極とセパレータとの接着性が好適に向上する。
【0029】
また、ここに開示される二次電池100では、セパレータと負極活物質層24aとの界面における剥離強度Aが、10N/m以上である。かかる剥離強度を有することにより、負極とセパレータとの接着性が好適に実現され、例えばハイレート充放電を繰り返した後であっても、負極とセパレータとの接着性が確保される。剥離強度の上限は、特に限定されないが、例えば20N/m以下であることが好ましく、18N/m以下であることがより好ましい。
【0030】
<二次電池の製造方法>
次いで、ここに開示される二次電池100の製造方法について説明する。ここに開示される製造方法は、正極、負極およびセパレータを備える電極体20と、電解質と、を電池ケース10に収容して電池組立体を用意する組立体用意工程と、少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で電池組立体を拘束し、かつ、当該電池組立体の温度が少なくとも80℃以上となるように保持する高温処理工程と、を含んでいる。ここで、高温処理工程は、セパレータと負極活物質層24aとの界面における剥離強度A(N/m)、負極活物質層24aと負極集電箔24cとの界面における剥離強度B(N/m)、負極活物質層24a内での剥離強度C(N/m)が、式I:A≧B>C;を満たすように実施することを特徴とする。ここに開示される製造方法によれば、良好な電池特性(例えば、ハイレート特性および入出力特性)を有しつつ、電極とセパレータとの接着性が向上した二次電池100を製造することができる。
なお、ここに開示される製造方法は、上記したような高温処理工程によって特徴づけられており、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってもよい。また、任意の段階でさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0031】
組立体用意工程では、電池組立体を用意する。なお、本明細書において、「電池組立体」とは、初期充電およびエージングを実施する前の二次電池を指す。本工程において用意される電池組立体は、電池ケース10と、電極体20と、電解質とを備えている。
【0032】
電極体20は、正極、負極およびセパレータを備えている。正極は、例えば、上記したような正極活物質と、導電材と、バインダとを適当な溶媒中で混錬してなる正極スラリーを正極集電箔22cの表面に塗布し、乾燥することによって作製することができる。また、負極は、例えば、上記したような負極活物質と、バインダと、増粘剤とを適当な溶媒中で混錬してなる負極スラリーを負極集電箔24cの表面に塗布し、乾燥することによって作製することができるセパレータは、上記したように基材と接着層とを少なくとも備えるものを用意する。電極体20は、複数の正極および複数の負極を、つづら折り状に折り返されたセパレータに挟み込んで積層することにより作製することができる。
【0033】
図2に示すように、電極体20の上下方向Zの上端部において、正極集電箔露出部に正極集電部材34が溶接される。正極端子30は、当該正極集電部材34を介して電極体20と電気的に接続される。また、電極体20の上下方向Zの上端部において、負極集電箔露出部には、負極集電部材44が溶接される。負極端子40は、当該負極集電部材44を介して電極体20と電気的に接続される。これにより、封口板14と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40とが一体化される。
【0034】
次いで、封口板14と一体化された電極体20を、外装体12の開口12hからを挿入する。そして、封口板14と外装体12の開口12hとの周縁をレーザー溶接等によって接合する。その後、注入孔15から電解液を注入し、該注入孔15を封止部材16で塞ぐことによって、電池組立体を密閉する。以上のようにして、電池組立体を用意することができる。
【0035】
高温処理工程では、電極体20と電解質とを備える電池組立体を、所定の拘束圧と所定の温度条件で保持する。具体的には、組立体用意工程において用意した電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の圧力で拘束し、かつ、該電池組立体が少なくとも80℃以上となるように高温環境で保持する。そして、当該高温処理工程は、セパレータと負極活物質層24aとの界面における剥離強度A(N/m)、負極活物質層24aと負極集電箔24cとの界面における剥離強度B(N/m)、負極活物質層内での剥離強度C(N/m)の関係が、式I:A≧B>C;を満たすように実施する。これにより、完成後の二次電池100においても電極とセパレータとを好適に接着させることができる。
【0036】
従来の製造方法においては、電極体を構築した後に加熱しながらプレスを実施することにより、電極(正極および/または負極)とセパレータとを接着していた。しかしながら、本発明者らが検討した結果によれば、電極とセパレータとを接着させた後に電解質(例えば非水電解液)を注入した場合には、完成後の電池において電極とセパレータとの接着力が低下する(すなわち、剥離強度が低下する)ことを見出した。このため、ここに開示される製造方法においては、非水電解液が注入された後に、所定の拘束圧および温度によって電極とセパレータとを接着させる。これにより、セパレータの接着層に含まれる接着剤が非水電解液を吸収して膨潤した状態でプレスされ得る。このため、比較的低い拘束圧であっても、電極とセパレータの接着層との間で接着剤が変形して、アンカー効果による接着力が好適に発揮されると推測される。また、セパレータと負極活物質層24aと負極集電箔24cとの剥離強度を、上記した式Iを満たすように調整することにより、完成後の二次電池100においても電極とセパレータとの接着力が十分に確保される。さらに、かかる製造方法によれば、比較的低い拘束圧によって電極とセパレータとの接着が可能になることにより、セパレータの透気度を過度に増高させることがない。これによって、イオンが好適に移動できる状態が維持され、良好なハイレート特性および入出力特性を有する二次電池100を作製することができる。したがって、ここに開示される製造方法によれば、良好なハイレート特性および入出力特性を有しつつ、電極とセパレータとの接着性が向上した二次電池100を実現することができる。
【0037】
セパレータと負極活物質層24aとの界面における剥離強度Aが負極活物質層24aと負極集電箔24cとの界面における剥離強度Bと同等または剥離強度Bよりも大きく、剥離強度Aが負極活物質層内の剥離強度Cよりも大きくなるように高温処理工程を実施することにより、完成後の二次電池100においてセパレータと負極活物質層24aが乖離することが防止される。したがって、完成後の二次電池100においても負極とセパレータとが好適に接着し、例えば極間距離が不均一になること等が抑制できる。
【0038】
高温処理工程においては、上記したように、少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で電池組立体を拘束する。拘束圧は、例えば電池組立体のサイズや、電極体20の積層数(または巻回数)等に応じて適宜調整することができる。拘束圧は、例えば0.35MPa以上1.20MPa以下であることが好ましく、0.35MPa以上0.85MPa以下であってもよく、0.35MPa以上0.60MPa以下であることがより好ましい。ここに開示される製造方法によれば、比較的低い拘束圧によっても適切に電極とセパレータとを接着させることができる。
【0039】
また、高温処理工程においては、上記したように、電池組立体が少なくとも80℃以上となるように保持する。高温処理工程における温度は、電池組立体の温度が85℃以上となるように保持してもよい。一方で、電池組立体の温度が高くなりすぎる場合には、電池組立体の内部で意図しない副反応が発生して電池特性が悪化することが懸念されるため、好ましくない。このため、加熱処理の温度は、電池組立体の温度が例えば100℃以下となるように保持することが好ましく、90℃以下となるように保持することがより好ましい。
【0040】
高温処理工程において、上記したような拘束圧および温度で電池組立体を保持する時間(保持時間)は、特に限定されないが、6時間以上保持することが好ましい。例えば、保持時間は、6時間~100時間程度であることが好ましく、例えば6時間~72時間程度であってもよく、12時間~48時間程度であってもよく、12時間~24時間程度であってもよい。電池組立体のサイズ等によって異なるため一概には規定できないが、例えば、電池組立体を0.35MPa~0.60MPaの拘束圧で拘束し、かつ、80℃~90℃の温度環境において6時間~24時間程度保持することが好ましい。
【0041】
電池組立体の拘束方法は、特に限定されないが、電極体の積層方向に一対の拘束板を配置して、電池組立体を積層方向の両側から押圧することによって拘束するとよい。ここでは、電池組立体の幅広面12bを一対の拘束板で挟み込み、当該一対の拘束板を架橋部材で接続することによって、電池組立体を拘束することができる。このとき、拘束面積が少なくとも60%以上となるように電池組立体を拘束することが好ましい。すなわち、電池組立体の一方の幅広面12bの面積を100%としたときに、少なくとも60%以上の面積を拘束できるように拘束板を配置するとよい。拘束面積は、例えば60%以上であって、80%以上であることが好ましく、90%以上であってもよく、100%(すなわち、電池組立体の幅広面12bの全面)であってもよい。
【0042】
特に限定されないが、電池組立体は、SOC(State of Charge)が5%未満の状態で高温処理工程を実施することが好ましい。電池組立体のSOCは、より低いことが好ましく、例えば3%未満であってもよく、1%未満であってもよく、0%であってもよい。言い換えると、電池組立体に対して初期充電を実施する前に高温処理工程を実施することが好ましい。これにより、副反応による電池特性の悪化を抑制することができる。
【0043】
上記した高温処理工程の後に、初期充電およびエージングを実施することにより、二次電池100を提供することができる。初期充電は、製造後(完成後)の二次電池100が使用される電圧領域にわたって、充電を行う処理である。これによって、電池組立体を電気化学的に活性化させることができる。初期充電は、従来から二次電池の製造方法において採用されている一般的な手順を採用することができる。初期充電の条件は、特に限定されない。例えば、常温環境(例えば25℃)において、正極端子30と負極端子40との端子間電圧が2.5V~4.2V(好適には3.0V~4.1V)になるまで、0.1C~10C程度の定電流で充電し、SOCが60%~100%(例えば80%~100%)となるまで定電圧で充電する定電流定電圧充電(CC-CV充電)を初期充電とするとよい。
【0044】
また、エージングは、上記初期充電を施した電池組立体を、35℃以上の温度域に6時間以上(好ましくは10時間以上、例えば20時間以上)保持することにより行われる。これにより、初期充電の際に負極の表面に生じ得るSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜の安定性を高め、内部抵抗を低減することができる。エージングの温度は、好ましくは45℃~85℃(より好ましくは50℃~80℃、更に好ましくは60℃~70℃)程度とするとよい。
【0045】
以上のとおり、ここに開示される製造方法によれば、良好なハイレート特性および入出力特性を有し、電極とセパレータとの接着性が高い二次電池100を提供することができる。二次電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。また、二次電池100は、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0046】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される技術について説明したが、ここに開示される技術は上述した実施形態に限定されず、種々の変形や変更を行うことができる。
【0047】
例えば、上記した高温処理工程の前に初期充電を行ってもよい。初期充電の条件は、上記したような条件の定電流定電圧充電(CC-CV充電)で実施され得る。そして、初期充電を実施した後に、充電状態を維持したまま高温処理工程を実施してもよい。これにより、例えば負極に形成されたSEI膜の改質も同時に行うことができる。したがって、上記したようなエージング処理を省略することができるため製造効率の観点から好ましい。
【0048】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極集電箔上に正極活物質層を備える正極と、負極集電箔上に負極活物質層を備える負極と、接着層を備えるセパレータとを有する電極体と、電解質と、を電池ケースに収容して電池組立体を用意する組立体用意工程と、上記電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、上記電池組立体が少なくとも80℃以上となるように保持する高温処理工程と、を含み、ここで、上記高温処理工程は、上記セパレータと上記負極活物質層との界面における剥離強度をA(N/m)、上記負極活物質層と上記負極集電箔との界面における剥離強度をB(N/m)、上記負極活物質層内での剥離強度をC(N/m)としたときに、式I:A≧B>C;を満たすように実施する、二次電池の製造方法。
項2:上記高温処理工程は、上記電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、上記電池組立体が少なくとも80℃以上となるように加熱する状態を、6時間以上保持する、項1に記載の製造方法。
項3:上記高温処理工程は、上記電池組立体の幅広面の面積を100%としたときに、少なくとも60%以上の面積を拘束する、項1または2に記載の製造方法。
項4:上記高温処理工程は、上記電池組立体のSOCが5%未満の状態で実施する、請求項1~項3のいずれか一つに記載の製造方法。
項5:正極、負極、およびセパレータを備える電極体と、電解質と、上記電極体および上記電解質を内部に収容する電池ケースと、を備える二次電池であって、上記正極は、正極集電箔上に正極活物質層を備えており、上記負極は、負極集電箔上に負極活物質層を備えており、上記セパレータは、該セパレータの表面に接着層を備えており、上記セパレータと上記負極活物質層との界面における剥離強度をA(N/m)、上記負極活物質層と上記負極集電箔との界面における剥離強度をB(N/m)、上記負極活物質層内での剥離強度をC(N/m)としたときに、式I:A≧B>C;および式II:A≧10;を満たす、二次電池。
項6:上記セパレータと上記負極活物質層との界面における剥離強度Aは、10N/m以上18N/m以下である、項5に記載の二次電池。
項7:上記接着層は、接着剤を含み、上記接着剤は、アクリル樹脂系接着剤およびフッ素樹脂系接着剤のいずれかである、項5または6に記載の二次電池。
項8:上記セパレータの透気度が、180sec/100ml以下である、項5~項7のいずれか一つに記載の二次電池。
【0049】
以下、本発明に関する試験例を説明する。なお、以下に記載する試験例の内容は、本発明を限定することを意図したものではない。
【0050】
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、を用意した。これらを質量比が、NCM:PVdF:AB=98:1:1となるように秤量し、N-メチルピロリドン(NMP)中で混合して、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、正極集電箔としてのアルミニウム箔の表面に塗布した。その後、乾燥を行い、所定の厚みにプレスして正極を作製した。
【0051】
負極活物質としての黒鉛粉末(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、を用意した。これらを質量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるように秤量し、イオン交換水中で混合して、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを、負極集電箔としての銅箔の表面に塗布した。その後、乾燥を行い、所定の厚みにプレスして負極を作製した。
【0052】
セパレータとして、ポリエチレン(PE)製の多孔質の基材表面(両面)に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む接着層を備えるものを用意した。つづら折り状のセパレータの間に、上記用意した正極および負極を挟み込んで、積層型電極体を作製した。当該積層型電極体と、正極端子と、負極端子と、封口板とを接続して、これを電池ケースの外装体に挿入した。そして、封口板と外装体とを溶接した。次いで、封口板の注入孔から非水電解液を注入した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、をEC:EMC:DMC=30:40:30の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。このようにして、評価用電池組立体を用意した。
【0053】
<例1>
評価用電池組立体の幅広面を0.35MPaの拘束圧で拘束した状態で、80℃に設定された恒温槽に収容し、12時間保持することで高温処理を実施した。その後、初期充電およびエージング処理を実施した。これにより、例1の評価用二次電池を作製した。
【0054】
<例2>
セパレータとして、ポリエチレン(PE)製の多孔質の基材表面(両面)に、アクリル系樹脂を含む接着層を備えるものを用意した。このこと以外は、例1と同様にして、例2の評価用二次電池を作製した。
【0055】
<例3~例7>
拘束圧と温度の条件を表1に示すように異ならせたこと以外は例1と同様にして、例3~例7の評価用二次電池を作製した。
【0056】
<剥離強度の評価>
上記用意した評価用二次電池の剥離強度を測定した。剥離強度は、90度はく離接着強さ試験方法(JIS K6854-1:1999)に準じて測定した。具体的には、高温処理を実施した評価用二次電池を分解して、積層型電極体を取り出した。当該電極体から試験片を切り出し、負極集電箔を両面テープで固定治具に固定した。次いで、セパレータを剥離強度計(エー・アンド・デー株式会社製:機種名テンシロン)で鉛直方向に(90℃の角度で)引っ張った。そして、負極集電箔またはセパレータから負極活物質層が剥離するときの剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
さらに、剥離強度試験を実施した後に、負極およびセパレータの表面を観察した。負極活物質層と接触していたセパレータ側に負極活物質層が付着していた場合には、負極活物質層内での剥離強度Cよりも、セパレータと負極活物質層との界面における剥離強度Aの方が大きいと言える。また、セパレータと負極活物質層との界面における剥離強度Aは、負極集電箔と負極活物質層との界面における剥離強度Bと略同じであるか、または、剥離強度Bよりも大きいと言える。一方で、負極活物質層と接触していたセパレータ側に負極活物質層が付着していない場合には、負極活物質層内での剥離強度Cよりも、セパレータと負極活物質層との界面における剥離強度Aの方が小さいと言える。剥離強度の順列の結果を表1に示す。
【0057】
<透気度の測定>
また、各例のセパレータの透気度を測定した。具体的には、まず、各例のセパレータを切り出して試験片を用意した。この試験片をガーレー試験機(A型)に設置して、JIS P8117:2009に準拠して空気圧を印加した。そして、100mlの空気が試験片を通過するのに要する時間(sec)を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すように、接着剤の種類にかかわらず、電池組立体を少なくとも0.35MPa以上の拘束圧で拘束し、かつ、電池組立体が少なくとも80℃以上となるように保持し、セパレータと負極活物質層との界面における剥離強度A、負極活物質層と負極集電箔との界面における剥離強度B、負極活物質層内での剥離強度Cの関係が、式I:A≧B>C;を満たすように高温処理工程を実施することにより、電極とセパレータとの接着力が十分である二次電池を作製することができる。また、表1に示すように、かかる製造方法によれば、セパレータの透気度を過度に増高させないため、イオンが好適に移動できる状態が維持されることがわかる。したがって、良好な電池特性を有する二次電池を作製することができる。
【0060】
また、例1および例2では、剥離した際の剥離強度が10N/mであり、セパレータ側に負極活物質層が付着していた。このため、セパレータと負極活物質層との界面における剥離強度Aが、少なくとも10N/m以上であることがわかる。
【0061】
以上、ここで開示される技術について、具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。ここに開示される技術には上記の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
20 電極体
22a 正極活物質層
22c 正極集電箔
24a 負極活物質層
24c 負極集電箔
30 正極端子
40 負極端子
50 ガスケット
60 インシュレータ
100 二次電池
図1
図2