(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031555
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】閉空間観測装置
(51)【国際特許分類】
A62C 3/00 20060101AFI20240229BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240229BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20240229BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240229BHJP
H04N 23/40 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
A62C3/00 A
F24F13/02 Z
G08B17/12 B
H04N7/18 D
H04N5/225 500
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135196
(22)【出願日】2022-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】519346136
【氏名又は名称】株式会社アガタ
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】田賀 俊行
【テーマコード(参考)】
3L080
5C054
5C085
5C122
【Fターム(参考)】
3L080AE03
3L080AE04
5C054CA04
5C054CC02
5C054CF07
5C054DA07
5C054HA20
5C085AA01
5C085BA36
5C085FA16
5C085FA33
5C122DA16
5C122EA36
5C122GD11
5C122GE05
5C122GE11
5C122GG22
5C122HA81
(57)【要約】
【課題】観測機器の故障が、閉空間での火災の原因となることのない閉空間観測装置を提供する。
【解決手段】閉空間観測装置1は、ダクトD等の閉空間を形成する壁面部に設けた挿入孔に固定される保持部2と、この保持部2に移動自在に支持される金属製の案内筒部5とを備えている。案内筒部5内には撮影部8a、測温部8bを有するセンサ部6が配置されている。ダクトD内の観測時には、撮影部8aにより撮影されるダクトD内の映像データ、測温部8bにより得られた温度データを、処理回路部4eを介して外部装置Pに送信する。閉空間観測装置1の非駆動時には、撮影部8a、測温部8bは案内筒部5内に収納される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に貫通孔を備え、閉空間を形成する側面の外側から固定した保持部と、前記貫通孔内に、固定される本体部と、該本体部の後端に連結する制御部とから構成される閉空間観測装置であって、
前記本体部は、前記側面に設けた挿入孔と連通し、前記貫通孔内に密着して固定される筒状の案内筒部と、該案内筒部内を前後に摺動可能な棒状のセンサ部とを備え、
前記センサ部は前方に設けた熱伝達部と、該熱伝達部の後方に連続する観測部とを備え、
前記制御部は前記センサ部を移動させる駆動部と、該駆動部を制御する処理回路部とを備え、
前記処理回路部による前記駆動部の制御によって、前記熱伝達部が前記案内筒部の先端を封止して密閉する第1の状態から、前記観測部が前記案内筒部から前記閉空間に進出する第2の状態に、前記センサ部を移動させることを特徴とする閉空間観測装置。
【請求項2】
前記第1の状態では、前記熱伝達部の先端面が前記側面と面一の位置であることを特徴とする請求項1に記載された閉空間観測装置。
【請求項3】
前記観測部は、撮影部と、該撮影部より前方であって前記熱伝達部の境界部に接触して配置した測温部とから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載された閉空間観測装置。
【請求項4】
前記処理回路部は、前記観測部により観測した観測データを外部装置に送信することを特徴とする請求項3に記載された閉空間観測装置。
【請求項5】
前記処理回路部は、前記第1の状態における前記測温部の温度データに基づいて、前記駆動部によって第2の状態にセンサ部を移動させて、前記撮影部による撮影データを取得することを特徴とする請求項3に記載された閉空間観測装置。
【請求項6】
前記熱伝達部の長さは、前記センサ部の直径の3倍以上であることを特徴とする請求項2に記載された閉空間観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト内等の閉空間内の映像等を離れた個所から確認する閉空間観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理場等で発生する油煙等の排気を行うダクト内に、可視光カメラを設置して、外部からこの可視光カメラを介して、ダクト内の異常を監視する火災検知システムが開示されている。
【0003】
このようなダクト内を可視光カメラで監視可能とする監視システムにおいては、オペレータはダクト内に流れる油煙の状況や、ダクトの壁面に付着した油分、或いは可視光カメラの近傍に設置され、流路を閉止する機能を有する防火ダンパに付着した油分を、可視光カメラからの映像を通じて、確認することが可能である。
【0004】
そして、油煙の異常滞留が発生したり、壁面や防火ダンパに油分が大量に付着している場合は、掃除等を含めた点検を行うことで、ダクト内の火災発生を予防することができる。更に、ダクト内に測温部を併せて設置することで、異常温度を検出することができ、火災を予防することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のダクト内に設置した可視光カメラを、調理場等で発生する煙の中で長期に渡って使用していると、油分等の汚れがレンズに付着して、ダクト内の状況を可視し難くなる。
【0007】
更に、油煙のよる高熱によりカメラや測温部を構成するICチップ、基板等に不具合が生じ、出火した場合にカメラ、センサ付近の可燃性を有する汚れに燃え移る災害発生の原因になるという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、カメラのレンズに汚れが付着することを防止し、更に観測機器の故障が、閉空間での火災の原因となることのない閉空間観測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る閉空間観測装置は、中央に貫通孔を備え、閉空間を形成する側面の外側から固定した保持部と、前記貫通孔内に、固定される本体部と、該本体部の後端に連結する制御部とから構成される閉空間観測装置であって、前記本体部は、前記側面に設けた挿入孔と連通し、前記貫通孔内に密着して固定される筒状の案内筒部と、該案内筒部内を前後に摺動可能な棒状のセンサ部とを備え、前記センサ部は前方に設けた熱伝達部と、該熱伝達部の後方に連続する観測部とを備え、前記制御部は前記センサ部を移動させる駆動部と、該駆動部を制御する処理回路部とを備え、前記処理回路部による前記駆動部の制御によって、前記熱伝達部が前記案内筒部の先端を封止して密閉する第1の状態から、前記観測部が前記案内筒部から前記閉空間に進出する第2の状態に、前記センサ部を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る閉空間観測装置によれば、閉空間内を観測する撮影部のレンズに油分等の汚れが付着することはなく、かつ観測部から出火しても、閉空間内の汚れに引火して、閉空間内で火災が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のダクトに対する閉空間観測装置の構成図である。
【
図2】観測部をダクト内に進出した状態の構成図である。
【
図4】観測部をダクト内に進出した状態の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を本実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0013】
図1は実施例1のダクト内に本実施例の閉空間観測装置を設置した状態の構成図、
図2は観測部をダクト内に突出した状態の構成図である。
【0014】
閉空間観測装置1を設置するダクトDは閉空間を形成しており、例えば調理場等に設置し、調理により発生する排煙を外部に排気するための排煙筒であり、温度の高い油分等を含む空気を外部に排気する。また、このダクトDは工場等に設置され、粉塵等を含む空気に対して排気を行うものでもよい。
【0015】
なお、図示しない防火ダンパがダクトD内の区画毎に配置されており、ダクトD内で火災が発生した場合に、火災による熱により防火ダンパの感熱溶断部材が溶融することで、付勢力が解除されて羽根部が90度回転し、ダクトDの排煙流路が閉止される。このように、防火ダンパによって流路が閉止されることで、防火ダンパの下流側に火災が拡大することを防止することができるようになっている。
【0016】
図1において、ダクトDは煙の流れに対して直交する形状が断面円形としているが、円筒形以外の矩形筒等の適宜の断面形状であってもよい。
【0017】
閉空間観測装置1は、ダクトDの側面D1の外側に固定し中央に貫通孔2aを備えた保持部2と、貫通孔2a内に取り付けられ、外形が円柱状の本体部3と、この本体部3の後端に連結する制御部4とから構成されている。
【0018】
保持部2は、側面D1に対してねじやリベット等によって外側から固着する盤状のフランジ2bと、このフランジ2bの中央から外方に延出する筒部2cとから成り、貫通孔2aは筒部2c内に形成されている。
【0019】
本体部3は、側面D1に設けた挿入孔D2と連通し、貫通孔2a内に密着して固定される筒状で金属製の案内筒部5と、この案内筒部5内を前後に移動可能な棒状のセンサ部6とを備えている。センサ部6は、外径が案内筒部5の内径と略一致し、案内筒部5に対して隙間なく摺動可能であり、ダクトD側の前方に設けた熱伝達部7と、この熱伝達部7の後方に配置された柱体状の観測部8とを備えている。
【0020】
熱伝達部7は熱伝導率が大きい銅等の金属が用いられ、先端に設けた円板状の頭部7aと、この頭部7aより外径が小さく頭部7aと連結する棒体部7bとから構成されている。この棒体部7bの外径と、棒体部7bと連結する観測部8の外径とは略一致している。
【0021】
観測部8には、カメラである撮影部8aと、この撮影部8aよりも更に前方に位置し熱伝達部7との境界部に接触して配置されたサーミスタや熱電対から成る測温部8bとを備えている。測温部8bは、ダクトD内の温度を直接、又は熱伝達部7を介して伝熱されるダクトD内の温度を測定することができる。
また、撮影部8aのレンズは、ダクトD内に設けた前述の防火ダンパ等を撮影できるように、ダクトDの中心線方向に向けて配置されている。撮影部8aは広角範囲を撮影可能な魚眼レンズを採用してもよく、又は外部からの操作によるズーム機能を有するものであってもよい。更には、赤外線カメラを用いたり、撮影部8aの近傍に発光部を設け、撮影部8aの撮影と同期して、発光部を点灯させることもできる。
【0022】
更に、観測部8の後端部8cには、長手方向に沿う長孔8dが設けられており、この長孔8d内に、後述するウォーム部4aが挿入可能としている。更に、後端部8c近傍の長孔8d内には、ウォーム部4aの螺旋状の歯部4bに係合する係合部8eが設けられている。
【0023】
制御部4は、棒状の金属体に歯部4bが刻設されたウォーム部4aと、このウォーム部4aを回転させる電動モータ等から成る駆動部4cと、信号線4dを介して駆動部4cを制御し、更には撮影部8a及び測温部8bからの撮影データ及び温度データの観測データを、信号線4dを介して取得する処理回路部4eとを有している。
【0024】
また、商用電源等の外部電源Sの電力が、駆動部4cに、及びコンバータ部4fを介して処理回路部4eに、電力線4gを介して供給されている。処理回路部4eは、入力された観測データを無線によって外部装置Pに送信するアンテナ4hを備えている。
【0025】
外部装置Pは、例えばタブレットPCやパソコン等を用いることができ、複数の閉空間観測装置1を管理することが可能である。そして、外部装置Pに対するオペレータの操作によって、処理回路部4eを介して駆動部4cの制御等を行うことで、ダクトD内での観測データを取得することが可能である。
【0026】
図1に示す状態は、オペレータが外部装置Pを操作していない閉空間観測装置1の非駆動時であり、熱伝達部7の頭部7aによって案内筒部5の先端が封止され、密閉した状態とされている。更に、熱伝達部7の先端面である頭部7aの頂面は、ダクトDの内面とほぼ面一の状態とされ、頭部7aによって挿入孔D2は密閉されている。
【0027】
このように、熱伝達部7が案内筒部5の先端を封止して密閉する第1の状態に対して、閉空間観測装置1によりダクトD内の状況を観測するには、撮影部8a及び測温部8bから成る観測部8を案内筒部5からダクトD内に進出する
図2に示す第2の状態、つまりセンサ部6の先端がダクトDのほぼ中心部に至るまで移動させる。
【0028】
図1に示す第1の状態から
図2に示す第2の状態に移行させるためには、外部装置Pからの操作等により、処理回路部4eを介して、駆動部4cを駆動させて、ウォーム部4aを回転させる。
【0029】
ウォーム部4aが回転を開始すると、歯部4bに係合した係合部8eを含む観測部8は、ウォーム部4aの回転に追従して前方に移動する。また、観測部8自体の回転を抑止するために、センサ部6は案内筒部5等に対して係合する溝部又は突条部等が設けられており、観測部8は移動時に回転することなく前後方向に移動する。
【0030】
なお、案内筒部5自体を貫通孔2a内で回動可能とする構造を採用することもでき、このような回動構造を採用して、処理回路部4eからの制御により、ダクトD内でセンサ部6を軸中心に回転させて、撮影部8aにより周方向を撮影することも可能である。
【0031】
また、ウォーム部4aの歯部4bの先端位置を、観測に適したセンサ部6の進出位置に調整しておくことで、センサ部6は
図2に示す所定位置で停止する。
【0032】
この状態で、観測部8の撮影部8aによりダクトD内を撮影し、併せて測温部8bによってダクトD内の温度を測定する。そして、処理回路部4eに取得した撮影データ、温度データを蓄積したり、アンテナ4hを介して外部装置Pに送信することができる。
【0033】
観測部8による観測が終了すると、外部装置Pからの操作等により、処理回路部4eを介して、駆動部4cを逆回転駆動させることで、観測部8は後方に移動する。そして、熱伝達部7の頭部7aが案内筒部5の先端に当接することで、センサ部6は案内筒部5内に収納され、第1の状態に戻ることになる。なお、この際に頭部7aが案内筒部5の先端に係止されることで、これ以上に観測部8が後方に移動することはない。
【0034】
このように、駆動部4cの制御によって、熱伝達部7を案内筒部5の先端を封止して密閉する第1の状態から、観測部8が案内筒部5からダクトDに進出する第2の状態に、及び第2の状態から第1の状態に、センサ部6を移動させることができる。
【0035】
なお、第1の状態である非駆動時においても、熱伝達部7、測温部8bによって、ダクトD内の温度測定は可能であり、処理回路部4eに取得した温度データを蓄積したり、定期的に外部装置Pに送信することもできる。
【0036】
又は、第1の状態で処理回路部4eがダクトD内の温度データが異常値を示した場合に、外部装置Pに警報を出力したり、或いは自動的に第2の状態に移行して、撮影部8により撮影した撮影データを取得することもできる。
【0037】
第1の状態においては、特に測温部8bによる温度データが異常値でない限り、第2の状態に移行する必要はないが、定期的に観測するようにしてもよい。例えば週1回程度、オペレータが第1の状態から第2の状態に操作し、ダクトD内の状態を観測してもよい。
【0038】
第2の状態においても、撮影データ、温度データに異常がなければ、そのままの運用を継続する。もし異常があった場合、例えば撮像データからダクトD内の付着した油分や排煙が多量であったり、温度データからダクトDの温度が通常よりも極端に高かった場合には、ダクトD内の清掃や内部点検を行うことになる。
【0039】
また、第1の状態では、撮影部8aのレンズは案内筒部5内に収納され、ダクトD内を流れる排煙と接することはない。従って、撮影部8aのレンズがダクトD内に流れる排煙と接する第2の状態以外では、撮影部8aのレンズに油分等の汚れが付着する虞れはない。たとえ、第2の状態で撮影部8aのレンズに汚れが付着したとしても、案内筒部5内に撮影部8aを収納する際に、レンズの汚れが案内筒部5の先端によって き取られて除去される。
【0040】
また、第1の状態では、観測部8は不燃性である金属製の案内筒部5内に収納されているため、撮影部8a又は測温部8bを構成するICチップに不具合が生じ、短絡による火花が発生したり基板が燃焼しても、ダクトD内の側面D1等に付着している油分を含む汚れに引火して、ダクトD内で火災が発生することはない。
【0041】
更に、
図1に示すように、熱伝達部7の長さを観測部8の直径の複数倍、例えば3倍以上にすることで、閉空間観測装置1の火災発生の原因となる観測部8から、ダクトD内の汚れ等の引火性を有する箇所まで十分に離れていることから、出火した観測部8からダクトD内の汚れに延焼することはなく、より一層の安全性を確保することができる。
実施例2における閉空間観測装置1’の操作、運用方法は、実施例1の閉空間観測装置1とほぼ同様である。実施例2の閉空間観測装置1’においても、第1の状態では観測部8は案内筒部5’内に収納されているため、撮影部8aのレンズに油分等の汚れが付着することはなく、また観測部8から出火しても、ダクトD内の汚れに引火して、ダクトD内で火災が発生することはない。