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特開2024-31617誤り訂正翻訳装置、誤り訂正翻訳方法及びプログラム並びにその格納媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031617
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】誤り訂正翻訳装置、誤り訂正翻訳方法及びプログラム並びにその格納媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 40/289 20200101AFI20240229BHJP
   G06F 40/58 20200101ALI20240229BHJP
   G06F 3/04842 20220101ALI20240229BHJP
【FI】
G06F40/289
G06F40/58
G06F3/04842
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135277
(22)【出願日】2022-08-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、多言語翻訳技術の高度化に関する研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】521120436
【氏名又は名称】マインドワード株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 史昭
(72)【発明者】
【氏名】内山 将夫
(72)【発明者】
【氏名】隅田 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 照二
【テーマコード(参考)】
5B091
5E555
【Fターム(参考)】
5B091CB12
5B091DA03
5B091DA09
5B091EA01
5B091EA14
5E555AA02
5E555AA23
5E555AA26
5E555AA76
5E555BA05
5E555BA07
5E555BA82
5E555BB05
5E555BB07
5E555BC04
5E555CA12
5E555CB12
5E555CC03
5E555CC19
5E555DA01
5E555DA23
5E555DB25
5E555DB43
5E555DC31
5E555DC35
5E555DC37
5E555DC39
5E555EA07
5E555EA11
5E555FA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誤り訂正が効率的で、会話の質を向上することができる誤り訂正翻訳装置、誤り訂正翻訳方法並びにプログラム及びその格納媒体を提供する。
【解決手段】訂正翻訳装置10は、第1言語のテキストが入力される第1の端末と、該テキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割器と、分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳機と、翻訳機からの翻訳チャンクの各々を第2の端末に個別に表示させる誤り訂正制御部25と、誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付ける第2の端末と、を有する。誤り訂正制御部は、第2の端末に入力された識別子に基づいて、誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で第1の端末に表示させ、誤訳チャンクの表示に応答して、第1の端末に第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1言語のテキストが入力される第1の端末と、
前記第1言語のテキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割器と、
前記分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳機と、
第2の端末と、
前記翻訳機からの前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末に個別に表示させる誤り訂正制御部と、を有し、
前記第2の端末は、前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付け、
前記誤り訂正制御部は、前記第2の端末に入力された前記識別子に基づいて、前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末に表示させ、前記誤訳チャンクの表示に応答して、前記第1の端末に前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせる、ことを特徴とする誤り訂正翻訳装置。
【請求項2】
前記誤り訂正制御部は、前記言い換えテキストを前記第1言語のテキストとし、前記言い換えテキストの前記第2言語の翻訳チャンクの各々を前記第2の端末に表示させる請求項1に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項3】
前記翻訳機は、前記第2言語の前記翻訳チャンクを逆翻訳して逆翻訳チャンクを生成し、
前記誤り訂正制御部は、前記逆翻訳チャンクを前記第1の端末に表示させる、請求項1に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項4】
前記第2の端末はタッチパネル機能を有するディスプレイを有し、
前記翻訳チャンク及び前記誤訳チャンクは、テキストウィジェットとして前記ディスプレイに表示され、
前記第2の端末は前記識別子の入力を前記ディスプレイへのタッチによって受け付ける、請求項1に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項5】
前記テキスト分割器は形態素解析を行って前記第1言語のテキストを前記チャンクに分割する請求項1に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項6】
前記テキスト分割器は深層学習により前記チャンクの境界を決定する請求項5に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項7】
前記第1の端末は、発話された音声の認識を行い、前記第1言語のテキストを生成する音声認識部を有する請求項1に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項8】
前記誤訳チャンクは、前記音声認識部による音声認識誤りによる翻訳誤りを含む請求項7に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項9】
第1の端末及び第2の端末と、
前記第1の端末から入力された第1言語のテキスト及び前記第2の端末から入力された第2言語のテキストをチャンクに分割してそれぞれ第1の分割テキスト及び第2の分割テキストを生成するテキスト分割器と、
前記第1の分割テキスト及び前記第2の分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して、それぞれ前記第2言語の翻訳チャンク及び前記第1言語の翻訳チャンクを生成する翻訳機と、
前記翻訳機からの前記第1言語の前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末に個別に表示させるとともに、前記翻訳機からの前記第2言語の前記翻訳チャンクの各々を前記第1の端末に個別に表示させる誤り訂正制御部と、を有し、
前記第2の端末は、前記第1言語の前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する第1の識別子の入力を受け付け、
前記第1の端末は、前記第2言語の前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する第2の識別子の入力を受け付け、
前記誤り訂正制御部は、
前記第2の端末に前記第1の識別子が入力されたとき、前記第1の識別子に基づいて、前記第1言語の前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末に表示させ、
前記第1の端末に前記第2の識別子が入力されたとき、前記第2の識別子に基づいて、前記第2言語の前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第2の端末に表示させ、
前記第1言語の前記誤訳チャンクの表示に応答して、前記第1の端末に前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせ、
前記第2言語の前記誤訳チャンクの表示に応答して、前記第2の端末に前記第2言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせる、誤り訂正翻訳装置。
【請求項10】
前記誤り訂正制御部は、前記第1の識別子及び前記第2の識別子に基づいて、又は、前記第2の端末又は前記第1の端末に前記誤訳チャンクが表示されてからの経過時間に基づいて、前記第1の端末又は前記第2の端末から入力された1の発話テキストの誤り訂正が完了したか否かを判別する誤り訂正完了判別部を有する請求項9に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項11】
前記誤り訂正完了判別部は、前記1の発話テキストの誤り訂正が完了していないことを判別した場合、次の新たな発話テキストの入力を禁止する請求項10に記載の誤り訂正翻訳装置。
【請求項12】
第1言語のテキストを第1の端末に入力するステップと、
前記第1言語のテキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割ステップと、
前記分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳ステップと、
前記翻訳機からの前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末に個別に表示させる誤り訂正制御ステップと、
前記第2の端末において、前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付けるステップと、
前記第2の端末に入力された前記識別子に基づいて、前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末に表示させる誤訳チャンク表示ステップと、
前記誤訳チャンク表示ステップの後に、前記第1の端末への、前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けるステップと、
を有する誤り訂正翻訳方法。
【請求項13】
テキストデータを翻訳するためにコンピュータを、
第1言語のテキストが入力される第1の端末手段、
前記第1言語のテキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割手段、
前記分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳手段と、
第2の端末手段、
前記翻訳手段からの前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末手段に個別に表示させる誤り訂正制御手段、として機能させ、
前記第2の端末手段は、前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付け、
前記誤り訂正制御手段は、前記第2の端末手段に入力された前記識別子に基づいて、前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末手段に表示させ、前記誤訳チャンクの表示に応答して、前記第1の端末手段に前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせる、ことを特徴とする誤り訂正翻訳プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の誤り訂正翻訳プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な格納媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤り訂正翻訳装置、誤り訂正翻訳方法及びプログラム並びにその格納媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械翻訳を用いた同時通訳のために、入力されたシーケンスデータを分割する文章分割方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、リアルタイムでシーケンスデータ分割処理(例えば、文章分割処理)を実行することができるデータ・セグメンテーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-24277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、通訳で生じる誤りの範囲を、発話者と聞き手で共通に理解して進めることが困難であった。そのため、誤り訂正会話が複雑で冗長なものになっていた。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、同時通訳における誤りを原言語側に確実にフィードバックすることができ、誤り訂正が効率的で、会話の質を向上することができる誤り訂正翻訳装置、誤り訂正翻訳方法及びプログラム並びにその格納媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1実施形態による誤り訂正翻訳装置は、
第1言語のテキストが入力される第1の端末と、
前記第1言語のテキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割器と、
前記分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳機と、
第2の端末と、
前記翻訳機からの前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末に個別に表示させる誤り訂正制御部と、を有している。
【0008】
前記第2の端末は、前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付け、
前記誤り訂正制御部は、前記第2の端末に入力された前記識別子に基づいて、前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末に表示させ、前記誤訳チャンクの表示に応答して、前記第1の端末に前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせる、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の実施形態による誤り訂正翻訳方法は、
第1言語のテキストを第1の端末に入力するステップと、
前記第1言語のテキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割ステップと、
前記分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳ステップと、
前記翻訳機からの前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末に個別に表示させる誤り訂正制御ステップと、
前記第2の端末において、前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付けるステップと、
前記第2の端末に入力された前記識別子に基づいて、前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末に表示させる誤訳チャンク表示ステップと、
前記誤訳チャンク表示ステップの後に、前記第1の端末への、前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けるステップと、
を有する。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態による誤り訂正翻訳プログラムは、
テキストデータを翻訳するためにコンピュータを、
第1言語のテキストが入力される第1の端末手段、
前記第1言語のテキストをチャンクに分割して分割テキストを生成するテキスト分割手段、
前記分割テキストに含まれるチャンクの各々を個別に翻訳して第2言語の翻訳チャンクを生成する翻訳手段と、
第2の端末手段、
前記翻訳手段からの前記翻訳チャンクの各々を前記第2の端末手段に個別に表示させる誤り訂正制御手段、として機能させ、
前記第2の端末手段は、前記翻訳チャンクのうちの誤訳チャンクを指定する識別子の入力を受け付け、
前記誤り訂正制御手段は、前記第2の端末手段に入力された前記識別子に基づいて、前記誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で前記第1の端末手段に表示させ、前記誤訳チャンクの表示に応答して、前記第1の端末手段に前記第1言語のテキストの言い換えテキストの入力を受け付けさせる、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態による誤り訂正翻訳装置10の構成を示すブロック図である。
図2】誤り訂正制御部25が実行する誤り訂正制御のフローを示すフローチャートである。
図3A】発話テキストが表示される第1の端末11の表示画面を模式的に示す図である。
図3B】翻訳チャンクが分離して個別に枠表示される第2の端末21の表示画面を模式的に示す図である。
図3C】誤訳チャンクの指定を受け付けたときの第2の端末21の表示画面を模式的に示す図である。
図3D】誤訳チャンクがハイライト表示された第1の端末11の表示画面を模式的に示す図である。
図3E】誤訳チャンクがハイライト表示された第1の端末11の表示画面の他の例を模式的に示す図である。
図3F】言い換えテキストが翻訳されて表示された第2の端末21の表示画面を模式的に示す図である。
図3G図3Dに示す第1の端末11の表示の改変例を模式的に示す図である。
図4】テキスト分割器13の構成の一例を示すブロック図である。
図5A】MeCabを用いた日本語テキストの形態素解析結果を示す図である。
図5B】NLTKを用いた英語テキストの形態素解析結果を示す図である。
図6】閾値判定管理器34が実行するチャンク境界の決定処理手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態による誤り訂正翻訳装置30の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第3の実施形態による誤り訂正翻訳装置50の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による誤り訂正翻訳装置10の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、誤り訂正翻訳装置10は、日本語(第1の言語)の話者の会話を英語(第2の言語)の話者に翻訳する翻訳装置として構成されている。しかし、日本語(第1の言語)の話者の会話を英語(第2の言語)の話者に翻訳する、及び、英語話者の会話を日本語話者に翻訳する双方向的な同時通訳の翻訳装置として構成されていてもよい。
【0015】
当該第1の言語(原言語)及び当該第2の言語(翻訳言語)は日本語及び英語に限定されず、他の言語に対しても適用することができる。
【0016】
誤り訂正翻訳装置10は、タブレット端末(入出力装置)である第1の端末(図中、端末#1)11、テキスト分割器14、日英/英日翻訳機(以下、単に翻訳機という。)15、タブレット端末(入出力装置)である第2の端末(図中、端末#2)21及び誤り訂正制御部25を有している。
【0017】
また、誤り訂正制御部25は、第1の端末制御器12、分割テキスト訂正管理器(以下、単に訂正管理器という。)13、第2の端末制御器22を有している。
【0018】
第1の端末11は、スクリーンキーボード(KB)11Aを具備している。日本語話者1の操作によってスクリーンキーボード(以下、単にキーボードという。)11Aから入力されたかな文字は、第1の端末11内のプロセッサ(図示しない)により、日本語のテキストデータ(シーケンスデータ)として第1の端末11から出力される。なお、この際、キーボード11Aから入力されたかな文字について、必要に応じて公知の技術であるかな漢字変換が利用されてもよい。
【0019】
また、第1の端末11は、第1の端末制御器12からのデータを受信して表示するディスプレイを有する。さらに、当該ディスプレイは日本語話者1の操作を受け付けるタッチパネルとしての機能を有している。
【0020】
同様に、第2の端末21は、キーボード(KB)21Aを具備している。英語話者2の操作によってキーボード21Aから入力された文字は、第2の端末21内のプロセッサ(図示しない)により、英語のテキストデータ(シーケンスデータ)として第2の端末21から出力される。
【0021】
また、第2の端末21は、第2の端末制御器22からのデータを受信して表示するディスプレイを有する。さらに、当該ディスプレイは英語話者2の操作を受け付けるタッチパネルとしての機能を有している。
【0022】
以下に、日本語話者の会話を英語話者に翻訳する同時通訳の場合について、図を参照して具体的に説明する。図2は、誤り訂正制御部25が実行する誤り訂正翻訳方法のフローを示すフローチャートである。また、図3A図3Gは、第1の端末11及び第2の端末21のディスプレイ画面を模式的に示す図である。
【0023】
なお、以下においては、誤り訂正翻訳装置10に1つの文からなるテキストが入力され、翻訳される場合について説明する。
【0024】
日本語話者1は、キーボード(KB)11Aを用いて「あす東京に行きます」というテキスト(以下、発話テキストともいう。)を入力する。第1の端末11は、入力された発話テキストを第1の端末制御器12に送る。
【0025】
第1の端末制御器12は、第1の端末11から受信した入力テキストから以下のデータ信号DS1を生成し(ステップS1)、訂正管理器13に送る。また、第1の端末制御器12は、データ信号DS1は第1の端末11にも送られ、図3Aに示すように、第1の端末11には、データ信号DS1に含まれる発話テキストデータ[‘あす東京に行きます’]がテキストウィジェット11Wの形式で表示される(ステップS2)。
【0026】
なお、データ信号のデータフォーマットとして、JSON(JavaScript Object Notation)フォーマットを用いた場合を例に説明する。
【0027】
データ信号DS1:{‘id’:10, ‘jap’:[‘あす東京に行きます’]}
ここで、‘id’は発話のIDであり、‘id’はid ={0, 1, …}なるゼロ以上の整数である。したがって、「‘id’:10」は11番目の発話であることを意味している。
【0028】
誤り訂正制御部25の訂正管理器13は、データ信号DS1をテキスト分割器14に送る(ステップS2)。テキスト分割器14は、データ信号DS1に含まれる発話テキストデータをチャンク(部分文)に分割する。以下に図4を参照してテキスト分割器13の動作について詳細に説明する。
【0029】
図4は、テキスト分割器13の構成の一例を示すブロック図である。テキスト分割器13の入力端13Iに入力されたテキストST(図中、<ST>と示す。)は単語分割器31によって単語に分割される。
【0030】
単語分割器31は、例えば、形態素解析を行ってテキストSTを単語w~wに分割する。分割により得られた各単語はFIFO(First In First Out)レジスタである単語レジスタ32のレジスタr~rに順次レジスタ値wr~wrとして保持される。すなわち、レジスタrj には、単語w(i=1, 2, … , m)が保持される(mは1以上の整数)。
【0031】
具体的には、公知技術のオープンソースの形態素解析エンジンであるMeCabを用いた。図5Aは、MeCabを用いた日本語テキストの形態素解析結果を示している。
【0032】
単語分割器31に‘あす東京に行きます’という日本語テキストが入力されると、例えば、図5Aに示すように、形態素解析により5つの単語に分割される。なお、図中の「名詞」等は日本語の文法における品詞を示している。また、EOS(End Of Sentence)は、分割されたテキストの最後であることを示す記号である。
【0033】
すなわち、本実施例の場合では、m=5であり、単語分割器31により分割された単語の系列として、‘あす’、‘東京’ 、‘に’、‘行き’、‘ます’が得られる。
【0034】
なお、英語の単語分割器31としては、公知の技術である形態素解析技術であるNLTK(Natural Language Toolkit)などを用いることができる。図5Bは、NLTKを用いた英語テキストの形態素解析結果を示している。
【0035】
この場合、単語分割器31に‘I’m going to Tokyo tomorrow’という英語テキストが入力されると、例えば、図5Bに示すように、’I’、‘m’、‘going’、’to’、’Tokyo’、’tomorrow’の6つの単語に分割される。なお、図中のPRPなどは、英文法における品詞を示している。また、EOSは分割されたテキストの最後であることを示す記号である。
【0036】
次に、図6のフローチャートを参照しつつ、閾値判定管理器34が実行するチャンク境界の決定処理手順について説明する。
【0037】
図4に示すように、閾値レジスタ35には単語レジスタ32のレジスタr~rの各々に対応して閾値θi(i=1, 2, … , m)が予め保持されている。
【0038】
単語レジスタ32にレジスタ値wr~wrが保持されると、深層学習器33による深層学習によって単語w(i=1, 2, … , m)の終わりが分割位置である確率が計算される。この確率をP(wr)とする。
【0039】
なお、各単語の末尾でテキストが分割される確率P(wr)(i=1, 2, … , m)は、単語系列が分割される確率の総和が1であるように付与される。
【0040】
まず、初期値i=1とし(ステップS21)、以降のステップS22~S25が実行される。
【0041】
ステップS22において、比較器36によりP(wr)>θであるか否かが判定される。P(wr)>θであると判定された場合には、単語wの終わりが分割位置、すなわち、発話テキストをチャンクに分割する境界(チャンク境界)であると決定される(ステップS25)。P(wr)>θではないと判定された場合には、次のステップS23に進む。
【0042】
ステップS23において、現在の単語がテキストの最後の単語か否か(i≧m)が判定される。現在の単語がテキストの最後の単語であると判定された場合には、ステップS23に進み、当該単語の終わりが分割位置であると決定される。
【0043】
ステップS23において、現在の単語がテキストの最後の単語ではないと判定された場合には、ステップS24に進み、iが1だけインクリメントされ、次の単語について上記したステップが繰り返される。
【0044】
最後の単語までチャンク境界の決定処理が終了した場合には本処理を終了する(END)。
【0045】
分割テキスト出力器37は、閾値判定管理器34により決定されたチャンク境界に基づいて、単語w~wの系列に分割マーク(セパレータ)を付与して出力する。
【0046】
例えば、単語wと単語wの間に'<SEP>'で表される分割マークを付与する場合、w,w,w,w,'<SEP>',w,・・・,wが分割マーク付きのテキストSTT(図4、<STT>と示す。)としてテキスト分割器14の入力端13Oから出力される。
【0047】
すなわち、テキスト分割器14は、入力されたテキストST(「あす東京に行きます」)を分割エンジンで分割し、分割テキストSTTとして、‘<STT>あす<SEP>東京に行きます<SEP>’を生成し、出力する(図2、ステップS3)。
【0048】
また、分割テキストSTTは、分割テキスト訂正管理器(以下、単に訂正管理器という)13を介して翻訳機15へ送られる。翻訳機15では、'<SEP>'マークが翻訳処理の区切りとして利用される。
【0049】
具体的には、テキスト分割器14は、データ信号DS1中の発話テキストデータ[‘あす東京に行きます’]を2つのチャンク‘あす’、及び‘東京に行きます’に分割し、以下のデータ信号DS2を生成し、分割テキスト訂正管理器13に送る。
【0050】
なお、本明細書において用語「チャンク」は、翻訳可能なひとまとまりの語であればよい。従って、上記した場合に限らず、例えば、テキスト‘あす東京に行きます’を、‘あす’、‘東京に’、‘行きます’ の3つのチャンクに分割してもよく、あるいは、‘あす’、‘東京’、‘に’、‘行きます’ の4つのチャンクに分割してもよい。
【0051】
データ信号DS2:{‘id’:10, ‘jap’:[‘あす’,‘東京に行きます’]}
また、訂正管理器13は、第1の端末制御器12からの要求信号に応じて、データ信号DS2を第1の端末制御器12に送信する機能を有する。
【0052】
分割テキスト訂正管理器13は、テキスト分割器14の出力であるデータ信号DS2を翻訳機15に送り、データ信号DS2に含まれる2つのチャンク‘あす’及び‘東京に行きます’ をそれぞれ翻訳する。
【0053】
翻訳機15は、2つのチャンクをそれぞれ英語に翻訳する。より詳細には、翻訳機15は、translate (input, ‘dir’)の関数にしたがって、inputに対して、翻訳結果を出力する。ここで、’dir‘は、翻訳の方向を定義する。ここでは、’dir’=’je’として、日本語から英語に翻訳することを指定する。つまり、日英翻訳は、translate(input, ‘je’)を関数とし、一方、英日翻訳は、translate(input, ‘ej’) を関数とする。
【0054】
翻訳機15は、データ信号DS2の‘jap’要素を以下の手順で翻訳し、データ信号DS2Aを生成する。
output=translate(‘jap’: [‘あす’, ‘東京に行きます’], ‘je’)
=translate(‘jap’:[‘あす’], ‘je’) + translate(‘jap’: [‘東京に行きます’], ‘je’)
=’eng’: [‘ASU’] + ‘eng: [‘I go to Tokyo’]
=’eng’: [‘ASU’, ‘I go to Tokyo’]
データ信号DS2A:’eng’: [‘ASU’, ‘I go to Tokyo’]
【0055】
訂正管理器13は、データ信号DS2Aをデータ信号DS2に組み込んで、以下のデータ信号DS3を生成し(ステップS4)、第2の端末制御器22に送る(図1)。
【0056】
データ信号DS3:{‘id’:10, ’eng’: [‘ASU’, ‘I go to Tokyo’]}
すなわち、データ信号DS3には、データ信号DS2に含まれる2つのチャンクについてそれぞれ翻訳されたチャンク(翻訳チャンクという。)‘ASU’及び‘I go to Tokyo’が含まれている。
【0057】
第2の端末制御器22は、データ信号DS3を第2の端末21に送り、第2の端末21には、図3Bに示すように、データ信号DS3に含まれる2つの翻訳チャンク‘ASU’及び‘I go to Tokyo’が分離して個別に枠表示される。
【0058】
より具体的には、翻訳チャンクはそれぞれ枠線で囲まれたテキストウィジェット21Wと呼ばれる画像表示の部品として表示される。テキストウィジェット21Wは、翻訳結果のテキストを表示し、第2の端末21は、利用者(英語話者2)から誤訳又は意味不明なチャンクの指定(誤訳指定)を受け付ける(ステップS5)。
【0059】
英語話者2は、翻訳チャンクのいずれかに誤訳又は意味不明なチャンクがあったときにはそのテキストウィジェット(枠)21Wにタッチすることによって、誤訳又は意味不明なチャンク(以下、誤訳チャンクという。)を指定する。指定されたテキストウィジェット21Wは基準表示から指定表示に変更される。
【0060】
なお、本明細書において、用語「誤訳チャンク」は、翻訳機の文脈判断の誤りによる誤訳又は意味不明となった翻訳チャンクを含む。
【0061】
ステップS5において、英語話者2が翻訳チャンク中に誤訳チャンクが無いと判断した場合には、例えば、英語話者2が単にSENDボタン等にタッチすることにより、誤訳チャンクの指定(識別子)はデータ信号中に含まれない。
【0062】
この場合、誤り訂正制御部25は誤訳チャンクの指定が無いと判別し、制御はRETURNに移行し、次の発話テキストの処理(ステップS1)に移行する(ステップS6、No)。
【0063】
なお、この場合、ステップS1において、第2の端末21から先の発話テキスト(日本語テキスト)に応答する発話テキスト(英語テキスト)を受信するように制御がなされるが、引き続き第1の端末11から次の新たな発話テキスト(日本語テキスト)を受信するように制御がなされてもよい。
【0064】
一方、英語話者2が翻訳チャンク中に誤訳チャンクが有ると判断した場合、英語話者2の以下の操作によって誤訳チャンクの指定(識別子)がデータ信号中に含まれる(ステップS6、Yes)。
【0065】
具体的には、図3Cは、英語話者2による誤訳チャンクの指定を受け付けたときの第2の端末21の表示を示している。すなわち、翻訳チャンク‘ASU’が誤訳であるとして誤訳指定を受け付けたときの表示を示している。
【0066】
すなわち、’ASU’ のテキストウィジェット21Wについてはハイライト表示され(指定表示)、’I go to Tokyo’ のテキストウィジェット21Wにはハイライトが付されていない(基準表示)場合を示している。なお、テキストウィジェット21Wのタッチを連打すると、ハイライト無し、ハイライト有り、ハイライト無し、と交互に変更される。
【0067】
あるいは、’ASU’ のテキストウィジェット21Wの文字又は枠線を赤色(指定表示)、’I go to Tokyo’を黒色(基準表示)で表示するなど、文字色又は枠線色等を変更すること、又は文字の点滅などにより誤訳指定が視認できるようになっていればよい。あるいは、誤訳指定されたテキストウィジェットが確認できるよう音声などによって報知されるように構成されていてもよい。
【0068】
ステップS5において、英語話者2が図3CのSENDボタンを押すと、テキストウィジェット21Wの状態を示す下記のデータ信号DS4が生成され、第2の端末制御器22を介して訂正管理器13に送られる(図1)(ステップS7)。
【0069】
データ信号DS4:{‘id’:10, ‘eng’:[‘ASU’,’I go to Tokyo’], ‘error’:[0]}
【0070】
ここで、指定表示された(タッチされた)チャンク’ASU’にはチャンクID=0が割り当てられ、データ信号DS4には、誤訳である翻訳チャンク(誤訳チャンク)を指定する識別子’error’:[0]が追記されている。
【0071】
すなわち、第2の端末21に入力された誤訳チャンクを指定する信号(識別信号)に応じて識別子(誤訳識別子ともいう。)が生成され、誤り訂正制御部25は、当該識別子に基づいて、誤訳チャンクを他の翻訳チャンク(すなわち、正しく翻訳されたチャンク)とは異なる態様で第1の端末11に表示される。
【0072】
なお、チャンクIDである[j]は、例えば、発話テキスト(原言語、日本語テキスト)のチャンク順にj=0,1,2・・・が割り当てられる。また、識別子‘error’:[0]におけるチャンクIDである[k]は、原言語(日本語)のチャンクID[j]に対応する翻訳チャンクのIDが割り当てられる。
【0073】
また、発話テキストの各原語チャンクをchk[j](j=1, 2, …)をchk1, chk2,… として表したとき、翻訳関数は、translate(chk1, chk2, …) = translate(chk1) + translate(chk2) + ・・・で表される。
【0074】
すなわち、原語チャンクchk[j]は、チャンク順に逐次翻訳される。したがって、受話者を待たせることなく翻訳チャンクを出力することができる。なお、この際、1のチャンク毎に、又は連続する2以上のチャンクがチャンク順に逐次翻訳されてもよい。すなわち、少なくとも1のチャンク毎に逐次的に翻訳されてもよい。
【0075】
訂正管理器13は、データ信号DS4を受信して、‘eng’: [‘ASU’,’I go to Tokyo’]の要素(翻訳チャンク)を取り出し、下記のデータ信号DS4Aを生成する。データ信号DS4Aは、第2の端末21の表示画面(タッチ画面)に表示されていた英文の内容である。
【0076】
データ信号DS4A:‘eng’: [‘ASU’,’I go to Tokyo’]
【0077】
次に、翻訳機15により日本語に戻すため、以下の手順で翻訳を行い、下記のデータ信号DS5を生成する。翻訳機15は、発話者(日本語話者)テキストの翻訳結果(英語)を逆翻訳して逆翻訳チャンク(日本語)を生成する逆翻訳機能を有している。
【0078】
すなわち、発話者テキスト(日本語)の翻訳結果(英語)を逆翻訳した逆翻訳チャンク(日本語)が発話者の第1の端末11に戻される。
translate(‘eng’: [‘ASU’,’I go to Tokyo’], ‘ej’)
=translate(‘eng’: [‘ASU’], ‘ej) + translate(‘eng’: [‘I go to Tokyo’], ‘ej’)
=’jap’:[‘ASU’] + ‘jap’:[‘東京に行きます’]
=’jap’: [‘ASU’, ‘東京に行きます’]
データ信号DS5:{‘id’:10, ‘jap’: [’'ASU’,’東京に行きます’], ‘error’: [0]}
【0079】
第1の端末制御器12は、データ信号DS5中のエラー(誤訳)を示す識別子‘error’:[0]及びそのチャンクID=[0]を参照し、逆翻訳結果‘jap’: [’ASU’,’東京に行きます’]の‘ASU’がエラーであることを検出する。
【0080】
第1の端末11は、第1の端末制御器12の検出結果に基づいて、図3Dに示すように、誤訳チャンクのウィジェット11W(‘ASU’)にハイライトを付して表示する(ステップS8)。なお、上記したように、誤訳チャンク‘ASU’ の文字色又は枠線色等を基準表示とは異なる色に変更して表示してもよい。
【0081】
また、この際、図3Dに示すように、第1の端末11には、翻訳機15により翻訳された英語チャンクが、翻訳機15によって逆翻訳されて表示される。すなわち、第1の端末11には、発話者テキスト(日本語)の翻訳(英語)が日本語に逆翻訳された結果(逆翻訳チャンク)である‘東京に行きます’が表示される。したがって、発話者は、正しく翻訳されたか否かを容易に判断することができる。
【0082】
なお、図3Eに示すように、翻訳機15により翻訳された英語チャンク(翻訳チャンク)が第1の端末11にそのまま表示されてもよい。
【0083】
したがって、日本語話者1は、発話者は誤訳又は意味不明な翻訳(「誤訳)と総称する。)があることをハイライト表示等の指定表示によって確認することができる。さらに、発話内容のうち ‘あす’に対応するチャンク‘ASU’が誤訳又は意味不明な翻訳であるチャンク(誤訳チャンク)として英語話者2が指定したことを知ることができる。
【0084】
日本語話者1は、英語話者2によって指定されたチャンクに対応する日本語チャンクを言い換え、第1の端末11に言い換えテキストを入力する(ステップS9)。言い換えテキストは上記したステップS1以降のフローを経て翻訳され、当該言い換えテキストの翻訳チャンクが第2の端末21に表示される(ステップS5)。
【0085】
なお、当該フローにおいて、分割テキストに含まれる全てのチャンクが翻訳されてもよいが、当該言い換えられたチャンクのみが翻訳され、他の翻訳チャンクについては前回の翻訳チャンクが用いられてもよい。翻訳容量の削減、翻訳速度の向上の点で利点を有する。
【0086】
すなわち、日本語話者1が、英語話者2によって指定されたチャンクに対応する日本語部分を別の表現で発話したり、より簡単な表現を使うなど、言い換えることによって正確な翻訳テキストを英語話者2に伝えることができる。
【0087】
例えば、日本語話者1は、‘あす’を‘あした’と言い換えることによって正確な翻訳テキストを英語話者2に伝えることができる。
【0088】
図3Fは、言い換えテキストが翻訳されて表示された第2の端末21を示す図である。今度は正確に翻訳されたのでSENDボタンをタッチすることで、この発話テキスト‘あす東京に行きます’の翻訳が完了する。
【0089】
以上説明したように、翻訳誤りが原言語側に確実にフィードバックされるので、誤り訂正が効率的で正確な翻訳を行うことができ、確実に会話を行うことができる。
【0090】
なお、図3Dに示す第1の端末11の表示の改変例である表示を図3Gに示す。すなわち、第1の端末11には、訂正管理器13から第1の端末制御器12を介してデータ信号DS5とともにデータ信号DS2が送られ、第1の端末11には、エラー‘ASU’ とともに日本語話者1の発話内容‘あす’が付加されて表示されるようにしてもよい。
【0091】
この場合、意味不明な翻訳チャンク(‘ASU’) とともに、これに対応する発話チャンク(‘あす’)が第1の端末11に明示されるので、日本語話者1の発話内容である‘あす’が‘ASU’に変換されて、英語話者2が意味不明であると判断したということが簡潔かつ明確に表示される。したがって、正確な翻訳により円滑な会話に役立つ。
【0092】
すなわち、チャンクを単位とした誤り訂正により、誤りの箇所を局所的に限定して、局所的に訂正することができるので、誤り訂正会話が効率的になり、同時通訳における会話の質を向上することができる。
【0093】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態による誤り訂正翻訳装置30の構成を示すブロック図である。
【0094】
本実施形態における誤り訂正翻訳装置30においては、キーボード11A及びキーボード21Aに代わって、音声認識部11B及び音声認識部21Bがそれぞれ第1の端末11及び第2の端末21に設けられている点において、第1の実施形態による誤り訂正翻訳装置10とは異なっている。
【0095】
より詳細には、誤り訂正翻訳装置30において、第1の端末11は、日本語話者1の発話を音声認識し、テキストデータとして出力する音声認識部11Bを有する。また、第2の端末21は、英語話者2の発話を音声認識し、テキストデータとして出力する音声認識部21Bを有する。
【0096】
日本語話者1が発話すると、第1の端末11の音声認識部11Bは、当該発話の音声認識を行い、音声認識結果であるテキストデータを第1の端末制御器12に送る。
【0097】
同様に、第2の端末21は、英語話者2による入力を音声によって受け付け、音声認識した結果を第2の端末制御器22に送る。
【0098】
音声認識部11B及び音声認識部21Bは、音声を符号化してデータに変換できる音声認識エンジンを有している。例えば、音声認識法として公知の技術であるWAVやMP3などの音声を符号化する方法を用いることができる。
【0099】
なお、本実施形態の誤り訂正翻訳装置30においても第1の実施形態の場合と同様に誤訳チャンクの指定が行われる。すなわち、誤訳又は意味不明な翻訳があることを指定する識別子が生成され、当該識別子に基づいて、誤訳チャンクを他の翻訳チャンクとは異なる態様で発話者側の端末に表示させる。
【0100】
本実施形態においては、音声認識部11B又は音声認識部21Bによる音声認識の誤りに起因して意味不明な又は不明瞭な翻訳チャンクが生成された場合には、当該翻訳チャンクも誤訳チャンクとして処理される。
【0101】
なお、第1の端末11及び第2の端末21のいずれか一方が音声認識によりテキストデータが入力され、他方の端末がキーボードによりテキストデータが入力されるように構成されていてもよい。また、第1の端末11及び第2の端末21がキーボード入力及び音声認識によるテキストデータ入力の機能を有していてもよい。
【0102】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態による誤り訂正翻訳装置50の構成を示すブロック図である。
【0103】
本実施形態における誤り訂正翻訳装置50においては、第1の実施形態による誤り訂正翻訳装置10の日本語(第1の言語)から英語(第2の言語)への翻訳機能に加え、英語(第2の言語)から日本語(第1の言語)への翻訳機能が設けられている。すなわち、誤り訂正翻訳装置50は、双方向に同時翻訳が可能な翻訳装置として構成されている。
【0104】
なお、当該第1の言語及び当該第2の言語は日本語及び英語に限定されず、他の言語に対しても適用することができる。
【0105】
具体的には、テキスト分割器54は、日英翻訳におけるデータ信号DS1に加えて英日翻訳におけるデータ信号ES1に含まれる発話テキストデータをチャンクに分割する。
【0106】
また、翻訳機55は、日英/英日翻訳機として構成されている。また、訂正管理器53は、日英翻訳時のデータ信号DS1~DS5及び英日翻訳時のデータ信号ES1~ES5のデータ交換を管理するように構成されている。
【0107】
さらに、訂正管理器53には、1の発話テキストの誤り訂正が完了したか否かを判別する誤り訂正完了判別部53Aが設けられている。誤り訂正完了判別部53Aは、当該1の発話テキストの誤り訂正が完了したか否かを、誤訳又は意味不明な翻訳があることを指定する識別子の有無によって判別する。
【0108】
例えば、双方向翻訳の場合、発話者(日本語話者1)から受話者(英語話者2)への発話テキストの誤り訂正においては、第2の端末21から入力された識別子(第1の識別子)に基づいて当該発話テキストの誤り訂正が完了したか否かが判別され、発話者(英語話者2)から受話者(日本語話者1)への発話テキストの誤り訂正においては、第1の端末11から入力された識別子(第2の識別子)に基づいて当該発話テキストの誤り訂正が完了したか否かが判別され
あるいは、誤り訂正完了判別部53Aは、第2の端末21又は第1の端末11に翻訳チャンクの各々が表示されてから、所定の経過時間が経過したとき、当該1の発話テキストの誤り訂正が完了したと判別してもよい。翻訳チャンク中に誤訳チャンクが含まれている場合であっても、正しい意味を理解できる場合があるからである。この場合、誤り訂正完了判別部53Aは当該経過時間を計時するタイマを有している。
【0109】
あるいは、誤訳チャンクの指定入力が行われず、単にSENDボタン(又は、RETURNキー、ENTERキー)による入力があった場合に、誤り訂正完了判別部53Aが当該発話テキストの誤り訂正が完了したことを判別してもよい。
【0110】
すなわち、図2のステップS6等に関して説明したとおり、訂正管理器53の送受信信号中に当該誤訳識別子が有る場合には、入力された当該1の発話テキストについての誤り訂正がまだ完了しておらず、当該送受信信号は誤り訂正のための転送データ信号であると判別する。この場合、訂正管理器53は次の新たな発話テキストの入力を禁止し、誤り訂正の完了を優先するように機能する。
【0111】
ここで、英語(第2の話者)から日本語(第1の話者)へ翻訳する場合、英日翻訳時のデータ信号ES1~ES5は日英翻訳時のデータ信号DS1~DS5にそれぞれ対応するデータ信号であり、データ信号DS1~DS5とは発話者の言語及び翻訳方向が異なる点を除いて等価な信号として構成されている。具体的には、上記した場合と同様に、下記のようなデータ信号ES1~ES5を例示することができる。
・データ信号ES1:{‘id’:11, ‘eng’:[‘I’m heading to Boston tomorrow’]}
・データ信号ES2:{‘id’:11,‘eng’:[‘I’m heading to’,‘Boston’,‘tomorrow’]}
・データ信号ES3:{‘id’:11,‘jap’: [‘私は行きます’,‘ボストンに’,‘明日’]}
・データ信号ES4:{‘id’:11,‘jap’: [‘私は行きます’,‘ボストンに’,‘明日’],‘error’:[1]}
・データ信号ES5:{‘id’:11,‘eng’: [‘I’m heading to’,‘BOSTON’,‘tomorrow’],‘error’: [1]}
【0112】
この場合、受話者(日本語話者1)は、‘ボストンに’ が意味不明であるとして指定し、チャンクID[1] を含む識別子‘error’:[1] (第2の識別子)が付されたデータ信号ES4が発話者(英語話者2)に送られる。
【0113】
発話者(英語話者2)の第2の端末21には、 データ信号ES5中の識別子によって、‘BOSTON’が意味不明な翻訳(誤訳)であることを示す指定表示として他の翻訳チャンクとは異なる態様(例えば、大文字)で表示され、英語話者2は、受話者(日本語話者1)にとって発話チャンクのうちの‘Boston’が意味不明であることを確認することができる。
【0114】
なお、翻訳機55は、文脈判断機能を有している。この例の場合では、翻訳機55は、それまでの日本語話者1及び英語話者2の間の会話内容の文脈から‘Boston’が「ボストン図書館」を意味することを判断して翻訳すべきところを「ボストン」と翻訳した誤訳である。
【0115】
従って、この場合では、英語話者2が‘BOSTON’ を‘the Boston Library’に言い換えることによって正確な翻訳テキストを日本語話者1に伝えることができる。
【0116】
本実施形態の場合では、第1言語の話者及び第2言語の話者間で双方向に同時翻訳が可能である。したがって、互いに、意味不明又は誤訳があることを指定表示によって確認することができ、正確な翻訳により円滑に会話を行うことができる。
【0117】
本発明によれば、発話の単位を翻訳として意味のあるチャンクIDで管理することにより、チャンクIDに対して原言語の発話情報と目的言語の翻訳情報を紐づけることにより、誤りを原言語側に確実にフィードバックすることができる。
【0118】
また、本発明のチャンクを単位とした誤り訂正により、誤りの箇所を局所的に限定して、局所的に訂正することができるので、誤り訂正会話が効率的になり、同時通訳における会話の質を向上することができる。
【0119】
なお、上記した例では、誤り訂正翻訳装置にテキストとして1つの文が入力された場合について説明したが、複数の文からなるテキストが入力され、当該入力テキストに対して翻訳が行われるように構成されていてもよい。
【0120】
この場合、例えば、第1の端末制御器12及び第2の端末制御器22が第1の端末11及び第2の端末21から送信された’SEND‘、’Enter‘等の入力確定を示す信号に基づいて当該テキストの終わりを判別することができる。
【0121】
また、データ信号DS1~DS5等のデータの送受信によりデータ交換を行う場合についてJSONフォーマットを用いた場合を例に説明したが、XML(Extensible Markup Language)等を用いることもできる。
【0122】
また、上記した誤り訂正翻訳装置はCPU(Central Processing Unit),GPU(Graphics Processing Unit)等、あるいはサーバとして構成されていてもよい。また、コンピュータ、情報端末及び携帯電話等に実装されていてもよい。
【0123】
上記した誤り訂正翻訳装置及び誤り訂正翻訳方法はハードウエアとして構成されている場合を例に説明したが、コンピュータのソフトウエア(プログラム)として構成されていてもよい。あるいは、当該プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な格納媒体として構成されていてもよい。
【0124】
例えば、第1及び第2の端末制御器、テキスト分割器、翻訳機、音声認識部及び誤り訂正制御部のいずれかはソフトウエアとして構成されていてもよい。あるいは、これらが1つのソフトウエアとして構成されていてもよい。
【0125】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0126】
10,30,50:誤り訂正翻訳装置、11:第1の端末、11A,21A:キーボード、11B,21B:音声認識部、11W,21W:テキストウィジェット、12:第1の端末制御器、13,53:分割テキスト訂正管理器、53A:誤り訂正完了判別部、14,54:テキスト分割器、15,55:翻訳機、21:第2の端末、22:第2の端末制御器、25:誤り訂正制御部、53A
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8