(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031621
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車載端末
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G10K15/04 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135283
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 光則
(72)【発明者】
【氏名】執行 里恵
(72)【発明者】
【氏名】水口 天都
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直紀
【テーマコード(参考)】
5D208
【Fターム(参考)】
5D208CA09
5D208CF02
(57)【要約】
【課題】カラオケ歌唱を行う者が車両の運転中であることを考慮して、カラオケ歌唱の評価が可能な車載端末を提供する。
【解決手段】車両の運転者が選曲した楽曲のカラオケ演奏を行う演奏処理部、撮影手段から取得した運転者を撮影して得られた運転者映像データに基づいて、当該運転者の運転に対する集中度を求め、当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する判定部、運転者が行ったカラオケ歌唱の評価を求める評価部であって、集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、評価を補正する評価部を有する車載端末。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載端末であって、
前記車両の運転者が選曲した楽曲のカラオケ演奏を行う演奏処理部と、
撮影手段から取得した前記運転者を撮影して得られた運転者映像データに基づいて、当該運転者の運転に対する集中度を求め、当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する判定部と、
前記運転者が行ったカラオケ歌唱の評価を求める評価部であって、前記集中度が前記第1の所定条件を満たすと判定された場合、前記評価を補正する評価部と、
を有する車載端末。
【請求項2】
前記判定部は、前記楽曲の歌唱区間毎に前記集中度を求め、当該歌唱区間毎に当該集中度が前記第1の所定条件を満たすかどうかを判定し、
前記評価部は、ある歌唱区間において求めた前記集中度が前記第1の所定条件を満たすと判定された場合、当該ある歌唱区間についての評価を補正することを特徴とする請求項1記載の車載端末。
【請求項3】
加速度センサから取得した加速度データ、または撮影手段から取得した前記車両の外を撮影して得られた車外映像データに基づいて、前記車両の特殊な走行状態を示す走行情報を取得する取得部を有し、
前記評価部は、前記走行情報に応じて前記補正を行うことを特徴とする請求項1記載の車載端末。
【請求項4】
前記判定部は、前記集中度が第2の所定条件を満たすかどうかを判定し、
前記演奏処理部は、前記集中度が前記第2の所定条件を満たすと判定された場合、前記楽曲のカラオケ演奏を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車載端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの携帯端末に専用のアプリケーションソフトウェアをインストールすることで、様々なサービスを利用することが可能となっている。
【0003】
たとえば、携帯端末でカラオケ装置と同様のサービスを利用できるカラオケアプリがある(非特許文献1参照)。非特許文献1のカラオケアプリを用いることで、利用者は、携帯端末から放音されるカラオケ演奏音に合わせてカラオケ歌唱を楽しむことができる。また、携帯端末は、マイク等の集音手段を介して入力された歌唱音声に基づいて、利用者のカラオケ歌唱を評価することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】カラオケ@DAM fоr スマホ、[令和4年8月21日検索]、インターネット<URL:https://www.clubdam.com/spkdam/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自家用車等の車両の運転者は、上述のカラオケアプリを用いることにより、運転中にカラオケ歌唱を行うことができる。一方、運転者は、車両の運転に集中する必要があるため、カラオケ店舗等でカラオケ歌唱を行う場合に比べて上手く歌えない可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、カラオケ歌唱を行う者が車両の運転中であることを考慮して、カラオケ歌唱の評価が可能な車載端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一の発明は、車両に搭載される車載端末であって、前記車両の運転者が選曲した楽曲のカラオケ演奏を行う演奏処理部と、撮影手段から取得した前記運転者を撮影して得られた運転者映像データに基づいて、当該運転者の運転に対する集中度を求め、当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する判定部と、前記運転者が行ったカラオケ歌唱の評価を求める評価部であって、前記集中度が前記第1の所定条件を満たすと判定された場合、前記評価を補正する評価部と、を有する車載端末である。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カラオケ歌唱を行う者が車両の運転中であることを考慮して、カラオケ歌唱の評価ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る車両及び車載端末を示す図である。
【
図3】実施形態に係る車載端末の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
図1から
図3を参照して、実施形態に係る車載端末について説明する。
【0011】
==車載端末==
車載端末は、車両に搭載される端末である。車載端末は、利用者が所有するスマートフォンやタブレット端末、或いは車両に予め搭載されている専用のコンピュータである。車載端末は、ミュージックプレーヤ機能のような、一般的なスマートフォン等に備えられる機能を有する。利用者は車両の運転者である。車両は運転者が所有する自家用車等である。
【0012】
本実施形態における車載端末には、カラオケ演奏機能を利用するための専用のアプリケーションソフトウェア(以下、「カラオケアプリ」)がインストールされている。カラオケ演奏機能は、車載端末においてカラオケ演奏を実行する機能である。カラオケアプリは、たとえば所定のWebサイトからダウンロードすることで入手できる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る車載端末Mは、運転者Dが運転する車両Cに搭載されている。車載端末Mには、カラオケアプリがインストールされている。
【0014】
図2に示すように、車載端末Mは、記憶手段10、通信手段11、表示手段12、入力手段13、放音手段14、集音手段15、撮影手段16、及び制御手段17を備える。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。
【0015】
[記憶手段、通信手段、表示手段、入力手段、放音手段、集音手段、撮影手段]
記憶手段10は、各種のデータを記憶する記憶装置である。記憶手段10は、端末識別情報を記憶している。端末識別情報は、車載端末を識別するための端末ID等、各車載端末に固有の情報である。通信手段11は、外部のサーバ装置等(図示なし)との通信を行うためのインターフェースを提供する。表示手段12は、各種情報を表示させるディスプレイである。入力手段13は、運転者が各種指示入力を行うための構成である。なお、タッチパネル形式で構成されている表示手段12が、入力手段13として機能してもよい。放音手段14は、スピーカのような、音声を放音するための構成である。集音手段15は、マイクロフォンのような、運転者が発した音声を集音するための構成である。撮影手段16は、カメラのような、被写体を撮影するための構成である。本実施形態において、撮影手段16は、運転者を撮影するためのインカメラを含む。
【0016】
[制御手段]
制御手段17は、車載端末Mにおける各種の制御を行う。制御手段17は、CPUおよびメモリ(いずれも図示無し)を備える。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。
【0017】
本実施形態において、車載端末Mでカラオケアプリを起動した場合、制御手段17は、演奏処理部100、判定部200、及び評価部300として機能する。
【0018】
(演奏処理部)
演奏処理部100は、車両の運転者が選曲した楽曲のカラオケ演奏を行う。
【0019】
カラオケアプリを起動した場合、車載端末Mは、楽曲を選曲するための選曲画面を表示手段12に表示させる。運転者Dは、入力手段13を介してカラオケ歌唱を希望する楽曲を選曲する。車載端末Mは、選曲された楽曲の楽曲識別情報を、自己の端末識別情報と対応付けてサーバ装置(図示なし)に送信する。楽曲識別情報は、楽曲を識別するための楽曲ID等、各楽曲に固有の情報である。
【0020】
サーバ装置(図示なし)は、受信した楽曲識別情報に対応する楽曲データを、車載端末Mに送信する。楽曲データは、楽曲識別情報が付与されている。楽曲データは、カラオケ演奏データ、リファレンスデータ、区間情報等を含む。カラオケ演奏データは、カラオケ演奏を行うためのデータ(すなわち、カラオケ演奏音の元となるデータ)である。カラオケ演奏データは、車載端末Mが備えるミュージックプレーヤ機能やカラオケアプリで再生可能な形式のデータである。リファレンスデータは、カラオケ演奏された楽曲の主旋律を示すデータである。区間情報は、演奏区間を示す。演奏区間は、カラオケ演奏が行われる区間である。演奏区間は、歌唱区間及び非歌唱区間を含む。歌唱区間は、ある楽曲において歌唱すべき歌詞が設定されている区間(たとえば、1番のAメロ、Bメロ、サビ)である。非歌唱区間は、たとえば前奏、間奏、後奏のような、ある楽曲において歌唱すべき歌詞が設定されていない区間である。
【0021】
演奏処理部100は、カラオケアプリが提供するカラオケ演奏機能を用いて、受信した楽曲データに含まれるカラオケ演奏データに基づくカラオケ演奏を行う。カラオケ演奏の演奏音は、放音手段14(或いは、車両が備えるスピーカ等の放音手段)から放音される。運転者Dは、カラオケ演奏に合わせて、集音手段15(或いは、車載端末に取り付けられたヘッドセット等の集音手段)を用いてカラオケ歌唱を行うことができる。車載端末Mは、運転者Dのカラオケ歌唱に伴う歌唱音声に対応する歌唱音声データを、評価部300に出力する。
【0022】
なお、記憶手段10は、予め複数の楽曲データを記憶していてもよい。この場合、演奏処理部100は、選曲された楽曲の楽曲データを記憶手段10から読み出し、当該楽曲データに含まれるカラオケ演奏データに基づいてカラオケ演奏を行うことができる。
【0023】
(判定部)
判定部200は、撮影手段から取得した運転者を撮影して得られた運転者映像データに基づいて、当該運転者の運転に対する集中度を求め、当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0024】
判定部200は、たとえば、楽曲のカラオケ演奏の開始に伴って開始信号を撮影手段16に出力する。撮影手段16は、開始信号に基づいて運転者の撮影を開始する。撮影手段16は、運転者を撮影して得られた運転者映像データを、判定部200に順次出力する。一方、判定部200は、楽曲のカラオケ演奏の終了に伴って終了信号を撮影手段16に出力する。撮影手段16は、終了信号に基づいて運転者の撮影を終了する。
【0025】
運転者の運転に対する集中度は、ドライブカルテ(オムロンソーシアルソリューションズ株式会社)や特開2022-042239号公報に記載の技術等、公知の技術を用いて求めることができる。集中度は、たとえば、0.0(集中度が低い)~10.0(集中度が高い)のような数値で求めることができる。
【0026】
集中度は、楽曲のカラオケ演奏開始から終了までの所定のタイミングで、少なくとも1回求める。たとえば、判定部200は、カラオケ演奏の開始1分後に集中度を求めることができる。また、判定部200は、カラオケ演奏の開始後、15秒毎、30秒毎のように所定期間毎に複数回、集中度を求めることができる。
【0027】
第1の所定条件は、評価部300において評価の補正を行うか否かを決定するための基準である。第1の所定条件は、たとえば「集中度が9.0以上」のように予め一の条件が設定されている。
【0028】
具体的に、ある楽曲のカラオケ演奏が開始された後、撮影手段16は、運転者を撮影して得られた運転者映像データを判定部200に出力する。判定部200は、撮影手段16から取得した運転者映像データを解析し、運転者の眼の開度を取得する。判定部200は、眼の開度に応じて集中度を求める。たとえば、眼の開度が大きい値を示す場合、運転者は運転により集中しているといえる。この場合、判定部200により求められる集中度は高い値となる。
【0029】
判定部200は、求めた集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定し、判定結果を評価部300に出力する。なお、判定部200は、判定結果と合わせて、求めた集中度を評価部300に出力してもよい。
【0030】
ここで、本実施形態に係る判定部200は、楽曲の歌唱区間毎に集中度を求め、当該歌唱区間毎に当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0031】
具体的に、判定部200は、楽曲データに含まれる区間情報に基づいて歌唱区間を特定する。判定部200は、特定した歌唱区間に対応する運転者映像データ(特定した歌唱区間のカラオケ演奏時に撮影手段16から出力された運転者映像データ)を解析し、集中度を求める。判定部200は、求めた集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを歌唱区間毎に判定する。
【0032】
(評価部)
評価部300は、運転者が行ったカラオケ歌唱の評価を求める。
【0033】
カラオケ歌唱の評価は公知の手法を用いることができる。たとえば、評価部300は、カラオケ歌唱に伴う歌唱音声に対応する歌唱音声データと、カラオケ演奏された楽曲の主旋律を示すリファレンスデータとを比較することにより、カラオケ歌唱の巧拙を、たとえば100点を満点とする0~100の数値で示すことで、カラオケ歌唱の評価を行うことができる。
【0034】
また、評価部300は、集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、評価を補正する。
【0035】
評価の補正は、運転者が運転により集中しているため、普段よりも上手くカラオケ歌唱ができないことを想定して行う処理である。すなわち、評価の補正は、求めた評価がより高くなるような処理を行う。評価の補正は、様々な方法で行うことができる。たとえば、評価部300は、集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、求めた評価に対して所定の数値(3点、5点等)を加算したり、所定の割合(1.2倍、1.5倍等)を乗算することで評価の補正を行う。また、評価部300は、集中度が第1の所定条件を満たすと判定された回数が一定以上(5回、10回等)の場合にのみ、評価の補正を行ってもよい。或いは、評価部300は、集中度と第1の所定条件との差分に応じて補正の内容を変更してもよい。集中度と第1の所定条件との差が大きい場合(たとえば、第1の所定条件「集中度が9.0以上」に対して、集中度が9.8の場合)、評価部300は、求めた評価に対して5点を加算することで評価の補正を行う。一方、集中度と第1の所定条件との差が小さい場合(たとえば、第1の所定条件「集中度が9.0以上」に対して、集中度が9.1の場合)、評価部300は、求めた評価に対して3点を加算することで評価の補正を行う。
【0036】
評価部300は、補正したカラオケ歌唱の評価を、たとえば表示手段12の表示画面に表示させることにより、運転者Dに対して提示する。
【0037】
ここで、本実施形態に係る評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、当該ある歌唱区間についての評価を補正する。
【0038】
評価部300は、判定部200から出力される歌唱区間毎の判定結果を参照する。ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、判定部300は、当該ある歌唱区間についての評価を補正する。
【0039】
たとえば、評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、当該ある歌唱区間の評価に対して5点を加算することで評価の補正を行う。ここで、ある歌唱区間についての評価が「69.5」であったとする。この場合、評価部300は、当該評価に対して5点を加算し、ある歌唱区間の評価を「74.5」に補正する。
【0040】
別の例として、評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、当該ある歌唱区間の直前の歌唱区間の評価と、当該ある歌唱区間の評価との差分を10分の1に圧縮することで評価の補正を行うことができる。ここで、ある歌唱区間についての評価が「69.5」であり、直前の歌唱区間の評価が「83.6」であったとする。この場合、評価部300は、評価の差分「14.1」を10分の1に圧縮することで、ある歌唱区間の評価を「82.2」に補正する。
【0041】
或いは、評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、当該ある歌唱区間の直前の歌唱区間の評価と、当該ある歌唱区間の直後の歌唱区間の評価とを用いた直線補間を行うことで評価の補正を行うことができる。ここで、ある歌唱区間に相当する3つの連続する歌唱区間についての評価がそれぞれ「69.5」、「67.2」、「72.3」であり、直前の歌唱区間の評価が「83.6」であり、直後の歌唱区間の評価が「79.6」であったとする。この場合、評価部300は、直線補間を行うことで、評価「69.5」を「82.6」に補正し、評価「67.2」を「81.6」に補正し、評価「72.3」を「80.6」に補正する。なお、上述の直前の歌唱区間及び直後の歌唱区間は、集中度が第1の所定条件を満たさないと判定された歌唱区間である。
【0042】
評価部300は、全ての歌唱区間について評価を求めた後、歌唱区間毎の評価の統計量(平均値等)を求める。評価部300は、求めた統計量をカラオケ歌唱の評価として、たとえば表示手段12の表示画面に表示させることにより、運転者Dに対して提示する。
【0043】
==車載端末の動作について==
次に、
図3を参照して本実施形態における車載端末Mの動作の具体例について述べる。
図3は、車載端末Mにおける動作を示すフローチャートである。この例では、
図1に示した運転者Dが、車両Cの運転中に車載端末Mを用いてカラオケ歌唱を行う。車載端末Mにはカラオケアプリがインストールされている。また、この例では、歌唱区間毎に集中度及びカラオケ歌唱の評価を求める。
【0044】
演奏処理部100は、車両Cの運転者Dが選曲した楽曲Xのカラオケ演奏を開始する(楽曲のカラオケ演奏を開始。ステップ10)。運転者Dは、カラオケ演奏に合わせてカラオケ歌唱を行う。撮影手段16は、運転者Dの撮影を行い、運転者映像データを判定部200に出力する。
【0045】
判定部200は、運転者映像データに基づいて、楽曲Xの歌唱区間毎に運転者Dの運転に対する集中度を求める(歌唱区間毎に集中度を求める。ステップ11)。判定部200は、求めた集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定し、判定結果を評価部300に出力する。
【0046】
一方、評価部300は、楽曲Xの歌唱区間毎に運転手Dのカラオケ歌唱の評価を求める(歌唱区間毎にカラオケ歌唱を評価。ステップ12)。なお、ステップ11とステップ12の処理は、逆の順番で行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0047】
ここで、判定部200により、ステップ11で求めたある歌唱区間における集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合(ステップ13でYの場合)、評価部300は当該ある歌唱区間についての評価を補正する(評価を補正。ステップ14)。
【0048】
車載端末Mは、楽曲Xの全ての歌唱区間における評価が終了するまで(ステップ15でYの場合)、ステップ11からステップ14の処理を繰り返し行う。
【0049】
カラオケ演奏が終了した後、評価部300は、歌唱区間毎に求めた評価(補正したカラオケ歌唱の評価を含む)の統計量を求める。評価部300は、求めた統計量を表示手段12に表示させることにより、運転者Dによる楽曲Xのカラオケ歌唱の評価を提示する(カラオケ歌唱の評価を提示。ステップ16)。
【0050】
具体的に、運転者Dは、車載端末Mの入力手段13を操作し、カラオケアプリを起動させる。車載端末Mは、楽曲を選曲するための選曲画面を表示手段12に表示させる。運転者Dは、入力手段13を介してカラオケ歌唱を希望する楽曲Xを選曲する。車載端末Mは、サーバ装置(図示なし)から楽曲Xの楽曲データを取得する。
【0051】
演奏処理部100は、カラオケアプリが提供するカラオケ演奏機能を用いて、受信した楽曲データに含まれるカラオケ演奏データに基づき、楽曲Xのカラオケ演奏を行う。運転者Dは、カラオケ演奏に合わせてカラオケ歌唱を行う。車載端末Mは、運転者Dのカラオケ歌唱に伴う歌唱音声に対応する歌唱音声データを、評価部300に出力する。
【0052】
ここで、楽曲XはBPM=120、4分の4拍子の楽曲であるとする。また、楽曲Xは、「前奏(8小節)」、「1番のAメロ(8小節)」、「1番のBメロ(8小節)」、「1番のサビ(8小節)」、「2番のAメロ(8小節)」、「2番のBメロ(8小節)」、「2番のサビ(8小節)」、「間奏(8小節)」、「3番のAメロ(8小節)」、「3番のBメロ(8小節)」、「3番のサビ(8小節)」、「後奏(8小節)」の12の演奏区間(計96小節)で構成され、全体の演奏時間は3分12秒であるとする。
【0053】
また、この例においては1小節(2秒)を一の歌唱区間とする。すなわち、「1番のAメロ」は歌唱区間S01~S08で構成され、「1番のBメロ」は歌唱区間S09~S16で構成され、「1番のサビ」は歌唱区間S17~S24で構成され、「2番のAメロ」は歌唱区間S25~S32で構成され、「2番のBメロ」は歌唱区間S33~S40で構成され、「2番のサビ」は歌唱区間S41~S48で構成され、「3番のAメロ」は歌唱区間S49~S56で構成され、「3番のBメロ」は歌唱区間S57~S64で構成され、「3番のサビ」は歌唱区間S65~S72で構成されている。なお、非歌唱区間は、前奏、間奏、後奏の合計24小節である。
【0054】
撮影手段16は、演奏処理部100による楽曲Xのカラオケ演奏が開始したタイミングで運転者Dの撮影を開始する。撮影手段16は、運転者Dを撮影して得られた運転者映像データを判定部200に出力する。
【0055】
判定部200は、楽曲Xの歌唱区間S01から順に集中度を求める。判定部200は、求めた集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する。判定部200は、判定結果を評価部300に出力する。この例では、歌唱区間S27~S29において集中度が第1の所定条件を満たすと判定されたとする。
【0056】
一方、評価部300は、楽曲Xの歌唱区間S01から順に、運転手Dのカラオケ歌唱の評価を求める。
【0057】
この例では、歌唱区間S27~S29において集中度が第1の所定条件を満たすと判定されている。よって、評価部300は、歌唱区間S27~S29について、歌唱区間S27の直前の歌唱区間S26の評価と、歌唱区間S27~S29それぞれの評価との差分を10分の1に圧縮することで評価の補正を行う。
【0058】
たとえば、歌唱区間S26の評価が「83.6」であり、歌唱区間S27の評価が「69.5」であり、S28の評価が「67.2」であり、S29の評価が「72.3」であったとする。この場合、評価部300は、歌唱区間S26の評価「83.6」と、歌唱区間S27の評価「69.5」との差分「14.1」を10分の1に圧縮することで、歌唱区間S27の評価を「82.2」に補正する。同様に、評価部300は、歌唱区間S26の評価「83.6」と、歌唱区間S28の評価「67.2」との差分「16.4」を10分の1に圧縮することで、歌唱区間S28の評価を「82.0」に補正する。また、評価部300は、歌唱区間S26の評価「83.6」と、歌唱区間S29の評価「72.3」との差分「11.3」を10分の1に圧縮することで、歌唱区間S29の評価を「82.5」に補正する。
【0059】
楽曲Xのカラオケ演奏が終了した後、評価部300は、歌唱区間S01~S72それぞれの評価(歌唱区間S27~S29については補正した評価)の統計量を求める。評価部300は、求めた統計量を運転手Dによる楽曲Xのカラオケ歌唱の評価として、表示手段12の表示画面に表示させることにより、運転者Dに対して提示する。
【0060】
以上から明らかなように、本実施形態に係る車載端末Mは車両Cに搭載される。車載端末Mは、車両Cの運転者Dが選曲した楽曲のカラオケ演奏を行う演奏処理部100と、撮影手段16から取得した運転者Dを撮影して得られた運転者映像データに基づいて、運転者Dの運転に対する集中度を求め、当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定する判定部200と、運転者Dが行ったカラオケ歌唱の評価を求める評価部300であって、集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、評価を補正する評価部300と、を有する。
【0061】
一般に、車両の運転により集中している場合には、カラオケ店舗等でカラオケ歌唱を行う場合に比べて上手くカラオケ歌唱ができない。一方、本実施形態に係る車載端末Mによれば、運転者の運転に対する集中度が第1の所定条件を満たす場合、すなわち運転者が運転により集中している場合には、評価を補正することができる。よって、運転者は、運転により集中しながらカラオケ歌唱を楽しみつつ、適切な評価を得ることができる。すなわち、本実施形態に係る車載端末Mによれば、カラオケ歌唱を行う者が車両の運転中であることを考慮して、カラオケ歌唱の評価ができる。
【0062】
また、本実施形態に係る車載端末Mにおいて、判定部200は、楽曲の歌唱区間毎に集中度を求め、当該歌唱区間毎に当該集中度が第1の所定条件を満たすかどうかを判定し、評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、当該ある歌唱区間についての評価を補正する。このような車載端末Mによれば、歌唱区間毎の運転者の集中度に応じて、より細かいカラオケ歌唱の評価を行うことができる。
【0063】
<変形例1>
実施形態の例において評価の補正を行う際、車両の特殊な走行状態を示す走行情報を利用することができる。
【0064】
==車載端末==
図4に示すように、車載端末Mは、記憶手段10、通信手段11、表示手段12、入力手段13、放音手段14、集音手段15、撮影手段16、制御手段17、及び加速度センサ18を備える。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。
【0065】
[加速度センサ]
加速度センサ18は、車両Cに作用する加速度を検出するセンサである。加速度センサ18は、たとえば、ある1軸方向の加速度を検出する静電容量式のセンサや、互いに直交する3つの軸方向毎の加速度を検出するアナログ式の3軸加速度センサ等、公知のセンサを利用することができる。加速度センサ18は、検出した加速度に対応する加速度データを取得部400(後述)に出力する。
【0066】
[撮影手段]
本変形例において、撮影手段16は、運転者を撮影するためのインカメラ、及び車外を撮影するためのアウトカメラを含む。たとえば、車載端末であるスマートフォンをダッシュボードに立てて固定する場合、インカメラで運転者を撮影し、アウトカメラで車両進行方向の車外を撮影することができる。
【0067】
[制御手段]
本実施形態において、車載端末Mでカラオケアプリを起動した場合、制御手段17は、演奏処理部100、判定部200、評価部300、及び取得部400として機能する(
図4参照)。
【0068】
(取得部)
取得部400は、加速度センサ18から取得した加速度データ、または撮影手段16から取得した車両の外を撮影して得られた車外映像データに基づいて、車両Cの特殊な走行状態を示す走行情報を取得する。
【0069】
取得部400は、楽曲のカラオケ演奏の開始に伴って開始信号を加速度センサ18に出力する。加速度センサ18は、開始信号に基づいて車両Cの加速度の検出を開始する。加速度センサ18は、検出した加速度データを、取得部400に順次出力する。一方、取得部400は、楽曲のカラオケ演奏の終了に伴って終了信号を加速度センサ18に出力する。速度センサ18は、終了信号に基づいて車両Cの加速度の検出を終了する。また、取得部400は、楽曲のカラオケ演奏の開始に伴って開始信号を撮影手段16(アウトカメラ)に出力する。撮影手段16は、開始信号に基づいて車両Cの車外の撮影を開始する。撮影手段16(アウトカメラ)は、車外を撮影して得られた車外映像データを、取得部400に順次出力する。一方、取得部400は、楽曲のカラオケ演奏の終了に伴って終了信号を撮影手段16(アウトカメラ)に出力する。撮影手段16(アウトカメラ)は、終了信号に基づいて車両Cの車外の撮影を終了する。
【0070】
特殊な走行状態とは、たとえば「急発進」、「急停車」、「急カーブ」、「車線変更」、「緊急車両待ち」のような、通常の走行以外の状態である。走行情報は、様々な方法により取得することができる。たとえば、取得部400は、特開2020-034751号公報に記載の技術を用いて、加速度センサ18から取得した加速度データに基づき、「急発進」などの特殊な走行状態を走行情報として取得できる。或いは、取得部400は、特開2022-021517号公報に記載の技術を用いて、撮影手段16(アウトカメラ)が車両Cの外を撮影した映像に対応する車外映像データに基づき、「車線変更」などの特殊な走行状態を走行情報として取得できる。取得部400は、取得した走行情報を評価部300に出力する。なお、取得部400は、特殊な走行状態が得られない場合には、走行情報を評価部300に出力しない。
【0071】
ここで、第1実施形態の例のように楽曲の歌唱区間毎に集中度や評価を求める場合、取得部400は、歌唱区間毎に走行情報を取得する。
【0072】
(評価部)
本実施形態に係る評価部300は、走行情報に応じて補正を行う。
【0073】
走行情報に応じた評価の補正は、様々な方法で行うことができる。たとえば、第1実施形態で述べたように、評価部300は、集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、求めた評価に対して所定の数値(3点、5点等)を加算したり、所定の割合(1.2倍、1.5倍等)を乗算することで評価の補正を行うとする。この際、取得部400から走行情報が出力された場合、評価部300は、加算する値や乗算する割合を増加させることにより、走行情報を加味した補正を行うことができる。
【0074】
また、第1実施形態で述べたように、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定された場合、評価部300は、当該ある歌唱区間についての評価を補正する際に、走行情報の有無に応じて補正の内容を変更することができる。
【0075】
具体的に、評価部300は、判定部200から出力される歌唱区間毎の判定結果、及び取得部400から出力される走行情報を参照する。ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定され、且つ取得部400から走行情報が出力された場合、判定部300は、第1の処理に基づいて、当該ある歌唱区間についての評価を補正する。一方、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定されたが、取得部400から走行情報が出力されなかった場合、判定部300は、第2の処理に基づいて、当該ある歌唱区間についての評価を補正する。
【0076】
たとえば、評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定され、且つ取得部400から走行情報が出力された場合、当該ある歌唱区間の直前の歌唱区間の評価と、当該ある歌唱区間の評価との差分を10分の1に圧縮することで評価の補正を行う。ここで、ある歌唱区間についての評価が「69.5」であり、直前の歌唱区間の評価が「83.6」であったとする。この場合、評価部300は、評価の差分「14.1」を10分の1に圧縮することで、ある歌唱区間の評価を「82.2」に補正する。「ある歌唱区間の直前の歌唱区間の評価と、当該ある歌唱区間の評価との差分を10分の1に圧縮する」処理は、第1の処理の一例である。
【0077】
一方、評価部300は、ある歌唱区間において求めた集中度が第1の所定条件を満たすと判定されたが、取得部400から走行情報が出力されなかった場合、当該ある歌唱区間の直前の歌唱区間の評価と、当該ある歌唱区間の評価との差分を10分の5に圧縮することで評価の補正を行う。ここで、ある歌唱区間についての評価が「69.5」であり、直前の歌唱区間の評価が「83.6」であったとする。この場合、評価部300は、評価の差分「14.1」を10分の5に圧縮することで、ある歌唱区間の評価を「76.6」に補正する。「ある歌唱区間の直前の歌唱区間の評価と、当該ある歌唱区間の評価との差分を10分の5に圧縮する」処理は、第2の処理の一例である。なお、走行情報が出力された場合、運転者は運転により集中していると考えられる。よって、第2の処理(走行情報が出力されなかった場合)に比べ、第1の処理(走行情報が出力された場合)は、評価がより高くなるような補正を行う。
【0078】
実施形態と同様、評価部300は、歌唱区間毎の評価の統計量を求め、求めた統計量をカラオケ歌唱の評価として、たとえば表示手段12の表示画面に表示させることにより、運転者Dに対して提示する。
【0079】
以上から明らかなように、本変形例に係る車載端末Mは、加速度センサ18から取得した加速度データ、または撮影手段16から取得した車両Cの外を撮影して得られた車外映像データに基づいて、車両Cの特殊な走行状態を示す走行情報を取得する取得部400を有する。本変形例に係る評価部300は、走行情報に応じて補正を行う。「急発進」や「車線変更」等、特殊な走行状態にある場合、運転者は特に運転に集中する。本変形例に係る車載端末Mによれば、走行情報に基づいて補正を行うことにより、運転により集中している状態をより考慮した評価が可能となる。
【0080】
<変形例2>
実施形態の例において、カラオケ歌唱に熱中するあまり、運転が疎かになることを避ける必要がある。
【0081】
(判定部)
本変形例に係る判定部200は、集中度が第2の所定条件を満たすかどうかを判定することができる。
【0082】
第2の所定条件は、演奏処理部100においてカラオケ演奏を停止するか否かを決定するための基準である。第2の所定条件は、たとえば「集中度が7.0未満」のように予め一の条件が設定されている。
【0083】
判定部200は、実施形態と同様の手法により求めた集中度が第2の所定条件を満たすかどうかを判定し、判定結果を演奏処理部100に出力する。
【0084】
ここで、楽曲の歌唱区間毎に集中度を求める場合、判定部200は、当該歌唱区間毎に当該集中度が第2の所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0085】
(演奏処理部)
本変形例に係る演奏処理部100は、集中度が第2の所定条件を満たすと判定された場合、楽曲のカラオケ演奏を停止する。
【0086】
演奏処理部100は、判定部200から出力された判定結果を確認する。第2の所定条件を満たすという判定結果であった場合、演奏処理部100は、楽曲のカラオケ演奏を停止する。この際、演奏処理部100は、表示手段12に「運転の妨げになる恐れがあるため、カラオケ演奏を停止します」といった文字を表示させたり、放音手段14から同様のメッセージを放音させることができる。
【0087】
以上から明らかなように、本変形例に係る車載端末Mにおいて、判定部200は、集中度が第2の所定条件を満たすかどうかを判定する。演奏処理部100は、集中度が第2の所定条件を満たすと判定された場合、楽曲のカラオケ演奏を停止する。このような車載端末Mによれば、運転者の運転が疎かになることを抑制できる。
【0088】
<その他>
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
100 演奏処理部
200 判定部
300 評価部
400 取得部
C 車両
M 車載端末