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特開2024-31634フィルター装置、フィルターシステム及び濾過方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031634
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】フィルター装置、フィルターシステム及び濾過方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240229BHJP
   B01D 29/50 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 35/027 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B01D29/26 B
B01D35/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135303
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】522341861
【氏名又は名称】昌弘貿易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 真奈也
【テーマコード(参考)】
3C011
4D116
【Fターム(参考)】
3C011BB31
4D116AA01
4D116AA12
4D116AA30
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC23
4D116BC27
4D116BC76
4D116BC77
4D116DD05
4D116DD06
4D116EE01
4D116FF15B
4D116KK04
4D116QA02C
4D116QA02D
4D116QA13C
4D116QC04A
4D116UU09
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】加工液中の切りくずや砥粒を効率よく除去できるだけでなく、種々の工作機械に適用できるフィルター装置を提供することを課題とする。
【解決手段】加工液槽11に設置されるフィルター装置5の底壁部材53に、この底壁部材53の下面と上記加工液槽11の底面11aとの間に所定の隙間を開けて保持できる脚部12を設けて構成され、外周壁部材51及び又は内周壁部材54から流出した濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材53の径方向へ流動させることができるように構成されている。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設けられた底面を有する加工液槽に設置されて、工作機械の加工液を濾過できるフィルター装置であって、
上記加工液を通過させる開口部を有する筒状の外周壁部材と、
上記外周壁部材の内側に設けられるとともに上記加工液を通過させる開口部を有する内周壁部材と、
上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の上方開口を封止する上壁部材と、
上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の下方開口を封止する底壁部材と、
上記環状空間の外周壁部材に沿って配置された外側フィルターと、
上記環状空間の内周壁部材に沿って配置された内側フィルターと、
上記上壁部材に設けられて、上記外側フィルターと上記内側フィルターとの間に形成される濾過空間に、濾過前加工液を導入する導入口とを備えるとともに、
上記底壁部材の底面に、この底壁部材の下面と上記加工液槽の底面との間に所定の隙間を開けて保持できる脚部を設け、
上記外周壁部材及び又は上記内周壁部材から排出された濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向へ流動させることができるように構成した、フィルター装置。
【請求項2】
上記脚部は、上記隙間が2~5mmとなるように形成されている、請求項1に記載のフィルター装置。
【請求項3】
上記脚部は、上記底壁部材の下面を下方に膨出させて形成されている、請求項1又は請求項2に記載のフィルター装置。
【請求項4】
上記外周壁部材と上記内周壁部材とが同心円筒状に形成されている、請求項1に記載のフィルター装置。
【請求項5】
工作機械の加工液を濾過できるフィルター装置であって、
上記加工液を通過させる開口部を有する筒状の外周壁部材と、
上記外周壁部材の内側に設けられるとともに上記加工液を通過させる開口部を有する内周壁部材と、
上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の上方開口を封止する上壁部材と、
上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の下方開口を封止する底壁部材と、
上記環状空間の外周壁部材に沿って配置された外側フィルターと、
上記環状空間の内周壁部材に沿って配置された内側フィルターと、
上記上壁部材に設けられて、上記外側フィルターと上記内側フィルターとの間に形成される濾過空間に、濾過前加工液を導入する導入口と、
上記各部材から構成されたフィルター構造物を収容できるとともに、底面を有する濾過容器を備え、
上記底壁部材又は上記濾過容器に、上記底壁部材の下面と上記濾過容器の底面との間に所定の隙間を開けて保持できる脚部を設け、
工作機械に設けられた加工液槽から送られた加工液を、上記導入口から上記濾過空間に導入して濾過するとともに、
上記外周壁部材及び/又は上記内周壁部材から排出された濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向へ流動させることができるように構成した、フィルター装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたフィルター装置を、底面を有する加工液槽に設置して、加工液を濾過するフィルターシステムであって、
上記加工液槽は、加工工程から排出される使用済加工液が流入させられて貯留されるとともに、平坦な底面を備えて構成されており、
加工装置から加工液を上記加工液槽に流動させる管路と、
上記加工液槽の底部から上記加工液を吸引するポンプ装置と、
上記ポンプ装置から上記フィルター装置に加工液を流動させる管路と、
上記加工液槽の上部から加工液を吸引して、加工装置へ流動させる管路及びポンプ装置とを備え、
上記フィルター装置の下面と上記加工液槽の底面との間に所定の隙間を設け、
上記フィルター装置の内側壁部材から排出された濾過加工液を、上記隙間を介して半径方向外方へ流動させることにより、フィルター装置を設置した加工液槽の底部近傍に、上記フィルター装置から離間する方向の流れを発生させ、加工液に含まれる固形物が上記フィルター装置の近傍に堆積しないように構成した、フィルターシステム。
【請求項7】
請求項5に記載されたフィルター装置を用いて構成されるフィルターシステムであって、
上記加工液槽に設けられたポンプ装置と、
上記ポンプ装置から加工液を上記導入口に送る配管と、
上記濾過容器から上記加工液槽に濾過済み加工液を戻す配管とを備える、フィルターシステム。
【請求項8】
上記濾過済み加工液を戻す配管が上記濾過容器の外周部に設けられており、
上記内周壁部材から流出した濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向外方へ流動させることにより、加工液を戻す配管から排出できるように構成した、請求項7に記載したフィルターシステム。
【請求項9】
上記加工液を戻す配管が上記濾過容器の底部中央に設けられており、
上記外周壁部材から排出された濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向内方へ流動させることにより、上記濾過済み加工液を戻す配管から排出できるように構成した、請求項7に記載したフィルターシステム。
【請求項10】
請求項1に記載されたフィルター装置を用いて、加工液槽に貯留された工作機械の加工液を濾過する濾過方法であって、
上記フィルター装置が、使用済み加工液が流入する加工液槽内に設置されており、
内側壁部材から排出された加工液を、上記隙間を介して半径方向外方へ流動させることにより、フィルター装置の周囲に、上記フィルター装置から離間する方向の流れを発生させ、
加工液に含まれる固形物が上記フィルター装置の近傍に堆積しないようにして濾過を行う、濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願発明は、工作機械等の加工液を濾過するフィルター装置、フィルターシステム及び濾過方法に関する。詳しくは、被加工物から分離された切りくず等の粒子や、砥石の分離粒子が含まれる加工液を濾過して、上記粒子を除去するフィルター装置等に関する。
【0002】
例えば、切削加工や研削加工を行う場合、工具を冷却したり、切りくずを洗い流したりするために種々の加工液が用いられる。通常、上記加工液は、工作機械内の加工液槽に貯留されており、ポンプで循環させながら加工部位に供給される。
【0003】
切削加工では、比較的大きな切りくずが排出され、工具近傍において速やかに除去される。一方、研削加工や放電加工では、被加工物や砥石から分離された切りくずや砥粒が小さいため、加工液中に浮遊して加工液槽まで流動させられる。上記加工液槽まで流動させられた切りくずや砥粒の大部分は加工液槽内で沈殿するが、一部が加工液に浮遊してポンプによって循環流動する恐れがある。上記切りくずや砥粒が循環すると、加工精度や表面精度が低下する原因になる。このため、精度の高い加工を行う放電加工装置等では、加工液を濾過するフィルター装置が設けられている。
【0004】
近年、マシニングセンタ等の複合工作機械においては、種々の工具を用いて連続して加工が行われることが多い。また、切削加工や研削加工等の異なる種類の加工が行われることもある。このため、大きさの異なる種々の形態の切りくずや砥粒が排出される。また、被加工材の種類も多岐にわたる。これら切りくずを除去するため、種々のシステムが考案されている。たとえば、一般的な濾過フィルター装置のみならず、大きな粒子を沈殿させて除去する沈殿槽、マグネットを用いて鉄等の磁性体の切りくずを除去する装置、さらに、遠心力を利用して比重の大きな切りくずを除去する装置等が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-215300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
供給される加工液に切りくずや砥粒が含まれると、寸法精度や表面精度等の加工精度が低下する。このため、加工液中の切りくずをできるだけ除去するのが望ましい。ところが、コストやスペースの問題で、十分な除去装置を設けるのが困難な場合が多い。また、上記のような大きさの異なる複数種類の切りくずが排出される工作機械では、複数の除去装置を設ける必要があるが、装置が大がかりになるばかりでなく工作機械のコストが大きく増加するといった問題が生じる。
【0007】
一方、一つのフィルター装置で濾過精度を高めると、フィルターの目詰まりが生じやすくなり、フィルターの交換頻度やメンテナンスの頻度が高まる。このため、目詰まりしにくい容量の大きなフィルター装置を採用する必要がある。
【0008】
本願発明は、上記問題を解決し、加工液中の切りくずや砥粒を効率よく除去できるだけでなく、種々の工作機械に適用できるフィルター装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、工作機械に設けられた底面を有する加工液槽に設置されて、工作機械の加工液を濾過できるフィルター装置であって、上記加工液を通過させる開口部を有する筒状の外周壁部材と、上記外周壁部材の内側に設けられるとともに上記加工液を通過させる開口部を有する内周壁部材と、上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の上方開口を封止する上壁部材と、上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の下方開口を封止する底壁部材と、上記環状空間の外周壁部材に沿って配置された外側フィルターと、上記環状空間の内周壁部材に沿って配置された内側フィルターと、上記上壁部材に設けられて、上記外側フィルターと上記内側フィルターとの間に形成される濾過空間に、濾過前加工液を導入する導入口とを備えるとともに、上記底壁部材の底面に、この底壁部材の下面と上記加工液槽の底面との間に所定の隙間を開けて保持できる脚部を設け、上記外周壁部材及び又は上記内周壁部材から排出された濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向へ流動させることができるように構成したものである。
【0010】
本願発明に係るフィルター装置は、二重の筒状体の中間部に形成される環状空間に、処理前加工液を導入し、外側フィルターと内側フィルターによって、上記処理前加工液を濾過できるように構成される。すなわち、本願発明に係るフィルター装置は、筒状の外周壁部材と、筒状の内周壁部材と、上壁部材と、下壁部材とによって環状の濾過空間を構成し、上記外周壁部材に沿って設けられる外側フィルターと上記内周壁部材に沿って設けられる内側フィルターによって、上記環状の濾過空間に導入された処理前の加工液を、外周壁部材から半径方向外方に流動させて濾過するとともに、上記内周壁部材から半径方向内方に流動させて濾過する。上記外側フィルターと内側フィルターを設けることにより、濾過面積が大きくなり、濾過容量を増加させることができる。
【0011】
上記構成のフィルター装置においては、加工液が、外側壁部材の半径方向外方と、内側壁部材の半径方向内方に同時に排出されるため、排出空間の背圧が異なると内側フィルターを通過する加工液の流速と、外側フィルターを通過する加工液の流速が異なることになる。これらフィルターを通過する流速が異なると、フィルターによって補足される粒子の堆積量に差異が生じて、一方のフィルターの目詰まりが進行して、濾過流量や濾過効率が低下する恐れがある。
【0012】
特に本願発明に係るフィルター装置では、内側フィルターの濾過面積が外側フィルターより小さいため、内側フィルターの濾過流量は外側フィルターより少ないことは明らかである。また、フィルター装置の外径より相当大きな加工液槽に設置した場合、内側フィルターから濾過加工液が排出される空間は、外側フィルターから濾過加工液が排出される空間より小さくなる。しかも、内側フィルターから濾過加工液が排出される空間は、下方がフィルター装置を設置した加工液槽(容器)の底面に対向しているため、底面が平坦な場合、内側フィルターから排出された濾過加工液は、上方向にしか流動することができなくなる。このため、内側フィルターにおける濾過流量が低下したり、濾過効率が低下する。また、内外フィルターの目詰まりの程度に差異が生じる。
【0013】
本願発明では、上記不都合を解消するため、上記底壁部材に、この底壁部材の下面と上記加工液槽の底面との間に所定の隙間を開けて保持できる脚部を設けている。これにより、濾過済加工液を、フィルター装置の下方において上記底壁部材の径方向へ流動させることができる。したがって、内方の排出空間における加工液の流動性が高まり、上記背圧の相違を緩和して、濾過流量の不均衡を緩和できる。したがって、フィルターの目詰まりのかたよりが緩和され、フィルターの効率を高めることができる。なお、フィルター装置の外周面に近接した壁を有する加工液槽に設置したり、加工液槽の隅部に設置した場合、上記と逆に、外側フィルターを通過する流量が低下することも考えられる。このような場合にも、フィルター装置の下方において加工液が径方向に流動できるように構成することにより、フィルター装置を効率良く使用できる。
【0014】
上記外周壁部材と、上記内周壁部材と、上記上壁部材と、上記底壁部材の形態は特に限定されない。これら部材によって、フィルターを収容するハウジングが形成され、内側フィルターと外側フィルターが保持される。上記ハウジングは、フィルター内側に作用する圧力を支持できるように形成されていればよい。上記外周壁部材と上記内周壁部材とは筒状であればよく、円筒状、四角筒状等の形態を採用できる。また、上記外周壁部材と上記内周壁部材の開口部の形態も限定されることはなく、パンチングメタルやエキスパンドメタル、あるいは樹脂材料から形成されたものを採用できる。
【0015】
上記外側フィルターと内側フィルターの材質や形態も特に限定されない。たとえば、シート状のフィルターを蛇腹状に折り曲げて構成できる。また、繊維から形成された多孔質状の材料を筒状に成形したものを採用することもできる。上記フィルターの空孔率や孔の大きさは、除去される粒子の大きさや形態に応じて選定される。
【0016】
上記脚部の高さや大きさは特に限定されることない。上記加工液槽の底面と、フィルター装置の底壁部との間で、加工液が流動できるように構成される。加工液槽の形態や寸法等に応じて、加工液が適正に流動できるように構成するのが望ましい。たとえば、加工液槽の深さや液面の高さに応じて、加工液槽の底面に安定して設置できるように高さを設定するのが好ましい。また、本願発明に係るフィルター装置は、上方に開口した加工液槽に浸漬して用いることができる。このため、加工液槽に配管等を設ける必要はなく、従来の加工液槽に容易に適用することができる。また、フィルター装置の全体が加工液槽に貯留された加工液に浸かる必要はなく、一部を加工液槽に貯留された加工液の液面から露出するように設置することもできる。この場合にも、上記底壁部材と加工液槽底面との間に上記隙間を設けてあるため、加工液を円滑に流動させることができる。
【0017】
研削作業を行う工作機械では、加工液槽に切りくずや砥粒を含む加工液を直接流入させ、加工液槽の底部に上記切りくずや砥粒を沈殿させて除去する手法が採用されることが多い。本願発明に係るフィルター装置を上記のような加工液槽に設置して、加工液を浄化することができる。このような加工液槽にフィルター装置を設置した場合、切りくずや砥粒が、上記フィルターの周囲に堆積して、フィルター周囲の加工液の流動を阻害する恐れがある。
【0018】
本願発明では、濾過液が、加工液槽の底面に沿って、フィルター装置の下方を流動できるように構成しているため、フィルター近傍における加工液の流動が促進され、切りくずや砥粒がフィルター装置の周囲に堆積するのを防止できる。
【0019】
特に、上記加工液槽の底面とフィルター装置の底壁部との間で、内側壁部材から排出された濾過済加工液を、加工液槽の底面に沿って底壁部材の半径方向外方へ流動させ、フィルター装置の下縁部の周囲から加工液槽へ流出させると、フィルター装置の周囲に切りくず等が堆積するのを効果的に防止できる。切りくず等の堆積を効果的に防止するには、フィルター装置の下縁部から加工液槽へ流出する加工液の流動速度を確保する必要がある。上記流動速度を確保するため、上記隙間が2~5mmとなるように設定するのが好ましい。
【0020】
上記の範囲の隙間に設定すると、フィルターの背圧に大きな影響を与えることなく、流量及び流速を確保できる。上記隙間が2mm未満であると流動抵抗が大きくなり、所要の流量を確保するのが困難になるとともに、内側フィルターの背圧が高まる恐れがある。一方、5mmを超えると、上記隙間を流動する加工液の流量は大きくなるが、切りくず等の堆積を防止できる流速を確保するのが困難になる。
【0021】
加工液の流動を阻害することがなければ、上記脚部の形態や数は特に限定されることはない。たとえば、円柱状の脚部を設けることができる。フィルター装置を加工液槽の平坦な底面に安定的に設置するには、3か所以上に脚部を設けるのが好ましい。上記脚部を設ける手法も特に限定されることはなく、上記底壁部に溶接によって設けることができる。また、上記底壁部材を下方に膨出させて一体形成することもできる。
【0022】
上記外周壁部材と上記内周壁部材の形態も特に限定されることはない。たとえば、上記外周壁部材と上記内周壁部材とを同心円筒状に形成できる。また、加工液槽の形態に応じて、上下の外径を異ならせた異径円筒状に形成することもできる。
【0023】
本願発明に係るフィルター装置と種々の形態の加工液槽とを用いて、フィルターシステムを構成できる。すなわち、上記加工液槽は、加工工程から排出される使用済加工液が流入させられて貯留されるとともに、平坦な底面を備えて構成されており、加工装置から加工液を上記加工液槽に流動させる管路と、上記加工液槽の底部から上記加工液を吸引するポンプ装置と、上記ポンプ装置から上記フィルター装置に加工液を流動させる管路と、上記加工液槽の上部から加工液を吸引して、加工装置へ流動させる管路及びポンプ装置とを備え、上記フィルター装置の下面と上記加工液槽の底面との間に所定の隙間を設け、上記フィルター装置の内側壁部材から排出された濾過加工液を、上記隙間を介して半径方向外方へ流動させることにより、フィルター装置を設置した加工液槽の底部近傍に、上記フィルター装置から離間する方向の流れを発生させ、加工液に含まれる固形物が上記フィルター装置の近傍に堆積しないように構成することができる。
【0024】
工作機械によっては、スペースや容量の問題で、加工液槽内に上述したフィルター装置を設置できない場合がある。このような場合、上述した構成のフィルター装置を、工作機械に設けられた加工液槽に設置せず、専用の濾過容器に設置し、上記加工液槽から加工液を供給して濾過を行うこともできる。
【0025】
すなわち、上記加工液を通過させる開口部を有する筒状の外周壁部材と、上記外周壁部材の内側に設けられるとともに上記加工液を通過させる開口部を有する内周壁部材と、上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の上方開口を封止する上壁部材と、上記外周壁部材と上記内周壁部材との間に形成される環状空間の下方開口を封止する底壁部材と、上記環状空間の外周壁部材に沿って配置された外側フィルターと、上記環状空間の内周壁部材に沿って配置された内側フィルターと、上記上壁部材に設けられて、上記外側フィルターと上記内側フィルターとの間に形成される濾過空間に、濾過前加工液を導入する導入口と、上記各部材から構成されたフィルター構造物を収容できるとともに、底面を有する濾過容器を備え、上記底壁部材又は上記濾過容器に、上記底壁部材の下面と上記濾過容器の底面との間に所定の隙間を開けて保持できる脚部を設け、工作機械に設けられた加工液槽から送られた加工液を、上記導入口から上記濾過空間に導入して濾過するとともに、上記外周壁部材及び又は上記内周壁部材から排出された濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向へ流動させることができるように構成することができる。上記脚部は、上記フィルター装置の底壁部材又は濾過容器の底部のいずれかの部位に設けることができる。また、フィルター装置の底壁部材又は濾過容器の底部の双方に、互いに嵌合して位置決めできる脚部を設けることができる。
【0026】
上記濾過容器を採用する場合、工作機械の上記加工液槽に設けられたポンプ装置と、上記ポンプ装置から加工液を上記導入口に送る配管と、上記濾過容器から上記加工液槽に濾過済み加工液を戻す配管とを備えるフィルターシステムが採用される。上記濾過容器は、上記各部材から構成されたフィルター構造物の全体を収容できるように構成することもできるし、一部を収容するようにも構成できる。例えば、上記フィルター構造物の高さの半分を収容できる高さに設定することもできる。
【0027】
上記システムを採用する場合、上記濾過済加工液を戻す配管を上記濾過容器の外周部に設け、上記内周壁部材から流出した濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向外方へ流動させることにより、加工液を戻す配管から排出できるように構成できる。このシステムを採用した場合、フィルター装置は、加工液槽に隣接して設置することができる。
【0028】
また、上記加工液を戻す配管を上記濾過容器の底部中央に設け、上記外周壁部材から排出された濾過済加工液を、上記隙間を介して上記底壁部材の径方向内方へ流動させることにより、上記濾過済み加工液を戻す配管から排出できるように構成できる。このシステムを採用した場合、フィルター装置を、上記濾過容器の真上に設置できる。このため、設置スペースを削減できる。
【0029】
本願発明に係る濾過方法は、上記フィルター装置を用いて、加工液槽に貯留された工作機械の加工液を濾過する濾過方法である。この濾過方法は、上記フィルター装置の下面と上記加工液槽の底面との間に所定の隙間を設け、上記フィルター装置の内側壁部材から排出された濾過加工液を、上記隙間を介して半径方向外方へ流動させることにより、フィルター装置を設置した加工液槽の底部近傍に、上記フィルター装置から離間する方向の流れを発生させ、加工液に含まれる固形物が上記フィルター装置の近傍に堆積しないようにして濾過を行うものである。
【発明の効果】
【0030】
加工液中の切りくずや砥粒を効率よく除去できるだけでなく、種々の工作機械に適用できるフィルター装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本願発明に係るフィルター装置を、工作機械の加工液槽に設置した状態を示す図である。
図2】フィルター装置の平面図である。
図3】フィルター装置の正面図である。
図4】フィルター装置の底面図である。
図5】フィルター装置の右側面図である。
図6図5におけるVI-VI線に沿う断面図である。
図7図2におけるVII-VII線に沿う断面図である。
図8図1の要部の拡大断面図であり、フィルターの作用を説明する図である。
図9】本願発明に係るフィルター装置の他の形態を示す図である。
図10図9の要部の拡大断面図である。
図11】他の実施形態を示す図であり、図9に相当する要部拡大断面である。
図12】他の実施形態を示す図であり、図9に相当する要部拡大断面である。
図13】他の実施形態を示す図であり、図9に相当する要部拡大断面である。
図14】本願発明に係るフィルター装置を、他の濾過装置と組み合わせた例を示す図である。
図15】本願発明に係るフィルター装置を、他の濾過装置と組み合わせた例を示す図である。
図16】本願発明に係るフィルター装置を、他の濾過装置と組み合わせた例を示す図である。
図17】本願発明に係るフィルター装置を、他の濾過装置と組み合わせた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0033】
図1に示すように、工作機械1には、加工液Lを貯留する加工液槽11と、加工液Lを流動させるポンプ装置2と、上記ポンプ装置2から加工液Lを工作機械1の加工領域1aに送る供給側配管3と、上記加工領域1aから加工を終えた加工液Lを上記加工液槽11に戻す戻し側配管4とが設けられており、上記ポンプ装置2によって、加工液Lが、上記加工領域1aと上記加工液槽11との間で循環流動するように構成されている。上記加工液槽11には、所定量の加工液が貯留されている。
【0034】
本実施形態では、上記加工液槽11内に、水中ポンプ10とフィルター装置5とを設置し、上記加工液槽11内で加工液Lを循環して濾過するように構成される。すなわち、水中ポンプ10によって、上記加工液槽11の底部近傍から切りくずや砥粒を含む加工液Lを吸引し、配管9を介して上記フィルター装置5に供給するとともに、上記フィルター装置5によって加工液Lを濾過して、加工液槽11内に排出する。これにより加工液槽内の加工液を浄化する。上記フィルター装置5は、加工液槽11に投入するのみでよい。このため、加工液槽に配管を設ける必要もなく、既設の工作機械に適用することも可能となる。
もできる。
【0035】
上記配管9には、圧力計6及びバルブ7が設けられている。上記バルブ7のレバー8を調節することにより、上記フィルター装置5に所定の流量で加工液が流動するように設定される。また、上記圧力計6によってフィルター内の圧力を監視し、寿命を推測できるように構成されている。
【0036】
図2から図7に示すように、上記フィルター装置5は、上記加工液Lを通過させる開口部を有する筒状の外周壁部材51と、上記外周壁部材51の内側に設けられるとともに上記加工液Lを通過させる開口部を有する内周壁部材54と、上記外周壁部材51と上記内周壁部材54との間に形成される環状空間の上方開口を封止する上壁部材52と、上記外周壁部材51と上記内周壁部材54との間に形成される環状空間の下方開口を封止する底壁部材53と、上記外周壁部材51の半径方向内側面に沿って配置された外側フィルター61と、上記内周壁部材54の半径方向外側面に沿って配置された内側フィルター62とを備えて構成される。本実施形態に係る上記外周壁部材51及び内周壁部材54はパンチングメタルから形成されている。上記外周壁部材51の外周部には鋼板製の外周補強板57aが設けられているとともに、上記内周壁部材54の内周部には、L字鋼製の内周補強板57bが設けられている。
【0037】
上記上壁部材52及び下壁部材53は、鋼板から形成されており、上記外周壁部51と上記内周壁部54の上下の縁部に接合されている。なお、本実施形態では、上記接合は溶接によって行われているが、螺子手段等他の手法によって接合することもできる。上記上壁部材52には、上記水中ポンプ10から送られた加工液Lを、上記外側フィルター61と上記内側フィルター62との間に形成される濾過空間60に導入する導入口56が設けられており、この導入口56の近傍に、上記圧力計6とバルブ7が設けられる。
【0038】
上記外側フィルター61と内側フィルター62は、所定の濾過性能を有する不織布を蛇腹状に折り畳んで構成される。上記不織布の種類や性能は、濾過される切りくずや砥粒の大きさや特性に応じて選定される。本実施形態に係る上記フィルター装置5は、上記切りくずや砥粒の捕集容量に達した場合、装置全体を交換するように構成されている。なお、フィルター装置5内に設けられるフィルター61,62のみ交換できるように構成することもできる。
【0039】
上記底壁部材53には、この底壁部材53の下面と上記加工液槽11の底面との間に所定の隙間を開けて保持できる脚部12が設けられている。上記脚部12は、プレス加工によって上記底壁部材53の一部を円形状に膨出させることにより形成されており、外周近傍の4か所に設けられている。
【0040】
図8は、図1の要部拡大断面図であり、上記フィルター装置5を用いたフィルターシステムを示す図であり、フィルター装置の機能及び作用を示す図である。図に示すように、水中ポンプ10の下部から吸引された加工液Lは、配管9を介してフィルター装置5の上壁部材52に設けた導入口56から、内側フィルター62と外側フィルター61の間に形成された環状の濾過空間60に導入される。そして、上記外側フィルター61によって濾過された加工液Lが、外周壁部材51を介してフィルター装置5の半径方向外方に排出されるとともに、上記内側フィルター62によって濾過された加工液Lが、内周壁部材54を介してフィルター装置5の半径方向内方に排出される。
【0041】
加工液Lには被加工物から分離された切りくずや砥粒が混入されている。大きな切りくずや砥粒Wは、加工液槽11の底面11aに沈殿させられる一方、小さな切りくずや砥粒は、上記加工液Lに浮遊している。ポンプ装置10は、加工液槽11の底面11aの近傍から加工液Lを吸引する。加工領域1aに加工液を送るポンプ装置2は、加工液槽11に貯留された加工液の上方で加工液を吸入するように構成されているため、大きな切りくずや砥粒が加工領域1aに送られることはないが、加工液に浮遊する小さな切りくずや砥粒は、上記加工領域1aに送られて、加工精度等に悪影響を及ぼす恐れがある。本実施形態に係る水中ポンプ10は、加工液槽の底面11aの近傍の加工液を吸入し、フィルター装置5に送るように構成されている。
【0042】
上記水中ポンプ10やフィルター装置5に近接して上記切りくずや砥粒Wが堆積すると、水中ポンプ10の性能やフィルター装置5の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。このため、水中ポンプ10として、攪拌機能を有する水中ポンプを採用するのが好ましい。
【0043】
一方、本実施形態に係るフィルター5は、二重円筒状の本体内にフィルターを設け、濾過液を外周壁部材51の外方と、内周壁部材54の内方へ排出するように構成されている。また、上記底壁部材53には上記脚部12が設けられており、上記底壁部材53の下面と、上記加工液槽11の底面11aの間に所定の隙間が形成されるように構成されている。このため、上記フィルター装置5の内方排出空間の下部から加工液槽の底面に沿って半径方向外方に向けて加工液を流動させることができる。このため、上記フィルター装置5の下部の周囲に、上記切りくずや砥粒wが堆積することはなく、内方排出空間66から濾過された加工液を加工液槽11に円滑に排出することができる。これにより、内方排出空間66の背圧が上昇するのを緩和し、内外フィルター62に濾過物が偏って捕集されることを防止できる。したがって、フィルターの濾過効率を高めることができる。
【0044】
上記隙間の大きさ(高さ)は、上記脚部12の高さに対応しており、本実施形態では3mmに設定されている。上記脚部12の高さは、平坦な底面11aにフィルター装置5を設置する場合、2~5mmに設定するのが好ましい。上記隙間が2mm未満であると流動抵抗が大きくなり、所要の流量を確保するのが困難になるとともに、内側フィルターの背圧が高まる恐れがある。一方、5mmを超えると、上記隙間を流動する加工液の流量は大きくなるが、切りくず等の堆積を防止できる流速を確保するのが困難になる。なお、上記脚部12の形態や高さは、加工液槽の形態や、切りくずや砥粒の流動特性に応じて設定することができる。また、上記脚部12を形成する手法は特に限定されることはなく、他の部材を溶接し、あるいは螺子等によって接合できる、また、脚部の形態や数も限定されることはなく、四角柱状等の他の形態を有する脚部を5か所以上に設けることもできる。
【0045】
図9から図13に、工作機械に付属する加工液槽11と別途に、本願発明に係るフィルター装置105を収容する専用の濾過容器111を追加的に設けて構成したフィルターシステムを示す。
【0046】
小型の工作機械において、備え付けの加工液槽の大きさが小さかったり、複雑な形態で構成されていたりする場合、本願発明に係るフィルター装置を設置できない場合がある。このような場合、本願発明に係るフィルター装置を収容できる濾過容器111を設けて、濾過システムを構成することができる。
【0047】
本実施形態では、上記濾過容器111は、図9に示すように、工作機械付属の加工液槽11より上方に設けられ、上記加工液槽11に設けた水中ポンプ10から、上述した実施形態と同様に配管109を介して、加工液Lがフィルター装置105の導入口に送られる。濾過された加工液は、重力によって配管110を介して上記加工液槽11に戻される。なお、フィルター装置105は上述した実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0048】
上記濾過容器111は、上述したフィルター装置105を収容できればよく、上記フィルター装置105より一回り大きい内側寸法を備えていれば足りる。また、図9及び図10に示すように、フィルター装置105の全体が濾過容器111に収容される必要はない。さらに、フィルター装置105の全体が濾過容器内の加工液に浸かっている必要もない。上記フィルター装置105の底壁部材には脚部112が設けられているため、上記濾過容器111内における加工液の流動性が高い。このため、上記濾過容器111の周壁を上記フィルター装置105の外周壁部に可能な限り近接させて設けることが可能となる。これにより、上記濾過容器111の小型化を図ることが可能となる。さらに、上記濾過容器111の周壁を上記フィルター装置105の外周壁部に近接させることにより、上記外周側にある加工液の背圧を高め、内方の排出空間66にある加工液の背圧とバランスさせることにより、内外フィルター61、62で濾過される加工液の量を調節し、内外のフィルターに均等な負荷をかけて濾過を行うように設定することも可能となる。これにより、偏った目詰まりを緩和してフィルター装置105の効率を高めることができる。
【0049】
図11に、図9に示すフィルターシステムの他の実施形態を示す。この実施形態では、工作機械付属の加工液槽11に濾過加工液を戻す配管を、濾過容器111の底面中央に設けている。本実施形態では、上記フィルター装置105の底壁部材と濾過容器111の底面との間に加工液が流動する隙間を設けているため、濾過容器111の周壁近傍から内方排出空間66側へ、加工液を流動させることができる。このため、濾過容器111の底部中央に上記配管を設けることが可能となる。これにより、上記工作機械付属の加工液槽11の真上に上記濾過容器111を設けることが可能となり、設置スペースを削減することができる。
【0050】
図12に示す実施形態は、濾過容器111に、上記フィルター装置105を濾過容器111の底面から持ち上げて支持する脚部112を設けたものである。濾過容器111は本願発明に係るフィルター装置専用のものであるため、上記脚部112を容易に形成できる。また、上記脚部112を、フィルター装置105を位置決め設置する治具として形成することができる。これにより、フィルター装置105を濾過容器の中央部に精度高く設置することが可能になり、濾過容器111の内周面とフィルター装置105の外面との隙間を精度高く設定することが可能となり、濾過容器111内の加工液の流動を精度高く管理できる。
【0051】
図13に示す実施形態は、上記内方排出空間の上方を封止して、濾過圧力が上記内方排出空間に直接作用するように構成したものである。上記封止を行う手法は特に限定されることはない。たとえば、ゴム製の蓋体210を用いて封止を行うことができる。
【0052】
本実施形態に係るフィルター装置105の内方排出空間66は上方に開口しているため、内方排出空間66の加工液の背圧は加工液の液面までの高さによって決まると考えられる。一方、フィルター装置105の内部の濾過空間には、水中ポンプ10の押し込み圧が作用する。図13のように、内方排出空間66の上方開口を封止すると、上記水中ポンプ10の押し込み圧を上記内方排出空間66にまで作用させることが可能となる。これにより、フィルター装置105の内外の圧力差をコントロールすることが可能となり、内方排出空間66から上記底壁部材53と濾過容器111の底面との間で流動する加工液の流量等を調節することができる。なお、本実施形態では、濾過容器111に設置したフィルター装置105の内方排出空間66の上方開口を封止したが、図1に示す加工液槽11に浸漬したフィルター装置5の内方排出空間66の上方開口を封止することにより、上記フィルター装置5の底壁部材53と加工液槽11の底面11aとの隙間を流動する加工液の流動量や流速を増加させることも可能となる。
【0053】
図14に示す実施形態は、加工液槽11に仕切り11bを設け、切りくず等Wを沈殿させる沈殿槽113を設けたものである。上記沈殿槽113において、切りくず等の一部を沈殿させることができるため、フィルター装置5に係る負荷を緩和でき、寿命を延ばすことができる。また、図15に示す実施形態は、加工液槽11において、水中ポンプ10とフィルター装置5との間に仕切り11cを設けたものである。上述したように、工作機械の加工領域1aから排出される加工液には、切りくずや砥粒が含まれており、一部が加工液槽11底部に沈殿する。本実施形態では、加工液槽11を、加工領域から排出された加工液を貯留する濾過前加工液槽115と、上記フィルター装置5を設置する濾過済加工液槽114とに仕切る仕切り11cを設けている。この構成によって、沈殿する大きな切りくずや砥粒Wがフィルター装置5に流動することがなくなる。また、濾過済加工液槽114には、濾過精度の高い加工液のみが貯留されるため、加工領域に切りくず等を含まない加工液を供給することが可能となる。
【0054】
図16に示す実施形態は、濾過容器111を設けたフィルターシステムにおいて、工作機械付属の加工液槽11に仕切り11dを設けたものである。この実施形態においても、フィルター装置105に、大きな切りくずや砥粒が流入しないため、図15に示す実施形態と同様に、フィルター装置105の寿命を延ばすことができる。また、図16に示した実施形態では、上記仕切り11cによって、加工液槽11を濾過前の加工液槽117と、濾過済加工液槽116に分割しているため、精度の高い加工を行う場合に好適である。
【0055】
一方、図17に示す実施形態では、加工液槽11の一部を区画するとともに、加工液の上方部分が行き来できる高さの仕切り11eを設け、大きな切りくずや砥粒が、沈殿槽119に沈殿させられ、加工液Lに浮遊する切りくずや砥粒は、上記仕切り11dを乗り越えてフィルター装置105によって濾過される領域118に流動できるように構成されている。この構成によって、図16に示す実施形態に係る濾過精度まで要求されない程度の加工液を供給すればよい工作機械等において効率のよい濾過システムを構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
工作機械における加工液を、効率よく濾過することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 工作機械
5 フィルター装置
11 加工液槽
11a 底面
12 脚部
51 外周壁部材
52 上壁部材
53 底壁部材
54 内周壁部材
56 導入口
60 濾過空間
61 外側フィルター
62 内側フィルター
L 加工液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17