(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031638
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】航路標識用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240229BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20240229BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240229BHJP
F21W 111/047 20060101ALN20240229BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240229BHJP
F21Y 107/30 20160101ALN20240229BHJP
【FI】
F21S2/00 663
F21V7/04 500
F21V5/04 650
F21W111:047
F21Y115:10
F21Y107:30
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135309
(22)【出願日】2022-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社ゼニライトブイは、2022年3月31日、自社カタログに本願発明を掲載した。
(71)【出願人】
【識別番号】000132688
【氏名又は名称】株式会社ゼニライトブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】小幡 修嗣
(72)【発明者】
【氏名】塩尻 尚明
(57)【要約】
【課題】 視認者が灯具に近づいた状態で灯具を見失うことがなく、海面の揺れが生じていたとしても灯具の視認性と誘目性を向上させる灯具を提供する。
【解決手段】 円筒状の基体に単一の円周状に配列したLED光源と、反射板と、フードからなるものであって、反射板は、前記LED光源の上方を基端として先端が前記フードに至るまで高角度に傾斜するとともに、フードは水平照射部と上方照射部が形成され、前記反射板の垂直方向長さが前記水平照射部の垂直方向長さよりも長くしたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の基体に配列したLED光源と、反射板と、フードからなるものであって、
前記LED光源は、基体の下方において単列の円周上に沿って配されており、
前記反射板は、前記LED光源の上方を基端として先端が前記フードに至るまで60度以上の高角度に傾斜するように配したことを特徴とする航路標識用灯具。
【請求項2】
高角度に傾斜した反射板は、水平方向から68度から82度の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の航路標識用灯具。
【請求項3】
フードは、LED光源の水平方向延長線上に有する湾曲レンズと、前記湾曲レンズの上側及び下側の屈曲部からなる水平照射部が形成され、
前記反射板の垂直方向長さは、前記水平照射部の垂直方向長さよりも、長いことを特徴とする請求項2記載の航路標識用灯具。
【請求項4】
フードは、反射板の水平方向延長線上であって、前記フードの水平照射部より上方に微細に表面を屈曲した上方照射部を有することを特徴とする請求項3に記載の航路標識用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航路標識用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航路標識用灯具において、ガス灯、電球、発光ダイオード(LED)が光源として採用されている。とりわけ、小型で消費電力が少ないLED光源を用いた航路標識用灯具が提案されている(例えば特許文献1-4参照)。
【0003】
これらの航路標識用灯具は、ガス灯や電球に比べて小型化ができ、消費電力が少ないLED光源を用いたものが採用されており、光線の照射方向(光軸)を集束させるフレネルレンズを備えたカバーを備えることで、視認者の眼高と照射方向とを同程度の高さに一致させることで遠方からの視認性を向上させている。
【0004】
特に、特許文献4は、反射板を用いた先行技術文献であるが、縦断面図によると発光ダイオードの照射方向に対して上下に約15度傾斜させたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7-77081号公報
【特許文献2】特開平6-44808号公報(特許第2668181号)
【特許文献3】特開2001-135102号公報
【特許文献4】特開2007-313946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したLED光源を用いた航路標記用灯具は、光線の照射方向(光軸)を集束させるフレネルレンズに加えて、LED光源自体の光線の直進性が高いため、航路標識の一種である海上などの水面に設置する灯浮標に用いた場合、船舶が航路標識のすぐ近くまで接近したときに視認者の眼高との照射方向とのずれが大きくなる。さらに灯具は海面の揺れにより傾くことがあり、さらに照射方向とのずれが大きくなることがある。そのため視認者が航路標識の位置を視認すること(視認性)、及び、航路標識用灯具自体が灯光を発しているかどうか(誘目性)が低下してしまうため、航路標識の位置が分かりづらくなり、接近時に航路標識を見失うことまでも懸念されていた。
【0007】
したがって、本発明は、視認性及び誘目性を向上させることが可能な航路標識用灯具であって、特に船舶が航路標識用灯具に接近して視認者の目線が航路標識用灯具よりも上方にある状態や、海面の揺れにより傾いた状態であっても判別しやすいものを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の航路標識用灯具は、円筒状の基体に配列したLED光源と、反射板と、フードからなるものであって、前記LED光源は、基体の下方において単列の円周上に沿って配されており、前記反射板は、前記LED光源の上方を基端として先端が前記フードに至るまで60度以上の高角度に傾斜するように配したことを特徴とする。
【0009】
また、上述した構成に加え、高角度に傾斜した反射板は、水平方向から68度から82度の範囲であることが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、フードは、LED光源の水平方向延長線上に有する湾曲レンズと、前記湾曲レンズの上側及び下側の屈曲部からなる水平照射部が形成され、前記反射板の垂直方向長さは、前記水平照射部の垂直方向長さよりも、長いことが好ましい。
【0011】
また、上述した構成に加え、フードは、反射板の水平方向延長線上であって、前記フードの水平照射部より上方に微細に表面を屈曲した上方照射部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、請求項1の発明により、船舶が近づくにつれて航路標識用灯具からの高さと視認者の眼高とにずれが生じても、反射板が発散角度を広げることにより、航路標識用灯具を視認することができる。
【0013】
請求項2の発明により、75度の許容差±7度の範囲の反射板を備えることで、水平方向よりも700mmや900mmといった灯具よりも視認者の眼高の差が生じたとしても、上方に向けて照射されることで、視認者が灯具に近づいた状態で灯具を見失うことがない。さらに海面の揺れが生じていたとしても所定の効果を発揮することで、灯具の視認性と誘目性を向上させることが可能になる。
【0014】
請求項3の発明により、反射板は、LED光源から水平方向に照射される部位も高さ方向に長く形成され、LED光源からの発散光を広い範囲で反射し、上方に向けて照射することができる。これにより視認者が灯具に近づいた状態で灯具を見失うことがなく、海面の揺れが生じていたとしても所定の効果を発揮することで、灯具の視認性と誘目性を向上させることが可能になる。
【0015】
請求項4の発明により、高角度で所定の高さを有して広い範囲の発散光を反射する反射板に対向する位置に微細かつ上方に屈曲する上方照射部を有することで、より上方に向けて発散光を照射することができる。これにより視認者が灯具に近づいた状態で灯具を見失うことがなく、海面の揺れが生じていたとしても所定の効果を発揮することで、灯具の視認性と誘目性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の航路標識用灯具の一例を示す縦断面図である。
【
図2】LED光源からの反射光の軌跡を示すための
図1の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る航路標識用灯具の一例について
図1に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態における航路標識は、海上に浮かせて設置するブイと、ブイの上端に航路標識用灯具1を備えつけた灯浮標である。実施の形態として示す航路標識用灯具1は、「航路標識法」の適用を受けない簡易標識(灯光の光度が15カンデラ未満または(もしくは、かつ)、鉛直投影面積が2平方メートル未満の簡易な灯台、灯標、灯浮標を指す。)である。航路標識用灯具1は生け簀や定置網、養殖いかだ、仮桟橋などの海上設置施設の周辺に目印として配置し航行する船舶に利用される。なお、LED光源2、2に電力を供給するものとして太陽光パネルや電池などを用い(図示しない)、LED光源2、2の色は有色が使用される。
【0018】
図1に示すように、航路標識用灯具1は、円筒状の基体10の下方部位に複数のLED光源2、2が単一の列として水平円周上に配置され、その水平円周上から上部に向かって傾斜して広がっていくように高角度で傾斜したステンレス製の反射板3が配置されている。LED光源2、2はそのパッケージの頂部が半球状となった円筒形の形状で、全体が軟質性の樹脂で成型され、LED光源2、2から発散角度が限定され、照射された光線はより遠い位置まで到達するものを用いている。LED光源2,2は基体10の垂直方向高さにおいて下方の3分の1の部位に配置されている。
【0019】
円筒状の基体10の下方には、架台4からさらに上方に延長したスペーサ5が取り付けられる。また、無色透明であって湾曲レンズ6aと屈曲部6b、6bを用いたフルネルレンズであるフード6を用いている。フード6は基体10に取り付けられた反射板3とLED光源2、2とスペーサ5を覆うカバーのようにようにして取り付けられる。フード6を覆う際は、架台4の上面のOリング7とボルト8によって緊結されると共に、フード6の下面と、架台4の上面の接触面同士にオイルコンパウンドを塗布し接着することによって、フード6の収容空間は密封される。このことにより、航路標識用灯具1は海上に配置されても塩害を防止することが可能である。
【0020】
フード6はLED光源2、2の水平方向延長線上に湾曲レンズ6aが配されており、レンズ体6aの上下には水平方向に屈曲させるための大型の屈曲部(上側屈曲部6b、下側屈曲部6b)が形成されている。この湾曲レンズ6aと上下の屈曲部6b、6bとの部分を水平照射部6cとする。水平照射部6cを透過する際に湾曲レンズ6aと上下の屈曲部6b、6bにより水平方向に向けた照射を行っている。さらに上側屈曲部6bよりも上方には微細な屈曲が複数形成されて上方に向けて照射する上方照射部6dが形成される態様である(
図2参照)。なお、本説明において、水平照射とは水平のみの方向を指すものではなく、遠方に向けての本来の照射するために略水平方向に向けた一定の範囲を指すものである。
【0021】
反射板3は、LED光源2,2の上方に単一に配置され、LED光源2,2の水平方向に対して高角度で傾斜するように配置されている。つまり、反射板3の基端は水平方向において上方の屈曲部6bに相当する位置に至り、上端はフード6の上方部位に至るまで延長されている。反射板3の垂直方向長さh1は、フード6の湾曲レンズ6aと上下の屈曲部6b、6bとを合わせた水平照射部6cの高さh2よりも長い。反射板3の傾斜は、60度以上90度未満の高角度がよく、75度に誤差を許容する許容差±7度を踏まえた68度から82度が好適であり、最も好ましいのは75度である。なお、本実施形態の反射板3はステンレス製の反射鏡を用いているが、アルミ製等のその他の材質であってもよい。
【0022】
本実施形態の航路標識用灯具1の照射について説明する。LED光源2,2からの照射は、主に水平方向に向けてなされ、フード6の湾曲レンズ6aと上下の屈曲部6b、6bにより水平方向に向けて照射される。
【0023】
次に、LED光源2,2からの発散光により航路標識用灯具1の近傍に至って視認者の目線よりも灯具1が低い状態や海面が揺れて航路標識用灯具が大きく傾斜した状態であっても灯具を見失わない状態について説明する。
図2に示すように、LED光源2、2からは光軸(水平方向への照射方向)付近の発散光(
図2中、実線にて表示。)と、LED光源2、2の側面から照射された上下方向の発散光(
図2中、実線にて表示)とが、フード6を透過して発散される。この際、反射板3によって反射された反射光(
図2中、破線にて表示)が、光軸付近の発散光と重なることによって、LED光源2、2はその光達距離を長くすることが可能となる。
【0024】
また、フード6には、水平照射部6cの上方に上方照射部6dを有するフレネルレンズを用いることによりLED光源2、2から上方照射部6dへと透過された発散光は、上方向に広がるようにして発散することによって光源をより大きく見せることが可能となる。
【0025】
次に、航路標識用灯具1の視認性及び誘目性の実験結果について説明する。実験は、視認者が近傍に至って視認者の目線よりも航路標識用灯具1が下方に位置するようになることを想定して航路標識用灯具1を
図1の下方向Dへと移動させた状態の視認性、誘目性を測定した(実験1)。また、海面の揺れにより航路標識用灯具1が所定の角度に傾いた状態を想定して航路標識用灯具1を
図1の矢印方向Rへと傾けた状態の視認性、誘目性を測定した(実験2)。
【0026】
本実験1,2において、反射板3のLED光源2、2側の基端の水平方向から傾斜した反射板の角度θ(
図2参照)を30度、45度、60度、75度、90度と変更させた場合の航路標識用灯具1を用いた。光度はLED光源2、2から水平距離で1m離れた状態で測定している。
【0027】
ここで、誘目性とは人目を引き付ける度合いを指し、対象の大きさ(光源)が大きくなるほど、及び対象の光度を高くするほど誘目性は向上する。また、対象の彩度を対象以外の彩度に比べてより高彩色に近づけるほど誘目性は向上する。なお、本発明においては、LED光源2、2の色は有色が使用される。
【0028】
航路標識用灯具1を下方向Dへと移動させた状態の視認性、誘目性を測定した実験1の結果を
図3で説明する。
図3によると、水平方向への照射を示す光軸からの高さが200mm、300mmでは然したる違いが見受けられなかったが、400mmより高くなると30度以上の角度の有する反射板は視認性、誘目性が発揮されることが判明した。さらに光源から700mm以上になると60度、75度の角度を有する反射板を用いた場合、その他の反射板を用いる場合に比べて高い視認性と誘目性を有することが判明し、900mm以上となると75度の反射板を有する場合に他の角度の反射板よりも倍以上の光度を有すること、反射板が90度になると30度と変わらなくなることが明らかとなった。
【0029】
次に、航路標識用灯具1を矢印方向Rへと傾けた状態の視認性、誘目性を測定した実験2の結果を
図4で説明する。
図4によると、航路標識用灯具1を30度まで傾けた状態では光軸と一致するためか結果に混乱が見られるが、40度以上の傾けた状態とすると、反射板の角度による光度の違いが鮮明に表れた。航路標識用灯具1を40度以上傾けると、45度以上の反射板を用いる場合に高い視認性と誘目性が表れた。さらに航路標識用灯具1を70度以上傾ける高角度の場合には、60度、75度の反射板を用いた場合に高い視認性と誘目性があることが明らかとなった。
【0030】
以上、前述した構成によって、視認者が遠方から航路標識用灯具1を視認すること(視認性の向上)が可能であると共に、視認者が航路標識用灯具1に近づいても航路標識用灯具1の光源を視認すること(誘目性の向上)が可能である。
【0031】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、反射板3の角度θは60度以上90度未満が好ましいが、より好適には75度であり、許容差を含めると±7度が好適である。
【符号の説明】
【0032】
1…航路標識用灯具、2…LED光源、3…反射板、4…架台、5…スペーサ、6…フード、6a…湾曲レンズ、6b…屈曲部、6c…水平照射部、6d…上方照射部、7…Oリング、8…ボルト、10…基体。