(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031646
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/538 20210101AFI20240229BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240229BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M50/538
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/474
H01M50/477
H01M50/533
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135321
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】川口 沙也加
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H021
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB02
5E078HA05
5E078HA23
5E078KA06
5H011AA01
5H011AA09
5H021AA02
5H021HH03
5H043AA01
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043EA07
5H043EA09
5H043EA15
5H043EA16
5H043EA22
5H043HA06E
5H043JA06E
5H043JA21E
5H043KA08E
5H043KA09E
5H043LA02E
5H043LA21E
5H043LA25E
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される電池100は、第1電極および第2電極を含む電極体20と、電極体20を収容する電池ケース10と、上記第1電極に接続された複数の第1電極タブ22tと、複数の第1電極タブ22tに接続された集電部材50と、複数の第1電極タブ22tを束ねる固定部材70と、電池ケース10の第1の面14と電極体20との間に配置された絶縁部材80と、を備え、絶縁部材80は貫通孔80hを有し、複数の第1電極タブ22tは、絶縁部材80の貫通孔80hを貫通している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を含む、1つまたは複数の電極体と、
前記電極体を収容する電池ケースと、
前記第1電極に接続され、前記電極体の端部に配置された複数の第1電極タブと、
複数の前記第1電極タブに接続された集電部材と、
複数の前記第1電極タブを、前記第1電極に接続される部分と前記集電部材に接続される部分との間で束ねる固定部材と、
前記電池ケースの第1の面と前記電極体との間に配置された、1つまたは複数の絶縁部材と、
を備え、
前記絶縁部材は貫通孔を有し、
複数の前記第1電極タブは、前記絶縁部材の前記貫通孔を貫通している、
電池。
【請求項2】
複数の前記第1電極タブが積層されている方向において、前記絶縁部材の前記貫通孔の幅をW1とし、複数の前記第1電極タブの束ねられた部分の総厚みをT1としたときに、前記W1と前記T1とが、次の式:(W1/T1)<10;を満たす、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電極体は、第1電極体と、第2電極体と、を含み、
前記絶縁部材は、第1絶縁部材と、第2絶縁部材と、を含み、
前記第1電極体に接続された複数の前記第1電極タブは、前記第1絶縁部材の前記貫通孔を貫通し、
前記第2電極体に接続された複数の前記第1電極タブは、前記第2絶縁部材の前記貫通孔を貫通している、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記固定部材の少なくとも一部は、前記貫通孔の内部に配置されている、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
複数の前記第1電極タブが積層されている方向において、前記絶縁部材の前記貫通孔の幅をW1とし、前記固定部材の幅をW2としたときに、前記W1と前記W2とが、次の式:(W1/W2)<5;を満たす、
請求項4に記載の電池。
【請求項6】
複数の前記第1電極タブは、前記電池ケースの前記第1の面に対して略垂直の部分が、前記固定部材で束ねられている、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項7】
複数の前記第1電極タブは、前記固定部材によって束ねられた部分より前記集電部材に近い側が折り曲げられた状態で、前記集電部材に接続されている、
請求項1または2に記載の電池。
【請求項8】
前記集電部材は、前記電池ケースの前記第1の面に沿って配置される第1領域を有し、
複数の前記第1電極タブは積層されて、前記第1領域に接続されている、
請求項1または2に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極を有する電極体と、電極体を収容する電池ケースと、電池ケース内で電極と電気的に接続された集電部材と、電池ケース内で集電部材と電気的に接続され電池ケース外に延出された端子と、を備えた電池が知られている。この種の電池においては、電極に集電用の複数の電極タブが設けられ、当該複数の電極タブを介して電極と集電部材とが電気的に接続されることがある(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7035348号公報
【特許文献2】特許第7027792号公報
【特許文献3】国際公開2018/021372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両等に搭載される電池では、ますます高容量化が進んでいる。これに伴って電極のサイズが大きくなると、抵抗を低減する観点等から、電極に付設される電極タブの数が増える。本発明者の検討によれば、その結果、複数の電極タブがバラつきやすくなり、安定して集電部材と接合することが難しくなる課題があった。また、電極体のサイズが大きくなることで、電極体の端面(すなわち、電極が積層された積層面)の面積が広くなる。その結果、例えば製造工程で部材同士を接合する際等に、当該端面から電極体内に金属粉等の異物が混入しやすくなる課題もあった。したがって、高容量化に伴って電極タブの数が増えた場合でも、電極タブと集電部材との接合性を確保すると共に、電極体内への異物の混入を抑え、信頼性の高い電池を提供することが求められている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、信頼性の高い電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、第1電極および第2電極を含む、1つまたは複数の電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、上記第1電極に接続され、上記電極体の端部に配置された複数の第1電極タブと、複数の上記第1電極タブに接続された集電部材と、複数の上記第1電極タブを、上記第1電極に接続される部分と上記集電部材に接続される部分との間で束ねる固定部材と、上記電池ケースの第1の面と上記電極体との間に配置された、1つまたは複数の絶縁部材と、を備える電池が提供される。上記絶縁部材は貫通孔を有し、複数の上記第1電極タブは、上記絶縁部材の上記貫通孔を貫通している。
【0007】
上記のように複数の第1電極タブを固定部材で束ねることで、複数の第1電極タブのバラつきを抑えることができる。これにより、複数の第1電極タブと集電部材とを安定して接合することができ、接合部の信頼性を向上できる。また、電池ケースと電極体との間に絶縁部材が配置され、第1電極タブが絶縁部材の貫通孔を貫通していることで、端面から電極体内に異物が侵入することを効果的に抑制できる。以上のように、本発明によれば信頼性の高い電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る接合工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0010】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、電池100を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは、電池100の短辺方向(厚み方向)を示し、符号Yは、短辺方向と直交する電池100の長辺方向を示し、符号Zは、電池100の上下方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図2に示すように、電池100は、電池ケース10と、複数の電極体20(
図3、
図4も参照)と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部材50と、負極集電部材60と、複数の固定部材70(
図4も参照)と、絶縁部材80(
図4も参照)と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は、非水電解液二次電池である。電池100は、リチウムイオン二次電池等の二次電池であることが好ましい。
【0013】
電池ケース10は、電極体20を収容する筐体である。
図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池100は、角形の電池ケース10を有する角形電池であることが好ましい。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10は、外装体12と封口板14とを含むことが好ましい。外装体12および封口板14は、電極体20のサイズや、収容数(1つまたは複数。ここでは複数。)等に応じた大きさを有している。
【0014】
外装体12は、上面に開口12hを有する有底かつ角型の容器である。外装体12は、
図1に示すように、底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12h(
図2参照)と対向している。長側壁12bは、短側壁12cよりも面積が大きい。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられた板状部材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、略矩形状である。封口板14は、「第1の面」の一例である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。これによって、電池ケース10は気密に封止(密閉)されている。
【0015】
図2に示すように、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔15は、電解液の注液後に封止部材16によって封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。
【0016】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(
図1、
図2の左端部)に取り付けられている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(
図1、
図2の右端部)に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、封口板14に取り付けられていることが好ましい。正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19に挿通され、一部が封口板14の表面に露出している。正極端子30および負極端子40は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。
【0017】
正極端子30は、
図2に示すように、電池ケース10の内部で、正極集電部材50および正極タブ群25を介して電極体20の正極22(
図5参照)と電気的に接続されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。正極端子30は、ガスケット92によって封口板14と絶縁されている。ガスケット92は、樹脂製であることが好ましい。
【0018】
負極端子40は、電池ケース10の内部で、負極集電部材60および負極タブ群27を介して電極体20の負極24(
図5参照)と電気的に接続されている。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子40は、ガスケット92によって封口板14と絶縁されている。
【0019】
図3、
図4に示すように、本実施形態の電池100では、電池ケース10内に複数個(具体的には2個)の電極体20が収容されている。ただし、1つの電池ケース10内に配置される電極体20の数は特に限定されず、3個以上であってもよいし、1個であってもよい。複数の電極体20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29に覆われた状態で、電池ケース10の内部に配置されている。これによって、電極体20が外装体12と直接接触することが防止されている。
【0020】
電極体ホルダ29の材質は、所定の絶縁性を有している限りにおいて特に限定されない。そのような材質の一例として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂材料が挙げられる。
図4に示すように、電極体ホルダ29の上端は、後述する固定部材70の下端部と上下方向Zの位置が略一致することが好ましい。
【0021】
図5は、電極体20の構成を示す模式図である。なお、
図5等における符号LDは、帯状に製造される電極体20の長手方向(即ち、搬送方向)を示している。符号WDは、長手方向LDと略直交する方向であり、電極体20の捲回軸方向を示している。捲回軸方向WDは、電池100の上下方向Zと略平行である。
【0022】
図5に示すように、電極体20は、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して絶縁された状態で積層され、捲回軸WLを中心として長手方向に捲回されて構成された捲回電極体である。ただし、電極体20は、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
図2に示すように、電極体20の端面(すなわち、正極22と負極24とが積層された積層面、
図5の捲回軸方向WDの両端部)は、底壁12aおよび封口板14と対向している。捲回電極体20の上部には、後述する正極タブ群25と負極タブ群27とが突出している。電池100は、捲回電極体20の上方に正極タブ群25と負極タブ群27とが位置する、所謂、上タブ構造である。正極22および負極24の一方は、第1電極の一例であり、正極22および負極24の他方は、第2電極の一例である。
【0023】
電極体20は、
図3に示すように、ここでは外形が扁平形状である。電極体20は、扁平形状であることが好ましい。扁平形状の電極体20は、外表面が湾曲した一対の湾曲部20rと、一対の湾曲部20rを連結する外表面が平坦な一対の平坦部20fと、を有している。電極体20は、捲回軸方向WDが上下方向Zと略一致するように電池ケース10の内部に収容されている。一対の湾曲部20rは、外装体12の一対の短側壁12cと対向している。一対の平坦部20fは、外装体12の長側壁12bと対向している。
【0024】
正極22は、
図5に示すように、帯状の部材である。正極22は、帯状の正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を備えている。正極活物質層22aは、電池性能の観点から、正極集電体22cの両面に形成されていることが好ましい。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0025】
正極22を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電体22cは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0026】
電極体20では、
図5に示すように、捲回軸方向WDの一方の端辺に連なる根元から外側(
図5の左側)に向かって複数の正極タブ22tが突出している。なお、「根元」とは、正極22の端辺と正極タブ22tとの境界部である。複数の正極タブ22tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。1つの電極体20に付設される正極タブ22tの数は、概ね数十枚以上、例えば40~60枚程度であり得る。複数の正極タブ22tは、それぞれ正極22に接続されている。正極タブ22tは、ここでは正極22の一部である。正極タブ22tは、正極活物質層22aが形成されていない領域である。正極タブ22tの少なくとも一部には正極集電体22cが露出している。ただし、正極タブ22tは、正極22と別の部材であってもよい。複数の正極タブ22tを設けることで、正極22内の抵抗や電位のムラを低減できる。正極タブ22tは、第1電極タブの一例である。
【0027】
正極タブ22tは、ここでは略矩形状である。正極タブ22tの突出長さ(根元から捲回軸方向WDに突出した垂直長さ)は、例えば特許文献1~3に開示される電極タブよりも長くてもよく、概ね3mm以上、典型的には4~10mm、例えば5~8mm程度であるとよい。正極タブ22tの幅(長手方向LDの長さ)は、典型的には正極タブ22tの突出長さよりも短く、概ね15mm以上、例えば20~40mmであるとよい。複数の正極タブ22tは、相互にサイズや形状が異なっていてもよい。
【0028】
複数の正極タブ22tは、電極体20の捲回軸方向WDの一方の端部で積層され、後述する固定部材70によって束ねられることにより、正極タブ群25を構成している(
図2、
図4参照)。複数の正極タブ22tは、折り曲げられて湾曲している。複数の正極タブ22tの先端部は、正極集電部材50と接合されている。複数の正極タブ22tは、折り曲げられて湾曲された状態で正極集電部材50と接合されていることが好ましい。複数の正極タブ22t(正極タブ群25)は、正極集電部材50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0029】
正極活物質層22aは、
図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0030】
正極保護層22pは、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。正極保護層22pは、
図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、捲回軸方向WDにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの捲回軸方向WDの一方の端部、具体的には、正極タブ22tのある側の端部(
図5の左端部)に設けられている。正極保護層22pを備えることで、セパレータ26が破損した際に正極22が負極活物質層24aと直接接触して電池100が内部短絡することを防止できる。
【0031】
正極保護層22pは、絶縁性の無機フィラーを含んでいる。無機フィラーの一例として、アルミナ等のセラミック粒子が挙げられる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダおよび導電材は、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0032】
負極24は、
図5に示すように、帯状の部材である。負極24は、帯状の負極集電体24cと、負極集電体24c少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を備えている。負極活物質層24aは、電池性能の観点から、負極集電体24cの両面に形成されていることが好ましい。
【0033】
負極24を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0034】
電極体20では、
図5に示すように、捲回軸方向WDの一方の端辺に連なる根元から外側(
図5の左側)に向かって複数の負極タブ24tが突出している。複数の負極タブ24tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。捲回軸方向WDにおいて、負極タブ24tは正極タブ22tと同じ側(
図5の左側)の端部に設けられている。1つの電極体20に付設される負極タブ24tの数は、正極タブ22tの数と略同等であり、概ね数十枚以上、例えば40~60枚程度であり得る。複数の負極タブ24tは、それぞれ負極24に接続されている。負極タブ24tは、ここでは負極24の一部である。負極タブ24tは、ここでは負極活物質層24aが形成されず、負極集電体24cが露出した領域である。ただし、負極タブ24tは、負極24とは別の部材であってもよい。複数の負極タブ24tを設けることで、負極24内の抵抗や電位のムラを低減できる。
【0035】
負極タブ24tは、ここでは略矩形状である。負極タブ24tの突出長さ(根元から捲回軸方向WDに突出した垂直長さ)は、例えば特許文献1~3に開示される電極タブよりも長くてもよく、概ね3mm以上、典型的には4~10mm、例えば5~8mm程度であるとよい。負極タブ24tの幅(長手方向LDの長さ)は、典型的には負極タブ24tの突出長さよりも短く、概ね15mm以上、例えば20~40mmであるとよい。複数の負極タブ24tは、相互にサイズや形状が異なっていてもよい。
【0036】
複数の負極タブ24tは、電極体20の捲回軸方向WDの一方の端部で積層され、後述する固定部材70によって束ねられることにより、負極タブ群27を構成している(
図2、
図4参照)。図示は省略するが、複数の負極タブ24tは、正極タブ22tと同様に、折り曲げられて湾曲している。複数の負極タブ24tの先端部は、負極集電部材60と接合されている。複数の負極タブ24tは、折り曲げられて湾曲された状態で負極集電部材60と接合されていることが好ましい。複数の負極タブ24t(負極タブ群27)は、負極集電部材60を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0037】
負極活物質層24aは、
図5に示すように、負極集電体24cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0038】
セパレータ26は、
図5に示すように、帯状の部材である。セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は、ここでは電極体20の外表面を構成している。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材部と、基材部の少なくとも一方の表面上に形成された耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有していてもよい。耐熱層は、無機フィラーを含む層である。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等を使用し得る。
【0039】
電解液としては、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用されるものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液が挙げられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体20と一体化されていてもよい。
【0040】
正極集電部材50は、導電部材であり、電流経路を構成している。正極集電部材50は、ここでは封口板14に付設されている。正極集電部材50は、電極体20の正極タブ群25と正極端子30とを電気的に接続している。正極集電部材50は、
図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の第1領域を有する。正極集電部材50は、ここでは第1領域からなっている。正極集電部材50は、封口板14の電極体20側の面(
図2の下面)に沿って配置される第1領域を有することが好ましい。これにより、後述する電極体20への異物の混入を効果的に抑制できる。正極集電部材50(詳しくは第1領域)の長辺方向Yの一方(
図2の右側)の端部は、正極タブ群25、すなわち、積層された複数の正極タブ22tと電気的に接続されている。正極集電部材50と正極タブ群25とは接合(例えば超音波溶接)されていることが好ましい。
【0041】
正極集電部材50(詳しくは第1領域)の長辺方向Yの他方(
図2の左側)の端部は、正極端子30の下端部30cと電気的に接続されている。正極集電部材50は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えばアルミニウムやアルミニウム合金で構成されている。正極集電部材50は、正極タブ22tおよび/または正極端子30と同種の金属で構成されていてもよい。
【0042】
負極集電部材60は、導電部材であり、電流経路を構成している。負極集電部材60は、ここでは封口板14に付設されている。負極集電部材60は、電極体20の負極タブ群27と負極端子40とを電気的に接続している。負極集電部材60は、
図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の第1領域を有する。負極集電部材60は、ここでは第1領域からなっている。負極集電部材60は、封口板14の電極体20側の面(
図2の下面)に沿って配置される第1領域を有することが好ましい。負極集電部材60(詳しくは第1領域)の長辺方向Yの一方(
図2の左側)の端部は、負極タブ群27すなわち、積層された複数の負極タブ24tと電気的に接続されている。負極集電部材60と負極タブ群27とは接合(例えば超音波溶接)されていることが好ましい。
【0043】
負極集電部材60(詳しくは第1領域)の長辺方向Yの他方(
図2の右側)の端部は、負極端子40の下端部40cと電気的に接続されている。負極集電部材60は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば銅や銅合金で構成されている。負極集電部材60は、負極タブ24tおよび/または負極端子40と同種の金属で構成されていてもよい。
【0044】
正極集電部材50および負極集電部材60は、それぞれ内部絶縁部材94によって封口板14の内側面と絶縁されている。内部絶縁部材94は、樹脂製であることが好ましい。正極集電部材50と封口板14との間には、樹脂製の内部絶縁部材94が配置されることが好ましい。負極集電部材60と封口板14との間には、樹脂製の内部絶縁部材94が配置されることが好ましい。
【0045】
複数の固定部材70は、複数の正極タブ22tおよび複数の負極タブ24tをそれぞれ束ねるためのものである。
図2に示すように、複数の固定部材70は、電極体20の正極タブ群25(複数の正極タブ22t)および負極タブ群27(複数の負極タブ24t)に、それぞれ取り付けられている。
図4に示すように、複数の固定部材70は、電極体20毎に取り付けられている。固定部材70の数は、典型的には、電極体20の個数×2(正極タブ22t用・負極タブ24t用)である。固定部材70の数は、ここでは4つである。なお、以下では、複数の正極タブ22tを例として詳しく説明するが、複数の負極タブ24tにも同様に固定部材70を取り付けることができる。ここに開示される技術は、複数の正極タブ22tおよび複数の負極タブ24tにそれぞれ適用することが好ましい。
【0046】
図4に示すように、複数の正極タブ22tは、正極22に接続される部分(根元部分)と正極集電部材50に接続される部分との間を固定部材70で束ねることにより、一体的に纏められた状態が維持されている。本発明者の検討によれば、正極タブ22tの数が数枚程度であれば、正極集電部材50にそのまま接合(典型的には溶接)することも容易である。しかしながら、高容量化された電池100において、正極タブ22tの数が数十枚以上になると、正極タブ22tがバラつきやすく、正極集電部材50との接合性を安定的に確保することが難しくなる。そこで、ここに開示される技術では、固定部材70を用いて複数の正極タブ22tを束ね、正極タブ群25を構成する。これにより、複数の正極タブ22tと正極集電部材50を安定して接合でき、接合性(典型的には溶接性)を向上できる。その結果、電池100の導通信頼性を向上できる。
【0047】
固定部材70で束ねられる正極タブ22tの数は、複数(2枚以上)であればよい。ここに開示される技術の効果をより良く発揮する観点からは、1つの電極体20に付設される正極タブ22tの総数の半数以上が好ましい。
図4に示すように、ここでは1つの電極体20に付設される全ての正極タブ22tを1つの固定部材70で束ねている。固定部材70は、導電部材であり得、正極22から正極集電部材50までの電流経路を構成し得る。固定部材70は、電気伝導性の高い金属製であることが好ましい。
【0048】
固定部材70は、複数の正極タブ22tを挟み込んで保持する挟持部材であることが好ましい。固定部材70が挟持部材であると、複数の正極タブ22tを束ねた状態で折り曲げやすくなり、加工性を向上できる。また、溶接加工が不要となり、複数の正極タブ22tを固定部材70に固定する際に金属粉等の異物の発生を抑制できる。長辺方向Yにおいて、固定部材70の幅は、正極タブ22tの幅よりも大きいことが好ましい。固定部材70の長辺方向Yの幅は、複数の正極タブ22tよりも大きく、例えば15mm以上、20~40mm程度であり得る。固定部材70は、複数の正極タブ22tを積層して、長辺方向Yに電極体20の上端と平行の状態を維持できるものが好ましい。
【0049】
固定部材70の一例として、
図2に示すように、長辺方向Yおよび上下方向Zに延びるYZ平面部を有する部品、例えば、上下方向Zにトンネル状の貫通孔を有する中空筒状のオーバルスリーブが挙げられる。固定部材70としてオーバルスリーブを用いる場合は、オーバルスリーブの貫通孔に複数の正極タブ22tの先端部を挿通したうえで、圧着することにより、複数の正極タブ22tをオーバルスリーブに固定できる。固定部材70の他の一例として、長辺方向Yの片側または両側に固定部を有する板状クリップ部材、例えばクリップイットが挙げられる。
【0050】
図4に示すように、固定部材70は、短辺方向Xにおいて、電極体20の中心Mに位置していることが好ましい。これにより、充放電に伴って電極体20が膨化しても、例えば電極体20の外縁部に位置する正極タブ22tとの導通を確実に維持できる。複数の正極タブ22tは、封口板14に対して略垂直の部分が固定部材70で束ねられていることが好ましい。これにより、後述する電極体20への異物の混入を効果的に抑制できる。なお、本明細書において、「略垂直」とは、概ね92±15°(75~105°)、好ましくは92±10°(80~100°)、例えば92±5°(85~95°)をいう。
【0051】
複数の正極タブ22tは、固定部材70によって束ねられた部分より正極集電部材50に近い側(先端e側)が折り曲げられた状態で、正極集電部材50に接続されていることが好ましい。これにより、電極体20の収容空間を広げて、電池100の高エネルギー密度化を図ることができる。固定部材70の上端から突出した正極タブ22tは、固定部材70によって束ねられた状態で略L字状に曲げられている(湾曲している)ことが好ましい。すなわち、複数の正極タブ22tは、固定部材70によって束ねられた部分より正極集電部材50に近い側(先端e側)に、湾曲部25bを有することが好ましい。これにより、複数の正極タブ22tが1つに纏まりやすくなり、封口板14に付設された正極集電部材50との接合性(典型的には溶接性)をさらに向上できる。複数の正極タブ22tは、束ねられて折り曲げられた根元の部分が相互に平行であることが好ましい。
【0052】
絶縁部材80は、電極体20の端面の少なくとも一部を覆うカバー体である。
図2に示すように、絶縁部材80は、封口板14の内側面(
図2の下面)と、電極体20との間に配置されている。詳しくは、封口板14に付設された正極集電部材50と、電極体20との間に配置されている。絶縁部材80は、ここでは1つである。ただし、後述する第2実施形態のように、絶縁部材80は、1つの電池100に複数個が備えられていてもよい。
【0053】
図4に示すように、絶縁部材80は貫通孔80hを有している。絶縁部材80における貫通孔80hの数は、典型的には、電極体20の個数×2(正極タブ22t用・負極タブ24t用)である。貫通孔80hの数は、固定部材70の数と同数であり得る。貫通孔80hの数は、ここでは4つである。複数の正極タブ22tは、固定部材70で束ねられ正極タブ群25として纏められた状態で、絶縁部材80の貫通孔80hを貫通している。
【0054】
封口板14と電極体20との間に絶縁部材80が配置され、かつ絶縁部材80に設けられた貫通孔80hを複数の正極タブ22tが貫通していることで、電圧低下等の電池性能の低下につながるような導電性異物が電極体20の上端面から電極体20の内部に入り込むことを抑制できる。また、電池100の使用時に振動や衝撃等の外力が加わって電極体20が封口板14の側に移動しても、正極タブ群25にかかる負荷を軽減できる。さらに、電極体20が封口板14に付設された部材(例えば正極集電部材50)に接触して損傷することを抑制できる。
【0055】
絶縁部材80は、XY平面視において、電極体20の上端面の全体を覆うサイズであることが好ましい。XY平面視において、絶縁部材80の外縁は、電極体ホルダ29の外縁よりも大きいことが好ましい。これにより、電極体20と電極体ホルダ29とが直接接触することを防止できる。絶縁部材80は、電極体ホルダ29の内部に配置されていてもよく、電極体ホルダ29の外部に配置されていてもよい。言い換えれば、上下方向Zにおいて、電極体ホルダ29の上端は、絶縁部材80よりも下方に位置していてもよく、絶縁部材80よりも上方に位置していてもよい。絶縁部材80は、テープ等の固定手段によって、電極体20や電極体ホルダ29に固定されていてもよい。絶縁部材80は、電極体ホルダ29と一体であり、電極体ホルダ29の一部であってもよい。
【0056】
絶縁部材80は、樹脂製であることが好ましい。絶縁部材80の材質は、電極体ホルダ29の材質として例示したものと同じであってもよい。絶縁部材80の材質は、電極体ホルダ29の材質と同じであってもよいし、異なっていてもよい。絶縁部材80は、例えば短辺方向Xおよび/または長辺方向Yの端部が自重によって撓んだりカールしたりせず、XY平面を安定して平板状に維持できるような材質および厚みであることが好ましい。そのため、
図4等に示すように、絶縁部材80は、電極体ホルダ29よりも厚みが大きいことが好ましい。
【0057】
図4に示すように、電池100の厚み方向、言い換えれば、複数の正極タブ22tが積層されている方向(
図4の短辺方向X)において、絶縁部材80の貫通孔80hの幅をW1とし、複数の正極タブ22tの束ねられた部分の総厚みをT1としたときに、上記W1と上記T1とが、次の式(1):(W1/T1)<10;を満たすことが好ましい。貫通孔80hの大きさを最小限とすることで、異物が貫通孔80hを通り抜けて電極体20内へ混入することを効果的に抑制できる。上記式(1)は、典型的には、1<(W1/T1)である。上記式(1)は、(W1/T1)<5を満たすことがより好ましい。
【0058】
図4に示すように、固定部材70の少なくとも一部は、貫通孔80hの内部に配置されていることが好ましい。これにより、異物が貫通孔80hを通り抜けて電極体20内へ混入することをより効果的に抑制できる。この場合、電池100の厚み方向、言い換えれば、複数の正極タブ22tが積層されている方向(
図4の短辺方向X)において、絶縁部材80の貫通孔80hの幅をW1とし、固定部材70の幅をW2としたときに、上記W1と上記W2とが、次の式(2):(W1/W2)<5;を満たすことが好ましい。これにより、電極体20への異物の混入をさらに高いレベルで抑制できる。上記式(2)は、典型的には、1<(W1/W2)である。上記式(2)は、(W1/W2)<3;を満たすことがより好ましい。
【0059】
電池100は、例えば、次の工程:(ステップ1)電極準備工程;(ステップ2)電極体作製工程;(ステップ3)タブ固定工程;(ステップ4)電極体収容工程;(ステップ5)接合工程;(ステップ6)密閉工程;を、典型的にはこの順で含む方法によって製造できる。ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0060】
(ステップ1)電極準備工程では、複数の正極タブ22tを有する帯状の正極22と、複数の負極タブ24tを有する帯状の負極24と、を準備する。(ステップ2)電極体作製工程では、まず、帯状の正極22と帯状の負極24とを帯状のセパレータ26を介して積層し、捲回軸WLを中心として長手方向に捲回することで、筒状に成形する。このとき、複数の正極タブ22tと複数の負極タブ24tとが同じ端辺から突出し、かつ別々の位置で積層されるように調整する。次いで、筒状に捲回した電極体(筒状体)を、例えば扁平にプレス成形することによって、扁平形状の電極体20(
図5参照)を作製する。
【0061】
(ステップ3)タブ固定工程では、複数の正極タブ22tと複数の負極タブ24tとを、それぞれ固定部材70で束ね、集箔状態を固定する。なお、本工程は、電極体20の成形時に同時に行うことが好ましい。固定部材70の固定位置は、電極体20の収容空間を広げる観点等から、出来るだけ電極体20に近づけることが好ましい。複数の正極タブ22tは、固定部材70で束ねられることにより、正極タブ群25として一体化される。同様に、複数の負極タブ24tは、固定部材70で束ねられることにより、負極タブ群27として一体化される。
【0062】
(ステップ4)電極体収容工程では、電極体20を電極体ホルダ29に挿入した後、電極体ホルダ29に包まれた状態の電極体20を、正極タブ群25と負極タブ群27とが上側を向くように外装体12に収容する。次いで、複数の貫通孔80hを有する絶縁部材80を用意して、絶縁部材80の複数の貫通孔80hに正極タブ群25と負極タブ群27とをそれぞれ挿通させる。これにより、絶縁部材80が電極体20の上端面を覆うように配置される。
【0063】
(ステップ5)接合工程では、固定部材70の上端から突出している正極タブ群25の先端側と負極タブ群27の先端側とを、それぞれ固定部材70に対して略L字状に折り曲げる。また、封口板14に、正極端子30と負極端子40と正極集電部材50と負極集電部材60とを取り付ける。次いで、
図6に示すように、正極タブ群25の先端部を、封口板14に付設された正極集電部材50に接合(例えば溶接接合)する。また、負極タブ群27の先端部を、封口板14に付設された負極集電部材60に接合する。これにより、正極集電部材50と正極タブ群25との接合部(例えば溶接接合部)Jを形成し、負極集電部材60と負極タブ群27との接合部(例えば溶接接合部)Jを形成する。
【0064】
(ステップ6)密閉工程では、正極タブ群25の先端部と負極タブ群27の先端部とを、それぞれ略U字状になるように折り曲げて湾曲させた状態で、外装体12の開口12hに封口板14を嵌合し、外装体12の開口12hの周縁と封口板14とを接合(例えば溶接接合)する。これによって、電池ケース10を気密に封止する。以上のようにして、電池100を製造できる。
【0065】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る
図4対応図である。
図7に示すように、本実施形態の電池200は、複数の電極体と複数の絶縁部材とを備えている。複数の電極体は、第1電極体20aと、第2電極体20bと、を含んでいる。複数の絶縁部材は、第1絶縁部材80aと、第2絶縁部材80bと、を含んでいる。第1絶縁部材80aと、第2絶縁部材80bとは、分離された部材(別部材)である。1つの電池200に備えられている絶縁部材80の数は、典型的には電極体20の数と同数である。絶縁部材80の数は、ここでは2つである。第1電極体20aに接続された複数の正極タブ22tは、固定部材70で束ねられ、第1絶縁部材80aの貫通孔80hを貫通している。第2電極体20bに接続された複数の正極タブ22tは、固定部材70で束ねられ、第2絶縁部材80bの貫通孔80hを貫通している。これにより、組立性が向上して電池200を効率よく製造できる。また、電極体20への異物の混入を効果的に抑制できる。
【0066】
電池200は、例えば、第1実施形態のステップ4、5にかえて、(ステップ4A)接合工程と、(ステップ5A)電極体収容工程と、をこの順で含む製造方法によって製造できる。
【0067】
(ステップ4A)接合工程では、
図8に示すように、第1絶縁部材80aおよび第2絶縁部材80bの貫通孔80hに、それぞれ複数の正極タブ22tおよび負極タブ24tを挿通させる。これにより、第1絶縁部材80aが、第1電極体20aの上端面を覆うように設置され、第2絶縁部材80bが、第2電極体20bの上端面を覆うように設置される。次いで、封口板14に、正極端子30と負極端子40と正極集電部材50と負極集電部材60とを取り付ける。次いで、第1電極体20aおよび第2電極体20bの複数の正極タブ22tの先端部を、それぞれ封口板14に付設された正極集電部材50に接合(例えば溶接接合)する。また、第1電極体20aおよび第2電極体20bの複数の負極タブ24tの先端部を、それぞれ封口板14に付設された負極集電部材60に接合(例えば溶接接合)する。これにより、正極集電部材50と複数の正極タブ22tとの接合部(例えば溶接接合部)Jを形成し、負極集電部材60と複数の負極タブ24tとの接合部(例えば溶接接合部)Jを形成する。
【0068】
(ステップ5A)電極体収容工程では、固定部材70の上端から突出している正極タブ群25の先端e側と負極タブ群27の先端e側とを、それぞれ固定部材70に対して略L字状に折り曲げる。次いで、電極体20を電極体ホルダ29に挿入した後、電極体ホルダ29に包まれた状態の電極体20を外装体12に収容する。
【0069】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、高容量が必要となる用途や、使用時に振動や衝撃等の外力が加わり得る用途、例えば移動体(典型的には、乗用車、トラック等の車両)に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として、好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0071】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:第1電極および第2電極を含む、1つまたは複数の電極体と、上記電極体を収容する電池ケースと、上記第1電極に接続され、上記電極体の端部に配置された複数の第1電極タブと、複数の上記第1電極タブに接続された集電部材と、複数の上記第1電極タブを、上記第1電極に接続される部分と上記集電部材に接続される部分との間で束ねる固定部材と、上記電池ケースの第1の面と上記電極体との間に配置された、1つまたは複数の絶縁部材と、を備え、上記絶縁部材は貫通孔を有し、複数の上記第1電極タブは、上記絶縁部材の上記貫通孔を貫通している、電池。
項2:複数の上記第1電極タブが積層されている方向において、上記絶縁部材の上記貫通孔の幅をW1とし、複数の上記第1電極タブの束ねられた部分の総厚みをT1としたときに、上記W1と上記T1とが、次の式:(W1/T1)<10;を満たす、項1に記載の電池。
項3:上記電極体は、第1電極体と、第2電極体と、を含み、上記絶縁部材は、第1絶縁部材と、第2絶縁部材と、を含み、上記第1電極体に接続された複数の上記第1電極タブは、上記第1絶縁部材の上記貫通孔を貫通し、上記第2電極体に接続された複数の上記第1電極タブは、上記第2絶縁部材の上記貫通孔を貫通している、項1または2に記載の電池。
項4:上記固定部材の少なくとも一部は、上記貫通孔の内部に配置されている、項1から3のいずれか1つに記載の電池。
項5:複数の上記第1電極タブが積層されている方向において、上記絶縁部材の上記貫通孔の幅をW1とし、上記固定部材の幅をW2としたときに、上記W1と上記W2とが、次の式:(W1/W2)<5;を満たす、項4に記載の電池。
項6:複数の上記第1電極タブは、上記電池ケースの上記第1の面に対して略垂直の部分が、上記固定部材で束ねられている、項1から5のいずれか1つに記載の電池。
項7:複数の上記第1電極タブは、上記固定部材によって束ねられた部分より上記集電部材に近い側が折り曲げられた状態で、上記集電部材に接続されている、項1から6のいずれか1つに記載の電池。
項8:上記集電部材は、上記電池ケースの上記第1の面に沿って配置される第1領域を有し、複数の上記第1電極タブは積層されて、上記第1領域に接続されている、項1から7のいずれか1つに記載の電池。
【符号の説明】
【0072】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
20、20a、20b 電極体
22 正極
22t 正極タブ
24 負極
24t 負極タブ
70 固定部材
80、80a、80b 絶縁部材
100、200 電池