(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031654
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】構造体の製造方法及び構造体の製造装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20240229BHJP
G01N 21/66 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N27/30 F
G01N27/30 B
G01N21/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135338
(22)【出願日】2022-08-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、創発的研究支援事業「バイポーラ電気化学顕微鏡による生命システムの計測」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 恒喜
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 彩音
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 友理
(72)【発明者】
【氏名】井上 久美
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA03
2G043EA07
2G043LA03
(57)【要約】
【課題】簡易な装置及び工程により、微細な貫通孔に均一に充填材を充填可能な構造体の製造方法及び構造体の製造装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、構造体の製造方法であって、充填工程を備え、前記充填工程では、貫通孔を有する貫通孔膜の第2主面側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シートを配置した状態で、前記充填材を厚み方向に押圧して、前記貫通孔膜の第1主面側から充填材を前記貫通孔内に充填する、方法が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の製造方法であって、
充填工程を備え、
前記充填工程では、貫通孔を有する貫通孔膜の第2主面側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シートを配置した状態で、充填材を厚み方向に押圧して、前記貫通孔膜の第1主面側から前記充填材を前記貫通孔内に充填する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記充填工程では、さらに、前記貫通孔膜の第1主面の少なくとも一部と接するように第1多孔質シートを配置した状態で、前記貫通孔膜の第1主面側から前記充填材を前記貫通孔内に充填する、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記貫通孔膜は、直径100μm以下の貫通孔を有する、方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
除去工程を備え、
前記除去工程では、前記充填工程後に前記貫通孔膜を除去する、方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記構造体がバイポーラ電極である、方法。
【請求項6】
構造体の製造装置であって、
貫通孔膜供給手段と、充填材供給手段と、第2多孔質シート供給手段と、充填手段を備え、
前記貫通孔膜供給手段は貫通孔を有する貫通孔膜を供給し、
前記充填材供給手段は、前記貫通孔膜上に充填材を供給し、
前記第2多孔質シート供給手段は、前記貫通孔膜の第2主面側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シートを供給及び配置し、
前記充填手段は、前記充填材を厚み方向に押圧して前記貫通孔膜の第1主面側から前記充填材を前記貫通孔内に充填する、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
さらに、前記貫通孔膜の第1主面の少なくとも一部と接するように第1多孔質シートを供給及び配置する第1多孔質シート供給手段
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法及び構造体の製造装置に関する。
【0002】
様々な用途の構造体の製造において、貫通孔を有する膜である貫通孔膜に、ペースト等の充填材を充填する工程が必要とされている。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は半導体基板に関し、減圧された空間内で、半導体基板に被着されているマスクに対して所定のギャップを保ちながら相対的に移動するノズルの吐出口より金属ペーストを吐出させて、マスク上に金属ペーストを塗布する工程を含む金属ペースト充填方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2はコンデンサの製造方法に関し、緻密化したセラミック材料からなる板状部材の板厚方向にビアホールを形成し、該ビアホールにビア導体となる金属ペーストを充填することにより金属ペースト充填済み板状部材を作製し、この板状部材を前記セラミック材料の融点よりも低温で二次焼成することにより前記セラミック材料と前記ビア導体とからなる板状基体を得る工程を含むコンデンサの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-157863
【特許文献2】特開2005-243842
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、孔内の空気を抜き、孔に均一にペースト等を充填するために、充填工程が減圧下で行われており、多くの工程や設備が必要であった。また、特許文献2の方法では、充填した充填材を高密度化するために、高温での加熱焼成が必須であり、加熱のための設備や工程が必要とされ、加熱のためのエネルギー、コストがかかり、さらに、貫通孔膜や充填材として、特定の耐熱性を有する材料しか用いることができなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な装置及び工程により、微細な貫通孔に均一に充填材を充填可能な構造体の製造方法及び構造体の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、構造体の製造方法であって、充填工程を備え、前記充填工程では、貫通孔を有する貫通孔膜の第2主面側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シートを配置した状態で、前記充填材を厚み方向に押圧して、前記貫通孔膜の第1主面側から充填材を前記貫通孔内に充填する、方法が提供される。
【0009】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、貫通孔を有する貫通孔膜に充填材を充填する際、貫通孔膜の第2主面側に貫通孔を覆うように多孔質シートを配置した状態で、充填材を厚み方向に押圧して貫通孔膜の第1主面側から充填材を貫通孔内に充填することで、貫通孔に均一に充填材を充填することができることを見出した。発明者らが得た知見によれば、貫通孔膜の第2主面側に貫通孔を覆うように多孔質シートを配置した状態で第1主面側から充填材を押圧すると、多孔質シートが、貫通孔内の気体が抜ける通り道となり、かつ、貫通孔から漏れ出た余剰充填材、及び/又は充填材に含まれる分散媒を吸着することにより、充填材を均一に充填することができる。
【0010】
本発明によれば、従来の方法で必要とされた、減圧のためのチャンバーや真空ポンプ、焼成のための加熱装置等の特定の設備を要さず、貫通孔、特には微細な貫通孔を有する貫通孔膜に均一に充填材を充填することができる。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1]構造体の製造方法であって、充填工程を備え、前記充填工程では、貫通孔を有する貫通孔膜の第2主面側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シートを配置した状態で、前記充填材を厚み方向に押圧して、前記貫通孔膜の第1主面側から充填材を前記貫通孔内に充填する、方法。
[2][1]に記載の方法であって、前記充填工程では、さらに、前記貫通孔膜の第1主面の少なくとも一部と接するように第1多孔質シートを配置した状態で、前記貫通孔膜の第1主面側から充填材を前記貫通孔内に充填する、方法。
[3][1]又は[2]に記載の方法であって、前記貫通孔膜は、直径100μm以下の貫通孔を有する、方法。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の方法であって、除去工程を備え、前記除去工程では、前記充填工程後に前記貫通孔膜を除去する、方法。
[5][1]~[3]のいずれかに記載の方法であって、前記構造体がバイポーラ電極である、方法。
[6]構造体の製造装置であって、貫通孔膜供給手段と、充填材供給手段と、第2多孔質シート供給手段と、充填手段を備え、前記貫通孔膜供給手段は貫通孔を有する貫通孔膜を供給し、前記充填材供給手段は、貫通孔を有する貫通孔膜上に充填材を供給し、前記第2多孔質シート供給手段は、前記貫通孔膜の第2主面側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シートを供給、及び配置し、前記充填手段は、前記充填材を厚み方向に押圧して前記貫通孔膜の第1主面側から前記充填材を前記貫通孔内に充填する、装置。
[7][6]に記載の装置であって、さらに、前記貫通孔膜の第1主面の少なくとも一部と接するように第1多孔質シートを供給及び配置する第1多孔質シート供給手段を備える、装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは貫通孔膜20の断面形状を表す模式図であり、
図1Bは、構造体11の断面形状を表す模式図であり、
図1Cは、構造体12の断面形状を表す模式図であり、
図1Dは、構造体11の断面形状を表す模式図であり、
図1Eは、構造体11の断面形状を表す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る構造体の製造装置100aの模式図である。
【
図3】
図3Aは、押圧部材151aの断面形状を表す模式図であり、
図3Bは、押圧部材151bの断面形状を表す模式図である。
【
図4】
図4は、構造体11の製造方法における各工程での材料や仕掛り品の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る構造体の製造装置の模式図である。
【
図6】
図6A~
図6Bは、構造体を電気化学センサのバイポーラ電極として用い、発光により貫通孔への充填材の充填を確認する評価方法を示す模式図であり、
図6Aは、各貫通孔に充填された充填材(パイポーラ電極)の拡大図を、
図6Bは、構造体全体を示す。
【
図7】
図7A~
図7Bは、実施例1に係る構造体を、CCDカメラで撮影した画像であり、
図7Aは、発光前の構造体の外観を、
図7Bは、電位掃引中の発光時の外観を示す。
【
図8】
図8は、実施例6に係る構造体(微小金ロッド)の、SEM像、EDSマッピングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1.構造体の構成
1.1 構造体11
図1Aに、本発明の一実施形態に係る貫通孔膜20の断面形状を表す模式図を、
図1Bに、本発明の一実施形態に係る構造体11の断面形状を表す模式図を示す。本発明の一実施形態に係る構造体11は、
図1Bに示されるように、貫通孔23を有する貫通孔膜20及び充填材30を備え、貫通孔23に充填材30が充填されている。
【0015】
図1Aに示されるように、貫通孔膜20は、第1主面21及び第2主面22を有し、第1主面21と第2主面22とに連通した貫通孔23を有する。貫通孔23の形成方法は特に限定されず、パンチング、レーザー、ケミカルエッチング等の任意の手段で形成することができる。
【0016】
貫通孔膜20の材質は特に限定されず、構造体の用途に応じて選択することができる。貫通孔膜20は、有機材料を含むことができ、金属、ガラス、アルミナ等のセラミックス、カーボンを含むことができ、無機材料と有機材料をともに含んでいてもよい。有機材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。貫通孔膜20は、1種又は複数の材料からなる単一の層であってもよく、同一の組成の複数の層が積層された多層構造であってもよく、異種の組成の複数の層が積層された多層構造であってもよい。
【0017】
貫通孔膜20の膜厚は、特に限定されず、構造体の用途や貫通孔膜20の材質に応じて選択することができる。貫通孔膜20の膜厚は、1μm~5.0mmとすることができ、例えば、1、2、5、10、20、50、100、200、500μm、1、2、5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。後述のように、本発明に係る構造体の製造方法では、押圧により充填材30を貫通孔膜20に充填するため、貫通孔膜20は押圧で割れないことが好ましく、各貫通孔膜20の材質の機械的特性に応じて、膜厚を選択することができる。具体的には、貫通孔膜20が、主に有機材料で構成される場合、貫通孔膜20の厚みは、1μm~5.0mmとすることができ、例えば、厚み1~30μmのトラックエッチド膜を用いることができる。貫通孔膜20が、主にガラスで構成される場合、貫通孔膜20の厚みは、500μm~5mmとすることができる。また、貫通孔膜20が、主にセラミックスで構成される場合、貫通孔膜20の厚みは、3μm~5mmとすることができる。
【0018】
貫通孔膜20は、厚み方向に対して平行に延在する貫通孔23を含むことができる。また、
図1Dに示すように、貫通孔膜20は、厚み方向に対して特定の角度で傾いた方向に延在する貫通孔23を含むこともできる。本発明の製造方法によれば、貫通孔膜20が、厚み方向に対して特定の角度(X°)で傾いた方向に延在する貫通孔23を含んでいる場合であっても、従来の方法に比べ、充填材30を均一に充填することができる。特定の角度(X°)は、0~60°とすることができ、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
貫通孔膜20は、ストレート形状(円柱形状、又は略円柱形状)の貫通孔23を含むことができる。また、貫通孔膜20は、
図1Eに示すような、テーパー形状(円錐台形状、又は略円錐台形状)の貫通孔23を含むことができる。テーパー形状の貫通孔23は、第1主面21側の開口の直径と、第2主面22側の開口の直径が異なる。第1主面21側の直径/第2主面側の直径は、例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、貫通孔膜20が、テーパー形状の貫通孔23を含む場合、平均孔径は、第1主面21側の直径と第2主面22側の直径の平均とできる。
【0020】
貫通孔23の平均孔径は、特に限定されず、構造体の用途に応じて選択することができる。平均孔径は、0.1~1000μmとすることができ、0.1~100μmであることが好ましい。平均孔径は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、100、200、300、500、1000μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明に係る製造方法によれば、例えば、貫通孔23の平均孔径が100μm以下、さらには、10μm以下であっても、均一充填が可能である。
【0021】
貫通孔23のアスペクト比(貫通孔膜の厚み/貫通孔の平均孔径)は、特に限定されないが、構造体の用途に応じて選択することができる。アスペクト比は、0.1~10000とすることができる。アスペクト比は、例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、200、500、1000、500、10000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明に係る製造方法によれば、アスペクト比が大きい貫通孔23であっても、均一充填が可能である。
【0022】
貫通孔膜20の開口率は、0.05~50%とすることができる。開口率は、例えば、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
充填材30は、押圧して圧力を加えた際に変形する材料であれば特に限定されず、ペースト状であっても、粉体状であってもよい。充填材は、分散媒と分散質を含むことができる。
【0024】
分散質は、構造体の用途に応じて選択することができる。分散質の種類は、カーボン、ガラス、ゼオライト、アルミナ、シリカ等のセラミックス、金属、導電性ポリマー等のポリマーを挙げることができる。分散質の粒子径は、貫通孔23の孔径より小さければ特に制限されない。分散質の平均粒子径0.01~500μmとすることができ、0.01~100μmであることが好ましい。平均粒子径は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、100、200、300、500μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
分散媒は、構造体の用途に応じて選択することができる。分散媒は、バインダー、溶媒、分散剤等の公知の薬剤を含むことができる。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル、ボリビニルブチロール等を挙げることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、1-ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート系溶媒、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート等のターピネオール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、流動パラフィン等の非芳香族炭化水素系溶剤を挙げることができる。
【0026】
充填材の固形分濃度は、特に制限されないが、30~95質量%とすることができる。固形分濃度は、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の製造方法によれば、外観が粉体上であるような、極めて固形分濃度が高い充填材であっても、貫通孔膜に均一に充填が可能である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る構造体11は、均一に充填材30が充填されていることが好ましい。一例として、均一に充填材が充填されているとは、少なくとも50%以上の貫通孔において、貫通孔内に分断なく充填材が充填されている状態とできる。充填材30が導電性の分散質を含む場合、貫通孔23内に分断なく充填材30が充填されていることは、貫通孔23に充填された充填材30が、第1主面21側と第2主面22側とで導通が取れていることで確認することができる。また、一例として、貫通孔23内に分断なく充填材30が充填されていることは、構造体11を電気化学センサのバイポーラ電極として用い、貫通孔膜20の一方の主面に露出した充填材をサンプル溶液に接するよう配置し、他方の主面に露出した充填材を電気化学発光溶液に接するよう配置し、それぞれの溶液に浸した電極に電位を掃引し、サンプル溶液内の検出対象分子が還元又は酸化により発光することで確認できる(
図6A及び
図6B参照。具体例な評価方法は実施例に記載の通り)。本発明の一実施形態に係る構造体11は、例えば、50、60、70、80、90、100%の貫通孔において、貫通孔23内に分断なく充填材30が充填されているものとでき、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
構造体11は、貫通孔膜20の材質や形状、充填材30の材質を調整することで、様々な用途に用いることができる。用途の例としては以下を挙げることができる。
・貫通孔膜20として、絶縁性材料(樹脂、ガラス、セラミックス等)、充填材30として、導電性材料(カーボン、金属、有機導電性材料等)を用いた、貫通電極(例えば、バイポーラ電極(特には、クローズドバイポーラ電極))
・充填材30として、イオン交換作用、触媒作用や分子ふるい作用等を有するセラミックス(例えば、ゼオライト等)を用いた、排ガスフィルターや気体分離膜
【0029】
1.2 構造体12
本発明の一実施形態係る構造体12は、
図1Cに示されるように、構造体11から、任意の方法で貫通孔膜20を除去したものである。
【0030】
構造体12は、構造体11を、例えば、焼成や薬液処理することで得ることができる。構造体11は、充填材、特には充填材中の分散質から構成され、分散質の例としては上記したとおりである。
【0031】
構造体12の形状は、貫通孔23の形状に準じ、貫通孔23と同程度の大きさ、又は焼成時の焼結による収縮の分、貫通孔23より小さい大きさを有する。
【0032】
構造体12は、貫通孔23の形状に応じ、例えば、高アスペクト比の均一な形状を有するものとでき、微小金属ロッド、セラミックスロッド等とできる。これらのロッドは、スペーサー、電子部品、触媒、生物医学、及び生物診断等に用いることができる。
【0033】
2.第1実施形態
2.1 構造体の製造装置100a
本発明の第1実施形態に係る製造装置100aは、貫通孔膜供給手段110と、充填材供給手段120と、第2多孔質シート供給手段132と、充填手段150を備える。貫通孔膜供給手段110は、貫通孔23を有する貫通孔膜20を供給する。充填材供給手段120は、貫通孔23を有する貫通孔膜20上に充填材30を供給する。第2多孔質シート供給手段132は、貫通孔膜20の第2主面22側に、貫通孔23を覆うように第2多孔質シート42を供給及び配置する。充填手段150は、充填材30を厚み方向に押圧して貫通孔膜20の第1主面21側から充填材30を貫通孔23内に充填する。本発明に係る製造装置は、その他以下の手段等を任意で備えていても良い。以下、
図2を参照しながら本発明に係る製造装置100aを説明する。
【0034】
<貫通孔膜供給手段110>
貫通孔膜供給手段110は、貫通孔膜20を搬送する搬送ロール111を含むものとできる。
図2では、シート状の貫通孔膜20を示しているが、貫通孔膜20は、任意の形状に切り離された個片状のシートとすることもできる。貫通孔膜20がシート状である場合、貫通孔膜20は、貫通孔膜20を巻き付けたロール(図示せず)を回転することにより、ロールから連続的に供給することもできる。
【0035】
<充填材供給手段120>
充填材供給手段120は、貫通孔膜20の第1主面21上に充填材30を供給する手段であり、ディスペンサ(図示せず)及びスキージ121を含むものとできる。
図2に示された実施形態は、スキージ121を備える。スキージ121は、貫通孔膜20の第1主面21上を貫通孔膜20に対して相対的に摺動するように構成されており、ディスペンサ等の任意の手段によって貫通孔膜20の第1主面21上に載置された充填材30を、一定の厚みで広げることができる。
【0036】
<第1多孔質シート供給手段131、及び第2多孔質シート供給手段132、並びに、第1多孔質シート回収手段141、及び第2多孔質シート回収手段142>
第2多孔質シート供給手段132は、貫通孔膜20の第2主面22に第2多孔質シート42を供給及び配置する手段である。
図2に示された実施形態では、第2多孔質シート供給手段132は、供給ロール132a及びガイドロール132bを備える。第2多孔質シート42は、第2多孔質シート42をロール状に巻き付けた供給ロール132aからガイドロール132bを介して送り出されている。また、送り出された第2多孔質シート42は、ガイドロール142b及び回収ロール142aを備える第2多孔質シート回収手段142により巻き取られる。
【0037】
同様に、
図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る装置は、貫通孔膜20の第1主面21に第1多孔質シート41を供給及び配置する、第1多孔質シート供給手段131を備えることができる。第2多孔質シート供給手段132と同様、
図2に示された実施形態では、第1多孔質シート供給手段131は、供給ロール131a及びガイドロール131bを備え、第1多孔質シート41は、第1多孔質シート41をロール状に巻き付けた供給ロール131aからガイドロール131bを介して送り出されている。また、送り出された多孔質シートは、ガイドロール141b及び回収ロール141aを備える第1多孔質シート回収手段141により巻き取られる。
【0038】
多孔質シート(第1多孔質シート41及び第2多孔質シート42)は、気体を透過させ、かつ、充填材30に含まれる分散媒を吸収する機能を有する。多孔質シートの例としては、パラフィン紙等の紙類、多孔質セラミックス、布類等を挙げることができる。
【0039】
多孔質シートの厚みは、1~300μmとすることができ、例えば、1、2、5、8、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
<充填手段150>
図2に示す充填手段150は、プレス機であり、上部押圧部材152及び下部押圧部材153を含む押圧部材151を備える。押圧部材151は、上部押圧部材152及び下部押圧部材153により、下から、第2多孔質シート42、第1主面21に充填材30が載置された貫通孔膜20、第1多孔質シート41の順に積層された積層体を挟み込む。押圧部材151は、金属やセラミックス等の硬質の材料で構成でき、SUS、アルミナ、アルミニウムを含むことが好ましい。上部押圧部材152及び下部押圧部材153における、積層体に当接する押圧面は、鏡面であることが好ましく、例えば、表面粗さRa(JIS B 0601:2013)が0.2μm以下とできる。押圧部材151は、1種の材料で構成することもでき、それぞれ異なる硬度を有する2つ以上の部材を含むこともでき、それぞれ異なる硬度を有する3つ以上の部材を含むこともできる。以下、
図3A及び
図3Bを参照して、押圧部材151のより具体的な実施形態である、押圧部材151a及び押圧部材151bを説明する。
【0041】
図3Aに示す押圧部材151aは、上部押圧部材152a及び下部押圧部材153aを含む。下部押圧部材153aは、押圧部第1部材155aから構成されている。上部押圧部材152aは、押圧部第1部材155a及び押圧部第2部材156aから構成されている。下部押圧部材153aにおける押圧部第1部材155aと、上部押圧部材152aにおける押圧部第1部材155aは、同一の材料で構成されており、押圧部第1部材155aと、押圧部第2部材156aは異なる材料で構成されている。すなわち、押圧部材151aはそれぞれ異なる硬度を有する2種以上の部材を含む。ここで、積層体に当接する押圧面154aを含む押圧部第1部材155aは、より硬度が高いSUSで構成され、押圧部第2部材156aは押圧部第1部材155aより硬度が低いアルミニウムで構成されている。積層体に当接する押圧面154aを含む押圧部第1部材155aとして硬度の高い材料を用い、かつ、押圧部第1部材155aより柔らかい材料からなる押圧部第2部材156aを介在させることにより、押圧部第2部材156aがクッション材として機能し、押圧部第1部材155aの消耗を防ぐことができ、より長く安定的に充填を行うことができる。
また、
図3Aに示すように、押圧部第1部材155a及び押圧部第2部材156aは、押圧時にズレが生じないよう、互いに嵌合するよう構成されている。
【0042】
図3Bに示す押圧部材151bは、上部押圧部材152b及び下部押圧部材153bを含む。下部押圧部材153bは、押圧部第1部材155b、押圧部第2部材156bから構成されている。上部押圧部材152bは、押圧部第1部材155b、押圧部第2部材156b、及び押圧部第3部材157bから構成されている。下部押圧部材153bにおける押圧部第1部材155bと、上部押圧部材152bにおける押圧部第1部材155bは、同一の材料で構成されており、下部押圧部材153bにおける押圧部第2部材156bと、上部押圧部材152bにおける押圧部第2部材156bは、同一の材料で構成されている。押圧部第1部材155b、押圧部第2部材156b、及び押圧部第3部材157bはそれぞれ異なる材料で構成されている。ここで、積層体に当接する押圧面154bを含む押圧部第1部材155bはより硬度が高いアルミナで構成され、押圧部第2部材156bは押圧部第1部材155bより硬度が低いが、押圧部第3部材157bよりは硬度が高いSUSで構成され、押圧部第3部材157bは、最も柔らかいアルミニウムで構成されている。積層体に当接する押圧面154bを含む押圧部第1部材155bとして、さらにより硬度の高い材料を用いることにより、押圧部第1部材155bの消耗を防ぐことができ、さらにより長く安定的に充填を行うことができる。
また、
図3Bに示すように押圧部第1部材155b、押圧部第2部材156b、押圧部第3部材157bは、押圧時にズレが生じないよう、互いに嵌合するよう構成されている。
【0043】
以上のように、押圧部材151は、それぞれ異なる硬度を有する2種以上の部材を含むことができ、この場合、積層体に当接する押圧面を含む部材に最も硬度が高い材料を用いることが好ましい。
【0044】
<余剰充填材回収手段>
本発明の一実施形態に係る装置は、余剰充填材回収手段を有していてもよい。余剰充填材回収手段は、充填工程の後、貫通孔膜20の両主面、特には充填材30を載置した第1主面21に多孔質シートを当接させるロールとできる。ここで、余剰充填材及び/又は充填材中に含まれる分散媒が多孔質シートに吸着される。第1多孔質シート回収手段141のガイドロール141b及び第2多孔質シート回収手段142のガイドロール141bが余剰充填材回収手段を兼ねることもできる。また、これらとは別に、貫通孔膜20の第1主面21又は第2主面22に多孔質シートを貫通孔膜20に押し当てるロール(図示せず)を設けても良い。
【0045】
2.2 構造体の製造方法
本発明に係る構造体の製造方法は、充填工程を備える。この方法は、一例では、上述の製造装置100aを用いて実施することができるが、別の構成の装置を用いて実施してもよい。また、本発明の一実施形態に係る製造方法は、貫通孔膜供給工程、充填材供給工程、多孔質シート供給工程、余剰充填材回収工程、多孔質シート回収工程、除去工程を任意で備えていても良い。本発明に係る構造体の製造方法は、貫通孔膜供給工程、充填材供給工程、多孔質シート供給工程、充填工程、余剰充填材回収工程、多孔質シート回収工程、除去工程をこの順に備えるものとできる。以下、
図4を参照しながら本発明の製造方法を説明する。
【0046】
<貫通孔膜供給工程>
図4Aに示すように、用途に応じた適当な材質及び形状の貫通孔23を有する貫通孔膜20を準備する。
【0047】
<充填材供給工程>
充填材供給工程では、
図4Bに示されるように、充填材30を貫通孔膜20の第1主面21上に供給する。供給方法は特に限定されないが、一例として、ディスペンサ等の供給手段によって充填材30を貫通孔膜20の第1主面21上に載置することができる。さらに、載置された充填材30を、スキージ等で押圧しながら摺動させて、貫通孔膜20の第1主面21上に均一な厚みで広げてもよい。また、充填材供給工程では、貫通孔膜20上に貫通孔23の位置に対応した開口を有するマスクを配置し、マスクを介して、貫通孔上や貫通孔周辺上に充填材30の供給を行ってもよい。充填材供給工程において、充填材30の一部が貫通孔23に充填されても良い。
【0048】
<多孔質シート供給工程>
多孔質シート供給工程は、第2多孔質シート供給工程を含むことが好ましく、第2多孔質シート供給工程及び第1多孔質シート供給工程を含むことができる。第2多孔質シート供給工程では、貫通孔膜20の第2主面22側に、前記貫通孔を覆うように第2多孔質シート42を供給及び配置する。また、さらに、第1多孔質シート供給工程では、貫通孔膜20の第1主面21の少なくとも一部と接するように貫通孔膜20の第1主面21側に第1多孔質シート41を供給及び配置することが好ましい。
図4Cに示されるように、第1多孔質シート41は、貫通孔膜20の上に載置された充填材30の上から配置される。多孔質シートの態様は製造装置の説明において前記したとおりである。
【0049】
<充填工程>
充填工程では、貫通孔23を有する貫通孔膜20の第2主面22側に、貫通孔23を覆うように第2多孔質シート42を配置した状態で、充填材30を厚み方向に押圧して、貫通孔膜20の第1主面21側から充填材30を前記貫通孔23内に充填する。また、充填工程では、さらに、貫通孔膜20の第1主面21の少なくとも一部と接するように第1多孔質シート41を配置した状態で、貫通孔膜20の第1主面21側から充填材30を前記貫通孔23内に充填することが好ましい。本発明に係る製造方法によれば、貫通孔23を覆うように第2多孔質シート42を配置した状態で、充填材30を厚み方向に押圧することにより、多孔質シートを介して貫通孔23内の空気が抜け、また、多孔質シートに余剰充填材、及び/又は充填材に含まれる分散媒が吸収され、充填材30を均一に充填することができる。
【0050】
図4Dでは、下から第2多孔質シート42、第1主面21に充填材30が載置された貫通孔膜20、第1多孔質シート41の順に積層された積層体を平板状の上部押圧部材152及び下部押圧部材153で挟んで押圧し、充填材30を貫通孔内に押圧している。
【0051】
押圧時の圧力は、貫通孔膜20の材質や形状、充填材30の流動性等の特性によって調整することができ、10~100MPaとすることができる。圧力は、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。例えば、貫通孔23のサイズが小さい場合や、貫通孔膜20が、傾斜した貫通孔23を含む場合、押圧時の圧力を大きくすることで、貫通孔23に十分に均一に充填材30を充填することができる。また、例えば、貫通孔膜20が、厚み方向に対して、傾斜した貫通孔23を含む場合、押圧時の圧力のうち、貫通孔に平行な方向にかかる分力に応じて圧力を調節することで、貫通孔23に均一に充填材30を充填することができる。一例として、貫通孔膜20が厚み方向に対して60°傾斜した貫通孔23を含む場合(
図1DにおけるXが60°である貫通孔を含む場合)、貫通孔が厚み方向に対して平行である場合(傾斜がない場合)に比べて、押圧時の圧力を2倍程度大きくすることで、貫通孔23に十分に均一に充填材30を充填することができる。
【0052】
充填工程は、常圧下(例えば、大気圧101.3kpaとの差圧が、10kPa未満)で行うことができる。すなわち、従来の充填工程では、貫通孔等の被充填孔を減圧にして、孔内の空気を抜いた状態でペーストを充填する方法が取られてきたが、本発明の製造方法によれば、常圧下でも十分に充填を行うことができる。本発明の一実施形態に係る製造方法では、充填工程までの全工程を常圧下で行うことができる。したがって、チャンバーや真空ポンプ等の設備が不要である。
【0053】
<余剰充填材回収工程>
本発明の一実施形態に係る製造方法は余剰充填材回収工程を有してしてもよい。余剰充填材回収工程では、充填工程の後、貫通孔膜20の第1主面21及び/又は第2主面22、特には充填材30を載置した第1主面21に多孔質シートを当接させ、余剰充填材及び/又は充填材に含まれる分散媒を多孔質シートに吸着させることができる。
【0054】
<多孔質シート回収工程>
本発明の一実施形態に係る製造方法は多孔質シート回収工程を有してしてもよい。多孔質シート回収工程は、第2多孔質シート回収工程を含むことが好ましく、第2多孔質シート回収工程及び第1多孔質シート回収工程を含むことができる。多孔質シート回収工程では、必要に応じてガイドロール141b、142bを介して、使用済多孔質シートを巻き取りロール等で回収する。ここで、回収された第2多孔質シート42に、余剰充填材、及び/又は充填材に含まれる分散媒が到達していることで、充填材の充填を確認することができる。
【0055】
<除去工程>
本発明の一実施形態に係る製造方法は、充填工程後に貫通孔膜20を除去する、除去工程を有していても良い。除去工程では、充填工程後に得られた構造体11から、除去工程により貫通孔膜20を除去することで、構造体12を得ることができる。
【0056】
除去工程は、焼成工程及び/又は薬液処理工程を含むことができる。焼成工程では、構造体11を焼成し、貫通孔膜20を消失により除去することができる。また、同時に充填材30を焼結させ、緻密化することができる。この場合、貫通孔膜20としては、有機材料を選択し、充填材30としては、金属、セラミックス、カーボン等の、貫通孔膜20を構成する材料よりも耐熱性が高い材料を分散質として含む充填材を選択することができる。
【0057】
除去工程は、薬液処理工程を含んでいてもよく、例えば、酸やアルカリ等の薬液処理工程により、貫通孔膜20を溶解させ、除去することもできる。除去工程は、焼成工程及び薬液処理工程を含むこともでき、焼成により、少なくとも一部の貫通孔膜20を焼失させた後、薬液処理で残属する貫通孔膜20をエッチング、洗浄しても良い。
【0058】
3. 第2実施形態
3.1 構造体の製造装置100b
以下、
図5を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る構造体の製造装置100bについて説明する。製造装置100bは、押圧部材151を有する充填手段150に替えて、押圧部材161を有する充填手段160を有する点が、製造装置100aと異なる。以下、構造体の製造装置100aと同じ構成要件には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
<充填手段160>
図5に示す充填手段160は、上下に設置された上部ロール162及び下部ロール163であり、下から、第2多孔質シート42、第1主面21に充填材30が載置された貫通孔膜20、第1多孔質シート41の順に積層された積層体を挟み、上下から押圧しながら搬送し、連続的に処理することができ、例えば、ロール表面のみ硬度の高い材料でコーティングしたロールとすることもできる。上部ロール162及び下部ロール163の表面は、金属やセラミックス等の硬質の材料で構成でき、SUS、アルミナ、アルミニウムを含むことが好ましい。積層体に当接する押圧面154bは、鏡面であることが好ましく、例えば、表面粗さRa(JIS B 0601:2013)が0.2μm以下とできる。
【0060】
3.2 構造体の製造方法
第2実施形態に係る製造方法では、充填工程において、平板状の上部押圧部材152及び下部押圧部材153で挟んで押圧することに替えて、上部ロール162及び下部ロール163で挟んで押圧する点が、第1実施形態に係る製造方法と異なる。第2実施形態に係る製造方法では、充填工程のその他の点及び他の工程は第1実施形態と同様でありその説明を省略する。
【実施例0061】
以下に示す方法で構造体を製造し、各種評価を行った。
【0062】
1 構造体11の製造
<実施例1>
(貫通孔膜20及び充填材30の準備)
貫通孔膜20として、孔径8μmの貫通孔を有するトラックエッチド膜(it4ip社製、ipPORE(登録商標)、材質:ポリカーボネート(PC)及びポリエステル(PET)、開孔率5.00%、サイズ:直径25mm、厚み:16μm)を準備した。また、アセチレンカーボンブラック(STREAM社製、グレード:50% compressed、平均粒径:0.042μm)と、パラフィンオイル(富士フイルム和光純薬社製、グレード:和光一級)とを質量1:1で混合し、さらに自公転式ミキサー(アズワン株式会社、オートミキサー AS100)で均一に分散するよう撹拌し、カーボンペーストを調製し、充填材30とした。多孔質シートとして、パラフィン紙(博愛社製、厚み:8μm)を準備した。
【0063】
(充填工程等)
貫通孔膜20の一方の主面(第1主面21)上に、綿棒を用いて、充填材30を20mg塗布した。第2多孔質シート42を敷き、その上に、充填材30を載せた貫通孔膜20を、充填材30が塗布された第1主面21が上になるように設置し、さらにその上に、充填材30を覆うように第1多孔質シート41を載せた。すなわち、下から第2多孔質シート42、貫通孔膜20(第2主面22が下、第1主面21が上)、第1多孔質シート41となるよう積層した状態とした。これを、
図3Aに示される構成の押圧部材151aを有する油圧プレス機で押圧した。押圧部材151aは、それぞれが直径70mm、厚み40mmである上部押圧部材152a及び下部押圧部材153aを備え、押圧部第1部材155aがSUS、押圧部第2部材156aがアルミニウムで構成されている。20MPaの圧力で60秒間プレスすることにより、充填材30を貫通孔膜20に充填し、構造体11を得た。
【0064】
<実施例2~5>
貫通孔膜、充填材及び充填時の圧力を表1に記載のとおりとした以外は実施例1と同様に、構造体100を得た。
【0065】
(貫通孔膜)
・アルミナ膜(日本軽金属製、平均孔径:600nm、サイズ:5mm×5mm、厚み:30μm、開孔率44%)
・テーパー形状貫通孔膜(材質:エポキシ、厚み:100μm、貫通孔形状:
図1Eに示すような、テーパー形状(円錐台形状)、貫通孔の第1主面側の開口の直径:50μm、貫通孔の第2主面側の開口の直径:35μm)
(充填材)
・Auペースト(田中貴金属工業製、AuRoFUSE(登録商標)、平均粒径200~400nm)
【0066】
<比較例1>
実施例1と同様の貫通孔膜、カーボンペースト、及び多孔質シートを用いた。貫通孔膜の一方の主面(第1主面21)上に、綿棒を用いて、充填材30、10mgを塗り込んだ。
【0067】
<評価>
得られた実施例1、実施例2、比較例1に係る構造体11を電気化学センサのバイポーラ電極として用いることにより、貫通孔膜への充填材の充填性を評価した。すなわち、貫通孔膜の一方の主面に露出した充填材をサンプル溶液に接しするよう配置し、他方の主面に露出した充填材を電気化学発光溶液に接するよう配置し、それぞれの溶液に浸した電極に電位を掃引し、サンプル溶液内の検出対象分子の還元又は酸化により電気化学発光溶液内の発光することで確認した。
図6Aに、各貫通孔に充填された充填材(パイポーラ電極)の拡大図を、
図6Bに、構造体全体を示す。
【0068】
まず、実施例1、実施例2、比較例1に係るバイポーラ電極を挟んでサンプル試料(0.1M KClを含む5mM K3[Fe(CN)6]水溶液)と電気化学発光溶液であるルミノフォア水溶液(0.1M KClを含む10mM Ru(bpy)/トリプロピルアミン(TPA))を設置した。それぞれの溶液に駆動電極としてポテンショスタットの対極端子及び作用極端子に接続したPt板(32mm×5mm)を浸漬した。Ag/AgCl(sat.KCl)を参照電極として試料溶液中に設置した。電位を0V~-3V~0Vに100mV/sで掃引し、CCDカメラで電気化学発光(ECL)イメージを取得し、以下の基準で評価した。
◎:90%以上の貫通孔において、発光が確認できた。
○:50%以上の貫通孔において、発光が確認できた。
×:発光が確認できた領域は、50%未満であった。
【0069】
【0070】
実施例1の構造体11をクローズドバイポーラ電極として用い、発光の前後の外観をCCDカメラで撮影した画像を
図7に示す。
図7Aは、発光前の構造体の外観を、
図7Bは、電位掃引中の発光時の外観を示す。
図7Bより、構造体が面内で均一に発光している様子が確認できる。一方、手で塗り込む方法によりペーストを充填した比較例に係る構造体では、発光が確認できないか、発光が極めて弱い領域があり、均一な発光が確認できなかった。また、作製者によって充填度合いのばらつきがあった。他方、実施例に係る構造体は、作製者が異なっても毎回同様に均一発光を示した。
【0071】
実施例3、4、5で得られた構造体11の両表面を光学顕微鏡により観察したところ、少なくとも50%以上の貫通孔において充填材が充填されていることを確認した。
【0072】
2 構造体12の製造
<実施例6>
実施例2で得た、貫通孔膜としてトラックエッチド膜、充填材として金ペーストを用いて作製した構造体を、電気炉で、300℃で2時間焼成し、貫通孔膜を消失させ除去し、構造体12(ロッド)を得た。
【0073】
<評価方法>
SEM及びエネルギー分散エックス線分光(EDX)により観察及び組成確認を行った。結果を
図8に示す。
【0074】
図8に示されるように、実施例6で作製した構造体12は、貫通孔の形状に追随した形状を有するマイクロサイズの、微小金ロッドとなっており、EDXの結果、Au単一のロッドであることが確認された。このことから本発明の製造方法を用いて、微小ロッド等の作製も容易に行えることが確認された。