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  • 特開-炭化珪素半導体装置 図1
  • 特開-炭化珪素半導体装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031657
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240229BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135342
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩之
(57)【要約】
【課題】ソース電極の上面の凹凸を緩和しつつ、ソース電極とゲート電極との間の寄生容量を低減できる炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記第1主面には、側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上に設けられ、前記第1主面に接触するソース電極と、を更に有し、前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極と前記ソース電極とを互いに電気的に絶縁し、前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極に接する第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有し、前記第1主面に垂直な平面視で前記ゲート電極と重なる範囲内で、前記第2面は前記第2主面に向けて凹む凹面を含み、前記凹面の下端は、前記ゲート電極の上端よりも前記第2主面から離れている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記第1主面には、側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、
前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の上に設けられ、前記第1主面に接触するソース電極と、
を更に有し、
前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極と前記ソース電極とを互いに電気的に絶縁し、
前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極に接する第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有し、
前記第1主面に垂直な平面視で前記ゲート電極と重なる範囲内で、前記第2面は前記第2主面に向けて凹む凹面を含み、
前記凹面の下端は、前記ゲート電極の上端よりも前記第2主面から離れている、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、
前記第1仮想直線に垂直な断面視で、
前記側面は、前記底面を間に挟む第1側面および第2側面を有し、
前記第1側面および前記第2側面からの距離が等しい第1仮想平面上において、
前記ゲート電極の厚さを厚さAとし、
前記ゲートトレンチの深さを深さBとしたとき、
前記深さBが前記厚さAの1.5以上である、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記炭化珪素基板は、
第1導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、
前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、
を有し、
前記側面は、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至り、
前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、
前記第1仮想直線に垂直な断面視で、
前記側面は、前記底面を間に挟む第1側面および第2側面を有し、
前記底面を含む第2仮想平面と前記第1側面のうちで前記ボディ領域が露出する第1平面を含む第3仮想平面とが交わる第1交線と、前記第2仮想平面と前記第2側面のうちで前記ボディ領域が露出する第2平面を含む第4仮想平面とが交わる第2交線と、の間の距離を距離Cとし、
前記第1主面を含む第5仮想平面と前記第3仮想平面とが交わる第3交線と、前記第5仮想平面と前記第4仮想平面とが交わる第4交線と、の間の距離を距離Dとしたとき、
前記距離Dが前記距離Cの1.5倍以上である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、
前記第1仮想直線に垂直な第2仮想直線に沿って、複数の前記ゲートトレンチが前記第1主面に設けられており、
前記ゲートトレンチ毎に、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記層間絶縁膜を有し、
前記第1仮想直線に垂直な断面視で、
前記第2仮想直線に沿って隣り合う2つのゲートトレンチの間での前記側面の上端の間の距離を距離Eとし、
前記第2仮想直線に沿って隣り合う2つの層間絶縁膜の間の距離を距離Fとしたとき、
前記距離Eが前記距離Fの1.2倍以上である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、
前記第1仮想直線に垂直な第2仮想直線に沿って、複数の前記ゲートトレンチが前記第1主面に設けられており、
前記ゲートトレンチ毎に、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記層間絶縁膜を有し、
前記第1主面に垂直な平面視で前記ゲート電極と重なる範囲内での前記ソース電極の厚さの最大値を最大値Gとし、
前記第1主面に垂直な平面視で前記第2仮想直線に沿って隣り合う2つのゲートトレンチの間の範囲内での前記ソース電極の厚さの最小値を最小値Hとしたとき、
前記最大値Gが前記最小値Hの2倍以下である、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含む、請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の一つとして、主面に形成されたゲートトレンチの内側にゲート電極が設けられたトレンチ型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が開示されている(例えば、特許文献1、2および3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-038770号公報
【特許文献2】特開2019-195081号公報
【特許文献3】国際公開第2018/088063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の炭化珪素半導体装置では、ソース電極の上面に大きな凹凸が形成されたり、ソース電極とゲート電極との間に大きな寄生容量が生じたりする。
【0005】
本開示は、ソース電極の上面の凹凸を緩和しつつ、ソース電極とゲート電極との間の寄生容量を低減できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記第1主面には、側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上に設けられ、前記第1主面に接触するソース電極と、を更に有し、前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極と前記ソース電極とを互いに電気的に絶縁し、前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極に接する第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有し、前記第1主面に垂直な平面視で前記ゲート電極と重なる範囲内で、前記第2面は前記第2主面に向けて凹む凹面を含み、前記凹面の下端は、前記ゲート電極の上端よりも前記第2主面から離れている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ソース電極の上面の凹凸を緩和しつつ、ソース電極とゲート電極との間の寄生容量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本開示では数字の前に負の符号を付している。また、以下の説明では、XYZ直交座標系を用いるが、当該座標系は、説明のために定めるものであって、半導体装置の姿勢について限定するものではない。また、XY面視を平面視といい、任意の点からみて、+Z方向を上方、上側または上ということがあり、-Z方向を下方、下側または下ということがある。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記第1主面には、側面と、前記側面と連なる底面とを備えたゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上に設けられ、前記第1主面に接触するソース電極と、を更に有し、前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極と前記ソース電極とを互いに電気的に絶縁し、前記層間絶縁膜は、前記ゲート電極に接する第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有し、前記第1主面に垂直な平面視で前記ゲート電極と重なる範囲内で、前記第2面は前記第2主面に向けて凹む凹面を含み、前記凹面の下端は、前記ゲート電極の上端よりも前記第2主面から離れている。
【0012】
第2面が凹面を含むことで、凹面を含まない場合と比較して、ソース電極の上面の凹凸を緩和できる。また、凹面の下端がゲート電極の上端よりも第2主面から離れていることで、ソース電極とゲート電極との間の寄生容量を低減できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、前記第1仮想直線に垂直な断面視で、前記側面は、前記底面を間に挟む第1側面および第2側面を有し、前記第1側面および前記第2側面からの距離が等しい第1仮想平面上において、前記ゲート電極の厚さを厚さAとし、前記ゲートトレンチの深さを深さBとしたとき、前記深さBが前記厚さAの1.5以上であってもよい。この場合、深さBの厚さAに対する比が大きいほど、ソース電極の上面の凹凸を緩和しやすい。
【0014】
〔3〕 〔1〕または〔2〕において、前記炭化珪素基板は、第1導電型を有するドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有するボディ領域と、前記ドリフト領域から隔てられるように前記ボディ領域上に設けられ、前記第1導電型を有するソース領域と、を有し、前記側面は、前記ソース領域および前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト領域に至り、前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、前記第1仮想直線に垂直な断面視で、前記側面は、前記底面を間に挟む第1側面および第2側面を有し、前記底面を含む第2仮想平面と前記第1側面のうちで前記ボディ領域が露出する第1平面を含む第3仮想平面とが交わる第1交線と、前記第2仮想平面と前記第2側面のうちで前記ボディ領域が露出する第2平面を含む第4仮想平面とが交わる第2交線と、の間の距離を距離Cとし、前記第1主面を含む第5仮想平面と前記第3仮想平面とが交わる第3交線と、前記第5仮想平面と前記第4仮想平面とが交わる第4交線と、の間の距離を距離Dとしたとき、前記距離Dが前記距離Cの1.5倍以上であってもよい。距離Dの距離Cに対する比が大きいほど、第2面に凹面を形成しやすい。
【0015】
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかにおいて、前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、前記第1仮想直線に垂直な第2仮想直線に沿って、複数の前記ゲートトレンチが前記第1主面に設けられており、前記ゲートトレンチ毎に、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記層間絶縁膜を有し、前記第1仮想直線に垂直な断面視で、前記第2仮想直線に沿って隣り合う2つのゲートトレンチの間での前記側面の上端の間の距離を距離Eとし、前記第2仮想直線に沿って隣り合う2つの層間絶縁膜の間の距離を距離Fとしたとき、前記距離Eが前記距離Fの1.2倍以上であってもよい。距離Eの距離Fに対する比が大きいほど、層間絶縁膜の側面を、第1主面に垂直な面から傾斜した面にしやすく、層間絶縁膜の側方にソース電極を形成しやすい。
【0016】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれかにおいて、前記ゲートトレンチは、第1仮想直線に沿って延び、前記第1仮想直線に垂直な第2仮想直線に沿って、複数の前記ゲートトレンチが前記第1主面に設けられており、前記ゲートトレンチ毎に、前記ゲート絶縁膜、前記ゲート電極および前記層間絶縁膜を有し、前記第1主面に垂直な平面視で前記ゲート電極と重なる範囲内での前記ソース電極の厚さの最大値を最大値Gとし、前記第1主面に垂直な平面視で前記第2仮想直線に沿って隣り合う2つのゲートトレンチの間の範囲内での前記ソース電極の厚さの最小値を最小値Hとしたとき、前記最大値Gが前記最小値Hの2倍以下であってもよい。最大値Gの最小値Hに対する比が小さいほど、ソース電極の上面の凹凸を緩和しやすい。
【0017】
〔6〕 〔1〕から〔5〕のいずれかにおいて、前記ゲートトレンチの前記側面は、{0-33-8}面を含んでもよい。側面が{0-33-8}面を含むことで、ゲートトレンチの側面において良好な移動度が得られ、チャネル抵抗を低減できる。
【0018】
[本開示の実施形態]
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態は、炭化珪素を用いたいわゆる縦型のMOS型電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)に関し、このMOS型FETは炭化珪素半導体装置の一例である。図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置における層間絶縁膜および第1主面の構成を示す図である。図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。図2は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0019】
図1および図2に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60と、ドレイン電極70と、バリアメタル膜84とを主に有している。
【0020】
炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1とは反対の第2主面2とを有する。第1主面1および第2主面2はXY平面に平行であり、第1主面1は第2主面2からみて+Z方向にある。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)等のn型不純物を含み、n型の導電型(第1導電型)を有する。
【0021】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、例えば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、例えば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0022】
炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0023】
ドリフト領域11は、窒素またはリン(P)等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11は炭化珪素単結晶基板50の上に設けられている。
【0024】
ボディ領域12は、アルミニウム(Al)等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。ボディ領域12はドリフト領域11の上に設けられている。
【0025】
ソース領域13は、窒素またはリン等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ソース領域13はボディ領域12の上に設けられている。ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられている。ソース領域13は第1主面1を構成する。
【0026】
コンタクト領域18は、アルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は第1主面1を構成する。
【0027】
第1主面1に、側面3と底面4とにより規定される複数のゲートトレンチ5が設けられている。ゲートトレンチ5は、側面3、側面3と連なる底面4とを備える。ゲートトレンチ5は、例えばY軸に沿って延びる。例えば、ゲートトレンチ5の長手方向はY軸に沿い、短手方向はX軸に沿う。X軸に沿って複数のゲートトレンチ5が一定の間隔で配置されている。Y軸に沿って複数のゲートトレンチ5が一定の間隔で配置されていてもよい。側面3は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11の一部とを貫通し、ドリフト領域11に至る。底面4は側面3と連なる。底面4はドリフト領域11に位置する。例えば、底面4は第1主面1および第2主面2と平行である。Y軸に垂直な断面視で、底面4を含む第2仮想平面P2に対する側面3の角度θ1は、例えば45°以上65°以下である。角度θ1は、例えば50°以上であってもよい。角度θ1は、例えば60°以下であってもよい。本開示では、Y軸に平行な第1仮想直線L1およびX軸に平行な第2仮想直線L2を用いて各部位の位置関係を説明することがある。
【0028】
側面3は、Y軸に沿って延びる第1側面3Aおよび第2側面3Bを有する。第1側面3Aおよび第2側面3BはY軸に平行である。第1側面3Aおよび第2側面3Bは、X軸に沿って互いに離れている。第1側面3Aおよび第2側面3Bは、好ましくは{0-33-8}面を有する。{0-33-8}面は、優れた移動度が得られる結晶面である。第2側面3Bは第1側面3Aからみて-X方向にある。
【0029】
ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
【0030】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81の上に設けられている。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5と同様に、Y軸に沿って延びる。第1主面1に垂直な平面視で、ゲート電極82はゲートトレンチ5と重なる。
【0031】
第1仮想直線L1に垂直な断面視で、ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の形状にならった凹状の形状を有する。ゲート電極82の上面の一部は第1側面3Aと第2側面3Bとの間にある。ゲート電極82のY軸(短手方向)に沿った両端部は第1主面1の上方にあってもよく、ゲート電極82の上端82Xは第1主面1の上方にあってもよい。上端82Xと第2主面2との間に第1主面1があってもよい。ゲート電極82の上端82Xは、ゲート電極82の第2主面2から最も離れた部分である。
【0032】
層間絶縁膜83はゲート電極82を覆う。層間絶縁膜83はゲート電極82およびゲート絶縁膜81に接する。層間絶縁膜83は、例えば酸化膜である。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを互いに電気的に絶縁している。層間絶縁膜83は、ゲート電極82に接する第1面21と、第1面21とは反対の第2面22とを有する。言い換えると、第1面21は下面であり、第2面22は上面である。第1主面1に垂直な平面視でゲート電極82と重なる範囲内で、第2面22は第2主面2に向けて凹む凹面23を含む。凹面23の下端23Yは、ゲート電極82の上端82Xよりも第2主面2から離れている。凹面23と第2主面2との間の距離の最小値は、ゲート電極82の上面と第2主面2との間の距離の最大値よりも大きい。
【0033】
層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81には、X軸に沿って一定の間隔でコンタクトホール90が形成されている。コンタクトホール90は、X軸に沿って隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように配置されている。コンタクトホール90はY軸に沿って延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13およびコンタクト領域18が層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81から露出している。
【0034】
バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83の上面と、ゲート絶縁膜81の側面とを覆う。バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81の各々と接している。バリアメタル膜84は、例えば窒化チタン(TiN)を含む材料から構成されている。
【0035】
ソース電極60は第1主面1に接する。ソース電極60は、コンタクトホール90内に設けられたコンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域18に接している。コンタクト電極61は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成されている。コンタクト電極61が、チタン(Ti)と、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。コンタクト電極61は、ソース領域13およびコンタクト領域18とオーミック接合している。ソース配線62は、バリアメタル膜84の上面および側面と、コンタクト電極61の上面とを覆う。ソース配線62は、バリアメタル膜84およびコンタクト電極61の各々と接している。ソース配線62は、例えばアルミニウムを含む材料から構成されている。
【0036】
ドレイン電極70は第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、例えばニッケルシリサイドを含む材料から構成されている。ドレイン電極70がチタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合している。
【0037】
炭化珪素単結晶基板50とドリフト領域11との間に、窒素等のn型不純物を含み、n型の導電型を有するバッファ層が設けられていてもよい。また、ソース電極60の一部を覆うパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0038】
第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100では、第1主面1に垂直な平面視でゲート電極82と重なる範囲内で、第2面22が第2主面2に向けて凹む凹面23を含む。ソース電極60は層間絶縁膜83の上方およびコンタクトホール90の内側に形成されるが、第2面22が凹面23を含むことで、凹面23を含まない場合と比較して、ソース電極60の上面の凹凸を緩和できる。また、第2面22が凹面23を含まない場合、ソース電極60が層間絶縁膜83の上方に厚く形成されやすく、コンタクトホール90の上方では厚くなりにくい。このため、ソース電極60に局所的に薄い部分が生じることがあり、電気抵抗が高くなることがある。更に、ソース電極60の上面の凹凸が大きい場合、ソース電極60の上にパッシベーション膜を形成し、パッシベーション膜に開口部を形成した後に、パッシベーション膜の残渣がソース電極60の上面の凹部に残りやすい。パッシベーション膜の残渣により、電気的特性の変動が生じたり、ボンディングワイヤ等の導電部材との間の接合性が低下したりする。本実施形態によれば、これらの電気抵抗の上昇およびパッシベーション膜の残渣の発生を抑制できる。
【0039】
また、本実施形態では、凹面23の下端23Yは、ゲート電極82の上端82Xよりも第2主面2から離れている。下端23Yが上端82Xよりも第2主面2から離れていない場合には、ソース電極60の凹面23の上方の部分とゲート電極82との間の距離が小さくなりやすい。ソース電極60の凹面23の上方の部分とゲート電極82との間の距離が小さいほど、ソース電極60とゲート電極82との間の寄生容量が大きくなり、スイッチング損失が大きくなる。本実施形態によれば、寄生容量を低減し、スイッチング損失を低減できる。
【0040】
第1側面3Aおよび第2側面3Bからの距離が等しい第1仮想平面P1上において、ゲート電極82の厚さを厚さAとし、ゲートトレンチ5の深さを深さBとしたとき、深さBは厚さAの、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.7倍以上である。更に好ましくは、深さBは厚さAの2.0倍以上である。深さBの厚さAに対する比が大きいほど、ソース電極60の上面の凹凸を緩和しやすい。
【0041】
第2仮想平面P2、第3仮想平面P3、第4仮想平面P4、第5仮想平面P5、第1交線91、第2交線92、第3交線93、第4交線94、距離Cおよび距離Dを次のように定義したとき、距離Dは距離Cの、好ましくは1.5倍以上である。距離Dは距離Cの、より好ましくは1.7倍以上であり、更に好ましくは2.0倍以上である。第2仮想平面P2は底面4を含む仮想平面である。第3仮想平面P3は、第1側面3Aのうちでボディ領域12が露出する第1平面71を含む仮想平面である。第4仮想平面P4は、第2側面3Bのうちでボディ領域12が露出する第2平面72を含む仮想平面である。第5仮想平面P5は第1主面1を含む仮想平面である。第1交線91は、第2仮想平面P2と第3仮想平面P3とが交わる交線である。第2交線92は、第2仮想平面P2と第4仮想平面P4とが交わる交線である。第3交線93は、第5仮想平面P5と第3仮想平面P3とが交わる交線である。第4交線94は、第5仮想平面P5と第4仮想平面P4とが交わる交線である。距離Cは、第1交線91と第2交線92との間の距離である。距離Dは、第3交線93と第4交線94との間の距離である。距離Dの距離Cに対する比が大きいほど、第2面22に凹面23を形成しやすい。
【0042】
第2仮想直線L2に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間での側面3の上端の間の距離を距離Eとし、第2仮想直線L2に沿って隣り合う2つの層間絶縁膜83の間の距離を距離Fとしたとき、距離Eは距離Fの、好ましくは1.2倍以上である。距離Eは距離Fの、より好ましくは1.5倍以上であり、更に好ましくは2.0倍以上である。距離Fは2つの層間絶縁膜83の間の最短の距離であってもよい。距離Fが第1主面1のコンタクトホール90から露出した部分の幅と等しくてもよい。距離Eの距離Fに対する比が大きいほど、層間絶縁膜83の側面を、第1主面1に垂直な面から傾斜した面にしやすく、コンタクトホール90内に、つまり層間絶縁膜83の側方にソース電極60を形成しやすい。
【0043】
最大値Gおよび最小値Hを次のように定義したとき、最大値Gは最小値Hの、好ましくは2倍以下であり、より好ましくは1.8倍以下であり、更に好ましくは1.5倍以下である。最大値Gは、第1主面1に垂直な平面視でゲート電極82と重なる範囲内でのソース電極60の厚さの最大値である。最小値Hは、第1主面1に垂直な平面視で第2仮想直線L2に沿って隣り合う2つのゲートトレンチ5の間の範囲内でのソース電極60の厚さの最小値である。最大値Gの最小値Hに対する比が小さいほど、ソース電極60の上面の凹凸を緩和しやすい。このため、電気抵抗の上昇およびパッシベーション膜の残渣の発生をより抑制しやすい。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてゲートトレンチ5の形状の点で第1実施形態と相違する。図3は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。図3は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0045】
図3に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200では、ゲートトレンチ5の側面3と底面4との間に曲面がある。また、側面3と第1主面1との間にも曲面がある。
【0046】
第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同じである。
【0047】
第2実施形態によっても第1実施形態と同じ効果が得られる。また、第2実施形態によれば、ゲートトレンチ5の上端および下端に曲面があるため、ゲートトレンチ5の上端の近傍および下端の近傍での電界集中を緩和できる。
【0048】
第2実施形態においても、深さBは厚さAの、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.7倍以上であり、更に好ましくは2.0倍以上である。距離Dは距離Cの、好ましくは1.5倍以上であり、より好ましくは1.7倍以上であり、更に好ましくは2.0倍以上である。距離Eは距離Fの、好ましくは1.2倍以上であり、より好ましくは1.5倍以上であり、更に好ましくは2.0倍以上である。最大値Gは最小値Hの、好ましくは2倍以下であり、より好ましくは1.8倍以下であり、更に好ましくは1.5倍以下である。
【0049】
なお、ゲートトレンチ5の上端に曲面があって、下端に曲面がなくてもよく、ゲートトレンチ5の下端に曲面があって、上端に曲面がなくてもよい。
【0050】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
3A 第1側面
3B 第2側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
18 コンタクト領域
21 第1面
22 第2面
23 凹面
23Y 下端
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
60 ソース電極
61 コンタクト電極
62 ソース配線
70 ドレイン電極
71 第1平面
72 第2平面
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
82X 上端
83 層間絶縁膜
84 バリアメタル膜
90 コンタクトホール
91 第1交線
92 第2交線
93 第3交線
94 第4交線
100、200 炭化珪素半導体装置
L1 第1仮想直線
L2 第2仮想直線
P1 第1仮想平面
P2 第2仮想平面
P3 第3仮想平面
P4 第4仮想平面
P5 第5仮想平面
C、D、E、F 距離
G 最大値
H 最小値
θ1 角度
図1
図2
図3