(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031669
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車載表示装置及びその動作方法、並びにコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135360
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久米田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】アハマド ワフィク
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181CC04
5H181EE02
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】自車両の周囲の歩行者を単に検出するだけでは必ずしも歩行者と良好なコミュニケーションを図ることができない。
【解決手段】車載表示装置8は、自車両の周囲に居る歩行者を撮像する撮像部1と、歩行者に提示されるべき情報を表示する表示部2と、撮像部1による取得画像に基づいて歩行者の有効視野が表示部2から逸れているか否か判定し、この判定結果に応じた情報を表示部2に表示させる制御部3を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲に居る歩行者を撮像する撮像部と、
前記歩行者に提示されるべき情報を表示する表示部と、
前記撮像部による取得画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れているか否か判定し、この判定結果に応じた情報を前記表示部に表示させる制御部を備える、車載表示装置。
【請求項2】
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていないと前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として少なくとも言語メッセージを表示するように制御され、
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていると前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として少なくともグラフィック・シンボルを表示するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていないと前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として言語メッセージ及びグラフィック・シンボルの両方又は前記言語メッセージのみを表示するように制御されることを特徴とする請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていると前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として前記グラフィック・シンボルのみを表示するように制御されることを特徴とする請求項3に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記言語メッセージは、前記自車両の走行状態又はその予告に関し、及び/又は、前記歩行者への注意喚起に関することを特徴とする請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項6】
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れているか否かの判定は、前記取得画像に基づいた前記歩行者の頭部の向きの推定に基づいて行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車載表示装置。
【請求項7】
前記歩行者の有効視野は、前記歩行者の頭部の幅方向に関する中心面を中心として頭部前方に60°に亘る角度範囲を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車載表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、言語メッセージを表示可能である第1表示部と、前記第1表示部に隣接して配置されると共に、グラフィック・シンボルを表示可能である第2表示部を含み、
前記制御部は、前記撮像部による取得画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記第1表示部から逸れているか否か判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車載表示装置。
【請求項9】
前記歩行者の有効視野が前記第1表示部から逸れていないと前記制御部が判定する時、前記第1表示部は、前記言語メッセージを表示するように制御され、
前記歩行者の有効視野が前記第1表示部から逸れていると前記制御部が判定する時、前記第2表示部は、前記グラフィック・シンボルを表示するように制御されることを特徴とする請求項8に記載の車載表示装置。
【請求項10】
前記撮像部は、前記第1表示部の幅方向の中心に対応して位置付けられることを特徴とする請求項8に記載の車載表示装置。
【請求項11】
車載表示装置の動作方法であって、
自車両の周囲に居る歩行者を写す取得画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記車載表示装置の表示部から逸れているか否か判定し、
この判定結果に応じた情報を表示する、車載表示装置の動作方法。
【請求項12】
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていない時、前記表示部は、少なくとも言語メッセージを表示し、
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れている時、前記表示部は、少なくともグラフィック・シンボルを表示することを特徴とする請求項11に記載の車載表示装置の動作方法。
【請求項13】
前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れているか否かの判定は、前記取得画像に基づいた前記歩行者の頭部の向きの推定に基づいて行われることを特徴とする請求項11又は12に記載の車載表示装置の動作方法。
【請求項14】
車載表示装置用のコンピュータプログラムであって、コンピュータに対して、
自車両の周囲に居る歩行者を写す画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記車載表示装置の表示部から逸れているか否か判定させ、
この判定結果に応じた情報を前記表示部に表示させる、コンピュータプログラム。
【請求項15】
自車両の周囲に居る歩行者の頭部の向きの推定に基づいて言語メッセージとグラフィック・シンボルの間で選択的に表示内容を切換可能に構成された車載表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載表示装置及びその動作方法、並びにコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転手が不在のまま自律的に又は事前設定された経路沿いに走行する自動運転車が注目されている。このような自動運転車の安全性を高めるためには自動運転中の車両と周囲の歩行者との間でより良好なコミュニケーションを促進することが重要になる。この点に関して、特許文献1には、同文献の
図5A,5Bに図示のように周囲の歩行者或いは運転手に対して自車両の行動計画を表示することが開示されている。尚、特許文献2には、中心視野に位置する時に点灯して見え、周辺視野に位置する時に点滅して見える灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-92979号公報
【特許文献2】特開2022-24211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、自車両の周囲の歩行者を単に検出するだけでは必ずしも歩行者と良好なコミュニケーションを図ることができないという点を新たな課題として見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る車載表示装置は、自車両の周囲に居る歩行者を撮像する撮像部と、前記歩行者に提示されるべき情報を表示する表示部と、前記撮像部による取得画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れているか否か判定し、この判定結果に応じた情報を前記表示部に表示させる制御部を含む。
【0006】
表示部は、一方向(例えば、車幅方向)に長尺であり、かつ同方向において言語メッセージ及びグラフィック・シンボルの個々の表示のために割り当てられた別々の部分を含み得る。
【0007】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていないと前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として少なくとも言語メッセージを表示するように制御され、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていると前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として少なくともグラフィック・シンボルを表示するように制御される。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていないと前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として言語メッセージ及びグラフィック・シンボルの両方又は前記言語メッセージのみを表示するように制御される。
【0009】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていると前記制御部が判定する時、前記表示部は、前記情報として前記グラフィック・シンボルのみを表示するように制御される。
【0010】
幾つかの実施形態においては、前記言語メッセージは、前記自車両の走行状態又はその予告に関し、及び/又は、前記歩行者への注意喚起に関する。
【0011】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れているか否かの判定は、前記取得画像に基づいた前記歩行者の頭部の向きの推定に基づいて行われる。
【0012】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野は、前記歩行者の頭部の幅方向に関する中心面を中心として頭部前方に60°に亘る角度範囲を有する。
【0013】
幾つかの実施形態においては、前記表示部は、言語メッセージを表示可能である第1表示部と、前記第1表示部に隣接して配置されると共に、グラフィック・シンボルを表示可能である第2表示部を含み、前記制御部は、前記撮像部による取得画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記第1表示部から逸れているか否か判定する。
【0014】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野が前記第1表示部から逸れていないと前記制御部が判定する時、前記第1表示部は、前記言語メッセージを表示するように制御され、前記歩行者の有効視野が前記第1表示部から逸れていると前記制御部が判定する時、前記第2表示部は、前記グラフィック・シンボルを表示するように制御される。
【0015】
幾つかの実施形態においては、前記撮像部は、前記第1表示部の幅方向の中心に対応して位置付けられる。
【0016】
本開示の別態様に係る車載表示装置の動作方法は、自車両の周囲に居る歩行者を写す取得画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記車載表示装置の表示部から逸れているか否か判定し、この判定結果に応じた情報を表示する。
【0017】
幾つかの実施形態においては、上記方法は、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れていない時、前記表示部は、少なくとも言語メッセージを表示し、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れている時、前記表示部は、少なくともグラフィック・シンボルを表示する。
【0018】
幾つかの実施形態においては、前記歩行者の有効視野が前記表示部から逸れているか否かの判定は、前記取得画像に基づいた前記歩行者の頭部の向きの推定に基づいて行われる。
【0019】
本開示のまた別態様に係る車載表示装置用のコンピュータプログラムは、コンピュータに対して、自車両の周囲に居る歩行者を写す画像に基づいて前記歩行者の有効視野が前記車載表示装置の表示部から逸れているか否か判定させ、この判定結果に応じた情報を前記表示部に表示させる。
【0020】
本開示のまた別態様に係る車載表示装置は、自車両の周囲に居る歩行者の頭部の向きの推定に基づいて言語メッセージとグラフィック・シンボルの間で選択的に表示内容を切換可能に構成される。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様によれば、自車両の周囲の歩行者に対して良好に情報表示することが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一態様に係る自動運転車の前部を示す概略的な前面図である。
【
図2】本開示の一態様に係る車載表示装置の概略的なブロック図である。
【
図5】所定の順番でピクトグラムが表示されることを示すタイムチャートである。
【
図6】カメラ光軸及び(カメラ光軸を含む)車幅方向における表示部の中心面に対する異なる歩行者の異なる中心視野の関係を示す概略図である。
【
図7】車載表示装置の動作を示す概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された車載表示装置のみに有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な車載表示装置にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0024】
図1は、自動運転車9の前部を示す概略的な前面図である。
図2は、自動運転車9に搭載された車載表示装置8の概略的なブロック図である。
図3は、ピクトグラムの例を示す概略図である。
図4は、ピクトグラムの別例を示す概略図である。
図5は、所定の順番でピクトグラムが表示されることを示すタイムチャートである。
図6は、車載カメラ光軸及び(カメラ光軸を含む)車幅方向における表示部2の中心面に対する異なる歩行者M1,M2の異なる中心視野の関係を示す概略図である。
図7は、車載表示装置8の動作を示す概略的なフローチャートである。
【0025】
自動運転車9は、必ずしもこの限りではないが、運転手が不在のまま自律的又は事前設定された経路沿いに自動運転可能に構成される。自動運転車9には、自車両の周囲に居る歩行者とのコミュニケーションのために車載表示装置8(
図2参照)が搭載されている。車載表示装置8は、自車両の周囲に居る歩行者を撮像するカメラ(撮像部)1と、歩行者に提示されるべき情報を表示する表示部2と、表示部2を制御する制御部3を含む。制御部3による後述の処理によって、自動運転車9は、その周囲の歩行者とより良好なコミュニケーションを図ることができる。尚、制御部3は、典型的には、データ通信可能に接続された半導体メモリーとCPU(Central Processing Unit)を含むコンピュータを含む。半導体メモリーに記憶されたプログラムがCPUで実行されて様々な機能が具現化される。
【0026】
表示部2は、言語メッセージ及びグラフィック・シンボルを表示することができる。言語メッセージは、典型的には、自車両の走行状態又はその予告に関し、及び/又は、歩行者への注意喚起に関する。グラフィック・シンボルは、典型的には、ピクトグラムであるが、他の様々な記号、図柄も含意する。表示部2は、走行状態の予告として、
図1に提示の「発車します」の他、「停車します」、「右折します」、「左折します」といった様々な言語メッセージを表示することができる。また、表示部2は、自車両の走行状態として、「前進中」、「後進中」、「右折中」、「左折中」、「停車中」といった様々な言語メッセージを表示することができる。
【0027】
自車両の走行状態又はその予告に関する言語メッセージの追加又は代替として、表示部2は、歩行者への注意喚起に関する言語メッセージを表示することができる。例えば、表示部2は、「キケン」、「注意」、「その場で動かないで下さい」といった言語メッセージを表示することができる。尚、言語メッセージは、自動運転車9が走行する国の公用語により表されることが想定されている。同一内容の言語メッセージを異なる言語(例えば、英語とスペイン語)で表示するように車載表示装置8を構成することも可能である。より効果的な注意喚起のため、或いは、より長文の言語メッセージの表示のため、表示部2において(例えば、その長手方向に)言語メッセージが流れるように表示させることも可能である。
【0028】
ピクトグラムは、形及び/又は模様により所定の意味内容を表すグラフィック・シンボルである。表示部2にピクトグラムを表示させることによって言語メッセージよりも瞬間的又は直感的なコミュニケーションを促進することができる。ピクトグラムは、言語メッセージと一緒に用いられ(即ち、言語メッセージと同時に表示され)、又は、言語メッセージとは別に用いられる(即ち、言語メッセージと同時に表示されない)。
【0029】
ピクトグラムの例を
図3及び
図4に示す。より効果的な注意喚起のためピクトグラムをアニメーション表示することができる。例えば、
図3(a),(b),(c)の順で個々のピクトグラムを表示部2に表示させることができる。同様、
図4(a),(b),(c),(d)の順で個々のピクトグラムを表示部2に表示させることができる。一例として
図5を参照すると、時刻t1が
図3(a)のピクトグラムが表示される。時刻t2で
図3(a)のピクトグラムから
図3(b)のピクトグラムに表示が切り替えられる。時刻t3で
図3(b)のピクトグラムから
図3(c)のピクトグラムに表示が切り替えられる。時刻t4で
図3(c)のピクトグラムから
図3(a)のピクトグラムに表示が切り替えられる。より効果的な注意喚起のため、表示部2において(例えば、その長手方向に)ピクトグラムが流れるように表示させることも可能である。
【0030】
表示部2は、一方向(例えば、車幅方向)に長尺であり、かつ同方向において言語メッセージ及びピクトグラムの個々の表示のために割り当てられた別々の部分を含み得る。具体的には、表示部2は、言語メッセージを表示可能である第1表示部21と、第1表示部21に隣接して配置されると共に、ピクトグラムを表示可能である第2表示部22と、第1表示部21に隣接して配置されると共に、ピクトグラムを表示可能である第3表示部23を含む。車載表示装置8は、(典型的には事前に用意された)複数の言語メッセージ(例えば、上述の様々な言語メッセージ)を第1表示部21に表示させ、(典型的には事前に用意された)複数のピクトグラム(例えば、上述の様々なピクトグラム)を第2及び第3表示部22,23に表示させることができる。尚、第2及び第3表示部22,23の一方を省略することもできる。
【0031】
第1表示部21、第2表示部22、及び第3表示部23は、別々の装置であり得る。いずれの表示部も、言語メッセージ及びピクトグラムの表示のために発光部(例えば、LED)のマトリクス配列を含むことができる。なお、言語メッセージと比べてピクトグラムがシンプルであることが一般的である。従って、第2表示部22(同じく第3表示部23)の発光部の密度は、第1表示部21の発光部の密度よりも低くすることができ、コスト低減が促進される。尚、第2表示部22及び第3表示部23の点灯のため、第1表示部21用のドライバーとは異なるドライバーを用いることができる。第2表示部22及び第3表示部23の点灯のために同一のドライバーを用いることができる。
【0032】
図1に示す場合、表示部2は、自動運転車9の前部において車幅方向の中心に位置付けられる。自動運転車9が前後方向の区別なく設計されている場合、その前部又は前面は、その現在の進行方向に基づいて決定可能である。車幅方向において第1表示部21が第2表示部22と第3表示部23の間に挟まれる。また、必ずしもこの限りではないが、第1表示部21、第2表示部22及び第3表示部23が、(車高方向において)等しい高さを有する。自動運転車9から見て左方に居る歩行者への注意喚起のために第2表示部22が効果的に機能する。自動運転車9から見て右方に居る歩行者への注意喚起のために第3表示部23が効果的に機能する。
【0033】
表示部2と同じ場所、例えば、自動運転車9の前部にカメラ1を設けることができる。カメラ1の取得画像は、後述のように制御部3により処理されて表示部2の制御のために用いられる。
図1では、カメラ1及び表示部2は、各々、自動運転車9の前部において車幅方向の中心に位置付けられる。この結果、カメラ1は、表示部2(例えば、第1表示部21)の幅方向の中心に対応して位置付けられる。端的には、カメラ1は、(自動運転車9の前部を正面視して)表示部2(例えば、第1表示部21)の中心の直上又は直下に位置付けられる。尚、自動運転車9の後部及び側部といった他の場所にカメラ1を配置することもできる。
【0034】
ある場合、カメラ1は、連続的に撮像して一連の取得画像を含むビデオデータを出力する。制御部3は、カメラ1から受け取ったビデオデータを解析して取得画像に歩行者が含まれるか検出する(
図2の歩行者検出部31参照)。歩行者検出部31は、画像からヒトの特徴部(例えば、頭部)を抽出できるか否かに基づいて歩行者を検出することができる。歩行者検出部31は、プログラム・モジュールとして実装可能である。別の場合、自動運転車9の前方に歩行者が進入したことを検出する別の検出装置からの検出信号に応じて制御部3がカメラ1に撮像を指示する。その後、カメラ1から制御部3に取得画像が伝送される。この取得画像には、歩行者が写されていることになる。
【0035】
カメラ1としては汎用されているものを用いることができる。典型的なカメラ1は、少なくともCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーといった撮像素子と、撮像素子の撮像面に像を結象する光学系(例えば、1以上のレンズ)、及び周辺回路を含み得る。周辺回路は、制御部3からの指令に応じて撮像素子に画像取得を開始させ、撮像素子から出力されるデジタル又はアナログ信号を制御部3に(有線又は無線で)伝送し得る。
【0036】
本実施形態では、制御部3は、カメラ1による取得画像に基づいて歩行者の有効視野が表示部2から逸れているか否か判定し、この判定結果に応じた情報を表示部2に表示させるように構成される。例えば、
図6を参照すると、歩行者M1の中心視野は、表示部2から逸れており、言語メッセージを表示しても視認されない可能性が高い。他方、歩行者M2については、その中心視野が表示部2から逸れておらず(換言すれば、表示部2を捉えており)、言語メッセージが視認される可能性が高い。歩行者M1のためにはピクトグラムを表示することが有効なコミュニケーションであり、他方、歩行者M2のためには言語メッセージを表示することが有効なコミュニケーションである。斯くして、歩行者M1,M2が異なるタイミングで検出される時、制御部3は、(有効視野が逸れている)歩行者M1のために表示部2にピクトグラムを選択的に表示させ、制御部3は、(有効視野が逸れていない)歩行者M2のために表示部2に言語メッセージを選択的に表示させることができる。言うまでも無く、ピクトグラムと言語メッセージの同時表示も可能であり、また、ピクトグラム及び言語メッセージ自体も非限定の単なる一例である。歩行者M1,M2のためにそれぞれの中心視野に応じた異なる情報を提示する限りにおいて様々な情報を表示することができる。例えば、歩行者M1のために言語メッセージに比べてピクトグラムを相対的に大きくして表示することができる。これとは逆に歩行者M2のためにピクトグラムに比べて言語メッセージを相対的に大きくして表示することができる。歩行者M1,M2が同時に検出される時、歩行者M2に向けて優先的に言語メッセージを表示することができる。繰り返すが、ピクトグラムは、グラフィック・シンボルの非限定の一例である。
【0037】
表示部2が、第1表示部21、第2表示部22、及び第3表示部23を含む場合、制御部3は、カメラ1による取得画像に基づいて歩行者の有効視野が第1表示部21から逸れているか否か判定し、この判定結果に応じた情報を表示部2に表示させることができる。具体的には、制御部3は、歩行者の有効視野が第1表示部21から逸れていないと判定する時、言語メッセージを表示するように第1表示部21を制御する。制御部3は、歩行者の有効視野が第1表示部21から逸れていると判定する時、ピクトグラムを表示するように第2表示部22及び第3表示部23を制御する。
【0038】
カメラ1による取得画像に基づいてそこに写された歩行者の有効視野が表示部2から逸れているか否かの判定は、その取得画像に基づいた歩行者の頭部の向きの推定に基づいて行うことができる(
図2の頭部向き推定部32と頭部向き評価部33参照)。頭部向き推定部32及び頭部向き評価部33は、共通又は別々のプログラム・モジュールとして実装可能である。
【0039】
幾つかの場合、頭部向き推定部32は、カメラ1により取得された画像からヒトの頭部の特徴部(例えば、目、鼻、口)を抽出し、これらの特徴部の相対的な位置関係(或いはこれらの特徴部を線で結んだ時の幾何学的形状)に基づいて頭部の向きを推定する。計算コストの低減のため、頭部向き推定部32は、自動運転車9の前部の車幅方向中心に原点が設定された2次元平面(
図6のXY座標参照)においてその歩行者の頭部の向きを示すベクトル情報を算出することができる。このベクトルは、歩行者の頭部の両眼の中心点に一致する座標点から延びる。頭部向き推定のために他のアルゴリズムも採用可能である。
【0040】
頭部向き評価部33は、頭部向き推定部32により推定された頭部の向きから中心視野が表示部2から逸れているか否か判定する。中心視野が表示部2から逸れているか否かは、中心視野が表示部2に交差するか否か、或いは、中心視野に表示部2の一部又は全体(例えば、第1表示部21の一部又は全体)が含まれるか否かに等しいものと考えることもできる。中心視野は、歩行者の頭部の幅方向に関する中心面を中心として頭部前方に60°に亘る角度範囲を有する(
図6参照)。頭部向き推定部32により推定された頭部の向きを示すベクトルは、歩行者の頭部の幅方向に関する中心面に存在する。従って、そのベクトルを用いて中心視野の範囲を幾何学的に画定することができる。なお、後述の説明から分かるように、頭部の向きを示すベクトルから中心視野を算出することは必須ではない。
【0041】
頭部向き評価部33は、中心視野と表示部2(例えば、第1表示部21)の位置関係を幾何学的に評価することができ、例えば、この目的のため、頭部向き推定部32が算出したベクトルとY軸のなす角を用いることができる。なす角が小さくなると、歩行者の正面に表示部2がある(即ち、中心視野に表示部2の一部又は全体が含まれる)ものと評価することができ、なす角が90°に近くなると、歩行者の正面に表示部2がない(即ち、中心視野に表示部2が含まれない)ものと評価することができる。このようにして、頭部向き評価部33は、なす角と閾値角の比較に基づいて中心視野が表示部2から逸れているか否か判定することができる。閾値角は、シミュレーション又は実験によって定めることかできる。繰り返すが、頭部向き評価のために他のアルゴリズムも採用可能である。尚、
図6に示すXY座標において表示部2(及び第1表示部21)の位置及び範囲は既知である。
【0042】
勿論、頭部向き評価部33は、中心視野を幾何学的に画定することもできる。例えば、頭部向き評価部33は、頭部の向きを示すベクトルから両側30°の位置に中心視野の境界を定める境界ベクトルを画定する。頭部向き評価部33は、この境界ベクトルが表示部2(例えば、第1表示部21)に交差するか否か判定することで中心視野が表示部2から逸れているか否か判定することができる。頭部向き評価のために他のアルゴリズムも採用可能である。
【0043】
オプションとして、頭部向き評価部33は、頭部向き推定部32が算出したベクトルの始点の座標に基づいて歩行者が表示部2から十分に遠くに居るか否か判断することができる(例えば、XY座標の原点からのその距離を閾値距離と比較する)。歩行者が表示部2から十分に遠くに居る場合、制御部3は、表示部2に言語メッセージとピクトグラムの同時表示を指示することができる。自動運転車9から歩行者が遠くにいれば言語メッセージとピクトグラムの両方がその者の視界に入る可能性があるためである。
【0044】
点灯指令生成部34は、頭部向き評価部33の判定結果に応じた情報が表示部2により表示されるように点灯指令を生成して出力する。例えば、歩行者の中心視野が表示部2から逸れていると判定する時、点灯指令生成部34は、第2及び第3表示部22,23に点灯指令を出力し、第1表示部21に点灯指令を出力しない。歩行者の中心視野が表示部2から逸れていないと判定する時、点灯指令生成部34は、第1表示部21のみに点灯指令を出力し、或いは、第1乃至第3表示部21,22,23の全てに点灯指令を出力する。このようにして歩行者の頭部の向きに応じた情報が適切に表示される。なお、点灯指令生成部34は、第1表示部21の点灯指令の生成に際して、自動運転車9の走行状態又はその予告に関するパラメーターを参照し、これに応じて第1表示部21の表示内容を指示することもできる。パラメーターは、自動運転車9の所定の記憶部(メモリー、バッファー)にデジタル値として記憶され得る。例えば、パラメーターが走行状態を示す時、点灯指令生成部34は、第1表示部21に「走行中」と表示させることができる。パラメーターが停車状態を示す時、点灯指令生成部34は、第1表示部21に「停車中」と表示させることができる。パラメーターと言語メッセージのルックアップテーブルを事前に作成して記憶し、点灯指令の生成時に参照することもできる。
【0045】
図7を参照して更に説明する。車載表示装置8は、まず歩行者を写す画像を取得する(S1)。例えば、カメラ1は、自動運転車9の前方を連続的に撮像しており、カメラ1から制御部3に連続的に画像が転送される。次に、車載表示装置8は、取得画像に基づいて歩行者を検出する(S2)。例えば、制御部3の歩行者検出部31がアルゴリズムを用いて歩行者を検出する。次に、車載表示装置8は、歩行者の有効視野が表示部から逸れていないか判定する(S3)。この目的のために、制御部3の頭部向き推定部32と頭部向き評価部33の計算処理が利用可能である。歩行者の有効視野が表示部から逸れていない場合、車載表示装置8は、表示部2に言語メッセージを表示させる(S4)。例えば、点灯指令生成部34は、第1表示部21のみに点灯指令を出力する。歩行者の有効視野が表示部から逸れている場合、表示部2にピクトグラムを表示させる(S5)。例えば、点灯指令生成部34は、第2及び第3表示部22,23のみに点灯指令を出力する。第2及び第3表示部22,23は、点灯指令に応じて、
図3乃至
図5を参照して説明したようにピクトグラムを所定の順番で表示し得る。その後、車載表示装置8は、待機状態に戻る(S6)。
【0046】
車載表示装置8は、自動運転車9の既存の要素を活用して構築することもできる。例えば、自動運転車9は、一般的にカメラを有する。従って、自動運転車9のカメラを車載表示装置8のカメラとしても用いることができる(逆も然りである)。自動運転車9は、一般的にコンピュータを内蔵する。従って、自動運転車9のコンピュータを車載表示装置8の制御部として用いることができる(逆も然りである)。
【0047】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。本明細書には、車載表示装置8の制御部3の動作を画定するためのコンピュータプログラムも実質的に開示されている。自車両の周囲に居る歩行者の頭部の向きの推定に基づいて言語メッセージとピクトグラムの間で選択的に表示内容を切換可能に構成された車載表示装置も上述の説明から理解可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 :カメラ(撮像部)
2 :表示部
3 :制御部
8 :車載表示装置
9 :自動運転車
21 :第1表示部
22 :第2表示部
23 :第3表示部
31 :歩行者検出部
32 :頭部向き推定部
33 :頭部向き評価部
34 :点灯指令生成部
M1 :歩行者
M2 :歩行者