(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031678
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】半導体モジュール、電力変換装置及び電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240229BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20240229BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/40 E
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135375
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯 亜紀良
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136BC06
5F136DA27
5F136EA03
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
(57)【要約】
【課題】冷却モジュールとの締結の緩みが防止可能となる。
【解決手段】半導体モジュール10は、放熱ベース30の裏面32bの基板領域の反対側の放熱領域に設けられた相変化型の固形状の放熱部材33と、放熱ベース30の裏面32bの、締結孔及び放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材34と、を含む。このような半導体モジュール10を冷却モジュール90に配置してねじ35で螺合して取り付けて、放熱部材33を溶融しても、弾性部材34により放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される。このため、放熱ベース30とねじ35との間に隙間が生じず、ねじ35による半導体モジュール10の冷却モジュール90に対する締め付け強さの低下が防止される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップが接合された配線板をおもて面に含む絶縁回路基板と、
前記絶縁回路基板がおもて面の基板領域に接合され、締結部材が挿通される締結孔が平面視で前記基板領域を挟んで前記基板領域の外側に形成された放熱ベースと、
前記放熱ベースの裏面の前記基板領域の反対側の放熱領域に設けられた相変化型の固形状の放熱部材と、
前記放熱ベースの前記裏面の、前記締結孔及び前記放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材と、
を含む半導体モジュール。
【請求項2】
前記弾性部材は、シリコーンを主成分として構成されている、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記放熱ベースの前記環状領域に、前記放熱領域を取り囲んで環状に連続的に形成されている、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
環状に形成されている前記弾性部材に切断部分が形成されている、
請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記放熱ベースの前記環状領域に、前記放熱領域を取り囲んで環状に不連続に形成されている、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記放熱ベースは平面視で矩形状を成し、
前記弾性部材は、前記放熱ベースの外周に沿って設けられた前記環状領域の四隅にそれぞれ形成されている、
請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記放熱ベースは平面視で矩形状を成し、
前記弾性部材は、前記放熱ベースの外周に沿って設けられた前記環状領域に対して、前記放熱ベースの一対の長辺及び一対の短辺にそれぞれ平行に形成されている、
請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記放熱ベースは平面視で矩形状を成し、
前記弾性部材は、前記放熱ベースの外周に沿って設けられた前記環状領域に対して、前記環状領域の隣り合う一対の角部と前記一対の角部の間の第1辺から前記放熱領域を挟んで対向する第2辺に沿ってそれぞれ形成されている、
請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項9】
前記弾性部材の前記放熱ベースの前記裏面からの高さは、前記放熱部材の前記放熱ベースの前記裏面からの高さと略等しい、または、前記放熱部材の前記放熱ベースの前記裏面からの高さよりも高い、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項10】
前記放熱部材は、前記放熱領域に行列状に複数設けられている、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項11】
半導体モジュールと冷却モジュールとを含み、
前記半導体モジュールは、
半導体チップと、
前記半導体チップが接合された配線板をおもて面に含む絶縁回路基板と、
前記絶縁回路基板がおもて面の基板領域に接合され、締結孔が平面視で前記基板領域を挟んで前記基板領域の外側に形成された放熱ベースと、
前記放熱ベースの裏面の、前記締結孔及び前記基板領域の反対側の放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材と、
を含み、
前記冷却モジュールは、
前記放熱ベースの前記裏面に前記弾性部材を介して設けられ、前記締結孔を挿通する締結部材により前記放熱ベースが締結されることで、前記放熱ベースと共に前記弾性部材を挟む冷却面を備え、
前記放熱ベースの前記裏面と前記冷却面との間であって、前記弾性部材の内側に放熱部材が挟持されている、
電力変換装置。
【請求項12】
半導体チップと、前記半導体チップが接合された配線板をおもて面に含む絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板がおもて面の基板領域に接合され、締結孔が平面視で前記基板領域を挟んで前記基板領域の外側に形成された放熱ベースと、前記放熱ベースの裏面の前記基板領域の反対側の放熱領域に設けられた相変化型の固形状の放熱部材と、前記放熱ベースの前記裏面の、前記締結孔及び前記放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材と、を含む半導体モジュールと、冷却面を含む冷却モジュールとを用意する用意工程と、
前記放熱ベースの前記冷却面を、前記放熱ベースの前記裏面に前記弾性部材及び前記放熱部材を介して設け、前記締結孔を挿通する締結部材により締結する取り付け工程と、
前記放熱部材を溶融させる溶融工程と、
を含む電力変換装置の製造方法。
【請求項13】
前記溶融工程において、前記半導体チップを動作させて発熱させ、前記放熱部材を溶融させる、
請求項12に記載の電力変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール、電力変換装置及び電力変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体モジュールは、パワーデバイスを含み、例えば、インバータを構成する。このような半導体モジュールが電力変換装置に含まれる。パワーデバイスは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。半導体モジュールは、パワーデバイスを含む半導体チップと絶縁回路基板と放熱ベースとが積層されて構成されている。
【0003】
このような電力変換装置に含まれる半導体モジュールは、放熱ベースの裏面にサーマルグリースを介して冷却モジュールが設けられる。冷却モジュールは、例えば、冷却フィン、冷媒による冷却装置が挙げられる。半導体モジュールの放熱ベースと冷却モジュールとがねじで螺合される。
【0004】
一方、事前に半導体モジュールの放熱ベースにサーマルグリースを塗布した状態で出荷し、出荷先で冷却モジュールを取り付けることが行われることがある。この場合、出荷のための輸送を伴うために、ペースト状のサーマルグリースでは周囲を汚してしまうおそれがある。そこで、サーマルグリースに代わり、フェイズチェンジサーマルグリースが用いられる。フェイズチェンジサーマルグリースは、常温では固相を維持し、加熱されるとペースト状に変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-332479号公報
【特許文献2】特開2013-251473号公報
【特許文献3】国際公開第2019/239997号
【特許文献4】特開2022-073478号公報
【特許文献5】特開2009-277976号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「富士時報」 Vol.82 No.6 2009 P.67-71
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の電力変換装置に含まれる半導体モジュールでは、出荷先で冷却モジュールを取り付けてねじで螺合し、フェイズチェンジサーマルグリースをペースト状に変位させる。フェイズチェンジサーマルグリースが固相から液相に変位するに伴い、放熱ベースと冷却モジュールとの隙間が狭くなる。このため、放熱ベースとねじとに隙間が生じ、半導体モジュールと冷却モジュールとの締め付け強さが低下してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、冷却モジュールとの締結の緩みが防止可能な半導体モジュール、電力変換装置及び電力変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、半導体チップと、前記半導体チップが接合された配線板をおもて面に含む絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板がおもて面の基板領域に接合され、締結部材が挿通される締結孔が平面視で前記基板領域を挟んで前記基板領域の外側に形成された放熱ベースと、前記放熱ベースの裏面の前記基板領域の反対側の放熱領域に設けられた相変化型の固形状の放熱部材と、前記放熱ベースの前記裏面の、前記締結孔及び前記放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材と、を含む半導体モジュールが提供される。
【0010】
また、本発明の一観点によれば、半導体モジュールと冷却モジュールとを含み、前記半導体モジュールは、半導体チップと、前記半導体チップが接合された配線板をおもて面に含む絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板がおもて面の基板領域に接合され、締結孔が平面視で前記基板領域を挟んで前記基板領域の外側に形成された放熱ベースと、前記放熱ベースの裏面の、前記締結孔及び前記基板領域の反対側の放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材と、を含み、前記冷却モジュールは、前記放熱ベースの前記裏面に前記弾性部材を介して設けられ、前記締結孔を挿通する締結部材により前記放熱ベースが締結されることで、前記放熱ベースと共に前記弾性部材を挟む冷却面を備え、前記放熱ベースの前記裏面と前記冷却面との間であって、前記弾性部材の内側に放熱部材が挟持されている、電力変換装置が提供される。
【0011】
また、本発明の一観点によれば、半導体チップと、前記半導体チップが接合された配線板をおもて面に含む絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板がおもて面の基板領域に接合され、締結孔が平面視で前記基板領域を挟んで前記基板領域の外側に形成された放熱ベースと、前記放熱ベースの裏面の前記基板領域の反対側の放熱領域に設けられた相変化型の固形状の放熱部材と、前記放熱ベースの前記裏面の、前記締結孔及び前記放熱領域を取り囲む環状領域上に設けられた弾性部材と、を含む半導体モジュールと、冷却面を含む冷却モジュールとを用意する用意工程と、前記放熱ベースの前記冷却面を、前記放熱ベースの前記裏面に前記弾性部材及び前記放熱部材を介して設け、前記締結孔を挿通する締結部材により締結する取り付け工程と、前記放熱部材を溶融させる溶融工程と、を含む電力変換装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の技術によれば、冷却モジュールとの締結の緩みが防止され、冷却性の低下が抑制され、半導体モジュール及び電力変換装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態の電力変換システムの基本構成を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体モジュールの外観図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体モジュールの側断面図である。
【
図4】第1の実施の形態の半導体モジュールの平面図(ケース無し)である。
【
図5】第1の実施の形態の半導体モジュールの平面図(ケース及び端子無し)である。
【
図6】第1の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。
【
図7】第1の実施の形態の半導体モジュールの機能を表す等価回路図である。
【
図8】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる冷却モジュール取り付け工程を示す図である。
【
図10】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる溶融工程を示す図である。
【
図11】参考例の電力変換装置の製造方法に含まれる冷却モジュール取り付け工程を示す図である。
【
図12】参考例の電力装置の製造方法に含まれる溶融工程を示す図である。
【
図13】第1の実施の形態(変形例)の半導体モジュールの裏面図である。
【
図14】第2の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。
【
図15】第3の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。
【
図16】第4の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。
【
図17】第4の実施の形態(変形例)の半導体モジュールの裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の半導体モジュール10において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の半導体モジュール10において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の半導体モジュール10において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の半導体モジュール10において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。
【0015】
[第1の実施の形態]
電力変換システムの基本構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の電力変換システムの基本構成を示す図である。電力変換システム1は、電力変換装置2と電源3と負荷4とを含む。
【0016】
電力変換装置2は、電源3から供給される直流電力を負荷4に供給する交流電力に変換する。このような電力変換装置2は、電圧平滑部2aとインバータ部2bと冷却部2cとを含む。電圧平滑部2aは、電源3から供給される直流電圧を平滑する。電圧平滑部2aは、このような機能を有する平滑回路を含んでよい。インバータ部2bは、電圧平滑部2aにより平滑された直流電圧を、負荷4に印加する交流電圧に変換する。インバータ部2bは、このような機能を有するインバータ回路を含んでよい。インバータ部2bは、後に説明する半導体モジュール10を含む。それ以外にインバータ部2aは半導体モジュール10を制御する制御駆動回路等を含む。なお、負荷4は、例えば、モータが挙げられる。冷却部2cは、電圧平滑部2a及びインバータ部2bを冷却する。冷却部2cは、例えば、冷却フィン、内部で冷媒の循環により冷却する冷却装置が挙げられる。冷却部2cは、後に説明する冷却モジュール90に対応する。
【0017】
次に、電力変換装置2に含まれるインバータ部2bの半導体モジュール10について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施の形態の半導体モジュールの外観図である。半導体モジュール10は、後述する構成部品が、
図2に示されるように、ケース60に覆われている。なお、半導体モジュール10の裏面(ケース60の裏面側)には、平面視で矩形状の放熱ベース30が設けられている(
図3及び4を参照)。
【0018】
ケース60は、蓋部61と側壁部62a~62dと端子口63,64とを含んでいる。蓋部61は、さらに、中心部に長手方向に沿って端子台61a,61b,61cが形成されている。端子台61a,61b,61cのおもて面にはねじ孔61a1,61b1,61c1が形成されている。端子台61a,61b,61cは、第1~第3配線部材71,72,74が上方に延伸している。なお、
図2では、第1~第3配線部材71,72,74が上方(+Z方向)に延伸している場合を示している。延伸している第1~第3配線部材71,72,74は端子台61a,61b,61cのおもて面側に折り曲げられて、第1~第3配線部材71,72,74に形成されている開口孔がねじ孔61a1,61b1,61c1に対応して、それぞれの開口孔を通じて、ねじ孔61a1,61b1,61c1がねじ留めされる。また、ケース60は、放熱ベース30の締結孔31a~31dの周囲を覆い、締結孔31a~31dに対向して開口されている固定孔65を平面視で四隅にそれぞれ含んでいる。
【0019】
側壁部62a~62dは、放熱ベース30の四方を順に囲んでいる。すなわち、側壁部62a~62dは放熱ベース30上に配置された構成部品を囲む(
図3を参照)。なお、側壁部62a~62dは放熱ベース30に対して接着剤により固着される。端子口63,64は、側壁部62dに設けられている。端子口63,64から制御端子75,76がそれぞれ表出されている。なお、側壁部62a~62dで囲まれる領域の角部近傍には固定孔65がそれぞれ形成されている。半導体モジュール10を後述する冷却モジュールに取り付ける際に固定孔65を介してねじ留めすることができる。
【0020】
このようなケース60に含まれる側壁部62a~62dと端子口63,64と固定孔65とは、樹脂を用いて一体成形により形成されている。また、蓋部61もまた、樹脂を用いて一体成形により形成されている。このような樹脂は、熱可塑性樹脂を主成分として構成されている。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂である。ケース60は、別途形成された蓋部61が側壁部62a~62dの開口に接着剤により取り付けられてよい。
【0021】
次いで、半導体モジュール10に収納されている構成部品について、
図3~
図6を用いて説明する。
図3は、第1の実施の形態の半導体モジュールの側断面図である。
図4は、第1の実施の形態の半導体モジュールの平面図(ケース無し)である。
図5は、第1の実施の形態の半導体モジュールの平面図(ケース及び端子無し)である。
図6は、第1の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。なお、
図3は、
図2の一点鎖線Y-Yの断面図である。
図4は、
図2の半導体モジュール10のケース60を除いた平面図である。
図5は、
図2の半導体モジュール10のケース60及び第1~第3配線部材71,72,74を除いた平面図である。
【0022】
図3~
図5に示されるように、半導体モジュール10は、絶縁回路基板20a,20bと、絶縁回路基板20a,20bがおもて面に設けられた放熱ベース30と、を有している。半導体モジュール10は、これらがケース60で覆われている。絶縁回路基板20a,20bには、半導体チップ41a~44a,41b~44bがそれぞれ配置されている。また、半導体モジュール10は、第1~第3配線部材71,72,74を備えている。第1~第3配線部材71,72,74は、例えば、板状のリードフレームである。
【0023】
ケース60は、放熱ベース30の周縁部に設けられている。このようなケース60は、絶縁回路基板20a,20bを取り囲む側壁部62a~62dと、側壁部62a~62dの開口上部に設けられた蓋部61と、を有している。ケース60及び放熱ベース30で取り囲まれる内部に、半導体チップ41a~44a,41b~44b、絶縁回路基板20a,20b(及びボンディングワイヤ51a~55a,51b~56b,57~59)が収納されている。さらに、半導体チップ41a~44a,41b~44b、絶縁回路基板20a,20b(及びボンディングワイヤ51a~55a,51b~56b,57~59)は、封止部材80により封止されてよい。なお、封止部材80は、例えば、シリコーンである。また、蓋部61には、外部機器との電気接続を行う第1~第3配線部材71,72,74の端部が表出している。なお、
図3~
図5では、
図2に示す制御端子75,76は図示を省略している。
【0024】
第1~第3配線部材71,72,74は、それぞれの一端部がケース60の内部で絶縁回路基板20aまたは絶縁回路基板20bに接続されている。また、それぞれの他端部が蓋部61から外部に表出している。他端部は、図示しない電源3、負荷4に接続されていてよい。
【0025】
具体的には、第1配線部材71の一端部は、絶縁回路基板20aの配線板23a3,23a5に電気的及び機械的に接続されている。第1配線部材71の一端部は、配線板23a3,23a5及びボンディングワイヤ53a,54aを介して、半導体チップ41a,42a,43a,44aと電気的に接続されている。第1配線部材71の他端部(第1外部接続部71d)は、蓋部61から表出されて、蓋部61のおもて面に折り曲げられている。
【0026】
第2配線部材72の一端部は、絶縁回路基板20bの配線板23b2に電気的及び機械的に接続されている。第2配線部材72の一端部は、配線板23b2を介して半導体チップ41b,42b,43b,44bと電気的に接続されている。第2配線部材72の他端部(第2外部接続部72d)は、蓋部61から表出されて、蓋部61のおもて面に折り曲げられている。
【0027】
第3配線部材74の一端部は、絶縁回路基板20aの配線板23a2に電気的及び機械的に接続されている。第3配線部材74の一端部は、配線板23a2を介して半導体チップ41a,42a,43a,44aと電気的に接続されている。第3配線部材74の他端部(第3外部接続部74d)は、蓋部61から表出されて、蓋部61のおもて面に折り曲げられている。
【0028】
また、配線ユニット70は、上記の第1,第2配線部材71,72及び配線保持部73を含む。配線ユニット70は、第1,第2配線部材71,72の一部が配線保持部73に一体成形されている。また、この際、第1,第2配線部材71,72の間は、配線保持部73により絶縁性が保たれている。
【0029】
絶縁回路基板20a,20bは、絶縁板21a,21bと、絶縁板21a,21bの裏面に形成された金属板22a,22bと、絶縁板21a,21bのおもて面に形成された配線板23a1~23a5,23b1~23b5と、を有している。なお、絶縁板21a,21b及び金属板22a,22bは、平面視で矩形状である。また、絶縁板21a,21b及び金属板22a,22bは、角部がR面取り、C面取りされていてもよい。金属板22a,22bのサイズは、平面視で、絶縁板21a,21bのサイズより小さく、絶縁板21a,21bの内側に形成されている。
【0030】
絶縁板21a,21bは、熱伝導性のよいセラミックスを主成分として構成されている。当該セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。
【0031】
金属板22a,22bは、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。
【0032】
配線板23a1~23a5,23b1~23b5は、導電性に優れた金属を主成分として構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金が挙げられる。配線板23a1~23a5,23b1~23b5の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。
【0033】
このような配線板23a1~23a5,23b1~23b5は、例えば、絶縁板21a,21bのおもて面に金属層を形成し、この金属層に対してエッチング等の処理を行って得られる。または、あらかじめ金属層から切り出した配線板23a1~23a5,23b1~23b5を絶縁板21a,21bのおもて面に圧着させてもよい。なお、
図3~
図5に示す配線板23a1~23a5,23b1~23b5の形状、個数は一例である。
【0034】
このような構成を有する絶縁回路基板20a,20bとして、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いてよい。絶縁回路基板20a,20bは、半導体チップ41a~44a,41b~44bで発生した熱を配線板23a2,23b2、絶縁板21a,21b及び金属板22a,22bを介して、外側に伝導させることができる。
【0035】
また、このような絶縁回路基板20aの配線板23a3,23a5には、第1配線部材71の一端部(第1脚部71a(
図3を参照))がはんだ(図示を省略)を介して接続されている。絶縁回路基板20bの配線板23b2には、第2配線部材72の一端部(第2脚部72a(
図3を参照))がはんだ(図示を省略)を介して接続されている。絶縁回路基板20aの配線板23a2には、第3配線部材74の一端部(第3脚部74a(
図3を参照))がはんだ(図示を省略)を介して接続されている。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルト、アンチモンまたはシリコンである。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。なお、配線板23a2,23a3,23a5,23b2に示されている四角は、第3,第1,第2配線部材74,71,72の接合領域をそれぞれ表している。また、これらは、はんだに代わり、例えば、超音波接合により接合してもよい。
【0036】
半導体チップ41a~44a,41b~44bは、シリコンを主成分として構成されている。半導体チップ41a,42a,41b,42bは、スイッチング素子である。スイッチング素子は、例えば、IGBT、パワーMOSFETである。このような半導体チップ41a,42a,41b,42bは、裏面に入力電極(主電極)としてドレイン電極またはコレクタ電極を備えている。また、半導体チップ41a,42a,41b,42bは、おもて面に、制御電極としてゲート電極41a1,42a1,41b1,42b1及び出力電極(主電極)としてソース電極またはエミッタ電極をそれぞれ備えている。上記の半導体チップ41a,42a,41b,42bは、その裏面側が配線板23a2,23b2上に既述のはんだ(図示を省略)により接合されている。また、はんだに代わり、金属焼結体を用いてもよい。金属焼結体の材料は、銀または銀合金を主成分とする。また、このようなはんだ及び金属焼結体は、半導体チップ41a~44a,41b~44bと配線板23a2,23b2との接合に限らず、第1~第3配線部材71,72,74の配線板23a3,23a5,23b2,23a2に対する接合にも用いてもよい。
【0037】
半導体チップ43a,44a,43b,44bは、ダイオード素子である。ダイオード素子は、FWD(Free Wheeling Diode)である。このようなダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PN接合ダイオードを含んでいる。このような半導体チップ43a,44a,43b,44bは、裏面に出力電極(主電極)としてカソード電極を、おもて面に入力電極(主電極)として、アノード電極をそれぞれ備えている。上記の半導体チップ43a,44a,43b,44bは、その裏面側が配線板23a2,23b3上にはんだ(図示を省略)により接合されている。
【0038】
なお、半導体チップ41a~44a,41b~44bは、スイッチング素子とダイオード素子を一つの半導体チップとしたRC(Reverse Conductive)-IGBT素子であってもよい。または、半導体チップ41a~44a,41b~44bに代わり、炭化シリコンを主成分とするパワーMOSFETである半導体チップを用いてよい。この半導体チップは、パワーMOSFETと共にFWDを備えている。
【0039】
このような絶縁回路基板20a,20b及び半導体チップ41a~44a,41b~44bに対して以下のようなボンディングワイヤ51a~55a,51b~56b,57~59が配線されている。
【0040】
制御用配線であるボンディングワイヤ51a,52aは、配線板23a1と半導体チップ41a,42aのゲート電極41a1,42a1とにそれぞれ電気的に接続している。ボンディングワイヤ53a,54aは、配線板23a3,23a5と半導体チップ41a,42aの主電極と半導体チップ43a,44aの主電極をそれぞれ電気的に接続している。
【0041】
制御用配線であるボンディングワイヤ51b,52bは、配線板23b1と半導体チップ41b,42bのゲート電極41b1,42b1にそれぞれ電気的に接続している。ボンディングワイヤ53b,54bは、配線板23b5,23b3と半導体チップ41b,42bの主電極と半導体チップ43b,44bの主電極をそれぞれ電気的に接続している。ボンディングワイヤ55b,56bは、配線板23b4と半導体チップ41b,42bの主電極と半導体チップ43b,44bの主電極をそれぞれ電気的に接続している。
【0042】
そして、ボンディングワイヤ57,58は、絶縁回路基板20aの配線板23a2と絶縁回路基板20bの配線板23b3,23b5とをそれぞれ電気的に接続している。ボンディングワイヤ59は、絶縁回路基板20aの配線板23a4と絶縁回路基板20bの配線板23b4とを電気的に接続している。
【0043】
なお、ボンディングワイヤ51a~55a,51b~56b,57~59は、導電性に優れたアルミニウム、銅の金属、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。
【0044】
配線ユニット70は、
図3に示されるように、上記の第1,第2配線部材71,72と第1,第2配線部材71,72を包含して保持する配線保持部73とを有している。第1,第2配線部材71,72は、板状のリードフレームである。配線保持部73は、絶縁性を有する樹脂であり、例えば、熱可塑性樹脂により構成されている。このような樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂である。また、このような樹脂に、絶縁性のセラミックスフィラーが添加されていてもよい。このようなセラミックスフィラーは、例えば、酸化物、窒化物、炭化物である。この具体例としては、シリコン、アルミニウム、ボロンが挙げられる。
【0045】
第1配線部材71は、第1脚部71aと第1垂直部71bと第1外部接続部71dとを含む。第1配線部材71の第1脚部71aの一端部は、絶縁回路基板20aの配線板23a3,23a5上に接合されている。第1垂直部71bは第1脚部71aの他端部に接続されて鉛直上方(+Z方向)に延伸している。第1外部接続部71dは第1垂直部71bに接続されて、蓋部61から外部に表出して蓋部61のおもて面に折れ曲がっている。配線板23a3,23a5は、ボンディングワイヤ53a,54aを経由して半導体チップ41a,42a,43a,44aのおもて面の主電極に接合されている。そのため、第1配線部材71は、半導体チップ41a,42a,43a,44aのおもて面の主電極と電気的に接続され、主電流が流れる。
【0046】
また、第2配線部材72は、第2脚部72aと第2垂直部72bと第2水平部72cと第2外部接続部72dとを含む。第2配線部材72の第2脚部72aの一端部は、絶縁回路基板20bの配線板23b2上に接合されている。第2垂直部72bは第2脚部72aの他端部に接続されて鉛直上方(+Z方向)に延伸している。第2水平部72cは第2垂直部72bから+X方向に延伸している。第2外部接続部72dは第2水平部72cに接続されて、蓋部61から外部に表出して蓋部61のおもて面に折れ曲がっている。配線板23b2は、半導体チップ41b,42b,43b,44bの裏面の主電極と電気的に接続されている。そのため、第2配線部材72は、半導体チップ41b,42b,43b,44bの裏面の主電極と電気的に接続され、主電流が流れる。
【0047】
また、第3配線部材74もまた、板状のリードフレームである。このような第3配線部材74は、第3脚部74aと第3水平部74cと第3外部接続部74dとを含む。第3配線部材74の第3脚部74aの一端部は、絶縁回路基板20aの配線板23a2上に接合されている。第3水平部74cは第3脚部74aの他端部に接続されて+X方向に延伸している。第3外部接続部74dは第3水平部74cに接続されて、蓋部61から外部に表出して蓋部61のおもて面に折れ曲がっている。配線板23a2は、半導体チップ41a~44aの裏面の主電極と電気的に接続されている。そのため、第3配線部材74は、半導体チップ41a~44aの裏面の主電極と電気的に接続され、主電流が流れる。
【0048】
なお、詳細な図示を省略するものの、制御端子75,76は、配線板23a1,23b1にそれぞれ電気的に接続されている。外部から入力された制御信号は、制御端子75,76、配線板23a1,23b1、ボンディングワイヤ51a,52a,51b,52bを経由して、半導体チップ41a,42a,41b,42bのゲート電極41a1,42a1,41b1,42b1に入力される。
【0049】
第1~第3配線部材71,72,74及び制御端子75,76は、導電性に優れた金属を主成分として構成されている。このような金属は、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金が挙げられる。第1~第3配線部材71,72,74の表面に対しても、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。また、第1~第3配線部材71,72,74と配線板23a3,23a5,23b2,23a2との接合は、半導体チップ41a~44a,41b~44bの接合と同様にはんだ並びに金属焼結体が用いられる。また、第1~第3配線部材71,72,74と配線板23a3,23a5,23b2,23a2との接合は、超音波、レーザを用いて直接接合してもよい。
【0050】
放熱ベース30は、板状であって、平面視で、矩形状を成している。放熱ベース30は、おもて面32a及び裏面32bの四方を長辺30a、短辺30b、長辺30c、短辺30dにより順に囲まれている。放熱ベース30は、おもて面32aの中央部に絶縁回路基板20a,20bが配置される基板領域32a1が設定されている。放熱ベース30は、各角部に平面視で基板領域32a1を挟んで、おもて面32a及び裏面32bを貫通する締結孔31a~31dが順に形成されている。例えば、締結孔31a,31cは、対角線上に基板領域32a1を挟んでいる。
【0051】
このような放熱ベース30は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金が挙げられる。
【0052】
また、放熱ベース30の裏面32bの中央部に放熱領域32b1が設定されている。放熱領域32b1は、おもて面32aの絶縁回路基板20a,20bが配置されている基板領域32a1の裏面に設定されている。このような放熱領域32b1には、相変化型の固形状の放熱部材33が複数設けられている。放熱部材33は、フェイズチェンジサーマルグリースである。すなわち、放熱部材33は、固形状を成しており、加熱されると溶融してペースト状に変化する相変化材料で構成されている。このような材料は、例えば、熱可塑性樹脂を主成分として、バインダーとして相転移材料が添加されている。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂である。放熱部材33は、常温時には固体を成しており、40℃以上、60℃以下で軟化する(ペースト状となる)。
図6の場合には、固形状の放熱部材33が平面視で円形のタブレット状を成し、放熱領域32b1に対して縦横に複数設けられて行列状に配置されている。なお、
図6の放熱部材33の配置は一例である。放熱部材33の平面視の形状は、円形に限らず、例えば、矩形状、三角形状であってよい。または、放熱部材33は、放熱領域32b1の角部には、三角形状のものを配置し、内側には円形状のものといった配置をしてもよい。
【0053】
また、放熱ベース30の裏面32bに環状領域32b2が設定されている。環状領域32b2は、締結孔31a~31d及び放熱領域32b1を取り囲む領域である。環状領域32b2は、
図6の場合、放熱ベース30の裏面32bの外周部に対応し、長辺30a、短辺30b、長辺30c、短辺30dにそれぞれ平行な領域を含み、角部がR形状を成している。放熱ベース30の環状領域32b2には、弾性部材34が設けられている。弾性部材34は、放熱性を有する低硬度の材料を主成分とする。このような材料は、例えば、シリコーンである。弾性部材34の放熱ベース30の裏面32bからの高さは、放熱部材33と略等しい、または、放熱部材33よりも高くてよい。また、このように弾性部材34が設けられる環状領域32b2の幅は、後述するように放熱ベース30の裏面32bと冷却モジュール90の冷却面91とに弾性部材34が挟持されても、弾性部材34が崩れずに維持される長さであればよい。
【0054】
また、
図6の場合、弾性部材34は、環状領域32b2の四隅にそれぞれ設けられている。弾性部材34は、平面視で、L字状を成している。
図6の弾性部材34は、後述するように放熱ベース30の裏面32bと冷却モジュール90の冷却面91との隙間を安定して維持するために、例えば、少なくとも、締結孔31aの長辺30a及び短辺30bに最も接近する箇所まで延伸して形成されている。他の弾性部材34も同様である。
【0055】
次に、半導体モジュール10に含まれる機能を表す等価回路について、
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施の形態の半導体モジュールの機能を表す等価回路図である。半導体モジュール10は、
図7に示されるように、上アーム部A及び下アーム部Bを含むハーフブリッジ回路を構成する。半導体モジュール10の上アーム部Aは、絶縁回路基板20b及び絶縁回路基板20b上に配置されたボンディングワイヤ51b~56b、半導体チップ41b~44b、第2配線部材72を含む。上アーム部Aは、さらに、ボンディングワイヤ57~59、絶縁回路基板20aの配線板23a2及び配線板23a2上に配置された第3配線部材74を含む。
【0056】
半導体モジュール10の下アーム部Bは、絶縁回路基板20a及び絶縁回路基板20a上に配置されたボンディングワイヤ51a~56a、半導体チップ41a~44a、第1配線部材72を含む。下アーム部Bは、さらに、第3配線部材74を含む。そして、2つの絶縁回路基板20a,20b間は、ボンディングワイヤ57~59により接続されている。これにより、上アーム部Aと下アーム部Bとが接続される。こうすることで、半導体モジュール10は、上アーム部A及び下アーム部Bを含むハーフブリッジ回路として機能する。
【0057】
この場合の半導体モジュール10では、電源3(
図1を参照)の正極に接続される接続点Pと半導体チップ41b,42bの入力電極側の接続点C1とを繋ぐ配線が、第2配線部材72に対応する。つまり、第2配線部材72は、ハーフブリッジ回路で正極側の入力端子を構成するP端子である。負荷4(
図1を参照)の端子に接続される接続点Mと半導体チップ41b,42bの出力電極側及び半導体チップ41a,42aの入力電極側の接続点E1C2とを繋ぐ配線が、第3配線部材74に対応する。つまり、第3配線部材74は、ハーフブリッジ回路で出力端子を構成するM端子である。電源3の負極に接続される接続点Nと半導体チップ41a,42aの出力電極側の接続点E2とを繋ぐ配線が、第1配線部材71に対応する。つまり、第1配線部材71は、ハーフブリッジ回路で負極側の入力端子を構成するN端子である。
【0058】
次に、このような半導体モジュール10を含む電力変換装置2の製造方法について
図8を用いて説明する。
図8は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。
図9は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる冷却モジュール取り付け工程を示す図である。
図10は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる溶融工程を示す図である。
【0059】
まず、半導体モジュール10を製造する半導体モジュール製造工程を行う(ステップS1)。電力変換装置2の含まれる半導体モジュール10を製造するに当たり、まず、半導体モジュール10を構成する部品を用意する用意工程を行う(ステップS1a)。このような構成は、例えば、半導体チップ41a~44a,41b~44b、絶縁回路基板20a,20b、放熱ベース30、配線ユニット70、第3配線部材74、ケース60、放熱部材33及び弾性部材34の原料が挙げられる。これらの部品以外にも、半導体モジュール10の製造に必要な部品並びに製造装置が用意される。
【0060】
次いで、半導体モジュール10を組み立てる組み立て工程を行う(ステップS1b)。放熱ベース30のおもて面32aの基板領域32a1にはんだ板を介して絶縁回路基板20a,20bを配置する。絶縁回路基板20aの配線板23a2及び絶縁回路基板20bの配線板23b2に半導体チップ41a~44a,41b~44bをはんだ板を介して配置する。そして、加熱してはんだ板から溶融されたはんだを固化することで、放熱ベース30、絶縁回路基板20a,20b、半導体チップ41a~44a,41b~44bを順にそれぞれ接合させる。ボンディングワイヤ51a~55a,51b~56b,57,58,59により
図5に示されるように配線を行う。また、第1~第3配線部材71,72,74を絶縁回路基板20a,20bの所定箇所に接合する。そして、ケース60を放熱ベース30の外周部に接着剤により取り付ける。なお、ケース60内には、封止部材80を充填する。
【0061】
次いで、このような半導体モジュール10の放熱ベース30の裏面32bに複数の放熱部材33を塗布する放熱部材配置工程を行う(ステップS1c)。放熱ベース30の裏面32bの放熱領域32b1に、固形状の複数の放熱部材33を配置する。この際の配置方法は、例えば、ディスペンス、または、印刷が用いられる。
【0062】
次いで、放熱ベース30の裏面32bの環状領域32b2に弾性部材34を塗布する弾性部材塗布工程を行う(ステップS1d)。放熱ベース30の裏面32bの環状領域32b2の角部にディスペンサにより弾性部材34を塗布する。以上により、
図2~
図6に示した半導体モジュール10が製造される。
【0063】
このようにして製造された半導体モジュール10は、例えば、電力変換装置2として別途組み立てられるところに出荷されてよい。出荷のため、移送される半導体モジュール10の放熱部材33は、ペースト状ではなく、固形状を成しているため、放熱部材33が周囲に付着することがない。このため、周辺を汚すことなく、また、放熱部材33の分量が減少することなく、確実に半導体モジュール10を移送することができる。なお、ステップS1cとステップS1dの順番は同時または互いに逆でもよい。
【0064】
次いで、このようにして製造された半導体モジュール10を冷却モジュールに取り付ける冷却モジュール取り付け工程を行う(ステップS2)。ここでは、冷却モジュール90の冷却面91に半導体モジュール10を配置する。この際、冷却モジュール90の締結孔(図示を省略)に半導体モジュール10の締結孔31a~31dを位置合わせして配置する。なお、冷却モジュール90は、例えば、冷却フィン、冷媒の循環により冷却する冷却装置であってよい。第1の実施の形態の冷却モジュール90は冷却フィンである場合を例に挙げている。冷却モジュール90の冷却面91は略平坦であってよい。
【0065】
半導体モジュール10の締結孔31a~31dにねじ35をそれぞれ取り付けて、ねじ35を冷却モジュール90の締結孔に螺合する。すると、
図9に示されるように、ねじ35の螺合により、放熱部材33が放熱ベース30の裏面32bと冷却モジュール90の冷却面91とにより挟持される。さらに、弾性部材34が放熱ベース30の裏面32bと冷却モジュール90の冷却面91とにより挟持される。このようにして、半導体モジュール10に冷却モジュール90が取り付けられて電力変換装置2が構成される。
【0066】
次いで、放熱部材33を溶融する溶融工程を行う(ステップS3)。放熱部材33は加熱されると固形状からペースト状(液体状)に変化する。この際の加熱は、例えば、ステップS2で構成された電力変換装置2の半導体チップ41a~44a,41b~44bに制御信号を入力して動作させる。半導体チップ41a~44a,41b~44bは通電すると加熱する。半導体チップ41a~44a,41b~44bからの発熱が放熱ベース30から放熱部材33に伝導して、放熱部材33が溶融する。この際、
図10に示されるように、放熱部材33は溶融するものの、冷却モジュール90の冷却面91と放熱ベース30の裏面32bとの隙間は弾性部材34により維持される。このため、当該隙間が狭まることなく、当該隙間に溶融した放熱部材33が広がる。
【0067】
ここで、参考例として、半導体モジュール10の放熱ベース30の裏面32dに弾性部材34を設けない場合について、
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、参考例の電力変換装置の製造方法に含まれる冷却モジュール取り付け工程を示す図である。
図12は、参考例の電力装置の製造方法に含まれる溶融工程を示す図である。
【0068】
参考例の場合も、
図8に示したフローチャートに沿って半導体モジュール100が製造され、電力変換装置2が製造される。但し、参考例の半導体モジュール100では、放熱ベース30の裏面32bに放熱部材33のみを設け、弾性部材34は設けていない。それ以外の構成については、半導体モジュール10と同様である。
【0069】
このような半導体モジュール100を冷却モジュール90に取り付ける冷却モジュール取り付け工程を行う(ステップS2)。冷却モジュール90の冷却面91に半導体モジュール100を配置する。この際、冷却モジュール90の締結孔(図示を省略)に半導体モジュール100の締結孔31a~31dを位置合わせして配置する。そして、半導体モジュール100の締結孔31a~31dを挿通させたねじ35を冷却モジュール90の締結孔に螺合する。すると、
図11に示されるように、ねじ35の螺合により、放熱部材33が放熱ベース30の裏面32bと冷却モジュール90の冷却面91とにより挟持される。このようにして、半導体モジュール100に冷却モジュール90が取り付けられて電力変換装置2が構成される。
【0070】
次いで、放熱部材33を溶融する溶融工程を行う(ステップS3)。この際の溶融のための加熱は、第1の実施の形態の場合と同様である。放熱部材33が溶融すると、
図12に示されるように、溶融された放熱部材33は冷却モジュール90の冷却面91と放熱ベース30の裏面32bとに挟持されて厚さが薄くなる。また、溶融された放熱部材33が冷却モジュール90の冷却面91上に広がる。これにより、放熱ベース30のおもて面32aとねじ35との間に隙間Gが生じてしまう。したがって、ねじ35による半導体モジュール100の冷却モジュール90に対する締め付け強さが低下してしまう。これは、半導体モジュール100の放熱性の低下に繋がり、電力変換装置2の信頼性が低下してしまうおそれがある。
【0071】
上記の半導体モジュール10は、半導体チップ41a~44a,41b~44bと、半導体チップ41a~44a,41b~44bが接合された配線板23a2,23b2をおもて面に含む絶縁回路基板20a,20bと、絶縁回路基板20a,20bがおもて面32aの基板領域32a1に接合され、ねじ35が挿通される締結孔31a~31dが平面視で基板領域32a1を挟んで基板領域32a1の外側に形成された放熱ベース30と、を含む。さらに、放熱ベース30の裏面32bの基板領域32a1の反対側の放熱領域32b1に設けられた相変化型の固形状の放熱部材33と、放熱ベース30の裏面32bの、締結孔31a~31d及び放熱領域32b1を取り囲む環状領域32b2上に設けられた弾性部材34と、を含む。
【0072】
このような半導体モジュール10を冷却モジュール90に配置してねじ35を螺合して取り付ける。この際の冷却モジュール90は、冷却面91を備える。冷却面91は、放熱ベース30の裏面32bに弾性部材34を介して設けられ、締結孔31a~31dを挿通するねじ35により放熱ベース30が締結されることで、放熱ベース30と共に弾性部材34を挟む。放熱ベース30の裏面32bと冷却面91との間であって、弾性部材34の内側に放熱部材33が挟持されている。
【0073】
この場合、放熱部材33が溶融しても、弾性部材34により放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される。このため、放熱ベース30とねじ35との間に隙間が生じず、ねじ35による半導体モジュール10の冷却モジュール90に対する締め付け強さの低下が防止される。また、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持されるため、溶融された放熱部材33は当該隙間に十分に広がる。このため、半導体モジュール10の放熱性の低下が抑制され、電力変換装置2の信頼性の低下が防止される。
【0074】
なお、上記では、半導体モジュール10の放熱ベース30の四隅に締結孔31a~31dがそれぞれ形成されている場合を例に挙げて説明している。締結孔31a~31dは、半導体モジュール10の放熱ベース30の四隅に限らない。例えば、締結孔は、半導体モジュール10の放熱ベース30の短辺30b,30dの中央部に形成してもよい。この場合について、
図13を用いて説明する。
図13は、第1の実施の形態(変形例)の半導体モジュールの裏面図である。
【0075】
図13の半導体モジュール10の放熱ベース30の短辺30b,30dの中央部に締結孔31e,31fが形成されている。なお、図示は省略するものの、冷却モジュール90もまた締結孔31e,31fに対向するように締結孔が形成されている。また、締結孔31e,31fは平面視で基板領域32a1(その反対側の放熱領域32b1)を挟んで放熱ベース30に形成されている。
【0076】
この場合の環状領域32b2もまた、放熱ベース30の裏面32bの締結孔31e,31f及び放熱領域32b1を取り囲んでいればよい。環状領域32b2は、
図13の場合には、
図6の場合と同様に、放熱ベース30の裏面32bの外周部に対応し、長辺30a、短辺30b、長辺30c、短辺30dにそれぞれ平行な領域を含み、角部がR形状を成している。
【0077】
このような場合でも、放熱ベース30の環状領域32b2に設けられた弾性部材34により、放熱部材33を溶融しても、弾性部材34により放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される。このため、放熱ベース30とねじ35との間に隙間が生じず、ねじ35による半導体モジュール10の冷却モジュール90に対する締め付け強さの低下が防止される。また、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持されるため、溶融された放熱部材33は当該隙間に十分に広がる。このため、半導体モジュール10の放熱性の低下が抑制され、電力変換装置2の信頼性の低下が防止される。
【0078】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態以降では、放熱ベース30の環状領域32b2に形成される弾性部材34の様々な形態について説明する。なお、第2の実施の形態以降の弾性部材34の様々な形態は、
図6の場合に限らず、
図13の場合にも適用可能である。
【0079】
まず、第2の実施の形態では、弾性部材34を放熱ベース30の各辺に沿って設けた場合について
図14を用いて説明する。
図14は、第2の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。
【0080】
半導体モジュール10aでは、弾性部材34は、放熱ベース30の環状領域32b2の長辺30a、短辺30b、長辺30c、短辺30dに平行な領域の中心部を含んでそれぞれ設けられている。
【0081】
このように弾性部材34が設けられることで、半導体モジュール10aを冷却モジュール90に配置してねじ35で螺合して取り付けて、放熱部材33を溶融しても、弾性部材34により放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される。このため、ねじ35による半導体モジュール10aの冷却モジュール90に対する締め付け強さの低下が防止される。また、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持されるため、溶融された放熱部材33は当該隙間に十分に広がる。このため、半導体モジュール10aの放熱性の低下が抑制され、電力変換装置2の信頼性の低下が防止される。
【0082】
この場合の弾性部材34は、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される長さであればよい。なお、この際の弾性部材34の長さとは、環状領域32b2の長辺30a,30cに平行な領域に形成される場合には、X方向の長さである。環状領域32b2の短辺30b,30dに平行な領域に形成される場合には、Y方向の長さである。弾性部材34が短すぎると放熱ベース30を支持できずに、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間を維持できなくなるおそれがある。
【0083】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態について、
図15を用いて説明する。
図15は、第3の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。半導体モジュール10bでは、弾性部材34は、放熱ベース30の環状領域32b2の短辺30dの両側の角部領域と短辺30dに対向する短辺30bの中央を含む領域との三か所にそれぞれ設けられている。
【0084】
このように弾性部材34が設けられることで、半導体モジュール10bを冷却モジュール90に配置してねじ35で螺合して取り付けて、放熱部材33を溶融しても、弾性部材34により放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される。このため、ねじ35による半導体モジュール10bの冷却モジュール90に対する締め付け強さの低下が防止される。また、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持されるため、溶融された放熱部材33は当該隙間に十分に広がる。このため、半導体モジュール10bの放熱性の低下が抑制され、電力変換装置2の信頼性の低下が防止される。
【0085】
この場合の弾性部材34もまた、第2の実施の形態と同様に、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される長さであればよい。弾性部材34が短すぎると放熱ベース30の裏面32bと冷却モジュール90の冷却面91とに挟持されると崩れてしまうおそれがある。
【0086】
第2,第3の実施の形態を踏まえると、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持されるように環状領域32b2に弾性部材34が環状に不連続に、適切な長さで設けられればよい。第2,第3の実施の形態の弾性部材34の配置箇所、個数、並びに、弾性部材34の長さは一例である。
【0087】
例えば、
図14において、弾性部材34を、放熱ベース30の環状領域32b2の長辺30a、短辺30b、長辺30c、短辺30dに平行な領域にそれぞれ複数配置してもよい。それぞれの弾性部材34の長さが異なっていてもよい。または、長めの弾性部材34を、放熱ベース30の環状領域32b2の長辺30a,30c(または、短辺30b,30d)に平行な領域のみにそれぞれ配置してもよい。
【0088】
また、弾性部材34は、
図15の場合以外でも、放熱ベース30の環状領域32b2の隣り合う一対の角部と一対の角部の間の長辺30a,30c、短辺30bのいずれかの放熱領域32b1を挟んで対向するに長辺30c,30a、短辺30dに沿ってそれぞれ3か所に形成されてよい。または、
図15において、弾性部材34は、必ずしも、角部に形成しなくてもよい。例えば、弾性部材34を長辺30aに平行な環状領域32b2の両端部、長辺30cに平行な環状領域32b2の中央部にそれぞれ形成してもよい。
【0089】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態について、
図16及び
図17を用いて説明する。
図16は、第4の実施の形態の半導体モジュールの裏面図である。
図17は、第4の実施の形態(変形例)の半導体モジュールの裏面図である。半導体モジュール10cでは、弾性部材34は、放熱ベース30の環状領域32b2に沿って連続して環状に設けられている。
【0090】
このように弾性部材34が設けられることで、半導体モジュール10cを冷却モジュール90に配置してねじ35で螺合して取り付けて、放熱部材33を溶融しても、弾性部材34により放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持される。このため、ねじ35による半導体モジュール10cの冷却モジュール90に対する締め付け強さの低下が防止される。また、放熱ベース30と冷却モジュール90との隙間が維持されると共に、この隙間の周りが弾性部材34により囲まれるため、溶融された放熱部材33は当該隙間に十分に広がりつつ、当該隙間から外側に広がることがない。このため、半導体モジュール10cの周囲を汚すことがなく、放熱部材33の体積が減少することもない。そして、半導体モジュール10cの放熱性の低下が抑制され、電力変換装置2の信頼性の低下が防止される。
【0091】
このように溶融した放熱部材33は放熱ベース30と冷却モジュール90と弾性部材34との間に閉じられることになる。溶融した放熱部材33は、加熱され続けると発泡しガスを出すことがある。放熱部材33が放熱ベース30と冷却モジュール90と弾性部材34との間に閉じられていると、ガスが内部に溜まり、暴発してしまうおそれがある。そこで、
図17に示されるように、放熱ベース30の弾性部材34に切断部分34aが複数形成されている。切断部分34aは、弾性部材34の内側から外側に通じている。このため、放熱ベース30と冷却モジュール90と弾性部材34との間に閉じられた放熱部材33から放出されたガスは切断部分34aから弾性部材34の外側に出力される。したがって、放熱ベース30と冷却モジュール90と弾性部材34との間にガスは溜まらず、暴発が防止される。切断部分34aは、ガスが放出されればよく、必ずしも、
図17のような位地、幅でなくてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 電力変換システム
2 電力変換装置
2a 電圧平滑部
2b インバータ部
2c 冷却部
3 電源
4 負荷
10,10a 半導体モジュール
20a,20b 絶縁回路基板
21a,21b 絶縁板
22a,22b 金属板
23a1~23a5,23b1~23b5 配線板
30 放熱ベース
30a,30c 長辺
30b,30d 短辺
31a~31f 締結孔
32a おもて面
32a1 基板領域
32b 裏面
32b1 放熱領域
32b2 環状領域
33 放熱部材
34 弾性部材
34a 切断部分
35 ねじ
41a~44a,41b~44b 半導体チップ
41a1,42a1,41b1,42b1 制御電極
51a~55a,51b~56b,57,58,59 ボンディングワイヤ
60 ケース
61 蓋部
61a,61b,61c 端子台
61a1,61b1,61c1 ねじ孔
62a~62d 側壁部
63,64 端子口
65 固定孔
70 配線ユニット
71 第1配線部材
71a 第1脚部
71b 第1垂直部
71d 第1外部接続部
72 第2配線部材
72a 第2脚部
72b 第2垂直部
72c 第2水平部
72d 第2外部接続部
73 配線保持部
74 第3配線部材
74a 第3脚部
74c 第3水平部
74d 第3外部接続部
75,76 制御端子
80 封止部材
90 冷却モジュール
91 冷却面