IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガス発生器 図1
  • 特開-ガス発生器 図2
  • 特開-ガス発生器 図3
  • 特開-ガス発生器 図4
  • 特開-ガス発生器 図5
  • 特開-ガス発生器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031681
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135382
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大空
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD15
3D054DD17
3D054DD28
3D054FF16
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】従来よりも、ハウジング内のガス発生剤の吸湿による劣化を抑制可能であるとともに、部品点数を削減可能で組立が容易なガス発生器を得る。
【解決手段】ガス発生器100は、ハウジング10と、ハウジング10の一方の開口端に取付けられているホルダ20と、ハウジング10の他方の開口端を閉塞するようにハウジング10の他端部に取付けられている閉塞部材12と、ホルダ20の一部および点火器50の一部を覆う側面カバー51と、を含む。側面カバー51は、ハウジング10の内壁と側面部22とに挟み込まれた状態で、溶接固定部62において、端部がハウジング10およびホルダ20に溶接固定されている。溶接固定部62は、側面カバー51に覆われた側面部22に対応する位置において、ハウジング10の外部からハウジング10の周方向に沿って溶接加工を行うことにより、ハウジング10の周方向に沿って環状に形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、前記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室と、を内部に含んでいる長尺円筒状のハウジングと、
点火薬を内包しており、前記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、前記作動ガス生成室内の前記ガス発生剤を着火燃焼させることが可能なガス発生剤点火手段と、
前記ガス発生剤点火手段を前記ハウジングの内部側で保持する保持部を有した略筒状の第1形成部と、前記第1形成部の前記作動ガス生成室側と反対側において前記第1形成部に一体的に設けられ、前記ガス発生剤点火手段の保持位置と反対側において、前記ガス発生剤点火手段に通電するためのコネクタを嵌合可能な嵌合部を有した略筒状の第2形成部とを有し、前記ハウジングの軸方向の一端部に固定されているホルダと、
筒状部を有した有底筒状部材であって、前記ガス発生剤点火手段の少なくとも前記作動ガス生成室側の部分と、前記第1形成部の側面の少なくとも一部とを覆うとともに、前記筒状部が前記ハウジングの内壁と前記第1形成部の側面とに挟まれるように設けられた側面カバーと、
を備え、
前記ハウジングのうち前記側面カバーに覆われた前記第1形成部の側面に対応する位置の少なくとも一部分と、前記側面カバーのうち前記一部分に対応する部分と、前記ホルダの側面のうち前記一部分に対応する部分と、が、前記ハウジングの周方向に沿って環状に溶接固定されていることを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
前記側面カバーの前記ホルダ側の端部の位置に沿って、前記溶接固定がなされていることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記側面カバーの前記作動ガス生成室側の端部には、
底面部と、
前記底面部に接続され、前記ハウジングの軸方向の他端部側に向かって縮径するテーパー部と、
が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、長尺円筒状の外形を有するいわゆるシリンダ型のガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ型のガス発生器における長尺円筒状のハウジングは、少なくとも一方の端部が点火部を有したホルダで閉塞される構成となることが一般的である(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6149193号明細書
【特許文献2】米国特許第9455519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、ハウジング内のガス発生剤が充填される内部空間と、ハウジング外部との間に、空気が通過する経路が多数存在するため、ハウジング内のガス発生剤の吸湿による劣化が懸念される。また、上記特許文献2においては、ハウジング内のガス発生剤の吸湿を抑制すべく、Oリングまたはシール材などを用いている。しかしながら、Oリングまたはシール材などの部材は、上述の空気が通過する経路ごとに設ける必要があることが多く、部品点数が増加しやすくなる。このような部品点数の増加は、ガス発生器の組立工程を煩雑なものにしてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも、ハウジング内のガス発生剤の吸湿による劣化を抑制可能であるとともに、部品点数を削減可能で組立が容易なガス発生器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明のガス発生器は、ガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、前記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室と、を内部に含んでいる長尺円筒状のハウジングと、点火薬を内包しており、前記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、前記作動ガス生成室内の前記ガス発生剤を着火燃焼させることが可能なガス発生剤点火手段と、前記ガス発生剤点火手段を前記ハウジングの内部側で保持する保持部を有した略筒状の第1形成部と、前記第1形成部の前記作動ガス生成室側と反対側において前記第1形成部に一体的に設けられ、前記ガス発生剤点火手段の保持位置と反対側において、前記ガス発生剤点火手段に通電するためのコネクタを嵌合可能な嵌合部を有した略筒状の第2形成部とを有し、前記ハウジングの軸方向の一端部に固定されているホルダと、筒状部を有した有底筒状部材であって、前記ガス発生剤点火手段の少なくとも前記作動ガス生成室側の部分と、前記第1形成部の側面の少なくとも一部とを覆うとともに、前記筒状部が前記ハウジングの内壁と前記第1形成部の側面とに挟まれるように設けられた側面カバーと、を備え、前記ハウジングのうち前記側面カバーに覆われた前記第1形成部の側面に対応する位置の少なくとも一部分と、前記側面カバーのうち前記一部分に対応する部分と、前記ホルダの側面のうち前記一部分に対応する部分と、が、前記ハウジングの周方向に沿って環状に溶接固定されていることを特徴とする。
【0007】
(2) 上記(1)のガス発生器においては、前記側面カバーの前記ホルダ側の端部の位置に沿って、前記溶接固定がなされていることが好ましい。
【0008】
(3) 上記(1)又は(2)のガス発生器においては、前記側面カバーの前記作動ガス生成室側の端部には、底面部と、前記底面部に接続され、前記ハウジングの軸方向の他端部側に向かって縮径するテーパー部と、が形成されていることが好ましい。
【0009】
上記各構成によれば、従来よりも、ハウジング内のガス発生剤の吸湿を抑制可能であるとともに、組立が容易なガス発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一部を断面で表した本発明の実施形態に係るガス発生器の内部構造を示す模式図である。
図2図1の一部拡大断面図である。
図3図2の溶接固定前の状態を示した図である。
図4図1の側面カバーの一例を示した断面図である。
図5図1の側面カバーの一例を示した断面図である。
図6図1の側面カバーの一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図3を参照して、本発明の実施の形態に係るシリンダ型のガス発生器の内部構造について説明する。
【0012】
(ガス発生器100の構成)
図1に示したように、ガス発生器100は、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング10と、ハウジング10の一方の開口端に取付けられているホルダ20と、ハウジング10の他方の開口端を閉塞するようにハウジング10の他端部に取付けられている閉塞部材12と、ホルダ20の一部および点火器50の一部を覆う側面カバー51と、を含んでいる。
【0013】
ハウジング10は、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材12は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面に溶接固定部60を有している。この溶接固定部60は、ハウジング10の一端部の外周部に環状に溶接固定されることにより、閉塞部材12の周面に周方向に沿って環状に形成されている。また、ハウジング10の閉塞部材12が取付けられた側の端部近傍の周壁には、ガス噴出口11が設けられている。このガス噴出口11は、ガス発生器100の内部において発生したガスを外部に噴出するための孔であり、ハウジング10の周方向及び軸方向に沿って複数個設けられている。
【0014】
閉塞部材12は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、所定の厚みを有する略円盤状の部材からなる。
【0015】
ホルダ20は、図1および図2に示したように、点火器50をハウジング10の内部側で保持する保持部26を有した第1形成部20aと、点火器50の保持位置と反対側において、点火器50に通電するためのコネクタ(図示せず)と嵌合可能な嵌合部21を有した第2形成部20bとを有し、ハウジング10における点火室19側の一端部に固定されている。また、ホルダ20は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製の略筒状の部材である。
【0016】
また、図3に示したように、溶接固定を行う前において、第1形成部20aは、ハウジング10の内壁とともに側面カバー51の点火器50側の端部を挟み込むための側面部22と、溶接固定を行う前のハウジング10の点火器50側の端部の位置決め、および、側面カバー51の点火器50側の端部の位置決めを行うために用いられる位置決め部23と、を有している。側面部22は、第2形成部20bの外径よりも小さい外径となるように形成されている。また、位置決め部23は、溶接固定を行う前において、側面部22と、第2形成部20bの側面部24とともに階段形状を形成する部位でもある。また、第2形成部20bは、第1形成部20aの作動ガス生成室17側と反対側において、第1形成部20aに一体的に設けられている。
【0017】
側面カバー51は、図1図3に示したように、底部51aと、底部51aに一端が接続固定されているテーパー部51bと、テーパー部51bの他端に一端が接続固定されている第1筒状部51cと、第1筒状部51cの他端に一端が接続固定されている点火器当接部51dと、点火器当接部51dの他端に一端が接続固定されている第2筒状部51eと、を備えている。この側面カバー51は、作動時において底部51aが破断され、点火器50の先端部から放出される火炎をテーパー部51bによって集約するとともに、当該火炎の方向を作動ガス生成室17側に向けることができる指向性部材である。なお、底部51aには、脆弱部(外部表面に設けた凹部など)を形成しておき、作動時に底部51aが破断しやすくなるようにしておいてもよい。
【0018】
また、作動時において底部51aが破断するように、底部51aの径の大きさ、および、テーパー部51bの第1筒状部51cの軸方向に対する角度は、点火器50の出力またはサイズ、側面カバー51に使用される材料(ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等)などを考慮して、適宜変更可能である。たとえば、底部51aの径の大きさ、および、テーパー部51bの第1筒状部51cの軸方向に対する角度は、図4図6に示した例が挙げられる。以下、図4図6について説明するが、下二桁が同じ番号の符号は、同様のものであるので、説明を省略することがある。また、特に説明しない部分に関しては、本実施形態と同様であるので、説明を省略することがある。
【0019】
図4では、テーパー部151bの第1筒状部151cの軸方向に対する角度は25°であり、底部151aの径(ΦD)は、テーパー部151bの第1筒状部151cの軸方向に対する角度、第1筒状部151cの径、第1筒状部151cから底部151aまでの距離、点火器の出力またはサイズ、側面カバー151に使用される材料など、様々な要因によって決定することができる。たとえば、底部151aの径(ΦD)は、4mm~5mmのいずれかの大きさとなるように形成してもよい。
【0020】
また、図5では、テーパー部251bの第1筒状部251cの軸方向に対する角度は45°であり、図6では、テーパー部351bの第1筒状部351cの軸方向に対する角度は60°である。図5および図6に示した側面カバー251、351の底部251a、351aの径は、図4に示した側面カバー151の場合と同様、テーパー部の第1筒状部の軸方向に対する角度、第1筒状部の径、第1筒状部から底部までの距離、点火器の出力またはサイズ、側面カバーに使用される材料など、様々な要因によって決定することができる。
【0021】
また、図4図6とは、別に、底部51aの径の大きさを一定のものとして、点火器50の出力の大きさ、側面カバー51に使用される材料など、様々な要因によって、テーパー部51bの第1筒状部51cの軸方向に対する角度を適宜変更するものとしてもよい。
【0022】
テーパー部51bは、作動ガス生成室17側からフィルタ室18側(ハウジング10の軸方向の他端部側)へ向かって縮径するように形成された部位である。
【0023】
第1筒状部51cは、火炎の方向を作動ガス生成室17側に向けることができる指向性部位であって、点火器50のスクイブカップ50aの外径と同径またはほぼ同径の内径を有した筒状の部位である。
【0024】
点火器当接部51dは、図1および図2に示したように、点火器50に当接し、ホルダ20とともに挟み込んで固定するための部位である。
【0025】
第2筒状部51eは、図1および図2に示したように、筒状の部位であって、ハウジング10の内壁と側面部22とに挟み込まれた状態で、溶接固定部62において、端部がハウジング10およびホルダ20に溶接固定されている。この溶接固定部62は、側面カバー51に覆われた側面部22に対応する位置(本実施形態では、側面部22のホルダ20側の端部)において、図3の状態から部位62Aにおいてハウジング10の周方向に沿って溶接加工を行うことにより、図2に示したように、ハウジング10の周方向に沿って環状に形成されるものである。この溶接固定部62によって、作動ガス生成室17内と外部との空気の通過経路は、従来よりも制限される。なお、第2筒状部51eの端部は、図3に示したように、溶接固定を行う前において、位置決め部23に当接する部位である。
【0026】
ガス発生剤30の点火手段としての点火器50は、図1に示すように、ハウジング10の軸方向の一端部(すなわち、ホルダ20寄りの部分)に配置されている。なお、点火器50及び点火器50を固定するホルダ20は、後述する粒状のガス発生剤30を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段としての機能を有している。
【0027】
図1および図2に示すように、点火器50は、第1形成部20aの保持部26に内挿され、側面カバー51によってホルダ20側に固定されている。より詳細には、上述したように、側面カバー51の端部がハウジング10およびホルダ20に溶接固定されることによって、側面カバー51の点火器当接部51dとホルダ20(特に保持部26)とで挟み込んだ状態で固定している。
【0028】
点火器50は、より具体的には、一対の端子ピン52を挿通かつ保持する基枠と、基枠上に取付けられたスクイブカップ50aとを備えており、スクイブカップ50a内に挿入された端子ピン52の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むように又はこの抵抗体に接するようにスクイブカップ50a内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、スクイブカップ50a内には、点火薬だけでなくさらに伝火薬を充填してもよいが、点火薬と同時に配置され得る伝火薬としては、ホウ素/硝酸カリウム等に代表される金属/酸化剤からなる組成物、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、又は、ホウ素/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。スクイブカップは、一般に金属製又は樹脂製である。
【0029】
衝突を検知した際には、端子ピン52を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップ50aを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器50が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0030】
図1に示すように、ハウジング10の内部空間には、ガス発生剤30が装填されている作動ガス生成室17と、フィルタ40が収容されているフィルタ室18と、巻きバネ35が収容されている点火室19と、が設けられている。作動ガス生成室17とフィルタ室18とは、仕切り部材31によって仕切られている。
【0031】
後述する仕切り部材31の作動ガス生成室17側には、点火器50の作動によらずに自動発火するオートイグニッション(AI)機能を有するAI剤32と、ガス発生剤30と、が配設されている。
【0032】
ガス発生剤30は、図1に示したように、巻きバネ35とカバー部材33との間に配設され、点火器50によって点火されることによって生じた火炎によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる一体成型物である。また、ガス発生剤30は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成型体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば、塩基性硝酸銅や塩基性炭酸銅等の塩基性金属水酸化物、過塩素酸アンモニウム又は過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、又は燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0033】
巻きバネ35は、図1に示したように、点火室19において、側面カバー51の外周と対向するハウジング10内壁に沿って、外観全体として筒形状に相似するように、らせん状に巻き回して形成されている。また、巻きバネ35は、一端部が側面カバー51の外表面に当接しているとともに、他端部がガス発生剤30に当接して、ガス発生剤30に弾性力を付勢するように設けられている。この付勢により、ガス発生剤30は、ハウジング10内において、巻きバネ35とカバー部材33とに挟まれるようにして固定される。
【0034】
AI機能を有するAI剤32は、ガス発生剤30よりも低い温度で自動発火するので、ガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置などが装備された車両等において万が一火災等が発生した場合、外部から加熱されることによるガス発生器100の異常動作の誘発を防ぐことができる。これにより、ガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置などが装備された車両等において万が一火災等が発生した場合、AI剤32の自動発火より先にガス発生剤30が燃焼してしまうことをより防止することができる。なお、カバー部材33は、金属または合金などからなる円盤状の部材であって、AI剤32とガス発生剤30とが接触しないように仕切っているものであれば、どのようなものであってもよく、たとえば、複数の穴が設けられていてもよいし、穴がないものでもよい。
【0035】
仕切り部材31は、図1および図2に示したように、略お椀形状のものであって、図示しないが、底部中央付近には所定の圧力が加わると破断しやすいように切り込み線(スコア)が設けられている。また、仕切り部材31は、溶接固定部61において、ハウジング10の周方向に側面部が環状に溶接固定されている。
【0036】
図1に示すように、フィルタ室18は、上述のハウジング10の周壁に設けられたガス噴出口11を介して外部と通じている。また、フィルタ室18内には、中心に略円柱状の空間40aを有した円筒状の部材からなるフィルタ40が収容されている。また、このように円筒状の部材からなるフィルタ40を利用すれば、作動時においてフィルタ室18を流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的なガスの流動が可能である。フィルタ40は、たとえばステンレス鋼或いは鉄鋼等の金属からなる線材、又は、網材を巻き回したもの或いはプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。具体的には、メリヤス編みの金網、平織りの金網、又はクリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。フィルタ40は、作動ガス生成室17にて発生したガスがこのフィルタ40中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ等を除去する除去手段としても機能する。ここで、フィルタ40の一変形例として、金属からなる略円筒状又はすり鉢状の部品を組み合わせて形成した迷路状流路を有したフィルタを使用してもよい。これにより、作動ガスの進路を様々な方向に変更させることができるので、ガスの冷却及びスラグの除去を行うことが可能である。
【0037】
なお、第2形成部20bには、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。この雌型コネクタは、ガス発生器100とは別途設けられる衝突検知手段からの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される部位である。雌型コネクタには、リテーナ(図示せず)が取付けられる。このリテーナは、ガス発生器100の搬送時等において静電放電等によってシリンダ型のガス発生器100が誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン52への接触が解除されるものである。
【0038】
次に、以上において説明したガス発生器100の作動時における動作について説明する。本実施の形態におけるガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器50が作動する。点火器50が作動すると、点火薬の燃焼によって点火器50内の圧力が上昇し、これによって点火器50のスクイブカップ50a先端が破裂し、火炎が点火器50のスクイブカップ50a先端から側面カバー51の内部へと流出する。
【0039】
このようにして流れ込んだ火炎を側面カバー51のテーパー部51bにより集約させつつ、側面カバー51の底部51aを開裂させて、さらに収容器34内におけるガス発生剤30を着火して燃焼させ、多量のガスを発生させる。このとき、当該火炎が集約しているので、作動ガス生成室17の奥側(フィルタ室18側)へ火炎が噴出しやすくなっている。このガス発生剤30の燃焼により、作動ガス生成室17内の圧力が上昇し、これによって仕切り部材31を開裂させて、該ガスはフィルタ室18へと流れ込む。なお、略お椀形状の仕切り部材31の折り返し部分によって、フィルタ40とハウジング10の内壁との間にガスが流入しないようにすることができるので、該ガスがフィルタ40を通過せずに外部に放出されてしまうことを防止している。このようにして、フィルタ室18へ流れ込んだガスは、フィルタ40を経由して所定の温度にまで冷却される。冷却された多量のガスは、ガス噴出口11からガス発生器100の外部へと噴出される。ガス噴出口11から噴出されたガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張・展開させる。
【0040】
(ガス発生器100の主な特徴)
本実施の形態によれば、作業が容易である溶接固定部62の形成によって、作動ガス生成室17内と外部との空気の通過経路は、従来よりも制限される。したがって、従来よりも、ハウジング内のガス発生剤30の吸湿による劣化を抑制可能であるとともに、組立が容易なガス発生器100を提供できる。
【0041】
また、Oリングまたはシール材などの部材を必要としないので、従来よりも部品点数の削減が可能である。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
上記実施形態においては、側面カバー51の端部付近を溶接固定し、溶接固定部62を形成したが、これに限られない。たとえば、側面カバー51の第2筒状部51eの途中部分と、ハウジング10およびホルダ20の側面部22とを溶接固定するようにしてもよい。
【0044】
また、側面カバー51の第2筒状部51eが位置決め部23と接触するほどの長さでなくてもよい。ただし、この場合、側面カバー51の第2筒状部51eの端部または途中部分が、確実にハウジング10およびホルダ20の側面部22と、に溶接固定されていることが必要である。
【符号の説明】
【0045】
10 ハウジング
11 ガス噴出口
12 閉塞部材
17 作動ガス生成室
18 フィルタ室
19 点火室
20 ホルダ
20a 第1形成部
20b 第2形成部
21 嵌合部
22 側面部
23 位置決め部
24 側面部
26 保持部
30 ガス発生剤
31 仕切り部材
32 AI剤
33 カバー部材
34 収容器
35 巻きバネ
40 フィルタ
40a 空間
50 点火器
50a スクイブカップ
51、151、251、351 側面カバー
51a、151a、251a、351a 底部
51b、151b、251b、351b テーパー部
51c、151c、251c、351c 第1筒状部
51d、151d、251d、351d 点火器当接部
51e、151e、251e、351e 第2筒状部
52 端子ピン
60、61、62 溶接固定部
100 ガス発生器
図1
図2
図3
図4
図5
図6