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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031684
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】リチウム金属二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240229BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240229BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240229BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/134
H01M10/0562
H01M4/40
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135386
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】古田 照実
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029BJ13
5H029HJ20
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA09
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】負極層と固体電解質層との間に中間層を有するリチウム金属二次電池において、中間層の積層方向に沿った外周面へのリチウム金属の析出を抑制できるリチウム金属二次電池を提供すること。
【解決手段】リチウム金属層を含む負極層と、中間層と、固体電解質層と、正極層と、がこの順に積層されたリチウム金属二次電池において、中間層は、積層方向に沿った外周面の少なくとも一面が、保護層と当接して被覆され、保護層は、電子伝導性を有さずかつイオン伝導性を有する、リチウム金属二次電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属層を含む負極層と、中間層と、固体電解質層と、正極層と、がこの順に積層されたリチウム金属二次電池において、
前記中間層は、積層方向に沿った外周面の少なくとも一面が、保護層と当接して被覆され、
前記保護層は、電子伝導性を有さずかつイオン伝導性を有する、リチウム金属二次電池。
【請求項2】
前記保護層のイオン伝導率は、前記固体電解質層のイオン伝導率以上である、請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項3】
前記保護層の前記積層方向に直交する面のうち、前記負極層側の面の全ては、絶縁層と当接して被覆される、請求項1又は2に記載のリチウム金属二次電池。
【請求項4】
前記保護層は、前記固体電解質層と一体として形成される、請求項1又は2に記載のリチウム金属二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。二次電池としては、エネルギー密度が高いリチウム金属電池が注目されている。
【0003】
リチウム金属二次電池としては、例えば、負極集電体を有する負極と、正極と、固体電解質層と、を備えるリチウム金属二次電池が知られている。リチウム金属電池は、充放電を行うにつれて、負極層にデンドライトが析出することで電池性能が低下する恐れがある。
【0004】
特許文献1には、金属リチウムが固体電解質の外側に向かって延伸するように析出し、当該延伸に起因して負極の端面と電解質層の端部との間において応力集中が生じ、短絡の要因となる固体電解質のクラックをもたらすことを抑制し得る構成として、負極リチウム金属層よりも外側に亘って延在する外縁部としての電解質外縁部を設け、電解質外縁部は正極層側に突出するように構成することが開示されている。また、特許文献1には、固体電解質層と負極集電体の間に固体電解質層よりも金属リチウムに対する親和性が高い層(中間層)を設けても良いことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、正極層と固体電解質層との間に中間層を介在させることで、固体電解質層の正極層側の界面での高抵抗層の形成を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-062572号公報
【特許文献2】特開2011-044368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、負極層と固体電解質層との間に中間層を設ける場合に、例えば図4に示すように、中間層5の積層方向Lに沿った外周面にリチウム金属32aが析出する恐れがある。上記リチウム金属32aの析出により、充放電効率の悪化、抵抗の増加、リチウム金属の不均一な析出による不安定化、及び片当たりによる電極の変形等の恐れがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、負極層と固体電解質層との間に中間層を有するリチウム金属二次電池において、中間層の積層方向に沿った外周面へのリチウム金属の析出を抑制できるリチウム金属二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本開示は、リチウム金属層を含む負極層と、中間層と、固体電解質層と、正極層と、がこの順に積層されたリチウム金属二次電池において、前記中間層は、積層方向に沿った外周面の少なくとも一面が、保護層と当接して被覆され、前記保護層は、電子伝導性を有さずかつイオン伝導性を有する、リチウム金属二次電池に関する。
【0010】
(1)によれば、負極層と固体電解質層との間に中間層を有するリチウム金属二次電池において、中間層の積層方向に沿った外周面へのリチウム金属の析出を抑制できるリチウム金属二次電池を提供できる。
【0011】
(2) 前記保護層は、前記固体電解質層のイオン伝導率以上のイオン伝導率を有する、(1)に記載のリチウム金属二次電池。
【0012】
(2)によれば、中間層の積層方向に沿った外周面へのリチウム金属の析出をより好ましく抑制できるリチウム金属二次電池を提供できる。
【0013】
(3) 前記保護層の前記積層方向に直交する面のうち、前記負極層側の面の全ては、絶縁層と当接して被覆される、(1)又は(2)に記載のリチウム金属二次電池。
【0014】
(3)によれば、保護層の負極層側の面にリチウム金属が析出することを抑制できる。
【0015】
(4) 前記保護層は、前記固体電解質層と一体として形成される、(1)又は(2)に記載のリチウム金属二次電池。
【0016】
(4)によれば、中間層の厚みが薄い場合であっても、中間層の積層方向に沿った外周面へのリチウム金属の析出をより好ましく抑制できるリチウム金属二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るリチウム金属二次電池の構成を示す断面図である。
図2】第2実施形態に係るリチウム金属二次電池の構成を示す断面図である。
図3】第3実施形態に係るリチウム金属二次電池の構成を示す断面図である。
図4】従来技術に係るリチウム金属二次電池の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
本実施形態に係るリチウム金属二次電池1は、固体電解質層4を有する固体電池である。リチウム金属二次電池は、図1に示すように、正極集電体21及び固体活物質層22を有する正極層と、固体電解質層4と、中間層5と、負極集電体31及びリチウム金属層32を有する負極層と、がこの順に積層されている。中間層5の積層方向Lに沿った外周面の少なくとも一面は、保護層61及び62と当接して被覆される。
【0019】
(正極層)
正極集電体21は、正極層の集電を行う機能を有するものであれば、特に限定されず、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル、鉄及びチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウム、アルミニウム合金及びステンレスが好ましい。また、正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状等を挙げることができる。
【0020】
正極活物質層22は、少なくとも正極活物質を含有する層である。正極活物質層22に含有される正極活物質としては、一般的な固体電池の正極層に用いられるものと同様とすることができ、特に限定されない。例えば、リチウムイオン電池であれば、リチウムを含有する層状活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を挙げることができる。正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li+xMn-x-yMyO(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。
【0021】
正極活物質層22は、積層面において中間層5と同等の面積(例えば、正極活物質層22の面積は、中間層5の面積に対して最大で100%の面積であってもよく、90%~100%の面積であってもよく、80%~90%の面積であってもよい)を有することが好ましい。これにより、リチウム金属二次電池1のエネルギー密度を向上させることができる。なお、後述する中間層5の外周面に対するリチウム金属析出防止の観点から、積層面における正極活物質層22の面積を、中間層5よりも小さくすることで、Liイオンを拡散しないようにすることも考えられる。しかし、上記の構成ではリチウム金属の析出を完全に防止することができない上に、リチウム金属二次電池1のエネルギー密度が低下するというデメリットがある。従って、正極活物質層22は積層面において中間層5と同等の面積を有するように構成して、かつ後述する中間層5の積層方向Lに沿った外周面の少なくとも一面を保護層61及び62と当接して被覆するように構成することが好ましい。
【0022】
正極活物質層22は、電荷移動媒体伝導性を向上させる観点から、任意に固体電解質を含んでいてもよい。また、バインダー、導電助剤等を含んでいてもよい。これらの物質としては、一般に固体電池に使用されるものを用いることができる。
【0023】
(負極層)
負極集電体31は、負極層の集電を行う機能を有するものであれば、特に限定されず、負極集電体の材料としては、例えばニッケル、銅、及びステンレス等を挙げることができる。また、負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状等を挙げることができる。
【0024】
リチウム金属層32は、リチウム金属、又はリチウム合金を単独で、又は混合して形成される層である。リチウム金属と合金を形成できる元素としては、例えば、Al、Mg、K、Na、Ca、Sr、Ba、Si、Ge、Sb、Pb、Sn、In、Zn等が挙げられる。
【0025】
(固体電解質層)
固体電解質層4は、少なくとも固体電解質材料を含有する層である。固体電解質層に含まれる固体電解質材料を介して、正極活物質及び負極活物質の間の電荷移動媒体伝導を行うことができる。
【0026】
固体電解質材料としては、電荷移動媒体伝導性、即ちイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質材料等を挙げることができる。
【0027】
硫化物固体電解質材料としては、例えばリチウムイオン電池であれば、LiS-P、LiS-P-LiI等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiS及びPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料を意味する。
【0028】
酸化物固体電解質材料としては、例えばリチウムイオン電池であれば、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等を挙げることができる。NASICON型酸化物としては、例えば、Li、Al、Ti、P及びOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)を挙げることができる。ガーネット型酸化物としては、例えば、Li、La、Zr及びOを含有する酸化物(例えばLiLaZr12)を挙げることができる。ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、Li、La、Ti及びOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO)を挙げることができる。
【0029】
固体電解質層4は、固体電解質材料以外にバインダーを含んでいてもよい。
【0030】
(中間層)
中間層5は、リチウム金属層32と固体電解質層4との間に積層される層である。リチウム金属二次電池1が仮に中間層5を有しない場合、充放電を繰り返し行うにつれて、特に充電時に、リチウム金属層32と固体電解質層4との界面にデンドライトと呼ばれる針状のリチウムの結晶が析出する。一度デンドライトが析出すると、その箇所の電子伝導性が高くなることから、不均一にデンドライトが析出する。この結果として、充放電を繰り返すリチウム金属層32が多孔化し、界面密着性が低下することで電池性能が低下する恐れがある。そこで、リチウム金属層32と固体電解質層4との間に中間層5を設けることで、リチウム金属層32と固体電解質層4との界面へのデンドライトの不均一な析出を抑制でき、かつ界面密着性を向上できる。
【0031】
中間層5は電子伝導性を有し、かつイオン伝導性を有する層である。中間層5は、例えば、Liイオンが通過可能である。このため、リチウム金属二次電池1の充放電を繰り返し行うにつれ、固体電解質層4からリチウム金属層32に向けて移動するLiイオン(Li)は、図1に示すように、中間層5を通過する。これによって、中間層5とリチウム金属層32との間にリチウム金属が析出することで、均一にリチウム金属を析出させることができる。また、中間層5は充放電に伴う各層の体積変化に追従できる柔軟性を有しているため、リチウム金属二次電池1の充放電を繰り返し行った場合であっても、界面密着性を維持でき、リチウム金属二次電池1の耐久性を向上できる。
【0032】
中間層5を構成する材料としては、特に限定されないが、中間層5は、例えば、無定形炭素、金属ナノ粒子、及び結着材としてのバインダーを含む。
【0033】
無定形炭素は、例えばグラファイト等と異なりリチウム金属と反応して合金化することがないため、デンドライトの形成を抑制でき、リチウム金属二次電池1のサイクル特性を向上できる。無定形炭素としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック類、コークス、活性炭等が挙げられる。無定形炭素は、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)であってもよく、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、CNT(カーボンナノチューブ)、フラーレン、グラフェンであってもよい。
【0034】
金属ナノ粒子は、中間層5に含まれることで、中間層5の電子伝導性を高めることができるため、より均一にリチウム金属を析出させることができる。金属ナノ粒子としては、特に限定されないが、例えば、スズ(Sn)、シリコン(Si)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)等の金属ナノ粒子が挙げられる。
【0035】
中間層5に含まれるバインダーは、中間層5の構造を保持し、中間層5を構成する粒子同士、及び中間層5と固体電解質層4との密着性を向上させる。バインダーとしては、特に限定されず、一般に固体電池に使用されるものを用いることができる。例えば、アクリル酸系重合体、セルロース系重合体、スチレン系重合体、酢酸ビニル系重合体、ウレタン系重合体、フルオロエチレン系重合体等、PVDF系重合体が挙げられる。
(保護層)
【0036】
保護層61及び62は、電子伝導性を有さず、かつイオン伝導性を有する層である。このような層としては、例えば固体電解質層4と同様に、固体電解質を含む層を用いることができる。保護層61及び62により、中間層5の積層方向Lに沿った外周面へのリチウム金属の析出を抑制することができる。例えば、中間層5の積層方向Lに沿った外周面を、イオン伝導性を有さない単なる絶縁体で被覆した場合、Liイオン(Li)が誘導されないため、中間層5と絶縁体との間にリチウム金属が析出する可能性がある。
【0037】
保護層61及び62は、図1に示すように、中間層5の積層方向Lに沿った外周面の少なくとも一面と当接して、中間層5を被覆する層である。上記外周面の少なくとも一面は、例えば、中間層5の積層方向Lに沿った外周面のうち、短絡の恐れがある外周面(例えば、正極集電体21及び/又は負極集電体31が延出する側の外周面)である。保護層61及び62は、中間層5の積層方向Lに沿った外周面の全てと当接することが好ましい。なお、図1は断面図であることから、保護層61及び62に異なる符号を付しているが、保護層61及び62は、中間層5の上記外周面を被覆するように一体に形成されるものであってよい。
【0038】
図4は、保護層61及び62を有しない、従来技術に係るリチウム金属二次電池1cを示す図である。図4に示すように、中間層5はLiイオン(Li)伝導性、及び電子eを伝導可能な電子伝導性を有しているため、中間層5の全体に電子eが供給される。この結果、中間層5の積層方向Lに沿った外周面にはリチウム金属32aが析出する。中間層5の外周面にリチウム金属32aが析出することで、リチウム金属二次電池1cの充放電効率の悪化、抵抗の増加、リチウム金属32aが不均一に析出することによる安全性低下の恐れがある。また、中間層5の外周面に析出するリチウム金属32aは、リチウム金属層32の端部に析出するため、リチウム金属層32の端部の析出量が中央部の析出量よりも多くなる結果、片当たりの状態になり、負極層が変形する恐れもある。
【0039】
本実施形態に係るリチウム金属二次電池1は、少なくとも中間層5の積層方向Lに沿った外周面の少なくとも一面が保護層61及び62で被覆されることで、上記外周面へのリチウム金属の析出を抑制することができる。
【0040】
保護層61及び62のイオン伝導率は、固体電解質層4のイオン伝導率以上であることが好ましい。上記構成により、図1に示すように、Liイオン(Li)を保護層61及び62に誘導させ、より好ましく中間層5の外周面へのリチウム金属の析出を抑制することができる。上記構成は、例えば、保護層61及び62に含まれるバインダーの含有率を、固体電解質層4に含まれるバインダーの含有率よりも小さくすることにより実現される。上記以外に、保護層61及び62に含まれる固体電解質材料を、固体電解質層4に含まれる固体電解質材料よりもLiイオン伝導率が高い固体電解質材料とすることで、上記構成を実現してもよい。
【0041】
保護層61及び62は、固体電解質層4との当接面を有していることが好ましい。これにより、固体電解質層4からLiイオン(Li)を誘導することができる。
【0042】
保護層61及び62は、図1において、中間層5とリチウム金属層32の界面まで延在するものであるが、これには限定されない。保護層61及び62は、少なくとも中間層5の積層方向Lに沿った外周面の少なくとも一面と当接するものであればよい。例えば、保護層61及び62は、リチウム金属層32の積層方向Lに沿った外周面の少なくとも一部に延在するものであってもよい。特に、保護層61及び62が、Li金属との反応性が高い材料(例えば、硫化物系固体電解質や酸化物系固体電解質)を含む場合、保護層61及び62は、リチウム金属層32に接触しないようにするために、中間層5とリチウム金属層32の界面まで延在しないように配置することが好ましい。一方で、保護層61及び62が、Li金属との反応性が低い材料で構成される場合、保護層61及び62は、リチウム金属層32の外周面にまで延在していてもよい。
【0043】
[リチウム金属二次電池の製造方法]
本実施形態に係るリチウム金属二次電池1は、負極層と、中間層5と、固体電解質層4と、正極層と、をこの順序で積層させ、中間層5の積層方向Lに沿った外周面に保護層61及び62を形成することで製造される。なお、上記積層した後は、任意にプレスして一体化してもよい。更に、上記構成単位を単位電池として複数積層してもよい。
【0044】
正極層を形成する工程は、例えば、上記正極活物質層を構成する成分を含む合材スラリーを正極集電体に対して塗工する工程であってもよい。塗工する手段としては特に限定されず、インクジェット法、スクリーン印刷法、CVD法、スパッタ法などを用いることができるほか、ドクターブレード、ディッピング等の公知の塗工手段を用いてもよい。負極層を形成する工程は、例えば、リチウム金属と負極集電体とをクラッド材等により接合してもよい。
【0045】
固体電解質層4を形成する工程は、固体電解質材料を含むスラリーを上記の正極層と同様の方法で塗工する工程であってもよく、不織布等の三次元構造体を支持体とし、上記支持体を、固体電解質材料を含むスラリーにディッピングすることで固体電解質層4を形成する工程であってもよい。
【0046】
中間層5を形成する工程は、中間層5を形成する材料を含むスラリーを上記の正極層と同様の方法で塗工する工程であってもよい。
【0047】
中間層5の積層方向Lに沿った外周面に保護層61及び62を形成する工程は、例えば、上記工程により形成した各層を乾燥させ、積層させた後に、保護層61及び62を構成する材料を含むスラリーを中間層5の上記外周面に塗布する工程であってもよい。保護層61及び62を形成する工程は、上記以外に、中間層5を形成する工程と同工程において、固体電解質層4に保護層61及び62を構成する材料を含むスラリーを塗布する工程であってもよい。又は、中間層5と保護層61及び62が一体化されたシートを別工程で作製した後、固体電解質層4に転写する工程であってもよい。
【0048】
負極層を形成(配置)する工程は、中間層5及び保護層61及び62を配置した後に行われる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態に係るリチウム金属二次電池について説明する。以下、第1実施形態と同様の構成については、図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0050】
<第2実施形態>
本実施形態に係るリチウム金属二次電池1aは、図2に示すように、保護層61及び62の積層方向Lに直交する面のうち、負極層側の面の全ては、それぞれ絶縁層71及び72と当接して被覆される。上記構成により、図2に模式的に示すように、リチウム金属層32の積層方向Lに沿った外周面から保護層61及び62への電子eの供給を確実に遮断することができる。これにより、保護層61及び62の上記負極層側の面にリチウム金属が析出することを抑制できる。
【0051】
絶縁層71及び72を構成する材料としては、絶縁性を有している材料であれば特に制限されず、例えば絶縁樹脂を用いることができる。
【0052】
<第3実施形態>
本実施形態に係るリチウム金属二次電池1bは、図3に示すように、中間層5bの積層方向Lに沿った外周面の全てと当接して被覆する固体電解質層4bを有する。即ち、固体電解質層4bは、上記他の実施形態に係る固体電解質層4と、保護層61及び62との機能を兼ねている。即ち、本実施形態に係る保護層は、固体電解質層と一体として形成され、固体電解質層を中間層5bの積層方向Lに沿った外周面の全てと当接して被覆するように延出させることで形成される。固体電解質層4bは、電子伝導性を有さず、かつイオン伝導性を有する層であるため、上記構成により、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
[リチウム金属二次電池の製造方法]
本実施形態に係るリチウム金属二次電池1bの製造方法は、例えば、乾燥前の固体電解質層4bに対して乾燥後の中間層5bを積層させ、外周面が露出しないように固体電解質層4bに中間層5bを埋め込む工程を含んでいてもよい。これにより、中間層5bの厚みが薄い場合であっても、好ましく外周面を保護層で被覆することができる。また、上記工程により、中間層5bの積層方向Lに沿った外周面の全てが、固体電解質層4bと当接して被覆される。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b リチウム金属二次電池
21 正極集電体(正極層)
22 正極活物質層(正極層)
31 負極集電体(負極層)
32 リチウム金属層(負極層)
4、4b 固体電解質層
5、5b 中間層
61、62 保護層
L 積層方向
図1
図2
図3
図4