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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031691
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】気化熱発生装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 19/00 20060101AFI20240229BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F25B19/00 Z
A01G9/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135403
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】519261138
【氏名又は名称】株式会社ティーエムダイレクト
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029SE04
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で、飽差の値を容易に調整できる気化熱発生装置を提供すること。
【解決手段】気化熱発生装置100によれば、噴霧器52から噴霧された霧を保水部材44が吸収し、その立体網目構造の微細気孔で水分を保持する。一対の送風機32,34によって、気化熱発生機10外部にある空気が、気化熱発生機10内部に送り込まれ、水分保持状態の保水部材44を通り抜けて再び気化熱発生機10外部に送り出される。このとき、保水部材44内部又はその近傍では水分が気化して水蒸気となるとともに、空気の温度を下げるので、温度が下がった空気と水蒸気が気化熱発生機10外部に送り出されるから、気化熱発生機10外部の温度を下げ、湿度を上げることができる。このように、シンプルな構成で、飽差の値を容易に調整することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが流体連通するように配設された貯水タンク、ポンプ、及び気化熱発生機を具え、
前記気化熱発生機が、
側面、天面、及び底面を有する箱状の基部と、
前記側面に対向するように設けられ、同一方向に送風するように構成された少なくとも一対の送風機と、
前記基部の内部に設けられた保持部によって、前記一対の送風機の間に位置するように保持され、立体網目構造によって水分を保持する保水部材と、
前記天面に設けられ、前記保水部材に向けて霧を噴霧する噴霧器と、
前記底面に設けられた排水口を具えていることを特徴とする、
気化熱発生装置。
【請求項2】
それぞれが流体連通するように配設された貯水タンク、ポンプ、及び気化熱発生機を具え、
前記気化熱発生機が、
側面、天面、及び底面を有する箱状の基部と、
前記側面の1つに設けられ、前記基部の内部から外側に向けて送風するように構成された送風機と、
前記基部の内部に設けられた保持部によって、前記送風機と対向するように保持され、立体網目構造によって水分を保持する保水部材と、
前記天面に設けられ、前記保水部材に向けて霧を噴霧する噴霧器と、
前記底面に設けられた排水口を具えていることを特徴とする、
気化熱発生装置。
【請求項3】
前記排水口と前記貯水タンクが流体連通するように構成されている、請求項1又は2の気化熱発生装置。
【請求項4】
前記噴霧器が、前記天面側且つ前記送風機側から前記保水部材に向けて傾斜する方向で霧を噴霧するように構成されている、請求項1又は2の気化熱発生装置。
【請求項5】
前記噴霧器が、前記天面側から前記底面方向に向けて霧を噴霧するように構成されている、請求項1又は2の気化熱発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化熱を発生させる装置(以下、「気化熱発生装置」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境が変化する中でも安定的かつ持続的に食料を生産し、供給するために、室内水耕栽培や植物工場などの屋内栽培施設が提案され始めている。屋内栽培施設の内部では、光源となるLEDの照射量や、温度・湿度をコントロールすることが求められる。屋内栽培施設の内部では、LEDや電子機器による放熱により温度が上昇するため、温度を下げる必要がある。ここで、温度を下げるためには、エアコン等の空調設備が用いられるのが一般的である。しかし、エアコンは、通常、温度とともに、植物の育成に必要な湿度も下げてしまうため、適していない。
【0003】
ここで、気化熱を利用して温度を低下させる冷却装置も開発されており、例えば、以下に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-128221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の冷却装置によれば、筒状部材によって形成される吸込口から吸い込まれる気流(吸込流)が、筒状部材の縁に配置されている噴霧噴霧器から噴出される霧の気化熱によって冷却され、筒状部材と筐体の側面とによって形成される吹出口から吹き出される気流(吹出流)のうち、吸込口に近い方の気流が遠心送風機の駆動によって発生する負圧作用によって、再び吸込口から吸い込まれ、その際、噴霧噴霧器から噴出される霧の気化熱によって再び冷却されるから、冷却装置を循環する気流(循環流)が、霧の気化熱によって何度も冷却され、吹出流は、吸込流と冷却された循環流との混合流となるので、これにより、吹出流の温度低下量を大きくすることができるとされている。
【0006】
ところで、屋内栽培施設の内部において、空気中の飽和水蒸気量と空気中の水蒸気の飽和度の差(飽差)の値は重要である。飽差の値は、湿度が同じ場合、温度が高い方が値は大きくなる。飽差の値が大き過ぎる場合、植物は気孔を閉じるため、二酸化炭素の吸収と根からの吸水を行わなくなり、植物の生育が望めない。反対に、飽差の値が低過ぎると、植物は蒸散を行わないため、この場合も植物の生育が望めない。すなわち、屋内栽培施設の内部においては、温度と湿度を適切に調整し、飽差の値を最適な値に設定することが重要である。また、飽差の最適値は、植物ごとに異なるため、容易に調整できることが望ましい。
【0007】
この点、特許文献1の冷却装置では、噴霧した霧を遠心送風機で直接吸込む構成であるため、湿度が必要以上に上がり過ぎてしまう可能性があり、飽差の値を適切に調整し難い問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、シンプルな構成で、飽差の値を容易に調整できる気化熱発生装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、それぞれが流体連通するように配設された貯水タンク、ポンプ、及び気化熱発生機を具え、
前記気化熱発生機が、
側面、天面、及び底面を有する箱状の基部と、
前記側面に対向するように設けられ、同一方向に送風するように構成された少なくとも一対の送風機と、
前記基部の内部に設けられた保持部によって、前記一対の送風機の間に位置するように保持され、立体網目構造によって水分を保持する保水部材と、
前記天面に設けられ、前記保水部材に向けて霧を噴霧する噴霧器と、
前記底面に設けられた排水口を具えていることを特徴とする気化熱発生装置
又は、
それぞれが流体連通するように配設された貯水タンク、ポンプ、及び気化熱発生機を具え、
前記気化熱発生機が、
側面、天面、及び底面を有する箱状の基部と、
前記側面の1つに設けられ、前記基部の内部から外側に向けて送風するように構成された送風機と、
前記基部の内部に設けられた保持部によって、前記送風機と対向するように保持され、立体網目構造によって水分を保持する保水部材と、
前記天面に設けられ、前記天面側且つ前記送風機側から前記保水部材に向けて傾斜する方向で霧を噴霧する噴霧器と、
前記底面に設けられた排水口を具えていることを特徴とする気化熱発生装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴霧器から噴霧された霧を保水部材が吸収し、その立体網目構造の微細気孔で水分を保持する。そして、水分保持状態の保水部材の内部又は近傍で水分が気化し、水蒸気となるとともに空気の温度を下げる。さらに、送風機によって、温度が下がった空気と水蒸気が気化熱発生機外部に送り出される。本発明によれば、その運転時間を調整することによって飽差の値を容易に調整することができるので、シンプルな構成で、飽差の値を容易に調整することができる。
【0011】
送風機を基部の側面の1つに設けた構成でも、温度を下げ、湿度を上げることができるので、一対の送風機を側面に対向するように設けた構成よりも部品点数を少なくさせ、製造コストを下げることができる。
【0012】
また、排水口と貯水タンクが流体連通するように構成されていれば、排水口から排水された水分を循環させて再利用することができる。
【0013】
また、噴霧器が、基部の天面側且つ送風機側から保水部材に向けて傾斜する方向で霧を噴霧するように構成されていれば、噴霧器から噴霧される霧の殆ど全てを保水部材に給水させることができ、気化熱の発生を促進させ、温度をさらに低下させ易くすることができる。
【0014】
また、噴霧器が、天面側から底面方向に向けて霧を噴霧するように構成されていれば、湿度を高め易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態の気化熱発生装置の全体図。
図2図1の2-2線横断面図。
図3図2の3-3線縦断面図。
図4】本発明の第二実施形態の気化熱発生装置の横断面図。
図5】本発明の第二実施形態の気化熱発生装置の縦断面図。
図6】本発明を利用した栽培装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図1~6を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1で示すように、気化熱発生装置100は、貯水タンクT、ポンプP、及び気化熱発生機10を具える。貯水タンクT、ポンプP、及び気化熱発生機10は、チューブ12によりそれぞれが流体連通するように構成されている。貯水タンクTに収容された水は、ポンプPによって汲み上げられ、チューブ12を通じて気化熱発生機10に送られる。
【0018】
気化熱発生機10は、側面22、天面24、及び底面26を有する箱状の基部20を具えている。側面22、天面24、及び底面26は、それぞれ別体で、これらを組み合わせることによって基部20は構成されている。図2に示すように、基部20の側面22には、一対の送風機32,34が対向するように設けられている。一対の送風機32,34は、図中左から右方向、又は、右から左方向のように、同一方向に送風するように構成されている。かくして、例えば、送風機32によって、気化熱発生機10外部にある空気が、気化熱発生機10内部に送り込まれ、送風機34によって、気化熱発生機10内部の空気が再び気化熱発生機10外部に送り出される。気化熱発生機10では、一対の送風機32,34はファンであるが、送風することが可能であればファン以外の送風機を使用してもよい。
【0019】
基部20の内部には保持部42が形成されている。保持部42は、保水部材44を保持するように形成されている。具体的には、保持部42によって保水部材44が挟持されるとともに、図3に示す、底面26の内部に設けられた底面側保持部43によって支えられている。図示しているように、保水部材44を枠状の保持器46を介して保持部42に保持させてもよい。本構成とすれば、内部の水分量によって膨張又は収縮する保水部材44を保持部42に着脱させ易い。なお、保持部42によって保水部材44を保持したとき、保水部材44は一対の送風機32,34の間に位置するように構成されている。
【0020】
基部10内部の天面24には、保水部材44に向けて霧を噴霧する噴霧器52が取付けられている。噴霧器52としては、ポンプPから送り込まれた水を霧状に噴霧するノズルを使用することができる。噴霧器52から噴霧された霧は、保水部材44によって吸収され、保水部材44の立体網目構造の微細気孔でその水分は保持される。気化熱発生機10の場合、図示されているように、噴霧器52は、天面24側から底面26方向に向けて霧を噴霧するように構成されている。本構成により、湿度を高め易くすることができることが分かっている。
【0021】
気化熱発生装置100を駆動すると、貯水タンクTに収容された水は、ポンプPによって汲み上げられ、チューブ12を通じて気化熱発生機10の噴霧器52に送られる。そうすると、噴霧器52から保水部材44に向けて霧が噴霧され、その霧状の水分は保水部材44に吸収され、保水部材44でその水分は保持される。ここで、送風機32によって、気化熱発生機10外部にある空気が、気化熱発生機10内部に送り込まれ、水分保持状態の保水部材44を通り抜け、送風機34によって気化熱発生機10内部の空気が再び気化熱発生機10外部に送り出される。このとき、保水部材44内部又はその近傍では水分が気化して水蒸気となるとともに、空気の温度を下げる。すなわち、温度が下がった空気と水蒸気が気化熱発生機10外部に送り出され、気化熱発生機10外部の温度を下げ、湿度を上げることができる。気化熱発生装置100の運転時間を調整することによって飽差の値を容易に調整することができるので、シンプルな構成で、飽差の値を容易に調整することができる。
【0022】
保水部材44の許容保水量を超える水分は、底面26に滴ることになる。底面26には、排水口16が設けられており、底面26に滴り落ちた水分は、排水口16から排水される。ここで、排水口16と貯水タンクT(図1参照)が排水チューブ14等によって流体連通するように構成されていれば、排水口16から排水された水分を循環させて再利用することができる。
【0023】
気化熱発生装置100では、保水部材44としてPVAスポンジ、すなわち、ポリビニルアルコールで形成されたスポンジを使用することができるが、これと同等以上の毛細管現象が生じる微細気孔を具え、吸水性及び保水性を有する素材(例えば、紙製等。)であれば、PVAスポンジに換えて適用し得る。なお、水分によって溶けてしまう可能性がある珪藻土などの素材は適していない。
【0024】
図4は、気化熱発生機10に換えて使用できる、本発明の他の実施形態の気化熱発生機10aを示している(図5も参照)。気化熱発生機10aは、気化熱発生機10と基本的な構成が同じであるため、異なる点について説明する。気化熱発生機10aの場合、基部20aの側面22aの1つのみに送風機34aが設けられている。送風機34aは、基部20aの内部から外側に向けて送風するように構成されている。
【0025】
保水部材44aは、送風機34aと対向する位置に配設される。保水部材44aは、保持器42aによって保持されている。気化熱発生機10aの場合、送風機34aが基部20aの側面22aの1つにのみ設けられているので、保持器42aは、保水部材44aを挟持するように、保水部材44a囲繞するように形成すればよい。
【0026】
気化熱発生機10aでは、気化熱発生機10aの外部の空気が基部20の隙間などから気化熱発生機10a内部に入り込み、保水部材44a内部又はその近傍では水分が気化して水蒸気となるとともに、空気の温度を下げ、温度が下がった空気と水蒸気が送風機34aによって気化熱発生機10a外部に送り出される。気化熱発生機10aのように、送風機34aを基部20aの側面22aの1つのみに設けた構成でも、温度を下げ、湿度を上げることができるので、気化熱発生機10のように一対の送風機32,34を側面22に対向するように設けた構成よりも部品点数を少なくさせ、製造コストを下げることができる。
【0027】
ここで、図5に示すように、噴霧器52aが、基部22aの天面24a側且つ送風機34a側から保水部材44aに向けて傾斜する方向で霧を噴霧するように構成するのがよい。本構成とすれば、噴霧器52aから噴霧される霧の殆ど全てを保水部材44aに給水させることができ、気化熱の発生を促進させ、温度を低下させ易くすることができる。
【0028】
図6は、気化熱発生装置100を使用した栽培装置200の概略図である。栽培装置200の内部には、複数段の栽培エリア290が配設されている。各栽培エリア290には、栽培対象となる植物270が植えられる。また、各栽培エリア290には、LED等の光源モジュール230、植物270に水分を供給する水分供給モジュール240、並びに温度、湿度、及び二酸化炭素濃度等を検出するセンサモジュール250が設けられている。各栽培エリア290は、カメラモジュール260によって撮影されるように構成されている。センサモジュール250が検出したデータとカメラモジュール260による撮影データは、外部のサーバ(図示省略)に送信される。
【0029】
栽培装置200内部には、さらに、ペルチェ素子などの冷却モジュール220、栽培装置200内部と外部の空気を循環させるファンモジュール280,285、及び気化熱発生装置100が配設されている。上述した各モジュール及び気化熱発生装置100は、コンピュータ210によって制御される。気化熱発生装置100は、シンプルな構成であるため、栽培装置200のような屋内栽培施設に好適に使用することができ、栽培装置200内部の飽差の値を容易に調整することができるので、植物270を生育させ易くすることができる。
【0030】
以上に説明したように、本発明によれば、シンプルな構成で、飽差の値を容易に調整できる気化熱発生装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
10,10a 気化熱発生機
16,16a 排水口
20,20a 基部
22,22a 側面
24,24a 天面
26,26a 底面
32 送風機
34,34a 送風機
42,42a 保持部
44,44a 保水部材
52,52a 噴霧器
100 気化熱発生装置
P ポンプ
T 貯水タンク

図1
図2
図3
図4
図5
図6