(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031714
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ブレーキング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L21/78 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141920
(22)【出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2022133864
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522327359
【氏名又は名称】株式会社AC-X Tech
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】國柄 智章
(72)【発明者】
【氏名】高 楊
(72)【発明者】
【氏名】竹原 尚吾
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA25
5F063AA38
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB23
5F063CB28
5F063DD26
5F063DD81
(57)【要約】
【課題】簡単な構成の装置により、効率よく基板をブレーキングできるようにする。
【解決手段】保持枠21の内側に収まる異なる刃長の第1、第2、第3ブレード5a,5b,5cが用意され、各ブレード5a~5cを加圧シリンダによりそれぞれ加圧するようにし、刃長の異なる第1~第3ブレード5a~5cのうち、ブレーキング対象のブレーキング予定線の長さに応じて分けられた基板20の第1、第2、第3領域A1,A2,A3に応じた刃長のブレードの下方位置に、駆動機構により基板20を保持枠21ごと移動させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面側に格子状に複数のブレーキング予定線が形成されて複数のチップ領域が形成されたほぼ円形の基板を保持枠の内側に配置し、前記保持枠及び前記基板の上面を粘着シートにより覆い、前記基板の下面側に保護シートを貼り付けた状態で、ブレーキング対象の前記ブレーキング予定線に沿って前記基板をブレーキングするブレーキング装置において、
前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上下に位置して前記基板の上面及び下面に接離自在に当接する上、下当接部を有し異なる長さの複数の割断手段と、
前記基板を前記保持枠ごと前記割断手段の位置に移動させる移動手段と、
前記割断手段の前記上、下当接部の当接により前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線上に曲げ応力を付与して前記基板をブレーキングする応力付与手段と
を備えることを特徴とするブレーキング装置。
【請求項2】
前記割断手段は、
前記下当接部として、前記ブレーキング対象のブレーキング予定線を挟んで前記基板の下面側に当接する2つの当接面を有する支持体を更に備え、
前記基板は、
前記支持体の前記2つの当接面の間に位置する前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上方に前記上当接部が位置するように、前記移動手段により移動される
ことを特徴とする請求項1に記載のブレーキング装置。
【請求項3】
前記割断手段の前記上当接部は、
前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも長い長さを有し前記保持枠と干渉しない第1の上当接部と、前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも短い長さを有し前記保持枠と干渉しない第2の上当接部とが用意され、
前記ブレーキング予定線の長さが、前記基板の直径よりも短い所定長以上である第1の領域、及び、前記所定長よりも短い第2の領域に分けられ、
前記第1の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第1の上当接部が使用され、
前記第2の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第2の上当接部が使用される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキング装置。
【請求項4】
前記割断手段の前記下当接部は、
前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも長い長さを有し前記保持枠と干渉しない第1の下当接部と、前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも短い長さを有し前記保持枠と干渉しない第2の下当接部とが用意され、
前記ブレーキング予定線の長さが、前記基板の直径よりも短い所定長以上である第1の領域、及び、前記所定長よりも短い第2の領域に分けられ、
前記第1の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第1の下当接部が使用され、
前記第2の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第2の下当接部が使用される
ことを特徴とする請求項3に記載のブレーキング装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記基板を前記保持枠ごと回転させる回転機能を備えることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項1に従属する請求項3または請求項4に記載のブレーキング装置。
【請求項6】
前記下当接部と前記基板との間に、
前記応力付与手段による曲げ応力によりブレーキングした後に前記基板に生じる過剰な応力を吸収するための弾性を有する緩衝層を配置してブレーキングすることを特徴とする請求項1に記載のブレーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の下面側に縦横に形成された複数のブレーキング予定線のうち、ブレーキング対象のブレーキング予定線に沿って基板をブレーキングするブレーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板(ウエハ)を複数の半導体チップにブレーキングするブレーキング装置として、特許文献1に記載のものがある。この種、従来のブレーキング装置では、ブレード周辺を拡大した切断正面図である
図8及び平面図である
図9に示すように、ほぼ円形の基板50の下面にはブレーキング予定線50aとなる罫書筋がダイヤモンドブレード等により格子状に形成され、これにより基板50に複数のチップ領域が形成され、基板50の下面には保護シート51が貼着される一方、基板50の上面側には粘着シート52が貼着され、粘着シート52は基板50よりも大きな内寸を有するほぼ円環状の保持枠53(
図9参照)に張設され、粘着シート52、保護シート51及び保持枠53によって基板50が保持されている。
【0003】
そして、保護シート51を下向きにして受け部54上に基板50が載置され、粘着シート52の上方から
図8中の矢印に示すように、ブレード55が基板50のブレーキング対象のブレーキング予定線50a上に押し当てられて曲げ応力が付与されることにより、基板50がブレーキング対象のブレーキング予定線50aに沿って切断され、このような切断作業が全てのブレーキング予定線50aに沿って繰り返し行われて基板50が複数の半導体チップにブレーキングされる。このとき、受け部54はブレード55の下方に空間を有し、ブレーキング対象のブレーキング予定線50aを挟んで当該ブレーキング予定線50aの両側を支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-222198号公報(段落0002~0005、
図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のブレーキング装置では、
図9に示すように、切断時にブレード55が保持枠53と干渉することがないように、基板50の直径よりも大きくかつ保持枠53の内側直径よりも小さい刃長のブレード55を使用する必要がある。
【0006】
そのため、
図10に示すように、
図9に示す基板50の直径よりも大きな直径の基板50’を切断ブレーキングする場合、基板50’の直径に合わせたブレード55’を用いる必要があるとともに、保持枠53の一定サイズであるとブレード55’と保持枠53との干渉が生じ得ることから、保持枠としてブレード55’が干渉しない大きなサイズのものを使用しなければならず、ブレーキング前後のダイシング等の他行程よりも大きな保持枠に基板を保持する付け替えをわざわざ行う必要が生じ、チッピング等の製品不良リスクが高まるという問題がある。また、付け替えを避けるために、ダイシングやエキスパンド等のブレーキングの前後行程で対応できるように保持枠のサイズを大きくした場合、装置が大型化してコスト増を招くという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成の装置により、効率よく基板をブレーキングできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明に係るブレーキング装置は、下面側に格子状に複数のブレーキング予定線が形成されて複数のチップ領域が形成されたほぼ円形の基板を保持枠の内側に配置し、前記保持枠及び前記基板の上面を粘着シートにより覆い、前記基板の下面側に保護シートを貼り付けた状態で、ブレーキング対象の前記ブレーキング予定線に沿って前記基板をブレーキングするブレーキング装置において、前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上下に位置して前記基板の表面及び裏面に接離自在に当接する上、下当接部を有し異なる長さの複数の割断手段と、前記基板を前記保持枠ごと前記割断手段の位置に移動させる移動手段と、前記割断手段の前記上、下当接部の当接により前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線上に曲げ応力を付与して前記基板をブレーキングする応力付与手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、ほぼ円形の保持枠の内寸よりも小さくかつ基板の直径よりも長い刃長を有し保持枠と干渉しない割断手段と、保持枠の内寸よりも小さくかつ基板の直径よりも短い刃長を有し保持枠と干渉しない割断手段とを用意しておき、移動手段により、基板が保持枠ごと割断手段の位置に移動されるため、サイズの異なる基板をブレーキングする場合であっても、1つのサイズの保持枠を使用して異なるサイズの基板をブレーキングでき、従来のように、わざわざ大きなサイズの保持枠に基板を保持する付け替えを行う必要がなくなり、1つの工程でブレーキング作業を行うことができ、ブレーキングに要するコストの上昇を防止することができ、ブレーキングの作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記割断手段は、前記下当接部として、前記ブレーキング対象のブレーキング予定線を挟んで前記基板の下面側に当接する2つの当接面を有する支持体を更に備え、前記基板は、前記支持体の前記2つの当接面の間に位置する前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上方に前記上当接部が位置するように、前記移動手段により移動されるようにしてもよい。
【0011】
こうすると、ブレーキング対象のブレーキング予定線を挟んで支持体の2つの当接面が基板の下面側に当接した状態で、移動手段により、支持体の2つの当接面の間に位置するブレーキング対象のブレーキング予定線の上方に上当接部が位置するように基板が保持枠ごと移動されるため、基板のブレーキング対象のブレーキング予定線の近傍を3点で支持して曲げ応力を加えることができ、いわゆる3点ブレーキングにより基板をブレーキングすることができる。
【0012】
また、前記割断手段の前記上当接部は、前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも長い長さを有し前記保持枠と干渉しない第1の上当接部と、前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも短い長さを有し前記保持枠と干渉しない第2の上当接部とが用意され、前記ブレーキング予定線の長さが、前記基板の直径よりも短い所定長以上である第1の領域、及び、前記所定長よりも短い第2の領域に分けられ、前記第1の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第1の上当接部が使用され、前記第2の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第2の上当接部が使用されるようにするとよい。さらに、前記割断手段の前記下当接部は、前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも長い長さを有し前記保持枠と干渉しない第1の下当接部と、前記保持枠の内寸よりも小さくかつ前記基板の直径よりも短い長さを有し前記保持枠と干渉しない第2の下当接部とが用意され、前記ブレーキング予定線の長さが、前記基板の直径よりも短い所定長以上である第1の領域、及び、前記所定長よりも短い第2の領域に分けられ、前記第1の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第1の下当接部が使用され、前記第2の領域の前記ブレーキング予定線のブレーキングには前記第2の下当接部が使用されるようにしてもよい。
【0013】
この場合、基板を、ブレーキング予定線の長さによって第1の領域、第2の領域に分けられ、第1の領域には第1の上当接部及び/または第1の下当接部を使用し、第2の領域には第2の上当接部及び/または第2の下当接部を使用するため、使用する割断手段の切り替えにより、ブレーキング作業を効率よく行うことができる。
【0014】
また、前記移動手段は、前記基板を前記保持枠ごと回転させる回転機能を備えるとよい。こうすると、基板を保持枠ごと回転させることができるため、格子状の複数のブレーキング予定線に対して、基板を移動させることができる。
【0015】
また、前記下当接部と前記基板との間に、前記応力付与手段による曲げ応力によりブレーキングした後に前記基板に生じる過剰な応力を吸収するための弾性を有する緩衝層を配置してブレーキングするとよい、この場合、割断手段の下当接部と基板との間に配置された弾性を有する緩衝層により、ブレーキングした後に基板に生じる過剰な応力が吸収されるため、従来のように、過剰な応力によってブレーキングされた基板のエッジに欠け(チッピング)が生じるのを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長さの異なる複数の割断手段を用意し、サイズの異なる基板をブレーキングする場合であっても、1つのサイズの保持枠を使用して異なるサイズの基板をブレーキングできるため、従来のように、わざわざ大きなサイズの保持枠に基板を保持する付け替えを行う必要がなくなり、1つの工程でブレーキング作業を行うことができ、ブレーキングに要するコストの上昇を防止することができ、ブレーキングの作業効率の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るブレーキング装置の第1実施形態の正面図である。
【
図5】動作説明図であり、(a)~(c)はそれぞれ異なる状態の平面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の一部のある状態における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明に係るブレーキング装置の第1実施形態について、
図1ないし
図5を参照して説明する。
【0019】
(装置構成)
図1は本実施形態のブレーキング装置1を示し、基板が載置される載置台2と、載置台2を左右方向に長尺の一対のガイドレール3に沿って走行させる駆動機構4と、ガイドレール3の長さ方向にわたる3か所に設置され前後方向の刃長が異なる3種類の第1、第2、第3ブレード5a,5b,5cをそれぞれ上下動自在に支持した第1、第2、第3支持部6a,6b,6とを備える。ここで、第1~第3ブレード5a~5cは前後方向の刃長が異なり、平行に配置されており、第1ブレード5aの刃長が最も長く、第3ブレード5cの刃長が最も短く、本発明における長さの異なる割断手段の「上当接部」に相当し、後述する基板のブレーキング対象のブレーキング予定線の上方に位置して基板の上面に接離自在に当接する。
【0020】
載置台2は、
図1、
図2に示すように、両ガイドレール3に沿って走行する左右一対の走行体2aと、両走行体2a上にわたり架設された平面視がほぼ矩形を有するベース板2bと、ベース板2b上に回転自在に載置された円形板状の回転板2cと、回転板2c上に固定され後述する保持枠を支持する支持テーブル2dとを備える。ここで、回転板2cは、
図2に示すように、その周縁に形成されたギヤ2c1と、ベース板2b上に回転板2cの周囲に平面視で正三角形の3つの頂点位置に配置されて回転板2cの周縁のギヤ2c1に噛合した3個のギヤ2c2と、いずれかのギヤ2c2を回転駆動する図示省略のモータとを備える回転機構により回転され、モータが回転することにより、ギヤ2c2が回転してこのギヤ2c2の回転が回転板2cの周縁のギヤ2c1に伝達されて回転板2cが回転する。なお、この回転機構は、以下に詳述する駆動 機構4とともに本発明における「移動手段」を構成する。
【0021】
駆動機構4は、左右の両端が軸受10a,10bにより回転自在に支持された左右に長尺のボールねじ11と、ベース板2bの下面中央部に固着されボールねじ11の外周の雄ねじが螺合した雌ねじを有する固定部12と、ボールねじ11の右端にカップリング13を介してその回転軸が連結されたモータ14とを備える。そして、両走行体2aは、例えば側面視コ字状を有し、基部がベース板2bの下面に固着され、基部の前後両端から下方に垂下した脚部が左右のガイドレール3それぞれに沿って移動可能に係合するように配置され、モータ14の回転によってボールねじ11が回転することにより、両走行体2aの脚部に内蔵のローラがガイドレール3を転動して、両ガイドレール3に沿って走行体2a及びベース板2bが一体となって走行する。なお、モータ14の双方向への回転に応じて両走行体2aがベース板2bとともに左、右方向に走行し、後述する基板を所定のブレードの下方位置に移動させる。
【0022】
載置台2に載置される基板は、
図3、
図4に示すように保持枠に保持されている。すなわち、下面側に格子状に複数のブレーキング予定線20aが形成されて複数のチップ領域が形成されたほぼ円形の半導体基板(ウエハ)20が、ほぼ円環状の保持枠21の内側に配置され、特に
図4に示されるように、保持枠21及び基板20の上面を粘着シート22により覆われるとともに、基板20の下面側に保護シート23が貼り付けられた状態で保持枠21に保持されている。そして、
図3に示すように、回転板2c上に固定された支持テーブル2d上に保持枠21の周縁部が載置されて固定支持されている。
【0023】
ここで、粘着シート22には、例えばポリ塩化ビニルやポリオレフィン等の透過性及び伸縮性を有する合成樹脂を用いるとよく、その粘着面にアクリル系の粘着剤を塗布するとよい。こうすると、表面(上面)側からブレーキング予定線20aを視認し易くなる。また、保護シート23にはポリエチレン等の透明な樹脂を用いるとよく、平面視でほぼ正方形に形成するのが望ましい。
【0024】
また、基板20のブレーキング予定線20aは、粘着シート22及び保護シート23を貼着する前の段階において、例えばレーザ光を基板20の下面側から内部に向けてレーザ光を照射することにより、ブレーキング予定線20aとなる改質層が格子状に形成されてブレーキング予定線20aが形成される。そのほかに、例えばダイヤモンドスクライブまたはダイシングブレードなどの手法によりケガキ溝を加工することによりブレーキング予定線20aを形成することができるが、ブレーキング予定線20aの形成手法は、これらに限定されるものではない。
【0025】
ところで、基板20の下方には、
図1に示すように、走行体2aと一緒にガイドレール3に沿って移動する基板20を下方から支える支持体25が配置され、この支持体25は走行体2a及びベース板2bに連結・分離自在に連結されている。そして、支持体25の上面には直線状の溝25aが形成され、支持体25の上面であって溝25aの両側の面が当接面25b,25bとして、基板20の下面に当接する。このとき、溝25aは各ブレード5a~5cの刃長方向に平行に形成されている。この支持体25が、本発明における割断手段の「下当接部」に相当する。
【0026】
さらに、支持体25は、走行体2a及びベース板2bに連結された状態で、第1ないし第3ブレード5a~5cのうちブレーキングに使用するいずれかのブレードの下方位置まで走行体2a及びベース板2bと一緒に移動すると、その位置において支持体25が走行体2a及びベース板2bとの連結状態が解除されて、支持体25は走行体2a及びベース板2bと一緒に移動しない状態に分離される。このとき、支持体25が走行体2a及びベース板2bと分離された状態では、支持体25の溝25aの方向は当該ブレードの下方位置で当該ブレードな刃長方向に平行に配置されている。なお、基板20の下面側を支持する支持体25は上記した構成に限定されるものではなく、要するに基板20のブレーキング予定線20aを挟んで2つの当接面を有して2点支持できるものであればよい。
【0027】
ところで、第1、第2、第3ブレード5a,5b,5cをそれぞれ支持する第1、第2、第3支持部6a,6b,6は、
図1に示すように、固定された架台30a,30b,30c及びこれら架台30a,30b,30cに設けられた上下動機構31a,31b,31cにより構成されている。
【0028】
そして、上下動機構31aは、
図1に示すように、ボールねじの回転により一緒に上下動する上下2つのガイド体31a1,31a2と、下方のガイド体31a2に取り付けられ第1ブレード5aに下向きの加圧力を加える加圧シリンダ32aとを備え、下方のガイド体31a2は、上方のガイド体31a1とは別に上下動可能に構成されている。なお、上下動機構31bも上下動機構31aと同様、
図1に示すように、上下2つのガイド体31b1,31b2と、第2ブレード5bに下向きの加圧力を加える加圧シリンダ32bとを備えるとともに、上下動機構31cも上下動機構31aと同様、
図1に示すように、上下2つのガイド体31c1,31c2と、第3ブレード5cに下向きの加圧力を加える加圧シリンダ32cとを備える。ここで、加圧シリンダ32a,32b,32cが、本発明における「応力付与手段」に相当し、基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20a上に曲げ応力を付与する。
【0029】
ところで、本発明の最大の特徴として、
図5に示すように、基板20のブレーキング予定線20aが、その長さに応じて第1、第2、第3領域A1,A2,A3の3つに分けられ、各領域A1,A2,A3のブレーキングに刃長の異なる第1、第2、第3ブレード5a,5b,5cそれぞれが使用される。
【0030】
具体的には、基板20の直径よりも短い所定長である第1基準長以上の長さを有するブレーキング予定線20aを含む
図5(a)中の斜線部分の第1領域A1(本発明における「第1の領域」に相当)、第1基準長よりもの長さを有するブレーキング予定線20aを含む
図5(b)中の斜線部分の第2領域A2(本発明における「第2の領域」に相当)、第2基準長よりも短い長さを有するブレーキング予定線20aを含む
図5(c)中の斜線部分の第3領域A3(本発明における「第2の領域」に相当)に分けられる。
【0031】
そして、
図5(a),(b),(c)に示す第1、第2、第3領域A1,A2,A3に応じて、順次刃長が短くなる第1、第2、第3ブレード5a,5b,5cそれぞれが使用されるが、第1ブレード5aの刃長は、
図5(a)に示すように、第1領域A1の範囲内において、ほぼ円形の保持枠21の内寸よりも小さくかつ基板20の外寸よりも長い刃長を有し、本発明における「第1の上当接部」に相当する。
【0032】
また、第3ブレード5cは、
図5(c)に示すように、第3領域A3の範囲内において、ほぼ円形の保持枠21の内寸よりも小さくかつ基板20の外寸よりも短い刃長を有し、本発明における「第2の上当接部」に相当する。さらに、第2ブレード5bは、
図3(b)に示すように、ほぼ円形の保持枠21の内寸よりも小さくかつ基板20の外寸よりも短い刃長を有するので、これも本発明における「第2の上当接部」に相当する。
【0033】
(ブレーキング動作)
続いて、基板20のブレーキング動作について説明する。上記したように、第1~第3ブレード5a~5cのうちブレーキングに使用するいずれかのブレードの下方位置まで支持体25が移動され、所定位置までの移動が完了すると、支持体25が走行体2a及びベース板2bから分離され、
図4に示すように、第1~第3ブレード5a~5cのうちの当該ブレードと支持体25との間に保持枠21に保持された基板20が配置された状態となり、その状態でブレーキング対象であるブレーキング予定線20aが、当該ブレードの下方でかつ支持体25の溝25aの上方に位置するように、走行体2a及びベース板2bの移動、及び、上記した回転機構による回転板2cの回転により基板20の位置が微調整され、溝25aの両側の支持体25の上面である当接面25b,25bの2つの支持点において基板20の下面側が支持される。
【0034】
このように、当接面25b,25bの2つの支持点において基板20の下面側が支持された状態で、例えば
図5(a)に示す第1領域A1のブレーキング予定線20aのブレーキングを行う場合、支持部6aの上下動機構31aの下方のガイド体31a2が下動して第1ブレード5aの下端が基板20を覆う粘着シート22の上面に接触され、さらにガイド体31a2の下動により所定の小さな圧力が付加され、この状態でシリンダ32aが作動されて基板20に曲げ応力が加えられ、第1ブレード5aが下方に一気に加圧される。
【0035】
このとき、
図4に示すように、ブレーキング対象のブレーキング予定線20aを挟んで基板20の下面側に支持体25の溝25aを挟む2つの上面の当接面25b,25bが基板20の下面側に当接した状態で支持された状態で、
図4中の矢印に示すような加圧力が加圧シリンダにより加えられることにより、基板20に対し当該ブレーキング予定線20aにおいて曲げ応力が加えられて基板20の当該ブレーキング予定線20aが破断し、いわゆる3点ブレーキングが行われる。
【0036】
そして、1つのブレーキング予定線20aのブレーキングが終了すると、走行体2a及びベース板2bが移動されて次のブレーキング予定線20aが第1ブレード5aの下方位置に移動されて、上記したブレーキング動作が繰り返される。また、格子状のブレーキング予定線20aの例えば横方向のブレーキング予定線20aの切断が終了して縦方向のブレーキング予定線20aのブレーキングを行う場合、上記した回転機構により回転板2cが90°回転されて、縦方向のブレーキング予定線20aが第1ブレード5aの刃長方向に平行に配置されてブレーキングが行われる。
【0037】
さらに、他の第2、第3領域A2,A3のブレーキング予定線20aのブレーキングを行う場合、走行体2a及びベース板2bが第2ブレード5b、第3ブレード3cの下方位置まで適宜移動され、上記した第1領域A1のブレーキングと同様の動作により、各領域A2,A3のブレーキング予定線20aのブレーキングが繰り返し行われる。その後、全てのブレーキング予定線20aでのブレーキングが終了すると、基板20は複数のチップ領域に切断分離され、粘着シート22及び保護シート23から切断分離されたチップが剥離されて回収される。
【0038】
このとき、刃長の異なるブレードを切り替えて使用し、基板20の各領域A1~A3のブレーキング予定線20aのブレーキングを行うため、サイズの異なる基板20をブレーキングする場合であっても、1つのサイズの保持枠21を使用して異なるサイズの基板をブレーキングすることができ、従来のように、わざわざ大きなサイズの保持枠に基板を保持する付け替えを行う必要がない。
【0039】
したがって、上記した実施形態によれば、保持枠21の内側に収まる異なる刃長の第1~第3ブレード5a,5b,5cが用意され、各ブレード5a~5cを加圧シリンダ32a~32cによりそれぞれ加圧するようにし、ブレーキング対象のブレーキング予定線20aの長さに応じた刃長のブレードの下方位置に、移動手段である駆動機構4により基板20を保持枠21ごと移動させるため、サイズの異なる基板20をブレーキングする場合であっても、1つのサイズの保持枠21を使用して異なるサイズの基板20をブレーキングすることができる。
【0040】
そのため、従来のように、大きなサイズの保持枠に基板を保持する付け替えを行う必要がなくなり、1つの工程でブレーキング作業を行うことができ、ブレーキングに要するコストの上昇を招くことを防止でき、ブレーキングの作業効率の向上を図ることができる。
【0041】
また、ブレーキング対象のブレーキング予定線20aを挟んで支持体25の2つの当接面25b,25bが基板20の下面側に当接した状態で、支持体25の2つの当接面25b,25bの間の溝25aの上方にブレーキング予定線20aを位置させ、さらにそのブレーキング予定線20aの上方に使用予定のブレードが位置するように基板20が保持枠21ごと移動されるため、基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20aの近傍を3点で支持して曲げ応力を加えることができ、いわゆる3点ブレーキングにより基板20を容易にブレーキングすることができる。
【0042】
また、基板20を、ブレーキング予定線20aの長さによって第1~第3領域A1~A3の3つに分け、各領域に応じて刃長の異なるブレードを使い分けてブレーキングを行うため、使用するブレードの切り替えにより、ブレーキング作業を効率よく行うことができる。
【0043】
また、格子状のブレーキング予定線20aのブレーキングの際に、回転板2cの回転により基板20を保持枠21ごと回転させるため、縦、横のブレーキング予定線20aのブレーキングを行うことができる。
【0044】
(第2実施形態)
本発明に係るブレーキング装置の第2実施形態について、
図6、
図7を参照して説明する。なお、本実施形態における装置構成は、上記した第1実施形態とほぼ同じであるため、以下では
図1ないし
図5も参照しつつ主として第1実施形態と相違する点について説明することとする。
【0045】
本実施形態では、
図6に示すように、上記した第1実施形態における支持体25に代えて、上面に1つの当接面を有する支持体25’を用い、支持体25’の上面に、弾性を有する緩衝シートSAを貼り付けて緩衝層を形成し、ブレーキングに使用するブレード5a,5b,5cのいずれかと支持体25’との間に、保持枠21に保持された基板20を配置するとともに、ブレーキング対象であるブレーキング予定線20aが、ブレーキングに使用するブレード5a,5b,5cのいずれかの先端と支持体25’との間に位置するように、走行体2a及びベース板2bの移動、及び、上記した回転機構による回転板2cの回転により基板20の位置を微調整し、支持体25’による下1点とブレードによる上1点の2つの支持点において、基板20をブレーキング対象であるブレーキング予定線20aで支持しつつブレーキングを行うようにした点が、上記した第1実施形態と異なる。
【0046】
なお、緩衝シートSAは、例えば厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)のベース材の下面に厚さ180μmの例えばアクリル系粘着剤から成る粘着層が形成され、粘着層が支持体25’の上面に貼り付けられている。なお、緩衝シートSAは、シリコンゴムをはじめ、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、EPDM、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどのゴムシートに粘着層を形成したものや、PP(ポロプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポロエチレン)、ポリオレフィン、アクリル、ポリイミドなどの樹脂製のベース板に粘着層を形成したものであるのが望ましい。
【0047】
本実施形態では、ブレーキングの際、支持体25’と基板20との間に弾性を有する緩衝シートSAが配置されるため、ブレーキングした基板20に生じる過剰な応力が緩衝シートSAにより吸収され、その結果、ブレーキングに使用する加圧シリンダ32a,32b,32cのいずれかの加圧力による過剰な応力によって、ブレーキングされた後の基板20のエッジに欠け(チッピング)が生じることを未然に防止できる。
【0048】
また、格子状のブレーキング予定線20aのうち基板20の周縁に近いブレーキング予定線20aをブレーキングする場合には、
図7に示すように、基板20の周縁に近いブレーキング予定線20aがブレード5a,5b,5cの長さ方向に平行で、かつ、ブレーキングに使用するブレード5a,5b,5cのいずれかの先端と支持体25’との間に配置されてブレーキングが行われるが、その際、左側の当接体27bが基板20の外方にずれてはみ出すことがなく、基板20の当該ブレーキング予定線20aの下方に支持体25’が位置して基板20を下から支えつつ、支持体25’と基板20との間に弾性を有する緩衝シートSAが配置された状態でブレーキングされる。
【0049】
そのため、基板20の周縁に近いブレーキング予定線20aをブレーキングする場合であってもブレーキングに使用する加圧シリンダ32a,32b,32cのいずれかの加圧力による過剰な応力によって、ブレーキングされた後の基板20のエッジに欠け(チッピング)が生じることを未然に防止できる。
【0050】
したがって、第2実施形態によれば、上記した第1実施形態が奏する効果に加えて、支持体25’と基板20との間に介在した弾性を有する緩衝シートSAにより、ブレーキングした後に基板20のエッジに生じる過剰な応力を吸収できるため、従来のように、過剰な応力によってブレーキングされた基板のエッジに欠け(チッピング)が生じるのを未然に防止することができる。
【0051】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0052】
例えば、上記した実施形態では、基板20を、ブレーキング予定線20aの長さに応じて第1~第3領域A1~A3の3つに分けた場合について説明したが、2つの領域或いは4つ以上の領域に分けてもよい。それに伴い、使用するブレードとして2種類或いは4種類以上の刃長の異なるものを用意するとよい。
【0053】
また、本発明の割断手段である下当接部としての支持体25が、上記した第1~第3ブレード5a,5b,5cの刃長のように、複数の異なる長さのものであってもよい。この場合、第1ブレード5aが「第1の上当接部」に、第2、第3ブレード5b,5cが「第2の上当接部」に相当するように、長さによって各支持体が「第1の下当接部」、「第2の下当接部」に相当する。
【0054】
また、上記した実施形態では、基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20a上に曲げ応力を付与する応力付与手段を加圧シリンダ32a,32b,32cとして説明したが、応力付与手段はこのような加圧シリンダ32a,32b,32cに限定されるものではない。
【0055】
また、基板20を保持枠21ごと移動させる移動手段である駆動機構4は、記した構成に限定されるものではない。
【0056】
また、ブレード5a,5b,5c及び支持体25から成る割断手段は、上記した構成に限定されるものではなく、ブレーキング対象のブレーキング予定線20aの上下に位置して基板20の上面及び下面に接離自在に当接する上、下当接部を有するものであって、応力付与手段により基板に対して曲げ応力を付与し得る構成であればよい。
【0057】
また、上記した第2実施形態では、支持体25’の上面に乾燥シートSA(緩衝層)を設けた場合について説明したが、保護シート23を貼り付けない基板20の下面に緩衝シーSAを貼り付けるようにしてもよい。
【0058】
そして、本発明は、基板の下面側に縦横に形成された複数のブレーキング予定線のうち、ブレーキング対象のブレーキング予定線に沿って基板をブレーキングするブレーキング装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 …ブレーキング装置
2c1,2c2…ギヤ(回転機構)
4 …駆動機構(移動手段)
5a,5b,5c …第1、第2、第3ブレード(割断手段、上当接部)
20 …基板
20a …ブレーキング予定線
25,25’ …支持体(割断手段、下当接部)
A1,A2,A3…第1、第2、第3領域
SA …緩衝シート(緩衝層)