(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031718
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】自動車の座席用クッションシート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/882 20180101AFI20240229BHJP
B60N 2/66 20060101ALI20240229BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240229BHJP
A47C 7/42 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60N2/882
B60N2/66
A47C7/38
A47C7/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022144174
(22)【出願日】2022-08-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】522358560
【氏名又は名称】有限会社岸自動車整備工場
(72)【発明者】
【氏名】岸 恵美子
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DA03
3B084FA01
3B087DC09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】体格などの違いによりヘッドレストと後頭がうまく適合せず、また座席も全般的に少し硬く、前屈みなどの無防備な体勢のドライバーが多く見られ、万一の際の安全確保に不安がある。該クッションシートを装着することで自動車座席とヘッドレストの有する本来の高機能を妨げず確実に担保できる本発明を提供する。
【解決手段】体格に合わせ調整した該クッションシートに着座し、体を寄り掛けると頚椎が支えられ保護される。首枕部を中心に体の圧力が
図1、
図2で示した隙間に吸収され分散されて解消。これにより後頭は該クッションシートを介してヘッドレストにぴったり密着し安定することで首筋が伸び、また肩背部、左右腰支持部も座席にぴったり密着する。これらの相乗効果により肩、背中、腰まわりの違和感がなくなり、自然体の正しい姿勢に誘導される。これにより、楽な運転姿勢が保たれ衝撃軽減などの安全面の機能向上効果が期待できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の座席に対して着脱使用するクッションシートであって、着座側の上から順に頭支持部、首枕部、肩背部及び左右腰支持部を一体的に設けてなり、前記左右腰支持部の間を連結する略湾状で薄肉の腰椎保護部を形成したことを特徴とする自動車の座席用クッションシート。
【請求項2】
クッションシートにおける少なくとも首枕部の充填材に低反発ウレタンを用いたことを特徴とする請求項1記載の自動車の座席用クッションシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の座席に着脱し使用するクッションシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の座席は、搭乗者の姿勢に配慮された形状や素材で提案されているが、全ての人にとって心地良いとは限らないので、従来から座席の上に取り付けて使用するクッションシートが提案されている。例えば、首枕体とその下方に背枕体を上下方向一体に複数配置した自動車シート用背当て(特許文献1)は、特にドライバーの首部の疲労を抑え得るとされている。また、自動車シートのヘッドレストに装着するシート枕を、芯材に弾性材を用いた円柱と平板と、これらを下支えする敷板で形成し、全体を布製カバー内に収容して、カバーから伸びるベルトを用いてヘッドレストに装着することにしたもの(特許文献2)では、後頭部を下方から支え、前屈みにならず背筋を伸ばして正しい姿勢で運転でき、身体への負担もなくなり長距離運転も快適になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記自動車シート用背当ては、首枕体だけが大きく突出しているために、座席のヘッドレストと搭乗者の後頭部との間に大きな隙間が生ずる。また首枕体、背枕体は所定の形状を保持させるために緩衝材で構成しているので、自動車座席やヘッドレストの表面に添いづらく、座席等が本来有している姿勢保持機能の妨げになる。この点、前記自動車のシート枕も同様であり、両先行技術共に、搭乗者の背中側にも違和感が生ずる。
【0006】
また、前記先行技術では、搭乗者の首や背中に対する配慮は一応なされているが、腰に対する配慮は一切なされていない。腰の上あたり(胸椎の最下部)までしか設けられていない背枕体は、かえって搭乗者の腰痛に悪影響を与える。また、従来の自動車座席やヘッドレストは全般的に少し硬いので、特に高齢者や女性、体調の悪い人のような弱者には心地よいものとはいえない。
【0007】
そこで本件発明は、とくに腰痛持ちの搭乗者に配慮しながら、身体にやさしいソフトな素材を用いたクッションシートを頭支持部から左右腰支持部に至るまで一体的に設けたことで、搭乗者の身体に馴染みやすく背面に違和感を生じることがなく、また本来の自動車座席やヘッドレストにピッタリと添って、自動車座席本来の安全機能を損なわないクッションシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、自動車の座席に対して着脱使用するクッションシートとして、着座側の上から順に頭支持部、首枕部、肩背部及び左右腰支持部を一体的に設けてなり、前記左右腰支持部の間を連結する略湾状で薄肉の腰椎保護部を形成した。
【0009】
また、前記クッションシートにおける少なくとも首枕部の充填材として、低反発ウレタンを用いた。
【発明の効果】
【0010】
頭支持部から左右腰支持部までを一体的に設けたクッションシートとし、とくに少なくとも首枕部の充填材として低反発ウレタンを用いることによって、搭乗者の後首と座席との隙間を埋めるとともに後頭部がヘッドレストから浮くことを防止し、背中側全体を包み込むように、自動車の座席に沿って装着することができるうえに、自動車メーカー各社が研究開発した座席の安全機能などを損なうことがない。
【0011】
本発明では、特に左右腰支持部の間に凹みを設け、その間を連結する略湾状で薄肉の腰椎保護部を形成したことにより、使用状態においても腰椎保護部で連結された左右腰支持部が不用意に開放し身体の外にはみ出してしまうことがなく、しっかりと左右の腰を支持しながらも、略湾状で薄肉とした腰椎保護部があるために搭乗者の腰椎にはクッションシートの余分な圧力が加わることがないので、腰痛からの保護が図られる。
【0012】
すなわち、首枕部をちょうどよい首の高さに調整し、本発明に係るクッションシートを、自動車の座席本体とヘッドレストに各々設けたベルトを用いて固定し取り付けることで、搭乗者の頚椎が首枕部によりしっかりと支えられ保護される。充填材として低反発ウレタンを用いることで、着座して寄り掛かると、身体の圧力でクッションシートが変形し、身体との隙間が解消される。首枕部で頸椎が安定するとともに、頭支持部があるために後頭部がヘッドレストから浮いてしまうことがなく、クッションシートを介して搭乗者の身体全体が安定し、首筋が伸び、正しい姿勢が保たれる。腰椎保護部があるために、腰椎も圧迫されない。一体型としたことで、違和感もなく、肩と背中、腰まわりも優しく包まれて、快適な座り心地の実現と、疲れにくい運転姿勢が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】 クッションシートを使用しない場合の隙間状態を示す側面図である。
【
図2】 本発明に係るクッションシートの使用状態を示す側面図である。
【
図3】 本発明を内皮(内カバー)に封入した内部構造を示す正面側である。
【
図5】
図3のクッションシートをさらに外皮(外カバー)に収容した正面図である。
【
図6】 本発明に係るクッションシートを自動車座席に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、クッションシート3を使用しない場合の隙間状態を示す側面図である。一般的な自動車座席1に座ると、ヘッドレスト2と搭乗者の身体との間、とくに後頭部と頸部との間に隙間が生じている状態を示している。
図2は、本発明に係るクッションシート3の使用状態を示す側面図であり、クッションシート3を取り付けると、着座した搭乗者の後首を中心に後頭部から身体全体に至るまで、ヘッドレスト2や座席1との間の隙間が頭支持部4、首枕部5、肩背部6及び左右腰支持部7・8によって埋められていることがわかる。
【0015】
図3は、本発明に係るクッションシート3を内皮(内カバー)10により封入した内部構造を示す正面図である。製造方法の一例を挙げると、まず、綿布等を用いて袋状に縫製した内皮(内カバー)10を製作し、その中に頭支持部4、首枕部5、肩背部6、左右腰支持部7・8そして腰椎保護部9とを上から順に配置するが、各部の境界部分15(a)毎に、充填材の位置がずれないよう縫合することで、クッションシート3全体が一体的に内皮(内カバー)10に収容された状態となる。とくに首枕部5は、搭乗者の頸椎を優しく包み込むために、寝具の枕などに用いられている低反発ウレタンが好ましく、頭支持部4など他の部位には、首枕部5と同じ低反発ウレタンか、あるいは柔軟性のあるスポンジなどの弾性材を用いてもよい。
【0016】
図3に示された腰椎保護部9は、腰椎最上部11から下方に向け形成され、搭乗者の腰椎を圧迫しないように、他の部位よりも薄肉の充填材を入れて凹みとする。これに対して、腰椎保護部9の両脇に位置する左右腰支持部7・8は、肉厚の充填材で形成する。腰椎保護部9は略湾状をなす程度で幅広には形成していないので、腰痛を持たない健常者にも違和感を与えない。
【0017】
図4は、前記
図3の側面図であり、首枕部5が他の部位より突出して肉厚に形成されている状態を示している。すなわち、首枕部5は、搭乗者の頚椎の保護とヘッドレスト2との隙間を埋めるために大きく突出しているが、圧力により大きく変形する低反発ウレタンを充填材としているので、
図2に示されるように、自動車座席1及びヘッドレスト2と、座席搭乗者との隙間を埋めることとなる。そのため、搭乗者の姿勢が良くなり、ヘッドレスト2の本来的機能を阻害せず、補完的役割を担う。
【0018】
図5は、
図3に示した内皮(内カバー)10で包むように製作したクッションシート3をさらに外皮(外カバー)14に収容した正面図である。外皮(外カバー)14は、内皮(内カバー)10と同じく袋状に縫製したもので、表面には身体に密着しない座り心地のよい素材を、裏面には伸縮性が高く座席に密着し易い素材を用いる。この外皮(外カバー)14は、内皮(内カバー)10と二重にして完全に縫合するが、とくに腰椎保護部9における左右腰支持部7・8との境界部分16(b)は、位置の安定(開かない)と突っ張らないようにするために、外皮(外カバー)14の上から、布が伸びても糸が切れにくい伸縮性のある縫い目の縫製(伸縮縫い)を施す。
【0019】
さらに
図5に示した本発明に係るクッションシート3では、自動車座席1に着脱固定するためのヘッドレスト用ベルト12を頭支持部4の左右側縁に、自動車座席用ベルト13を肩背部6の左右側縁に、それぞれ設けている。首枕部5を搭乗者の後首位置に合わせて、ヘッドレスト用ベルト12を連結してヘッドレスト2に固定する。自動車座席1におけるヘッドレスト2には、一体型と別型があるので、いずれの形状にも対応し、ずり落ちないように、
図7で示すように交差して連結するとよい。次いで、肩背部6の両脇に設けた自動車座席用ベルト13を自動車座席1の背後に回して連結する。ヘッドレスト用ベルト12、自動車座席用ベルト13は、いずれも長さ調整可能とし着脱が容易な、ワンタッチバックル、ゴムバンド、布ベルトなどで構成する。
【0020】
図6は、本発明に係るクッションシート3を自動車座席1に取り付けた状態を示す斜視図、
図7は、その背面図である。クッションシート3は、運転席と助手席に装着できるばかりでなく、自動車座席用ベルト13を取り付けずに後部座席にも装着可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 自動車座席
2 ヘッドレスト
3 クッションシート
4 頭支持部
5 首枕部
6 肩背部
7 左腰支持部
8 右腰支持部
9 腰椎保護部
10 内皮(内カバー)
11 腰椎最上部
12 ヘッドレスト用ベルト
13 自動車座席用ベルト
14 外皮(外カバー)
15 境界部分(a)
16 境界部分(b)
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の座席に対して着脱使用するクッションシートであって、着座側の上から順に頭支持部、首枕部、肩背部及び左右腰支持部を一体的に設けてなり、前記左右腰支持部の間を連結し、搭乗者の腰椎最上部から下方に向け形成された略湾状で薄肉の腰椎保護部を形成したことを特徴とする自動車の座席用クッションシート。
【請求項2】
クッションシートにおける少なくとも搭乗者の後首と座席の隙間を埋める首枕部の充填材に低反発ウレタンを用いたことを特徴とする請求項1記載の自動車の座席用クッションシート。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の座席に対して着脱使用するクッションシートであって、着座側の上から順に頭支持部、首枕部、肩背部及び左右腰支持部を一体的に設けてなり、少なくとも搭乗者の後首と座席の隙間を埋める首枕部の充填材に低反発ウレタンを用い、前記左右腰支持部の間を連結し、搭乗者の腰椎最上部から下方に向けた略湾状で薄肉の腰椎保護部を形成して、該クッションシート全体を一体的に内カバーに収容して、頭支持部から左右腰支持部に至る部分を位置固定したことを特徴とする自動車の座席用クッションシート。