(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031738
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】成形品取出機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240229BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199507
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2022132828の分割
【原出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】喜田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】白崎 篤司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一貴
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM04
4F202AR02
4F202AR07
4F202AR11
4F202AR16
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL12
4F202CL42
4F202CM11
4F202CS07
4F206AM04
4F206AR02
4F206AR07
4F206AR11
4F206AR16
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL07
4F206JM06
4F206JN41
4F206JP11
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP22
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】オンオフ制御を維持して、しかもユーザ設定下限値の設定が容易な成形品取出機を提供する。
【解決手段】負圧制御部9は、変曲点がユーザ設定下限値より低くならないように吸引動作を再開するために用いる圧力弁再開時間期間Tvを定める圧力弁再開時間期間決定部92を備える。負圧制御部9は、吸引動作を中止した後圧力弁再開時間期間Tvが経過するまで圧力弁34を閉状態にするオフ動作と、圧力弁34を開状態にして負圧が安定値または上限設定値に達するまで圧力弁を開状態にするオン動作を、成形品の吸着解除まで継続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機の金型内の成形品を吸着する吸着部を備えたアタッチメントと、
予め定めた動作シーケンスに従って前記アタッチメントを移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御する移動機構制御部と、
前記吸着部と前記成形品との間に形成される空間を負圧にするために前記吸着部と真空発生装置との間に設けられたエアー流路と、該エアー流路中に配置された圧力弁及び圧力検出器を備え、前記圧力弁を開いた後に前記負圧が変曲点まで低下してから上昇を開始する変化特性を有する負圧発生回路と、
前記真空発生装置または前記圧力弁を制御して前記負圧を制御する負圧制御部を備え、
前記負圧制御部が、吸引開始指令を受信すると前記圧力弁を開状態にして吸引動作を開始し、前記エアー流路を流れるエアーの負圧が安定値または上限設定値に達すると前記圧力弁を閉状態にして吸引動作を中止し、その後前記安定値または前記上限設定値よりも低いユーザ設定下限値に基づいて前記圧力弁を開状態にして吸引動作を再開するオンオフ制御を繰り返すように構成されている成形品取出機であって、
前記負圧制御部は、前記変曲点が前記ユーザ設定下限値より低くならないように吸引動作を再開するために用いる圧力弁再開時間期間を定める圧力弁再開時間期間決定部を備えており、
前記負圧制御部は、前記オンオフ制御において、前記吸引動作を中止した後前記圧力弁再開時間期間が経過するまで前記圧力弁を閉状態にするオフ動作と、前記圧力弁を開状態にして前記負圧が前記安定値または上限設定値に達するまで前記圧力弁を開状態にするオン動作を繰り返すことを特徴とする成形品取出機。
【請求項2】
前記負圧制御部は、前記圧力弁をオンオフ制御することにより、前記真空発生装置での消費電力を低減する電力低減モードと、前記オンオフ制御を行わない電力非低減モードと、前記圧力弁のオンオフ制御を可変とすることにより、前記電力低減モードよりも消費電力は多いが前記電力非低減モードの消費電力よりも消費電力が少なくなる中間電力低減モードを選択可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形品取出機。
【請求項3】
前記負圧制御部は、前記電力非低減モード、前記電力低減モード及び前記中間電力低減モードを自動的に決定する制御モード決定部をさらに備えている請求項2に記載の成形品取出機。
【請求項4】
前記制御モード決定部は、運転開始時の前記負圧を検出し、検出した前記負圧の変化の傾きに応じて前記電力非低減モード、前記電力低減モード及び前記中間電力低減モードのいずれかを選択して決定する請求項3に記載の成形品取出機。
【請求項5】
前記制御モード決定部は、運転中の前記負圧の変化を検出し、検出した前記負圧の変化の傾きに応じて前記電力非低減モード、前記電力低減モード及び前記中間電力低減モードのいずれかを選択して決定する請求項3に記載の成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着部に作用させる負圧をオンオフ制御してエアー消費量を削減する機能を有する成形品取出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第4779004号公報には、吸着部に作用させる負圧をオンオフ制御してエアー消費量を削減する従来の成形品取出機が開示されている。従来の成形品取出機は、成形機の金型内の成形品を吸着する吸着部を備えたアタッチメントと、予め定めた動作シーケンスに従ってアタッチメントを移動させる移動機構と、吸着部と成形品との間に形成される空間を負圧にするために吸着部と真空発生装置との間に設けられたエアー流路、エアー流路中に配置された圧力弁及び圧力検出器を含む負圧発生回路と、真空発生装置または圧力弁を制御して負圧を制御する負圧制御部を備えている。また安定値に代えて上限設定値を用いる技術も知られている。そして負圧制御部が、吸引開始指令を受信すると圧力弁を開状態にして吸引を開始し、エアー流路を流れるエアーの負圧が安定値に達すると圧力弁を閉状態にして吸引動作を中止し、その後負圧が安定値よりも低いユーザ設定下限値に達すると圧力弁を開状態にして吸引動作を再開するオンオフ制御を、吸引停止指令を受信するまで繰り返すように構成されている。ここでユーザ設定下限値は、ユーザが自己の経験に基づいて、任意に設定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の研究によると、吸着部と真空発生装置との間に設けられたエアー流路中に圧力弁が配置された負圧発生回路を用いる場合、圧力弁を開状態にした後に直ちに負圧が上昇することはなく、圧力弁を開いた後に更に負圧が変曲点まで低下し、その後から負圧が上昇を開始する落ち込み現象が発生することが判った。このような現象があると、ユーザ設定下限値を圧力弁開時期として利用すると、負圧がユーザ設定下限値に達した後に上昇するまでの間に、負圧不足により成形品が落下する問題が発生することがある。これは作業者が設定したユーザ設定下限値が、低すぎて、圧力弁が開かれた以降の負圧の低下が、成形品を吸着維持するためには、不十分な圧力になる場合があるからである。そのため作業者が、オンオフ制御を有効に利用してエアーの消費量を削減し、しかも成形品の脱落を防ぐことができるユーザ設定下限値を設定しようとすると、ユーザ設定下限値の設定及び試し運転を複数回行って、作業者にとって納得のいく、ユーザ設定下限値を見つけ出す作業に苦労することがある。
【0005】
本発明は、オンオフ制御を維持して、しかもユーザ設定下限値の設定が容易な成形品取出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成形品取出機は、成形機の金型内の成形品を吸着する吸着部を備えたアタッチメントと、予め定めた動作シーケンスに従ってアタッチメントを移動させる移動機構と、吸着部と成形品との間に形成される空間を負圧にするために吸着部と真空発生装置との間に設けられたエアー流路と、該エアー流路中に配置された圧力弁及び圧力検出器を備え、圧力弁を開いた後に前記負圧が変曲点まで低下してから上昇を開始する変化特性を有する負圧発生回路と、真空発生装置または圧力弁を制御して負圧を制御する負圧制御部を備えている。そして成形品取出機の負圧制御部は、吸引開始指令を受信すると圧力弁を開状態にして吸引動作を開始し、エアー流路を流れるエアーの負圧が安定値または上限設定値に達すると圧力弁を閉状態にして吸引動作を中止し、その後安定値または上限設定値よりも低いユーザ設定下限値に基づいて圧力弁を開状態にして吸引動作を再開するオンオフ制御を繰り返すように構成されている。本発明で用いる負圧制御部は、変曲点がユーザ設定下限値より低くならないように吸引動作を再開するために用いる圧力弁再開時間期間Tvを定める圧力弁再開時間期間決定部を備えている。そして負圧制御部は、オンオフ制御において、吸引動作を中止した後圧力弁再開時間期間Tvが経過するまで圧力弁を閉状態にするオフ動作と、圧力弁を開状態にして負圧が安定値または上限設定値に達するまで圧力弁を開状態にするオン動作を繰り返す。本発明によれば、負圧の変化特性の変曲点が、作業者が設定したユーザ設定下限値より下がることがないように、圧力弁再開時間期間Tvを定めるので、ユーザ設定下限値で直接的に圧力弁開時期を決定している感覚を作業者に与えることができる。そのためユーザ設定下限値の設定作業が、従来よりも、容易でかつスムーズに行える利点が得られる。
【0007】
圧力弁再開時間期間決定部は、負圧が低下を開始した直後の負圧の変化の傾きAを検出する負圧変化傾き検出手段と、負圧が低下を開始するときの負圧の値Poとユーザ設定下限値Puと傾きAとに基づいて、負圧が低下を開始してから変曲点を越えることが予想されるまでの予想時間期間Tpを演算する第1の演算部と、予想時間期間Tpに基づいて、圧力弁再開時間期間Tvを決定する第2の演算部とから構成することができる。
【0008】
第1の演算部で用いる式は、1つの式に限定されるものではないが、例えば、Tp=(Po-Pu)/Aの式を用いることができる。この種の式であれば、演算が容易であり、迅速に演算することができる。
【0009】
また第2の演算部は、吸引動作を再開してから負圧が立ち上がるために必要な応答遅れ時間期間をTw2としたときに、圧力弁再開時間期間Tvを予想時間期間Tpと応答遅れ時間期間Tw2に基づいて演算する。第2の演算部で用いる式は、1つの式に限定されるものではないが、例えば、圧力弁再開時間期間TvはTv=Tp-Tw2の式により演算することができる。またこの式を用いる場合において、応答遅れ時間期間Tw2に安全率を掛けてもよいのは勿論である。この種の式であれば、演算が容易であり、迅速に演算することができる。
応答遅れ時間期間Tw2の定め方は1つではなく、単純には、事前の試験により測定した固定値でもよい。また応答遅れ時間期間Tw2は、吸着部を交換した際に、テスト動作または実際の成形動作で空吸いを行い、このときに測定した空吸い応答遅れ時間期間Tdでもよい。さらに応答遅れ時間期間Tw2は、実サイクルにおける測定において、圧力弁再開時間期間Tvが予想時間期間Tpに徐々に近づくように定めてもよい。
【0010】
負圧制御部は、圧力弁をオンオフ制御することにより、真空発生装置での消費電力を低減する電力低減モードと、オンオフ制御を行わない電力非低減モードと、圧力弁のオンオフ制御を可変とすることにより、電力低減モードよりも消費電力は多いが前記電力非低減モードの消費電力よりも消費電力が少なくなる中間電力低減モードを選択可能に構成されていてもよい。このようにすると成形品の形状や吸着部の性能に応じて、モードを選択することができるので、成形品の落下ミスの発生を抑制することができる。また制御モードが選択可能であれば、操作者の判断でオンオフ制御を行わない選択をすることができるので、熟練操作者の意思を尊重することができる。
【0011】
なお制御モードの選択は、自動で選択できるようにしてもよい。負圧制御部は、制御モードを自動選択して決定するために、制御モード決定部を備えている。制御モード決定部が、電力非低減モード、電力低減モード及び中間電力低減モードを自動的に選択して決定する際の、選択・決定方法は任意である。例えば、制御モード決定部は、運転開始時の負圧を検出し、検出した負圧の変化の傾きに応じて電力非低減モード、電力低減モード及び中間電力低減モードのいずれかを選択ように構成することができる。また制御モード決定部は、運転中の負圧の変化の傾きに応じて電力非低減モード、電力低減モード及び中間電力低減モードのいずれかを選択するように構成することができる。運転中においても、制御モード決定部は、制御モードの変更が可能になれば、吸着ノズルの経年変化による負圧の変化に応じて、適切な制御モードを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】樹脂成形機から樹脂成形品を取り出す本発明の実施の形態の成形品取出機の構成の主要部をブロックで示すブロック図である。
【
図3】吸着動作時の負圧の変化を説明するために用いる図である。
【
図4】オンオフ制御を行う際の負圧の変化の状態を示す図である。
【
図5】オンオフ制御を行う際のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図6】電力低減モードを選択した条件下において、正常時(実線)と真空漏れが発生した発生した場合(破線)の、負圧変化を示す図である。
【
図7】自動選択を実施する場合のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の成形品取出機の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、樹脂成形機11から樹脂成形品を取り出す本発明の実施の形態の成形品取出機1の構成の主要部をブロックで示すブロック図である。成形品取出機1は、真空吸着装置3と、移動機構5と、制御装置7とを備えている。真空吸着装置3は、成形品を吸着する吸着部としての吸着ノズル31と、エアー流路32を介して吸着ノズル31と接続され、吸着ノズル31に真空圧を作用させる真空発生装置33と、真空発生装置33と吸着ノズル31との間のエアー流路32に設けられ、真空発生装置33と吸着ノズル31との連通又は連通の遮断を行なう圧力弁34と、圧力弁34と吸着ノズル31との間のエアー流路32内の圧力を検出する圧力検出器35とを備えている。なお吸着ノズル31は、移動機構5によって移動させられる取出ヘッド6(アタッチメント)に装着されている。
【0014】
移動機構5が周知の三軸移動機構すなわちXYZ型の移動機構である場合には、
図2に示すように成形品を取り出す取出操作をする際には、Z軸及びY軸に沿って移動して吸着ノズル31を備えた取出ヘッド6を、待機位置(下降開始位置)→下降位置→取出位置→引抜位置→上昇位置の順路で移動させる。そして、移動機構5は取出位置において、成形機11の成形型12からエジェクタピンの突出動作により押し出される成形品を吸着ノズル31により吸着して取り出す。その後上昇位置から図示しない開放位置まで、移動機構5は吸着ノズル31を装着した取出ヘッド6を移動させる。開放位置では、吸着ノズル31による吸着が解除されて、成形品MPは開放位置で開放される。
【0015】
制御装置7は、真空発生装置33及び圧力弁34の作動制御と移動機構5の駆動制御とを実行する。
図1に示すように、本実施の形態では、制御装置7は、移動機構5を制御する移動機構制御部81と、後述する時間期間計数部82と、時間期間計数部82の出力に基づいて移動機構制御部81に吸引動作を開始させるために吸引動作開始時期を知らせる吸引動作開始時期決定部83と、負圧制御部9を備えている。
【0016】
負圧制御部9は、負圧制御部9は、安定値または上限設定値検出部91と、負圧変化の傾き検出部92A、第1の演算部92B及び第2の演算部92Cを備えた圧力弁再開時間期間決定部92と、ユーザ設定下限値検出部93と、下限値設定部94と、応答遅れ時間期間記憶部95と、真空発生装置制御部96と、制御モード決定部97と、制御モード選択部98と制御モード選択部98を備えている。
【0017】
本実施の形態の成形品取出機においては、吸着ノズル31と成形品との間に形成される空間を負圧にするために吸着ノズル31と真空発生装置33との間に設けられたエアー流路32と、該エアー流路32中に配置された圧力弁34及び圧力検出器35とから、圧力弁34を開いた後に負圧が変曲点まで低下してから上昇を開始する変化特性を有する負圧発生回路が構成されている。負圧制御部9は、真空発生装置33または圧力弁34を制御して負圧を制御する。負圧制御部9は、吸引動作開始時期決定部83から吸引開始指令を受信すると、圧力弁34を開状態にして吸引動作を開始し、エアー流路32を流れるエアーの負圧が安定値または上限設定値に達すると圧力弁を閉状態にして吸引動作を中止する。その後負圧制御部9は、圧力弁34を開状態にして吸引動作を再開するオンオフ制御を、吸着ノズル31による成形品の吸着を解除するときまで繰り返す。
【0018】
本実施の形態では、負圧制御部9は、負圧発生回路の特性中の変曲点がユーザ設定下限値より低くならないように吸引動作を再開するために用いる圧力弁再開時間期間Tvを定める圧力弁再開時間期間決定部92を備えている。負圧制御部9の構成及び機能については、吸着開始までの動作について説明した後に詳しく説明する。
【0019】
(吸着開始までの動作)
図3に基づいて、移動機構制御部81を用いた吸着開始までの動作の一例を説明する。予め定めた当初吸引開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として、当初吸引開始位置P0で圧力弁を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着ノズル31を成形品に向かって近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出した時刻から吸着ノズル31が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出する時刻までの時間期間を基準時間期間T0として取得する。この基準時間期間T0から合計時間期間T1を引いた時間期間を遅れ時間期間Δtとし、この遅れ時間期間Δtから吸引動作開始時期を決定できる。時間期間の計数は、時間期間計数部82により実行する。
【0020】
この所定圧力は、圧力検出器35の出力からエアー流路32内の圧力がわずかな変化幅(Δp)に入っている時間期間(バイアス時間期間Tbに相当)を経過すれば、所定の圧力に到達したと認識され、且つ安定圧力に到達したと認識される。
【0021】
この安定時間期間T3は、少なくともエジェクタピンの動作時間にバラツキがあるため、取出サイクル毎に変動する。そのため合計時間期間T1=Ttr1+T3も変動することになる。圧力検出器35の出力は、微妙に変動しているため、エアー流路32内の圧力が所定圧力に到達した後バイアス時間期間Tb(この時間期間においても圧力検出器35の出力は微妙に変動している)を経過して初めて吸着動作開始圧力を正しく検知できる安定圧力になったと判断する。本実施の形態では、安定時間期間T3がバイアス時間期間Tbよりも長くなるように、吸引動作開始時期決定部83が吸引動作開始時期を決定しているので、吸引動作開始時期決定部83が決定した吸引動作開始時期を用いて取出動作を行えば、落下ミスが生じるおそれがなくなる。
【0022】
本実施の形態では、制御装置7の吸引動作開始時期決定部83が、圧力弁34を開いて真空発生装置33による吸引動作を開始し、移動機構5により吸着ノズル31を成形品に近づける動作を行っていく過程で、圧力検出器35が所定圧力を検出してから吸着ノズル31が成形品を吸着する動作を開始したことを示す吸着動作開始圧力を検出するまでの安定時間期間T3が、バイアス時間期間Tbよりも長くなるように吸引動作開始時期を決定している。
図3に示すように、具体的に吸引時のエアーの消費量を少なくするためには、取出サイクル毎に遅れ時間期間Δti(当初吸引開始位置P0を吸着ノズル31が通過する時刻を0として吸引動作を開始するまでの時間期間)を増加させることにより合計時間期間Ttr1+T3を減少させて、安定時間期間T3をバイアス時間期間Tbに近付ける動作(吸引動作開始時期を0→t1→t2のように変える動作)を制御装置7の吸引動作開始時期決定部83が自動で行う。但し、この動作は、安定時間期間T3がバイアス時間期間Tbよりも長くなるという条件の下で行う必要がある。安定時間期間T3が、バイアス時間期間Tbよりも長くなるように吸引動作開始時期を制御装置7の吸引動作開始時期決定部83が決定すると、オペレータは圧力検出器35が問題無く動作して落下ミスを防止できる吸引動作開始時期(遅れ時間期間Δti(に相当する)を自分で試行錯誤して決定する必要が無くなる。
【0023】
(負圧制御部9の構成と動作)
吸着ノズル31による吸着を開始した後の負圧の特性の変化と負圧制御部9による本実施の形態で採用するオンオフ制御について説明する。
図4は、吸着ノズル31における負圧の変化特性を示している。取出動作時に、成形品に吸着ノズル31の吸着パッドが当接する前に吸引を開始する(点a)が、エアー流路内のエアーを排気するための時間がある程度必要であるため、時間期間Tw1だけ遅れて負圧は立ち上がる(
図4の点b)。この時間期間Tw1を空吸い時のレスポンス期間と呼ぶ。成形品に吸着ノズル31の吸着パッドが当接すると、負圧がさらに上昇し(点c)、その後負圧が安定したら吸引を停止する(点d)。負圧が安定したか否か(安定値に達したか否か)は、負圧の変化が0に近い値になったか否かにより判定することができる。なお予め上限設定値を設定してもよいのは勿論である。安定値に達したか上限設定値に達したかは、安定値または上限設定値検出部91により検出する。この検出を受けて真空発生装置制御部96が圧力弁34に閉指令を出力することにより吸引が停止される。
【0024】
エアー流路等のわずかなエアー漏れにより、負圧が徐々に低下するため、負圧の変化の傾き検出部92Aはこの負圧の低下の傾きAを点eで算出する。具体的には、圧力弁34を閉じて、吸引を停止した(吸引OFFした)時刻(点d)における圧力Poと所定の時間Tmが経過した際の圧力Pmから傾きAを算出する。負圧変化の傾き検出部92Aがこの負圧の傾きAを、A=Po-(Pm/Tm)で算出する。なお、所定の時間Tmは設計段階で任意に設定することができる。
【0025】
傾きAを用いて、吸引OFFした点dから負圧が変曲点(点g)を越えることが予想されるまでの予想時間期間Tpを第1の演算部92Bが演算により求める。第1の演算部92Bは、ユーザ設定下限値をPuとしたときに、例えば、予想時間期間TpをTp=(Po-Pu)/A]の式で求めることができる。ここでいう予想時間期間Tpは、吸引をOFFにした点dを時刻0として定められたものである。ユーザ設定下限値Puの設定値は、図示しないコントローラに実装される下限値設定部94により設定される。負圧がユーザ設定下限値Puに達したことをユーザ設定下限値検出部93が検出すると、真空発生装置制御部96は吸着ノズル31による吸着動作を再開する。この場合には、圧力弁再開時間期間決定部92の決定結果に優先してユーザが設定したユーザ設定下限値Puの設定値に基づいて圧力弁が再開されることになる。しかし、このときのユーザ設定下限値Puは、成形品の落下が発生しない安全な範囲の値(高い範囲の値)であるため、ユーザの設定を優先させることにより支障は発生しない。言い換えると、圧力弁再開時間期間決定部92の決定結果が優先されるのは、成形品の落下が発生することがあるほどに、ユーザ設定下限値Puが低い場合であると言える。
【0026】
第2の演算部92Cは、予想時間期間Tpに基づいて、圧力弁再開時間期間Tvを演算して決定する。本実施の形態で用いる第2の演算部92Cは、吸引動作を再開してから負圧が立ち上がるために必要な応答遅れ時間期間をTw2としたときに、圧力弁再開時間期間TvをTv=Tp-Tw2の式により演算する。なお応答遅れ時間期間Tw2に安全率を掛けるようにしてもよいのは勿論である。この種の式であれば、演算が容易であり、迅速に演算することができる。応答遅れ時間期間は、応答遅れ時間期間記憶部95に記憶される。
【0027】
本実施の形態では、負圧の変化特性の変曲点が、作業者が設定したユーザ設定下限値より下がることがないように、圧力弁再開時間期間Tvを定めるので、ユーザ設定下限値で直接的に圧力弁開時期を決定している感覚を作業者に与えることができる。
【0028】
ここで応答遅れ時間期間Tw2の定め方は1つではなく、単純には、事前の試験により測定した固定値でもよい。また応答遅れ時間期間Tw2は、吸着ノズル31を交換した際に、テスト動作または実際の成形動作で空吸いを行い、このときに測定した空吸い応答遅れ時間期間Tw1でもよい。さらに応答遅れ時間期間Tw2は、実サイクルにおける測定において、圧力弁再開時間期間Tvが予想時間期間Tpに徐々に近づくように定めてもよい。
【0029】
図5は、負圧制御部9をコンピュータを用いて構成して、特にオンオフ制御を実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャーとである。このアルゴリスムでは、ステップST1で吸着開始指令の入力の有無を確認する。吸着開始指令は、吸引動作開始時期決定部83が出力する。吸着開始指令が入力されると、ステップST2により圧力弁34が開かれて、負圧が増加する(負圧が強くなる)。圧力弁34が開かれると、ステップST3において負圧が安定値または上限設定値に達したか否かの判断がされる。この判断は安定値または上限設定値検出部91によって実行される。負圧が安定値または上限設定値に達すると、ステップST4で圧力弁34が閉じられて、負圧が減少を開始する(負圧が弱くなる)。そしてステップST5において、圧力弁再開時間期間Tvの決定がなされる。このステップは、圧力弁再開時間期間決定部92によって実行される。ステップST6によって、圧力弁再開時間期間Tvの経過が判定されると、ステップST7により圧力弁34が再開される。この後、負圧はさらに減少して変曲点を経た後に増加する(負圧が強くなる)。吸着解除指令が入力されるまでは、ステップST3からステップST8が繰り返される。これによってオンオフ制御が実施される。そして移動機構制御部81から吸着解除指令が出力されると、開放位置において成形品の吸着が解除される。
【0030】
なお
図5のアルゴリズムは、ユーザによるユーザ下限値の設定に従うと、成形品の落下が発生する場合に機能するものである。ユーザ設定下限値が成形品の落下が発生しない値であれば、負圧がユーザ設定下限値に達したことをユーザ設定下限値検出部93が検出すると、その時点から真空発生装置制御部96は圧力弁の再開を開始し、以後、ユーザ設定下限値に基づいてオンオフ制御が実行される。また吸着解除指令が出力された後でも、直ちに吸着を解除せずに、オンオフ制御の終了後に、成形品の吸着を解除するようにしてもよいのは勿論である。
【0031】
本実施の形態では、負圧制御部9は、圧力弁34をオンオフ制御することにより、真空発生装置での消費電力を低減する電力低減モードと、オンオフ制御を行わない電力非低減モードと、圧力弁のオンオフ制御を可変とすることにより、電力低減モードよりも消費電力は多いが電力非低減モードの消費電力よりも消費電力が少なくなる中間電力低減モードを選択可能に構成されているように、制御モード選択部98と制御モード決定部97を備えている。制御モード選択部98により選択された制御モードが、電力低減モードと中間電力低減モードの場合に、上記のオンオフ制御が実施される。選択された制御モードが電力非低減モードの場合、真空発生装置制御部96は、オンオフ制御を実施しない。モード選択ができると、成形品の形状や吸着部の性能に応じて、制御モードを選択することができるので、成形品の落下ミスの発生を抑制することができる。
【0032】
なお制御モードの選択は、制御モード決定部97に成形品の形状や吸着部の性能に応じて、電力非低減モード、電力低減モードまたは中間電力低減モードを自動で決定する機能を持たせれば、自動で選択することが可能になる。
【0033】
図6に基づいて、制御モード決定部97により、電力非低減モード、電力低減モードまたは中間電力低減モードを自動で選択する場合の一例について以下に説明する。作業者は、成形品を安定的に吸着できるのであれば、当然に最大限の省エネ効果を得たいと考えている。しかし、吸着ノズルのパッドの破れなどの影響により「真空漏れ」が発生することがある。
図6は、電力低減モードを選択した条件下において、正常時(実線)と真空漏れが発生した発生した場合(破線)の、負圧変化を図示したものである。正常時(実線)では、吸引をOFFにした後に、負圧がユーザ設定下限値Puに達した後に圧力弁34がONし、負圧が変曲点(点g)を越えた後に圧力弁が再度ONとなる。以後、この状態でオンオフが繰り返される。真空漏れ発生時は、負圧の減少が正常時よりも速くなり、負圧の変化の傾きAが大きくなる。負圧の変化の傾き検出部92Aはこの負圧の低下の傾きAを点e´で算出する。前述のとおり、圧力弁34を閉じて、吸引を停止した(吸引OFFした)時刻(点d)における圧力Poと所定の時間Tmが経過した際の圧力Pmから傾きAを算出する。この場合に、
図6に破線で示すように、ユーザ設定下限値Puを基準に再吸引していては、負圧上昇開始までに成形品を吸着維持できない圧力になってしまう場合がある。そこで負圧の変化の傾きAを用いて、真空漏れの発生を判断して、電力低減モードから中間電力低減モードに自動で変えれば、負圧がユーザ設定下限値Puを下回らないように圧力弁間再吸引時刻Tv´を設定することになる。その結果、負圧の変化の傾きAが大きい場合は、正常時の圧力弁再開時間期間Tvは図のように前倒しの圧力弁再開時間期間Tv´となる。こうすることにより製品の落下を防ぐことができる。この場合には、負圧の変化の傾きAを所定の時間Tmが経過した時点において測定するが、真空漏れが発生すると正常時の負圧PmがPm´となる。この時の負圧の傾きは、(P0-Pm´)/Tmとなる。この負圧の変化の傾きAが予め設定した所定の傾きよりも大きくなれば、その大きさに応じて負圧がユーザ設定下限値Puに到達するよりも早く吸引を開始する。以後は、少なくとも製品開放まで、電力非低減モード(吸いっぱなし)へ移行するか、または少なくとも製品開放まで、中間電力低減モード(電力低減モードより早く圧力弁をONし、ON-OFFを繰り返す)へ移行すればよい。
【0034】
そして、モード移行後は、いずれかのモードに切り替えたままでも良いし、各サイクルごとに負圧低下の変化の傾きAを検出して、検出結果に応じて上記のモード移行を行っても良い。電力低減モードを選択すれば、真空漏れなどの異常が発生しても(あるいは最初から異常が発生していたとしても)安定的な取り出しが可能となる。
【0035】
また、負圧の変化の傾きAの大きさが正常値から大きく変わらない場合は(毎吸着ごとに起こる負圧低下傾きのバラつきを考慮したとしても)、中間電力低減モードに設定変更しても、安定的な取出が可能と判断できる場合があるので、その場合は、電力非低減モードよりも優位な中間電力低減モードを選択するのが好ましい。
【0036】
図7は、自動選択を実施する場合のアルゴリズムを示すフローチャートである。本実施の形態の場合、このアルゴリズムは、制御モード決定部97において実行することができる。
図7のステップST13及びST15における、閾値TH1及びTH2は設計時に設定しても良いし、正常時の傾きに所定の倍率を掛けたもの(例えば1.2倍等)としても良い。なお
図7に示した自動選択のアルゴリズム中のステップST11乃至ST17は、一例であって、本発明は
図7のアルゴリズムを使用する場合に限定されるのではない。
【0037】
負圧の大幅な低下の要因としては、負圧機器の真空漏れの他に、成形品と吸着パッドとの当たり具合、成形品の形状(例えば多孔部分や溝部分であれば、急激な負圧低下が起こりやすい)がある。しかしこれらを考慮して制御モードの手動選択による事前設定を行うことは、非熟練者には困難である。しかし自動選択であれば、実際の負圧低下の状態に応じて自動的にモードを切り替えるので、状況に応じた可能な限りの省エネ効果を達成でき、省エネ機能を使用する機会を増やすことができる。
【0038】
なお制御モードがマニュアルで選択可能であれば、操作者の判断でオンオフ制御を行わない選択をすることができるので、熟練操作者の意思を尊重することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、負圧の変化特性の変曲点が、作業者が設定したユーザ設定下限値より下がることがないように、圧力弁再開時間期間Tvを定めるので、ユーザ設定下限値で直接的に圧力弁開時期を決定している感覚を作業者に与えることができ、ユーザ設定下限値の設定作業が、従来よりも、容易でかつスムーズに行える利点が得られる。
【符号の説明】
【0040】
1 成形品取出機
3 真空吸着装置
5 移動機構
7 制御装置
6 取出ヘッド
9 負圧制御部
11 成形機
12 成型型
31 吸着ノズル(吸着部)
32 エアー流路
33 真空発生装置
34 圧力弁
35 圧力検出器
81 移動機構制御部
82 時間期間計数部
83 吸引動作開始時期決定部
91 安定値または上限設定値検出部
92 圧力弁再開時間期間決定部
92A 負圧変化の傾き検出部
92B 第1の演算部
92C 第2の演算部
93 ユーザ設定下限値検出部
94 下限値設定部
95 応答遅れ時間期間記憶部
96 真空発生装置制御部
97 制御モード決定部
98 制御モード選択部