IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図1
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図2
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図3
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図4
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図5
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図6
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図7
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図8
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図9
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図10
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図11
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図12
  • 特開-駆動回路、スイッチング電源 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031747
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】駆動回路、スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20240229BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016510
(22)【出願日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2022133146
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
(72)【発明者】
【氏名】大谷 純己
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730EE13
5H730FG01
5H740BA12
5H740BB02
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
(57)【要約】
【課題】スイッチング損失(Ron損失)を削減する。
【解決手段】駆動回路10は、駆動対象トランジスタの制御端(=上側ゲート信号HGの印加端)とオン電圧BSTの印加端との間に並列接続されるように構成された第1トランジスタ11及び第2トランジスタ12と、駆動対象トランジスタのオン遷移期間の当初は第1トランジスタ11をオン状態として途中から第2トランジスタ12もオン状態とするように構成されたコントローラ13と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象トランジスタの制御端とオン電圧の印加端との間に並列接続されるように構成された第1トランジスタ及び第2トランジスタと、
前記駆動対象トランジスタのオン遷移期間の当初は前記第1トランジスタをオン状態として途中から前記第2トランジスタもオン状態とするように構成されたコントローラと、
を備える、駆動回路。
【請求項2】
前記第1トランジスタは、第1チャネル型であり、前記第2トランジスタは、前記第1チャネル型とは異なる第2チャネル型である、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記コントローラは、前記駆動対象トランジスタのプラトー領域が満了してから前記第2トランジスタをオン状態とする、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記コントローラは、前記駆動対象トランジスタの一端に現れるスイッチ電圧と所定の閾値電圧との比較結果に応じて前記第2トランジスタのオンタイミングを決定する、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記スイッチ電圧と前記閾値電圧とを比較して比較信号を生成するように構成されたコンパレータと、
前記比較信号と前記駆動対象トランジスタの制御信号に応じて前記第2トランジスタをオン/オフするように構成された論理ゲートと、
を含む、請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記駆動対象トランジスタは、入力電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続され、前記コントローラは、前記スイッチ電圧が前記閾値電圧よりも高く、かつ、前記制御信号がオン時の論理レベルであるときに前記第2トランジスタをオン状態とする、請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記駆動対象トランジスタは、前記スイッチ電圧の印加端と基準電圧の印加端との間に接続され、前記コントローラは、前記スイッチ電圧が前記閾値電圧よりも低く、かつ、前記制御信号がオン時の論理レベルであるときに前記第2トランジスタをオン状態とする、請求項5に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記コントローラは、前記駆動対象トランジスタの一端に印加される入力電圧と前記オン電圧との比較結果に応じて前記第2トランジスタのオンタイミングを決定する、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項9】
前記コントローラは、前記入力電圧の印加端と内部ノードとの間に接続されたNチャネル型トランジスタと、前記オン電圧の印加端と前記内部ノードとの間に接続されたPチャネル型トランジスタと、を含み、
前記Nチャネル型トランジスタ及び前記Pチャネル型トランジスタそれぞれの制御端には、前記第1トランジスタがオン状態であるときに前記オン電圧が印加され、
前記第2トランジスタは、前記内部ノードに現れるノード電圧に応じてオン/オフされる、請求項8に記載の駆動回路。
【請求項10】
前記駆動対象トランジスタは、GaNデバイスである、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項11】
前記駆動対象トランジスタの最小オン時間は、20ns未満である、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の駆動回路を備える、スイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動回路及びスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源は、様々な機器に搭載されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-191109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスイッチング電源(特にこれに用いられる駆動回路)では、スイッチング損失の削減について検討の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば、本明細書中に開示されている駆動回路は、駆動対象トランジスタの制御端とオン電圧の印加端との間に並列接続されるように構成された第1トランジスタ及び第2トランジスタと、前記駆動対象トランジスタのオン遷移期間の当初は前記第1トランジスタをオン状態として途中から前記第2トランジスタもオン状態とするように構成されたコントローラと、を備える。
【0006】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スイッチング損失を削減することのできる駆動回路、及び、これを用いたスイッチング電源を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、スイッチング電源の一構成例を示す図である。
図2図2は、スイッチング電源の一動作例を示す図である。
図3図3は、スイッチング損失(Ron損失)を示す図である。
図4図4は、駆動回路の第1実施形態を示す図である。
図5図5は、第1実施形態における損失削減動作の一例を示す図である。
図6図6は、駆動回路の第2実施形態を示す図である。
図7図7は、第2実施形態における損失削減動作の一例を示す図である。
図8図8は、駆動回路の第3実施形態を示す図である。
図9図9は、ゲート信号のリンギングが生じる様子を示す図である。
図10図10は、ゲート信号のリンギングが抑制される様子を示す図である。
図11図11は、オンタイミング制御の背反が生じる様子を示す図である。
図12図12は、駆動回路の第4実施形態を示す図である。
図13図13は、オンタイミング制御の背反が解消される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<スイッチング電源>
図1は、スイッチング電源の一構成例を示す図である。本構成例のスイッチング電源1は、入力電圧INを降圧して出力電圧OUTを生成する非絶縁DC/DCコンバータである。本図に即して述べると、スイッチング電源1は、出力トランジスタN1(例えばNMOSFET[N-channel type metal oxide semiconductor field effect transistor])と、同期整流トランジスタN2(例えばNMOSFET)と、キャパシタC1と、インダクタL1と、駆動回路10と、を備える。
【0010】
出力トランジスタN1のドレインは、入力電圧INの印加端に接続されている。出力トランジスタN1のソース、同期整流トランジスタN2のドレイン及びインダクタL1の第1端は、いずれもスイッチ電圧SWの印加端に接続されている。インダクタL1の第2端とキャパシタC1の第1端は、いずれも出力電圧OUTの印加端に接続されている。同期整流トランジスタN2のソースとキャパシタC2の第2端は、いずれも接地端(=接地電圧GNDの印加端)に接続されている。出力トランジスタN1及び同期整流トランジスタN2それぞれのゲートは、駆動回路10の出力端(上側ゲート信号HG及び下側ゲート信号LGそれぞれの印加端)に接続されている。
【0011】
本構成例のスイッチング電源1において、上側ゲート信号HGがハイレベルであって、下側ゲート信号LGがローレベルであるときには、出力トランジスタN1がオン状態となり、同期整流トランジスタN2がオフ状態となる。このとき、スイッチ電圧SWがハイレベル(≒IN)となる。
【0012】
一方、上側ゲート信号HGがローレベルであって、下側ゲート信号LGがハイレベルであるときには、出力トランジスタN1がオフ状態となり、同期整流トランジスタN2がオン状態となる。このとき、スイッチ電圧SWがローレベル(≒GND)となる。
【0013】
このように、ハーフブリッジ出力段を形成する出力トランジスタN1及び同期整流トランジスタN2は、上側ゲート信号HG及び下側ゲート信号LGに応じて相補的にオン/オフされる。その結果、スイッチ電圧SWは、入力電圧INと接地電圧GNDとの間でパルス駆動される。インダクタL1及びC1は、矩形波状のスイッチ電圧SWを整流及び平滑して出力電圧OUTを生成する。
【0014】
なお、ハーフブリッジ出力段を備えたスイッチング電源1では、出力トランジスタN1及び同期整流トランジスタN2双方にスイッチング損失(Ron損失)が発生する。
【0015】
図2は、スイッチング電源1の一動作例(低デューティ条件)を示す図である。本図では、上から順に、上側ゲート信号HG、下側ゲート信号LG及びスイッチ電圧SWが描写されている。
【0016】
近年、降圧DC/DCコンバータの電力密度向上を実現するための先進技術として、本願出願人は、極めて低いオンデューティDonを設定することのできる超高速パルス制御テクノロジー(Nano Pulse Control(登録商標))を提案している。なお、上記のオンデューティDonは、スイッチング周期Tに占める出力トランジスタN1のオン時間Tonの比率(=Ton/T)として定義される。
【0017】
また、近年の電源IC市場における大電力要求に対するアプローチとして、GaNデバイスが台頭してきている。例えば、GaNデバイスは、先出の出力トランジスタN1及び同期整流トランジスタN2として用いられる。なお、GaNデバイスのゲート・ソース間耐圧は、一般に10V以下である。
【0018】
例えば、上記の超高速パルス制御テクノロジーにより、GaNデバイスを用いた出力トランジスタN1の駆動制御が行われる場合、出力トランジスタN1のオン時間Tonは、その最小値が20ns未満(数ns~20ns)に設定され得る。
【0019】
ところで、GaNデバイスのゲート容量は、Siデバイスのゲート容量よりも小さい。従って、GaNデバイスは、Siデバイスと比べてゲート容量に起因するスイッチング損失が小さい。そのため、GaNデバイスでは、オン抵抗に起因するスイッチング損失(Ron損失)が顕在化しやすい。特に、低デューティ条件でGaNデバイスが駆動されるときには、上記のRon損失が特に大きく見えてしまうことがある。
【0020】
図3は、スイッチング電源1のスイッチング損失(Ron損失)を示す図である。本図では、上から順に、スイッチ電圧SW、出力トランジスタN1のゲート・ソース間電圧VgsH、ドレイン・ソース間電圧VdsH、ドレイン・ソース間電流IdsH、及び、オン抵抗RonH(=VdsH/IdsH)が描写されている。
【0021】
なお、ドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHは、縦軸方向に拡大して描写されている。また、本図の左側には、高デューティ条件での挙動が示されている。一方、本図の右側には、低デューティ条件での挙動が示されている。
【0022】
まず、本図の左側を参照しながら、高デューティ条件での挙動について説明する。時刻t11において、出力トランジスタN1のゲート・ソース間電圧VgsHが上昇し始めると、ドレイン・ソース間電流IdsHが流れ始める。一方、この時点では、スイッチ電圧SWがローレベル(≒GND)に維持される。
【0023】
時刻t12において、ドレイン・ソース間電流IdsHの増大が終わると、ドレイン・ソース間電圧VdsHが低下し始める。なお、ドレイン・ソース間電圧VdsHの低下に伴い、スイッチ電圧SWが上昇し、オン抵抗RonHが低下する。
【0024】
また、時刻t12において、ゲート・ソース間電圧VgsHは、プラトー電圧Vpの近傍で一時停滞する状態に至る。このようにゲート・ソース間電圧VgsHの上昇速度が緩慢となる動作領域(=時刻t12~t13)は、一般にプラトー領域と呼ばれる。なお、プラトー領域は、出力トランジスタN1のゲート・ドレイン間に付随するゲート容量の充電期間として理解され得る。
【0025】
時刻t13において、出力トランジスタN1のプラトー領域が満了すると、ゲート・ソース間電圧VgsHが再び上昇し始める。また、ドレイン・ソース間電圧VdsHは、先述のプラトー領域と比べて緩やかに低下し続ける。なお、ドレイン・ソース間電圧VdsHの低下に伴い、オン抵抗RonHも比較的緩やかに低下していく。
【0026】
時刻t14では、ゲート・ソース間電圧VgsHがブートストラップ電圧BSTに達してドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHがそれぞれの最小値に達する。すなわち、出力トランジスタN1がフルオン状態に至る。
【0027】
ところで、本図中のRon損失期間T1(=時刻t13~t14)には、オン抵抗RonHが最小値まで低下し切っていない状態でドレイン・ソース間電流IdsHが流れている。そのため、出力トランジスタN1のスイッチング損失(Ron損失)が発生する。
【0028】
ただし、高デューティ条件では、上記のRon損失期間T1よりもスイッチ電圧SWのハイレベル期間T2(=時刻t13~)の方が遥かに長い(T1<<T2)。つまり、ハイレベル期間T2に占めるRon損失期間T1の割合(=T1/T2)が極めて小さい。従って、上記のスイッチング損失(Ron損失)が顕在化しにくい。
【0029】
次に、本図の右側を参照しながら低デューティ条件での挙動について説明する。なお、時刻t21~t23の挙動(=プラトー領域が満了するまでの挙動)は、先に説明した時刻t11~t13の挙動と同様である。そこで、以下では、時刻t23以降の挙動について詳述する。
【0030】
時刻t23において、出力トランジスタN1のプラトー領域が満了すると、ドレイン・ソース間電圧VdsHの低下に伴い、オン抵抗RonHも比較的緩やかに低下していく。この挙動は、高デューティ条件での挙動と何ら変わらない。
【0031】
ただし、低デューティ条件では、出力トランジスタN1がフルオン状態に至る前に出力トランジスタN1のオフ遷移が開始され得る。本図に即して述べると、時刻t24では、ドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHがそれぞれの最小値に達する前にスイッチ電圧SWのハイレベル期間T2が満了している。そのため、本図の例では、Ron損失期間T1がスイッチ電圧SWのハイレベル期間T2と一致する(T1=T2)。
【0032】
このように、低デューティ条件では、ハイレベル期間T2に占めるRon損失期間T1の割合(=T1/T2)が増大する。従って、上記のスイッチング損失(Ron損失)が顕在化しやすくなる。
【0033】
以下では、上記の考察に鑑み、低デューティ条件でのスイッチング損失(Ron損失)を削減することのできる駆動回路10を提案する。
【0034】
<駆動回路(第1実施形態)>
図4は駆動回路10の第1実施形態を示す図である。本実施形態の駆動回路10は、トランジスタ11(=第1トランジスタに相当、例えばNMOSFET)と、トランジスタ12(=第2トランジスタに相当、例えばPMOSFET[P-channel type MOSFET])と、コントローラ13と、を含む。
【0035】
トランジスタ11のドレインとトランジスタ12のソースは、いずれもブートストラップ電圧BST(=SW+Vc、ただしVcは図示しないブートストラップ用キャパシタの充電電圧)の印加端に接続されている。トランジスタ11のソースとトランジスタ12のドレインは、いずれも上側ゲート信号HGの印加端に接続されている。
【0036】
このように、トランジスタ11及び12は、出力トランジスタN1のゲートとブートストラップ電圧BSTの印加端との間に並列接続されている。なお、出力トランジスタN1は、駆動回路10から見ると、駆動対象トランジスタに相当する。また、ブートストラップ電圧BSTは、出力トランジスタN1のオン電圧に相当する。
【0037】
トランジスタ11は、Nチャネル型(=第1チャネル型に相当)であってもよい。トランジスタ12は、Pチャネル型(=第1チャネル型とは異なる第2チャネル型に相当)であってもよい。
【0038】
トランジスタ11のゲートには、駆動入力信号DRVINが印加されている。従って、トランジスタ11は、駆動入力信号DRVINがハイレベル(例えばBST)であるときにオン状態となり、駆動入力信号DRVINがローレベル(例えばHG)であるときにオフ状態となる。なお、駆動入力信号DRVINは、入力電圧INから所望の出力電圧OUTが得られるように不図示の出力帰還回路で生成される。
【0039】
トランジスタ12のゲートには、否定論理積信号S2(詳細については後述)が印加されている。従って、トランジスタ12は、否定論理積信号S2がハイレベル(例えばBST)であるときにオフ状態となり、否定論理積信号S2がローレベル(例えばHG)であるときにオン状態となる。
【0040】
コントローラ13は、出力トランジスタN1のオン遷移期間の当初はトランジスタ11をオン状態として途中からトランジスタ12もオン状態とするように、先出の否定論理積信号S2を生成する。
【0041】
本図に即して述べると、コントローラ13は、コンパレータCMPと否定論理積ゲートNANDとを含む。
【0042】
コンパレータCMPは、非反転入力端(+)に入力されるスイッチ電圧SWと、反転入力端(-)に入力される所定の閾値電圧Vref(例えばIN-5V)とを比較することにより、比較信号S1を生成する。従って、比較信号S1は、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも高いときにハイレベルとなり、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも低いときにローレベルとなる。
【0043】
否定論理積ゲートNAND(=論理ゲートに相当)は、比較信号S1と上側ゲート信号HG(=駆動対象トランジスタの制御信号に相当)に応じてトランジスタ12をオン/オフするように否定論理積信号S2を生成する。否定論理積信号S2は、比較信号S1と上側ゲート信号HGの少なくとも一方がローレベルであるときにハイレベルとなり、比較信号S1と上側ゲート信号HGの双方がハイレベルであるときにローレベルとなる。
【0044】
このように、本構成例のコントローラ13は、出力トランジスタN1の一端(ソース)に現れるスイッチ電圧SWと所定の閾値電圧Vrefとの比較結果に応じてトランジスタ12のオンタイミングを決定する。
【0045】
本図に即して述べると、コントローラ13は、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも高く、かつ、上側ゲート信号HGがハイレベル(=オン時の論理レベル)であるときにトランジスタ12をオン状態とする。
【0046】
図5は、第1実施形態における損失削減動作の一例を示す図である。本図では、上から順に、駆動入力信号DRVIN、スイッチ電圧SW、出力トランジスタN1のゲート・ソース間電圧VgsH、ドレイン・ソース間電圧VdsH、ドレイン・ソース間電流IdsH、及び、オン抵抗RonH(=VdsH/IdsH)が描写されている。
【0047】
なお、ドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHは、縦軸方向に拡大して描写されている。また、本図では、先に説明した図3の右側と同じく、低デューティ条件での挙動が示されている。
【0048】
時刻t31において、駆動入力信号DRVINがハイレベルに立ち上げられると、トランジスタ11がオン状態となる。その結果、出力トランジスタN1のゲート・ソース間電圧VgsHが上昇し始めると、ドレイン・ソース間電流IdsHが流れ始める。一方、この時点では、スイッチ電圧SWがローレベル(≒GND<Vref)に維持される。従って、トランジスタ12がオフ状態のままとなる。
【0049】
時刻t32において、ドレイン・ソース間電流IdsHの増大が終わると、ドレイン・ソース間電圧VdsHが低下し始める。なお、ドレイン・ソース間電圧VdsHの低下に伴い、スイッチ電圧SWが上昇し、オン抵抗RonHが低下する。
【0050】
また、時刻t32において、ゲート・ソース間電圧VgsHは、プラトー電圧Vpの近傍で一時停滞する状態(プラトー領域)に至る。
【0051】
時刻t33において、出力トランジスタN1のプラトー領域が満了すると、ゲート・ソース間電圧VgsHが再び上昇し始める。この時点では、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefに達している。従って、トランジスタ11だけでなくトランジスタ12もオン状態となる。その結果、ゲート・ソース間電圧VgsHは、破線で示した従前の挙動(図3の右側に相当)と比べて急峻に上昇する。また、ドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHについても、破線で示す従前の挙動と比べて急峻に低下していく。
【0052】
時刻t34では、ゲート・ソース間電圧VgsHがブートストラップ電圧BSTに達してドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHがそれぞれの最小値に達する。すなわち、出力トランジスタN1がフルオン状態に至る。
【0053】
時刻t35において、駆動入力信号DRVINがローレベルに立ち下げられると、トランジスタ11及び12がいずれもオフ状態となり、スイッチ電圧SWのハイレベル期間T2が満了する。
【0054】
上記一連の損失削減動作では、出力トランジスタN1のオン遷移期間の当初(=時刻t31~t33)はトランジスタ11のみがオン状態とされて、出力トランジスタN1のオン遷移期間の途中(=時刻t33)からトランジスタ12もオン状態とされる。
【0055】
その結果、プラトー領域の満了後、より短時間でオン抵抗RonHが最小化される。従って、Ron損失期間T1’(=時刻t33~t34)が従前のRon損失期間T1(=時刻t33~t35)と比べて短縮される。言い換えると、Ron損失期間T1’は、スイッチ電圧SWのハイレベル期間T2(=時刻t33~t35)よりも短くなる(T1’<T2=T1)。従って、先のスイッチング損失(Ron損失)が顕在化しにくくなる。
【0056】
<駆動回路(第2実施形態)>
図6は、駆動回路10の第2実施形態を示す図である。本実施形態の駆動回路10は、先出のトランジスタ11及び12とコントローラ13に加えて、トランジスタ14(=第3トランジスタに相当、例えばNMOSFET)と、ダイオード15及び16とを含む。
【0057】
トランジスタ14のドレインは、上側ゲート信号HGの印加端(=出力トランジスタN1のゲート)に接続されている。トランジスタ14のソースは、スイッチ電圧SWの印加端に接続されている。トランジスタ14のゲートは、反転駆動入力信号xDRVINの印加端に接続されている。
【0058】
このように接続されたトランジスタ14は、反転駆動入力信号xDRVINがハイレベルであるときにオン状態となり、反転駆動入力信号xDRVINがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0059】
なお、反転駆動入力信号xDRVINは、基本的に駆動入力信号DRVINの論理反転信号である。従って、トランジスタ11及び14は、相補的にオン/オフ制御される。ただし、トランジスタ11及び14に過大な貫通電流が流れないように、駆動入力信号DRVIN及び反転駆動入力信号xDRVINには、いわゆるデッドタイム(=トランジスタ11及び14の同時オフ期間)が設けられていてもよい。
【0060】
ダイオード15のカソードは、ブートストラップ電圧BST(=オン電圧)の印加端に接続されている。ダイオード15のアノードは、上側ゲート信号HGの印加端に接続されている。このように接続されたダイオード15は、BST-HG間の電圧クランプ素子として機能する。
【0061】
ダイオード16のカソードは、上側ゲート信号HGの印加端に接続されている。ダイオード16のアノードは、スイッチ電圧SWの印加端に接続されている。このように接続されたダイオード16は、HG-SW間の電圧クランプ素子として機能する。
【0062】
また、本実施形態の駆動回路10では、コントローラ13の内部構成に変更が加えられている。本図に即して述べると、コントローラ13は、トランジスタN11~N15(例えばNMOSFET)と、トランジスタP11~P14(例えばPMOSFET)と、抵抗R1及びR2と、インバータINV1及びINV2と、を含む。
【0063】
トランジスタP11~P14それぞれのソースは、いずれもブートストラップ電圧BSTの印加端に接続されている。トランジスタN12~N14それぞれのソースは、いずれもスイッチ電圧SWの印加端に接続されている。
【0064】
トランジスタP11及びN11それぞれのドレインは、いずれもノード電圧V1の印加端に接続されている。トランジスタP11及びN11それぞれのゲートは、いずれも上側ゲート信号HGの印加端に接続されている。トランジスタN11のソースは、トランジスタN12及びN13それぞれのドレインに接続されている。トランジスタN12のゲートは、トランジスタN12のドレインに接続されている。トランジスタN13のゲートは、トランジスタN14のドレインに接続されている。トランジスタP12及びN14それぞれのゲートは、いずれもノード電圧V1の印加端に接続されている。トランジスタP12及びN14それぞれのドレインは、いずれもノード電圧V2の印加端に接続されている。
【0065】
抵抗R1の第1端は、入力電圧INの印加端に接続されている。抵抗R1の第2端は、トランジスタN15のドレインに接続されている。トランジスタN15及びP13それぞれのゲートは、いずれもノード電圧V2の印加端に接続されている。トランジスタP14のドレインは、抵抗R2の第1端に接続されている。トランジスタN15のソース、トランジスタP13のドレイン、抵抗R2の第2端、及び、インバータINV1の入力端は、いずれもノード電圧V3の印加端に接続されている。トランジスタP14のゲート、インバータINV1の出力端、及び、インバータINV2の入力端は、いずれもノード電圧V4の印加端に接続されている。インバータINV2の出力端とトランジスタ12のゲートは、いずれもノード電圧V5の印加端に接続されている。
【0066】
なお、上記構成要素のうち、トランジスタN15は、入力電圧INの印加端と内部ノード(=ノード電圧V3の印加端)との間に接続されたNチャネル型トランジスタに相当する。また、トランジスタP13は、オン電圧(=ブートストラップ電圧BST)の印加端と内部ノード(=ノード電圧V3の印加端)との間に接続されたPチャネル型トランジスタに相当する。
【0067】
駆動入力信号DRVINがハイレベル(=BST)に立ち上がると、上側ゲート信号HGがハイレベル(=BST-Vth(11)、ただしVth(11)はトランジスタ11のオン閾値電圧)となる。このとき、トランジスタP11がオフ状態となり、トランジスタN11がオン状態となる。従って、ノード電圧V1がローレベル(=SW+Vth(N12)、ただしVth(N12)はトランジスタN12のオン閾値電圧)となる。
【0068】
ノード電圧V1がローレベルに立ち下がると、トランジスタP12がオン状態となり、トランジスタN14がオフ状態となる。その結果、ノード電圧V2がハイレベル(=BST)となる。このように、駆動入力信号DRVINがハイレベルであるとき、すなわち、トランジスタ11がオン状態であるときには、トランジスタN15及びP13それぞれのゲートにブートストラップ電圧BST(=オン電圧)が印加される。
【0069】
ここで、ブートストラップ電圧BSTが入力電圧INよりも高くなると、ノード電圧V3がローレベル(≒IN)となる。従って、ノード電圧V4がハイレベルとなり、ノード電圧V5がローレベルとなる。その結果、トランジスタ12がオン状態となる。
【0070】
このように、本実施形態の駆動回路10において、コントローラ13は、出力トランジスタN1のドレインに印加される入力電圧INとブートストラップ電圧BST(=オン電圧)との比較結果に応じて、トランジスタ12のオンタイミングを決定する。
【0071】
図7は、第2実施形態における損失削減動作の一例を示す図である。本図では、本図では、上から順に、駆動入力信号DRVIN、ブートストラップ電圧BST(実線)、ノード電圧V3(小破線)、スイッチ電圧SW(大破線)、出力トランジスタN1のゲート・ソース間電圧VgsH、ドレイン・ソース間電圧VdsH、ドレイン・ソース間電流IdsH、及び、オン抵抗RonH(=VdsH/IdsH)が描写されている。
【0072】
なお、ドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHは、縦軸方向に拡大して描写されている。また、本図では、先出の図3の右側及び図5と同じく、低デューティ条件での挙動が示されている。また、吹き出し枠には領域αの拡大図が描写されている。
【0073】
時刻t41において、駆動入力信号DRVINがハイレベルに立ち上げられると、トランジスタ11がオン状態となる。その結果、出力トランジスタN1のゲート・ソース間電圧VgsHが上昇し始めると、ドレイン・ソース間電流IdsHが流れ始める。一方、この時点では、スイッチ電圧SWがローレベル(≒GND)に維持されるので、ブートストラップ電圧BST(=SW+Vc)が入力電圧INよりも低い状態となる。また、ノード電圧V3は、ハイレベル(=BST-Vth(N15)、ただしVth(N15)はトランジスタN15のオン閾値電圧)となる。従って、トランジスタ12は、オフ状態のままとなる。
【0074】
時刻t42において、ドレイン・ソース間電流IdsHの増大が終わると、ドレイン・ソース間電圧VdsHが低下し始める。なお、ドレイン・ソース間電圧VdsHの低下に伴い、スイッチ電圧SWが上昇し、オン抵抗RonHが低下する。
【0075】
また、時刻t42において、ゲート・ソース間電圧VgsHは、プラトー電圧Vpの近傍で一時停滞する状態(プラトー領域)に至る。
【0076】
時刻t43において、出力トランジスタN1のプラトー領域が満了すると、ゲート・ソース間電圧VgsHが再び上昇し始める。
【0077】
なお、時刻txでは、上記したプラトー領域の満了に先立ち、ブートストラップ電圧BSTが入力電圧INを上回っている。従って、ノード電圧V3がローレベル(≒IN)となるので、トランジスタ11だけでなくトランジスタ12もオン状態となる。その結果、ゲート・ソース間電圧VgsHは、破線で示す従前の挙動(図3の右側に相当)と比べて急峻に上昇する。また、ドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHについても、破線で示した従前の挙動と比べて急峻に低下していく。
【0078】
このように、本実施形態の駆動回路10(特にコントローラ13)では、コンパレータCMP(図4)を用いてスイッチ電圧SWと閾値電圧Vrefとを比較する第1実施形態(図4)の構成に代えて、トランジスタN15を用いてブートストラップ電圧BSTと入力電圧INとを比較する構成が採用されている。本構成によれば、ブートストラップ電圧BSTが上がり切る前にノード電圧V3がローレベル(≒IN)に切り替えられる。従って、先出の第1実施形態と異なり、コンパレータCMPでの信号遅延を考慮せずに済む。
【0079】
時刻t44では、ゲート・ソース間電圧VgsHがブートストラップ電圧BSTに達してドレイン・ソース間電圧VdsH及びオン抵抗RonHがそれぞれの最小値に達する。すなわち、出力トランジスタN1がフルオン状態に至る。
【0080】
時刻t45において、駆動入力信号DRVINがローレベルに立ち下げられると、トランジスタ11及び12がいずれもオフ状態となり、スイッチ電圧SWのハイレベル期間T2が満了する。
【0081】
上記一連の損失削減動作によれば、先出の第1実施形態と同じく、出力トランジスタN1のオン遷移期間の当初(=時刻t41~t43)はトランジスタ11のみがオン状態とされて、出力トランジスタN1のオン遷移期間の途中(=時刻t43)からトランジスタ12もオン状態とされる。
【0082】
その結果、プラトー領域の満了後、より短時間でオン抵抗RonHが最小化される。従って、Ron損失期間T1’(=時刻t43~t44)が従前のRon損失期間T1(=時刻t43~t45)と比べて短縮される。言い換えると、Ron損失期間T1’は、スイッチ電圧SWのハイレベル期間T2(=時刻t43~t45)よりも短くなる(T1’<T2=T1)。従って、先のスイッチング損失(Ron損失)が顕在化しにくくなる。
【0083】
なお、上記した第1及び第2実施形態の損失削減動作は、いずれもオンデューティDonに依らず常に実施される。従って、低デューティ条件での損失削減効果はもちろん、高デューティ条件での損失削減効果も少なからず期待できる。
【0084】
<変形例>
上記実施形態では、ハーフブリッジ出力段を形成する出力トランジスタN1のオン抵抗を最小化して低デューティ条件でのスイッチング損失(Ron損失)を削減する構成が例示されている。ただし、本開示の適用対象は、これに限定されるものではない。
【0085】
例えば、一つの変形例としては、同期整流トランジスタN2のオン抵抗を最小化して高デューティ条件でのスイッチング損失(Ron損失)を削減する構成が考えられる。
【0086】
また、本開示は、GaNデバイスを駆動する場合だけでなく、Siデバイスを駆動する場合にも有用である。
【0087】
<駆動回路(第3実施形態)>
図8は、駆動回路10の第3実施形態を示す図である。本実施形態の駆動回路10は、出力トランジスタN1を駆動する上側ドライバDRVHの構成要素として、先出のトランジスタ11及び12と、コントローラ13と、トランジスタ14と、を含む。なお、コントローラ13は、インバータINV3を含む。
【0088】
トランジスタ11のドレインとトランジスタ12のソースは、いずれもブートストラップ電圧BSTの印加端(=出力トランジスタN1のドレイン)に接続されている。トランジスタ11のソースとトランジスタ12及び14それぞれのドレインは、いずれも上側ゲート信号HGの印加端(=出力トランジスタN1のゲート)に接続されている。トランジスタ14のソースは、スイッチ電圧SWの印加端(=出力トランジスタN1のソース)に接続されている。トランジスタ11のゲートとインバータINV3の入力端は、いずれも上側駆動入力信号DINHの印加端に接続されている。トランジスタ12及び14それぞれのゲートは、いずれも反転上側駆動入力信号xDINHの印加端(=インバータINV3の出力端)に接続されている。
【0089】
トランジスタ11は、上側駆動入力信号DINHがハイレベルであるときにオン状態となる。また、トランジスタ11は、上側駆動入力信号DINHがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0090】
トランジスタ12は、反転上側駆動入力信号xDINHがハイレベルであるときにオフ状態となる。また、トランジスタ12は、反転上側駆動入力信号xDINHがローレベルであるときにオン状態となる。
【0091】
トランジスタ14は、反転上側駆動入力信号xDINHがハイレベルであるときにオン状態となる。また、トランジスタ14は、反転上側駆動入力信号xDINHがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0092】
インバータINV3は、上側駆動入力信号DINHの論理レベルを反転させて反転上側駆動入力信号xDINHを生成する。反転上側駆動入力信号xDINHは、上側駆動入力信号DINHがハイレベルであるときにローレベルとなる。また、反転上側駆動入力信号xDINHは、上側駆動入力信号DINHがローレベルであるときにハイレベルとなる。
【0093】
なお、反転上側駆動入力信号xDINHは、上側駆動入力信号DINHがハイレベルに立ち上がってから、インバータINV3での信号遅延分だけ遅れてローレベルに立ち下がる。従って、出力トランジスタN1のオン遷移期間において、当初はトランジスタ11のみがオン状態となり、途中からトランジスタ12もオン状態となる。
【0094】
また、本実施形態の駆動回路10は、同期整流トランジスタN2を駆動する下側ドライバDRVLの構成要素として、トランジスタ17(=下側ドライバDRVLの第1トランジスタに相当、例えばNMOSFET)と、トランジスタ18(=下側ドライバDRVLの第2トランジスタに相当、例えばPMOSFET)と、コントローラ19と、トランジスタ1A(=下側ドライバDRVLの第3トランジスタに相当、例えばNMOSFET)と、を含む。なお、コントローラ19は、インバータINV4を含む。
【0095】
トランジスタ17のドレインとトランジスタ18のソースは、いずれも内部電源電圧VREGの印加端(=同期整流トランジスタN2のドレイン)に接続されている。トランジスタ17のソースとトランジスタ18及び1Aそれぞれのドレインは、いずれも下側ゲート信号LGの印加端(=同期整流トランジスタN2のゲート)に接続されている。トランジスタ1Aのソースは、接地端、すなわち、接地電圧GNDの印加端(=同期整流トランジスタN2のソース)に接続されている。トランジスタ17のゲートとインバータINV4の入力端は、いずれも下側駆動入力信号DINLの印加端に接続されている。トランジスタ18及び1Aそれぞれのゲートは、いずれも反転下側駆動入力信号xDINLの印加端(=インバータINV4の出力端)に接続されている。
【0096】
トランジスタ17は、下側駆動入力信号DINLがハイレベルであるときにオン状態となる。また、トランジスタ17は、下側駆動入力信号DINLがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0097】
トランジスタ18は、反転下側駆動入力信号xDINLがハイレベルであるときにオフ状態となる。また、トランジスタ18は、反転下側駆動入力信号xDINLがローレベルであるときにオン状態となる。
【0098】
トランジスタ1Aは、反転下側駆動入力信号xDINLがハイレベルであるときにオン状態となる。また、トランジスタ1Aは、反転下側駆動入力信号xDINLがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0099】
インバータINV4は、下側駆動入力信号DINLの論理レベルを反転させて反転下側駆動入力信号xDINLを生成する。反転下側駆動入力信号xDINLは、下側駆動入力信号DINLがハイレベルであるときにローレベルとなる。また、反転下側駆動入力信号xDINLは、下側駆動入力信号DINLがローレベルであるときにハイレベルとなる。
【0100】
なお、反転下側駆動入力信号xDINLは、下側駆動入力信号DINLがハイレベルに立ち上がってから、インバータINV4での信号遅延分だけ遅れてローレベルに立ち下がる。従って、同期整流トランジスタN2のオン遷移期間において、当初はトランジスタ17のみがオン状態となり、途中からトランジスタ18もオン状態となる。
【0101】
<ゲート信号のリンギングに関する考察>
図9は、先出のトランジスタ11が未導入であると仮定した場合に上側ゲート信号HGのリンギングが生じる様子を示す図である。なお、本図の左側には、リンギングを伴わない上側ゲート信号HGの立ち上がり挙動(理想的な挙動)が描写されている。一方、本図の右側には、リンギングを伴う上側ゲート信号HGの立ち上がり挙動が描写されている。
【0102】
Nチャネル型のトランジスタ11が未導入である場合、出力トランジスタN1のオン遷移期間には、Pチャネル型のトランジスタ12のみを用いて上側ゲート信号HGがハイレベルに立ち上げられる。この場合、上側ゲート信号HGは、トランジスタ12を介してブートストラップ電圧BSTまで一気に引き上げられる(本図の左側を参照)。
【0103】
そのため、何らかの要因で上側ゲート信号HGにリンギングが生じると、上側ゲート信号HGが出力トランジスタN1のゲート耐圧を超えてオーバーシュートするおそれがある(本図の右側を参照)。特に、GaNデバイスは、一般的なSiデバイスと比べてゲート耐圧が低いので、オーバーシュート対策が重要となり得る。
【0104】
図10は、先出のトランジスタ11の導入により上側ゲート信号HGのリンギングが抑制される様子を示す図である。先の図9と同様、本図の左側には、リンギングを伴わない上側ゲート信号HGの立ち上がり挙動(理想的な挙動)が描写されている。一方、本図の右側には、リンギングを伴う上側ゲート信号HGの立ち上がり挙動が描写されている。
【0105】
Nチャネル型のトランジスタ11が導入されている場合、出力トランジスタN1のオン期間において、当初にはトランジスタ11のみがオン状態となる。この場合、上側ゲート信号HGは、ブートストラップ電圧BSTよりもトランジスタ11のオン閾値電圧Vthだけ低い電圧(=BST-Vth)までしか上昇しない(本図の右側を参照)。従って、上側ゲート信号HGにリンギングが生じても、上側ゲート信号HGが出力トランジスタN1のゲート耐圧を超えてオーバーシュートし難くなる。
【0106】
なお、図9及び図10では、上側ゲート信号HGに着目して説明されているが、下側ゲート信号LGについても同様のことが言える。
【0107】
<PMOSFETのオンタイミング制御に関する考察>
これまで説明してきたように、互いに並列接続されたNMOSFET及びPMOSFETが順次オン状態とされる構成では、PMOSFETのオンタイミングを適切に設定することが重要となる。
【0108】
例えば、重負荷時と軽負荷時では、同期整流トランジスタN2のプラトー領域(=ゲート・ソース間電圧VgsLがプラトー電圧Vpの近傍で一時停滞する領域)が異なる。より具体的に述べると、同期整流トランジスタN2のプラトー領域は、負荷が軽いほど長くなる傾向がある。
【0109】
ただし、トランジスタ18のオンタイミングが軽負荷時の最適タイミングに合わせて固定的に設定されている場合、重負荷時にはトランジスタ18のオンタイミングが重負荷時の最適タイミングよりも遅れる。その結果、Ron損失が十分に抑えられなくなる。
【0110】
逆に、トランジスタ18のオンタイミングが重負荷時の最適タイミングに合わせて固定的にされている場合、軽負荷時にはトランジスタ18のオンタイミングが軽負荷時の最適タイミングよりも早くなる。その結果、リンギングが十分に抑えられなくなる。
【0111】
図11は、トランジスタ18のオンタイミング制御において、負荷の軽重に応じた背反が生じる様子を示す図である。本図では、上から順に、スイッチ電圧SW、同期整流トランジスタN2のゲート・ソース間電圧VgsL、ドレイン・ソース間電圧VdsL、ドレイン・ソース間電流IdsL、及び、オン抵抗RonL(=VdsL/IdsL)が描写されている。
【0112】
なお、ドレイン・ソース間電圧VdsL及びオン抵抗RonLは、縦軸方向に拡大して描写されている。また、本図の左側には、重負荷時の挙動が示されている。一方、本図の右側には、軽負荷時の挙動が示されている。
【0113】
区間T11(=時刻t54~t56)及びT21(=時刻t64~t66)は、それぞれ、同期整流トランジスタN2のオン抵抗RonLが比較的高い区間を示している。すなわち、区間T11及びT21は、先出のRon損失区間に相当する。
【0114】
区間T12(=時刻t53~t55)及びT22(=時刻t62~t65)は、それぞれ、トランジスタ17がオン状態とされており、トランジスタ18がオフ状態とされている区間(=NMOS駆動区間)を示している。
【0115】
区間T13(=時刻t56~t57)は、軽負荷時のプラトー領域を考慮して設定される重負荷時のNMOS駆動延長区間を示している。区間T23(=時刻t63~t64)は、軽負荷時のプラトー領域を示している。
【0116】
区間T11及びT21において、ゲート・ソース間電圧VgsLは、内部電源電圧VREGからトランジスタ18のオン閾値電圧Vthを差し引いた電圧値(=VREG-Vth)までしか上がらない。従って、区間T11及びT21では、同期整流トランジスタN2がフルオン状態とならない。
【0117】
ところで、トランジスタ18のオンタイミングが軽負荷時の最適タイミングに合わせて固定的に設定されている場合、重負荷時にはトランジスタ18のオンタイミングが重負荷時の最適タイミングよりも遅れる。
【0118】
本図に即して述べると、トランジスタ18のオンタイミングは、区間T11の満了タイミングではなく、さらに軽負荷時のプラトー領域に相当する区間T13が経過したタイミングとなる。すなわち、区間T11は、区間T11’(=時刻t54~t57)まで延長され得る。その結果、Ron損失が増大する。特に、スイッチング周波数が高くなると、スイッチ電圧SWのローレベル期間に占める区間T11’の割合が大きくなる。従ってRon損失が顕在化しやすくなる。
【0119】
<駆動回路(第4実施形態)>
図12は駆動回路10の第4実施形態を示す図である。本実施形態の駆動回路10において、下側ドライバDRVLに含まれるコントローラ19は、同期整流トランジスタN2のオン遷移期間(=下側ゲート信号LGのハイレベル遷移期間)において、当初はトランジスタ17をオン状態として途中からトランジスタ18もオン状態とするようにトランジスタ18のオンタイミング制御を行う。
【0120】
本図に即して述べると、コントローラ19は、コンパレータCMP2と否定論理積ゲートNAND2とを含む。
【0121】
コンパレータCMP2は、反転入力端(-)に入力されるスイッチ電圧SWと、非反転入力端(+)に入力される所定の閾値電圧Vref(例えばVREG/2)とを比較することにより、比較信号S21を生成する。従って、比較信号S21は、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも低いときにハイレベルとなり、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも高いときにローレベルとなる。
【0122】
否定論理積ゲートNAND2(=論理ゲートに相当)は、比較信号S21と下側ゲート信号LG(=下側ドライバDRVLの駆動対象となる同期整流トランジスタN2の制御信号に相当)に応じてトランジスタ18をオン/オフするように否定論理積信号S22を生成する。否定論理積信号S22は、比較信号S21と下側ゲート信号LGの少なくとも一方がローレベルであるときにハイレベルとなり、比較信号S21と下側ゲート信号LGの双方がハイレベルであるときにローレベルとなる。
【0123】
このように、本構成例のコントローラ19は、同期整流トランジスタN2の一端(ソース)に現れるスイッチ電圧SWと所定の閾値電圧Vrefとの比較結果に応じてトランジスタ18のオンタイミングを決定する。
【0124】
本図に即して述べると、コントローラ19は、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも低く、かつ、下側ゲート信号LGがハイレベル(=オン時の論理レベル)であるときにトランジスタ18をオン状態とする。
【0125】
図13は、トランジスタ18のオンタイミング制御において、負荷の軽重に応じた背反が解消される様子を示す図である。本図では、先出の図11と同様、上から順に、スイッチ電圧SW、同期整流トランジスタN2のゲート・ソース間電圧VgsL、ドレイン・ソース間電圧VdsL、ドレイン・ソース間電流IdsL、及び、オン抵抗RonL(=VdsL/IdsL)が描写されている。
【0126】
なお、ドレイン・ソース間電圧VdsL及びオン抵抗RonLは、縦軸方向に拡大して描写されている。また、本図の左側には、重負荷時の挙動が示されている。一方、本図の右側には、軽負荷時の挙動が示されている。
【0127】
本図で新たに描写された時刻t5x及びt6xは、それぞれ、スイッチ電圧SWが閾値電圧Vrefよりも低く、かつ、下側ゲート信号LGがハイレベル(=オン時の論理レベル)であることが検出されるタイミングを示している。
【0128】
トランジスタ18のオンタイミングは、時刻t5x及びt6xの到来後、否定論理積ゲートNAND2及びこれに後続するプリドライバ(不図示)の信号遅延区間T14及びT24が経過するタイミングに設定されると良い。
【0129】
本実施形態の駆動回路10であれば、負荷の軽重に応じてトランジスタ18のオンタイミングが可変的に設定される。そのため、重負荷時において、区間T11を区間T11’に延長する必要がなくなる。従って、Ron損失の低減とリンギングの抑制を両立することが可能となる。
【0130】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0131】
例えば、本明細書中に開示されている駆動回路は、駆動対象トランジスタの制御端とオン電圧の印加端との間に並列接続されるように構成された第1トランジスタ及び第2トランジスタと、前記駆動対象トランジスタのオン遷移期間の当初は前記第1トランジスタをオン状態として途中から前記第2トランジスタもオン状態とするように構成されたコントローラと、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0132】
なお、上記第1の構成による駆動回路において、前記第1トランジスタは、第1チャネル型であり、前記第2トランジスタは、前記第1チャネル型とは異なる第2チャネル型である構成(第2の構成)としてもよい。
【0133】
また、上記第1又は第2の構成による駆動回路において、前記コントローラは、前記駆動対象トランジスタのプラトー領域が満了してから前記第2トランジスタをオン状態とする構成(第3の構成)としてもよい。
【0134】
上記第1~第3いずれかの構成による駆動回路において、前記コントローラは、前記駆動対象トランジスタの一端に現れるスイッチ電圧と所定の閾値電圧との比較結果に応じて前記第2トランジスタのオンタイミングを決定する構成(第4の構成)としてもよい。
【0135】
また、上記第4の構成による駆動回路において、前記コントローラは、前記スイッチ電圧と前記閾値電圧とを比較して比較信号を生成するように構成されたコンパレータと、前記比較信号と前記駆動対象トランジスタの制御信号に応じて前記第2トランジスタをオン/オフするように構成された論理ゲートと、を含む構成(第5の構成)としてもよい。
【0136】
また、上記第5の構成による駆動回路において、前記駆動対象トランジスタは、入力電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続され、前記コントローラは、前記スイッチ電圧が前記閾値電圧よりも高く、かつ、前記制御信号がオン時の論理レベルであるときに前記第2トランジスタをオン状態とする構成(第6の構成)としてもよい。
【0137】
また、上記第5の構成による駆動回路において、前記駆動対象トランジスタは、前記スイッチ電圧の印加端と基準電圧の印加端との間に接続され、前記コントローラは、前記スイッチ電圧が前記閾値電圧よりも低く、かつ、前記制御信号がオン時の論理レベルであるときに前記第2トランジスタをオン状態とする構成(第7の構成)としてもよい。
【0138】
上記第1~第3いずれかの構成による駆動回路において、前記コントローラは、前記駆動対象トランジスタの一端に印加される入力電圧と前記オン電圧との比較結果に応じて前記第2トランジスタのオンタイミングを決定する構成(第8の構成)としてもよい。
【0139】
また、上記第8の構成による駆動回路において、前記コントローラは、前記入力電圧の印加端と内部ノードとの間に接続されたNチャネル型トランジスタと、前記オン電圧の印加端と前記内部ノードとの間に接続されたPチャネル型トランジスタとを含み、前記Nチャネル型トランジスタ及び前記Pチャネル型トランジスタそれぞれの制御端には、前記第1トランジスタがオン状態であるときに前記オン電圧が印加され、前記第2トランジスタは、前記内部ノードに現れるノード電圧に応じてオン/オフされる構成(第9の構成)としてもよい。
【0140】
また、上記第1~第9いずれかの構成による駆動回路において、前記駆動対象トランジスタは、GaNデバイスである構成(第10の構成)にしてもよい。
【0141】
また、上記第1~10いずれかの構成による駆動回路において、前記駆動対象トランジスタの最小オン時間は、20ns未満である構成(第11の構成)としてもよい。
【0142】
また、例えば、本明細書中に開示されているスイッチング電源は、上記第1~第11いずれかの構成による駆動回路を備える構成(第12の構成)とされている。
【0143】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。また、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0144】
1 スイッチング電源
10 駆動回路
11、17 第1トランジスタ(NMOSFET)
12、18 第2トランジスタ(PMOSFET)
13、19 コントローラ
14、1A 第3トランジスタ(NMOSFET)
15、16 ダイオード
C1 キャパシタ
CMP、CMP2 コンパレータ
DRVH 上側ドライバ
DRVL 下側ドライバ
INV1、INV2、INV3、INV4 インバータ
L1 インダクタ
N1 出力トランジスタ(NMOSFET)
N2 同期整流トランジスタ(NMOSFET)
N11~N15 トランジスタ(NMOSFET)
NAND、NAND2 否定論理積ゲート
P11~P14 トランジスタ(PMOSFET)
R1、R2 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13