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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031762
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】キャスティングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/05 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61F5/05
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037904
(22)【出願日】2023-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022133701
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514163169
【氏名又は名称】株式会社P.O.イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】見木 太郎
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098BB04
4C098BB05
4C098BC02
4C098BC11
4C098BC13
4C098BC15
4C098BD01
4C098BD15
(57)【要約】
【課題】手術後直ちに患者に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者の体形に合わせたキャスティングシステムを提供すること。
【解決手段】キャスティングシステム10は、前シェル11と、この前シェルとは別体の後シェル21と、この後シェルに前シェルを留めるベルト30と、患者に装着された前シェル11と後シェル21の外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯40とを備えている。後シェル21には、装着した状態の患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部26が形成されており、この開口部26にギプス包帯40が配置される。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記後シェルには、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部が形成されており、この開口部に前記ギプス包帯が配置されることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項2】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周又は前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルのうち前記後シェルのみの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記後シェルは、前記患者の腰から背中にかけて支持する後面部と、前記後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに前記患者の側部を支持する側面湾曲部と、前記側面湾曲部に形成され前記ギプス包帯を挿通可能な包帯通し穴と、この包帯通し穴に挿通された前記ギプス包帯を折り返し可能な折り返し部と、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に形成された開口部とを備え、
前記ギプス包帯は、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周又は前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルのうち前記後シェルのみの外周に選択的に巻かれるとともに、前記開口部に前記ギプス包帯が配置されることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項3】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記ギプス包帯は、前記前シェル及び前記後シェルに巻かれることで前記患者の体幹部が支えられることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のキャスティングシステムであって、
前記前シェルには、装着した状態で前記患者の脇の下との接触を回避するように脇の下では前記前シェルの上端部よりも少なくとも4横指低く湾曲して、かつ前記患者の正面では剣状突起までの支持部の高さを有するトリミングされた前シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に上縁は剣状突起レベルでの前記体幹部を支持しながらも前記前シェルの下縁が大腿部に食い込まないように前シェル下部トリミング部が設けられ、
前記後シェルには、装着した状態で前記患者の脇の下との接触を回避するように湾曲してトリミングされた後シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に前記後シェルの下縁が臀部にかかり仙骨部分のレベルまで支持する後シェル下部トリミング部が設けられていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のキャスティングシステムであって、
前記ベルトは、前記前シェルと前記後シェルの上部を留めるとともに独立して長さ調整可能な上部ベルトと、前記前シェルと前記後シェルの下部を留めるとともに独立して長さ調整可能な下部ベルトとから構成されていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項6】
請求項5項記載のキャスティングシステムあって、
前記前シェル及び前記後シェルには、前記ベルトを保持するベルト保持部が設けられ、
前記ベルトは、2.6N/cm以上、8.3N/cm以下のせん断強度であり、0.39N/cm以上、1.34N/cm以下の剥離強度である面ファスナーにより着脱可能に設けられていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項7】
請求項6項記載のキャスティングシステムあって、
前記ベルト保持部は、前記前シェル又は前記後シェルに設けられ前記ベルトを挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部であることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項8】
請求項1又は請求項2記載のキャスティングシステムであって、
前記前シェルは、前記患者の腹から胸にかけて支持する前面部と、この前面部の左右から後方に湾曲して延びるとともに前記後シェルの前記側面湾曲部に重なる側面覆い部とを備え、
前記後シェルの内側には、前記後シェルを前記患者に装着した際に、前記患者の背中の形状に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材が設けられていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項9】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、を備え、
前記後シェルには、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部が形成されていることを特徴とするキャスティングシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体幹部を支持するキャスティングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腰部疾患や脊椎疾患を患った患者に手術を行った際、患者は手術後の治療や保存療法をおこなうにあたり患部に負担をかけないようにするために、体幹部に取り付けるギプスや医療用コルセット等を使用する場合がある。
【0003】
例えば、高齢者に多い脊柱圧迫骨折の治療にはジュエット型装具が用いられてきた。このような、ジュエット型装具として、特許文献1の装具(以下、医療用コルセットという)が知られている。
【0004】
特許文献1の医療用コルセットは、脊柱に支障を有する患者の上体の上部を支持する上部支持体と、患者の上体の下部を支持する下部支持体と、上部支持体と下部支持体との間を連結する連結体と、を備えている。また、医療用コルセットには、連結体は、連なるように設けられた4本の連結片と、4本の連結片の端部間を枢支すると共に枢支される連結片の枢支角度が変更自在とされた3つの枢支部と、を備えている。
【0005】
ところで、医療用コルセットは患者の体形や治療の内容に合わせてオーダーメイドで作製されるため、整形外科などの医師の指示に従ってコルセット事業者が患者に対して採型する必要があり、コルセット事業者が採型して1週間後に患者に引き渡すことが通例であった。この点、脊椎疾患などの手術後の患者は、医療用コルセットを取り付けないとベッドから起き上がることができず、採型した医療用コルセットができるまでの1週間ベッド上で身体を起して食事をとれず、排せつも尿瓶やおむつでしか行えないなど不便なうえ、起き上がれないために歩行リハビリテーションの開始時期も遅れてしまう。
【0006】
しかし、特許文献1の医療用コルセットでは、患者の体形に合わせて各部品のサイズ調整や取り付け位置の調整が必要であり、作製から引渡しまでの時間がかかってしまう。このため、採型して作製した医療用コルセットの引渡しまでを繋ぐ簡易的なギプスなどのキャスティングシステムを採型時に渡して装着できれば、医師の離床指示のもと手術後直ちにベッドから起き上がることができ、採型した医療用コルセットができるまでの1週間自由に動くことができ、起き上がってのリハビリテーションも前倒しで行うことができ好ましい。
【0007】
また、特許文献1の医療用コルセットは、連結部分の角度などを調整することで患者に装着するため、患者の状態に合わせてのサイズやフィット感の再調整に手間がかかる。さらに、特許文献1の医療用コルセットは、患者の脊柱側の支持部品をそれぞれの患者個別の背中の形状に合わせた形状にすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-81072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、手術後直ちに患者に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者の体形に合わせたキャスティングシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例によれば、患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記後シェルには、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎及び第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部が形成されており、この開口部に前記ギプス包帯が配置されることを特徴とする。
【0011】
従来技術によれば、硬化前の石膏やギプス包帯のみで患者の体幹部(胴体)全体を型取りつつ支持してから、石膏やギプス包帯が硬化した後に不要な部分(上下の外周など患者が動いたときに痛く感じる部分)をトリミングするので、手間と時間がかかる。この点、本発明の構成によれば、キャスティングシステムは、殻状の前シェルと、殻状の後シェルとを備えているので、上下縁のトリミングラインのカットが不要で、患者の体幹部(胴体)を短時間で容易に支持することができる。さらに、キャスティングシステムは、前シェルと後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯を備え、後シェルには、装着した状態の患者の脊椎周辺に対向する部分に開口部が形成されており、この開口部にギプス包帯が配置されるので、開口部から柔らかい状態のギプス包帯を患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)の患部に当てて患者の背中の形状に合わせてギプス包帯を固めることができる。このように、前シェル及び後シェルで患者の体幹部を支持した状態で開口部からギプス包帯を脊椎周辺の患部に当てるので、手術後直ちにキャスティングシステムを患者に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者の体形(背中の形状)に合わせて患部を固定することができる。
【0012】
好ましくは、患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周又は前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルのうち前記後シェルのみの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記後シェルは、前記患者の腰から背中にかけて支持する後面部と、前記後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに前記患者の側部を支持する側面湾曲部と、前記側面湾曲部に形成され前記ギプス包帯を挿通可能な包帯通し穴と、この包帯通し穴に挿通された前記ギプス包帯を折り返し可能な折り返し部と、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に形成された開口部とを備え、
前記ギプス包帯は、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周又は前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルのうち前記後シェルのみの外周に選択的に巻かれるとともに、前記開口部に前記ギプス包帯が配置される。
【0013】
かかる構成によれば、後シェルは、側面湾曲部に形成されギプス包帯を挿通可能な包帯通し穴と、この包帯通し穴に挿通されたギプス包帯を折り返す折り返し部とを備えているので、ギプス包帯を包帯通し穴に通して折り返し部で折り返すことで後シェルのみにギプス包帯を固定することができる。これにより、キャスティングシステムを患者に装着した後、患者が窮屈に感じたり緩く感じたりした際に、ギプス包帯を切断することなく、前シェルから後シェルを外し、キャスティングシステムを容易に再調整して装着することができる。さらに、ギプス包帯を包帯通し穴に通さずに、前シェルと後シェルの外周に巻くこともできる。この場合、後シェルには、装着した状態の患者の脊椎周辺に対向する部分に開口部が形成されており、この開口部にギプス包帯が配置されるので、開口部から柔らかい状態のギプス包帯を患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)の患部に当てて患者の背中の形状に合わせてギプス包帯を固めることができる。
【0014】
これにより、ギプス包帯を前シェルと後シェルの全周に巻く場合と、ギプス包帯を後シェルのみに巻く場合のいずれの場合であっても、前シェル及び後シェルで患者の体幹部を支持した状態で開口部からギプス包帯を脊椎周辺の患部に当てるので、手術後直ちにキャスティングシステムを患者に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者の体形(背中の形状)に合わせて患部を固定することができる。このように、患者に必要な固定の度合いにより、ギプス包帯を前シェルと後シェルの外周の全周に巻く方法と、ギプス包帯を後シェルのみに巻く方法を選択することができる。ギプス包帯を全周に巻く場合は、簡単に取り外しができないようになり強固に固定する目的、例えば高齢者で認知症のある患者が自ら勝手にキャスティングシステムを外してしまうことがあるために自ら外せないようにする目的で使用する。ギプス包帯を後シェルのみに巻く場合は、例えば術後の患者や背骨を骨折した患者など立てない患者に使用し、患者をうつぶせにした状態でギプス包帯を後シェルのみに巻いて使用する。
【0015】
好ましくは、患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記ギプス包帯は、前記前シェル及び前記後シェルに巻かれることで前記患者の体幹部が支えられることを特徴とするキャスティングシステム。
【0016】
かかる構成によれば、前シェルと後シェルだけでも固定力があるので、患者の症状に合わせて、前シェルと後シェルを合わせて身体を固定し、ギプス包帯を使用して前シェルと後シェルを巻き、患者の体幹部を支えることができる。
【0017】
好ましくは、前記前シェルには、装着した状態で前記患者の脇の下との接触を回避するように脇の下では前記前シェルの上端部よりも少なくとも4横指低く湾曲して、かつ前記患者の正面では剣状突起までの支持部の高さを有するトリミングされた前シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に上縁は剣状突起レベルでの体幹部を支持しながらも前記前シェルの下縁が大腿部に食い込まないように前シェル下部トリミング部が設けられ、
前記後シェルには、装着した状態で前記患者の脇の下との接触を回避するように湾曲してトリミングされた後シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に前記後シェルの下縁が臀部にかかり仙骨部分のレベルまで支持する後シェル下部トリミング部が設けられている。
【0018】
従来技術によれば、硬化前の石膏やギプス包帯のみで患者の体幹部全体を型取りつつ支持してから、石膏やギプス包帯が硬化した後に不要な部分(脇の下などの可動した腕が当たる部分や、脇の下から前と後ろにかけての患者が動いたときに痛く感じる部分など)をトリミングするので、手間と時間がかかる。この点、本発明の構成によれば、前シェルには、装着した状態で患者の脇の下との接触を回避するように脇の下では前記前シェルの上端部よりも少なくとも4横指低く湾曲して、かつ前記患者の正面では剣状突起までの支持部の高さを有するトリミングされた前シェル上部トリミング部が設けられ、また座位時に上縁は剣状突起レベルでの体幹部を支持しながらも前シェルの下縁が大腿部に食い込まないように前シェル下部トリミング部が設けられている。後シェルには、装着した状態で患者の脇の下との接触を回避するように湾曲してトリミングされた後シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に後シェルの下縁が臀部にかかり仙骨部分のレベルまで支持する後シェル下部トリミング部が設けられている。このため、従来技術のように石膏やギプスが硬化してからトリミングする必要がなく、脇の下などの可動した腕が当たる部分がなく、また患者が座位をとった際にもシェルの下縁部分が大腿部に食い込まない状態でキャスティングシステムを装着後に直ちに心地よく使用することができる。
【0019】
好ましくは、前記ベルトは、前記前シェルと前記後シェルの上部を留めるとともに独立して長さ調整可能な上部ベルトと、前記前シェルと前記後シェルの下部を留めるとともに独立して長さ調整可能な下部ベルトとから構成されている。
【0020】
かかる構成によれば、ベルトは、独立して長さ調整可能な上部ベルトと、独立して長さ調整可能な下部ベルトとから構成されているので、例えば患者の胸部と腹部といった上下の寸法のバランスに応じて上部ベルトと下部ベルトの長さをそれぞれ独立して調整し、どのような体型の患者であってもフィットするように前シェルと後シェルを合わせた周径を調整することができる。
【0021】
好ましくは、前記前シェル及び前記後シェルには、前記ベルトを保持するベルト保持部が設けられ、前記ベルトは、2.6N/cm2以上、8.3N/cm2以下のせん断強度であり、0.39N/cm以上、1.34N/cm以下の剥離強度である面ファスナーにより着脱可能に設けられている。
【0022】
かかる構成によれば、前シェル及び後シェルにはベルト保持部が設けられ、前記ベルトは、2.6N/cm2以上、8.3N/cm2以下のせん断強度であり、0.39N/cm以上、1.34N/cm以下の剥離強度である面ファスナーにより着脱可能に設けられているので、ベルトを容易に着脱でき、前シェルと後シェルを合わせた周径調整をより容易に行うことができる。
【0023】
好ましくは、前記ベルト保持部は、前記前シェル又は前記後シェルに設けられ前記ベルトを挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部である。
【0024】
かかる構成によれば、ベルト保持部は、前シェル又は後シェルに設けられベルトを挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部であるので、シェルと別体のベルト保持部と比較して成形が容易で製造コストを低減させることができる。さらに、キャスティングシステムは手術後の患者が使用するところ、スプーン等で食事を口に運ぶ際にこぼれ落ちて前シェルに付着することがある。このとき、シェルと別体のベルト保持部の場合は、シェルと別体のベルト保持部の間やベルト保持部の部品の間に食事が付着して拭き取り難くなるが、前シェル又は後シェルに設けられベルトを挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部の場合は、ベルトを外してシェル及びシェル一体型のベルト保持部までタオル等を円滑に移動させて食事等の汚れを容易に拭き取ることができる。これにより、キャスティングシステムを別の患者に再利用する際に、拭き取り消毒の作業が容易になるうえ、拭き取り消毒後の仕上がりも新品同様にきれいにすることができる。
【0025】
好ましくは、前記前シェルは、前記患者の腹から胸にかけて支持する前面部と、この前面部の左右から後方に湾曲して延びるとともに前記後シェルの前記側面湾曲部に重なる側面覆い部とを備え、
前記後シェルの内側には、前記後シェルを前記患者に装着した際に、前記患者の背中の形状に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材が設けられている。
【0026】
かかる構成によれば、後シェルは後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者の側部を支持する側面湾曲部を備え、前シェルは前面部の左右から後方に湾曲して延びるとともに後シェルの側面湾曲部に重なる側面覆い部を備えている。このため、患者の側部が側面湾曲部及び側面覆い部で支持され、患者の体幹部の周囲全体を支持することができる。さらに、後シェルの側面湾曲部に、これを覆う側面覆い部が重なっているだけであるので、前シェルの側部と後シェルの側部が互いに移動を制限せずに体幹部の周長が調整されて体幹部にフィットする。このため、キャスティングシステムを採型せずに患者に簡単に装着することができる。さらに、後面部の内側には、患者の背中の形状に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材が設けられているので、患者の背骨が後シェルに直接当たることなく、快適にキャスティングシステムを装着し続けることができる。
【0027】
好ましくは、前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、を備え、
前記後シェルには、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部が形成されている。
【0028】
かかる構成によれば、後シェルには、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部が形成されているので、この開口部に水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯が配置することで、開口部から柔らかい状態のギプス包帯を患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)の患部に当てて患者の背中の形状に合わせてギプス包帯を固めることができる。このように、前シェル及び後シェルで患者の体幹部を支持した状態で開口部からギプス包帯を脊椎周辺の患部に当てるので、手術後直ちにキャスティングシステムを患者に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者の体形(背中の形状)に合わせて患部を固定することができる。
【発明の効果】
【0029】
手術後直ちに患者に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者に体形に合わせたキャスティングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る前シェルと後シェルの正面図である。
図2】本発明に係る前シェルと後シェルの左側面図である。
図3】本発明に係る前シェルと後シェルの背面図である。
図4】本発明に係る前シェルと後シェルの上面図である。
図5】本発明に係る前シェルと後シェルの分解斜視図である。
図6】(A)本発明に係る前シェルの内側を説明する図である。(B)本発明に係る後シェルの内側を説明する図である。
図7】(A)柔軟性包帯の説明図である。(B)ギプス包帯の説明図である。
図8】(A)前シェル及び後シェルに柔軟性包帯を巻く説明図である。(B)前シェル及び後シェルに巻いた柔軟性包帯の上からギプス包帯を巻く説明図である。
図9】(A)本発明に係るキャスティングシステムを装着した状態を説明する図である。(B)本発明に係るキャスティングシステムの作用図である。
図10】(A)ギプス包帯を切断する説明図である。(B)再度の周径調整の説明図である。(C)柔軟性包帯とギプス包帯が重なった状態の説明図である。
図11】(A)本発明の実施例に係るキャスティングシステムの正面側の作用図である。(B)本発明の実施例に係るキャスティングシステムの側面側の作用図である。(C)比較例に係るギプスの作用図である。
図12】(A)本発明の別態様に係る前シェルと後シェルの前側からの斜視図である。(B)シェル一体型ベルト保持部の断面図である。
図13】本発明の別態様に係る前シェルと後シェルの後側からの斜視図である。
図14】(A)本発明の別態様に係る後シェルの包帯通し穴にギプス包帯を通す説明図である。(B)本発明の別態様に係る後シェルにギプス包帯を巻く説明図である。
図15】(A)本発明の別態様に係るキャスティングシステムを装着した状態を説明する図である。(B)本発明の別態様に係るキャスティングシステムの作用図である。
図16】本発明の別態様に係るキャスティングシステムの装着の再調整を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、キャスティングシステムの図は構成の一例を示すものとする。
【実施例0032】
図1図4及び図8に示されるように、医療用のキャスティングシステム10は、患者50の体幹部を支持するものである。キャスティングシステム10は、患者50の体幹部の前側を支持する所定サイズの殻状の前シェル11と、この前シェル11とは別体で患者50の体幹部の後側を支持する所定サイズの殻状の後シェル21と、この後シェル21に前シェルを留めるベルト30と、患者50に装着された前シェル11と後シェル21の外周に巻かれ、シェルを繰り返し使用するためにギプス包帯の付着物からシェルを保護する目的で使用される柔軟で緩衝材としての機能を有する柔軟性包帯41と、この柔軟性包帯41の上から前シェル11と後シェル21の外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯40とを備えている。
【0033】
前シェル11及び後シェル21は、合成樹脂製であり、人の手で強い力を加えると全体として開く程度の硬さであるとともに力を解除すると元の形状に戻るいわゆる形状記憶といえるものである。なお、後シェル21を前シェル11よりも硬くしてもよい。これにより、患者50の背中をしっかりと支持するともに、胸側を少し柔らかくして患者50のあばらが当たっても痛くならないようにすることができる。
【0034】
後シェル21は、患者50の腰から背中にかけて支持する後面部22と、この後面部22の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者50の側部を支持する側面湾曲部23と、後面部22の上部に連続して背中の上部を支持する後上支持部24と、装着した状態で患者50の脇の下との接触を回避するように湾曲してトリミングされた後シェル上部トリミング部25と、座位時に後シェル21の下縁が臀部にかかり仙骨部分のレベルまで支持する後シェル下部トリミング部28とを備えている。
【0035】
後シェル21には、装着した状態の患者50の少なくとも第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)に対向する部分に貫通した開口部26が形成されており、この開口部26にギプス包帯40が配置される。開口部26は、上下方向では腰から背中の下部にかけて開口し、左右方向では脇腹の後部から腰全面にかけて開口し、手のひら以上の大きさに開口しており、装着した状態での背面視で横長の楕円状又は略矩形状を呈している。このため、ギプス包帯40を当てる面積が十分に確保され、個々の患者の背中の形状に合わせてギプス包帯40を成形することができる。
【0036】
前シェル11は、患者50の腹から胸にかけて支持する前面部12と、この前面部12の左右から後方に湾曲して延びるとともに後シェル21の側面湾曲部23に重なる側面覆い部13と、前面部12の上部に連続して胸の上部を支持する前上支持部14と、装着した状態で患者50の脇の下との接触を回避するように脇の下では前シェル11の上端部よりも少なくとも4横指低く湾曲して、かつ患者50の正面では剣状突起までの支持部の高さを有するトリミングされた前シェル上部トリミング部15と、座位時に上縁は剣状突起レベルでの体幹部を支持しながらも前シェル11の下縁が大腿部に食い込まないようにする前シェル下部トリミング部18とを備えている。
【0037】
また、前シェル11は、前面部12に上下に延びて溝が形成されるとともに刃物をガイドする上下ガイド部16を備えている。上下ガイド部16は、前シェル11に接着剤又は粘着剤により取り付けられている。なお、上下ガイド部16を前シェル11と一体成形しても差し支えない。
【0038】
図1図3及び図5に示されるように、ベルト30は、前シェル11と後シェル21の上部を留めるとともに独立して長さ調整可能な上部ベルト31と、前シェル11と後シェル21の下部を留めるとともに独立して長さ調整可能な下部ベルト32とから構成されている。前シェル11の前面部12にはベルト30を保持するベルト保持部35が設けられ、後シェル21の後面部22にはベルト30を保持するベルト保持部36が設けられ、ベルト30は面ファスナーにより着脱可能に設けられている。なお、面ファスナーのせん断強度は2.6N/cm以上、8.3N/cm以下が好ましく、面ファスナーの剥離強度は0.39N/cm以上、1.34N/cm以下が好ましい。
【0039】
このように、前シェル11と後シェル21の合わせ構造になっているので、細身の体型であっても、ある程度肉付きのある体型であっても、キャスティングシステム10を容易に合わせることができる。さらに、上部ベルト31と下部ベルト32により上下の周径も独立して変えることができるので、胸部と腹部といった上下の寸法のバランスに応じてキャスティングシステム10の上部と下部の周径を調整してどのような体型でもキャスティングシステム10を容易にフィットさせることができる。例えば、逆三角形体型の場合、上部ベルト31を緩め、下部ベルト32を締めることで、キャスティングシステム10を容易にフィットさせることができる。
【0040】
なお、図1図5に示すキャスティングシステム10は、ベルト30を上下2段の上部ベルト31と下部ベルト32としたショートシェルタイプである。なお、実施例のキャスティングシステム10は、ベルト30を上下2段とするショートシェルタイプとしたが、これに限定されず、キャスティングシステム10は、ベルト30を上下3段に設け上下方向に少し長く形成されたロングシェルタイプとしてもよい。ショートシェルタイプとロングシェルタイプは、上下方向の長さとベルト30の段数が異なる以外は、同様の構成である。
【0041】
図6(A)に示されるように、前シェル11は、前面部12の下縁及び前上支持部14の内側に横方向に長い緩衝部材17が設けられている。これにより、患者50は胸及び腹が合成樹脂製の後シェル21に直接当たることなく、快適にキャスティングシステム10を装着し続けることができる。
【0042】
図6(B)に示されるように、後シェル21は、後面部22の内側に、患者50に装着した際に、患者50の背骨に沿って上下に延びるように柔軟性を有する緩衝部材27が設けられている。これにより、患者50は背骨が合成樹脂製の後シェル21に直接当たることなく、快適にキャスティングシステム10を装着し続けることができる。緩衝部材17、27は、例えばスポンジであり、粘着剤(粘着テープでもよい)で着脱可能に設けられている。
【0043】
従来技術においては身体とギプスの間に緩衝用の下巻き包帯が必要であるところ、本発明の実施例においては前シェル11及び後シェル21に緩衝部材17、27が設けられているので、従来技術のような下巻き包帯が不要であり、装着時の手間を低減することができる。
【0044】
図7(A)に示されるように、柔軟で少し厚みがあり緩衝材としての機能を有する柔軟性包帯41は、使用前はロール状に巻かれている。これにより、使用時、前シェル11と後シェル21の外周に容易に巻き付けることができる。なお、柔軟性包帯41の幅や長さは適宜変更してよい。
【0045】
図7(B)に示されるように、水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯40は、使用前はロール状に巻かれている。これにより、使用時、前シェル11と後シェル21の外周に容易に巻き付けることができる。なお、ギプス包帯40の幅や長さは適宜変更してよい。
【0046】
次に、前シェル11及び後シェル21に柔軟性包帯41を巻く作用を説明する。
図8(A)に示されるように、患者50に前シェル11と後シェル21が装着されている。これら前シェル11と後シェル21の上部側から医療従事者の手51で柔軟性包帯41を徐々に巻き付けて開口部26が覆われるようにする。
【0047】
次に、前シェル11及び後シェル21にギプス包帯40を巻く作用を説明する。
図8(B)に示されるように、まだ硬化していない水に濡らしたギプス包帯40を準備し、前シェル11と後シェル21の上部側から医療従事者の手51でギプス包帯40を徐々に巻き付けて開口部26が覆われるようにする。開口部26の部分は、手でギプス包帯40を患者50の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺、実施例では、背中の下部から腰周辺)に押し当てて、ギプス包帯40が患者50の背中の形状をサポートするように成形し、時間の経過によりギプス包帯40が硬化する(固まる)まで待つ。ギプス包帯40は一般的なものでよく、硬化する(固まる)時間は数分である。
【0048】
図9(A)はキャスティングシステム10を装着した状態を示し、開口部(図8(A)参照)におけるギプス包帯40は、患者50固有の背中の形状(背中のカーブ)に合わせて成形されて固まっている。
【0049】
図9(B)はキャスティングシステム10の作用図である。従来技術によれば、硬化前の石膏やギプス包帯のみで患者の体幹部全体を型取りつつ支持してから、石膏やギプス包帯が硬化した後に不要な部分(脇の下などの可動した腕が当たる部分や、脇の下から前と後ろにかけての患者が動いたときに痛く感じる部分、車いすやベッド上で座位を取ったときに大腿部に食い込む部分など)をトリミングするので、手間と時間がかかる。この点、本発明の実施例では、前シェル上部トリミング部15と後シェル上部トリミング部25により、キャスティングシステム10を装着した直後の状態であっても、患者50の脇の下とキャスティングシステム10の接触を回避することができ装着時の調整の手間と時間を大幅に低減することができる。
【0050】
次にギプス包帯40を外しキャスティングシステム10の周径を再調整する作用を説明する。
図10(A)はギプス包帯40を切断する説明図であり、刃物(ハサミ)60をギプス包帯40と前シェル11の間に入れ、ギプス包帯40を切断する。このとき、上下ガイド部16の溝で刃物(ハサミ)60をガイドすることで速く容易にギプス包帯40を切断することができる。
【0051】
図10(B)は再度の周径調整の説明図であり、ギプス包帯40の前部が切断されているので、ベルト30の長さを容易に調整することができる。さらに切断したギプス包帯40をそのまま前シェル11及び後シェル21に巻き付け戻し、その上から一般的な包帯で押さえることでキャスティングシステム10として使用することができる。
【0052】
図10(C)は柔軟性包帯41とギプス包帯40が重なった状態の説明図であり、切断したギプス包帯40及び柔軟性包帯41を取り外し、周径を調整した前シェル11及び後シェル21に新たな柔軟性包帯41及びギプス包帯40を巻き直おすこともできる。
【0053】
次に本発明の実施例の作用と比較例の作用について説明する。
図11(A)は本発明の実施例に係るキャスティングシステム10の正面側の作用図であり、図11(B)は本発明の実施例に係るキャスティングシステム10の側面側の作用図である。本発明の実施例によれば、患者50の体幹部を支持する大枠の部分は、前シェル11及び後シェル21により成形済みであるので、新たに全体を成形する必要がなく、開口部26(図8参照)の部分のみギプス包帯40を巻いて成形するだけでよい。これにより、忙しくて全体をギプス包帯40で巻いて成形するのが難しい医師であっても、短時間でキャスティングシステム10を成形することができる。さらに、従来のギプスでは難しかった周径のきつさや緩さの調整を行うことができる。
【0054】
図11(C)比較例に係るギプスの作用図であり、比較例のギプス100は、患者50の体幹部全体をギプス包帯で巻いて成形してから不要な部分、例えば、上下の外周部分や患者50の脇の下の部分を刃物(ハサミなど)で切断(トリミング)する。比較例では、特に、全体をギプス包帯で成形した形状で、患者50の脇の下の部分は腕が可動するために腕の接触を回避するように微調整しつつ切断(トリミング)する必要があり、成形に手間と時間がかかる。
【実施例0055】
次に本発明の別態様に係るキャスティングシステム10について説明する。なお、図1図11に示したキャスティングシステム10と同様の構成については符号を振って説明を省略する。また、実施例2の別態様に係るキャスティングシステム10では、図7等に示した柔軟性包帯41は使用しない。
【0056】
図12図14に示されるように、キャスティングシステム10は、患者50の体幹部の前側を支持する所定サイズの殻状の前シェル11と、この前シェル11とは別体で患者50の体幹部の後側を支持する所定サイズの殻状の後シェル21と、この後シェル21に前シェルを留めるベルト30と、患者50に装着された前シェル11と後シェル21の外周又は患者50に装着された前シェル11と後シェル21のうち後シェル21のみの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯40とを備えている。
【0057】
前シェル11の前面部12にはベルト30を保持するシェル一体型のベルト保持部35aが設けられ、後シェル21の後面部22にはベルト30を保持するシェル一体型のベルト保持部36bが設けられ、ベルト30は面ファスナーにより着脱可能に設けられている。シェル一体型のベルト保持部35a、36bは、前シェル11又は後シェル21に設けられベルト30を挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部35a、36bである。詳細には、シェル一体型のベルト保持部35a、36bは、2本のスリットの間の部分が外方に傾斜する傾斜部19を介して突出している。
【0058】
これにより、患者が食事を口に運ぶ際に前シェル11こぼしても、食事が傾斜部19により滑り落ちて、前シェルに付着し難くなる。さらに、シェル一体型のベルト保持部35a、36bは、スリット間が外方に突出して前面部12及び後面部22から浮いているので、ベルト30を前面部12又は後面部22に沿わして移動させ、容易にベルト保持部35a、36bに通して引っ掛けることができる。
【0059】
また、後シェル21は、患者50の腰から背中にかけて支持する後面部22と、後面部22の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者50の側部を支持する側面湾曲部23と、側面湾曲部23に形成されギプス包帯40を挿通可能な包帯通し穴29と、この包帯通し穴29に挿通されたギプス包帯40を折り返し可能な折り返し部29aと、装着した状態の患者50の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に形成された開口部26とを備えている。
【0060】
包帯通し穴29は、縦長の長穴形状又は矩形状であり、後シェル21の横方向に配置されている。包帯通し穴29の縦方向の長さは、開口部26の縦方向の長さと略同じか、開口部26の縦方向の長さよりも長く形成されている。ギプス包帯40は、患者50に装着された前シェル11と後シェル21の外周(全周)又は患者50に装着された前シェル11と後シェル21のうち後シェル21のみの外周に選択的に巻かれるとともに、開口部26にギプス包帯40が配置される。
【0061】
次に、別態様に係る後シェル21の包帯通し穴29にギプス包帯40を通す方法を説明する。(ギプス包帯40を患者50に装着された前シェル11と後シェル21のうち後シェル21のみの外周に巻く方法を説明する。)
図14(A)に示されるように、患者50に前シェル11と後シェル21が装着されている。まだ硬化していない水に濡らしたギプス包帯40を準備し、後シェル21の上部側から包帯通し穴29に医療従事者の手51でギプス包帯40を通し、折り返し部29aで折り返えす。
【0062】
図14(B)に示されるように、折り返し部29aで折り返したギプス包帯40により開口部26を覆うように配置し、後シェルの左側(左右反対側)の包帯通し穴29に通して折り返し部29aで折り返し、さらに開口部26の開口している残部を覆うように配置する。
【0063】
次に、別態様に係るキャスティングシステム10を装着した状態を説明する。
図15(A)に示されるように、開口部26の部分は、手でギプス包帯40を患者50の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺、実施例では、背中の下部から腰周辺)に押し当てて、ギプス包帯40が患者50の背中の形状をサポートするように成形し、時間の経過によりギプス包帯40が硬化する(固まる)まで待つ。ギプス包帯40は一般的なものでよく、硬化する(固まる)時間は数分である。
【0064】
次に、別態様に係るキャスティングシステム10の作用を説明する。
図15(B)はキャスティングシステム10を装着した状態を示し、開口部26におけるギプス包帯40は、患者50固有の背中の形状(背中のカーブ)に合わせて成形されて固まっている。本発明の別態様の実施例では、前シェル上部トリミング部15と後シェル上部トリミング部25により、キャスティングシステム10を装着した直後の状態であっても、患者50の脇の下とキャスティングシステム10の接触を回避することができ装着時の調整の手間と時間を大幅に低減することができる。
【0065】
次に別態様に係るキャスティングシステム10の装着の再調整を説明する。
図16に示されるように、後シェル21は、側面湾曲部23に形成されギプス包帯40を挿通可能な包帯通し穴29と、この包帯通し穴29に挿通されたギプス包帯40を折り返す折り返し部29aとを備えているので、ギプス包帯40を包帯通し穴29に通して折り返し部29aで折り返すことで後シェル21のみにギプス包帯40を固定することができる。装着具合の再調整は、キャスティングシステム10を患者50に装着した後、患者50が窮屈に感じたり緩く感じたりした際に、ギプス包帯40を切断することなく、ベルト30を外し、前シェル11から後シェル21を外し、前シェル11及び後シェル21の位置を調整して患者50にセットし、ベルト30を取り付け直すことでキャスティングシステム10を容易に再調整して装着することができる。
【0066】
次に以上に述べたキャスティングシステム10の効果を説明する。
本発明の実施例では、キャスティングシステム1は、殻状の前シェル11と、殻状の後シェル21とを備えているので、上下縁のトリミングラインのカットが不要で、患者50の体幹部(胴体)を短時間で容易に支持することができる。さらに、キャスティングシステム10は、前シェル11と後シェル21の外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯40を備え、後シェル21には、装着した状態の患者50の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)に対向する部分に開口部26が形成されており、この開口部26にギプス包帯40が配置されるので、開口部26から柔らかい状態のギプス包帯40を患者50の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)の患部に当てて患者の体形(背中の形状)に合わせてギプス包帯40を固めることができる。このように、前シェル11及び後シェル21で患者50の体幹部を支持した状態で開口部26からギプス包帯40を第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)の患部に当てるので、手術後や治療が必要な際に直ちにキャスティングシステム10を患者50に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者50に体形に合わせて患部を固定することができる。
【0067】
さらに、後シェル21は、側面湾曲部23に形成されギプス包帯40を挿通可能な包帯通し穴29と、この包帯通し穴29に挿通されたギプス包40帯を折り返す折り返し部29aとを備えているので、ギプス包帯40を包帯通し穴29に通して折り返し部29aで折り返すことで後シェル21のみにギプス包帯40を固定することができる。これにより、キャスティングシステム10を患者50に装着した後、患者50が窮屈に感じたり緩く感じたりした際に、ギプス包帯40を切断することなく、前シェル11から後シェル21を外し、キャスティングシステム10を容易に再調整して装着することができる。さらに、ギプス包帯40を包帯通し穴29に通さずに、前シェル11と後シェル21の外周に巻くこともできる。この場合、後シェル21には、装着した状態の患者50の脊椎周辺に対向する部分に開口部26が形成されており、この開口部26にギプス包帯40が配置されるので、開口部26から柔らかい状態のギプス包帯40を患者50の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺(脊椎周辺)の患部に当てて患者50の背中の形状に合わせてギプス包帯を固めることができる。
【0068】
これにより、ギプス包帯40を前シェル11と後シェル21の全周に巻く場合と、ギプス包帯40を後シェル21のみに巻く場合のいずれの場合であっても、前シェル11及び後シェル21で患者50の体幹部を支持した状態で開口部26からギプス包帯40を脊椎周辺の患部に当てるので、手術後直ちにキャスティングシステム10を患者50に簡単に取り付けることができるとともに個々の患者50の体形(背中の形状)に合わせて患部を固定することができる。このように、患者50に必要な固定の度合いにより、ギプス包帯40を前シェル11と後シェル21の外周の全周に巻く方法と、ギプス包帯40を後シェル21のみに巻く方法を選択することができる。ギプス包帯40を全周に巻く場合は、簡単に取り外しができないようになり強固に固定する目的、例えば高齢者で認知症のある患者50が自ら勝手にキャスティングシステム10を外してしまうことがあるために自ら外せないようにする目的で使用する。ギプス包帯40を後シェル21のみに巻く場合は、例えば術後の患者50や背骨を骨折した患者50など立てない患者50に使用し、患者50をうつぶせにした状態でギプス包帯40を後シェル21のみに巻いて使用する。
【0069】
さらに、前シェル11と後シェル21だけでも固定力があるので、患者50の症状に合わせて、前シェル11と後シェル21を合わせて身体を固定し、ギプス包帯40を使用して前シェル11と後シェル21を巻き、患者50の体幹部を支えることができる。
【0070】
さらに、本発明の構成によれば、前シェル11には、装着した状態で患者50の脇の下との接触を回避するように脇の下では前シェル11の上端部よりも少なくとも4横指低く湾曲して、かつ患者50の正面では剣状突起までの支持部の高さを有するトリミングされた前シェル上部トリミング部15が設けられ、後シェル21には、装着した状態で患者50の脇の下との接触を回避するように湾曲してトリミングされた後シェル上部トリミング部25が設けられている。このため、従来技術のように石膏やギプスが硬化してからトリミングする必要がなく、脇の下などの可動した腕が当たる部分がない状態でキャスティングシステム10を装着後に直ちに心地よく使用することができる。
【0071】
さらに、前シェル11の前面部12に上下に延びて溝が形成されるとともに刃物60をガイドする上下ガイド部16が備えられているので、キャスティングシステム10を外すときはハサミなどの刃物60を上下ガイド16に沿わせてギプス包帯40を容易に切ることができる。これにより、ギプスの取り外しや体幹部への再度の前シェル11と後シェル21を合わせる周径調整を容易に行うことができる。
【0072】
さらに、ベルト30は、独立して長さ調整可能な上部ベルト31と、独立して長さ調整可能な下部ベルト32とから構成されているので、例えば患者50の胸部と腹部といった上下の寸法のバランスに応じて上部ベルト31と下部ベルト32の長さをそれぞれ独立して調整し、どのような体型の患者50であってもフィットするように前シェル11と後シェル21を合わせた周径を調整することができる。
【0073】
さらに、前シェル11及び後シェル21にはベルト保持部35、36が設けられ、ベルト30は、2.6N/cm2以上、8.3N/cm2以下のせん断強度であり、0.39N/cm以上、1.34N/cm以下の剥離強度である面ファスナーにより着脱可能に設けられているので、ベルト30を容易に着脱でき、前シェル11と後シェル21を合わせた周径調整をより容易に行うことができる。
【0074】
さらに、後シェル21は後面部22の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者の側部を支持する側面湾曲部23を備え、前シェル11は前面部12の左右から後方に湾曲して延びるとともに後シェルの側面湾曲部23に重なる側面覆い部13を備えている。このため、患者50の側部が側面湾曲部23及び側面覆い部13で支持され、患者50の体幹部の周囲全体を支持することができる。さらに、後シェル21の側面湾曲部23に、これを覆う側面覆い部13が重なっているだけであるので、前シェル11の側部と後シェル21の側部が互いに移動を制限せずに体幹部の周長が調整されて体幹部にフィットする。このため、キャスティングシステム11を採型せずに患者50に簡単に装着することができる。さらに、後面部22の内側には、患者50の背骨に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材27が設けられているので、患者50の背骨が後シェル21に直接当たることなく、快適にキャスティングシステム10を装着し続けることができる。
【0075】
さらに、ベルト保持部35、36は、前シェル11又は後シェル21に設けられベルト30を挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部35a、36bであるので、シェルと別体のベルト保持部と比較して成形が容易で製造コストを低減させることができる。さらに、キャスティングシステム10は手術後の患者が使用するところ、スプーン等で食事を口に運ぶ際にこぼれ落ちて前シェル11に付着することがある。このとき、シェルと別体のベルト保持部の場合は、シェルと別体のベルト保持部の間やベルト保持部の部品の間に食事が付着して拭き取り難くなるが、前シェル11又は後シェル21に設けられベルト30を挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部35a、36bの場合は、ベルト30を外してシェル及びシェル一体型のベルト保持部35a、36bまでタオル等を円滑に移動させて食事等の汚れを容易に拭き取ることができる。これにより、キャスティングシステム10を別の患者に再利用する際に、拭き取り消毒の作業が容易になるうえ、拭き取り消毒後の仕上がりも新品同様にきれいにすることができる。
【0076】
さらに、後シェル21は、側面湾曲部23に形成されギプス包帯40を挿通可能な包帯通し穴29と、この包帯通し穴29に挿通されたギプス包帯40を折り返す折り返し部29aとを備えているので、ギプス包帯40を包帯通し穴29に通して折り返し部29aで折り返すことで後シェル21のみにギプス包帯40を固定することができる。これにより、キャスティングシステム10を患者50に装着した後、患者50が窮屈に感じたり緩く感じたりした際に、ギプス包帯40を切断することなく、前シェル11から後シェル21を外し、キャスティングシステム10を容易に再調整して装着することができる。
尚、実施例では、ベルト30を面ファスナーで留める形式としたが、これに限定されず、揺動ピンを穴に入れて留める金具などの形式としてもよい。
【0077】
また、実施例では上部ガイド部16を前シェル11とは別部材にして接着したが、これに限定されず、前シェル11に出っ張るように一体成形する他、前シェル11に上下に縦長の溝を成形することとしてもよい。
【0078】
また、実施例では、開口部26の形状を横長の楕円状又は略矩形状にしたが、これに限定されず、開口部26の形状を腰の対向する部分は横長にし、その中央上部から患者の脊椎に沿って上方に逆T字状に開口する形状としてもよい。
【0079】
また、実施例では、緩衝部材17、27をスポンジとし接着剤又は粘着テープで着脱可能に設けたが、これに限定されず、前シェル11及び後シェル21に緩衝部材17、27を嵌める溝を形成してこの溝に緩衝部材17、27を着脱可能に儲けても良い。
【0080】
尚、実施例では、後シェル21に緩衝部材75と背骨横内凸部76を設けたが、これに限定されず、緩衝部材75と背骨横内凸部76のいずれか一方又は両方を設けない後シェル21としてもよい。また、実施例では、包帯通し穴29を後シェル21の左右に1つずつ設けたが、これに限定されず、後シェル21の左右に横方向にずらして2つ、3つ、複数設けてもよい。これにより、ギプス包帯40を重ねて巻くときに高さ毎に異なる包帯通し穴29を使用することで包袋通し穴29の部分でギプス包帯40が皺にならず、きれいに巻くことができる。
【0081】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の技術は、キャスティングシステムは、患者の体幹部を支持するキャスティングシステムに好適である。
【符号の説明】
【0083】
10…キャスティングシステム、11…前シェル、12…前面部、13…側面覆い部、14…前上支持部、15…前シェル上部トリミング部、16…上下ガイド部、17…緩衝部材、18…前シェル下部トリミング部、21…後シェル、22…後面部、23…側面湾曲部、24…後上支持部、25…後シェル上部トリミング部、26…開口部、27…緩衝部材、28…後シェル下部トリミング部、29…包帯通し穴、29a…折り返し部、30…ベルト、31…上部ベルト、32…下部ベルト、35…ベルト保持部、35a…シェル一体型のベルト保持部、36…ベルト保持部、35b…シェル一体型のベルト保持部、40…ギプス包帯、50…患者、51…医療従事者の手、60…刃物(ハサミ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記後シェルには、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に開口部が形成されており、この開口部に前記ギプス包帯が配置されることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項2】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周又は前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルのうち前記後シェルのみの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記後シェルは、前記患者の腰から背中にかけて支持する後面部と、前記後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに前記患者の側部を支持する側面湾曲部と、前記側面湾曲部に形成され前記ギプス包帯を挿通可能な包帯通し穴と、この包帯通し穴に挿通された前記ギプス包帯を折り返し可能な折り返し部と、装着した状態の前記患者の第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎および第1仙椎周辺に対向する部分に形成された開口部とを備え、
前記ギプス包帯は、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周又は前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルのうち前記後シェルのみの外周に選択的に巻かれるとともに、前記開口部に前記ギプス包帯が配置されることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項3】
患者の体幹部を支持する医療用のキャスティングシステムであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する殻状の後シェルと、前記患者に装着された前記前シェルと前記後シェルの外周に巻かれるとともに水に濡らして所定時間経過すると硬化するギプス包帯とを備え、
前記ギプス包帯は、前記前シェル及び前記後シェルに巻かれることで前記患者の体幹部が支えられることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のキャスティングシステムであって、
前記前シェルには、装着した状態で前記患者の脇の下との接触を回避するように脇の下では前記前シェルの上端部よりも少なくとも4横指低く湾曲して、かつ前記患者の正面では剣状突起までの支持部の高さを有するトリミングされた前シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に上縁は剣状突起レベルでの前記体幹部を支持しながらも前記前シェルの下縁が大腿部に食い込まないように前シェル下部トリミング部が設けられ、
前記後シェルには、装着した状態で前記患者の脇の下との接触を回避するように湾曲してトリミングされた後シェル上部トリミング部が設けられ、座位時に前記後シェルの下縁が臀部にかかり仙骨部分のレベルまで支持する後シェル下部トリミング部が設けられていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のキャスティングシステムであって、
前記ベルトは、前記前シェルと前記後シェルの上部を留めるとともに独立して長さ調整可能な上部ベルトと、前記前シェルと前記後シェルの下部を留めるとともに独立して長さ調整可能な下部ベルトとから構成されていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項6】
請求項5項記載のキャスティングシステムあって、
前記前シェル及び前記後シェルには、前記ベルトを保持するベルト保持部が設けられ、
前記ベルトは、2.6N/cm2以上、8.3N/cm2以下のせん断強度であり、0.39N/cm以上、1.34N/cm以下の剥離強度である面ファスナーにより着脱可能に設けられていることを特徴とするキャスティングシステム。
【請求項7】
請求項6項記載のキャスティングシステムあって、
前記ベルト保持部は、前記前シェル又は前記後シェルに設けられ前記ベルトを挿通可能なスリットにより形成されたシェル一体型のベルト保持部であることを特徴とするキャスティングシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】削除
【補正の内容】