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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031783
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多層基板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20240229BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20240229BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01P5/02 603A
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069904
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2022132684
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川辺 健太朗
【テーマコード(参考)】
5E316
5J045
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB04
5E316CC10
5E316CC12
5E316FF27
5E316HH06
5J045DA10
5J045HA02
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、信号導体層と放射導体層との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる多層基板を提供することである。
【解決手段】第2接続区間A12の線幅方向の最大幅は、第1接続区間A11の線幅方向の最大幅より小さい。第1中間区間A21は、線路区間A31の線幅方向の幅より大きな線幅方向の幅を有する第1太線区間A21bを含んでいる。第2中間区間A22は、線路区間A31の線幅方向の幅より大きな線幅方向の幅を有する第2太線区間A22bを含んでいる。第1太線区間A21b及び第2太線区間A22bは、線路区間A31に隣接している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間絶縁体層及び負側隣接絶縁体層を含む複数の絶縁体層がZ軸方向に並ぶように積層された構造を有する積層体であって、複数の絶縁体層のそれぞれは、正主面、及び、前記正主面よりZ軸の負側に位置する負主面を有しており、前記負側隣接絶縁体層は、前記中間絶縁体層の前記Z軸の負側に位置し、かつ、前記中間絶縁体層に接触している、積層体と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層より前記Z軸の正側に位置している放射導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層より前記Z軸の負側に位置する信号導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層の前記負主面に位置し、かつ、第1接続区間、第2接続区間、線路区間、第1中間区間及び第2中間区間を含んでいる接続導体層であって、前記第1中間区間は、前記第1接続区間に隣接しており、前記第2中間区間は、前記第2接続区間に隣接しており、前記線路区間は、前記第1中間区間及び前記第2中間区間に隣接している、接続導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記接続導体層及び前記信号導体層より前記Z軸の負側に位置しており、かつ、前記Z軸方向に見て、前記接続導体層の少なくとも一部分及び前記信号導体層の少なくとも一部分と重なっている第1グランド導体層と、
前記第1接続区間に接触している第1層間接続導体と、
前記第2接続区間に接触している第2層間接続導体と、
を備えており、
前記第1層間接続導体及び前記第2層間接続導体のうちの一方は、前記中間絶縁体層を前記Z軸方向に貫通し、前記放射導体層と前記接続導体層とを電気的に接続しており、
前記第1層間接続導体及び前記第2層間接続導体のうちの他方は、前記負側隣接絶縁体層を前記Z軸方向に貫通し、前記信号導体層と前記接続導体層とを電気的に接続しており、
前記接続導体層が伸びている方向を延伸方向と定義し、
前記延伸方向及び前記Z軸方向に直交する方向を線幅方向と定義し、
前記第1接続区間は前記延伸方向における前記接続導体層の第1端部に位置しており、前記第2接続区間は前記延伸方向における前記接続導体層の第2端部に位置しており、前記延伸方向において、前記接続導体層の第2端部は前記接続導体層の第1端部の反対側に位置しており、
前記延伸方向において、前記第1接続区間の両端は、前記Z軸方向に見た前記第1層間接続導体の中心から等しい距離に位置しており、
前記延伸方向において、前記第2接続区間の両端は、前記Z軸方向に見た前記第2層間接続導体の中心から等しい距離に位置しており、
前記第2接続区間の前記線幅方向の最大幅は、前記第1接続区間の前記線幅方向の最大幅より小さく、
前記第1中間区間は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より大きな前記線幅方向の幅を有する第1太線区間を含んでおり、
前記第2中間区間は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より大きな前記線幅方向の幅を有する第2太線区間を含んでおり、
前記第1太線区間及び前記第2太線区間は、前記線路区間に隣接している、
多層基板。
【請求項2】
前記第1太線区間の前記線幅方向の幅は、前記第2太線区間の前記線幅方向の幅より大きい、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記第1中間区間は、前記第1太線区間の前記線幅方向の幅より小さな前記線幅方向の幅を有する第1細線区間を含んでおり、
前記第2中間区間は、前記第2太線区間の前記線幅方向の幅より小さな前記線幅方向の幅を有する第2細線区間を含んでおり、
前記第1細線区間は、前記第1接続区間に隣接しており、
前記第2細線区間は、前記第2接続区間に隣接している、
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多層基板。
【請求項4】
前記第1細線区間の前記線幅方向の幅及び前記第2細線区間の前記線幅方向の幅は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より小さい、
請求項3に記載の多層基板。
【請求項5】
前記第1グランド導体層は、前記Z軸方向に見て、前記放射導体層と重なっている、
請求項1又は請求項2に記載の多層基板。
【請求項6】
前記積層体は、前記Z軸方向に直交するX軸方向に並ぶ第1区間及び第2区間を有しており、
前記第1区間の前記Z軸方向の厚みは、前記第2区間の前記Z軸方向の厚みより大きく、
前記接続導体層は、前記第1区間に位置しており、
前記信号導体層は、前記第1区間及び前記第2区間に位置している、
請求項1又は請求項2に記載の多層基板。
【請求項7】
前記積層体は、前記Z軸方向に直交するX軸方向にこの順に並ぶ第1区間、第2区間及び第3区間を有しており、
前記第1区間の前記Z軸方向の厚みは、前記第2区間の前記Z軸方向の厚みより大きく、
前記第3区間の前記Z軸方向の厚みは、前記第2区間の前記Z軸方向の厚みより大きく、
前記多層基板は、
前記第3区間に位置し、かつ、前記第1区間及び前記第2区間に位置しない第2グランド導体層を、
更に備えており、
前記第1グランド導体層は、前記第1区間、前記第2区間及び前記第3区間に位置しており、
前記第2グランド導体層は、前記信号導体層より前記Z軸の正側に位置しており、かつ、前記Z軸方向に見て、前記信号導体層の少なくとも一部分と重なっており、
前記信号導体層は、前記第1区間及び前記第2区間において、前記第1グランド導体層と共にマイクロストリップライン構造を形成しており、
前記信号導体層は、前記第3区間において、前記第1グランド導体層及び前記第2グランド導体層と共にストリップライン構造を形成している、
請求項1又は請求項2に記載の多層基板。
【請求項8】
前記積層体は、第1積層体部及び第2積層体部を含んでおり、
前記第1積層体部は、前記中間絶縁体層より前記Z軸の正側に位置する1以上の前記絶縁体層及び前記中間絶縁体層を含んでおり、
前記第2積層体部は、前記中間絶縁体層より前記Z軸の負側に位置する1以上の前記絶縁体層を含んでおり、
前記第2積層体部の主たる絶縁材料は、前記第1積層体部の主たる絶縁材料と異なる、
請求項1又は請求項2に記載の多層基板。
【請求項9】
前記第2積層体部の主たる絶縁材料のヤング率は、前記第1積層体部の主たる絶縁材料のヤング率より高い、
請求項8に記載の多層基板。
【請求項10】
前記第2層間接続導体の材料は、前記第1層間接続導体の材料と異なる、
請求項8に記載の多層基板。
【請求項11】
前記積層体は、可撓性を有している、
請求項1又は請求項2に記載の多層基板。
【請求項12】
前記複数の絶縁体層の材料は、熱可塑性樹脂である、
請求項1又は請求項2に記載の多層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射導体層を備える多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多層基板に関する発明としては、特許文献1に記載のアンテナモジュールが知られている。アンテナモジュールは、アンテナパッケージ及び接続部材を備えている。接続部材は、可撓性を有する帯状の基板である。接続部材は、給電線を含んでいる。アンテナパッケージは、接続部材の上に固定されている。アンテナパッケージは、パッチアンテナを含んでいる。パッチアンテナは、給電線と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0194893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のアンテナモジュールにおいて、パッチアンテナと給電線との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生する場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、信号導体層と放射導体層との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる多層基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る多層基板は、
中間絶縁体層及び負側隣接絶縁体層を含む複数の絶縁体層がZ軸方向に並ぶように積層された構造を有する積層体であって、複数の絶縁体層のそれぞれは、正主面、及び、前記正主面よりZ軸の負側に位置する負主面を有しており、前記負側隣接絶縁体層は、前記中間絶縁体層の前記Z軸の負側に位置し、かつ、前記中間絶縁体層に接触している、積層体と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層より前記Z軸の正側に位置している放射導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層より前記Z軸の負側に位置する信号導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層の前記負主面に位置し、かつ、第1接続区間、第2接続区間、線路区間、第1中間区間及び第2中間区間を含んでいる接続導体層であって、前記第1中間区間は、前記第1接続区間に隣接しており、前記第2中間区間は、前記第2接続区間に隣接しており、前記線路区間は、前記第1中間区間及び前記第2中間区間に隣接している、接続導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記接続導体層及び前記信号導体層より前記Z軸の負側に位置しており、かつ、前記Z軸方向に見て、前記接続導体層の少なくとも一部分及び前記信号導体層の少なくとも一部分と重なっている第1グランド導体層と、
前記第1接続区間に接触している第1層間接続導体と、
前記第2接続区間に接触している第2層間接続導体と、
を備えており、
前記第1層間接続導体及び前記第2層間接続導体のうちの一方は、前記中間絶縁体層を前記Z軸方向に貫通し、前記放射導体層と前記接続導体層とを電気的に接続しており、
前記第1層間接続導体及び前記第2層間接続導体のうちの他方は、前記負側隣接絶縁体層を前記Z軸方向に貫通し、前記信号導体層と前記接続導体層とを電気的に接続しており、
前記接続導体層が伸びている方向を延伸方向と定義し、
前記延伸方向及び前記Z軸方向に直交する方向を線幅方向と定義し、
前記第1接続区間は前記延伸方向における前記接続導体層の第1端部に位置しており、前記第2接続区間は前記延伸方向における前記接続導体層の第2端部に位置しており、前記延伸方向において、前記接続導体層の第2端部は前記接続導体層の第1端部の反対側に位置しており、
前記延伸方向において、前記第1接続区間の両端は、前記Z軸方向に見た前記第1層間接続導体の中心から等しい距離に位置しており、
前記延伸方向において、前記第2接続区間の両端は、前記Z軸方向に見た前記第2層間接続導体の中心から等しい距離に位置しており、
前記第2接続区間の前記線幅方向の最大幅は、前記第1接続区間の前記線幅方向の最大幅より小さく、
前記第1中間区間は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より大きな前記線幅方向の幅を有する第1太線区間を含んでおり、
前記第2中間区間は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より大きな前記線幅方向の幅を有する第2太線区間を含んでおり、
前記第1太線区間及び前記第2太線区間は、前記線路区間に隣接している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る多層基板によれば、信号導体層と放射導体層との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、多層基板10の分解斜視図である。
図2図2は、図1のA-Aにおける多層基板10の断面図である。
図3図3は、接続導体層24の上面図である。
図4図4は、スミスチャートである。
図5図5は、接続導体層24aの上面図である。
図6図6は、接続導体層24bの上面図である。
図7図7は、接続導体層24cの上面図である。
図8図8は、スミスチャートである。
図9図9は、接続導体層24dの上面図である。
図10図10は、多層基板10aの断面図である。
図11図11は、多層基板10bの断面図である。
図12図12は、多層基板10bに設けられた接続導体層24の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
[多層基板10の構造]
以下に、本発明の第1実施形態に係る多層基板10の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、多層基板10の分解斜視図である。図2は、図1のA-Aにおける多層基板10の断面図である。図3は、接続導体層24の上面図である。
【0010】
以下では、多層基板10の積層体12の積層方向を上下方向と定義する。上下方向は、Z軸方向と一致する。上方向は、Z軸の正方向である。下方向は、Z軸の負方向である。多層基板10を上下方向に見て、多層基板10の辺が延びる2方向のそれぞれを左右方向及び前後方向と定義する。左右方向は、X軸方向と一致する。前後方向は、Y軸方向と一致する。左右方向は、上下方向に直交している。前後方向は、上下方向及び左右方向に直交している。なお、本明細書における方向の定義は、一例である。従って、多層基板10の実使用時における方向と本明細書における方向とが一致している必要はない。また、各図面において上下方向が反転してもよい。同様に、各図面において左右方向が反転してもよい。各図面において前後方向が反転してもよい。
【0011】
以下では、Xは、多層基板10の部品又は部材である。本明細書において、特に断りのない場合には、Xの各部について以下のように定義する。Xの前部とは、Xの前半分を意味する。Xの後部とは、Xの後半分を意味する。Xの左部とは、Xの左半分を意味する。Xの右部とは、Xの右半分を意味する。Xの上部とは、Xの上半分を意味する。Xの下部とは、Xの下半分を意味する。Xの前端とは、Xの前方向の端を意味する。Xの後端とは、Xの後方向の端を意味する。Xの左端とは、Xの左方向の端を意味する。Xの右端とは、Xの右方向の端を意味する。Xの上端とは、Xの上方向の端を意味する。Xの下端とは、Xの下方向の端を意味する。Xの前端部とは、Xの前端及びその近傍を意味する。Xの後端部とは、Xの後端及びその近傍を意味する。Xの左端部とは、Xの左端及びその近傍を意味する。Xの右端部とは、Xの右端及びその近傍を意味する。Xの上端部とは、Xの上端及びその近傍を意味する。Xの下端部とは、Xの下端及びその近傍を意味する。
【0012】
多層基板10は、例えば、携帯電話等の電子機器に用いられる。多層基板10は、図1に示すように、積層体12、第2グランド導体層18、放射導体層20、接続導体層22a,22b,24、信号導体層26、第1グランド導体層28及び層間接続導体v1~v4を備えている。
【0013】
積層体12は、板形状を有している。積層体12は、絶縁体層14a~14g及び保護層15a~15cがZ軸方向に積層された構造を有している。絶縁体層14a~14d及び保護層15aは、上下方向に見て、長方形状を有している。絶縁体層14e~14g及び保護層15b,15cは、上下方向に見て、左右方向に延びる帯形状を有している。保護層15a、絶縁体層14a~14f及び保護層15bは、上から下へとこの順に並んでいる。絶縁体層14e,14f及び保護層15bは、上下方向に見て、絶縁体層14a~14dから右方向に延びている。
【0014】
絶縁体層14gは、絶縁体層14eの上に積層されている。絶縁体層14gは、絶縁体層14dの右に位置している。ただし、絶縁体層14gは、絶縁体層14dに接触していない。保護層15cは、絶縁体層14gの上に積層されている。
【0015】
以上のような絶縁体層14a~14g及び保護層15a~15cのそれぞれは、上主面(正主面)、及び、上主面(正主面)より下(Z軸の負側)に位置する下主面(負主面)を有している。また、絶縁体層14a~14gは、中間絶縁体層である絶縁体層14d及び負側隣接絶縁体層である絶縁体層14eを含んでいる。負側隣接絶縁体層である絶縁体層14eは、中間絶縁体層である絶縁体層14dの下(Z軸の負側)に位置し、かつ、中間絶縁体層である絶縁体層14dに接触している。
【0016】
絶縁体層14a~14gの材料は、ポリイミドや液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂である。保護層15a~15cは、絶縁体層の上主面又は下主面に塗布される絶縁膜である。保護層15a~15cのそれぞれは、放射導体層20、第1グランド導体層28及び第2グランド導体層18を保護している。以上のような積層体12は、可撓性を有している。
【0017】
ここで、積層体12は、図2に示すように、左右方向(Z軸方向に直交するX軸方向)にこの順に並ぶ第1区間A1、第2区間A2及び第3区間A3を有している。第1区間A1、第2区間A2及び第3区間A3は、左から右へとこの順に並んでいる。第1区間A1の上下方向(Z軸方向)の厚みは、第2区間A2の上下方向(Z軸方向)の厚みより大きい。第3区間A3の上下方向(Z軸方向)の厚みは、第2区間A2の上下方向(Z軸方向)の厚みより大きい。第3区間A3の上下方向(Z軸方向)の厚みは、第1区間A1の上下方向(Z軸方向)の厚みより小さい。
【0018】
また、積層体12は、図2に示すように、第1積層体部12a及び第2積層体部12bを含んでいる。第1積層体部12aは、中間絶縁体層である絶縁体層14dより上(Z軸の正側)に位置する絶縁体層14a~14c、中間絶縁体層である絶縁体層14d、及び、保護層15aを含んでいる。第2積層体部12bは、中間絶縁体層である絶縁体層14dより下(Z軸の負側)に位置する絶縁体層14e,14fを含んでいる。第2積層体部12bは、絶縁体層14g及び保護層15b,15cを更に含んでいる。積層体12は、第1積層体部12aを熱圧着し、第2積層体部12bを熱圧着した後に、第1積層体部12aと第2積層体部12bとを熱圧着することにより、作成される。
【0019】
放射導体層20は、パッチアンテナとして機能する。放射導体層20は、高周波信号を放射及び/又は受信する。放射導体層20は、図1に示すように、積層体12に設けられている。放射導体層20は、中間絶縁体層である絶縁体層14dより上(Z軸の正側)に位置している。より詳細には、放射導体層20は、絶縁体層14aの上主面に位置している。放射導体層20は、上下方向に見て、左右方向及び前後方向に延びる対角線を有するひし形状を有している。
【0020】
信号導体層26には、高周波信号が伝送される。信号導体層26は、図1に示すように、積層体12に設けられている。信号導体層26は、中間絶縁体層である絶縁体層14dより下(Z軸の負側)に位置している。より詳細には、信号導体層26は、絶縁体層14eの下主面に位置している。信号導体層26は、上下方向に見て、左右方向に延びる線形状を有している。信号導体層26は、図2に示すように、第1区間A1、第2区間A2及び第3区間A3に位置している。
【0021】
接続導体層24には、高周波信号が伝送される。接続導体層24は、積層体12に設けられている。接続導体層24は、中間絶縁体層である絶縁体層14dの下主面(負主面)に位置している。より詳細には、接続導体層24は、絶縁体層14dの下主面に位置している。接続導体層24は、上下方向に見て、左右方向に延びる線形状を有している。接続導体層24の右端部は、上下方向に見て、信号導体層26の左端部と重なっている。接続導体層24は、図2に示すように、第1区間A1に位置している。接続導体層24は、第2区間A2及び第3区間A3に位置していない。
【0022】
第1グランド導体層28は、グランド電位に接続される。第1グランド導体層28は、積層体12に設けられている。第1グランド導体層28は、接続導体層24及び信号導体層26より下(Z軸の負側)に位置している。第1グランド導体層28は、絶縁体層14fの下主面に位置している。第1グランド導体層28は、絶縁体層14fの下主面のほぼ全体を覆っている。これにより、第1グランド導体層28は、上下方向(Z軸方向)に見て、接続導体層24の少なくとも一部分及び信号導体層26の少なくとも一部分と重なっている。本実施形態では、第1グランド導体層28は、上下方向に見て、接続導体層24の全体及び信号導体層26の全体と重なっている。また、第1グランド導体層28と接続導体層24との間には、導体が存在しない。第1グランド導体層28と信号導体層26との間には、導体が存在しない。更に、第1グランド導体層28は、上下方向(Z軸方向)に見て、放射導体層20と重なっている。以上のような第1グランド導体層28は、第1区間A1、第2区間A2及び第3区間A3に位置している。
【0023】
第2グランド導体層18は、グランド電位に接続される。第2グランド導体層18は、積層体12に設けられている。第2グランド導体層18は、信号導体層26より上(Z軸の正側)に位置している。第2グランド導体層18は、絶縁体層14gの上主面に位置している。第2グランド導体層18は、絶縁体層14gの上主面のほぼ全体を覆っている。これにより、第2グランド導体層18は、上下方向(Z軸方向)に見て、信号導体層26の少なくとも一部分と重なっている。本実施形態では、第2グランド導体層18は、上下方向に見て、信号導体層26の全体と重なっている。また、第2グランド導体層18と信号導体層26との間には、層間接続導体v4及び第1グランド導体層28以外の導体が存在しない。以上のような第2グランド導体層18は、第3区間A3に位置している。第2グランド導体層18は、第1区間A1及び第2区間A2に位置していない。
【0024】
以上のように、信号導体層26は、第1区間A1及び第2区間A2において、第1グランド導体層28と共にマイクロストリップライン構造を形成している。信号導体層26は、第3区間A3において、第1グランド導体層28及び第2グランド導体層18と共にストリップライン構造を形成している。これにより、信号導体層26に発生している特性インピーダンスは、所定の特性インピーダンス(50Ω)である。
【0025】
接続導体層22aは、絶縁体層14bの上主面に位置している。接続導体層22aは、左右方向に延びる線形状を有している。接続導体層22aの左端部は、上下方向に見て、放射導体層20と重なっている。
【0026】
接続導体層22bは、絶縁体層14cの上主面に位置している。接続導体層22bは、左右方向に延びる線形状を有している。接続導体層22bの左端部は、上下方向に見て、接続導体層24の左端部と重なっている。接続導体層22bの右端部は、上下方向に見て、接続導体層22aの右端部と重なっている。
【0027】
層間接続導体v1は、絶縁体層14aを上下方向に貫通している。層間接続導体v1は、放射導体層20及び接続導体層22aの左端部に接触している。これにより、層間接続導体v1は、放射導体層20と接続導体層22aとを電気的に接続している。
【0028】
層間接続導体v2は、絶縁体層14bを上下方向に貫通している。層間接続導体v2は、接続導体層22aの右端部及び接続導体層22bの右端部に接触している。これにより、層間接続導体v2は、接続導体層22aと接続導体層22bとを電気的に接続している。
【0029】
層間接続導体v3は、第2層間接続導体の一例である。層間接続導体v3は、中間絶縁体層である絶縁体層14d及び絶縁体層14cを上下方向(Z軸方向)に貫通している。層間接続導体v3は、接続導体層22bの左端部及び接続導体層24の左端部に接触している。これにより、層間接続導体v3は、接続導体層22bと接続導体層24とを電気的に接続している。このように、層間接続導体v3は、放射導体層20に電気的に接続されている。
【0030】
層間接続導体v4は、第1層間接続導体の一例である。層間接続導体v4は、負側隣接絶縁体層である絶縁体層14eを上下方向(Z軸方向)に貫通している。層間接続導体v4は、接続導体層24の右端部及び信号導体層26の左端部に接触している。これにより、層間接続導体v4は、接続導体層24と信号導体層26とを電気的に接続している。従って、層間接続導体v4は、信号導体層26に電気的に接続されている。
【0031】
ここで、層間接続導体v3から放射導体層20までの電流経路の長さは、後述する層間接続導体v4から放射導体層20までの電流経路の長さより短い。層間接続導体v4から信号導体層26までの電流経路の長さは、層間接続導体v3から信号導体層26までの電流経路の長さより短い。
【0032】
以上のような第2グランド導体層18、放射導体層20、接続導体層22a,22b,24、信号導体層26及び第1グランド導体層28は、絶縁体層14a~14gの上主面又は下主面に張り付けられた金属箔にパターニングが施されることにより形成される。金属箔は、例えば、銅箔である。また、層間接続導体v1~v3は、例えば、絶縁体層14a~14dを上下方向に貫通する貫通孔に導電性ペーストが充填され、導電性ペーストが加熱により固化されることにより形成される。層間接続導体v4は、絶縁体層14eを上下方向に貫通する貫通孔に半田が充填されることにより形成される。このように、第2層間接続導体である層間接続導体v3の材料は、第1層間接続導体である層間接続導体v4の材料と異なる。
【0033】
以下に、接続導体層24の構造の詳細について図3を参照しながら説明する。接続導体層24が伸びている方向を延伸方向と定義する。延伸方向は、左右方向である。延伸方向及び上下方向(Z軸方向)に直交する方向を線幅方向と定義する。線幅方向は、前後方向である。
【0034】
接続導体層24は、第1接続区間A11、第2接続区間A12、線路区間A31、第1中間区間A21及び第2中間区間A22を含んでいる。第1接続区間A11、第1中間区間A21、線路区間A31、第2中間区間A22及び第2接続区間A12は、右から左へとこの順に並んでいる。従って、第1中間区間A21は、第1接続区間A11に隣接している。第2中間区間A22は、第2接続区間A12に隣接している。線路区間A31は、第1中間区間A21及び第2中間区間A22に隣接している。第1接続区間A11は延伸方向における接続導体層24の右端部(第1端部)に位置している。第2接続区間A12は延伸方向における接続導体層24の左端部(第2端部)に位置している。従って、第1接続区間A11の右端は接続導体層24の右端に一致している。第2接続区間A12の左端は接続導体層24の左端に一致している。
【0035】
層間接続導体v4(第1層間接続導体)は、第1接続区間A11に接触している。延伸方向である左右方向において、第1接続区間A11の両端は、上下方向(Z軸方向)に見た層間接続導体v4(第1層間接続導体)の中心から等しい距離に位置している。従って、層間接続導体v4の中心から第1接続区間A11の左端までの距離は、層間接続導体v4の中心から第1接続区間A11の右端までの距離と等しい。
【0036】
層間接続導体v3(第2層間接続導体)は、第2接続区間A12に接触している。延伸方向である左右方向において、第2接続区間A12の両端は、上下方向(Z軸方向)に見た層間接続導体v3(第2層間接続導体)の中心から等しい距離に位置している。従って、層間接続導体v3の中心から第2接続区間A12の左端までの距離は、層間接続導体v3の中心から第2接続区間A12の右端までの距離と等しい。第2接続区間A12の前後方向(線幅方向)の最大幅は、第1接続区間A11の前後方向(線幅方向)の最大幅より小さい。第1接続区間A11及び第2接続区間A12は、円形状を有している。第2接続区間A12の直径は、第1接続区間A11の直径より小さい。
【0037】
第1中間区間A21は、第1細線区間A21a及び第1太線区間A21bを含んでいる。第1細線区間A21aは、第2太線区間A22bの前後方向(線幅方向)の幅より小さな前後方向(線幅方向)の幅を有している。第1太線区間A21bは、線路区間A31に隣接している。第1太線区間A21bは、線路区間A31の前後方向(線幅方向)の幅より大きな前後方向(線幅方向)の幅を有している。
【0038】
第2中間区間A22は、第2細線区間A22a及び第2太線区間A22bを含んでいる。第2細線区間A22aは、第2太線区間A22bの前後方向(線幅方向)の幅より小さな前後方向(線幅方向)の幅を有している。第2太線区間A22bは、線路区間A31に隣接している。第2太線区間A22bは、線路区間A31の前後方向(線幅方向)の幅より小さな前後方向(線幅方向)の幅を有している。
【0039】
[効果]
多層基板10によれば、信号導体層26と放射導体層20との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる。以下に、図面を参照しながら説明する。図4は、スミスチャートである。Z0は、線路区間A31に発生している特性インピーダンスである。Z0は、50Ωである。Z1は、第1接続区間A11に発生している特性インピーダンスである。Z1は、例えば、20Ωである。
【0040】
より詳細には、多層基板10では、接続導体層24の第1接続区間A11及び第2接続区間A12の線幅方向の幅は、線路区間A31の線幅方向の幅より大きい。また、第1接続区間A11には層間接続導体v4が接触している。第2接続区間A12には層間接続導体v3が接触している。そのため、接続導体層24の第1接続区間A11及び第2接続区間A12に発生する特性インピーダンスは、所望の特定インピーダンス(50Ω)からずれやすい。
【0041】
そこで、接続導体層24は、第1中間区間A21を含んでいる。第1中間区間A21は、第2太線区間A22bの線幅方向の幅より小さな線幅方向の幅を有する第1細線区間A21aを含んでいる。第1中間区間A21は、第1接続区間A11に隣接している。これにより、第1細線区間A21aは、インダクタンスとして機能する。すなわち、線路区間A31に直列にインダクタが接続されている。これにより、図4のスミスチャートの矢印X1に示すように、第1細線区間A21aは、Z1を起点として時計回りにインピーダンスを回転させる。
【0042】
また、第1中間区間A21は、線路区間A31の線幅方向の幅より大きな線幅方向の幅を有する第1太線区間A21bを含んでいる。そして、第1太線区間A21bは、線路区間A31に隣接している。また、第1太線区間A21bは、上下方向に見て、第1グランド導体層28と重なっている。そのため、第1太線区間A21bには、容量が発生している。すなわち、線路区間A31に並列に容量が接続されている。これにより、図4のスミスチャートの矢印X2に示すように、第1太線区間A21bは、矢印X1の先端を起点として時計回りにインピーダンスを回転させる。
【0043】
その結果、第1中間区間A21により、線路区間A31に発生している特性インピーダンスと第1接続区間A11に発生している特性インピーダンスとの整合が図られる。なお、説明を省略するが、同じ原理により、第2中間区間A22により、線路区間A31に発生している特性インピーダンスと第2接続区間A12に発生している特性インピーダンスとの整合が図られる。以上より、多層基板10によれば、信号導体層26と放射導体層20との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる。そして、信号導体層26と放射導体層20との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制されることにより、多層基板10の広帯域化が図られている。
【0044】
また、多層基板10によれば、第1接続区間A11と層間接続導体v4とがより確実に接続される。より詳細には、積層体12は、第1積層体部12aを熱圧着し、第2積層体部12bを熱圧着した後に、第1積層体部12aと第2積層体部12bとを熱圧着することにより、作成される。第1積層体部12aと第2積層体部12bとの熱圧着の際に、第1接続区間A11と層間接続導体v4とが接続される。そこで、第1接続区間A11の線幅方向の最大幅は、第2接続区間A12の線幅方向の最大幅より大きい。これにより、第1接続区間A11と層間接続導体v4とがより確実に接続される。
【0045】
(第1変形例)
以下に、第1変形例に係る接続導体層24aについて図面を参照しながら説明する。図5は、接続導体層24aの上面図である。
【0046】
接続導体層24aは、以下の点において接続導体層24と相違する。
・第1太線区間A21bの線幅方向の幅w1は、第2太線区間A22bの線幅方向の幅w2より大きい。
・第1細線区間A21aの線幅方向の幅w11及び第2細線区間A22a線幅方向の幅w12は、線路区間A31の線幅方向の幅w3より小さい。
【0047】
接続導体層24aのその他の構造は、接続導体層24の構造と同じであるので説明を省略する。接続導体層24aを備える多層基板10は、接続導体層24を備える多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0048】
また、接続導体層24aを備える多層基板10によれば、第1中間区間A21により、線路区間A31に発生している特性インピーダンスと第1接続区間A11に発生している特性インピーダンスとの整合が図られる。第1接続区間A11の線幅方向の最大幅は、第2接続区間A12の線幅方向の最大幅より大きい。そのため、第1接続区間A11に発生する特性インピーダンスは、第2接続区間A12に発生する特性インピーダンスより小さい。すなわち、所定の特性インピーダンス(50Ω)と第1接続区間A11に発生する特性インピーダンスとの差が大きくなる。そこで、第1太線区間A21bの線幅方向の幅w1は、第2太線区間A22bの線幅方向の幅w2より大きい。これにより、第1太線区間A21bに発生する容量値が大きくなる。第1細線区間A21aの線幅方向の幅w11及び第2細線区間A22aの線幅方向の幅w12は、線路区間A31の線幅方向の幅w3より小さい。これにより、第1細線区間A21aに発生するインダクタンス値が大きくなる。その結果、第1中間区間A21により、線路区間A31に発生している特性インピーダンスと第1接続区間A11に発生している特性インピーダンスとの整合が図られる。
【0049】
(第2変形例)
以下に、第2変形例に係る接続導体層24bについて図面を参照しながら説明する。図6は、接続導体層24bの上面図である。
【0050】
接続導体層24bは、第1太線区間A21b及び第2太線区間A22bの形状において、接続導体層24aと相違する。第1太線区間A21b及び第2太線区間A22bは、テーパ形状を有している。第1太線区間A21b及び第2太線区間A22bは、線路区間A31に近づくに従って線幅方向の幅が小さくなっている。これにより、第1太線区間A21b及び第2太線区間A22bに発生する特性インピーダンスの急激な変化が抑制されている。接続導体層24bのその他の構造は、接続導体層24aと同じである。接続導体層24bを備える多層基板10は、接続導体層24aを備える多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0051】
(第3変形例)
以下に、第3変形例に係る接続導体層24cについて図面を参照しながら説明する。図7は、接続導体層24cの上面図である。
【0052】
接続導体層24cは、第1細線区間A21a及び第2細線区間A22aが存在しない点において接続導体層24と相違する。第1太線区間A21bは、第1接続区間A11に隣接している。第2太線区間A22bは、第2接続区間A12に隣接している。接続導体層24cのその他の構造は、接続導体層24と同じであるので説明を省略する。
【0053】
接続導体層24cを備える多層基板10によれば、信号導体層26と放射導体層20との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる。以下に、図面を参照しながら説明する。図8は、スミスチャートである。Z0は、線路区間A31に発生している特性インピーダンスである。Z0は、50Ωである。Z1は、第1接続区間A11に発生している特性インピーダンスである。Z1は、例えば、20Ωである。
【0054】
より詳細には、多層基板10では、接続導体層24cの第1接続区間A11及び第2接続区間A12の線幅方向の幅は、線路区間A31の線幅方向の幅より大きい。また、第1接続区間A11には層間接続導体v4が接触している。第2接続区間A12には層間接続導体v3が接触している。そのため、接続導体層24cの第1接続区間A11及び第2接続区間A12に発生する特性インピーダンスは、所望の特定インピーダンス(50Ω)からずれやすい。
【0055】
そこで、接続導体層24cは、第1中間区間A21を含んでいる。第1太線区間A21bは、上下方向に見て、第1グランド導体層28と重なっている。これにより、第1太線区間A21bは、伝送線路として機能する。第1中間区間A21は、線路区間A31の線幅方向の幅より大きな線幅方向の幅を有する第1太線区間A21bを含んでいる。そのため、第1太線区間A21bに発生する特性インピーダンスZ2は、所定の特性インピーダンス(50Ω)より小さい。これにより、インピーダンスは、第1太線区間A21bに発生する特性インピーダンスZ2を中心とし、かつ、Z0を通過する円に沿うように移動する。そこで、第1太線区間A21bに発生する特性インピーダンスZ2が適切な値に設定され、かつ、第1太線区間A21bの長さが適切な長さに設定される。これにより、第1中間区間A21により、線路区間A31に発生している特性インピーダンスと第1接続区間A11に発生している特性インピーダンスとの整合が図られる。なお、説明を省略するが、同じ原理により、第2中間区間A22により、線路区間A31に発生している特性インピーダンスと第2接続区間A12に発生している特性インピーダンスとの整合が図られる。以上より、接続導体層24cを備える多層基板10によれば、信号導体層26と放射導体層20との間の区間において特性インピーダンスの不整合が発生することを抑制できる。
【0056】
(第4変形例)
以下に、第4変形例に係る接続導体層24dについて図面を参照しながら説明する。図9は、接続導体層24dの上面図である。
【0057】
接続導体層24dは、線路区間A31が、上下方向に見て、屈曲している点において、接続導体層24と相違する。このように、線路区間A31は、直線形状を有していなくてもよい。接続導体層24dのその他の構造は、接続導体層24と同じであるので説明を省略する。接続導体層24dを備える多層基板10は、接続導体層24を備える多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0058】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る多層基板10aについて図面を参照しながら説明する。図10は、多層基板10aの断面図である。
【0059】
多層基板10aは、第2積層体部12bの主たる絶縁材料が第1積層体部12aの主たる絶縁材料と異なる点において、多層基板10と相違する。第2積層体部12bの主たる絶縁材料のヤング率は、第1積層体部12aの主たる絶縁材料のヤング率より高い。第1積層体部12aの材料は、テフロン(登録商標)やFR-4である。第2積層体部12bの材料は、例えば、ポリイミドや液晶ポリマーである。多層基板10aのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。多層基板10aは、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0060】
多層基板10aでは、第2積層体部12bの主たる絶縁材料のヤング率は、第1積層体部12aの主たる絶縁材料のヤング率より高い。これにより、第2積層体部12bを任意の形状に容易に加工することが可能である。
【0061】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る多層基板10bについて図面を参照しながら説明する。図11は、多層基板10bの断面図である。図12は、多層基板10bに設けられた接続導体層24の上面図である。
【0062】
多層基板10bは、主に、層間接続導体v3が信号導体層26側に位置し、層間接続導体v4が放射導体層20側に位置する点において、多層基板10と相違する。
【0063】
第3実施形態では、絶縁体層14e,14fだけでなく、絶縁体層14dも、絶縁体層14a~14cから右方向に延びている。絶縁体層14gは、絶縁体層14dの上に積層されている。第3実施形態では、絶縁体層14cが中間絶縁体層に相当し、絶縁体層14dが負側隣接絶縁体層に相当する。
【0064】
第1積層体部12aは絶縁体層14a~14c及び保護層15aを含んでいる。第2積層体部12bは絶縁体層14d~14g及び保護層15b,15cを含んでいる。積層体12は、第1積層体部12aを熱圧着し、第2積層体部12bを熱圧着した後に、第1積層体部12aと第2積層体部12bとを熱圧着することにより、作成される。
【0065】
接続導体層24は、絶縁体層14dの上主面に位置している。図12に示すように、接続導体層24は、第1接続区間A11から第2接続区間A12に向かう方向が右方向に一致するように設けられている。第3実施形態では、接続導体層24の左端部が接続導体層24の第1端部に相当し、接続導体層24の右端部が接続導体層24の第2端部に相当する。
【0066】
層間接続導体v3は、絶縁体層14d,14eを上下方向に貫通している。層間接続導体v3は、接続導体層24の右端部、即ち接続導体層24の第2接続区間A12、及び信号導体層26の左端部に接触している。これにより、層間接続導体v3は、接続導体層24と信号導体層26とを電気的に接続している。従って、層間接続導体v3は、信号導体層26に電気的に接続されている。
【0067】
層間接続導体v4は、絶縁体層14cを上下方向に貫通している。層間接続導体v4は、接続導体層22bの左端部、及び接続導体層24の左端部、即ち接続導体層24の第1接続区間A11に接触している。これにより、層間接続導体v4は、接続導体層22bと接続導体層24とを電気的に接続している。従って、層間接続導体v4は、放射導体層20に電気的に接続されている。
【0068】
ここで、層間接続導体v4から放射導体層20までの電流経路の長さは、層間接続導体v3から放射導体層20までの電流経路の長さより短い。層間接続導体v3から信号導体層26までの電流経路の長さは、層間接続導体v4から信号導体層26までの電流経路の長さより短い。
【0069】
多層基板10bのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。多層基板10bは、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
本発明に係る多層基板は、多層基板10,10a,10bに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。また、多層基板10,10a,10bの構造を任意に組み合わせてもよい。また、接続導体層24,24a~24dの構造を任意に組み合わせてもよい。
【0071】
なお、第1太線区間A21bの線幅方向の幅は、第2太線区間A22bの線幅方向の幅以下であってもよい。
【0072】
なお、第1細線区間A21aの線幅方向の幅及び第2細線区間A22aの線幅方向の幅は、線路区間A31の線幅方向の幅以上であってもよい。
【0073】
なお、多層基板10,10a,10bは、信号導体層26より上に位置し、かつ、上下方向に見て、信号導体層26と重なるグランド導体を更に備えていてもよい。
【0074】
なお、積層体12は、可撓性を有していなくてもよい。
【0075】
なお、絶縁体層14a~14gの材料は、熱可塑性樹脂以外の材料であってもよい。
【0076】
なお、第2層間接続導体である層間接続導体v3の材料は、第1層間接続導体である層間接続導体v4の材料と同じでもよい。
【0077】
本発明は、以下の構造を備える。
【0078】
(1)
中間絶縁体層及び負側隣接絶縁体層を含む複数の絶縁体層がZ軸方向に並ぶように積層された構造を有する積層体であって、複数の絶縁体層のそれぞれは、正主面、及び、前記正主面よりZ軸の負側に位置する負主面を有しており、前記負側隣接絶縁体層は、前記中間絶縁体層の前記Z軸の負側に位置し、かつ、前記中間絶縁体層に接触している、積層体と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層より前記Z軸の正側に位置している放射導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層より前記Z軸の負側に位置する信号導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記中間絶縁体層の前記負主面に位置し、かつ、第1接続区間、第2接続区間、線路区間、第1中間区間及び第2中間区間を含んでいる接続導体層であって、前記第1中間区間は、前記第1接続区間に隣接しており、前記第2中間区間は、前記第2接続区間に隣接しており、前記線路区間は、前記第1中間区間及び前記第2中間区間に隣接している、接続導体層と、
前記積層体に設けられ、かつ、前記接続導体層及び前記信号導体層より前記Z軸の負側に位置しており、かつ、前記Z軸方向に見て、前記接続導体層の少なくとも一部分及び前記信号導体層の少なくとも一部分と重なっている第1グランド導体層と、
前記第1接続区間に接触している第1層間接続導体と、
前記第2接続区間に接触している第2層間接続導体と、
を備えており、
前記第1層間接続導体及び前記第2層間接続導体のうちの一方は、前記中間絶縁体層を前記Z軸方向に貫通し、前記放射導体層と前記接続導体層とを電気的に接続しており、
前記第1層間接続導体及び前記第2層間接続導体のうちの他方は、前記負側隣接絶縁体層を前記Z軸方向に貫通し、前記信号導体層と前記接続導体層とを電気的に接続しており、
前記接続導体層が伸びている方向を延伸方向と定義し、
前記延伸方向及び前記Z軸方向に直交する方向を線幅方向と定義し、
前記第1接続区間は前記延伸方向における前記接続導体層の第1端部に位置しており、前記第2接続区間は前記延伸方向における前記接続導体層の第2端部に位置しており、前記延伸方向において、前記接続導体層の第2端部は前記接続導体層の第1端部の反対側に位置しており、
前記延伸方向において、前記第1接続区間の両端は、前記Z軸方向に見た前記第1層間接続導体の中心から等しい距離に位置しており、
前記延伸方向において、前記第2接続区間の両端は、前記Z軸方向に見た前記第2層間接続導体の中心から等しい距離に位置しており、
前記第2接続区間の前記線幅方向の最大幅は、前記第1接続区間の前記線幅方向の最大幅より小さく、
前記第1中間区間は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より大きな前記線幅方向の幅を有する第1太線区間を含んでおり、
前記第2中間区間は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より大きな前記線幅方向の幅を有する第2太線区間を含んでおり、
前記第1太線区間及び前記第2太線区間は、前記線路区間に隣接している、
多層基板。
【0079】
(2)
前記第1太線区間の前記線幅方向の幅は、前記第2太線区間の前記線幅方向の幅より大きい、
(1)に記載の多層基板。
【0080】
(3)
前記第1中間区間は、前記第1太線区間の前記線幅方向の幅より小さな前記線幅方向の幅を有する第1細線区間を含んでおり、
前記第2中間区間は、前記第2太線区間の前記線幅方向の幅より小さな前記線幅方向の幅を有する第2細線区間を含んでおり、
前記第1細線区間は、前記第1接続区間に隣接しており、
前記第2細線区間は、前記第2接続区間に隣接している、
(1)又は(2)のいずれかに記載の多層基板。
【0081】
(4)
前記第1細線区間の前記線幅方向の幅及び前記第2細線区間の前記線幅方向の幅は、前記線路区間の前記線幅方向の幅より小さい、
(3)に記載の多層基板。
【0082】
(5)
前記第1グランド導体層は、前記Z軸方向に見て、前記放射導体層と重なっている、
(1)ないし(4)のいずれかに記載の多層基板。
【0083】
(6)
前記積層体は、前記Z軸方向に直交するX軸方向に並ぶ第1区間及び第2区間を有しており、
前記第1区間の前記Z軸方向の厚みは、前記第2区間の前記Z軸方向の厚みより大きく、
前記接続導体層は、前記第1区間に位置しており、
前記信号導体層は、前記第1区間及び前記第2区間に位置している、
(1)ないし(5)のいずれかに記載の多層基板。
【0084】
(7)
前記積層体は、前記Z軸方向に直交するX軸方向にこの順に並ぶ第1区間、第2区間及び第3区間を有しており、
前記第1区間の前記Z軸方向の厚みは、前記第2区間の前記Z軸方向の厚みより大きく、
前記第3区間の前記Z軸方向の厚みは、前記第2区間の前記Z軸方向の厚みより大きく、
前記多層基板は、
前記第3区間に位置し、かつ、前記第1区間及び前記第2区間に位置しない第2グランド導体層を、
更に備えており、
前記第1グランド導体層は、前記第1区間、前記第2区間及び前記第3区間に位置しており、
前記第2グランド導体層は、前記信号導体層より前記Z軸の正側に位置しており、かつ、前記Z軸方向に見て、前記信号導体層の少なくとも一部分と重なっており、
前記信号導体層は、前記第1区間及び前記第2区間において、前記第1グランド導体層と共にマイクロストリップライン構造を形成しており、
前記信号導体層は、前記第3区間において、前記第1グランド導体層及び前記第2グランド導体層と共にストリップライン構造を形成している、
(1)ないし(6)のいずれかに記載の多層基板。
【0085】
(8)
前記積層体は、第1積層体部及び第2積層体部を含んでおり、
前記第1積層体部は、前記中間絶縁体層より前記Z軸の正側に位置する1以上の前記絶縁体層及び前記中間絶縁体層を含んでおり、
前記第2積層体部は、前記中間絶縁体層より前記Z軸の負側に位置する1以上の前記絶縁体層を含んでおり、
前記第2積層体部の主たる絶縁材料は、前記第1積層体部の主たる絶縁材料と異なる、
(1)ないし(7)のいずれかに記載の多層基板。
【0086】
(9)
前記第2積層体部の主たる絶縁材料のヤング率は、前記第1積層体部の主たる絶縁材料のヤング率より高い、
(8)に記載の多層基板。
【0087】
(10)
前記第2層間接続導体の材料は、前記第1層間接続導体の材料と異なる、
(8)又は(9)のいずれかに記載の多層基板。
【0088】
(11)
前記積層体は、可撓性を有している、
(1)ないし(10)のいずれかに記載の多層基板。
【0089】
(12)
前記複数の絶縁体層の材料は、熱可塑性樹脂である、
(1)ないし(11)のいずれかに記載の多層基板。
【符号の説明】
【0090】
10,10a,10b:多層基板
12:積層体
12a:第1積層体部
12b:第2積層体部
14a~14g:絶縁体層
15a~15c:保護層
18:第2グランド導体層
20:放射導体層
22a,22b,24,24a~24d:接続導体層
26:信号導体層
28:第1グランド導体層
A1:第1区間
A11:第1接続区間
A12:第2接続区間
A2:第2区間
A21:第1中間区間
A21b:第1太線区間
A21a:第1細線区間
A22:第2中間区間
A22b:第2太線区間
A22a:第2細線区間
A3:第3区間
A31:線路区間
v1~v4:層間接続導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12