(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031789
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】めっき液の廃液処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/72 20230101AFI20240229BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20240229BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20240229BHJP
B01F 23/231 20220101ALI20240229BHJP
【FI】
C02F1/72 A
C02F1/78
B01F23/2375
B01F23/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077069
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022134293
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599141227
【氏名又は名称】学校法人関東学院
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】西谷 重夫
(72)【発明者】
【氏名】本間 英夫
(72)【発明者】
【氏名】田代 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】梅田 泰
【テーマコード(参考)】
4D050
4G035
【Fターム(参考)】
4D050AA13
4D050AB38
4D050AB39
4D050BB02
4D050BD02
4D050BD04
4G035AB05
(57)【要約】
【課題】本願に係る発明は、ランニングコストが安く装置構成が簡素で、且つめっき液の廃液に含まれるシアノ錯体及び/又は遊離シアンを無毒化するための処理を従来のオゾン処理法よりも短時間で行うことができる、めっき液の廃液処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本願に係る発明は、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含有するめっき液の廃液処理方法であって、当該めっき液に、直径が0.01μm以上100μm以下の微細な泡の状態でオゾンを供給し曝気することによって、当該シアノ錯体及び/又はシアン化物イオン化物を酸化分解することを特徴とするめっき液の廃液処理方法を採用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含有するめっき液の廃液処理方法であって、
当該めっき液に、直径が0.01μm以上100μm以下の微細な泡の状態でオゾンを供給し曝気することによって、当該シアノ錯体及び/又はシアン化物イオン化物を酸化分解することを特徴とするめっき液の廃液処理方法。
【請求項2】
前記シアノ錯体は、亜鉛シアノ錯体、銅シアノ錯体、銀シアノ錯体、鉄シアノ錯体及びニッケルシアノ錯体からなる群から選択された1種又は2種以上である請求項1に記載のめっき液の廃液処理方法。
【請求項3】
前記微細な泡の直径は、0.01μm以上1μm以下である請求項1又は請求項2に記載のめっき液の廃液処理方法。
【請求項4】
前記微細な泡の濃度は、100ppm以上500ppm以下である請求項1に記載のめっき液の廃液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、めっき液の廃液処理方法に関する。特に、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含有するめっき液の廃液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なめっき液として、シアン化物浴が使われている。このシアン化物浴は、使用後の状態で、残存物としてシアノ錯体(金属シアン錯体とも称する。)やシアン化物イオン(遊離シアンとも称する。)を含有する。このうち、シアノ錯体は、水溶液のpHに依存して、金属イオンとシアン化物イオン(CN-)とに解離する。そして、シアン化物イオンは、水素イオンと結合することにより、強い毒性をもつシアン化水素となる。そのため、使用後のシアン化物浴は、無毒化した上で工場外へ排出する必要がある。
【0003】
この使用後のシアン化物浴の処理方法としては、アルカリ塩素法、電解酸化法及びオゾン処理法が知られている。アルカリ塩素法は、工業的に広く用いられる優れた方法であるが、シアン化物浴の処理に複数の薬品を使うため、ランニングコストが高い。電解酸化法は、シアン化物浴の処理によりアノードが酸化するため、定期的に電極を交換する必要がある。一方、オゾン処理法は、薬品を併用する場合であってもその種類は少なく、電解酸化法におけるアノードのような消耗品の交換を必要とせず、比較的安価な処理方法であるといえる。
【0004】
特許文献1には、「産業排水中にオゾンを注入すると共に紫外線を照射し、金属シアン錯体から遊離シアンを生成する第1分解工程と、該第1工程で生成した遊離シアン含有水にオゾンを注入して遊離シアンを窒素と二酸化炭素とに分解する第2分解工程とを含むことを特徴とする、産業排水の処理方法」が、開示されている(特許文献1の請求項1を参照)。この特許文献1では、散気手段や混気ポンプを介して、接触槽内に注入したシアン含有排水にオゾンを供給している。また、特許文献1に記載の処理方法では、金属シアン錯体及び遊離シアンの酸化分解を促進するために、接触槽内に別途過酸化水素水を注入している。
【0005】
また、非特許文献1には、「めっき排水中のシアンのオゾン処理」として、「銀めっき及び銅めっきを主として行っている工場の終末排水そう中のシアン化合物及び遊離シアンのオゾン処理法」が、開示されている。この非特許文献1では、グラスフィルタの通気板又はエゼクタを介して、平均気泡径が4.5mmの泡状のオゾンを工場の終末排水そう内に注入しためっき排水に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】池畑昭、石崎紘三、田畑則一、橋本礼二郎,めっき排水中のシアンのオゾン処理,安全工学,Vol.11,No.2,pp.74-84(1972)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の産業排水の処理方法は、紫外線照射手段及び過酸化水素水を別途必要とし、処理装置の構成が複雑である。また、非特許文献1のオゾン処理法は、紫外線照射手段及び過酸化水素水は用いないものの、アルカリ塩素法及び電解酸化法と比較して、シアン化合物及び遊離シアンを無毒化するための処理に要する時間が長いという問題がある。そして、特許文献1及び非特許文献1のオゾン処理法では、処理効率を上げるために、強力な気-液撹拌力を有する、混気ジェットポンプやエゼクタ等の機器を用いる必要がある。
【0009】
本件出願に係る発明は、ランニングコストが安く装置構成が簡素で、且つめっき廃液に含まれるシアノ錯体及び/又は遊離シアンを無毒化するための処理を従来のオゾン処理法よりも短時間で行うことができる、めっき液の廃液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本件発明者は鋭意研究の結果、以下のめっき液の廃液処理方法に想到した。
【0011】
本件出願に係るめっき液の廃液処理方法は、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含有するめっき液の廃液処理方法であって、当該めっき液に、直径が0.01μm以上100μm以下の微細な泡の状態でオゾンを供給し曝気することによって、当該シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを酸化分解することを特徴とする。
【0012】
本件出願に係るめっき液の廃液処理方法において、前記シアノ錯体は、亜鉛シアノ錯体、銅シアノ錯体、銀シアノ錯体、鉄シアノ錯体及びニッケルシアノ錯体からなる群から選択された1種又は2種以上であることが好ましい。
【0013】
本件出願に係るめっき液の廃液処理方法において、前記微細な泡の直径は、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0014】
本件出願に係るめっき液の廃液処理方法において、前記微細な泡の濃度は、100ppm以上500ppm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願に係る発明によれば、ランニングコストが安く装置構成が簡素で、且つめっき液の廃液に含まれるシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを無毒化するための処理時間を従来のオゾン処理法よりも大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願に係るめっき液の廃液処理方法を実行するための処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願に係るめっき液の廃液処理方法の実施の形態に関して述べる。なお、以下に説明するものは、単に一態様を示したものであり、本願に係るめっき液の廃液処理方法の実施の形態は、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0018】
本願に係る発明は、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含有するめっき液の廃液処理方法に関するものである。そして、本願に係る発明は、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含有するめっき液の廃液に、直径が0.01μm以上100μm以下の微細な泡の状態でオゾンを供給し曝気することによって、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを酸化分解することを特徴とする。本願に係る発明は、当該要件を具備することにより、ランニングコストが安く装置構成が簡素で、且つめっき液の廃液に含まれるシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを無毒化するための処理時間を従来のオゾン処理法よりも大幅に短縮することができる。
【0019】
図1に本願に係るめっき液の廃液処理方法を実行するための廃液処理装置1を示す。廃液槽8に溜めたシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含むめっき廃液Wは、ポンプPを用いて第2廃液循環手段7を介して吸い上げられ、酸素供給手段2及びオゾン発生手段3からなるオゾン供給手段4から供給されたオゾンと混合されて、ポンプPから第1廃液循環手段5を介して廃液槽8に戻され循環する。このとき、ポンプPから供給されたオゾンは、第1廃液循環手段5に取り付けられた微細泡化手段6によって所定の大きさの微細な泡の状態にして、めっき廃液Wに供給し曝気する。なお、本願に係るめっき液の廃液処理方法を実行することができる限りにおいて、本願に係るめっき液の廃液処理方法を実行するための処理装置は、
図1に示す処理装置の構成に限定されるものではない。
【0020】
ここで、本願に係る発明で処理対象とするシアノ錯体としては、亜鉛シアノ錯体、銅シアノ錯体、銀シアノ錯体、鉄シアノ錯体及びニッケルシアノ錯体が挙げられる。亜鉛、銅、銀、鉄及びニッケルの金属めっきには、工業的にシアン化物浴が利用される場合が多く、その廃液に含まれるこれらのシアノ錯体は、分解処理の需要が高い。
【0021】
めっき廃液Wに供給された微細な泡の状態のオゾンは、めっき廃液W中のシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを酸化分解する。シアノ錯体は、金属イオンとシアン化物イオン(CN-)とに分解して、金属イオンは水酸化物(M(OH)x)、酸化物(MyOz)又は金属粉末となって廃液槽8内に析出する。シアン化物イオンはオゾンにより酸化分解して、窒素及び二酸化炭素となり無毒化する。なお、上述の金属の析出物(沈殿物とも称する。)は、廃液処理を行った後にめっき廃液Wを濾過して回収することができる。また、第2廃液循環手段7の経路中に濾過装置を設けることにより、析出物である金属水酸化物、金属酸化物又は金属粉末を回収しながら廃液処理を行うこともできる。
【0022】
本願に係る発明では、オゾンは直径が0.01μm以上100μm以下の微細な泡の状態でめっき廃液Wに供給し曝気する。そのため、より大きい直径をもつ泡状のオゾンをめっき廃液W中に供給する従来のオゾン処理法と比較して、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの酸化分解速度は、飛躍的に向上する。これは、水中に導入する泡の大きさを小さくすると、気体である泡の比表面積が大きくなると共に、水面へと上昇して破裂するまでの時間が長くなり、オゾンが水中(めっき廃液W中)に留まる時間が大幅に延びるためである。
【0023】
ここで、本願に係るめっき液の廃液処理方法における微細な泡の好適な直径は、上述のとおり、0.01μm以上100μm以下である。微細な泡の直径が0.01μm未満であっても、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを含むめっき液の廃液処理時間が極端に短くなるものでもなく、再現性良く当該直径を有する泡を発生させるために比較的高価な機器を用いる必要があり、単にコスト高となる傾向にあるため好ましくない。一方、微細な泡の直径が100μmを超えると、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの酸化分解速度が向上する効果が得られない傾向にあるため好ましくない。
【0024】
そして、本願に係るめっき液の廃液処理方法における微細な泡の直径は、0.01μm以上1μm以下であることがより好ましい。微細な泡の直径が1μm以下であると、オゾンが水中(めっき廃液W中)に留まる時間が更に長くなり、シアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの酸化分解速度が、より向上する傾向にある。
【0025】
本願に係るめっき液の廃液処理方法において、上述の微細な泡の状態で供給するオゾンの濃度は、100ppm以上500ppm以下であることが好ましい。ここで、微細な泡の状態で供給するオゾンの濃度が100ppm未満であると、めっき廃液W中のシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを酸化分解することが困難になったり、酸化分解速度が遅くなる傾向にあるため好ましくない。一方、微細な泡の状態で供給するオゾンの濃度が500ppmを超えても、めっき廃液W中のシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの酸化分解速度が極端に向上するものでもなく、単に資源の無駄となるため好ましくない。
【0026】
本願に係るめっき液の廃液処理方法におけるシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの酸化分解に要する処理時間は、廃液槽8に溜めためっき廃液Wの量や、めっき廃液Wに含まれる全シアン濃度の初期値(廃液処理の実行前における、シアノ錯体中のシアン化物イオンと、めっき廃液W内に遊離しているシアン化物イオンとの合計濃度)によって異なる。そのため、例えば、酸化分解後の全シアン濃度の目標値を設定し、本願に係るめっき液の廃液処理方法の実行中に適宜めっき廃液W中の全シアン濃度を測定して、その濃度が当該目標値を下回った段階で、当該廃液処理を停止させればよい。また、めっき廃液W中の全シアン濃度の初期値に応じて処理時間のデータを蓄積することにより、予め処理時間を設定することもできる。
【0027】
[オゾン供給手段]
オゾン供給手段4は、大気中又は、酸素ボンベや酸素濃縮装置等の酸素供給手段2から得た酸素からオゾン発生手段3を用いてオゾンを生成し、第1廃液循環手段5内のめっき廃液Wにオゾンを供給するためのものである。このオゾン供給手段4としては、オゾン発生装置(無声放電装置)等の従来公知のものを使用することができる。オゾン供給手段4から第1廃液循環手段5内にオゾンを供給するときのオゾンの流量等に特段の制限はなく、めっき廃液W中のオゾン濃度と、めっき廃液Wに含まれるシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの濃度とにより、適宜調整すればよい。
【0028】
[微細泡化手段]
微細泡化手段6は、オゾン供給手段4から第1廃液循環手段5の経路内に供給されたオゾンを、上述の微細な泡の状態として、めっき廃液W中に供給し曝気するためのものである。この微細泡化手段6としては、気液せん断法、フィルタ法、加圧溶解法(加圧減圧法とも称する。)、気液二相流旋回法等の従来公知のものを用いればよい。また、微細泡化手段6からめっき廃液W中に微細な泡を導入するときの圧力等に特段の制限はなく、めっき液を入れるめっき槽8の大きさ等に応じて、適宜調整すればよい。
【0029】
[廃液循環手段]
本願に係るめっき液の廃液処理方法では、廃液槽8に溜めためっき廃液WをポンプPを用いて第2廃液循環手段7を介して吸い上げ、吸い上げためっき廃液Wはオゾン供給手段4から供給されたオゾンと混合されてポンプPから第1廃液循環手段5を介して廃液槽8に戻され循環することによって、めっき廃液W中のシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンを酸化分解することが好ましい。ここで、ポンプPは、上述した微細な泡状のオゾンが供給されためっき廃液Wを、第2廃液循環手段7及び第1廃液循環手段5を介して循環させる。これにより、微細な泡状のオゾンとシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンとが接触する機会を増やし、酸化分解反応が促進される。このポンプPには、上述のめっき廃液Wの循環を行うことができるものであれば使用でき、例えば循環ポンプ等の従来公知のものを用いればよい。また、第1廃液循環手段5及び第2廃液循環手段7には、上述のめっき廃液Wの循環を行うことができるものであれば使用でき、例えばセラミクス製配管等を用いればよい。なお、ポンプPを用いてめっき廃液Wを循環させるときの流速等に特段の制限はなく、めっき廃液Wの液量やめっき廃液W中のシアノ錯体及び/又はシアン化物イオンの濃度等により、適宜調整すればよい。
【0030】
第1廃液循環手段5に取り付ける微細泡化手段6の取り付け位置は、オゾンを微細な泡の状態にしてめっき廃液Wに供給し曝気することができる限りにおいて、特に限定されない。
【0031】
以上説明した本願に係る発明の実施の形態は、本願に係る発明の一態様であり、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、以下に実施例を挙げて本願に係る発明をより具体的に説明するが、本願に係る発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0032】
実施例1では、まず、めっき廃液Wを模した簡易試験用溶液として、1.8wt%のシアン化亜鉛(富士フィルム和光純薬株式会社製、Zn(CN)2)水溶液100mlと、3.2wt%のシアン化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)水溶液100mlとからなる混合溶液を調整し、これを10ml採取して15Lの純水(イオン交換水)と混合することにより、全シアン濃度(シアノ錯体に含まれるシアン化物イオンと、めっき廃液W中に遊離しているシアン化物イオンとの合計濃度)の初期値が25ppmの模擬亜鉛めっき廃液を用意した。これを容器8内に注ぎ入れて、循環ポンプ(ポンプP)を用いて流速10.7L/分で第2廃液循環手段7を介して吸い上げられ、オゾン供給手段4から供給されたオゾンと混合されてポンプPから第1廃液循環手段5を介して容器に戻され循環するようにした。オゾン供給手段4としては、高純度酸素ボンベ(大陽日酸ガス&ウェルディング株式会社製)を用いて、酸素ガスを流量2L/分でオゾン発生装置(多田電機株式会社製)内に導入して、濃度が200ppmのオゾンを生成した。このオゾンを流量1.3L/分でポンプPへと導入し、微細泡化手段6としてポンプPの出口から延びる第1廃液循環手段5の先端に取り付けた加圧溶解法によるファインバブル発生器(株式会社RSテクノロジー製)を用いて、平均直径(算術平均直径)が50μmとなるよう微細泡化し、当該微細泡化したオゾンを上述の模擬亜鉛めっき廃液内へ供給し曝気した。このようにして、模擬亜鉛めっき廃液をポンプPを介して循環させながら、酸化分解処理を行った。
【0033】
[評価]
酸化分解処理後の模擬亜鉛めっき廃液を10mずつ採取して、当該模擬亜鉛めっき廃液中に含まれる全シアン濃度を4-ピリジンカルボン酸比色法による簡易試験(株式会社共立理化学研究所製のWAK-CN-2)及び、JIS-K-0102の吸光光度分析によるシアン化合物の分析法により測定し、全シアン濃度が0.1ppm以下となるに要した時間を計測した。この試験結果を表1に示す。なお、表1における「酸化分解に要した時間」とは、全シアン濃度が0.1ppm以下となるに要した時間のことである。
この実施例2は、めっき廃液Wを模した簡易試験用溶液として、「全シアン濃度の初期値が25ppmの模擬亜鉛めっき廃液」に替えて、「全シアン濃度の初期値が43ppmの模擬銅めっき廃液」を用いた点のみが、実施例1と異なる。ここで、この模擬銅めっき廃液は、5wt%のシアン化第一銅(富士フィルム和光純薬株式会社製、CuCN)水溶液100mlと、1.5wt%のシアン化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)水溶液100mlとからなる混合溶液を調整し、これを10ml採取して15Lの純水(イオン交換水)と混合して得たものである。模擬銅めっき廃液の処理方法及びその評価方法は、実施例1と同じであるため、記載を省略する。この実施例2の試験結果を表1に示す。