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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000318
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20231225BHJP
   F16C 17/08 20060101ALI20231225BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F16H1/16
F16C17/08
F16C33/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099041
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 貴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優樹
【テーマコード(参考)】
3J009
3J011
【Fターム(参考)】
3J009DA11
3J009DA13
3J009DA15
3J009EA06
3J009EA11
3J009EA19
3J009EA25
3J009EA32
3J009EA44
3J009EB22
3J011AA07
3J011BA08
3J011JA02
3J011KA03
3J011RA02
(57)【要約】
【課題】潤滑剤の不足による摺動抵抗の増加や騒音の発生などが防止または抑制された駆動装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る駆動装置1は、電動モータ10と、電動モータ10の回転軸12に取り付けられたウォーム21およびウォーム21と噛み合うウォームホイールを含む減速機構と、ウォーム21から突出する回転軸12の一端側の端面に当接する軸受部材80と、軸受部材80を収容する収容部50と、を備える。収容部50は、軸受部材80が収容される収容室51と、収容室51に連通し、回転軸12の端部が挿入される挿入部52と、を有する。また、回転軸12の外面と挿入部52の内面との間に、潤滑剤91が充填された空間90が設けられる。そして、挿入部52の前記内面は、収容室51から回転軸12の軸線方向に離れるに連れて回転軸12の前記外面に近づく。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータの回転軸に取り付けられたウォームおよび前記ウォームと噛み合うウォームホイールを含む減速機構と、
前記ウォームから突出する前記回転軸の一端側の端面に当接する軸受部材と、
前記軸受部材を収容する収容部と、を備え、
前記収容部は、前記軸受部材が収容される収容室と、前記収容室に連通し、前記回転軸の一端側が挿入される挿入部と、を有し、
前記回転軸の外面と前記挿入部の内面との間に、潤滑剤が充填された空間が設けられ、
前記挿入部の前記内面は、前記収容室から前記回転軸の軸線方向に離れるに連れて前記回転軸の前記外面に近づく、駆動装置。
【請求項2】
前記収容部は、前記収容室および前記挿入部の一部を形成する第1収容部と、前記第1収容部に突き合わされ、前記収容室および前記挿入部の他の一部を形成する第2収容部とから構成される、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
第1ハウジング部材および第2ハウジング部材を含み、前記電動モータおよび前記減速機構を収容するハウジングを備え、
前記第1収容部が前記第1ハウジング部材に設けられ、前記第2収容部が前記第2ハウジング部材に設けられている、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1収容部が前記第1ハウジング部材に一体成形され、前記第2収容部が前記第2ハウジング部材に一体成形されている、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記電動モータが前記第1ハウジング部材によって支持されている、請求項3又は4に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関し、特に、電動モータを駆動源とする駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、電動モータを駆動源とする駆動装置が様々な装置や機器で使用されている。そのような駆動装置の幾つかは、電動モータの動力の回転速度を減じて出力する減速機構を備えている。減速機構は、例えば、電動モータの回転軸に取り付けられたウォームおよび当該ウォームと噛み合うウォームホイールを含む複数のギヤから構成される。
【0003】
ウォームが取り付けられた電動モータの回転軸は、軸受によって回転自在に支持される。特許文献1には、電動モータの回転軸を支持する軸受の一例が記載されている。特許文献1に記載されている軸受は、円筒形状を有し、その内周面は、回転軸の外周面に当接してラジアル荷重を受けるラジアル荷重受を形成している。また、軸受の内部に、回転軸の端面に当接してスラスト荷重を受けるスラスト荷重受が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-205243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摺動抵抗の低減や騒音防止のために、軸受と接する回転軸の端面に潤滑剤が塗布されることがある。しかし、回転軸の回転によって、潤滑剤が回転軸の端面の外に押し出されてしまうことがあった。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の駆動装置は、電動モータと、前記電動モータの回転軸に取り付けられたウォームおよび前記ウォームと噛み合うウォームホイールを含む減速機構と、前記ウォームから突出する前記回転軸の一端側の端面に当接する軸受部材と、前記軸受部材を収容する収容部と、を備える。前記収容部は、前記軸受部材が収容される収容室と、前記収容室に連通し、前記回転軸の一端側が挿入される挿入部と、を有する。前記回転軸の外面と前記挿入部の内面との間に、潤滑剤が充填された空間が設けられる。前記挿入部の前記内面は、前記収容室から前記回転軸の軸線方向に離れるに連れて前記回転軸の前記外面に近づく。
【発明の効果】
【0008】
潤滑剤の不足による摺動抵抗の増加や騒音の発生などが防止または抑制された駆動装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】駆動装置の外観を示す斜視図である。
図2】駆動装置の構造を示す斜視図である。
図3】ハウジングの分解斜視図である。
図4】第2ハウジング部材の斜視図である。
図5】駆動装置の模式的断面図である。
図6】ハウジングの組み立て工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の構成には同一の符号を用いる。また、既に説明した構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<駆動装置の概要>
図1は、本実施形態に係る駆動装置1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る駆動装置1の構造を示す斜視図である。
【0012】
駆動装置1は、電動モータ10,減速機構20及びこれらを収容するハウジング30を備えている。別の見方をすると、電動モータ10および減速機構20は、共通のハウジング30に収容されてユニット化されている。言い換えれば、駆動装置1は、減速機構付きモータである。駆動装置1は、電動モータ10の動力の回転速度を減じ、回転力を増大させて出力する。
【0013】
<ハウジング>
図3は、ハウジング30の分解斜視図である。図4は、ハウジング30を構成する第2ハウジング部材32の斜視図である。
【0014】
ハウジング30は、電動モータ10や減速機構20などを支持する第1ハウジング部材31と、第1ハウジング部材31の開口部を閉塞し、電動モータ10や減速機構20などを覆う第2ハウジング部材32と、から構成されている。以下の説明では、第1ハウジング部材31を“ケース31”と呼び、第2ハウジング部材32を“カバー32”と呼ぶ場合がある。
【0015】
ケース31は、樹脂によって形成されており、底部33および底部33を取り囲む側壁部34を有する。カバー32も樹脂によって形成されており、天井部35および天井部35を取り囲む縁部36を有する。
【0016】
ケース31には複数のねじボス37が設けられており、カバー32には複数のねじ穴38が設けられている。ケース31にカバー32を被せると、ねじボス37とねじ穴38とが連通する。より特定的には、カバー32の縁部36の端面をケース31の側壁部34の端面に重ねると、ねじボス37とねじ穴38とが連通する。ケース31とカバー32とは、ねじ穴38に挿通され、ねじボス37にねじ結合されたねじ39(図1)によって互いに固定される。
【0017】
ケース31の底部33には、電動モータ10を支持する一対の下側リブ40が設けられている。一方、カバー32の天井部35には、下側リブ40に支持されている電動モータ10に当接する上側リブ41が設けられている。電動モータ10は、ハウジング30内において、下側リブ40と上側リブ41とによって上下から挟まれている(図5参照)。
【0018】
なお、ケース31やカバー32の材料は樹脂に限られず、互いに異なる材料によって形成されていてもよい。また、電動モータ10の支持構造は、上記構造に限られない。
【0019】
<電動モータ>
再び図2を参照する。電動モータ10は、図示されているモータケース11および回転軸(回転シャフト)12に加えて、ステータ,ロータ,ブラシ,整流子などを含むDCブラシモータである。ブラシおよび整流子を介してコイルに電流が供給されると、回転軸12が回転する。
【0020】
モータケース11は金属製であって、全体として概ね角筒形である。ステータは、モータケース11の内壁面に固定された永久磁石である。ロータは、ロータコアやロータコアに巻かれたコイルを含み、ステータの内側に配置されている。
【0021】
回転軸12は、ロータの中心を貫通しており、かつ、ロータに固定されている。回転軸12は回転自在に支持されており、その一端側は、モータケース11の端面を貫通してモータケース11の外に突出している。
【0022】
以下の説明では、回転軸12の軸方向を“スラスト方向”と呼び、回転軸12の径方向を“ラジアル方向”と呼ぶ場合がある。また、電動モータ10を“モータ10”と略称する場合がある。
【0023】
<減速機構>
減速機構20は、ウォーム21,ウォームホイール22およびギヤ群23などから構成されている。ウォーム21は、モータ10の回転軸12に取り付けられている。より特定的には、モータケース11から突出している回転軸12の一端側(先端側)がウォーム21に圧入されている。この結果、回転軸12とウォーム21とは相対回転不能に固定されている。
【0024】
ウォームホイール22は、回転自在に支持されており、かつ、ウォーム21と噛み合っている。ギヤ群23に含まれる複数のギヤもそれぞれ回転自在に支持されている。
【0025】
回転軸12の回転は、ウォーム21,ウォームホイール22,ギヤ群23の順で伝達されて外部に出力される。ギヤ23aは、減速機構20を構成するギヤ列の最後に位置する最終ギヤである。また、ギヤ23aを支持している支軸24は、駆動装置1の出力軸であって、転がり軸受25によって回転自在に支持されている。
【0026】
<収容部>
図5は、駆動装置1の断面図である。もっとも、図5は模式的断面図であって、これまでに説明した構成の一部は省略されている。
【0027】
ハウジング30内に収容部50が設けられている。収容部50は、ケース31に設けられている第1収容部60と、カバー32に設けられている第2収容部70とから構成されている。
【0028】
図3に示されるように、第1収容部60はケース31一体成形されている。また、図4に示されるように、第2収容部70はカバー32に一体成形されている。図6に示すようにケース31とカバー32とを突き合わせると、第1収容部60と第2収容部70とが突き合わされて収容部50が形成される。つまり、ハウジング30を組み立てると、当該ハウジング30内に収容部50が形成される。
【0029】
再び図5を参照すると、収容部50は、収容室51および挿入部52を有する。収容室51および挿入部52の一部は、第1収容部60によって形成されており、収容室51および挿入部52の他の一部は、第2収容部70によって形成されている。
【0030】
<収容室>
図3に示されるように、第1収容部60は、ケース31の側壁部34と対向する前壁61と、前壁61の両側に設けられ、互いに対向する一対の横壁62と、を備えている。図4に示されるように、第2収容部70は、カバー32の縁部36と対向する前壁71と、前壁71の両側に設けられ、互いに対向する一対の横壁72と、を備えている。
【0031】
ハウジング30を組み立てると、第1収容部60の前壁61と第2収容部70の前壁71とが突き合わされる。同時に、第1収容部60の横壁62と第2収容部70の横壁72とが突き合わされる。この結果、前面が前壁61,71によって閉塞され、両側面が横壁62,72によって閉塞された収容室51が形成される。なお、収容室51の背面は、ケース31の側壁部34とカバー32の縁部36とによって閉塞される。
【0032】
<挿入部>
図3に示されるように、第1収容部60の前壁61には、半円状の凹部63が形成されている。図4に示されるように、第2収容部70の前壁71にも半円状の凹部73が形成されている。
【0033】
図5に示されるように、前壁61と前壁71とが突き合わされると、凹部63と凹部73とがラジアル方向で対向する。この結果、収容室51に連通する断面が円形の挿入部52が形成される。別の見方をすると、挿入部52は、収容室51に連通する断面が円形の貫通孔である。
【0034】
上記のようにして形成される挿入部52に、ウォーム21から突出している回転軸12の一端側(先端側)が挿入されている。ここで、それぞれの凹部63,73の内面は、収容室51から回転軸12の軸線方向に離れるに連れて互いに近接するように傾斜している。つまり、それぞれの凹部63,73の内面はテーパ面である。この結果、挿入部52は、収容室51から回転軸12の軸線方向に離れるに連れて次第に縮径している。別の見方をすると、挿入部52の内面(内周面)は、収容室51から回転軸12の軸線方向に離れるに連れて回転軸12の外面(外周面)に近づいている。
【0035】
<軸受部材>
軸受部材80が収容室51に収容されている。軸受部材80は、略長方形の金属板である。本実施形態では、軸受部材80の概ね2/3が第1収容部60の内側に配置され、軸受部材80の概ね1/3が第2収容部70の内側に配置されている。
【0036】
挿入部52に挿入されている回転軸12の先端側の端面は、軸受部材80に当接している。つまり、回転軸12の先端面が軸受部材80に当接している。したがって、軸受部材80は、回転軸12に作用するスラスト方向の荷重を受け止める。
<潤滑剤充填空間>
ここで、挿入部52の内径は、回転軸12の外径よりも大きい。この結果、回転軸12の周囲に、当該回転軸12を取り囲む環状の空間90が設けられている。別の見方をすると、空間90は、回転軸12の外周面と挿入部52の内周面との間に存在する空間であって、挿入部52の内周面によって囲まれている。
【0037】
空間90には、潤滑剤91が充填されている。そこで、以下の説明では、空間90を“潤滑剤充填空間90”と呼ぶ場合がある。潤滑剤充填空間90に充填される潤滑剤91の種類は特に限定されない。潤滑剤91の一例としては、潤滑剤充填空間90の内側に留まる程度の粘性を有するグリスやオイルが挙げられる。潤滑剤91は、回転軸12の先端面と軸受部材80との間に入り込んで摺動抵抗を低減させ、騒音や振動の発生を防止する。
【0038】
既述のとおり、潤滑剤充填空間90は、挿入部52の内周面によって囲まれた環状の空間である。そして、挿入部52の内周面は、収容室51から回転軸12の軸線方向に離れるに連れて回転軸12の外周面に近づくように傾斜している。言い換えれば、挿入部52は、収容室51から回転軸12の軸線方向に離れるに連れて次第に縮径する貫通孔である。この結果、潤滑剤91の、潤滑剤充填空間90の外への漏出が防止または抑制される。
【0039】
別の見方をすると、潤滑剤91は、挿入部52の内周面の傾斜によって軸受部材80の側に導かれ、回転軸12の先端面と軸受部材80との間に入り込む。したがって、潤滑剤91が回転軸12の先端面と軸受部材80との間に長期間に亘って供給され続ける。つまり、潤滑剤91の不足による摺動抵抗の増加や騒音・振動の発生などが長期間に亘って防止または抑制される。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第2収容部70が省略され、第1収容部60のみによって収容部50が形成される実施形態もある。かかる実施形態では、収容室51および挿入部52の上部が開放される。もっとも、挿入部52の内面(凹部63の内面)は、上記と同様の傾斜を有するテーパ面である。よって、潤滑剤91は、挿入部52の内面の傾斜によって軸受部材80の側に導かれる。
【0041】
第1収容部60と第2収容部70との少なくとも一方がハウジング30と別体である実施形態もある。もっとも、第1収容部60および第2収容部70がハウジング30と一体である上記実施形態には、部品点数が削減される利点がある。さらに、第1収容部60がケース31に一体成形され、第2収容部70がカバー32に一体成形されている上記実施形態では、ハウジング30を組み立てると、収容部50が同時に形成される。よって、上記実施形態には、駆動装置1の組立工数が削減される利点がある。
【符号の説明】
【0042】
1…駆動装置、10…電動モータ(モータ)、11…モータケース、12…回転軸、20…減速機構、21…ウォーム、22…ウォームホイール、23…ギヤ群、23a…ギヤ、24…支軸、25…転がり軸受、30…ハウジング、31…第1ハウジング部材(ケース)、32…第2ハウジング部材(カバー)、33…底部、34…側壁部、35…天井部、36…縁部、37…ねじボス、38…ねじ穴、39…ねじ、40…下側リブ、41…上側リブ、50…収容部、51…収容室、52…挿入部、60…第1収容部、61…前壁、62…横壁、63…凹部、70…第2収容部、71…前壁、72…横壁、73…凹部、80…軸受部材、90…空間(潤滑剤充填空間)、91…潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6