IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッドの特許一覧

特開2024-31800鮮やかな色のセラミック物品及びその製造方法
<>
  • 特開-鮮やかな色のセラミック物品及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031800
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】鮮やかな色のセラミック物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20240229BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20240229BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C04B35/117
C04B35/44
C04B35/645 500
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023092918
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】22191781.8
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・フォルナバイオ
(72)【発明者】
【氏名】リュシー・タバール
(72)【発明者】
【氏名】ステュエス・ブルバン
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、新規の鮮やかな色のセラミック組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、酸化物系マトリックス及びアルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分を含むセラミックから作られた着色物品に関する。
また、本発明は該物品を製造する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物系マトリックス及びアルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分を含むセラミックで作られる着色物品。
【請求項2】
前記セラミックは、含有量15から95重量%の前記酸化物系マトリックス、及び含有量5から85重量%の前記アルミニウムガーネット族の前記ドープ又は共ドープされた成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記セラミックは、含有量30から95重量%、好ましくは40から90重量%の前記酸化物系マトリックス、及び含有量5から70重量%、好ましくは10から60重量%の前記アルミニウムガーネット族の前記ドープ又は共ドープされた成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記アルミニウムガーネット族の前記成分は1つ又は複数の元素でドープ又は共ドープされ、前記元素すべての総原子パーセントは前記アルミニウムガーネット族の前記成分に対して0.1から50%であることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ドープ又は共ドープされたアルミニウムガーネット族はルテチウムアルミニウムガーネット及びイットリウムアルミニウムガーネットを含むこと、並びに前記ドーピング又は共ドーピング元素はクロム又はランタノイド族の元素から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ランタノイド族の前記元素はセリウム、ネオジム、エルビウム、ホルミウム及びイッテルビウムから選択されることを特徴とする請求項5に記載の物品。
【請求項7】
ネオジムドーピングに関し、前記アルミニウムガーネット族の前記成分に対する原子パーセントは0.5から10%、好ましくは1から5%であることを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
ネオジムドーピングに関し、前記アルミニウムガーネット族の前記成分に対する前記原子パーセントは0.9から11%であることを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記セラミックは酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム又は安定化酸化ジルコニウム或いはこれらの酸化物の混合物に基づくマトリックスを含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記セラミックは酸化アルミニウム系マトリックス、及び場合により共ドーピング元素を有するセリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを含むことを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項11】
前記セラミックは、前記酸化物系マトリックス及び前記アルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分及び可能性のある不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記セラミックは、CIELAB色空間のL成分が80以上、好ましくは85以上、より好ましくは90以上であることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記セラミックは、前記CIELAB色空間のa成分が-5から15、好ましくは-5から12、b成分が65から110、好ましくは70から97であることを特徴とする、請求項10に記載の物品。
【請求項14】
前記セラミックは、1000HV10以上、好ましくは1200HV10以上、より好ましくは1550HV10以上の硬度を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記セラミックは、1.7から6MPa√m、好ましくは2から4.5MPa√mの靭性KiCを有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
時計ケース又はムーブメントの構成部品或いは宝石の構成部品からなることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
請求項1に記載の物品の製造方法であって、以下の、
・請求項1から11のいずれか一項に記載の前記酸化物及び前記アルミニウムガーネット族の前記ドープ又は共ドープされた成分を有する、第1混合物とも呼ばれる基本混合物を、任意に液体媒体中で作製する工程と、
・前記第1混合物及び有機バインダ系を含む第2混合物を形成する工程と、
・前記第2混合物を粒状化する工程と、
・前記物品の形状を有するブランクを形成する工程と、
・1500から1800℃、好ましくは1600から1700℃の保持温度で20分から20時間、好ましくは1時間から5時間、空気中で前記ブランクを焼結する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
前記焼結工程後、前記焼結温度よりも低い50℃から150℃の温度の熱間等方圧加圧(HIP)工程を含むことを特徴とする、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮やかな色のセラミック物品、特にアルミナなどの酸化物系材料で作られた時計ケース又はムーブメントの構成部品に関する。また、該物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、着色セラミックは、金属酸化物系マトリックス、例えばAl、ZrO及びこれらの複合物を着色顔料と混合することにより工業的に作製される。一部の例では、結晶構造に入りこむ様々な原子でドープすることによりセラミックを着色する場合がある。一般的にこのようにして得られる色は薄い。例えば、セラミックの黄色着色は、プラセオジムでドープすること、或いは酸化タングステン及び/又は酸化バナジウム系顔料を添加することにより実現することが多い。得られる着色は、通常薄い黄色であるか、又はオレンジ色に変化する。
【0003】
代替策が時計学分野で国際公開第2018/172428号により提案されている。これは、顔料を混合することにより鮮やかな色のセラミック部分を製造することを開示しており、この顔料は光を通過するように適合させた金属酸化物マトリックスにカプセル化されている。より正確には、この方法は材料の密度を高くするために、加圧下における非慣習的な焼結の使用を想定しており、工業的に実施するのに複雑な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/172428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規の鮮やかな色のセラミック組成物を提供することであり、この組成物から費用のかかる方法を使用して物品を作製する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
より正確には、本発明は、酸化物系マトリックス及びアルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分を含むセラミックから作られる着色物品に関する。
【0007】
より詳細には、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)などのアルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分は、酸化物系セラミックに鮮やかで鮮明な色を与える。このような着色元素は、従来の着色顔料の代替となるだけでなく、より濃い暗度を得ること、可能な色の範囲を著しく広げることを可能にする。更に、酸化物系マトリックスを添加することによる複合物の開発は、純粋なYAGを使用せずに済む。これはコストの著しい低下、並びに靭性及び機械加工性の著しい改善を意味する。
【0008】
アルミニウムガーネット族の成分をクロム、又は例えばセリウム、ネオジム、エルビウム、ホルミウム及びイッテルビウムなどのランタノイド族の元素でドープすると、濃くはっきりした色が得られる。特に、セリウムでドープすると、黄色が得られる。この鮮やかな色は市販の顔料と混合すること、又は異なる原子でドープすることでは得ることができない。ネオジムでドープすると、スミレ色が得られ、クロムでドープすると、その酸化状態に応じて緑から赤色が得られる。エルビウムでドープすると、ピンク色が得られる。イッテルビウムでドープすると、緑色が得られる。クロム、並びにセリウム、エルビウム、イッテルビウム、ホルミウム及びネオジムなどのランタノイド族の元素から選択される1つ又は複数の更なる元素を用いた共ドーピングは、これらの色の調節を可能とするため、得られる色の範囲を拡大する。従って、アルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分の使用は、再放射性を有し、鮮やかで鮮明な色を得ることを可能とする。
【0009】
このようにこれらの様々なドーパントを用いて得られる物品は、鮮やかな色を有し、Lab色空間のL成分は80以上、好ましくは85以上、より好ましくは90以上である。
【0010】
硬度は1000HV10以上、好ましくは1200HV10以上、より好ましくは1550HV10以上である。
【0011】
靭性KiCは1.7から6MPa√m、通常2から4.5MPa√mである。
【0012】
また、本発明は該物品の製造方法に関し、本方法は以下の
・酸化物及びアルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分を有し、第1混合物とも呼ばれる基本混合物を、任意に液体媒体中で作製する工程と、
・第1混合物及び有機バインダ系を含む第2混合物を形成する工程と、
・第2混合物を粒状化する工程と、
・物品の形状を有するブランクを形成する工程と、
・1500から1800℃、好ましくは1600から1700℃の保持温度で20分から20時間、好ましくは1時間から5時間、空気中でブランクを焼結する工程と、
を含む。
【0013】
提案した粉末の混合及び従来の焼結による方法は、容易に工業化することができ、SPS(放電プラズマ焼結)による製造、又は純粋なYAGを含む組成物を用いた製造など、現在の方法より経済面への影響は低い。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図を参照し、以下の詳細な説明を理解することで、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明によるセラミック材料で作られたミドルケースを含む計時器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は酸化物系セラミック材料から作られた物品に関する。本物品は時計、宝石、金属バンド等の構成要素などの装飾物品、又はより一般的には携帯電話の外殻などの携帯用要素の外側部分でよい。時計製造の分野では、本物品はミドルケース、バックケース、ベゼル、リューズ、受け、プッシュボタン、ブレスレットリンク、ダイアル、針、ダイアルインデックス等の外部部品でよい。説明のため、本発明によるセラミック材料を用いて作られたミドルケースを図1に示す。本物品はプレート又は振動子などのムーブメントの構成部品からなる場合もある。
【0017】
セラミック材料は酸化物系マトリックスを含む。酸化物はZrO、Al、TiO、SiO、MgAl及びZnO、又はAl+ZrOなど、これらの酸化物の混合物でよい。ジルコニア(ZrO)の存在下、一般的に混合物はイットリウム、セリウム、カルシウム又はマグネシウムにより安定化される。好ましくは、マトリックスはAl系である。セラミック材料は、アルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされたリン光性染料成分を更に含む。アルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分の重量パーセントは、セラミック材料の総重量に対し5から85%、好ましくは5から70%、より好ましくは10から60%である。このように、セラミック材料は、15から95重量%、好ましくは30から95重量%、より好ましくは40から90重量%の酸化物、及び5から85重量%、好ましくは5から70重量%、より好ましくは10から60重量%のアルミニウムガーネット族のドープ又は共ドープされた成分を含む。
【0018】
アルミニウムガーネットはイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)又はルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)でよい。好ましくはイットリウムアルミニウムガーネットである。これらのガーネットはそれぞれセリウム、ネオジム、ホルミウム、エルビウム及びイッテルビウムのランタノイド族の1つ又は複数の元素、或いはクロムでドープ又は共ドープされる。好ましくは、ガーネットはセリウムでドープされる。より好ましくは、セリウムでドープされたイットリウムアルミニウムガーネットである。更により好ましくは、物品はアルミナ系マトリックス(Al)及びセリウムでドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)を含む。このセラミックは可能性のある不純物も含む場合があり、含有量は0.2重量%以下、又は0.1重量%である。
【0019】
有利には、セラミックは酸化物系マトリックス、ガーネット族のドープ又は共ドープされた成分、及び可能性のある不純物からなる。好ましくは、セラミックはアルミナ系マトリックス(Al)及びセリウムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)及び可能性のある不純物からなる。
【0020】
本発明によれば、ガーネット族の成分は、上記元素の1つでドープされ、場合により上記元素の1つ又は複数で共ドープされる。この成分に対するドーパント及び可能性のある共ドーパント又は複数の共ドーパントの総原子パーセントは0.1から50%である。黄色が所望される場合、セリウムをドーピングに使用する。好ましくは、セリウムを用いたドーピングについて、ガーネット族の成分に対する原子パーセントは0.5から10%、より好ましくは1から5%である。緑から赤色が所望される場合、酸化の程度に応じたクロムをドーピングに使用する。クロムドーピングについて、ガーネット族の成分に対する原子パーセントは0.1から50%である。スミレ色が所望される場合、ネオジムをドーピングに使用する。好ましくは、該成分に対する原子パーセントは0.9から11%である。ピンクの着色が所望される場合、エルビウムをドーピングに使用し、該成分に対する原子パーセントは0.1から50%である。緑の着色が所望される場合、イッテルビウムをドーピングに使用し、該成分に対する原子パーセントは0.1から50%である。共ドーパントの添加は、色の変化を可能にする。例えば、セリウムでドープし、ネオジムで共ドープしたガーネット族の成分でよい。
【0021】
1つ又は複数のドーパントを有する物品は鮮やかな色を有し、Lab色空間のL成分は80以上、好ましくは85以上、より好ましくは90以上である。硬度は1000HV10以上、好ましくは1200HV10以上、より好ましくは1550HV10以上である。セリウムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットを有する酸化アルミニウムのマトリックスについて、硬度は1400HV10以上、好ましくは1550HV10以上である。セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有する酸化ジルコニウムのマトリックスについて、硬度は1250HV10以上、好ましくは1400HV10以上である。同様に、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有する酸化アルミニウム及びジルコニアのマトリックスについて、硬度は1250HV10以上、好ましくは1400HV10である。本物品は靭性KiCが1.7から6MPa√m、好ましくは2から4.5MPa√mである。セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有する酸化アルミニウムのマトリックスについて、靭性KiCは2MPa√m以上である。セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有する酸化アルミニウム及びジルコニアのマトリックスについて、靭性KiCは2.5MPa√m以上である。セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有する酸化ジルコニウムのマトリックスについても、靭性KiCは2.5MPa√m以上である。本物品の密度は95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上である。
【0022】
アルミナマトリックス及びセリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有するセラミック物品は、CIELAB色空間(CIE No.15、ISO7724/1、DIN5033パート7、ASTM E-1164標準に準拠)のL成分が85以上、好ましくは90以上、a成分が-5から15、好ましくは-5から12、及びb成分が65から110、好ましくは70から97である黄色を有する。
【0023】
また、アルミナ及びジルコニアマトリックス並びにセリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを有するセラミック物品は、CIELAB色空間(CIE No.15、ISO7724/1、DIN5033パート7、ASTM E-1164標準に準拠)のL成分が85以上、好ましくは90以上、a成分が-5から5、好ましくは-5から2、及びb成分が45から80、好ましくは50から70である黄色を有する。
【0024】
物品は、下記からなる方法を用いて焼結することにより製造される。
・上記様々な成分を有し、第1混合物とも呼ばれる基本混合物を、場合により液体媒体中で作製する。
・第1混合物及び有機バインダ系(パラフィン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル等)を含む第2混合物を形成する。
・例えば噴霧器で該第2混合物を粒状化し、必要であれば乾燥する。好ましくは顆粒はd50が10から100μm、好ましくは40から60μmのサイズである。
・例えば射出又は加圧成形により、この第2粒状化混合物を所望の形状にし、ブランクを形成する。好ましくは成形は一軸加圧成形及び/又は冷間等方圧加圧(CIP)により実施される。
・1500から1800℃、好ましくは1600から1700℃の保持温度で20分から20時間、好ましくは1時間から5時間、空気中でブランクを焼結する。この工程は理論密度と比較して97%超の高密度化の実現を可能とする。この工程の前に、200から1200℃の温度範囲の熱脱脂工程を行うことができる。射出成形の場合、溶媒脱脂でもよい。
・任意に、ブランクの最終密度を改善するために、焼結温度より低い50から150℃の温度の熱間等方圧加圧(HIP)を使用してブランクを加圧する。
【0025】
このように得られたブランクを冷却する。その後、機械加工、研磨、必要であれば装飾することができ、所望の物品が得られる。色がブランク塊内に存在するため、これらの仕上げ操作は物品の最終的な色を変化させない。
【0026】
アルミナ及びセリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを含み、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:3Ce)の割合が10から60重量%であるセラミックに試験を実施した。イットリウムで安定化させたアルミナ及びジルコニアマトリックス、並びにセリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを含み、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:3Ce)の割合が50重量%であるセラミックにも試験を実施した。ジルコニアマトリックス及びセリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットを含み、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネットの割合が20重量%であるセラミックにも試験を実施した。これらの試験のすべてで、ドーピングはガーネットに対して3原子%であり、ジルコニアは安定化される。結果を以下の表1に示す。硬度測定はHV10硬度である。靭性は、式:
【0027】
【0028】
により、硬さ圧痕の対角線の4つの端に生じる亀裂の長さ測定に基づき決定した。式中、Pは印加荷重(N)、aは対角線の半分(m)、lは測定した亀裂長さ(m)である。
【0029】
以下の条件:SCI(正反射光含む)及びSCE(正反射光除去)測定、傾き8°、4mm径の測定面積MAVで、CM-3610A分光測色計を使用し、研磨したサンプルのLabの測色値を得た。
【0030】
サンプルを1600℃から1700℃、2から4時間、空気中で焼結した。得られたサンプルすべてが黄色であった。比色測定は非常に高い明度を示し、L値は酸化プラセオジムの添加により着色したジルコニアのL値約80と比較して、90超であった。また、比色測定は非常に高い黄色を帯びた色を示し、酸化プラセオジムの添加により着色したジルコニアのb値約30と比較して、アルミナマトリックスのb値は75超である。この黄色成分は、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネット含有量の増加により強まる。一方、靭性及び硬度は含有量の増加により減少する。このように用途の必要性に応じ、セリウムドープアルミニウムイットリウムガーネットの含有量により、性質及び色を調節することが可能である。
【0031】
ジルコニアを含むマトリックスについて、黄色は少し強くなく、b値は50ほどであるが、酸化プラセオジムの添加により着色したジルコニウムの30よりも更に高い値である。硬度は1250HV10超の値が得られる。靭性は2.5MPa√m超の値が得られる。
【0032】
**未測定
表1
【符号の説明】
【0033】
1 ミドルケース
図1
【外国語明細書】