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特開2024-31802応力-ひずみ関係推定方法及びスプリングバック予測方法、並びにプレス成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031802
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】応力-ひずみ関係推定方法及びスプリングバック予測方法、並びにプレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20240229BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20240229BHJP
   B21D 22/00 20060101ALI20240229BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20240229BHJP
   G06F 113/22 20200101ALN20240229BHJP
【FI】
G01N3/08
G06F30/23
B21D22/00
G06F119:14
G06F113:22
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095251
(22)【出願日】2023-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2022132986
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】玉城 史彬
(72)【発明者】
【氏名】石渡 亮伸
【テーマコード(参考)】
2G061
4E137
5B146
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AA02
2G061AB01
2G061AB05
2G061BA07
2G061CA02
2G061CB01
2G061EA02
2G061EA03
2G061EC02
4E137AA05
4E137AA10
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CB01
4E137CB03
4E137EA02
4E137EA03
4E137FA02
4E137FA03
4E137FA22
4E137FA24
4E137GA03
4E137GB03
5B146AA06
5B146DC04
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】
【課題】金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルに用いられるパラメータを求める応力-ひずみ関係推定方法と、当該方法により推定される応力とひずみの関係を用いてプレス成形品のスプリングバックを予測するスプリングバック予測方法、並びにプレス成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る応力-ひずみ関係推定方法は、吉田-上森モデルのパラメータを変換した変換パラメータを定義し、単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線の実験値と計算値の残差と、引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線の実験値と計算値の残差と、金属材料の機械的特性値の実験値と計算値の残差と、のそれぞれに個別の重み係数を乗じた重み付き残差平方和を目的関数とし、変換パラメータと他のパラメータが取り得る範囲に関する制約条件の下で目的関数を最小化するように、変換パラメータとパラメータを決定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルを用いて、前記金属材料の応力とひずみの関係を推定する応力-ひずみ関係推定方法であって、
前記金属材料を試験片とした単軸引張試験により、前記金属材料の単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線を実験的に取得する単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程と、
前記金属材料を試験片とした引張-圧縮繰り返し試験により、前記金属材料の引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線を実験的に取得する繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程と、
前記単軸引張試験により実験的に取得した前記金属材料の前記単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線から、前記金属材料の機械的特性値である降伏応力と、引張強度と、一様伸びと、一様伸び以上の高ひずみ域における応力と、の実験値を算出する機械的特性値の実験値算出工程と、
前記吉田-上森モデルに用いられるパラメータのうち少なくとも2つ以上のパラメータを組み合わせて前記パラメータを変換した変換パラメータを定義する変換パラメータ定義工程と、
前記算出した機械的特性値の実験値を用いて前記変換パラメータの取り得る範囲を限定する制約条件を設定する制約条件設定工程と、
実験的に取得した前記単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線と前記吉田-上森モデルにより算出される単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線との残差と、実験的に取得した前記引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線と前記吉田-上森モデルにより算出される引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線との残差と、前記金属材料の機械的特性値の実験値と前記吉田-上森モデルにより算出される前記機械的特性値の計算値との残差と、を算出し、該算出したそれぞれの残差に個別の重み係数を乗じた重み付き残差平方和を目的関数として設定する目的関数設定工程と、
前記制約条件の下で前記目的関数を最小化するように、前記変換パラメータと前記吉田-上森モデルの他のパラメータとを決定するパラメータ決定工程と、を含むことを特徴とする応力-ひずみ関係推定方法。
【請求項2】
前記変換パラメータ定義工程において、前記吉田-上森モデルのパラメータのうち少なくとも2つ以上を組み合わせた以下の式(1)~(4)により与えられる一つ以上の変換パラメータを定義し、
前記制約条件設定工程において、前記変換パラメータ定義工程で定義した変換パラメータの取り得る範囲を、以下の式(5)~式(8)のうち前記定義した変換パラメータに対応する式により限定する、ことを特徴とする請求項1記載の応力-ひずみ関係推定方法。
【数1】
【請求項3】
前記目的関数設定工程において、前記重み付き残差平方和を以下の式(9)により求める、ことを特徴とする請求項2記載の応力-ひずみ関係推定方法。
【数2】
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の応力-ひずみ関係の推定方法により決定した前記吉田-上森モデルのパラメータ及び変換パラメータを用いて金属材料の応力-ひずみ関係を推定し、
該推定した応力-ひずみ関係を用いて、前記金属材料の板材を用いたプレス成形品のプレス成形解析及びスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品のスプリングバックを予測することを特徴とするスプリングバック予測方法。
【請求項5】
スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させたプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
前記プレス成形品のブランクとして用いられる金属材料より、請求項1乃至3のいずれかに記載の応力-ひずみ関係推定方法の前記単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程における単軸引張試験と前記繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程における引張-圧縮繰り返し試験のそれぞれに用いる試験片を採取する試験片採取工程と、
該採取した試験片を用いて、請求項1乃至3のいずれかに記載の応力-ひずみ関係推定方法に基づいて、前記吉田-上森モデルの前記変換パラメータと前記他のパラメータを求める応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程と、
前記プレス成形品の仮のプレス成形条件を設定する仮プレス成形条件設定工程と、
前記応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程で求めた前記吉田-上森モデルの前記変換パラメータと前記他のパラメータにより推定される応力-ひずみ関係を用いて、前記金属材料のブランクを用いた前記プレス成形品の前記仮のプレス成形条件におけるプレス成形解析及びスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品のスプリングバック量を予測するスプリングバック量予測工程と、
前記スプリングバック量予測工程において予測された前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内であるか判定するスプリングバック量判定工程と、
前記スプリングバック量判定工程において前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲外であると判定された場合、前記仮のプレス成形条件を変更する仮プレス成形条件変更工程と、
前記スプリングバック量判定工程において、前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内と判定されるまで、前記仮プレス成形条件変更工程と、前記スプリングバック量予測工程と、前記スプリングバック量判定工程と、を繰り返し実行する繰り返し工程と、
前記スプリングバック量判定工程において前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内と判定された場合、その場合の前記仮のプレス成形条件を実プレス成形条件として決定する実プレス成形条件決定工程と、
該決定した実プレス成形条件で、前記金属材料のブランクを用いて前記プレス成形品をプレス成形する実プレス成形工程と、を含むことを特徴とするプレス成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルを用いて、金属材料の応力とひずみの関係を推定する応力-ひずみ関係推定方法に関する。さらに、本発明は、応力-ひずみ関係推定方法により推定される応力とひずみの関係を用いてプレス成形品のスプリングバックを予測するスプリングバック予測方法に関する。
また、本発明は、プレス成形品のスプリングバックを予測した結果に基づいてスプリングバックが低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させたプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス成形(例えば、自動車部品のプレス成形)において、割れ、しわ及びスプリングバックによる形状不良等の成形不良は、生産性を低下させ、生産時間増加に伴うCO2排出量増加を招く。また、近年は、自動車車体の軽量化により、自動車からのCO2排出量削減も進められている。自動車車体の軽量化のためには骨格部品等の高強度・薄肉化が必須であるが、これに伴い骨格部品等のプレス成形時における成形不良の発生頻度は増加する傾向にある。そのため、プレス成形時の成形不良の事前予測及び対策は、成形不良発生率低減による生産時間短縮が可能であり、CO2排出量削減に貢献する。
【0003】
プレス成形時における成形不良の事前予測には、プレス成形過程の有限要素法による数値解析(有限要素解析)が広く利用されている。有限要素解析においては、プレス成形品の素板(ブランク)の変形特性を高精度に再現できる材料モデルが開発されてきた。これにより、プレス成形過程における実現象を数値モデル化することが可能となり、コンピュータによる演算により実際のプレス成形を実施せずともプレス成形品の成形不良の事前予測が可能となってきている。
【0004】
一般的に、より高強度な材料のプレス成形では、プレス成形して金型から離型した後のスプリングバック量が大きくなるため、スプリングバックを正確に再現可能な材料モデルを用いることが重要である。そして、このような材料モデルとして、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルが利用されることが増えてきた。バウシンガー効果とは、応力の負荷方向が反転した際に、反転前の応力の絶対値よりも早期に再降伏する現象であり、吉田-上森モデルでは、これを高精度に再現できるといわれている。
【0005】
吉田-上森モデルは8つのパラメータを有しており、これらのパラメータはプレス成形品のブランクを用いた単軸引張試験や引張-圧縮繰り返し試験により計測した応力-ひずみ関係を再現するように決定される。
一方、従来広く使用されていた材料モデルである等方硬化モデルのパラメータの数は、n乗硬化則では2つ、Swift硬化則及びVoce硬化則ではいずれも3つなどと少ない。そのため、等方硬化モデルのパラメータを決定することは比較的容易であった。しかしながら、吉田-上森モデルでは前述したようにパラメータが8つあり、8つのパラメータの最適な組み合わせを見つけることは容易ではなかった。
【0006】
吉田-上森モデルのような材料モデルにおける複数のパラメータを決定する方法の一例として、特許文献1には、複数のパラメータの一部の同定を先に行い、しかる後、当該同定結果を用いて残りのパラメータを含むパラメータの同定を行う方法が開示されている。さらに、特許文献1には、新たなパラメータを追加したときには、追加したパラメータ以外のパラメータの同定を先に行い、しかる後、当該同定結果を用いて、追加したパラメータを含むパラメータの同定を行う方法も開示されている。
そして、特許文献1に開示された方法によれば、予め設定されたパラメータの初期値を用いて全てのパラメータの同定を同時に行った場合と比較して、パラメータ同定計算の収束性を改善することができる。その上、当該方法により同定したパラメータを用いることで、応力-ひずみ関係のシミュレートの精度が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-142774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された方法では、同定するパラメータを徐々に追加しながらパラメータを決定していくため、すべてのパラメータを決定するために必要な残差の最小化等といった最適化計算を複数回繰り返すことが必要であった。そのため、材料モデルの複数のパラメータを同時に同定する方法と比較し、計算に要する工程数が増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、多くの工程数を要せずに吉田-上森モデルのパラメータを適切に決定し、金属材料の応力-ひずみ関係を精度良く推定することができる応力-ひずみ関係推定方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記の方法により推定される応力-ひずみ関係を用いて、プレス成形解析及びスプリングバック解析を行い、プレス成形品のスプリングバックを精度良く予測することができるスプリングバック予測方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の方法により予測されるプレス成形品のスプリングバックが抑制されるようにプレス成形条件を決定し、該決定したプレス成形条件でプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る応力-ひずみ関係推定方法は、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルを用いて、前記金属材料の応力とひずみの関係を推定するものであって、
前記金属材料を試験片とした単軸引張試験により、前記金属材料の単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線を実験的に取得する単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程と、
前記金属材料を試験片とした引張-圧縮繰り返し試験により、前記金属材料の引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線を実験的に取得する繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程と、
前記単軸引張試験により実験的に取得した前記金属材料の前記単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線から、前記金属材料の機械的特性値である降伏応力と、引張強度と、一様伸びと、一様伸び以上の高ひずみ域における応力と、の実験値を算出する機械的特性値の実験値算出工程と、
前記吉田-上森モデルに用いられるパラメータのうち少なくとも2つ以上のパラメータを組み合わせて前記パラメータを変換した変換パラメータを定義する変換パラメータ定義工程と、
前記算出した機械的特性値の実験値を用いて前記変換パラメータの取り得る範囲を限定する制約条件を設定する制約条件設定工程と、
実験的に取得した前記単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線と前記吉田-上森モデルにより算出される単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線との残差と、実験的に取得した前記引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線と前記吉田-上森モデルにより算出される引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線との残差と、前記金属材料の機械的特性値の実験値と前記吉田-上森モデルにより算出される前記機械的特性値の計算値との残差と、を算出し、該算出したそれぞれの残差に個別の重み係数を乗じた重み付き残差平方和を目的関数として設定する目的関数設定工程と、
前記制約条件の下で前記目的関数を最小化するように、前記変換パラメータと前記吉田-上森モデルの他のパラメータとを決定するパラメータ決定工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0011】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、
前記変換パラメータ定義工程において、前記吉田-上森モデルのパラメータのうち少なくとも2つ以上を組み合わせた以下の式(1)~(4)により与えられる一つ以上の変換パラメータを定義し、
前記制約条件設定工程において、前記変換パラメータ定義工程で定義した変換パラメータの取り得る範囲を、以下の式(5)~式(8)のうち前記定義した変換パラメータに対応する式により限定する、ことを特徴とするものである。
【数1】
【0012】
(3)上記(2)に記載のものにおいて、
前記目的関数設定工程において、前記重み付き残差平方和を以下の式(9)により求める、ことを特徴とするものである。
【数2】
【0013】
(4)本発明に係るスプリングバック予測方法は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の応力-ひずみ関係の推定方法により決定した前記吉田-上森モデルのパラメータ及び変換パラメータを用いて金属材料の応力-ひずみ関係を推定し、
該推定した応力-ひずみ関係を用いて、前記金属材料の板材を用いたプレス成形品のプレス成形解析及びスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品のスプリングバックを予測することを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明に係るプレス成形品の製造方法は、スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させたプレス成形品を製造するものであって、
前記プレス成形品のブランクとして用いられる金属材料より、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の応力-ひずみ関係推定方法の前記単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程における単軸引張試験と前記繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程における引張-圧縮繰り返し試験のそれぞれに用いる試験片を採取する試験片採取工程と、
該採取した試験片を用いて、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の応力-ひずみ関係推定方法に基づいて、前記吉田-上森モデルの前記変換パラメータと前記他のパラメータを求める応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程と、
前記プレス成形品の仮のプレス成形条件を設定する仮プレス成形条件設定工程と、
前記応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程で求めた前記吉田-上森モデルの前記変換パラメータと前記他のパラメータにより推定される応力-ひずみ関係を用いて、前記金属材料のブランクを用いた前記プレス成形品の前記仮のプレス成形条件におけるプレス成形解析及びスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品のスプリングバック量を予測するスプリングバック量予測工程と、
前記スプリングバック量予測工程において予測された前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内であるか判定するスプリングバック量判定工程と、
前記スプリングバック量判定工程において前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲外であると判定された場合、前記仮のプレス成形条件を変更する仮プレス成形条件変更工程と、
前記スプリングバック量判定工程において、前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内と判定されるまで、前記仮プレス成形条件変更工程と、前記スプリングバック量予測工程と、前記スプリングバック量判定工程と、を繰り返し実行する繰り返し工程と、
前記スプリングバック量判定工程において前記プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内と判定された場合、その場合の前記仮のプレス成形条件を実プレス成形条件として決定する実プレス成形条件決定工程と、
該決定した実プレス成形条件で、前記金属材料のブランクを用いて前記プレス成形品をプレス成形する実プレス成形工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルのパラメータを容易かつ適切に決定することができ、金属材料の応力‐ひずみ関係を精度良く推定することが可能である。
【0016】
さらに、本発明によれば、上記のとおり推定される金属材料の応力-ひずみ関係を用いてプレス成形品のプレス成形解析とスプリングバック解析を行うことにより、プレス成形品のスプリングバックを精度よく予測することができる。
【0017】
また、本発明によれば、スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させたプレス成形品を製造することができる。特に、実際のプレス成形品の量産時において、ブランクとして用いられる金属材料のばらつきにあわせて実際のプレス成形条件を変更できるので、プレス成形品のスプリングバックによる寸法不良の大量発生を抑止することもできる。そして、実際のプレス成形品の生産準備の費用及び期間を大きく短縮することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法の処理の流れを示すフロー図である。
図2】引張変形の後に除荷されて、さらに圧縮変形を受けた金属材料における応力とひずみの関係の一例を示すグラフである。
図3】降伏曲面と限界曲面の二曲面がそれぞれ移動や拡大することで金属材料の移動硬化挙動を再現する吉田-上森モデルを説明する模式図である。
図4】金属材料の単軸引張試験により得られた応力-ひずみ関係を模式的に示したグラフである。
図5】金属材料の引張-圧縮繰り返し試験により得られた応力-ひずみ関係を模式的に示したグラフである。
図6】本発明の実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法において、変換パラメータの取り得る範囲を模式的に示したグラフである。
図7】本発明の実施の形態1において、応力-ひずみ曲線の実験値と吉田-上森モデルによる計算値との残差を説明する図である((a)単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線の残差、(b)引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線の残差)。
図8】本実施の形態2に係るスプリングバック予測方法の処理の流れを示すフロー図である。
図9】実施例において、吉田-上森モデルのパラメータの遺伝的アルゴリズムによる最適化計算に用いた目的関数の推移と収束点を示すグラフである。
図10】実施例において決定された吉田-上森モデルのパラメータを用いて推定した単軸引張応力下における応力-ひずみの関係と、実験的に取得した単軸引張応力下における応力-ひずみの関係を示すグラフである。
図11】実施例において決定された吉田-上森モデルのパラメータを用いて推定した引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみの関係と、実験的に取得した引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみの関係を示すグラフである。
図12】実施例において、スプリングバック予測の対象としたプレス成形品と、当該プレス成形品のスプリングバック量として求めるフランジ部の跳ね量を説明する図である((a)斜視図、(b)断面図)。
図13】本発明の実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法のフロー図である。
図14】本発明の実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法において、ダイ、パンチ、パッド及びホルダーから構成されるプレス成形金型によるドローベンド方式のプレス成形によりプレス成形品を製造する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態1及び実施の形態2について説明するに先立ち、本発明で用いる吉田-上森モデルの原理と本発明に至った経緯について説明する。
【0020】
<吉田-上森モデルの原理>
図2に、金属材料が引張変形の後、除荷され、さらに圧縮変形を受けた際の応力とひずみの関係を示す。
従来から使用されている等方硬化モデルでは、図2に破線で示すように、除荷開始点Bから圧縮方向に変形が進み、B'点にて再降伏する。
これに対し、実際の金属材料では、図2に○印で示すように、B'点と比較するとかなり早期のC点付近から再降伏している。このように、金属材料の変形方向が反転した際に、反転前の応力の絶対値よりも早期に再降伏する現象はバウシンガー効果と呼ばれている。
【0021】
このバウシンガー効果を高精度に再現することが、プレス成形後に金型からプレス成形品を取り出したときに生じる形状変化、すなわちスプリングバックを高精度に予測するためには必要である。
しかしながら、等方硬化モデルでは、前述の通り、バウシンガー効果を再現することができない。そこで、バウシンガー効果を再現する移動硬化モデルが提案されている。その中でも、高精度にバウシンガー効果を再現可能である吉田-上森モデルは、プレス成形解析等で広く使用され始めている。
吉田-上森モデルは、図2に実線で示すように、金属材料のバウシンガー効果を精度よく再現できていることが明らかである。
【0022】
また、吉田-上森モデルは、図3に示すように、降伏曲面と限界曲面を有する二曲面モデルである。そして、吉田-上森モデルにおいては、これら二曲面の硬化を適切に定義することで、バウシンガー効果を高精度に再現することが可能である。
以下、吉田-上森モデルの原理について説明する。
【0023】
有限要素解析において、コーシー応力σのJaumann速度dσJとひずみ速度テンソルDとの関係は式(A1)で表される。式(A1)において、Cepは弾塑性係数テンソルと呼ばれる4階のテンソルである。
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、降伏曲面の外向き法線方向と塑性ひずみ増分方向が一致するという仮定、すなわち、関連流れ則を仮定すると、吉田-上森モデルでは、弾塑性係数テンソルCepは以下の式(A2)で表される。
【0026】
【数4】
【0027】
fは降伏関数、Ceは弾性係数テンソルである。また、a、b、C、m、α、α*、βは吉田-上森モデルにおいて次のように定義されている。
【0028】
吉田-上森モデルは、降伏曲面と限界曲面の二曲面がそれぞれ移動や拡大をすることで金属材料の硬化挙動を再現する二曲面モデルである。降伏曲面は、変形の進展に伴い曲面が移動する移動硬化型である。一方で、限界曲面は、移動硬化と、曲面自体の大きさが拡大により硬化を再現する等方硬化と、を組み合わせた複合硬化型である。
【0029】
吉田-上森モデルによる移動硬化特性を模式的に表した図3において、降伏曲面は中心α、半径Yであり、限界曲面は中心β、半径Y+a0+Rである。なお、a0は降伏曲面と限界曲面の初期半径の差、Rは限界曲面の等方硬化量である。さらに、限界曲面中心に対する降伏曲面中心の相対的な位置はα*(=(α-β))と表される。
【0030】
吉田-上森モデルにおいて、限界曲面中心に対する降伏曲面中心の相対的な位置α*の移動速度dα*は式(A3)により定義され、限界曲面中心βの移動速度dβは式(A4)により定義される。ここで、Cは降伏曲面の移動硬化速度に関わる係数、aは降伏曲面と限界曲面の半径の差、mは限界曲面の移動硬化及び等方硬化の速度を表す係数、bは限界曲面の移動硬化量の最大値、である。
【0031】
【数5】
【0032】
さらに、式(A3)中の降伏曲面の移動硬化速度に関わる係数Cが変形初期とそれ以降では異なる値をとることで、吉田-上森モデルは変形初期の降伏段現象等の特徴を高精度に再現することができる。
一般に、Cは以下の式(A5)に示すように相当塑性ひずみ量εpeqにより判定される。
【0033】
【数6】
【0034】
以上の式(A3)~(A5)により、降伏曲面及び限界曲面の移動硬化が再現される。一方、限界曲面の等方硬化量Rは式(A6)により定義されている。ここで、Rsatは限界曲面の等方硬化量の最大値、mは限界曲面の移動硬化及び等方硬化速度を表す係数、である。
【0035】
【数7】
【0036】
このように、吉田-上森モデルでは、降伏曲面の移動硬化(式(A3)及び式(A5))、限界曲面の移動硬化(式(A4))、限界曲面の等方硬化(式(A6))により、金属材料の硬化挙動を再現している。そして、式(A3)~式(A6)中のパラメータ(Y、a0、C1、C2、b、m、Rsat)を正確に決定することが、高精度にバウシンガー効果を再現するために必要である。
【0037】
さらに、吉田-上森モデルでは、応力反転後の加工硬化停滞領域を表現するため、非等方硬化領域(中心q、半径r)が以下の式(A7)~式(A9)で定義される。そして、限界曲面の中心βが非等方硬化領域内に存在する(f(β-q)<rを満たす)間は、限界曲面は等方硬化しない(R=0)ものとする。ここで、hは非等方硬化領域の拡大量と移動量の比率を表すパラメータである。
【0038】
【数8】
【0039】
以上により、吉田-上森モデルにおいては金属材料の応力-ひずみ関係がモデル化されている。吉田-上森モデルのパラメータをまとめると表1となる。
【0040】
【表1】
【0041】
<本発明に至った経緯>
一般的な等方硬化モデルには、以下の式(A10)~(A14)式で表されるように、Swift硬化則、Ludwik硬化則、Gosh硬化則、Voce硬化則、Hockett-Sheby硬化則、等がある。
【0042】
【数9】
【0043】
これら各硬化則で用いられるci(i=1~4)はパラメータであり、上記の硬化則で用いられるパラメータの数は最大で4つである。
これらのパラメータは、単軸引張試験により得られる単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線(以降、「引張SS曲線」という、図4のa2参照)と各等方硬化モデルにより計算される引張SS曲線との残差を最小にする(フィッティングする)ように決定される。この時、等方硬化モデルのパラメータの数は吉田-上森モデルのパラメータよりも少なく、これらのパラメータを決定するためには引張SS曲線にのみフィッティングさせればよいので、等方硬化モデルのパラメータは容易に決定することができる。
【0044】
これに対し、吉田-上森モデルのパラメータは表1に示したように8つあり、それぞれのパラメータの取り得る範囲が特定されていない。そのため、吉田-上森モデルのパラメータを決定においては超大な範囲でのパラメータの調整が必要となり、すべてのパラメータを同時に最適な値を求めることは困難であるという課題があった。
【0045】
さらに、吉田-上森モデルによりバウシンガー効果を高精度に再現するため、引張-圧縮繰り返し試験により得られる圧縮-引張応力下における応力‐ひずみ曲線(以降、「繰り返しSS曲線」という、図5参照)に対してもフィッティングする必要がある。そのため、吉田-上森モデルのパラメータを決定するためには、等方硬化モデルのパラメータ(式(A10)~式(A14)中のc1~c4)を決定する場合と比べてより複雑な計算が必要とされる。
【0046】
また、吉田-上森モデルのパラメータを決定する際には、材料の基礎的な特徴値である降伏応力(YS)、引張強度(TS)、一様伸び(uEL)等といった機械的特性値を再現可能であることが必要である。そして、これらの機械的特性値を再現することにより、プレス成形品のプレス成形解析やスプリングバック解析といった有限要素解析による高精度予測が可能となる。
【0047】
たとえば単軸引張応力状態において、引張強度(TS)や一様伸び(uEL)は、それ以上の変形を加えるとくびれが生じ、くびれ部に変形が集中し破断に至る。そのため、このくびれが生じるタイミングを正確に再現することが、高精度なプレス成形解析には必要である。
【0048】
このように、材料の基礎的な特徴量である機械的特性値を材料モデルにより再現可能であることが重要である。しかしながら、引張SS曲線のみからは、機械的特性値を再現できているかどうかを判断することが困難であるという課題があった。
【0049】
そこで発明者らは、上記の課題を解決する方法について検討を行った。当該検討において、発明者らは、吉田-上森モデルのパラメータと引張SS曲線との間の相関に着目した。
その結果、吉田-上森モデルに用いられるパラメータのうち少なくとも2つ以上のパラメータを組み合わせて変換した新たなパラメータは、引張SS曲線の特徴量(YS、TS等)と強い相関が得られることを見出した。
さらに、このように変換したパラメータは、その取り得る範囲を引張SS曲線から決定することができるため、パラメータを決定する従来の手法に比べて、より適切かつ容易にパラメータを決定することが可能であるという知見が得られた。
【0050】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、具体的な構成は以下のとおりである。
【0051】
[実施の形態1]
<応力-ひずみ関係推定方法>
本発明の実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法は、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルを用いて、金属材料の応力-ひずみ関係を推定するものである。
そして本実施の形態に係る応力-ひずみ関係推定方法は、図1に示すように、単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程S1と、繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程S3と、機械的特性値の実験値算出工程S5、変換パラメータ定義工程S7と、を含む。
さらに、本実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法は、図1に示すように、制約条件設定工程S9と、目的関数設定工程S11と、パラメータ決定工程S13と、応力-ひずみ関係推定工程S15と、を含む。
以下、これらの各工程について説明する。
【0052】
≪単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程≫
単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程S1は、金属材料を試験片とした単軸引張試験により、金属材料の単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線を実験的に取得する工程である。
【0053】
≪繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程≫
繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程S3は、金属材料を試験片とした引張-圧縮繰り返し試験により、金属材料の引張-圧縮繰り返し応力下での応力-ひずみ曲線を実験的に取得する工程である。
【0054】
≪機械的特性値の実験値算出工程≫
機械的特性値の実験値算出工程S5は、単軸引張試験により実験的に取得した金属材料の単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線から、金属材料の機械的特性値の実験値を算出する工程である。
本実施の形態において、機械的特性値の実験値算出工程S5は、機械的特性値の実験値として、降伏応力YSと、引張強度TSと、一様伸びuELと、一様伸び以上の高ひずみ域における応力XSと、を取得する。
【0055】
≪変換パラメータ定義工程≫
変換パラメータ定義工程S7は、吉田-上森モデルに用いられるパラメータのうち少なくとも2つ以上のパラメータを組み合わせて変換した変換パラメータを定義する工程である。
【0056】
本実施の形態1では、以下の式(1)~式(4)により変換パラメータBL、κ、η、σsatを定義する。
【0057】
【数10】
【0058】
式(1)で定義される変換パラメータBLは、吉田-上森モデルのパラメータa0とYを組み合わせてパラメータa0を変換したものである。
式(2)で定義される変換パラメータκは、吉田-上森モデルのパラメータC1とC2とを組み合わせてパラメータC1を変換したものである。
式(3)で定義される変換パラメータηは、吉田-上森モデルのパラメータbとRsatを組み合わせてパラメータbを変換したものである。
式(4)で定義される変換パラメータσsatは、吉田-上森モデルのパラメータY、a0、b及びRsatを組み合わせてパラメータRsatを変換したものである。
【0059】
≪制約条件設定工程≫
制約条件設定工程S9は、機械的特性値の実験値算出工程S5において算出した機械的特性値の実験値を用いて変換パラメータ定義工程S7において定義した変換パラメータの取り得る範囲を限定する制約条件を設定する工程である。
【0060】
本実施の形態1において、変換パラメータ定義工程S7で定義した変換パラメータの取り得る範囲は、以下の式(5)~式(8)のうち定義した変換パラメータに対応する式により設定する。
すなわち、変換パラメータBLの取り得る範囲は式(5)により、変換パラメータκの取り得る範囲は式(6)により、変換パラメータηの取り得る範囲は式(7)により、変換パラメータσsatの取り得る範囲は式(8)により、それぞれ限定する。
【0061】
【数11】
【0062】
表2に、本実施の形態1において制約条件として設定する変換パラメータの取り得る範囲と、吉田-上森モデルの他のパラメータの取り得る範囲と、をまとめて示す。
【0063】
【表2】
【0064】
変換パラメータBL、κ、η及びσsatの取り得る範囲の根拠については、以下のとおりである。
【0065】
(a)変換パラメータBL
変換パラメータBLは、限界曲面の初期半径を示し、前述した式(1)に示すように、降伏曲面の半径Yと、降伏曲面と限界曲面の半径差a0の和で表される。吉田-上森モデルでは、降伏曲面は限界曲面の内部を移動し限界曲面を超えることはない。すなわち、限界曲面の初期半径BLは、降伏曲面の半径Yの最大値であるYS(降伏応力)以上(YS≦BL)であることは明らかである。
【0066】
また、降伏曲面の移動は、吉田-上森モデルの原理で述べたように、限界曲面からの相対的な位置に応じて定義されており、降伏曲面と限界曲面の中心が近い時には硬化速度が大きく、降伏曲面が限界曲面に近づくと硬化速度は小さくなる。
【0067】
すなわち、単軸引張変形で考えると、応力Yで降伏(塑性変形開始)し、降伏直後は降伏曲面と限界曲面の中心が近いので、大きく加工硬化をする。しかし、降伏曲面が限界曲面へと漸近し、応力の値が限界曲面の初期半径BLの大きさに近づくと加工硬化は小さくなり応力-ひずみ曲線の傾きは小さくなり、高ひずみ域応力の実験値XSに漸近する。このように、吉田-上森モデルの原理より、限界曲面の初期半径BLは加工硬化の収束値である一様伸び以上の高ひずみ域応力の実験値XS以下となる。
以上の理由により、本実施の形態1において、BLの取り得る範囲は、YS≦BL≦XSに限定する(図6のBLの矢印の範囲)。
【0068】
(b)変換パラメータκ
変換パラメータκは、前述した式(2)に示すように、吉田-上森モデルのパラメータC1とC2の比である。そして、パラメータC1及びC2は、降伏曲面の移動硬化速度に関わる係数であり、いずれも限界曲面中心に対する降伏曲面中心の相対的な位置α*の移動速度を決めるパラメータである。
【0069】
C1とC2の違いは、変形初期にはC1、それ以降はC2と切り替えて使用することにある。あるひずみ(通常は相当塑性ひずみ0.005)を超えた時点でC1からC2と切り替える場合、両者に大きな差異があると応力-ひずみ曲線に不連続な個所が生じる。このような応力-ひずみ曲線の不連続性は降伏段現象を示す材料を再現するには適切であるが、それ以外の場合にはC1とC2を区別する必要はない。よって、C1とC2が等しい時(κ=1)に、変換パラメータκは最小値となる。
【0070】
さらに、吉田-上森モデルにおいてバウシンガー効果の程度を再現するために、パラメータC1とC2は大きく影響を及ぼす。
【0071】
応力反転時には反転負荷方向に対して降伏曲面と限界曲面の差が大きくなるため、降伏曲面の硬化速度は大きい。この時にパラメータC1及びC2の値が大きいほど降伏曲面が早く移動し、限界曲面へと漸近する。これとは逆に、このパラメータC1及びC2の値が小さいと、限界曲面へ漸近するまでの時間が大きくなり応力は穏やかに変化し、バウシンガー効果をより大きく表現することが可能である。
【0072】
270MPa級鋼板のような引張強度が低い場合は、パラメータC1及びC2は500~1000程度の値を取ることが多く、引張強度が高くなるほどC1及びC2の値は小さくなる。そして、980MPa級鋼板以上の高強度材では、パラメータC1及びC2は100~200程度の値を取ることが多い。
【0073】
一方、前記降伏段現象を再現するためにはC1>C2とする必要があるが、C1及びC2が1000を超える値であれば、応力-ひずみ曲線での差異は小さくなる。そのため、C1とC2の比を表す変換パラメータκの値が4を超えることはほとんどない。
以上の理由により、本実施の形態1において、κの取り得る範囲は1≦κ≦4に限定する。
【0074】
(c)変換パラメータη
変換パラメータηは、限界曲面の移動硬化と限界曲面の等方硬化の比率を表すものである。そして、変換パラメータηは、前述した式(3)に示すように、限界曲面の移動硬化量の最大値bと、限界曲面の移動硬化及び等方硬化を組み合わせた複合硬化の最大値の比である。ここで、複合硬化の最大値は、限界曲面の移動硬化量の最大値bと限界曲面の等方硬化量の最大値Rsatの和で与えられる。
【0075】
単軸引張試験等の負荷方向が一定の比例変形では、移動硬化と等方硬化の差異はなく、応力-ひずみ曲線の形状は、限界曲面の硬化量の最大値と硬化速度のみに依存する。
一方で引張-圧縮繰り返し試験等の負荷方向が変化する時には、限界曲面の移動硬化と等方硬化による差異が応力-ひずみ曲線に生じる。
変換パラメータηが下限値(η=0)の時は、限界曲面は等方硬化となり、バウシンガー効果が小さくなる。一方で、変換パラメータηが上限値(η=1)の時は、限界曲面は移動硬化となり、バウシンガー効果が大きくなる。すなわち、パラメータηはバウシンガー効果の程度を表す。
以上の理由により、本実施の形態1において、変換パラメータηの取り得る範囲は0≦η≦1に限定する。
【0076】
(d)変換パラメータσsat
変換パラメータσsatは、単軸引張変形において応力の収束する最大値(収束応力)を表す。吉田-上森モデルの原理から、単軸引張変形における応力の最大値σsatは、前述した式(4)に示すように、限界曲面の初期半径Y+a0(=変換パラメータBL)、限界曲面の移動硬化量の最大値b、限界曲面の等方硬化量の最大値Rsatの和で表される。すなわち、変換パラメータσsatは、σsat=Y+a0+b+Rsatにより求めることができる。
【0077】
一方、単軸引張試験における応力‐ひずみ曲線は一般的には応力はひずみの増加とともに増加し続ける(図4参照)。そこで、一様伸びuEL以上の高ひずみ域における任意のひずみεXSにおける応力XS(高ひずみ域応力の実験値、図4中のa6)を基準として、σsatの範囲を決定する。
【0078】
一様伸び以上の高ひずみ域における任意のひずみεXSの決定方法については、吉田-上森モデルを適用する金属材料の変形量に応じて決定することが望ましいが、吉田-上森モデルは前述のとおり、高ひずみ域で応力が収束する。そのため、例えば、εXS=1とすればよい。
【0079】
しかし、一般には単軸引張試験では、ひずみが一様伸びuELを超え、くびれの発生以降は正確な応力を測定することが困難であるため(図4中のa1、a2)、一様伸びuEL以上の高ひずみ域におけるひずみεxsまでの応力を測定することはできない。そこで、くびれ発生以降、すなわち、一様伸びuEL以降の応力-ひずみ曲線(図4中のa3)は任意の硬化則で推定すればよい。
【0080】
硬化則としては、例えば、有限要素解析ソフト等で広く使用されているSwift硬化則(式(A10)、σeq=c1(c2+εpeq)c3)等を適用することができる。
Swift硬化則を用いて一様伸びuEL以降の応力-ひずみ曲線を推定し、σsatの取り得る範囲を決定する場合を例として説明する。
まず、一様伸びuELまでの引張SS曲線(図4中のa2)に基づきSwift硬化則のパラメータc1~c3をフィッティングにより決定する。
次に、決定したパラメータc1~c3を適応したSwift硬化則により、一様伸びuEL以降の応力-ひずみ曲線(図4中のa3)を推定する。
そして、推定した一様伸びuEL以降の応力-ひずみ曲線において、一様伸びuEL以上の高ひずみ域における任意のひずみεXSにおける応力XSを基準とし、σsatの範囲を決定する。σsatの取り得る範囲は、例えば、XSの±10%の範囲とすればよい。
以上の理由により、本実施の形態1において、σsatの取り得る範囲は、0.9×XS≦σsat≦1.1×XSに限定する(図6のσsatの矢印の範囲)。
【0081】
制約条件設定工程S9は、変換パラメータについての制約条件に限らず、吉田-上森モデルの他のパラメータの取り得る範囲を限定する制約条件をさらに設定してもよい。
本実施の形態1では、他のパラメータY、C2、m及びhの取り得る範囲を、前述の表2に示すように限定する。これらのパラメータの取り得る範囲の根拠は、以下のとおりである。
【0082】
(e)パラメータY
吉田-上森モデルの原理で説明したとおり、パラメータYは降伏曲面の半径を示し(図3参照)、応力がYを超えると材料が降伏、すなわち、塑性変形を開始する。
一方で、単軸引張試験による応力‐ひずみ曲線から得られる特徴量である降伏応力YS(図6参照)、一般に0.2%耐力(塑性ひずみ0.2%における応力値)が用いられる。これは実験により得られる応力‐ひずみ曲線から厳密に降伏開始点を判定することが非常に困難なためである。以上より、パラメータYは、降伏応力YSとおおよそ等しい値もしくはYSよりも小さいと考えられる。
【0083】
また、バウシンガー効果をより大きく再現するためには、Yは小さいほうが好ましい。
例えば、引張-圧縮繰り返し試験において、引張変形を付与してある応力σaに達した時点で負荷方向を反転させ圧縮変形を付与するものとする。この場合、吉田-上森モデルにおいて塑性変形が再度開始する応力、すなわち、再降伏応力σbは、σb=σa-2Yとなる。
【0084】
バウシンガー効果がより大きい場合には、再降伏応力が高くなる。すなわち、Yが小さいほどバウシンガー効果が大きくなる傾向であることが分かるが、パラメータYの定義より正の定数であることは明らかである。
以上より、本実施の形態1において、パラメータYの取り得る範囲は、0<Y<YSに限定するのが好ましい(図6のYの矢印の範囲)。
【0085】
(f)パラメータC2
前述したように、パラメータC2は硬化速度を表すパラメータ(限界曲面中心に対する降伏曲面中心の相対的な位置α*の移動速度を決めるパラメータ)である。引張強度が270MPa級~1470MPa級程度の鋼板であれば、C2の値は100~600程度であることがほとんどである。これに当てはまらないものとして、前述の通り降伏段を有する材料については、C1が1000~2000程度となる。
そのため、本実施の形態1において、C2の取り得る範囲は10≦C2≦2000に限定するのが好ましい。
【0086】
(g)パラメータm
パラメータmは、限界曲面中心βの移動速度(移動硬化)及び限界曲面の拡大速度(等方硬化)を決めるパラメータである。
パラメータmは限界曲面の移動硬化(式(A4))及び等方硬化(式(A6))の組み合わせによる限界曲面の硬化速度を支配するため、応力-ひずみ曲線に大きく影響する。単軸引張応力状態においては、応力の収束値(収束応力)はσsat=Y+a0+b+Rsat(変換パラメータσsat、式(4))となるが、この応力に漸近するまでの時間にパラメータmが影響する。mが小さいほど硬化速度が遅くなり、収束応力に漸近するまでの時間がかかり、応力-ひずみ曲線は硬化を続けるような硬化曲線となる。
【0087】
引張強度が270MPa級~1470MPa級程度の鋼板であれば、mの値は0.01以上20以下となることが多い。パラメータC1及びC2と同様にパラメータmは速度を表すため、m>20であれば応力-ひずみ曲線への影響は少なくなり、mが50以上となることはほとんどない。
以上の理由により、本実施の形態1において、パラメータmの取り得る範囲は0.01≦m≦50に限定するのが好ましい。
【0088】
(h)パラメータh
パラメータhは、非等方硬化領域の拡大量と移動量の比率である。
非等方硬化領域は、h=0の時に移動のみ、h=1の時に拡大のみとなり、その間の値を取り得る(0≦h≦1)。h=0の時は、非等方硬化領域は拡大しない、すなわち、非等方硬化領域がなく、応力反転時にすぐに限界曲面の等方硬化が起こる。h>0の時は、非等方硬化領域が拡大するため、この領域内に限界曲面の中心がある場合には、限界曲面の等方硬化が起こらず、応力反転後の硬化が小さくなる。
【0089】
≪目的関数設定工程≫
目的関数設定工程S11は、変換パラメータと他のパラメータを決定するための目的関数を設定する工程である。目的関数は、以下のように設定する。
【0090】
まず、単軸引張応力下において実験的に取得した応力-ひずみ曲線と、吉田-上森モデルにより算出される単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線と、の残差を算出する。
【0091】
次に、引張-圧縮繰り返し応力下において実験的に取得した応力-ひずみ曲線と、吉田-上森モデルにより算出される引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線と、の残差を算出する。
【0092】
さらに、金属材料の機械的特性値の実験値と、吉田-上森モデルにより算出される機械的特性値の計算値と、の残差を算出する。
【0093】
なお、単軸引張応力下における応力-ひずみ曲線、引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ曲線及び金属材料の機械的特性値の吉田-上森モデルによる算出は、変換パラメータ(式(1)~式(4))と他のパラメータ(表1参照)を用いる。
【0094】
そして、算出したそれぞれの残差に個別の重み係数を乗じた重み付き残差平方和を目的関数として設定する。
【0095】
本実施の形態1においては、以下の式(9)により重み付き残差平方和(WRSS)を算出する。
【0096】
【数12】
【0097】
式(9)の第5項は引張SS曲線の残差(図7(a)参照)、第6項は繰り返しSS曲線の残差(図7(b)参照)を示す。
なお、式(9)中のpは、引張-圧縮繰り返し試験の反転回数である。反転回数は、少なくとも1回は反転させなければバウシンガー効果の大きさを測定できないのでp≧1としなければならない。図7(b)は、p=2とした場合の引張-圧縮繰り返し応力下における応力-ひずみ関係を模式的に示したグラフの一例である。
【0098】
反転開始時のひずみ量は任意であるが、材料にくびれや座屈が生じると、正確な応力を算出できなくなるため、一様変形以下のひずみ量を反転開始ひずみとすることが望ましい。
【0099】
さらに、式(9)中のnn及びmmはそれぞれ引張SS曲線、繰り返しSS曲線のひずみ方向の分割数である。
加工硬化やバウシンガー効果の特性を再現するためには、各SS曲線の分割数nn及びmmを大きくすることが望ましい。また、加工硬化やバウシンガー効果は第1引張の変形初期や反転開始直後に大きく硬化挙動を示すため、このような範囲の分割数をより大きくするなど、変形開始から終了まで等間隔に分割する必要はない。
また、式(9)中のWYS、WTS、WuEL、WXS、WT及びWTCkは重み係数であり、各項に個別の重みを指定するとよい。
【0100】
目的関数設定工程S11においては、金属材料の変形特性として重要な降伏応力YS、引張強度TS、一様伸びuELに大きな重みを付与するとよい。
特に、パラメータを変換せずに元のまま用いた吉田-上森モデルは、高ひずみ域で応力が収束するため、Swift硬化則等で外挿した引張SS曲線との乖離が大きくなる傾向がある。このような場合、目的関数設定工程S11においては、高ひずみ域の応力XSとの残差に対する重み係数を必要に応じて大きくすることで、より大きな応力値に収束させるように調整することができる。
【0101】
≪パラメータ決定工程≫
パラメータ決定工程S13は、制約条件設定工程S9で設定した制約条件の下で目的関数を最小化するように、変換パラメータと、吉田-上森モデルの他のパラメータと、を決定する工程である。
【0102】
変換パラメータ及び他のパラメータの決定には、最小化手法を適用することができる。そして、最小化手法には任意の手法を用いることができるが、例えば遺伝的アルゴリズムによる進化計算を適用することが可能である。
【0103】
このように、最適化手法等を用いることで容易に変換パラメータと他のパラメータを同定することが可能となる。また、変換パラメータから既存の吉田-上森モデルのパラメータへの変換は、変換パラメータの定義(式(1)~式(4))から容易にできることは明らかである。
【0104】
≪応力-ひずみ関係推定工程≫
応力-ひずみ関係推定工程S15は、パラメータ決定工程S13において決定した変換パラメータと吉田-上森モデルの他のパラメータとを用いて、金属材料の応力-ひずみ関係を推定する工程である。
【0105】
決定した変換パラメータと他のパラメータを用いて吉田-上森モデルにより応力-ひずみ関係を推定するためには、式(1)~式(4)に示す変換パラメータの定義式に基づいて元のパラメータに逆変換すればよい。
もっとも、応力-ひずみ関係推定工程S15においては、吉田-上森モデルを式(1)~式(4)で定義された変換パラメータを用いて定式化してもよい。そして、パラメータ決定工程S13で決定した変換パラメータと他のパラメータを与えることにより、応力-ひずみ関係を推定してもよい。
【0106】
このように、本実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法においては、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルのパラメータのうち一部のパラメータを変換したパラメータを定義する。そして、単軸引張応力下において取得した応力-ひずみ関係から算出される金属材料の機械的特性値との相関を利用して、変換パラメータの取り得る範囲を限定する。さらに、応力‐ひずみ曲線の実験値との残差だけでなく、金属材料の基本的な特徴値である引張強度、一様伸び等の機械的特性値との残差を含めて目的関数を定義し、目的関数を最小化するように変換パラメータと元のパラメータを求める。
【0107】
以上より、本実施の形態1に係る応力-ひずみ推定方法によれば、金属材料の基本的な変形特性の再現性を確保した上で、金属材料のバウシンガー効果を表す吉田-上森モデルのパラメータを容易かつ適切に決定することができる。その結果、金属材料の応力‐ひずみ関係を精度良く推定することが可能である。
【0108】
なお、本実施の形態1は、式(1)~式(4)で定義される4つの変換パラメータを定義するものであった。もっとも、本発明は、式(1)~式(4)で定義される変換パラメータのうち少なくとも一つの変換パラメータを定義するものであってもよい。
【0109】
[実施の形態2]
<スプリングバック予測方法>
本実施の形態2に係るスプリングバック予測方法は、前述した実施の形態1に係る応力-ひずみ関係の推定方法により、吉田-上森モデルのパラメータ及び変換パラメータを決定する(図1中のS1~S13)。そして、決定したパラメータ及び変換パラメータを用いて推定される金属材料の応力-ひずみ関係を用いて、プレス成形品のスプリングバックを予測する。
【0110】
本実施の形態2において、プレス成形品のスプリングバックの予測は、図8に示すように、S1~S13と、プレス成形解析工程S21と、スプリングバック解析工程S23と、により行う。ここで、S1~S13の各ステップは前述の実施の形態1と同様であるため、以下、プレス成形解析工程S21と、スプリングバック解析工程S23と、について説明する。
【0111】
≪プレス成形解析工程≫
プレス成形解析工程S21は、金属材料のブランクをプレス成形品にプレス成形する過程の有限要素解析を行う工程である。
【0112】
プレス成形解析工程S21における有限要素解析には、市販の有限要素解析ソフトを用いることができる。そして、当該有限要素解析においては、本実施の形態1に係る応力-ひずみ推定方法により推定された応力-ひずみ関係を適用する。
【0113】
≪スプリングバック解析工程≫
スプリングバック解析工程S23は、プレス成形解析工程S21における有限要素解析により求めたプレス成形品のスプリングバック挙動の有限要素解析を行う工程である。
【0114】
スプリングバック解析工程S23における有限要素解析には、市販の有限要素解析ソフトを用いることができる。そして、当該有限要素解析においては、本実施の形態1に係る応力-ひずみ推定方法により推定された応力-ひずみ関係を適用する。
【0115】
以上、本実施の形態2に係るスプリングバック予測方法においては、実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法により決定された吉田-上森モデルのパラメータ及び変換パラメータを用いて応力-ひずみ関係を推定する。そして、推定された応力-ひずみ関係を用いてプレス成形品のスプリングバックを予測するため、プレス成形品のスプリングバック量やスプリングバック後の形状を精度良く求めることができる。
【0116】
[実施の形態3]
<プレス成形品の製造方法>
本発明の実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法は、スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させたプレス成形品を製造するものである。
そして、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法は、図13に示すように、試験片採取工程S31と、応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程S33と、仮プレス成形条件設定工程S35と、を含む。また、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法は、スプリングバック量予測工程S37と、スプリングバック量判定工程S39と、仮プレス成形条件変更工程S41と、繰り返し工程S43と、を含む。さらに、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法は、実プレス成形条件決定工程S45と、実プレス成形工程S47と、を含む。
【0117】
以下、本実施の形態3では、プレス成形品として、図12(a)に示す、天板部3と縦壁部5とフランジ部7とを有するハット断面形状のプレス成形品1をプレス成形(製造)する場合を対象とする。そして、プレス成形品1は、図14に示すように、ダイ11、パンチ13、パッド15及びホルダー17から構成されるプレス成形金型10を用いたドローベンド方式によりプレス成形するものとする。
【0118】
≪試験片採取工程≫
試験片採取工程S31は、プレス成形品のブランクとして用いられる金属材料より、単軸引張試験と引張-圧縮繰り返し試験のそれぞれに用いる試験片を採取する工程である。
ここで、単軸引張試験と引張-圧縮繰り返し試験は、前述した本実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法の単軸引張応力-ひずみ曲線取得工程S1と繰り返し応力-ひずみ曲線取得工程S3のそれぞれで実施するものである。
【0119】
≪応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程≫
応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程S33は、試験片採取工程S31において採取した試験片を用いて、前述した本実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法に基づいて、吉田-上森モデルの変換パラメータと他のパラメータを求める工程である。
【0120】
本実施の形態3において、応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程S33は、図13に示すように、本実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法のS1~S13の各工程を実施することにより、吉田-上森モデルの変換パラメータと他のパラメータを求める。
【0121】
≪仮プレス成形条件設定工程≫
仮プレス成形条件設定工程S35は、プレス成形品の仮のプレス成形条件を設定する工程である。
【0122】
仮プレス成形条件設定工程S35において設定する仮のプレス成形条件としては、プレス成形金型の形状に関する条件と、プレス成形機の制御盤に設定する条件と、が挙げられる。
プレス成形金型の形状に関する条件としては、例えば図14に示すプレス成形金型10においては、パンチ13のパンチ肩半径や、縦壁部5(図12参照)を挟むダイ11とパンチ13のプレス成形方向に対する傾斜角、等が挙げられる。
また、プレス成形機の制御盤に設定する条件としては、縦壁部5を挟むダイ11とパンチ13の成形下死点における間隙(クリアランス)が挙げられる(図14参照)。さらに、フランジ部7を挟むダイ11及びホルダー17の板押さえ力(ブランクホルダーフォース)、等も挙げられる(図14参照)。
【0123】
≪スプリングバック量予測工程≫
スプリングバック量予測工程S37は、応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程S33で求めた吉田-上森モデルの変換パラメータと他のパラメータを用いて、プレス成形品の仮のプレス成形条件におけるプレス成形解析及びスプリングバック解析を行う。そして、プレス成形解析及びスプリングバック解析の結果から、プレス成形品のスプリングバック量を予測する。
【0124】
スプリングバック量予測工程S37においては、試験片採取工程S31において試験片を採取した金属材料をブランクとする場合について、プレス成形解析とスプリングバック解析を行う。そして、プレス成形解析及びスプリングバック解析には、プレス成形品1をプレス成形する過程の有限要素解析と、当該有限要素解析により求めたプレス成形品1のスプリングバック挙動の有限要素解析を行うとよい。
【0125】
スプリングバック量予測工程S37において予測するスプリングバック量としては、例えば、スプリングバック後のプレス成形品1における縦壁部5の反りによるフランジ部7の跳ね量、等が挙げられる(図12(b)参照)。
【0126】
≪スプリングバック量判定工程≫
スプリングバック量判定工程S39は、スプリングバック量予測工程S37において予測されたプレス成形品のスプリングバック量が、予め定めた所定の範囲内であるかどうかを判定する工程である。
【0127】
スプリングバック量について予め定めた所定の範囲は、例えば、実際にプレス成形品の組み立ての際に許容される寸法精度に基づいて適宜設定すればよい。
【0128】
≪仮プレス成形条件変更工程≫
仮プレス成形条件変更工程S41は、スプリングバック量判定工程S29においてプレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内にないと判定された場合、仮のプレス成形条件を変更する工程である。
【0129】
例えば、図12(b)に示すように、縦壁部5のスプリングバック後の反りによるフランジ部7の跳ね量が予め定めた所定の範囲よりも大きい場合、縦壁部5のスプリングバック後の反りが小さくなるようにプレス成形金型10の形状を変更する。ここで、フランジ部7の跳ね量とは、成形高さ方向の変位量であり、スプリングバック量として定義する量である。そして、プレス成形金型10の形状の変更は、具体的には、パンチ13のパンチ肩半径を小さくしたり、縦壁部5を反りと逆に押し下げる方向に、縦壁部5を挟圧するダイ11及びパンチ13のプレス成形方向に対する傾斜角を変更するとよい。
また、仮プレス成形条件変更工程S41においては、ダイ11及びホルダー17の板押さえ力を大きくする等、プレス成形機の制御盤で変更する設定条件をプレス成形解析の境界条件として変更してもよい。
このように、仮プレス成形条件変更工程S41においては、スプリングバック量が小さくなるように仮のプレス成形条件を変更(調整)する。
【0130】
≪繰り返し工程≫
繰り返し工程S43は、仮プレス成形条件変更工程S41において変更した仮のプレス成形条件の下で、スプリングバック量予測工程S37と、スプリングバック量判定工程S39と、を繰り返し実行する工程である。この繰り返しは、スプリングバック量判定工程S39において、プレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内と判定されるまで実行する。そのため、仮のプレス成形条件を一回変更したのみでは、プレス成形品が所定の寸法精度の範囲内と判定されない場合には、仮プレス成形条件変更工程S41についても繰り返すことになる。
【0131】
≪実プレス成形条件決定工程≫
実プレス成形条件決定工程S45は、スプリングバック量判定工程S39においてプレス成形品のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内であると判定された場合、その場合の仮のプレス成形条件を実プレス成形条件として決定する工程である。ここで、実プレス成形条件とは、実際にプレス成形品をプレス成形する条件のことである。
【0132】
実プレス成形条件決定工程S45においては、スプリングバック量判定工程S39においてスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内と判定された場合の仮のプレス成形条件から、以下のように、実プレス成形条件を決定するとよい。
【0133】
例えば、仮のプレス成形条件としてプレス成形金型の形状を変更した場合、プレス成形解析に用いたプレス成形金型(モデル)の形状データを、NC工作機械と連携したCAD/CAMプログラムに入力し、NC加工用のNCデータ(NCプログラム)に変換する。
なお、NC工作機械は、フルモールド鋳造法(消失模型鋳造法)により発泡スチロール製の鋳造用金型模型又は鋼材製金型を機械加工するものである。そして、NCデータ(NCプログラム)を用いて、NC工作機械により発泡スチロール製の鋳造用金型模型又は鋼材製金型を製作する。これにより、実プレス成形条件として、実プレス成形に用いるプレス成形金型の形状を決定することができる。
また、仮のプレス成形条件として、図14に示すプレス成形金型10のダイ11とパンチ13の成形下死点における間隙(クリアランス)を変更した場合、当該間隙に合わせてディスタンスブロックの高さを決定するとよい。
【0134】
さらに、仮のプレス成形条件としてプレス成形機の制御盤の設定を変更した場合、変更したプレス成形機の制御盤の設定を実プレス成形条件として決定する。例えば、ダイ11及びホルダー17の板抑え力を変更することとした場合、変更した板押さえ力となるようにプレス成形機の空圧又は油圧式ダイクッション(補助圧力装置)の空気圧又は油圧の制御盤での設定値を実プレス成形条件として決定することができる。
【0135】
≪実プレス成形工程≫
実プレス成形工程S47は、実プレス成形条件決定工程S45において決定した実プレス成形条件の下で、金属材料のブランクを用いてプレス成形品をプレス成形する工程である。実プレス成形工程S47においてブランクとして用いる金属材料は、試験片採取工程S31において試験片を採取し、応力-ひずみ関係推定パラメータ取得工程S33において吉田-上森モデルの変換パラメータと他のパラメータを求める対象とした金属材料である。
【0136】
このように、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法においては、プレス成形品のブランクとして用いる金属材料から試験片を採取し、実施の形態1に係る応力-ひずみ関係推定方法により、吉田-上森モデルのパラメータ及び変換パラメータを求める。そして、求めた吉田-上森モデルのパラメータ及び変換パラメータを用いてプレス成形品のプレス成形解析とスプリングバック解析を行い、スプリングバック量を予測する。さらに、予測したプレス成形品のスプリングバック量が所定の範囲内に収まるように実プレス成形条件を決定する。このように決定した実プレス成形条件でプレス成形品をプレス成形することで、寸法精度を向上させたプレス成形品を製造することができる。
【0137】
特に、ブランクとして用いられる金属材料のばらつき(例えば、金属材料が鋼板である場合、熱延条件、焼鈍条件等の製造条件のばらつきに起因する金属組織の変化)に合わせて、実プレス成形条件を決定することができる。その結果、実際に量産したプレス成形品のスプリングバックによる寸法不良の大量発生を抑止することもできる。
また、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法は、実際のプレス成形品の量産開始前に実プレス成形条件の調整が必要な場合においても、スプリングバック量が低減するように実プレス成形条件を調整することも可能である。
【0138】
なお、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法により、スプリングバック量が低減するように調整した実プレス成形条件でプレス成形品をプレス成形しても、そのスプリングバック量が許容される寸法精度を満たさない場合もある。この場合、決定した実プレス成形条件でプレス成形したプレス成形品のスプリングバック量に基づいて、プレス成形金型の形状等のプレス成形条件のさらなる調整を繰り返すこともある。
【0139】
もっとも、本実施の形態3に係る方法では、スプリングバック量が低減するように実プレス成形条件を変更(調整)している。そのため、実プレス成形条件としてプレス成形金型の形状等の変更を何度も繰り返さなくても、プレス成形品について許容される寸法精度を満たすことができる。したがって、本実施の形態3に係るプレス成形品の製造方法によれば、プレス成形品の生産準備の費用及び期間を大きく短縮することも可能となる。
【実施例0140】
本発明に係る応力-ひずみ関係推定方法とスプリングバック予測方法の作用効果について確認するための検証を行ったので、以下、これらについて説明する。
【0141】
<応力-ひずみ関係の推定>
表3に示す引張強度が270MPa級から1470MPa級までの種々の鋼板A~鋼板Eを金属材料とし、前述した本発明の実施の形態1に係る方法により、吉田-上森モデルのパラメータを決定した。
【0142】
【表3】
【0143】
以下、実施例における吉田-上田モデルのパラメータを決定した手順について説明する。
【0144】
まず、対象とした各鋼板について、単軸引張試験により一様伸びまでの引張応力下における応力とひずみの関係を取得した(図1のa2)。そして、一様伸び以降の高ひずみ域における応力とひずみの関係については、Swift硬化則により外挿して求めた(図1のa3)。そして、単軸引張試験により求めた応力とひずみの関係と、Swift硬化則により外挿して求めた応力とひずみの関係と、を併せて、引張SS曲線として取得した。
【0145】
次に、対象とした各鋼板について、引張-圧縮繰り返し試験により、引張-圧縮繰り返し応力下における応力とひずみの関係を取得した。
本実施例では、引張から圧縮への反転回数(p)を2回とした。まず、引張荷重を負荷し(第1引張)、反転して圧縮荷重を負荷(第1圧縮)した。続いて、さらに反転して引張荷重を負荷(第2引張)した(図2参照)。そして、第1引張、第1圧縮及び第2引張過程における応力とひずみの関係を繰り返しSS曲線として取得した。
【0146】
本実施例において、鋼板A及び鋼板Bについては、第1引張過程において真ひずみ5%まで引張、続く第1圧縮過程において真ひずみ-5%まで圧縮、さらに圧縮から引張に反転した第2引張過程において真ひずみ5%まで引張を付与した。
これに対し、鋼板C、鋼板D及び鋼板Eについては、引張過程(第1引張、第2引張)及び圧縮過程(第1圧縮)における反転開始時のひずみを、それぞれ、3%及び-3%とした。
【0147】
そして、引張SS曲線及び繰り返しSS曲線のそれぞれをひずみ方向に等分割した。ここで、引張SS曲線の分割数nn及び繰り返しSS曲線の分割数mmはいずれも100とした。
【0148】
続いて、目的関数を算出した。本実施例では、前述した実施の形態1に示した式(9)により算出される重み付き残差平方和WRSSを目的関数とした。また、式(9)における各重み係数は表4に示す値とした。
【0149】
【表4】
【0150】
そして、目的関数が最小となるように各パラメータを決定した。ここで、目的関数の最小化には遺伝的アルゴリズムを適用し、100世代までの進化計算を行った。
【0151】
本実施例では、前述した実施の形態1と同様に、吉田-上森モデルのパラメータのうち式(1)~式(4)で与えられる変換パラメータを定義し、変換パラメータと他のパラメータを併せて決定したものを発明例とした。
発明例において、変換パラメータの取り得る範囲は、前述した式(5)~式(8)に示すよう限定した。また、元のYの取り得る範囲についても、前述した表2に示すように、0<Y<YS(=1350)に限定した。
【0152】
さらに、比較対象として、吉田-上森モデルのパラメータの変換をせずに、元のパラメータを遺伝的アルゴリズムにより直接決定したものを比較例とし、発明例と比較検討した。
【0153】
表5に、発明例及び比較例において、目的関数の収束値及び収束世代を示す。また、鋼板Eについて目的関数の世代による変化を図9に示す。
【0154】
【表5】
【0155】
収束の判定には、100世代目の目的関数の値に対して+1%以下となった世代で収束したと判断した。目的関数は、その値が小さいほど高精度であるといえる。一方、収束世代はより小さいほど効率的であるといえる。
発明例では、表5及び図9に示すように、いずれの鋼板においても、比較例と比べて目的関数の値が小さく、さらに、より早い世代で収束していることが分かる。
【0156】
表6に、発明例と比較例において、金属材料の各機械的特性値の実験値と計算値の残差を示す。表6において、YS残差は降伏応力YSの残差、TS残差は引張強度TSの残差、uEL残差は一様伸びの残差である。
【0157】
【表6】
【0158】
表6に示すように、発明例においては、いずれの機械的特性値について比較例よりも残差が小さいことが分かる。
【0159】
さらに、鋼板Eについて、引張SS曲線及び繰り返しSS曲線を推定した結果を図10及び図11に示す。
図10において、比較例では、単軸引張応力下の高ひずみ域において、実測値からの乖離がみられるが、本発明では、高ひずみ域まで高精度に応力-ひずみ関係を推定できている。
また、図11においても、本発明では、引張-圧縮繰り返し応力下の金属材料の応力反転後における応力-ひずみ関係を高精度に推定できていることが分かる。
【0160】
表7に、鋼板Eについて、発明例において設定した制約条件の一部について、その範囲と、発明例及び比較例において決定されたパラメータの値を示す。
【0161】
【表7】
【0162】
発明例では、制約条件で規定した範囲内で吉田-上森モデルのパラメータと変換パラメータの値を決定しているため、決定したパラメータは制約条件を満たしている。
一方で、比較例では、決定したパラメータから算出したσsatの値が、発明例の制約条件から外れている。比較例では、引張SS曲線の特徴を示すσsatの値が適切ではなかったために、引張SS曲線の算出結果に乖離が生じたと考えられる。
一方、発明例では、引張SS曲線の特徴を表現できるように制約条件を設定したため、引張SS曲線の算出結果は、実験結果とよく一致していることが確認できる。
【0163】
以上のことから、本発明に係る応力-ひずみ関係推定方法によれば、吉田-上森モデルのパラメータを適切かつ容易に決定することができ、応力-ひずみ関係を精度良く推定できることが示された。
【0164】
<スプリングバック量の予測>
次に、上記の発明例及び比較例のそれぞれにおいて決定したパラメータを用いて、プレス成形品のスプリングバック量の予測を行った。
ここでは、図12に示す、天板部3と縦壁部5とフランジ部7とを有するハット断面形状のプレス成形品1を解析対象とし、プレス成形過程と、プレス成形後の離型後におけるスプリングバック過程と、のそれぞれについて有限要素解析を行った。そして、図12に示すように、スプリングバック後のプレス成形品1のフランジ部7の跳ね量(成形高さ方向の変位量)をスプリングバック量として求めた。
【0165】
鋼板A~鋼板Eのそれぞれについて、プレス成形品のスプリングバックによるフランジ部の跳ね量を求めた結果を表8に示す。
【0166】
【表8】
【0167】
表8に示すように、発明例においては、より実験結果に近い跳ね量を予測することができていることが分かる。これより、本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量予測方法によれば、スプリングバック量を精度良く予測できることが示された。
【符号の説明】
【0168】
1 プレス成形品
3 天板部
5 縦壁部
7 フランジ部
10 プレス成形金型
11 ダイ
13 パンチ
15 パッド
17 ホルダー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14