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特開2024-31820感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031820
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20240229BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240229BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106331
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022133175
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝広
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF22P
2H225AF23P
2H225AF24P
2H225AF28P
2H225AF29P
2H225AF48P
2H225AF52P
2H225AF53P
2H225AF54P
2H225AF56P
2H225AF66P
2H225AF67P
2H225AF68P
2H225AF69P
2H225AF70P
2H225AF71P
2H225AF72P
2H225AF73P
2H225AF91P
2H225AF92P
2H225AF99P
2H225AH08
2H225AH12
2H225AH14
2H225AH16
2H225AH19
2H225AH31
2H225AH38
2H225AH39
2H225AH40
2H225AH50
2H225AJ08
2H225AJ12
2H225AJ13
2H225AJ43
2H225AJ45
2H225AJ47
2H225AJ48
2H225AJ51
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ58
2H225AJ59
2H225AJ60
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】感度、CDU性能及び解像性に優れる感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法及び重合体を提供する。
【解決手段】カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子が下記式(1)で表される酸解離性基で置換された部分構造を含む第1構造単位を有する第1重合体と、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造を含む1価の感放射線性オニウムカチオン部及び1価の有機酸アニオン部を有する化合物とを含有する感放射線性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子が下記式(1)で表される酸解離性基で置換された部分構造を含む第1構造単位を有する第1重合体と、
少なくとも1つの水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造を含む1価の感放射線性オニウムカチオン部及び1価の有機酸アニオン部を有する化合物と
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Arは、置換又は非置換の環員数5~30の芳香環構造から1個の水素原子を除いた基である。R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基である。*は、カルボキシ基のエーテル性酸素原子又はフェノール性水酸基の酸素原子との結合部位を示す。)
【請求項2】
上記式(1)のArを与える置換又は非置換の環員数5~30の芳香環構造が置換又は非置換の環員数6~30の芳香族炭化水素環構造である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(1)のR及びRが、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
上記感放射線性オニウムカチオン部が下記式(2-1)又は(2-2)で表される請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】
(式(2-1)中、aは、0~7の整数である。bは、0~4の整数である。cは、0~4の整数である。但し、a+b+cは、1以上である。R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。但し、R、R及びRのうち少なくとも1つはフッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。aが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。bが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。cが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子若しくは炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基であるか、又はRとRとが互いに合わせられ単結合を表す。nは、0又は1である。
式(2-2)中、dは、1~7の整数である。eは、0~10の整数である。dが1の場合、Rは、フッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。dが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。但し、複数のRのうち少なくとも1つはフッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。Rは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。R10は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。eが2以上の場合、複数のR10は互いに同一又は異なる。nは、0又は1である。nは、0~3の整数である。)
【請求項5】
上記第1構造単位が下記式(3-1)又は(3-2)で表される請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】
(式(3-1)及び(3-2)中、Zは、上記式(1)で表される酸解離性基である。
式(3-1)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
式(3-2)中、R12は、水素原子又はメチル基である。R13は、単結合、酸素原子、-COO-又は-CONH-である。Arは、置換又は非置換の環員数6~30の芳香族炭化水素環構造から2個の水素原子を除いた基である。R14は、単結合又は-CO-である。)
【請求項6】
上記第1重合体がフェノール性水酸基を含む第2構造単位をさらに有する請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
上記第1重合体よりもフッ素原子含有率が大きい第2重合体をさらに含有する請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
基板に直接又は間接に請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、
上記塗工により形成されたレジスト膜を露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備えるレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーによる微細加工に用いられる感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)(波長13.5nm)等の電磁波、電子線等の荷電粒子線などの放射線の照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする化学反応により露光部と非露光部との現像液に対する溶解速度に差異を生じさせることで基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
感放射線性樹脂組成物には、極端紫外線、電子線等の露光光に対する感度が良好であることに加え、CDU(Critical Dimension Uniformity)性能及び解像性等に優れることが要求される。
【0004】
これらの要求に対しては、感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体、酸発生剤及びその他の成分の種類、分子構造などが検討され、さらにその組み合わせについても詳細に検討されている(特開2010-134279号公報、特開2014-224984号公報及び特開2016-047815号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-134279号公報
【特許文献2】特開2014-224984号公報
【特許文献3】特開2016-047815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レジストパターンのさらなる微細化に伴い、上記性能の要求レベルはさらに高まっており、これらの要求を満たす感放射線性樹脂組成物が求められている。
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感度、CDU性能及び解像性に優れる感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子が下記式(1)で表される酸解離性基で置換された部分構造を含む構造単位を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造を含む1価の感放射線性オニウムカチオン部及び1価の有機酸アニオン部を有する化合物(以下、「[Z]化合物」ともいう)とを含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】
(式(1)中、Arは、置換又は非置換の環員数5~30の芳香環構造から1個の水素原子を除いた基である。R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基である。*は、カルボキシ基のエーテル性酸素原子又はフェノール性水酸基の酸素原子との結合部位を示す。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接に上述の当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、上記塗工により形成されたレジスト膜を露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備えるレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、感度、CDU性能及び解像性に優れる。本発明のレジストパターン形成方法によれば、感度良く、CDU性能及び解像性に優れたレジストパターンを形成することができる。したがって、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法について詳説する。
【0012】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と、[Z]化合物とを含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、通常、有機溶媒(以下、「[D]有機溶媒」ともいう)を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として[Z]化合物以外の感放射線性酸発生剤(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として[Z]化合物以外の酸拡散制御剤(以下、「[C]酸拡散制御剤」ともいう)を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きい重合体(以下、「[F]重合体」ともいう)を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の任意成分を含有することができる。
【0013】
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と[Z]化合物とを含有することで、感度、CDU性能及び解像性に優れる。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を備えることで上記効果を奏する理由は必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察される。すなわち、後述する特定の構造単位を有する[A]重合体及び後述する特定のカチオン構造を有する[Z]化合物を併用することにより、露光部における酸の発生効率が向上する。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は感度、CDU性能及び解像性に優れると考えられる。
【0014】
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体及び[Z]化合物、並びに必要に応じて[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤、[D]有機溶媒、[F]重合体及びその他の任意成分などを所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.2μm以下のフィルタでろ過することにより調製することができる。
【0015】
以下、当該感放射線性樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
【0016】
<[A]重合体>
[A]重合体は、カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子が後述する式(1)で表される酸解離性基(以下、「酸解離性基(a)」ともいう)で置換された部分構造を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有する。[A]重合体は、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体である。[A]重合体は、構造単位(I)を有することにより酸の作用により現像液への溶解性が変化する性質が発揮される。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[A]重合体を含有することができる。
【0017】
[A]重合体は、フェノール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)をさらに有することが好ましい。[A]重合体は、酸解離性基(a)以外の酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)をさらに有していてもよい。[A]重合体は、構造単位(I)~(III)以外のその他の構造単位(以下、「その他の構造単位」ともいう)をさらに有していてもよい。[A]重合体は、1種又は2種以上の各構造単位を有することができる。
【0018】
当該感放射線性樹脂組成物における[A]重合体の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物が含有する[D]有機溶媒以外の全成分に対して、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
【0019】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、30,000が好ましく、20,000がより好ましく、10,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性を向上させることができる。[A]重合体のMwは、例えば合成に使用する重合開始剤の種類やその使用量等を調整することにより調節することができる。
【0020】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(以下、「Mw/Mn」又は「多分散度」ともいう)の上限としては、2.5が好ましく、2.0がより好ましく、1.7がさらに好ましい。上記比の下限としては、通常1.0であり、1.1が好ましく、1.2がより好ましく、1.3がさらに好ましい。
【0021】
[Mw及びMnの測定方法]
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:東ソー(株)の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
カラム温度 :40℃
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0022】
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0023】
以下、[A]重合体が有する各構造単位について説明する。
【0024】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子が下記式(1)で表される酸解離性基(酸解離性基(a))で置換された部分構造を含む構造単位である。
【0025】
【化2】
【0026】
上記式(1)中、Arは、置換又は非置換の環員数5~30の芳香環構造から1個の水素原子を除いた基である。R及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基である。*は、カルボキシ基のエーテル性酸素原子又はフェノール性水酸基の酸素原子との結合部位を示す。
【0027】
[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(I)を有することができる。
【0028】
構造単位(I)は、酸解離性基(a)を含む構造単位である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等における水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離してカルボキシ基、ヒドロキシ基等を与える基を意味する。酸解離性基(a)は、構造単位(I)におけるカルボキシ基又はフェノール性水酸基が有する水素原子を置換する基である。換言すると、構造単位(I)において酸解離性基(a)は、カルボニルオキシ基のエーテル性酸素原子又はフェノール性水酸基の酸素原子に結合している。「フェノール性水酸基」とは、ベンゼン環に直結するヒドロキシ基に限らず、芳香環に直結するヒドロキシ基全般を指す。
【0029】
[A]重合体が構造単位(I)を有することで、露光により[Z]化合物や[B]酸発生剤等から発生する酸の作用により構造単位(I)から酸解離性基(a)が解離し、露光部と非露光部との間における[A]重合体の現像液への溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。[A]重合体が構造単位(I)において酸解離性基(a)を含むことが、当該感放射線性樹脂組成物が優れた感度、CDU性能及び解像性を発揮する要因の一つであると考えられる。理由としては必ずしも明確ではないが、酸解離性基(a)は露光により[Z]化合物や[B]酸発生剤等から発生する酸の作用により解離しやすく、露光部と非露光部との間における[A]重合体の現像液への溶解性の差異が大きくなることによるものであると推察される。
【0030】
「環員数」とは、環構造を構成する原子数をいい、多環の場合はこの多環を構成する原子数をいう。「多環」には、2つの環が1つの共有原子を有するスピロ型多環や、2つの環が2つの共有原子を有する縮合多環だけでなく、2つの環が共有原子を持たず、単結合で連結している環集合型の多環も含まれる。「環構造」には「脂環構造」及び「芳香環構造」が含まれる。「脂環構造」には「脂肪族炭化水素環構造」及び「脂肪族複素環構造」が含まれる。脂環構造のうち脂肪族炭化水素環構造及び脂肪族複素環構造を含む多環のものは「脂肪族複素環構造」に該当するものとする。「芳香環構造」には「芳香族炭化水素環構造」及び「芳香族複素環構造」が含まれる。芳香環構造のうち芳香族炭化水素環構造及び芳香族複素環構造を含む多環のものは「芳香族複素環構造」に該当するものとする。「環構造からX個の水素原子を除いた基」とは、環構造を構成する原子に結合するX個の水素原子を除いた基を意味する。
【0031】
「炭素数」とは、基を構成する炭素原子数をいう。基の「価数」は、その基が結合する原子数を意味する。「「炭化水素基」には「脂肪族炭化水素基」及び「芳香族炭化水素基」が含まれる。「脂肪族炭化水素基」には「飽和炭化水素基」及び「不飽和炭化水素基」が含まれる。別の観点から「脂肪族炭化水素基」には「鎖状炭化水素基」及び「脂環式炭化水素基」が含まれる。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
【0032】
Arを与える環員数5~30の芳香環構造としては、例えば環員数6~30の芳香族炭化水素環構造、環員数5~30の芳香族複素環構造等が挙げられる。
【0033】
環員数6~30の芳香族炭化水素環構造としては、例えばベンゼン構造;ナフタレン構造、アントラセン構造、フルオレン構造、ビフェニレン構造、フェナントレン構造、ピレン構造等の縮合多環型芳香族炭化水素環構造;ビフェニル構造、テルフェニル構造、ビナフタレン構造、フェニルナフタレン構造等の環集合型芳香族炭化水素環構造などが挙げられる。
【0034】
環員数5~30の芳香族複素環構造としては、例えばフラン構造、ピラン構造、ベンゾフラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピロール構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造、キノリン構造等の窒素原子含有複素環構造、チオフェン構造、ジベンゾチオフェン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0035】
Arを与える環員数5~30の芳香環構造としては、環員数6~30の芳香族炭化水素環構造が好ましく、ベンゼン構造又は縮合多環型芳香族炭化水素環構造がより好ましく、ベンゼン構造又はナフタレン構造がさらに好ましい。
【0036】
上記環構造を構成する原子に結合する一部又は全部の水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えばフッ素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、後述するアルキル基、フッ素化アルキル基(アルキル基の有する一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した基)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基、オキソ基(=O)等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、アルキル基、フッ素化アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、フッ素原子、ヨウ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はメトキシ基がより好ましい。ヨウ素原子である場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度がより向上する場合がある。
【0037】
及びRを与える上記炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。
【0038】
炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、2-メチルプロパ-1-エン-1-イル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0039】
炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式飽和炭化水素基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環の脂環式不飽和炭化水素基;ノルボルネニル基等の多環の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0040】
及びRを与える上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基が好ましく、アルキル基又は単環の脂環式飽和炭化水素基がより好ましく、メチル基、エチル基、i-プロピル基又はシクロプロピル基がさらに好ましい。
【0041】
上記脂肪族炭化水素基における一部又は全部の水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えばArを与える上記環構造が有する場合がある置換基として例示したものと同様の基などが挙げられる。置換基としては、アルコキシ基が好ましい。
【0042】
酸解離性基(a)としては、構造単位(I)におけるカルボキシ基が有する水素原子を置換する基が好ましい。換言すると、構造単位(I)において酸解離性基(a)は、カルボニルオキシ基のエーテル性酸素原子に結合することが好ましい。
【0043】
酸解離性基(a)としては、下記式(a-1)~(a-12)で表される基が好ましい。
【0044】
【化3】
【0045】
上記式(a-1)~(a-12)中、*は、上記式(1)と同義である。
【0046】
構造単位(I)としては、例えば下記式(3-1)又は(3-2)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1)又は(I-2)」ともいう)等が挙げられる。
【0047】
【化4】
【0048】
上記式(3-1)及び(3-2)中、Zは、上記式(1)で表される酸解離性基(酸解離性基(a))である。
【0049】
上記式(3-1)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0050】
上記式(3-2)中、R12は、水素原子又はメチル基である。R13は、単結合、酸素原子、-COO-又は-CONH-である。Arは、置換又は非置換の環員数6~30の芳香族炭化水素環構造から2個の水素原子を除いた基である。R14は、単結合又は-CO-である。
【0051】
11としては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0052】
13としては、単結合又は-COO-が好ましい。
【0053】
Arを与える環員数6~30の芳香族炭化水素環構造としては、例えば上記式(1)のArを与える環員数5~30の芳香環構造のうち、環員数6~30の芳香族炭化水素環構造として例示したものと同様のもの等が挙げられる。中でも、ベンゼン構造又はナフタレン構造が好ましい。
【0054】
14としては、-CO-が好ましい。
【0055】
[A]重合体における構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度、CDU性能及び解像性をより向上させることができる。また、上記下限は、20モル%が好ましい場合、30モル%がより好ましい場合、40モル%がさらに好ましい場合もあり、これらの場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び/又は解像性をより向上させることができる。本明細書における数値範囲の上限及び下限に関する記載は特に断りのない限り、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。また、上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0056】
構造単位(I)を与える単量体(以下、「[X]単量体」ともいう)を公知の方法で重合することにより構造単位(I)を有する[A]重合体を合成することができる。
【0057】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(II)を含有することができる。
【0058】
KrF露光、EUV露光又は電子線露光の場合、[A]重合体が構造単位(II)を有することで、当該感放射線性樹脂組成物の感度をより高めることができる。したがって、[A]重合体が構造単位(II)を有する場合、当該感放射線性樹脂組成物は、KrF露光用、EUV露光用又は電子線露光用の感放射線性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0059】
構造単位(II)としては、例えば下記式(II-1)で表される構造単位(以下、構造単位(II-1))等が挙げられる。
【0060】
【化5】
【0061】
上記式(II-1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合、-COO-、-O-、又は-CONH-である。Arは、置換又は非置換の環員数6~30の芳香族炭化水素環構造から(p+1)個の水素原子を除いた基である。pは、1~3の整数である。
【0062】
としては、構造単位(II-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0063】
としては、単結合又は-COO-が好ましく、単結合がより好ましい。Lが単結合である場合、当該感放射線性樹脂組成物の解像性をより向上させることができる。
【0064】
Arを与える環員数6~30の芳香族炭化水素環構造としては、例えば上記式(1)のArを与える環員数5~30の芳香環構造のうち、環員数6~30の芳香族炭化水素環構造として例示したものと同様のもの等が挙げられる。中でも、ベンゼン構造又はナフタレン構造が好ましく、ベンゼン構造がより好ましい。
【0065】
上記芳香族炭化水素環構造における一部又は全部の水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えばArを与える上記環構造が有する場合がある置換基として例示したものと同様の基などが挙げられる。
【0066】
pとしては、1又は2が好ましい。pが1である場合、当該感放射線性樹脂組成物のCDU性能及び解像性をより向上させることができる。pが2である場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度をより向上させることができる。
【0067】
また、pが1である場合、ヒドロキシ基は、Arを構成する炭素原子のうちLと結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合することが好ましい。pが2以上の場合、少なくとも1つのヒドロキシ基は、Arを構成する炭素原子のうちLと結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合することが好ましい。換言すると、少なくとも1つのヒドロキシ基及びLは、Arにおいて互いにオルトの位置に結合していることが好ましい。この場合、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンにおける欠陥の発生を抑制することができる。
【0068】
構造単位(II-1)としては、下記式(II-1-1)~(II-1-18)で表される構造単位が挙げられる。
【0069】
【化6】
【0070】
上記式(II-1-1)~(II-1-18)中、Rは、上記式(II-1)と同義である。
【0071】
[A]重合体が構造単位(II)を有する場合、[A]重合体における構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましい。
【0072】
構造単位(II)を与える単量体としては、例えば4-アセトキシスチレンや3,5-ジアセトキシスチレン等のフェノール性水酸基(-OH)の水素原子をアセチル基等で置換した単量体なども用いることができる。この場合、例えば上記単量体を重合した後、得られた重合反応物をアミン等の塩基存在下で加水分解反応を行うことにより構造単位(II)を有する[A]重合体を合成することができる。
【0073】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、酸解離性基(a)以外の酸解離性基(以下、「酸解離性基(b)」ともいう)を含む構造単位である。より詳細には、構造単位(III)は、カルボキシ基又はフェノール性水酸基の水素原子が酸解離性基(b)で置換された部分構造を含む構造単位である。構造単位(III)は構造単位(I)とは異なる構造単位である。[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(III)を有することができる。
【0074】
[A]重合体は、構造単位(III)を有することで、感度、CDU性能及び解像性のバランスを調節することができる。
【0075】
酸解離性基(b)は、構造単位(III)におけるカルボキシ基又はフェノール性水酸基が有する水素原子を置換する基である。換言すると、構造単位(III)において酸解離性基(b)は、カルボニルオキシ基のエーテル性酸素原子又はフェノール性水酸基の酸素原子に結合している。
【0076】
酸解離性基(b)としては、酸解離性基(a)以外の基であれば特に制限されず、例えば下記式(b-1)~(b-3)で表される基(以下、「酸解離性基(b-1)~(b-3)」ともいう)等が挙げられる。
【0077】
【化7】
【0078】
上記式(b-1)~(b-3)中、*は、カルボキシ基のエーテル性酸素原子又はフェノール性水酸基の酸素原子との結合部位を示す。
【0079】
上記式(b-1)中、Rは、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に環員数3~20の飽和脂環構造を構成する。但し、R及びRが上記炭化水素基である場合、R、R及びRのいずれか1つが置換又は非置換の環員数5~30の芳香環構造から1個の水素原子を除いた基であり、かつ残り2つが置換又は非置換の炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基である場合を除く。
【0080】
上記式(b-2)中、Rは、水素原子である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。Rは、R、R及びRがそれぞれ結合する炭素原子と共に環員数4~20の不飽和脂環構造を構成する炭素数1~20の2価の炭化水素基である。
【0081】
上記式(b-3)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、R及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に環員数3~20の脂環構造を構成するか、又はR及びRが互いに合わせられRが結合する炭素原子及びRが結合する酸素原子と共に環員数4~20の脂肪族複素環構造を構成する。
【0082】
、R、R、R、R、R、R又はRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0083】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、2-メチルプロパ-1-エン-1-イル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0084】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式飽和炭化水素基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環の脂環式飽和炭化水素基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環の脂環式不飽和炭化水素基;ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0085】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0086】
上記Rで表される炭化水素基が有する場合がある置換基としては、例えば上述の式(1)におけるArを与える上記環構造が有する場合がある置換基として例示したものと同様の基などが挙げられる。
【0087】
及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成する環員数3~20の飽和脂環構造及びR及びRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成する環員数3~20の脂環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の単環の飽和脂環構造;ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の飽和脂環構造;シクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の単環の不飽和脂環構造;ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造、テトラシクロドデセン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0088】
で表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、例えば上述のR、R、R、R、R、R、R又はRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基として例示した基から1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0089】
、R及びRがそれぞれ結合する炭素原子とRとで構成される環員数4~20の不飽和脂環構造としては、例えばシクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の単環の不飽和脂環構造、ノルボルネン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0090】
及びRが互いに合わせられRが結合する炭素原子及びRが結合する酸素原子と共に構成する環員数4~20の脂肪族複素環構造としては、例えばオキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造等の飽和酸素含有複素環構造;オキサシクロブテン構造、オキサシクロペンテン構造、オキサシクロヘキセン構造等の不飽和酸素含有複素環構造などが挙げられる。
【0091】
及びRが炭素数1~20の1価の炭化水素基である場合、R及びRとしては、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。この場合のRとしては、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0092】
及びRがこれらが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に環員数3~20の飽和脂環構造を構成する場合、上記飽和脂環構造としては、単環の飽和脂環構造が好ましく、シクロペンタン構造がより好ましい。この場合のRとしては、鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、アルキル基又はフェニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、i-プロピル基又はフェニル基がさらに好ましい。
【0093】
及びRとしては、これらが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に環員数3~20の飽和脂環構造を構成する場合が好ましい。この場合、当該感放射線性樹脂組成物のCDU性能をより向上させることができる。
【0094】
としては、水素原子が好ましい。
【0095】
としては、水素原子又は鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0096】
がR、R及びRがそれぞれ結合する炭素原子と共に構成する環員数4~20の不飽和脂環構造としては、単環の不飽和脂環構造が好ましく、シクロヘキセン構造がより好ましい。
【0097】
酸解離性基(b)としては、酸解離性基(b-1)又は(b-2)が好ましい。
【0098】
酸解離性基(b-1)としては、例えば下記式(b-1-1)~(b-1-5)で表される基が挙げられる。酸解離性基(b-2)としては、例えば下記式(b-2-1)で表される基が挙げられる。
【0099】
【化8】
【0100】
上記式(b-1-1)~(b-1-5)及び(b-2-1)中、*は、上記式(b-1)及び(b-2)と同義である。
【0101】
構造単位(III)としては、例えば下記式(III-1)又は(III-2)で表される構造単位(以下、「構造単位(III-1)又は(III-2)」ともいう)等が挙げられる。
【0102】
【化9】
【0103】
上記式(III-1)及び(III-2)中、Yは、上記式(b-1)~(b-3)で表される基(酸解離性基(b))である。
【0104】
上記式(III-1)中、R11は、上記式(3-1)と同義である。上記式(III-2)中、R12、R13、Ar及びR14は、上記式(3-2)と同義である。
【0105】
構造単位(III)としては構造単位(III-1)が好ましい。
【0106】
[A]重合体が構造単位(III)を有する場合、[A]重合体における構造単位(III)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、45モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。
【0107】
[その他の構造単位]
その他の構造単位は、上記構造単位(I)~(III)以外の構造単位である。その他の構造単位としては、例えばラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう)、アルコール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(V)」ともいう)、酸発生基を含む構造単位(以下、「構造単位(VI)」ともいう)等が挙げられる。
【0108】
(構造単位(IV))
構造単位(IV)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位である。[A]重合体が構造単位(V)をさらに有することで、基板との密着性を向上することができる。[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(IV)を含有することができる。
【0109】
構造単位(IV)としては、例えば下記式で表される構造単位などが挙げられる。
【0110】
【化10】
【0111】
【化11】
【0112】
【化12】
【0113】
【化13】
【0114】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0115】
構造単位(IV)としては、ラクトン構造を含む構造単位が好ましい。
【0116】
[A]重合体が構造単位(IV)を有する場合、構造単位(IV)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、35モル%が好ましく、25モル%がさらに好ましい。
【0117】
(構造単位(V))
構造単位(V)は、アルコール性水酸基を含む構造単位である。[A]重合体が構造単位(V)をさらに有することで、現像液への溶解性をより適度に調整することができる。[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(V)を含有することができる。
【0118】
構造単位(V)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0119】
【化14】
【0120】
上記式中、RL2は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0121】
[A]重合体が構造単位(V)を有する場合、構造単位(V)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、35モル%が好ましく、25モル%がさらに好ましい。
【0122】
(構造単位(VI))
構造単位(VI)は、酸発生基を含む構造単位である。[A]重合体が構造単位(VI)をさらに有することで、露光光に対する感度をより高めることができる。[A]重合体は、1種又は2種以上の構造単位(VI)を含有することができる。
【0123】
上記酸発生基は、放射線の照射により酸を発生する基である。構造単位(VI)としては、例えば重合性基を含む有機酸アニオンと感放射線性オニウムカチオンとから構成される単量体に由来する構造単位、有機酸アニオンと重合性基を含む感放射線性オニウムカチオンとから構成される単量体に由来する構造単位が挙げられる。上記有機酸アニオンとしては、例えばスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンが挙げられる。上記感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば後述する[Z]化合物、[C]酸発生剤又は[D]酸分解性基が有する感放射線性オニウムカチオンが挙げられる。
【0124】
構造単位(VI)は、酸発生基に加えてヨード基を含むことが好ましい。これにより、当該感放射線性樹脂組成物の感度がより向上する場合がある。上記ヨード基は、上記有機酸アニオンが有していてもよく、上記感放射線性オニウムカチオンが有していてもよい。
【0125】
[A]重合体が構造単位(VI)を有する場合、構造単位(VI)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、20モル%が好ましく、15モル%がさらに好ましい。
【0126】
<[Z]化合物>
[Z]化合物は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造を含む1価の感放射線性オニウムカチオン部(以下、「カチオン部(P)」ともいう)及び1価の有機酸アニオン部(以下、「アニオン部(Q)」ともいう)を有する化合物である。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[Z]化合物を含有することができる。
【0127】
[Z]化合物は、アニオン部(Q)が含むアニオン基の種類に応じて、当該感放射線性樹脂組成物において放射線の照射により酸を発生する作用、又は後述する[B]酸発生剤等から露光により生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光部における好ましくない化学反応(例えば、酸解離性基の解離反応)を抑制する作用を有する。換言すると、[Z]化合物は、アニオン基の種類に応じて、当該感放射線性樹脂組成物において、感放射線性酸発生剤又は酸拡散制御剤(クエンチャー)として機能する。
【0128】
[Z]化合物が感放射線性酸発生剤として機能する場合、放射線としては、例えば後述する当該レジストパターン形成方法の露光工程における露光光として例示するものと同様のものなどが挙げられる。放射線の照射により[Z]化合物から発生した酸により[A]重合体が有する構造単位(I)に含まれる酸解離性基(a)等が解離してカルボキシ基やフェノール性水酸基等が生じ、露光部と非露光部との間でレジスト膜の現像液への溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。
【0129】
[Z]化合物が酸拡散制御剤として機能する場合、露光部においては酸を発生して[A]重合体の現像液に対する溶解性又は不溶性を高め、非露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。これにより、露光部と非露光部の界面におけるラフネスを向上させると共に、露光部と非露光部のコントラストが向上して解像性を向上させることができる。
【0130】
上述した、当該感放射線性樹脂組成物における[Z]化合物の上記作用に関わらず、当該感放射線性樹脂組成物が[Z]化合物を含むことが、当該感放射線性樹脂組成物が優れた感度、CDU性能及び解像性を発揮する要因の一つであると考えられる。理由としては必ずしも明確ではないが、[Z]化合物がカチオン(P)を有することにより酸の発生量が向上することによるものであると推察される。
【0131】
[Z]化合物が感放射線性酸発生剤として機能する場合、当該感放射線性樹脂組成物における[Z]化合物の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、80質量部が好ましく、70質量部がより好ましく、60質量部がさらに好ましい。
【0132】
[Z]化合物が酸拡散制御剤として機能する場合、当該感放射線性樹脂組成物における[Z]化合物の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物に含まれる感放射線性酸発生剤(感放射線性酸発生剤として機能する場合の[Z]化合物及び/又は[B]酸発生剤)100モル%に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0133】
以下、[Z]化合物が有する各構造について説明する。
【0134】
[カチオン部(P)]
カチオン部(P)は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。カチオン部(P)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造(以下、「芳香環構造(p)」ともいう)を含む。カチオン部(P)が芳香環構造(p)を含むことが、当該感放射線性樹脂組成物が優れた感度、CDU性能及び解像性を発揮する要因の一つであると考えられる。
【0135】
芳香環構造(p)を与える芳香環構造としては、例えば上記式(1)のArを与える環員数5~30の芳香環構造として例示したものと同様のもの等が挙げられる。中でも、環員数6~30の芳香族炭化水素環構造又は環員数6~30の芳香族複素環構造が好ましく、ベンゼン構造、縮合多環型芳香族炭化水素環構造又は硫黄原子含有複素環構造がより好ましく、ベンゼン構造、ナフタレン構造又はジベンゾチオフェン構造がさらに好ましい。
【0136】
芳香環構造(p)は、芳香環を構成する原子に結合する少なくとも1つの水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換されている。「フッ素原子含有基」とは、少なくとも1つのフッ素原子を有する基を意味する。フッ素原子含有基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基の一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した基(以下、「フッ素化炭化水素基」ともいう)等が挙げられる。フッ素原子含有基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0137】
芳香環構造(p)におけるフッ素原子又はフッ素原子含有基の置換数は1以上である。上記置換数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0138】
また、芳香環構造(p)を構成する原子に結合する水素原子がフッ素原子及びフッ素原子含有基以外の置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えばArを与える上記環構造が有する場合がある置換基として例示したものからフッ素原子及びフッ素原子含有基に該当するものを除いたものなどが挙げられる。置換基としては、アルキル基、ヨウ素原子、臭素原子が好ましく、メチル基、ヨウ素原子がより好ましい。
【0139】
カチオン(P)におけるカチオン種としては、例えばスルホニウムカチオン(S)又はヨードニウムカチオン(I)などが挙げられる。中でも、スルホニウムカチオンが好ましい。
【0140】
カチオン(P)は、少なくとも1つの芳香環構造(p)を含む。カチオン(p)は、芳香環構造(p)以外の芳香環構造を含んでいてもよい。カチオン(P)のカチオン種がスルホニウムカチオンである場合、カチオン(P)は、3つの芳香環構造を含む態様(態様1)、及び1つの芳香環構造と、環構成原子としてスルホニウムカチオンの硫黄原子を含む1つの環構造とを含む態様(態様2)に大別される。態様1の場合、カチオン(P)は少なくとも2つの芳香環構造(p)を含むことが好ましい。環構成原子としてスルホニウムカチオンの硫黄原子を含む環構造としては、例えばベンゾチオフェン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。
【0141】
カチオン(P)としては、下記式(2-1)又は(2-2)で表されるカチオン(以下、「カチオン(P-1)又は(P-2)」ともいう)が好ましい。
【0142】
【化15】
【0143】
上記式(2-1)中、aは、0~7の整数である。bは、0~4の整数である。cは、0~4の整数である。但し、a+b+cは、1以上である。R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。但し、R、R及びRのうち少なくとも1つはフッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。aが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。bが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。cが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なる。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子若しくは炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基であるか、又はRとRとが互いに合わせられ単結合を表す。nは、0又は1である。
【0144】
上記式(2-2)中、dは、1~7の整数である。eは、0~10の整数である。dが1の場合、Rは、フッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。dが2以上の場合、複数のRは互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。但し、複数のRのうち少なくとも1つはフッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。Rは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。R10は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。eが2以上の場合、複数のR10は互いに同一又は異なる。nは、0又は1である。nは、0~3の整数である。
【0145】
「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0146】
炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素結合間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(以下、「基(α)」ともいう)、上記炭化水素基又は上記基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基(以下、「基(β)」ともいう)、上記炭化水素基、上記基(α)又は上記基(β)と2価のヘテロ原子含有基とを組み合わせた基(以下、「基(γ)」ともいう)等が挙げられる。
【0147】
1価又は2価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0148】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基、スルファニル基(-SH)、オキソ基(=O)等が挙げられる。
【0149】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-O-、-CO-、-S-、-CS-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基(例えば、-COO-、-CONR’-など)等が挙げられる。R’は、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。R’で表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、例えば上記「炭素数1~20の1価の炭化水素基」として例示した基のうち炭素数1~10のもの等が挙げられる。
【0150】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0151】
炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基は、炭素数1~10の1価の炭化水素基の一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した基である。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基等の部分フッ素化アルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘキサフルオロプロピル基等のパーフルオロアルキル基などのフッ素化アルキル基などが挙げられる。中でも、パーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0152】
炭素数1~20の2価の有機基としては、上記炭素数1~20の1価の有機基から1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0153】
a+b+cとしては、1~6が好ましく、3~5がより好ましい。a、b及びcはこの範囲内において適宜選択することができる。
【0154】
及びRとしては、水素原子又はこれらが互いに合わせられ単結合を表すことが好ましい。
【0155】
カチオン(P)としては、カチオン(P-1)が好ましい。
【0156】
カチオン(P-1)としては、例えば下記式(P-1-1)~(P-1-11)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0157】
【化16】
【0158】
[アニオン部(Q)]
アニオン部(Q)は、1価の有機酸アニオンである。アニオン部(Q)は、1価のアニオン基を含む。1価のアニオン基としては、スルホン酸アニオン基(-SO )、カルボン酸アニオン基(-COO)、スルホンイミド酸アニオン基(-SO-N-SO-)等が挙げられる。これらの中でも、スルホン酸アニオン基又はカルボン酸アニオン基が好ましい。
【0159】
以下、アニオン部(Q)のうち、1価のアニオン基としてスルホン酸アニオン基を有するものを「アニオン部(Q-1)」と、1価のアニオン基としてカルボン酸アニオン基を有する場合を「アニオン部(Q-2)」という。
【0160】
(アニオン部(Q-1))
[Z]化合物がアニオン部(Q-1)を有する場合、[Z]化合物は感放射線性酸発生剤又は酸拡散制御剤として機能する。[Z]化合物が感放射線性酸発生剤として機能する場合、当該感放射線性樹脂組成物は、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。上記酸拡散制御剤としては、例えば酸拡散制御剤として機能する場合の[Z]化合物、後述する[C]酸拡散制御剤等が挙げられる。中でも、上記酸拡散制御剤としては、例えば酸拡散制御剤として機能する場合の[Z]化合物が好ましい。換言すると、当該感放射線性樹脂組成物は、アニオン部(Q-1)を有する[Z]化合物と、アニオン部(Q-2)を有する[Z]化合物とを含有することが好ましい。この場合、当該感放射線性樹脂組成物のCDU性能をより向上させることができる。
【0161】
アニオン部(Q-1)としては、オニウム塩型の感放射線性酸発生剤におけるアニオン部として用いられるものであれば特に制限されず、例えば下記式(4-1)で表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
【0162】
【化17】
【0163】
上記式(4-1)中、Rp1は、環員数5以上の環構造を含む1価の基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。np1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。但し、np1+np2+np3は、1以上30以下である。np1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一又は異なる。np2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一又は異なり、複数のRp4は互いに同一又は異なる。np3が2以上の場合、複数のRp5は互いに同一又は異なり、複数のRp6は互いに同一又は異なる。
【0164】
環員数5以上の環構造としては、例えば環員数5以上の脂肪族炭化水素環構造、環員数5以上の脂肪族複素環構造、環員数6以上の芳香族炭化水素環構造、環員数5以上の芳香族複素環構造又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0165】
環員数5以上の脂肪族炭化水素環構造としては、例えばシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環の飽和脂環構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環の不飽和脂環構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造、ステロイド構造等の多環の飽和脂環構造、ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。「ステロイド構造」とは、3つの6員環と1つの4員環とが縮合した骨格(ステラン骨格)を基本骨格とする構造をいう。
【0166】
環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えばヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造、ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造、ジオキソラン構造、オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造、アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造、チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0167】
環員数6以上の芳香族炭化水素環構造としては、例えばベンゼン構造;ナフタレン構造、アントラセン構造、フルオレン構造、ビフェニレン構造、フェナントレン構造、ピレン構造等の縮合多環型芳香族炭化水素環構造;ビフェニル構造、テルフェニル構造、ビナフタレン構造、フェニルナフタレン構造等の環集合型芳香族炭化水素環構造;9,10-エタノアントラセン構造などが挙げられる。
【0168】
環員数5以上の芳香族複素環構造としては、例えばフラン構造、ピラン構造、ベンゾフラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造、チオフェン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0169】
上記環構造は、環構造を構成する原子に結合する一部又は全部の水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば上述の式(1)におけるArを与える上記環構造が有する場合がある置換基として例示したものと同様の基などが挙げられる。置換基としては、ヨウ素原子、アルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0170】
上記環構造の環員数の下限としては、6が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。上記環員数の上限としては、25が好ましい。
【0171】
p1としては、環員数5以上の脂肪族炭化水素環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基又は環員数6以上の芳香族炭化水素環構造を含む1価の基が好ましい。
【0172】
p2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基又はこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0173】
p3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0174】
p5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0175】
p1としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0176】
p2としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0177】
p3の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。np3を1以上とすることで、酸の強さを高めることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0178】
p1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0179】
アニオン部(Q-1)としては、下記式(4-1-1)~(4-1-12)で表されるスルホン酸アニオンが好ましい。
【0180】
【化18】
【0181】
感放射線性酸発生剤としての[Z]化合物としては、上記カチオン部(P)と、上記アニオン部(Q-1)とを適宜組み合わせた化合物を用いることができる。
【0182】
(アニオン部(Q-2))
[Z]化合物がアニオン部(Q-2)を有する場合、[Z]化合物は酸拡散制御剤として機能する。この場合、当該感放射線性樹脂組成物は、感放射線性酸発生剤を含有することが好ましい。上記感放射線性酸発生剤としては、例えば感放射線性酸発生剤として機能する場合の[Z]化合物、後述する[B]酸発生剤等が挙げられる。中でも、上記酸発生剤としては、例えば感放射線性酸発生剤として機能する場合の[Z]化合物が好ましい。
【0183】
アニオン部(Q-2)としては、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基におけるアニオン部として用いられるものであれば特に制限されず、例えば置換又は非置換のサリチル酸アニオン、上記式(4-1)におけるスルホン酸アニオン基をカルボン酸アニオンに置き換えた基等が挙げられる。
【0184】
アニオン部(Q-2)としては、下記式(4-2-1)~(4-2-8)で表されるカルボン酸アニオンが好ましい。
【0185】
【化19】
【0186】
酸拡散制御剤としての[Z]化合物としては、上記カチオン部(P)と、上記アニオン部(Q-2)とを適宜組み合わせた化合物を用いることができる。
【0187】
<[B]酸発生剤>
[B]酸発生剤は、感放射線性酸発生剤としての[Z]化合物以外の感放射線性酸発生剤である。[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物などが挙げられる。
【0188】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。但し、この場合のカチオン部は、水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造を含まない。
【0189】
[B]酸発生剤としては、例えば置換又は非置換のトリフェニルスルホニウムカチオンと、上記<[Z]化合物>の項において説明したアニオン部(Q-1)とを組み合わせた化合物等が挙げられる。
【0190】
当該感放射線性樹脂組成物が[B]酸発生剤を含有する場合、当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、80質量部が好ましく、70質量部がより好ましく、60質量部がさらに好ましい。
【0191】
<[C]酸拡散制御剤>
[C]酸拡散制御剤は、酸拡散制御剤としての[Z]化合物以外の酸拡散制御剤である。[C]酸拡散制御剤としては、例えば窒素原子含有化合物、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基等が挙げられる。
【0192】
窒素原子含有化合物としては、例えばトリペンチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン化合物、ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基含有化合物、尿素、1,1-ジメチルウレア等のウレア化合物、ピリジン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、N-t-ペンチルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等の含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0193】
光崩壊性塩基としては、例えば露光により分解するオニウムカチオンと弱酸のアニオンとを含む化合物等が挙げられる。但し、この場合のカチオン部は、水素原子がフッ素原子又はフッ素原子含有基で置換された芳香環構造を含まない。光崩壊性塩基は、露光部において、オニウムカチオンが分解して生じるプロトンと、弱酸のアニオンとから弱酸が発生する。弱酸のアニオンはヨウ素原子を含むことが好ましく、1つ以上のヨウ素原子で置換された芳香環を有することがより好ましい。
【0194】
[C]酸拡散制御剤としては、例えば置換又は非置換のトリフェニルスルホニウムカチオンと、上記<[Z]化合物>の項において説明したアニオン部(Q-2)とを組み合わせた化合物等が挙げられる。
【0195】
当該感放射線性樹脂組成物が[C]酸拡散制御剤を含有する場合、当該感放射線性樹脂組成物における[C]酸拡散制御剤の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物に含まれる感放射線性酸発生剤(感放射線性酸発生剤として機能する場合の[Z]化合物及び/又は[B]酸発生剤)100モル%に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。
【0196】
<[D]有機溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常、[D]有機溶媒を含有する。[D]有機溶媒は、少なくとも[A]重合体及び[Z]化合物、並びに[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤、[F]重合体及び必要に応じて含有されるその他の任意成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0197】
[D]有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[D]有機溶媒を含有することができる。
【0198】
アルコール系溶媒としては、例えば4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒、シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒、1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0199】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0200】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
【0201】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0202】
エステル系溶媒としては、例えば酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0203】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0204】
[D]有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エステル系溶媒又はこれらの組み合わせが好ましく、炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒又はこれらの組み合わせがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はこれらの組み合わせがさらに好ましい。
【0205】
当該感放射線性樹脂組成物が[D]有機溶媒を含有する場合、[D]有機溶媒の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物に含有される全成分に対して、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量%が好ましく、99.5質量%が好ましく、99.0質量%がさらに好ましい。
【0206】
<[F]重合体>
[F]重合体は、[A]重合体とは異なる重合体であって、[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きい重合体である。通常、ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。[F]重合体は[A]重合体よりもフッ素原子含有率が大きいため、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。その結果、当該感放射線性樹脂組成物が[F]重合体を含有する場合、形成されるレジストパターンの断面形状が良好となることが期待される。また、当該感放射線性樹脂組成物が[F]重合体を含有する場合、レジストパターンの断面形状をより向上させることができる。
【0207】
当該感放射線性樹脂組成物は、例えばレジスト膜の表面調整剤として[F]重合体を含有することができる。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[F]重合体を含有することができる。
【0208】
[F]重合体のフッ素原子含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記フッ素原子含有率の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。なお、重合体のフッ素原子含有率は、13C-NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0209】
[F]重合体におけるフッ素原子の含有形態は特に限定されず、[F]重合体の主鎖及び側鎖のいずれに結合していてもよい。[F]重合体におけるフッ素原子の含有形態としては、[F]重合体がフッ素原子を含む構造単位(以下、「構造単位(F)」ともいう)を有することが好ましい。[F]重合体は、上記構造単位(F)以外の構造単位をさらに有していてもよい。[F]重合体は、1種又は2種以上の各構造単位を有することができる。
【0210】
[F]重合体のGPCによるMwの下限としては、2,000が好ましく、3,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、20,000がより好ましく、10,000がさらに好ましい。
【0211】
[F]重合体のGPCによるMnに対するMwの比(Mw/Mn)の比の上限としては、5.0が好ましく、3.0がより好ましく、2.5がさらに好ましく、2.0が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1.0であり、1.2が好ましい。
【0212】
当該感放射線性樹脂組成物が[F]重合体を含有する場合、[F]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましい。上記含有量の上限としては、10質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。
【0213】
[F]重合体は、[A]重合体と同様に、例えば各構造単位を与える単量体を公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0214】
以下、[F]重合体が有する各構造単位について説明する。
【0215】
[構造単位(f)]
構造単位(f)は、フッ素原子を含む構造単位である。[F]重合体における構造単位(f)の含有割合を調整することで[F]重合体のフッ素原子含有率を調整することができる。構造単位(f)としては、例えば下記式(f)で表される構造単位(以下、「構造単位(f-1)」ともいう)等が挙げられる。
【0216】
【化20】
【0217】
上記式(f)中、Rf1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SONH-、-CONH-又は-OCONH-である。Rf2は、置換又は非置換の炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。
【0218】
f1としては、構造単位(f-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0219】
としては、-COO-が好ましい。
【0220】
f2で表される置換又は非置換の炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えばフッ素化アルキル基等が挙げられる。
【0221】
上記フッ素化炭化水素基の一部又は全部の水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば上述の式(1)におけるArを与える上記環構造が有する場合がある置換基として例示したものと同様の基などが挙げられる。
【0222】
[F]重合体が構造単位(f)を有する場合、構造単位(f)の含有割合の下限としては、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、例えば100モル%である。
【0223】
(その他の構造単位)
その他の構造単位としては、例えば酸解離性基を有する構造単位等が挙げられる。
【0224】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤などが挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上のその他の任意成分を含有することができる。
【0225】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
【0226】
上記塗工工程では、感放射線性樹脂組成物として上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いる。したがって、当該レジストパターン形成方法によれば、感度良く、CDU性能及び解像性に優れたレジストパターンを形成することができる。
【0227】
以下、当該レジストパターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0228】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する。これにより基板に直接又は間接にレジスト膜が形成される。
【0229】
本工程では、感放射線性樹脂組成物として上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いる。
【0230】
基板としては、例えばシリコンウエハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウエハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、基板に間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する場合としては、例えば基板上に形成された反射防止膜上に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する場合などが挙げられる。このような反射防止膜としては、例えば特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜などが挙げられる。
【0231】
塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるためプレベーク(以下、「PB」ともいう。)を行ってもよい。PBの温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記温度の上限としては、150℃が好ましく、140℃がより好ましい。PBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。形成されるレジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000nmが好ましく、500nmがより好ましい。
【0232】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射することにより行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅等に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV(波長13.5nm)又は電子線がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、EUV又は電子線がさらに好ましく、EUV又は電子線が特に好ましい。
【0233】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(以下、「PEB」ともいう)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[Z]化合物や[B]酸発生剤等から発生した酸による[A]重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と非露光部とで現像液に対する溶解性の差異を増大させることができる。PEBの温度の下限としては、50℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記温度の上限としては、180℃が好ましく、130℃がより好ましい。PEBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましく、30秒がさらに好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましく、100秒がさらに好ましい。
【0234】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像工程における現像方法は、アルカリ現像であっても、有機溶媒現像であってもよい。
【0235】
アルカリ現像の場合、現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMAH」ともいう)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0236】
有機溶媒現像の場合、現像液としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、上記有機溶媒を含有する溶液等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の感放射線性樹脂組成物の[D]有機溶媒として例示した溶媒等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0237】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0238】
当該レジストパターン形成方法により形成されるレジストパターンとしては、例えばラインアンドスペースパターン、コンタクトホールパターン等が挙げられる。
【実施例0239】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を以下に示す。
【0240】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び多分散度(Mw/Mn)]
重合体のMw及びMnは、上記[Mw及びMnの測定方法]の項に記載の条件に従って測定した。重合体の多分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0241】
<[X]単量体の合成>
以下の方法に従って、[X]単量体としての下記式(X-1)~(X-14)で表される化合物(以下、「単量体(X-1)~(X-14)」ともいう)を合成した。
【0242】
【化21】
【0243】
[合成例1-1]単量体(X-1)の合成
テトラヒドロフラン(300mL)が入った容器に下記式(P-1)で表される化合物(以下、「化合物(P-1)」ともいう)(150mmol)を加えて0℃に冷却した。この容器に、メチルマグネシウムブロマイドの1mol/Lテトラヒドロフラン溶液を180mL滴下した。室温で8時間攪拌した。0℃に冷却後、塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を食塩水、次いで超純水の順に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過した。溶媒を留去し、下記式(P-2)で表される化合物(以下、「化合物(P-2)」ともいう)を得た。
【0244】
アセトニトリル(150mL)が入った容器に化合物(P-2)(150mmol)及びトリエチルアミン(180mmol)を加えて0℃に冷却した。この容器に、メタクリル酸クロライド(180mmol)を滴下した。室温で3時間攪拌した後、塩化アンモニウム水溶液及び酢酸エチルを加えた。有機層を食塩水、次いで超純水の順に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過した。溶媒を留去し、単量体(Z-1)を得た。
【0245】
単量体(X-1)の合成スキームを以下に示す。下記合成スキーム中、MeMgBrはメチルマグネシウムブロマイドであり、NEtはトリエチルアミンである。
【0246】
【化22】
【0247】
[合成例1-2~1-14]単量体(X-2)~(X-14)の合成
前駆体を適宜選択したこと以外は合成例1-1と同様にして単量体(X-2)~(X-14)を合成した。
【0248】
<[A]重合体の合成>
以下の方法に従って、[A]重合体としての重合体(A-1)~(A-29)、(A-31)~(A-35)及び(CA-1)を合成した。[A]重合体の合成には、上記単量体(X-1)~(X-14)及び下記式(M-1)~(M-19)で表される化合物(以下、「単量体(M-1)~(M-19)」ともいう)を用いた。以下の合成例においては特に断りのない限り、「質量部」は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、「モル%」は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。下記構造式中、「(F-Ph)」はトリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカチオンである。
【0249】
【化23】
【0250】
[合成例2-1]重合体(A-1)の合成
単量体(X-1)、単量体(M-2)及び単量体(M-8)をモル比率が20/45/35となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテル(200質量部)に溶解した。開始剤として2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(10モル%)を加えて単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル(全モノマー量に対して100質量部)を加え、攪拌しながら85℃に加熱した。この容器に上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。重合溶液をn-ヘキサン(1,000質量部)中に滴下して、重合体を凝固精製した。回収した上記重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル(150質量部)、メタノール(150質量部)及びトリエチルアミン(単量体(M-2)の使用量に対し1.5モル当量)及び水(単量体(M-2)の使用量に対し1.5モル当量)を加えた。沸点にて還流させ、加水分解反応を8時間行った。反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン(150質量部)に溶解した。これを水(2,000質量部)中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ別した。50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を良好な収率で得た。重合体(A-1)のMwは5,800であり、Mw/Mnは1.5であった。
【0251】
[合成例2-2~2-33]重合体(A-2)~(A-29)、(A-31)~(A-33)及び(CA-1)の合成
下記表1に示す種類及び配合割合の単量体を用いたこと以外は合成例2-1と同様にして、重合体(A-2)~(A-29)、(A-31)~(A-33)及び(CA-1)を合成した。
【0252】
[合成例2-34~2-35]重合体(A-34)~(A-35)の合成
各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン(THF)溶剤下で共重合反応を行った後に単離、乾燥して、以下に示す組成の重合体(A-34)~(A-35)を得た。得られた重合体の組成はH-NMRにより、Mw及び分散度(Mw/Mn)は上述のGPC条件により、それぞれ確認した。
【0253】
合成例2-1~2-35で得られた重合体の各構造単位を与える単量体の種類及び使用割合、並びにMw及びMw/Mnを下記表1に示す。なお、下記表1中、「-」は該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0254】
【表1】
【0255】
<[F]重合体の合成>
以下の方法に従って、[F]重合体としての重合体(F-1)を合成した。[F]重合体の合成には、上記単量体(M-9)及び上記単量体(M-15)を用いた。
【0256】
[合成例3-1]重合体(F-1)の合成
単量体(M-9)及び単量体(M-15)のモル比率が40/60になるように2-ブタノン(全モノマー量に対して100質量部)に溶解した。開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(全モノマーに対して5モル%)を添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の容器に2-ブタノン(50質量部)を入れ、30分間窒素パージした。この容器内を80℃に加熱し、攪拌しながら、上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間80℃で加熱した後、重合溶液を30℃以下に冷却した。重合溶液を分液漏斗に移液した後、ヘキサン(150質量部)を加えて上記重合溶液を均一に希釈した。更にメタノール(600質量部)及び水(30質量部)を投入して混合した。30分間静置後、下層を回収し、溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換して、重合体(F-1)の10質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。重合体(F-1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは1.7であった。
【0257】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及び[D]有機溶媒を以下に示す。以下の実施例及び比較例においては特に断りのない限り、「質量部」は使用した[A]重合体の質量を100質量部とした場合の値を意味し、「モル%」は使用した[B]酸発生剤のモル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0258】
[[B]酸発生剤]
[B]酸発生剤として、下記式(B-1)~(B-13)及び(CB-1)~(CB-3)で表される化合物(以下、「酸発生剤(B-1)~(B-13)及び(CB-1)~(CB-3)」ともいう)を用いた。酸発生剤(B-1)~(B-13)は[Z]化合物に該当する。
【0259】
【化24】
【0260】
【化25】
【0261】
[[C]酸拡散制御剤]
[C]酸拡散制御剤として、下記式(C-1)~(C-9)及び(CC-1)で表される化合物(以下、「酸拡散制御剤(C-1)~(C-9)及び(CC-1)」ともいう)を用いた。酸拡散制御剤(C-1)~(C-9)が[Z]化合物に該当する。
【0262】
【化26】
【0263】
[[D]有機溶媒]
[D]有機溶媒として、下記の有機溶媒を用いた。
(D-1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D-2):プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0264】
[実施例1]感放射線性樹脂組成物(R-1)の調製
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-1)45質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)を(B-1)に対して50モル%、[D]有機溶媒としての(D-1)5,500質量部及び(D-2)1,500質量部、並びに[F]重合体としての(F-1)を固形分で3質量部を混合した。得られた混合液を孔径0.2μmのフィルタでろ過して感放射線性樹脂組成物(R-1)を調製した。
【0265】
[実施例2~59及び比較例1~3]感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-59)及び(CR-1)~(CR-3)の調製
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-59)及び(CR-1)~(CR-3)を調製した。
【0266】
【表2】
【0267】
<評価>
上記調製した感放射線性樹脂組成物を用いて、下記の方法に従い、感度、CDU性能及び解像性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0268】
[感度]
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗工した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、表2に示す各感放射線性樹脂組成物を、上記スピンコーターを使用して塗工し、130℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ45nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜に対して、EUVスキャナー(ASML社の「NXE3300」(NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハ上寸法がピッチ50nm、+20%バイアスのホールパターンのマスク))を用いて露光した。100℃のホットプレート上で60秒間PEBを行い、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像を行って、25nmホール、50nmピッチのレジストパターン(以下、「25nmコンタクトホールパターン」ともいう)を形成した。上記25nmコンタクトホールパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。感度は、値が小さいほど良いことを示す。感度は、62mJ/cm未満の場合は「A」(極めて良好)と、62mJ/cm以上65mJ/cm以下の場合は「B」(良好)と、65mJ/cmを超える場合は「C」(不良)と評価した。
【0269】
[CDU性能]
上記[感度]の項で求めた最適露光量を照射して、上記と同様にして25nmコンタクトホールパターンを形成した。形成したレジストパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクの「CG-5000」)を用いて、25nmコンタクトホールパターンを上部から観察し、任意のポイントでホール径を計800個測定した。寸法のバラつき(3σ)を求め、これをCDU(nm)とした。CDU性能は、CDUの値が小さいほど、長周期でのホール径のばらつきが小さく良好であることを示す。CDU性能は、3.6nm未満の場合は「A」(極めて良好)と、3.6nm以上3.8nm未満の場合は「B」(良好)と、3.8nm以上の場合は「C」(不良)と評価した。
【0270】
[解像性]
上記[感度]の項に記載の方法において、露光量を変えた場合に解像される最小のコンタクトホールパターンの直径を測定し、この測定値を解像度(単位:nm)とした。解像性は解像度の値が小さいほど良好であることを示す。解像性は、解像度が20.0nm未満の場合は「A」(極めて良好)と、20.0nm以上21.0nm以下の場合は「B」(良好)と、21.0nmを超える場合は「C」(不良)と評価した。
【0271】
【表3】