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特開2024-31826熱アシスト磁気記録を改善するように構成された、選択された分離体を有する媒体構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031826
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】熱アシスト磁気記録を改善するように構成された、選択された分離体を有する媒体構造
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/66 20060101AFI20240229BHJP
   G11B 5/738 20060101ALI20240229BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20240229BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G11B5/66
G11B5/738
G11B5/84 Z
G11B5/02 S
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110668
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】17/895,566
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【弁理士】
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】ホアン コン ホー
(72)【発明者】
【氏名】関 智孔
(72)【発明者】
【氏名】ポール クリストファー ドーシー
【テーマコード(参考)】
5D112
【Fターム(参考)】
5D112AA05
5D112AA24
5D112BB02
5D112FA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱アシスト磁気記録(HAMR)媒体を提供する装置、システム、方法及び媒体を提供する。
【解決手段】HAMR媒体300は、基板302と、基板上のヒートシンク層310と、ヒートシンク層上の複数の磁気記録層とを含む。複数の磁気記録層は、第1磁性層328と、第1磁性層上に配設された第2磁性層330と、を含む。第2磁性層は、FePt-Ag-Cu-Xを含み、Xは、BNを含む分離体である。HAMR媒体は、BN系分離体を使用して、より良好な面密度能力(areal density capability、ADC)のためにHAMR媒体の熱勾配を改善することを可能にし、より薄い厚さを有するMgO下地層の使用を可能にすることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板;
前記基板上のヒートシンク層;及び
前記ヒートシンク層上の複数の磁気記録層であって、前記複数の磁気記録層は、第1磁性層と、前記第1磁性層上に配設され、FePt-Ag-Cu-X(式中、Xは、BNを含む分離体である)を含む第2磁性層と、を含む複数の磁気記録層、
を含む、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記分離体中のBNの量が、34モルパーセント(モル%)以上で42モル%以下である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記分離体中の炭素(C)の量が、0モルパーセント(モル%)以上で10モル%以下である、請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記複数の磁気記録層と前記ヒートシンク層との間に配設され、
MgOTiOを含む第1下地層を含む、下地層構造を更に含む、
請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記下地層構造は、前記第1下地層の上にある、MgOを含む第2下地層を更に含み、
前記第2下地層は、約1.1ナノメートル(nm)と約2.3nmとの間の厚さを有する、請求項4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記第2磁性層は、前記第1磁性層の直接上にあり、前記第1磁性層は、前記第2下地層の直接上にあり、前記第2下地層は、前記第1下地層の直接上にある、請求項5に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記第2磁性層の組成が、FePtAgCu-10C-34BN、FePtAgCu-5C-37.4BN、又はFePtAgCu-41BNのうちの1つである、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記第1磁性層と前記第2磁性層とは、それぞれの組成が互いに異なる、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記第2磁性層は、前記第1磁性層の厚さより大きい厚さを有する、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記複数の磁気記録層は、
前記第2磁性層上に配設された第3磁性層と、
前記第3磁性層上に配設された第4磁性層と、
を更に含み、
前記第1磁性層、前記第2磁性層、前記第3磁性層、及び前記第4磁性層は、それぞれの組成が互いに異なる、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記第1磁性層は、FePt-Agを含み、
前記第2磁性層は、FePt-Ag-Cu-C-BNを含み、
前記第3磁性層は、FePt-BN-Cを含み、
前記第4磁性層は、FePt-BN-SiO2を含む、
請求項10に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体にデータを書き込むように構成されているライトヘッドと、
を備えるデータ記憶デバイス。
【請求項13】
磁気記録媒体の製造方法であって、
基板を設けるステップと、
前記基板上にヒートシンク層を設けるステップと、
前記ヒートシンク層上に複数の磁気記録層を設けるステップであって、前記複数の磁気記録層は、第1磁性層と、前記第1磁性層上に配設され、FePt-Ag-Cu-X(式中、Xは、BNを含む分離体である)を含む第2磁性層とを含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記分離体中のBNの量が、34モルパーセント(モル%)以上で42モル%以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分離体中の炭素(C)の量が、0モル%以上10モル%以下である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の磁気記録層と前記ヒートシンク層との間に配設され、
MgOTiOを含む第1下地層を含む、下地層構造設けるステップを更に含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記下地層構造は、前記第1下地層上の、MgOを含む第2下地層であって、
約1.1ナノメートル(nm)と約2.3nmとの間の厚さを有する前記第2下地層を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2磁性層は、前記第1磁性層の直接上にあり、前記第1磁性層は、前記第2下地層の直接上にあり、前記第2下地層は、前記第1下地層の直接上にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2磁性層の組成が、FePtAgCu-10C-34BN、FePtAgCu-5C-37.4BN、又はFePtAgCu-41BNのうちの1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記第1磁性層と前記第2磁性層とは、それぞれの組成が互いに異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記第2磁性層は、前記第1磁性層の厚さより大きい厚さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の磁気記録層を設けることは、
前記第2磁性層上に第3磁性層を堆積するステップと、
前記第3磁性層上に第4磁性層を堆積するステップと、
を更に含み、
前記第1磁性層、前記第2磁性層、前記第3磁性層、及び前記第4磁性層は、それぞれの組成が互いに異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
磁気記録媒体であって、
基板;
前記基板上のヒートシンク層;及び
前記ヒートシンク層上の複数の磁気記録層であって、前記複数の磁気記録層は、第1磁性層と、前記第1磁性層上に配設され、FePt-Ag-Cu-X(式中、Xは、B4Cを含む分離体である)を含む第2磁性層と、を含む複数の磁気記録層、
を含む、磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、いくつかの態様において、熱アシスト磁気記録と共に使用するための磁気記録媒体に関し、より詳細には、熱アシスト磁気記録(heat-assisted magnetic recording、HAMR)を改善するように構成された、選択された分離体を有する媒体構造に関する。
【0002】
序論
ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)などの磁気記憶システムは、静止及びモバイルコンピューティング環境の両方における多種多様なデバイスにおいて利用される。磁気記憶システムを組み込むデバイスの例としては、デスクトップコンピュータ、携帯型ノートブックコンピュータ、携帯型ハードディスクドライブ、デジタル多目的ディスク(digital versatile disc、DVD)プレーヤー、高精細度テレビ(high definition television、HDTV)受信機、車両制御システム、セルラー若しくは携帯電話、テレビセットトップボックス、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ビデオゲームコンソール、ネットワーク記憶システム、及び携帯型メディアプレーヤが挙げられる。
【0003】
典型的なディスクドライブは、1つ以上のフラットディスクの形態の磁気記憶媒体を含む。ディスクは、一般に、2つの主要な実体、すなわち、それに構造及び剛性を与える基板材料と、磁気インパルス又はモーメントを保持する磁気媒体コーティングとを含み、この磁気インパルス又はモーメントは、コーティング内の記録層内のデータを表すものである。典型的なディスクドライブはまた、一般に、媒体の記録層に記憶された磁場を感知及び/又は変更することができる磁気変換器の形態の、読み取りヘッド及び書き込みヘッドを含む。
【0004】
エネルギーアシスト磁気記録(energy-assistant magnetic recording、EAMR)システムは、様々な磁気媒体上に磁気的に記録される情報の面密度を増加させることができる。磁気記憶のためのより高い面密度を達成するために、より小さい磁性粒子サイズ(例えば、6nm未満)の媒体が使用され得る。熱アシスト磁気記録(HAMR)は、EAMRの一例である。HAMRでは、小さな磁性粒子への記録を容易にするために、書き込み中に記録媒体に高温が加えられる。いくつかの例では、HAMR媒体の1つ以上の磁性層は、分離材料(例えば、炭素)及び下地層を含むことができる。下地層(例えば、MgO層)の厚さは、媒体熱勾配及び磁性膜成長に影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0005】
以下は、本開示のいくつかの態様の簡略化された概要を提示し、そのような態様の基本的な理解を提供するものである。この概要は、本開示のすべての企図される特徴の広範な概観ではなく、また本開示のすべての態様の鍵となる要素又は非常に重要な要素を識別することも、本開示のいずれか又はすべての態様の範囲の線引きすることも意図されていない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本開示のいくつかの態様の様々な概念を簡略化された形で提示することである。
【0006】
一実施形態では、磁気記録媒体は、基板と、基板上のヒートシンク層と、ヒートシンク層上の複数の磁気記録層とを含む。複数の磁気記録層は、第1磁性層と、第1磁性層上に配設された第2磁性層とを含む。第2磁性層は、FePt-Ag-Cu-Xを含み、Xは、BNを含む分離体である。
【0007】
一実施形態では、データ記憶デバイスは、磁気記録媒体と、磁気記録媒体にデータを書き込むように構成された書き込みヘッドとを含み、書き込みヘッドは、近接場トランスデューサ(near field transducer、NFT)を含む。
【0008】
一実施形態では、磁気記録媒体の製造方法が提供される。この方法は、基板を設けるステップと、基板上にヒートシンク層を設けるステップとを含む。この方法は、ヒートシンク層上に複数の磁気記録層を設けるステップを更に含む。複数の磁気記録層は、第1磁性層と、第1磁性層上に配設された第2磁性層とを含む。第2磁性層は、FePt-Ag-Cu-Xを含み、Xは、BNを含む分離体である。
【0009】
一実施形態では、磁気記録媒体は、基板と、基板上のヒートシンク層と、ヒートシンク層上の複数の磁気記録層とを含む。複数の磁気記録層は、第1磁性層と、第1磁性層上に配設された第2磁性層とを含む。第2磁性層はFePt-Ag-Cu-Xを含み、XはB4Cを含む分離体である。
【0010】
本開示のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明を検討することにより、より完全に理解されるであろう。本開示の他の態様、特徴、及び実装形態は、添付の図面とともに本開示の特定の実装形態の以下の説明を検討すると、当業者に明らかになるであろう。本開示の特徴は、以下のいくつかの実装形態及び図に関して説明され得るが、本開示のすべての実装形態は、本明細書で説明する有利な特徴のうちの1つ以上を含むことができる。言い換えれば、1つ以上の実装形態は、特定の有利な特徴を有するものとして説明され得るが、そのような特徴のうちの1つ以上はまた、本明細書で説明する本開示の様々な実装形態に従って使用され得る。同様に、特定の実装形態が、デバイスの実装形態、システムの実装形態、又は方法の実装形態として以下で説明され得るが、そのような実装形態は、様々なデバイス、システム、及び方法において実装され得るということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付図面に示される特定の態様を参照したより詳しい説明を、以下に含める。これらの図面は本開示のある態様のみを示し、したがってその範囲を限定するものとして見なされるべきではないと理解した上で、以下の添付図面を使用して、付加的な特殊性及び詳細を伴って本開示を記述し説明する。
図1】本開示の一態様による、スライダとエネルギーアシスト磁気記録(energy-assisted magnetic recording、EAMR)媒体とを含む、EAMRのために構成されたディスクドライブの上面概略図である。
図2】本開示の一態様による、図1のスライダ及びEAMR媒体の側面概略図である。
図3】本開示の一態様による、HAMR媒体の側面概略図である。
図4】本開示のいくつかの態様による、例示的なHAMR媒体及び対照媒体の温度勾配試験結果のチャートである。
図5】本開示のいくつかの態様による、例示的なHAMR媒体及び対照媒体のレーザパワー試験結果のチャートである。
図6】例示的なHAMR媒体及び対照媒体の信号対雑音比(SNR)性能のチャートである。
図7】例示的なHAMR媒体及び対照媒体の信号対雑音比(SNR)性能のチャートである。
図8】本開示のいくつかの態様による、HAMR媒体を製造するためのプロセスのフローチャートである。
図9図3のHAMR媒体を製造するためのスパッタリング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明では、その一部をなす添付図面を参照する。上述した例示的な態様、態様、及び特徴に加えて、更なる態様、態様、及び特徴を、図面及び以下の詳細な説明を参照することにより明らかにする。各図における要素の説明は、先の図の要素を参照し得る。同じ番号は、図において同じ要素を参照する場合があり、それは同じ要素の代替の態様を含む。
【0013】
本開示は、いくつかの態様では、例えば、熱アシスト磁気記録(HAMR)に使用され得る磁気記録媒体を提供するための様々な装置、システム、及び方法、並びに媒体に関する。いくつかの態様では、HAMR媒体は、磁性層においてBN系分離体を使用して、高い面密度を達成することができる磁性層設計を有する。いくつかの実施形態では、HAMR媒体は複数の磁気記録層を有し、磁気記録層の少なくとも1つはBN系分離体を使用する。より高い面密度を達成するためには、MgO下地層又はシード層の厚さを薄くして、媒体の熱勾配を増加させる必要がある。しかしながら、下地層又はシード層も、適切な磁性膜成長のためには、十分な厚さを有する必要がある。いくつかの実施形態では、HAMR媒体は、高い面密度及び適切な磁性粒子成長のための、効果的な熱勾配を提供するように設計された厚さを有する、二層の下地層(例えば、MgO/MgOTiO下地層)を有する。
【0014】
図1は、本開示の1つ以上の態様による、スライダ108と磁気記録媒体102とを含む、エネルギーアシスト磁気記録(EAMR)のために構成されたデータ記憶デバイス100(例えば、ディスクドライブ又は磁気記録デバイス)の上面概略図である。磁気記録媒体102は、BN系分離体を使用することができる磁性層設計を有する。説明を簡単にするために、磁気記録媒体の様々な実施形態は、熱アシスト磁気記録(HAMR)に使用可能なものとして本開示で説明されるが、それらはHAMR又はEAMRのみに限定されず、非EAMRタイプの磁気記録にも使用することができる。レーザ(図1では見えていないが、図2の符号114を参照)は、ヘッド/スライダ108によって位置決めされる。ディスクドライブ100は、データを記憶するための1つ以上のディスク/媒体102を含み得る。ディスク/媒体102は、ドライブハウジング106に取り付けられたスピンドルアセンブリ104上に存在する。データは、ディスク102の磁気記録層内のトラックに沿って記憶され得る。データの読み取り及び書き込みは、読み取り要素及び書き込み要素(108a及び108b)の両方を有し得るヘッド108(スライダ)によって達成される。書き込み要素108aは、ディスク102の磁気記録層の特性を変更し、それによって、そこに情報を書き込むために使用される。一態様では、ヘッド108は、読み取り用のトンネル磁気抵抗(TMR)素子などの磁気抵抗(MR)ベースの素子と、書き込み用に通電することができるコイルを有する書き込み磁極とを有し得る。動作中、スピンドルモータ(図示せず)は、スピンドルアセンブリ104を回転させ、それによってディスク102を回転させて、所望のディスクトラック107に沿った特定の場所に、ヘッド108を位置決めする。ディスク102に対するヘッド108の位置は、制御回路110(例えば、マイクロコントローラ)によって制御され得る。例示的なHAMRシステムが示されているが、記載された様々な実施形態は、垂直磁気記録(perpendicular magnetic recording、PMR)ディスクドライブを含む、他のEAMR又は非EAMR磁気データ記録システムにおいて使用され得るということに留意されたい。
【0015】
図2は、図1のスライダ108及び磁気記録媒体102の側面概略図である。磁気記録媒体102は、本開示の1つ以上の態様による、BN系分離体を使用する磁気記録層を含む1つ以上の層を有してもよい(例えば、図3に示される媒体)。スライダ108は、スライダ108の上面に取り付けられたサブマウント112を含み得る。レーザ114は、サブマウント112に、及び場合によってはスライダ108に取り付けられ得る。スライダ108は、それぞれ磁気記録媒体102に情報を書き込み、かつ磁気記録媒体102から情報を読み取るために、スライダの空気ベアリング表面(air bearing surface、ABS)108cに沿って位置決めされた書き込み要素(例えば、ライタ)108a及び読み取り要素(例えば、リーダ)108bを備える。
【0016】
動作中、レーザ114は、光エネルギーを発生させて、スライダ108の空気軸受面(例えば、底面)108cの近くの近接場トランスデューサ(NFT)122に、(例えば、破線に沿って)光を方向付けるスライダ内の導波管に方向付けるように構成されている。導波管を介してレーザ114から光を受信すると、NFT122は、書き込み要素108a内又は書き込み要素108a近くであって、かつ読み取り要素108bの近くの媒体102の一部を加熱する、局所的な熱エネルギーを生成する。予想される記録温度は、約350℃~400℃の範囲内であり得る。図2に示す態様では、レーザ指向光は、ライタ108a内であってスライダの後縁の近くに配設されている。他の態様では、上のようにする代わりに、レーザ指向光は、ライタ108aとリーダ108bとの間に配置され得る。図1及び図2は、HAMRシステムの具体的一例を示す。他の例では、本開示の態様による磁気記録媒体102は、他の好適なHAMRシステム(例えば、HAMR用に構成された他のスライダを有するもの)において使用することができる。
【0017】
本開示のいくつかの態様は、BN系分離体を使用する磁気記録層を有するHAMR媒体を提供し、また、そのようなHAMR媒体を製造する方法を提供する。いくつかの態様では、HAMR媒体の1つ以上の磁気記録層は、BN系分離体を使用することができるが、そのBN系分離体は、より良好な面密度能力(areal density capability、ADC)のためにHAMR媒体の熱勾配を改善することを可能にし、より薄い厚さを有するMgO下地層の使用を可能にするものである。
【0018】
図3は、本開示のいくつかの態様による、BN系分離体を使用するHAMR媒体300の側面概略図である。HAMR媒体300は、積層構造を有し、底部/ベース層には基板302を、基板302上には接着層304を、接着層304上には軟性下地層(soft underlayer、SUL)306を、SUL306上にはシード層308を、シード層308上にはヒートシンク層310を、ヒートシンク層310上には熱抵抗層(thermal resistance layer、TRL)312を、TRL312上には下地層構造314を有する。一例では、下地層構造314は、TRL312上の第1下地層(例えば、MgOTiO(MTO)層316)と、第1下地層(MTO層316)上の第2下地層(例えば、MgO層318)とを含み得る。いくつかの実施形態では、下地層構造314は、MgO層を伴わないMTO層316と置き換えられてもよい。いくつかの例において、MTO層316は、約1.3ナノメートル(nm)から約3.5nmの間の厚さを有し得る。いくつかの例では、MgO層318は、約1.1nm~約2.3nm(例えば、約1.7nm)の厚さを有し得る。HAMR媒体300は、下地層構造314上の多層磁気記録層(MRL)構造320と、MRL構造320上のキャッピング層322と、キャッピング層322上のオーバーコート層324とを更に含む。いくつかの例では、HAMR媒体300は、オーバーコート層324上に潤滑剤層326を有し得る。いくつかの態様では、HAMR媒体300の1つ以上の層(例えば、下地層構造314及びMRL構造320)は、反応性ガスを使用して堆積(例えば、スパッタリング)され得る。
【0019】
いくつかの態様では、基板302は、Al合金、NiPめっきAl、ガラス、ガラスセラミック、それらの組み合わせ、及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料などの、1つ以上の材料から作製され得る。いくつかの態様では、接着層304は、NiTa及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料から作られ得る。いくつかの態様では、SUL306は、高透磁率、高飽和磁化、及び低保磁力を有し得るが、例えば、NiFe、CoNbB、FeAlSi、CoFeB、FeTaN、FeTaC、及びCoFe、又は当該技術分野で知られている他の好適な材料などである。いくつかの態様では、シード層308は、RuAl及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料から作製され得る。
【0020】
いくつかの態様では、ヒートシンク層310は、例えばAg、Al、Au、Cu、Cr、Mo、Ru、W、CuZr、MoCu、AgPd、CrRu、CrV、CrW、CrMo、CrNd、NiAl、NiTa、それらの組み合わせ、及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料などの、1つ以上の材料から作製され得る。いくつかの態様では、熱抵抗層312は、RuAl、RuAlCrO2、及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料から作製され得る。一例では、熱抵抗層312は、約2nmの厚さを有し得る。
【0021】
図示のように、MRL構造320は、4つの磁気記録層(MAG0、MAG1、MAG2、MAG3)を含む。いくつかの例では、MRL構造320のこれらの副層又は磁気記録層は、FePt又はFePtXから選択される合金から作製され得るが、ここで、Xは、Ag、Cu、及びそれらの組み合わせから選択される材料であり得る。いくつかの態様において、MRL構造320の副層は、CoPTx合金から作製され得るが、ここで、Xは、Ag、Cu、及びそれらの組み合わせから選択される材料であり得る。いくつかの例では、MRL構造320の副層の各々は、HAMR媒体に適切であるような、所定の厚さ、所定の粒状構造、所定の小さい粒径、所望の均一性、所望の高い保磁力、所望の高い磁束、及び所望の良好な原子配列を有し得る。例えば、Au又はNiなどの、他の添加元素が、前述のMRL構造320に添加されてもよい。他の実施形態では、MRL構造320には、4以外の異なる数のMRLがあってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、MRL構造320の副層又は磁性層どうしは、それらの組成、厚さ、及び/又は分離体が異なり得る。一例では、MRL構造320は、第1磁気記録層328(副層MAG0)、MAG0上の第2磁気記録層330(副層MAG1)と、MAG1上の第3の磁気記録層332(副層MAG2)と、MAG2上の第4の磁気記録層334(副層MAG3)とを含み得る。一例では、MAG1は、MAG0よりも大きい厚さを有することができる。他の例では、MRL構造320は、4つより多い又はより少ない磁気記録副層を有していてもよい。一実施形態では、MAG1(第2磁気記録層330)は、FePt-Ag-Cu-Xを含み得る。いくつかの例において、Xは、BNを含むか又はBNとCとの組み合わせを含む、磁性粒子分離体であり得る。いくつかの例では、XはB4Cを含み得る。BN分離体の(例えば、副層MAG1における)使用により、下地層(例えば、MgO下地層318)の厚さを低減することが可能になり、それは、他の点では同一の(例えば、非BN分離体の使用以外は同一の)MRL構造において分離体としてBN(又はB4C)を使用しないHAMR媒体と比較して、増加した熱勾配をもたらし得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、BNは、第2磁気記録層(MAG1)に使用される場合、磁性層のFePtに影響を及ぼす代わりに、より下層のMTO層から逃れた(例えば、MTO下地層からの)Tiと反応してTiNを形成し得ると考えられる。そうでなければ、Bを単独で使用すると、FePtと反応し(例えば、FeBを形成し)、それによって磁性層の記録性能を低下させ得る。様々な実施形態において、MAG1は、Fe、Pt、Ag、Cu、C、及びBNの様々な組成を有し得る。MRL構造320(例えば、MAG1)における分離体としてのBNの使用は、MgO層318の厚さの低減を可能にし、その結果、媒体300の熱勾配及びADCが、下地層構造314上(例えば、MgO層318上)の磁性膜成長に著しい影響を及ぼすことなく改善され得る。
【0023】
一実施形態では、MAG1は、約34モル%~約42モル%の間のBNを有し得る。いくつかの例では、MAG1は、約0モル%~約10モル%のCを有し得る。いくつかの例では、他の磁気記録層(例えば、MAG0、MAG2、及び/又はMAG3)は、例えば、Ag、SiO2、C、BN、それらの組み合わせ、及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料などの、同じ又は異なる分離体を有することができる。いくつかの例では、MAG0は、BN分離体を含まなくてもよい。一実施形態において、MAG1は、FePtAgCu-10C-34BNを含む組成を有することができる。一実施形態において、MAG1は、FePtAgCu-5C-37.4BNを含む組成を有することができる。一実施形態において、MAG1は、FePtAgCu-41BNを含む組成を有することができる。一実施形態において、MAG1は、炭素(C)を含まないBN系分離体を有する。
【0024】
いくつかの態様では、キャッピング層322は、Co、Pt、Pd、それらの組み合わせ、及び/又は当該技術分野で知られている他の好適な材料から作製され得る。一例では、キャッピング層322は、Coを含む最上層と、Pt又はPdを含む最下層とを有する二層構造とすることができる。最上層及び最下層の、Co/Pt及びCo/Pdの組み合わせに加えて、最上層材料及び最下層材料の具体的な組み合わせとしては、例えば、Co/Au、Co/Ag、Co/Al、Co/Cu、Co/Ir、Co/Mo、Co/Ni、Co/Os、Co/Ru、Co/Ti、Co/V、Fe/Ag、Fe/Au、Fe/Cu、Fe/Mo、Fe/Pd、Ni/Au、Ni/Cu、Ni/Mo、Ni/Pd、Ni/Reなどが挙げられ得る。追加的例では、最上層材料と最下層材料とは、Pt及びPdの任意の組み合わせ(例えば合金)、又は、Au、Ag、Al、Cu、Ir、Mo、Ni、Os、Ru、Ti、V、Fe、Reなどの元素のうちの任意のものを単独で若しくは組み合わせて含む。いくつかの態様では、オーバーコート層324は、炭素から作製され得る。一態様では、潤滑剤層326は、ポリマー系潤滑剤から作製され得る。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「上方」、「下方」、「上」、及び「間」という用語は、他の層に対する1つの層の相対位置を指す。このように、例えば、別の層の上/上方又は下方に堆積又は配設された1つの層は、他の層と直接接触していてもよく、又は1つ以上の介在層を有していてもよい。更に、層の間に堆積又は配設された1つの層は、それらの層と直接接触していてもよく、又は1つ以上の介在層を有していてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、HAMR媒体300は、同様の構造を有するが磁気記録層(例えば、MAG1)にBN系分離体を使用しないHAMR媒体(対照媒体)よりも、高い面密度(例えば、ADC)、同等若しくはより良好な信号対雑音比(SNR)、及び/又は改善された温度勾配を有し得る。
【0027】
図4は、BN系分離体を用いた例示的なHAMR媒体(例えば、HAMR媒体300)及び対照媒体の、温度勾配試験結果を示す。より具体的には、図4は、3つのHAMR試験媒体及び対照媒体についての、媒体の平均熱勾配(ケルビン/ナノメートル(K/nm))(縦軸)対MgO下地層の厚さ(横軸)のグラフを示す。図4において、曲線402、404、及び406は、BN系分離体を用いた3つの異なるHAMR媒体の試験データに対応する。より具体的には、曲線406は、反応性ガスを使用せずに製造されたBN系分離体を使用するHAMR媒体に対応する。曲線402及び404は、異なる流量で反応性ガスを使用して製造されたBN系分離体を使用する2つの他のHAMR媒体に対応する。曲線408は、BN系分離体を使用しない対照媒体の試験データに対応する。この例では、曲線402に対応するHAMR媒体(例えば、BN系分離体を有し、より高い流量の反応性ガスを使用して製造されたHAMR媒体300)は、MgO下地層の厚さが減少する場合に、対照媒体の熱勾配と比較してより大きな熱勾配を有する。他のHAMR媒体(例えば、曲線404及び406に対応するもの)は、曲線402に対応する媒体ほど良好には機能しない。より高い熱勾配は、HAMR媒体の面密度(例えば、ADC)を改善することができる。一般に、HAMR媒体の熱勾配は、MgO下地層が薄くなるにつれて改善する。しかしながら、MgO下地層の厚さを低減することは、媒体の磁気性能(例えば、信号対雑音比)に悪影響を及ぼす可能性がある。BN系分離体を有する開示されたHAMR媒体(特に、BN系分離体を有し、反応性ガスを使用して製造されたHAMR媒体)は、以下の図6及び図7に図示され説明されるように、磁気性能を著しく損なうことなく、より薄いMgO下地層の使用(又はMgO下地層の不使用)を可能にする。
【0028】
図5は、図4の例示的なHAMR媒体(例えば、HAMR媒体300)のレーザパワー試験結果を示す。より具体的には、図5は、3つのHAMR試験媒体及び対照媒体について、媒体に印加される(書き込み動作中にスライダを介して印加される)平均レーザパワー(縦軸(ミリアンペア(mA))対MgO下地層の厚さ(横軸)のグラフを示す。図5において、曲線502、504、及び506は、BN系分離体を用いた3つの異なるHAMR媒体の試験データに対応する。より具体的には、曲線506は、反応性ガスを使用せずに製造されたBN系分離体を使用するHAMR媒体に対応する。曲線502及び504は、異なる流量で反応性ガスを使用して製造された、BN系分離体を有する他の2つのHAMR媒体に対応する。曲線508は、BN系分離体を使用しない対照媒体の試験データに対応する。図5は、対照媒体と比較すると、曲線502に対応する試験HAMR媒体(例えば、BN系分離体を有し、より高い流量の反応性ガスを使用して製造されたHAMR媒体300)は、MgO下地層の厚さが約1nm以上(例えば、約1.3nm)であるとき、レーザ電流を著しく増加させることなく(実際には減少する)、(図4に示すように)より高い熱勾配を有することを示す。図5は、BN系分離体を有し、反応性ガスを使用して製造されたHAMR媒体(例えば、曲線502及び504)が、反応性ガスを使用せずに製造された、BN系分離体を使用するHAMR媒体に対応する曲線506よりも、良好に機能することを更に示す。
【0029】
図6及び図7は、図4及び図5の例示的なHAMR媒体(例えば、HAMR媒体300)及び対照媒体の信号対雑音比(SNR)性能を示すチャートである。より詳細には、図6は、3つのHAMR試験媒体及び対照媒体についての、媒体の平均eSNRwrinit(縦軸)対MgO下地層の厚さ(横軸)のグラフを示す。測定eSNRwrinitは、記録パターン内の遷移(1から0又はその逆)に局在化されたリードバック信号の信号対雑音比を指す。図6において、曲線602、604、及び606は、BN系分離体を用いた3つの異なるHAMR媒体の試験データに対応する。より具体的には、曲線606は、反応性ガスを使用せずに製造されたBN系分離体を使用するHAMR媒体に対応する。曲線602及び604は、異なる流量で反応性ガスを使用して製造されたBN系分離体を使用する他の2つのHAMR媒体に対応する。曲線608は、BN系分離体を使用しない対照媒体の試験データに対応する。
【0030】
図7は、3つのHAMR試験媒体及び対照媒体についての、媒体の平均dcSNR(縦軸)対MgO下地層の厚さ(横軸)のグラフを示す。測定dcSNRとは、記録パターンに依存せず一様な再生信号の信号対雑音比である。図7において、曲線702、704、及び706は、BN系分離体を用いた3つの異なるHAMR媒体の試験データに対応する。より具体的には、曲線706は、反応性ガスを使用せずに製造されたBN系分離体を使用するHAMR試験媒体に対応する。曲線702及び704は、異なる流量で反応性ガスを使用して製造されたBN系分離体を使用する他の2つの試験HAMR媒体に対応する。曲線708は、BN系分離体を使用しない対照媒体の試験データに対応する。
【0031】
図6及び図7に示すように、曲線602及び702に対応する試験HAMR媒体(例えば、BN系分離体を有し、より高い流量の反応性ガスを使用して製造されたHAMR媒体300)は、MgO下地層の厚さが減少するとき、対照媒体のものと比較して、より良好なSNR特性(例えば、eSNRwrinit及びdcSNR)を有する。他の試験HAMR媒体(例えば、曲線606及び706に対応するもの)は、曲線602、604、702、及び704に対応する媒体ほど良好に機能しない。曲線608及び708に対応する対照媒体のSNR性能は、MgO層の厚さが減少するにつれて、BN系分離体を使用するHAMR媒体よりも急速に劣化する。一例では、対照媒体は、磁気層において炭素系分離体を使用することができ、HAMR媒体は、磁気記録層(例えば、MAG1、330)においてBN系分離体を使用することができる。
【0032】
図8は、本開示のいくつかの態様による、BN系分離体を有するHAMR媒体を製造するためのプロセス800のフローチャートである。一態様では、プロセス800は、図3図7に関連して上述したHAMR媒体のいずれかを製造するために使用又は修正され得る。ステップ802において、プロセスは、基板を設ける(例えば、好適な基板材料を堆積させる)。いくつかの態様では、基板は、Al合金、NiPめっきAl、ガラス、ガラスセラミック、それらの組み合わせ、及び/又は当該技術分野で知られている任意の好適な材料などの、1つ以上の材料から作製することができる。
【0033】
ステップ804において、プロセス800は、基板上にヒートシンク層を更に設ける(例えば、ヒートシンク層310を堆積させる)。一態様では、プロセス800は、ヒートシンク層上に下地層を更に提供(例えば、下地層構造314を堆積)してもよい。一例では、下地層は、MTO下地層及びMgO下地層を含み得る。一態様において、MgO下地層は、約1.1nmと約2.3nmとの間の厚さを有する。
【0034】
ステップ806において、プロセスは、ヒートシンク層上に複数の磁気記録層を設ける(例えば、2つ以上の磁気記録層を堆積させる)。いくつかの態様では、プロセスはまた、磁気記録層(例えば、MRL構造320)を設ける前に/堆積させる前に、接着層、SUL、シード層、及び/又は熱抵抗層を、基板上に提供してもよい/堆積させてもよい。一例では、複数の磁気記録層は、データを磁気的に記憶するための1つ以上の磁気記録層を含み得る。一実施形態では、複数の磁気記録層は、第1磁気層(例えば、MAG0、328)と、第1磁気層上に配設された第2磁気層(例えば、MAG1、330)とを含む。第2磁性層は、FePt-Ag-Cu-Xを含むことができ、ここで、Xは、BNを含む分離体(例えば、BN系分離体、B分離体とC分離体の組み合わせなど)である。一実施形態では、第2磁性層は第1磁性層の直接上にあり、第1磁性層はMgO下地層の直接上にあり、MgO下地層はMTO下地層の直接上にある。BN分離体の使用は、同様の構造を有するものの、MRL構造においてBN分離体を含まないHAMR媒体と比較して、MgO下地層の厚さを低減(例えば、最大約25%低減)することを可能にする。
【0035】
一実施形態では、プロセスは、スパッタリングを使用して、HAMR300の1つ以上の層を形成することができる。一例では、プロセスは、反応性スパッタリングプロセスを使用して、1つ以上のFePt-Ag-Cu-X磁気記録層を形成することができる。FePt-Ag-Cu-Xターゲットを反応性ガスで反応性スパッタリングして、FePt-Ag-Cu-Xを含有する磁気記録層を生成することができる。一例では、反応性スパッタリングプロセスは、反応性ガスを使用して実行することができる。
【0036】
図9は、本開示のいくつかの態様による、反応性スパッタリングを使用して磁気記録媒体を製造するための、反応性スパッタリング装置900を示す図である。一例において、装置900は、プロセス800を用いて上述したHAMR媒体300を製造するために使用され得る。装置900は、基板904上に膜902を堆積させるために使用することができる。例えば、膜902は、上述のFePt-Ag-Cu-X磁性層又はMAG1(例えば、FePt-Ag-Cu-C-BN又はFePt-Ag-Cu-BN)であってもよい。一例では、FePt-Ag-Cu-X磁性層は、FePtAgCu-10C-34B、FePtAgCu-5C-37.4BN、又はFePtAgCu-41BNを含み得る。いくつかの実施形態において、FePt-Ag-Cu-X磁性層は、約34モルパーセント(モル%)以上で約42モル%以下のBNを有する。そのために、膜902を形成するための所望の材料のターゲット906を、装置900内で使用することができる。装置900の内部では、不活性ガス908(例えば、アルゴン、キセノン、又はクリプトン)によって形成されたプラズマに、反応性ガスが導入される。反応性ガスは、プラズマによって活性化され、その後基板904上に膜902として堆積されるスパッタリングされたターゲット材料910と、化学的に反応することができる。膜902の堆積中、基板904及びターゲット906は、膜902のスパッタリングを容易にするために、好適な電圧でバイアス印加され得る。
【0037】
一態様では、プロセスは、アクションのシーケンスを異なる順序で実行することができる。別の一態様では、プロセスは、1つ以上のアクションをスキップすることができる。他の態様では、1つ以上のアクションが同時に実行される。いくつかの態様では、追加のアクションを実行することができる。
【0038】
いくつかの態様では、そのような層の堆積は、様々な堆積サブプロセスを使用して行うことができ、例えば、物理蒸着(physical vapor deposition、PVD)、スパッタ堆積、及びイオンビーム堆積、並びに、例えば、プラズマ強化化学蒸着(plasma enhanced chemical vapor deposition、PECVD)、低圧化学蒸着(low pressure chemical vapor deposition、LPCVD)、及び原子層化学蒸着(atomic layer chemical vapor deposition、ALCVD)などの、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)が挙げられるが、それらに限定されない。他の態様では、当該技術分野で既知の他の好適な堆積技法も使用され得る。
【0039】
追加の態様
本明細書に記載される例は、本開示の特定の概念を例示するために提供される。上に示された装置、デバイス、又は構成要素は、本明細書で説明される方法、特徴、又はステップのうちの1つ以上を実行するように構成され得る。当業者は、これらが本質的に単なる例示であり、他の例が本開示及び添付の請求項の範囲内に含まれ得るということを理解するであろう。本明細書の教示に基づいて、当業者ならば、本明細書で開示される態様が任意の他の態様から独立して実装され得るということ、及びこれらの態様のうちの2つ以上が様々な方法で組み合わせられ得るということを理解されたい。例えば、本明細書で説明する任意の数の態様を使用して、装置が実装され得るか、又は方法が実施され得る。更に、本明細書で説明される態様のうちの1つ以上に加えて又はそれら以外に、他の構造、機能、又は構造及び機能を使用して、上記のような装置が実装され得るか、又は上記のような方法が実施され得る。
【0040】
本開示の態様を、本開示の実施態様による、方法、装置、システム、及びコンピュータプログラムプロダクトの概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図を参照して上に説明してきた。概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図の各ブロック、並びに概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実装することができると理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されて、プロセッサ又は他のプログラマブルデータ処理装置を介して実行する命令が、概略的なフローチャート図及び/又は概略的なブロック図のブロック(複数可)で指定された機能及び/又は作用を実装するための手段を作成するように、マシンを生成してもよい。
【0041】
本明細書で説明される主題は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実装され得る。したがって、本明細書で使用される「機能」、「モジュール」などの用語は、説明されている特徴を実装するための、ハードウェアを指すが、ソフトウェア及び/又はファームウェア構成要素も含み得る。例示的な一実装形態では、本明細書で説明する主題は、コンピュータ可読媒体を使用して実装され得るが、その媒体は、コンピュータ(例えば、プロセッサ)によって実行されたときに本明細書で説明する機能を実行するようにコンピュータを制御するコンピュータ実行可能命令を記憶したものである。本明細書で説明される主題を実装するのに好適なコンピュータ可読媒体の例としては、ディスク型記憶デバイス、チップ型記憶デバイス、プログラム可能論理デバイス、及び特定用途向け集積回路などの、非一時的コンピュータ可読媒体が挙げられる。加えて、本明細書で説明される主題を実装するコンピュータ可読媒体は、単一のデバイス若しくはコンピューティングプラットフォーム上に位置してもよく、又は複数のデバイス若しくはコンピューティングプラットフォームにわたって分散されてもよい。
【0042】
また、いくつかの代替の実施形態では、ブロック内で示された機能は、図において示された順序とは異なって生じてもよいことに留意されたい。例えば、連続して示す2つのブロックが実質的に並行して実行されてもよいか、又はそれらのブロックが、関連する機能に応じて逆の順序で実行される場合があってもよい。他の工程及び方法として、機能、論理、又は効果の点で、示された図の1つ以上のブロック、又はその部分と同等なものを着想してもよい。様々な矢印のタイプ及び線のタイプがフローチャート及び/又はブロック図で採用され得るが、それらは対応する態様の範囲を限定しないものとして理解される。例えば、矢印は、図示された態様の列挙されたステップ間の待ち期間又は監視期間(その継続時間は特定されない)を示してもよい。
【0043】
上述した様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して使用されてもよく、又は様々な方法で組み合わされてもよい。全ての可能な組み合わせ及びその部分的組み合わせは、本開示の範囲内に含まれることが意図される。加えて、いくつかの実装形態では、特定の方法、イベント、状態、又はプロセスブロックが省略され得る。本明細書で説明される方法及びプロセスはまた、任意の特定の順序に限定されず、それに関連するブロック又は状態は、適切な他の順序で行われることができる。例えば、説明されたタスク又はイベントは、具体的に開示されたもの以外の順序で実行されてもよく、又は複数のタスク又はイベントが単一のブロック又は状態に組み合わされてもよい。例示的なタスク又はイベントは、連続的に、同時並行で、又は何らかの他の好適な方法で実行され得る。タスク又はイベントは、開示された例示的な態様に追加されてもよく、又は開示された例示的な態様から除去されてもよい。本明細書に説明された例示的なシステム及び構成要素は、説明されたものとは異なるように構成されてもよい。例えば、開示された例示的な態様と比較して、要素が追加されたり、除去されたり、又は再配置され得る。
【0044】
当業者ならば、情報及び信号は、様々な異なる技術及び技法のいずれかを使用して表され得るということを理解するであろう。例えば、上の説明全体にわたって参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、及びチップは、電圧、電流、電磁波、磁場若しくは磁性粒子、光場若しくは光学粒子、又はそれらの任意の組み合わせによって表され得る。
【0045】
「例示的な」という語は、本明細書では、「例、事例、又は例示として機能すること」を意味するために使用される。本明細書において「例示的な」として記載されたいかなる実装形態又は態様も、本開示の他の態様よりも必ず好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。同様に、「態様」という用語は、本開示のすべての態様が、論じられる特徴、利点、又は動作モードを含むことを要求しない。「結合された」という用語は、本明細書では、2つのオブジェクト間の直接的又は間接的結合を指すために使用される。例えば、オブジェクトAがオブジェクトBに物理的に接触し、オブジェクトBがオブジェクトCに接触する場合、オブジェクトA及びCは、それらが互いに物理的に直接接触しない場合であっても、互いに結合されているとやはり見なされ得る。更に、1つの構成要素が別の構成要素上に位置する文脈において、本出願において使用される「上に」という用語は、別の構成要素上にあり及び/又は別の構成要素内にある(例えば、構成要素の表面上にあるか若しくは構成要素内に埋め込まれた)構成要素を意味するために使用され得ることに留意されたい。したがって、例えば、第2構成要素上にある第1構成要素は、(1)第1構成要素が第2構成要素上にあるが、第2構成要素に直接接触していないこと、(2)第1構成要素が第2構成要素上に(例えば、その表面上に)あること、及び/又は(3)第1構成要素が第2構成要素内にある(例えば、その中に埋め込まれている)ことを意味し得る。本開示において使用するとき、「約『値X』」、又は「およそ値X」という用語は、「値X」の10パーセント以内を意味するものとする。例えば、約1又はおよそ1の値は、0.9~1.1の範囲内の値を意味し得る。本開示では、様々な値範囲が指定、記載、及び/又は特許請求され得る。本明細書及び/又は請求項では、範囲が指定、記載、及び/又は特許請求されているときはいつでも、(少なくとも一実施形態では)端点を含むことが意図されていることに留意されたい。別の実施形態では、範囲は、範囲の端点を含まなくてもよい。
【0046】
上記の説明は本発明の多くの特定の態様を含むが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろその特定の態様の例として解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、例示された態様によってではなく、添付の請求項及びそれらの均等物によって決定されるべきである。また、本明細書の全体を通して、「一態様(one aspect)」、「(一)態様(an aspect)」、又はそれに類似した言葉の参照は、本態様に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して、「一態様では(in one aspect)」、「(一)態様では(in an aspect)」、及びそれに類似した言葉の語句の表記は、必ずしも全て同一の態様を参照するのではなく、特に明示しない限り、「1つ以上ではあるが全てではない態様」を意味し得る。
【0047】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形(すなわち、1つ以上)も含むことが意図される。列挙された項目の一覧は、特に明示しない限り、それらの項目のいずれか又は全てを相互に排他する及び/又は相互に含めることを暗に意味するものではない。「備える/含む(comprises)」、「備えている/含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの変形は、本明細書で使用される場合、明示的に別段の定めがない限り、「含むが、それに限定されない」ことを意味するということが更に理解されるであろう。すなわち、これらの用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、又は構成要素の存在を指定し得るが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。更に、「又は」という語は、ブール演算子「OR」と同じ意味を有する、すなわち、「いずれか」及び「両方」の可能性を包含し、特に明記しない限り、「排他的論理和」(「XOR」)に限定されないということを理解されたい。2つの隣接する単語の間の記号「/」は、特に明記しない限り、「又は」と同じ意味を有することも理解されたい。更に、「~に接続された」、「~に結合された」、又は「~と通信している」などの句は、別段に明記されていない限り、直接的な接続に限定されない。
【0048】
「第1」、「第2」などの指定を使用する本明細書における要素へのいかなる言及も、一般に、それらの要素の数量又は順序を限定しない。むしろ、これらの指定は、本明細書において、2つ以上の要素又は要素の事例を区別する原義的な方法として使用され得る。したがって、第1及び第2要素への言及は、2つの要素のみがそこで使用され得ることも、第1要素が何らかの方法で第2要素に先行しなければならないことも意味しない。また、別段の記載がない限り、要素のセットは、1つ以上の要素を含み得る。加えて、説明又は請求項で使用される「a、b、又はcのうちの少なくとも1つ」、又は「a、b、c、又はそれらの任意の組み合わせ」という形式の用語は、「a又はb又はc又はこれらの要素の任意の組み合わせ」を意味する。例えば、この用語は、a、又はb、又はc、又はa及びb、又はa及びc、又はa及びb及びc、又は2つのa、又は2つのb、又は2つのc、又は2つのa及びbなどを含み得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「決定すること」という用語は、多種多様なアクションを包含する。例えば、「決定すること」は、計算すること、算出すること、処理すること、導出すること、調査すること、ルックアップすること(例えば、テーブル、データベース、又は別のデータ構造をルックアップすること)、確認することなどを含み得る。また、「決定すること」は、受信すること(例えば、情報を受信すること)、アクセスすること(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)などを含み得る。また、「決定すること」は、解決すること、選択すること、選ぶこと、確立することなどを含み得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】