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特開2024-31835画像認識装置、画像認識方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031835
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】画像認識装置、画像認識方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240229BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0968 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115503
(22)【出願日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2022132444
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】若山 涼至
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB19
2F129BB20
2F129BB21
2F129BB22
2F129BB26
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD19
2F129DD21
2F129DD29
2F129DD53
2F129EE21
2F129EE43
2F129EE52
2F129EE62
2F129EE65
2F129EE75
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE81
2F129EE95
2F129FF09
2F129FF57
2F129FF62
2F129GG03
2F129GG04
2F129GG05
2F129GG06
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH33
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF17
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】移動体が走行する道路の種類に応じて学習済みモデルを変更することなく走行可能領域を認識すること。
【解決手段】路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶した記憶部と、移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識する認識部と、を備える、画像認識装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶した記憶部と、
移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識する認識部と、を備える、
画像認識装置。
【請求項2】
前記認識部は、前記移動体の現在地を含む前記エリアを前記走行可能領域として認識する、
請求項1に記載の画像認識装置。
【請求項3】
前記移動体の目的地の設定を受け付ける受付部を更に備え、
前記認識部は、前記移動体の現在地から前記目的地までの経路上に、前記移動体から離間した前記エリアが存在する場合、当該エリア、および当該エリアと前記移動体の間に存在する前記境界を前記走行可能領域として認識する、
請求項1に記載の画像認識装置。
【請求項4】
前記認識部は、前記移動体の現在地を含む前記エリアを前記走行可能領域として認識し、
前記画像認識装置は、前記移動体の目的地の設定を受け付ける受付部を更に備え、
前記認識部は、前記移動体の現在地から前記目的地までの経路上に、前記移動体の現在地を含む第1エリアと異なる第2エリアが存在する場合、前記第1エリア、前記第2エリア、および前記第1エリアと前記第2エリアの間に存在する前記境界を前記走行可能領域として認識し、
前記第1エリアおよび前記第2エリアは、それぞれ前記第1学習済みモデルによって出力されたものである、
請求項1に記載の画像認識装置。
【請求項5】
前記認識部は、前記移動体が前記境界を横断して、前記移動体の現在地を含む前記エリアから異なる前記エリアに移動した場合、異なる前記エリアを前記走行可能領域として認識する、
請求項1に記載の画像認識装置。
【請求項6】
前記第1学習済みモデルは、教師なし学習によって生成された学習済みモデルであり、前記第2学習済みモデルは、教師あり学習によって生成された学習済みモデルである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像認識装置。
【請求項7】
コンピュータが、
路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶し、
移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識する、
画像認識方法。
【請求項8】
コンピュータに、
路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶させ、
移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像認識装置、画像認識方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行可能領域を認識する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の周辺環境を撮影した複数の画像のうちの少なくとも1つを解析して車両の走行可能領域を認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-12709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、訓練されたシステム(機械学習又は深層学習システム)を使用して、画像を解析することによって車両の走行可能領域を認識するものである。従来、このような学習済みモデルを用いた解析では、事前に車道のみを走行することを前提に学習された学習済みモデルや、車道および歩道を走行することを前提に学習された学習済みモデルを適切に選択して使用する必要があった。その結果、移動体がいかなる種類の道路を走行するかに応じて、使用する学習済みモデルを変更する手間がかかる場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、移動体が走行する道路の種類に応じて学習済みモデルを変更することなく走行可能領域を認識することができる、画像認識装置、画像認識方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る画像認識装置、画像認識方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る画像認識装置は、路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶した記憶部と、移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識する認識部と、を備えるものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記認識部は、前記移動体の現在地を含む前記エリアを前記走行可能領域として認識するものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記移動体の目的地の設定を受け付ける受付部を更に備え、前記認識部は、前記移動体の現在地から前記目的地までの経路上に、前記移動体から離間した前記エリアが存在する場合、当該エリア、および当該エリアと前記移動体の間に存在する前記境界を前記走行可能領域として認識するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記認識部は、前記移動体の現在地を含む前記エリアを前記走行可能領域として認識し、前記画像認識装置は、前記移動体の目的地の設定を受け付ける受付部を更に備え、前記認識部は、前記移動体の現在地から前記目的地までの経路上に、前記移動体の現在地を含む第1エリアと異なる第2エリアが存在する場合、前記第1エリア、前記第2エリア、および前記第1エリアと前記第2エリアの間に存在する前記境界を前記走行可能領域として認識し、前記第1エリアおよび前記第2エリアは、それぞれ前記第1学習済みモデルによって出力されたものである。
【0010】
(5):上記(1)の態様において、前記認識部は、前記移動体が前記境界を横断して、前記移動体の現在地を含む前記エリアから異なる前記エリアに移動した場合、異なる前記エリアを前記走行可能領域として認識するものである。
【0011】
(6):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記第1学習済みモデルは、教師なし学習によって生成された学習済みモデルであり、前記第2学習済みモデルは、教師あり学習によって生成された学習済みモデルであるものである。
【0012】
(7):この発明の一態様に係る画像認識方法は、コンピュータが、路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶し、移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識するものである。
【0013】
(8):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶させ、移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識させるものである。
【発明の効果】
【0014】
(1)~(8)の態様によれば、移動体が走行する道路の種類に応じて学習済みモデルを変更することなく走行可能領域を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る移動体1および制御装置100の構成の一例を示す図である。
図2】移動体1を上方から見た透視図である。
図3】第1学習済みモデル73と第2学習済みモデル74の機能を説明するための図である。
図4】受付部130によって受け付けられる移動体1の目的地の一例を示す図である。
図5】制御部140が、設定された目的地に基づいて生成した目標軌道の一例を示す図である。
図6】認識部120によって取得される統合エリアの一例を示す図である。
図7】実施形態に係る画像処理装置によって実行される処理の流れの一例を示す図である。
図8】実施形態に係る画像処理装置によって実行される処理の流れの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の画像認識装置、画像認識方法、およびプログラムの実施形態について説明する。画像認識装置は、移動体に搭載される。移動体は、車道と、車道と異なる所定領域との双方を移動するものである。移動体は、マイクロモビリティと称される場合がある。電動キックボードはマイクロモビリティの一種である。所定領域とは、例えば歩道である。また、所定領域とは、路側帯や自転車レーン、公開空地などのうち一部または全部であってもよいし、歩道、路側帯、自転車レーン、公開空地などを全て含んでもよい。以下の説明では、所定領域は歩道であるものとする。以下の説明において「歩道」と記載されている部分は、適宜、「所定領域」と読み替えることができる。
【0017】
図1は、実施形態に係る移動体1および制御装置100の構成の一例を示す図である。移動体1には、例えば、外界検知デバイス10と、移動体センサ12と、操作子14と、内部カメラ16と、測位装置18と、モード切替スイッチ22と、ダイヤルスイッチ24と、移動機構30と、駆動装置40と、外部報知装置50と、記憶装置70と、制御装置100とが搭載される。なお、これらの構成のうち本発明の機能を実現するのに必須でない一部の構成が省略されてもよい。移動体は、乗物に限らず、歩くユーザと並走して荷物を運んだり、人を先導したりするような小型モビリティを含んでよく、また、その他の自律移動が可能な移動体(例えば歩行型ロボットなど)を含んでもよい。
【0018】
外界検知デバイス10は、移動体1の進行方向を検知範囲とする各種デバイスである。外界検知デバイス10は、外部カメラ、レーダー装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、センサフュージョン装置などを含む。外界検知デバイス10は、検知結果を示す情報(画像、物体の位置等)を制御装置100に出力する。
【0019】
移動体センサ12は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ヨーレート(角速度)センサ、方位センサ、並びに操作子14に取り付けられた操作量検出センサなどを含む。操作子14は、例えば、加減速を指示するための操作子(例えばアクセルペダルやブレーキペダル)と、操舵を指示するための操作子(例えばステアリングホイール)とを含む。この場合、移動体センサ12は、アクセル開度センサやブレーキ踏量センサ、ステアリングトルクセンサ等を含んでよい。移動体1は、操作子14として、上記以外の態様の操作子(例えば、円環状でない回転操作子、ジョイスティック、ボタン等)を備えてもよい。
【0020】
内部カメラ16は、移動体1の乗員の少なくとも頭部を正面から撮像する。内部カメラ16は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を利用したデジタルカメラである。内部カメラ16は、撮像した画像を制御装置100に出力する。
【0021】
測位装置18は、移動体1の位置を測位する装置である。測位装置18は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機であり、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、移動体1の位置を特定し、位置情報として出力する。なお、移動体1の位置情報は、後述する通信装置が接続しているWi-Fi基地局の位置から推定されてもよい。
【0022】
HMI20は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。移動体1の乗員は、例えば、HMI20を介して、移動体1の目的地を設定し、後述する制御部140は、設定された目的地まで移動体1を走行させる。
【0023】
モード切替スイッチ22は、乗員により操作されるスイッチである。モード切替スイッチ22は、機械式スイッチであってもよいし、HMI20のタッチパネル上に設定されるGUI(Graphical User Interface)スイッチであってもよい。モード切替スイッチ22は、例えば、モードA:乗員により操舵操作と加減速制御との一方が行われ、他方は自動的に行われるアシストモードであり、乗員により操舵操作が行われ加減速制御が自動的に行われるモードA-1と、乗員により加減速操作が行われ操舵制御が自動的に行われるモードA-2とがあってよい、モードB:乗員により操舵操作および加減速操作がなされる手動運転モード、モードC:操作制御および加減速制御が自動的に行われる自動運転モードのいずれかに運転モードを切り替える操作を受け付ける。
【0024】
移動機構30は、道路において移動体1を移動させるための機構である。移動機構30は、例えば、操舵輪と駆動輪とを含む車輪群である。また、移動機構30は、多足歩行するための脚部であってもよい。
【0025】
駆動装置40は、移動機構30に力を出力して移動体1を移動させる。例えば、駆動装置40は、駆動輪を駆動するモータ、モータに供給する電力を蓄えるバッテリ、操舵輪の操舵角を調整する操舵装置などを含む。駆動装置40は、駆動力出力手段、或いは発電手段として、内燃機関や燃料電池などを備えてもよい。また、駆動装置40は、摩擦力や空気抵抗によるブレーキ装置を更に備えてもよい。
【0026】
外部報知装置50は、例えば移動体1の外板部に設けられ、移動体1の外部に向けて情報を報知するためのランプ、ディスプレイ装置、スピーカなどである。外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している状態と、車道を移動している状態とで異なる動作を行う。例えば、外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している場合にランプを発光させ、移動体1が車道を移動している場合にランプを発光させないように制御される。このランプの発光色は、法規で定められた色であると好適である。外部報知装置50は、移動体1が歩道を移動している場合にランプを緑色で発光させ、移動体1が車道を移動している場合にランプを青色で発光させるというように制御されてもよい。外部報知装置50がディスプレイ装置である場合、外部報知装置50は、移動体1が歩道を走行している場合に「歩道走行中である」旨をテキストやグラフィックで表示する。
【0027】
図2は、移動体1を上方から見た透視図である。図中、FWは操舵輪、RWは駆動輪、SDは操舵装置、MTはモータ、BTはバッテリである。操舵装置SD、モータMT、バッテリBTは駆動装置40に含まれる。また、APはアクセルペダル、BPはブレーキペダル、WHはステアリングホイール、SPはスピーカ、MCはマイクである。図示する移動体1は一人乗りの移動体であり、乗員Pは運転席DSに着座してシートベルトSBを装着している。矢印D1は移動体1の進行方向(速度ベクトル)である。外界検知デバイス10は移動体1の前端部付近に、内部カメラ16は乗員Pの前方から乗員Pの頭部を撮像可能な位置に、モード切替スイッチ22はステアリングホイールWHのボス部にそれぞれ設けられている。また、移動体1の前端部付近に、ディスプレイ装置としての外部報知装置50が設けられている。
【0028】
図1に戻り、記憶装置70は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などの非一過性の記憶装置である。記憶装置70には、ナビゲーション地図情報72、第1学習済みモデル73、第2学習済みモデル74などが格納される。図では記憶装置70を制御装置100の枠外に記載しているが、記憶装置70は制御装置100に含まれるものであってよい。また、記憶装置70は不図示のサーバ上に設けられてもよい。
【0029】
ナビゲーション地図情報72は、事前に記憶装置70に記憶され、例えば、車道および歩道を含む道路の中央の情報あるいは道路の境界の情報等を含む地図情報である。ナビゲーション地図情報72は、さらに、道路の境界に接する施設や建物に関する情報(名称、住所、面積など)を含む。
【0030】
第1学習済みモデル73は、路面を含む画像を入力として、当該画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された学習済みモデルである。ここで、同一属性とは、例えば、「歩道」や「車線(左車線および右車線)」などの区分を意味する。第2学習済みモデル74は、路面を含む画像を入力として、当該画像上の複数のエリアの境界を出力するように学習された学習済みモデルである。本発明において、第1学習済みモデル73は、任意の教師なし学習によって生成された学習済みモデルとし、第2学習済みモデル74は、任意の教師あり学習によって生成された学習済みモデルとする。本発明で用いる学習済みモデルを全て教師あり学習によって生成することなく、第1学習済みモデル73を教師無し学習によって生成することにより、教師データの準備コストと、学習を実行するCPUの処理負荷とを低減することができる。
【0031】
図3は、第1学習済みモデル73と第2学習済みモデル74の機能を説明するための図である。図3は、路面を含む画像の入力に応じて、第1学習済みモデル73および第2学習済みモデル74がそれぞれ出力する内容の一例を表す。図3の場合、第1学習済みモデル73は、路面を含む画像の入力に応じて、当該画像におけるエリアA1(左歩道)、エリアA2(左車線)、エリアA3(右車線)、エリアA4(右歩道)を出力している。一方、第2学習済みモデル74は、路面を含む画像の入力に応じて、当該画像におけるエリア間の境界L1、L2、L3を出力している。図3に示す通り、本実施形態における「境界」とは、一次元の線ではなく、移動体1が横断可能な二次元の領域を意味する。すなわち、第2学習済みモデル74を生成するために用いる教師データは、例えば、画像に対して、エリア間の境界を二次元の領域としてアノテーション付けすることによって定義されるデータである。
【0032】
一般的に、エリアの境界は画像において占める面積の割合が小さく、エリアと境界とを合わせて出力する学習済みモデルにおいては、境界の出力精度が低下する場合がある。これに対して、本発明では、エリアを出力する学習済みモデルと、境界を出力する学習済みモデルとを別途設けることにより、境界の出力精度を向上することができる。
【0033】
[制御装置]
制御装置100は、例えば、認識部120と、受付部130と、制御部140とを備える。認識部120と、受付部130と、制御部140は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶装置70に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置70にインストールされてもよい。記憶装置70と、認識部120と、受付部130は、「画像処理装置」の一例であり、記憶装置70と、認識部120と、受付部130と、制御部140は、「移動体制御装置」の一例である。
【0034】
認識部120は、外界検知デバイス10の出力に基づいて、移動体1の周辺に存在する物体を認識する。物体とは、車両や自転車、歩行者などの移動体、道路区画線、段差、ガードレール、路肩、中央分離帯などの走路境界、道路標識や看板などの路上に設置された構造物、走路上に存在する(落ちている)落下物などの障害物のうち一部または全部を含む。
【0035】
認識部120は、さらに、外界検知デバイス10の外部カメラが撮像した画像を、第1学習済みモデル73および第2学習済みモデル74に入力することによって、当該画像における一以上のエリアおよび境界を取得する。認識部120は、移動体1における外部カメラの設置位置に基づいて、取得されたエリアのうち、移動体1の現在地を含むエリアを走行可能領域として認識する。例えば、図3に示す画像が、外部カメラが移動体1の中央に設けられた状態で撮像されたものである場合、認識部120は、画像の中央に位置するエリアA2が移動体1の現在地を含むものと判定し、エリアA2を走行可能領域として認識する。また、例えば、認識部120は、取得されたエリアのうち、撮像画像の横軸中央部かつ縦軸最下部に位置する座標を含むエリアを走行可能領域として認識してもよい。
【0036】
受付部130は、HMI20を介して、移動体1の目的地の設定を受け付ける。図4は、受付部130によって受け付けられる移動体1の目的地の一例を示す図である。図4に示す通り、移動体1の乗員は、例えば、HMI20上に設けられた入力領域R1に目的地の名称を入力することによって、当該目的地を設定する。また、例えば、HMI20は、ナビゲーション地図情報72を表示させ、移動体1の乗員は、ナビゲーション地図情報72に表示された建物や施設を指定することによって、目的地を設定してもよい。また、例えば、HMI20は、住所情報や電話番号を入力するための入力領域を設け、移動体1の乗員は、住所情報や電話番号を入力することによって目的地を設定してもよい。
【0037】
移動体1の乗員が目的地を設定し、走行開始ボタンB1を押下すると、制御部140は、ナビゲーション地図情報72を参照して、設定された目的地までの目標軌道を生成する。図5は、制御部140が、設定された目的地に基づいて生成した目標軌道の一例を示す図である。図5は、図4に示すHMI20上で設定された目的地に基づいて制御部140が生成した目標軌道を表す。図5に示す通り、制御部140が生成した目標軌道TTは、移動体1の現在地から飲食店Aの駐車場まで延伸するものであり、目標軌道TTは、第1学習済みモデル73によって出力されたエリアA1(歩道L2に対応)およびエリアA2(車道L1に対応)と、エリアA1とエリアA2との間の境界L1とを通過するものである。
【0038】
エリアA1は、移動体1の現在地を含むエリアA2から離間したエリアであるが、移動体1の現在地から目的地までの経路上に存在するため、移動体1によって走行可能であることが想定される。そのため、認識部120は、エリアA2に加えて、エリアA1と境界L1を走行可能領域として認識する。
【0039】
認識部120は、エリアA1およびA2と、境界L1とを走行可能領域として認識すると、これら2つのエリアおよび境界を統合することによって統合エリアを取得し、走行可能領域として認識する。図6は、認識部120によって取得される統合エリアの一例を示す図である。図6に示す通り、認識部120は、エリアA1およびA2と、境界L1とを統合した統合領域IAを取得し、走行可能領域として認識する。制御部140は、認識部120によって認識された走行可能領域を走行するように移動体1を制御し、目的地まで走行する。
【0040】
なお、上記の走行可能領域の認識は、乗員が目的地を設定し、移動体1が自動運転モードで目的地まで走行する場合に実行されるものである。移動体1が手動運転モードで走行する場合には、認識部120は、乗員の運転によって移動体1が進入したエリアを走行可能領域として認識してもよい。より具体的には、認識部120は、移動体1が、現在地を含むエリアから境界を横断して異なるエリアに移動した場合、当該異なるエリアを走行可能領域として認識してもよい。
【0041】
さらに、上記の方法によって認識された走行可能領域は、測位装置18によって測位された位置情報と紐づけてナビゲーション地図情報72に格納されてもよい。その場合、制御部140は、次回同一の走路を走行する際に、ナビゲーション地図情報72を参照して走行可能領域を取得し、上述した第1学習済みモデル73および第2学習済みモデル74を用いた処理を行うことなく、移動体1に、当該走行可能領域を走行させてもよい。
【0042】
このように、移動体1の走行可能領域を認識するために、移動体1が走行する道路の種類に応じて学習済みモデルを変更する必要がある従来技術に比べて、本発明によれば、移動体1がいかなる種類の道路を走行するかに依存することなく、同一の学習済みモデルを用いて、移動体1の走行可能領域を認識することができる。これにより、移動体が走行する道路の種類に応じて学習済みモデルを変更することなく走行可能領域を認識することができる。
【0043】
次に、図7を参照して、実施形態に係る画像処理装置によって実行される処理の流れについて説明する。図7は、実施形態に係る画像処理装置によって実行される処理の流れの一例を示す図である。図7に示す処理は、移動体1が走行中、繰り返し実行されるものである。
【0044】
認識部120は、まず、外界検知デバイス10の外部カメラによって撮像された、移動体1の進行方向前方における路面を含む画像を取得する(ステップS100)。次に、認識部120は、取得した画像を第1学習済みモデル73と第2学習済みモデル74とに入力することによって、一以上のエリアと境界を取得する(ステップS102)。
【0045】
次に、認識部120は、第1学習済みモデル73から出力されたエリアのうち、移動体1が属する自車エリアを走行可能領域として認識する(ステップS104)。次に、認識部120は、自車エリアと、HMI20を介して設定された目的地との間に他のエリアが存在するか否かを判定する(ステップS106)。
【0046】
自車エリアと、設定された目的地との間に他のエリアが存在しないと判定された場合、認識部120は、自車エリアのみを走行可能領域として認識する(ステップS108)。一方、自車エリアと、設定された目的地との間に他のエリアが存在すると判定された場合、認識部120は、自車エリアと、他のエリアと、境界を統合して走行可能領域として認識する(ステップS110)。
【0047】
図8は、実施形態に係る画像処理装置によって実行される処理の流れの別の例を示す図である。図8に示す処理は、移動体1が走行中、繰り返し実行されるものである。
【0048】
認識部120は、まず、外界検知デバイス10の外部カメラによって撮像された、移動体1の進行方向前方における路面を含む画像を取得する(ステップS200)。次に、認識部120は、取得した画像を第1学習済みモデル73と第2学習済みモデル74とに入力することによって、一以上のエリアと境界を取得する(ステップS202)。次に、認識部120は、第1学習済みモデル73から出力されたエリアのうち、移動体1が属する自車エリアを走行可能領域として認識する(ステップS204)。
【0049】
認識部120は、次に、過去に走行可能領域として認識されたエリアおよび境界と位置情報とを対応付けて保存したナビゲーション地図情報72を参照して、自車エリア以外について、取得されたエリアおよび境界が走行可能領域として登録されているか否かを判定する(ステップS206)。取得されたエリアおよび境界が走行可能領域として登録されていないと判定された場合、認識部120は、処理を図7のステップS106に移行させる。一方、取得されたエリアおよび境界が走行可能領域として登録されていると判定された場合、認識部120は、取得されたエリアおよび境界を走行可能領域として認識する(ステップS208)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0050】
以上の通り説明した本実施形態によれば、移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、第1学習済みモデルと第2学習済みモデルとに入力することによって得られたエリアと境界とに基づいて、移動体が走行可能な走行可能領域を認識する。これにより、移動体が走行する道路の種類に応じて学習済みモデルを変更することなく走行可能領域を認識することができる。
【0051】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
路面を含む画像を入力として、前記画像上の同一属性の路面と推定される領域を一つのエリアとして出力するように学習された第1学習済みモデルと、前記路面を含む画像を入力として、前記画像上の複数の前記エリアの境界を出力するように学習された第2学習済みモデルと、を記憶し、
移動体に搭載されたカメラによって撮像された路面を含む画像を、前記第1学習済みモデルと前記第2学習済みモデルとに入力することによって得られた前記エリアと前記境界とに基づいて、前記移動体が走行可能な走行可能領域を認識する、
ように構成されている、画像処理装置。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 外界検知デバイス
12 移動体センサ
14 操作子
16 内部カメラ
18 測位装置
20 HMI
22 モード切替スイッチ
30 移動機構
40 駆動装置
50 外部報知装置
70 記憶装置
72 ナビゲーション地図情報
73 第1学習済みモデル
74 第2学習済みモデル
100 制御装置
120 認識部
130 受付部
140 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8