(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031852
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エアジェット紡糸機及びエアジェット紡糸機の紡糸ユニットのためのドラフトシステムユニット
(51)【国際特許分類】
D01H 5/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
D01H5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127901
(22)【出願日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】502705
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン、ラース
(72)【発明者】
【氏名】プレディガー、エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ライマン、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シッファース、フィリップ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BC01
4L056BC04
4L056BC22
4L056BC38
4L056BC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、必要に応じてボトムローラキャリアから簡単な方法で解離可能な、具体的には、ツールなしに、確実に旋回可能なエアジェット紡糸ノズルを備えた、エアジェット紡糸機及びエアジェット紡糸機の紡糸ユニットのためのドラフトシステムユニットを提供する。
【解決手段】本発明は、必要に応じてボトムローラキャリアから簡単な方法で解離可能な、確実に旋回可能なエアジェット紡糸ノズルを有する、エアジェット紡糸機及びエアジェット紡糸機の紡糸ユニットのためのドラフトシステムユニットを提供するために、ボトムローラキャリアが、エアジェット紡糸ノズルを受容することができる自由端部を有する軸受要素を備え、軸受要素が、エアジェット紡糸ノズルを動作位置と、動作位置から離間した第2の位置との間で旋回させるための旋回軸を形成し、軸受要素は、ボトムローラキャリア上の自由端部から離間した部分に接続されているように提供されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された繊維ストリップから糸又は粗糸を製造するためのエアジェット紡糸機の紡糸ユニットのためのドラフトシステムユニット(1)であって、
荷重キャリア上のフロントトップローラ、及びボトムローラキャリア(4)上の駆動されるフロントボトムローラ(3)からなり、クランプラインを形成する、少なくとも1つのフロントローラ対と、
前記ボトムローラキャリア(4)上に配置され、エアジェット紡糸ノズル(2)を移動可能に軸受する、軸受要素(5)と、を備え、
前記ボトムローラキャリア(4)が、前記エアジェット紡糸ノズル(2)を受容することができる少なくとも1つの自由端部(6)を有する軸受要素(5)を備え、前記軸受要素(5)が、前記エアジェット紡糸ノズル(2)を動作位置と、動作位置から離間した少なくとも1つの第2の位置との間で旋回させるための旋回軸を形成し、前記軸受要素(5)が、前記ボトムローラキャリア(4)上の前記自由端部(6)から離間した部分に接続されていることを特徴とする、ドラフトシステムユニット(1)。
【請求項2】
前記第2の位置が、メンテナンス位置又はメンテナンス位置とは異なる位置であることを特徴とする、請求項1に記載のドラフトシステムユニット(1)。
【請求項3】
前記軸受要素(5)が、前記自由端部(6)に対向する部分に停止要素(7)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のドラフトシステムユニット(1)。
【請求項4】
前記軸受要素(5)が、位置固定要素を受容するために前記自由端部(6)の領域内に設計されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のドラフトシステムユニット(1)。
【請求項5】
前記軸受要素(5)が、前記ボトムローラキャリア(4)の旋回軸キャリア(10)上に配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のドラフトシステムユニット(1)。
【請求項6】
前記軸受要素(5)が、前記旋回軸キャリア(10)によって固定的に保持された軸受ピン、具体的には、前記旋回軸キャリア(10)に圧入又はねじ込まれた軸受ピンによって形成されていることを特徴とする、請求項5に記載のドラフトシステムユニット(1)。
【請求項7】
前記エアジェット紡糸ノズル(2)が、前記動作位置と少なくとも前記第2の位置との間で、前記フロントローラ(3)の前記回転軸に対して横方向に延在する、具体的には、直交して延在する、移動方向に沿って旋回できるように、前記軸受要素(5)が配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のドラフトシステムユニット(1)。
【請求項8】
ガイド要素11が、前記自由端部(6)を越えて平行に、かつ前記軸受要素(5)から距離を置いて延在するガイド面(12)を有する前記ボトムローラキャリア(4)上に配置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のドラフトシステムユニット。
【請求項9】
供給された繊維ストリップから糸又は粗糸を製造するためのエアジェット紡糸機(1)であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載のドラフトシステムユニット(1)を有する紡糸ユニットを特徴とする、エアジェット紡糸機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
荷重キャリア上のフロントトップローラ、及びボトムローラキャリア上の駆動されるフロントボトムローラからなり、クランプラインを形成する、少なくとも1つのフロントローラ対と、
ボトムローラキャリア上に配置され、エアジェット紡糸ノズルを移動可能に軸受する、軸受要素と、を備える、供給された繊維ストリップから糸又は粗糸を製造するためのエアジェット紡糸機の紡糸ユニットのためのドラフトシステムユニットに関する。
【0002】
繊維機械のためのドラフトシステムユニットは、先行技術から様々な実施形態で知られている。それらは、繊維バンドを延伸又はドラフトするために使用され、それによって繊維の断面の減少を引き起こす。ドラフトプロセスの間、繊維は、可能な限り均一な繊維バンドを達成するために、可能な限り均一に互いに対して変位されなければならない。
【0003】
繊維ストリップを延伸するために、ドラフトシステムユニットは、概して、相前後して配置された複数のローラ対を有しており、これらのローラ対は、互いに隣接して配置されていて、これらのローラ対の間に延在している繊維ストリップをクランプする。この場合、一対のローラは、通常、ボトムローラキャリア上に配置された駆動されるボトムローラ、及び下部ローラに当接し、旋回可能な荷重キャリア上に配置されたボトムローラからなり、上部ローラは荷重キャリアによって回転可能に保持される。繊維ストリップのドラフトは、ローラ対の回転方向によって規定される延伸システムユニットを通る繊維ストリップの搬送方向において、ローラ対からロール対への周速が増加することによって達成される。
【0004】
糸を紡糸するための紡糸機によるエアジェット紡糸の場合、繊維ストリップは、典型的には、ドラフトシステムユニットによって達成されるべき糸繊度に応じて延伸され、次いで、エアジェット紡糸デバイスのエアジェット紡糸ノズルに供給される。エアジェット紡糸デバイス内で、繊維ストリップの外側繊維は、エアジェット紡糸ノズルによって生成される渦空気流によって、繊維ストリップの内側コア繊維の周りに巻き付けられ、それによって、糸の所望の糸強度にとって重要なラッピング繊維を形成する。したがって、形成された糸は、例えば、最終的にエアジェット紡糸デバイスの引き出しチャネルを介して引き出され、チューブに巻き取られる。
【0005】
公知のドラフトシステムユニットの場合、エアジェット紡糸ノズルは、繊維ストリップの搬送方向においてドラフトシステムユニットのフロントローラ対の下流にあるドラフトシステムユニットのボトムローラキャリア上に配置されている。ボトムローラキャリア上にエアジェット紡糸ノズルを配置するために、ボトムローラキャリアに接続されかつボトムローラキャリアに適合されたホルダを使用することが知られており、このホルダにエアジェット紡糸ノズルが旋回可能に配置されていて、フロントローラ対から出てくる繊維ストリップがエアジェット紡糸ノズル内に移送される動作位置と、メンテナンス位置との間で調節可能である。メンテナンス位置では、例えば、紡糸ノズルとフロントローラ対との間の領域を容易に清掃することができる。例えば、メンテナンス作業を実施するために、ボトムローラキャリアから紡糸ノズルを完全に取り外すために、先行技術から知られているホルダでは、例えば、ホルダをボトムローラキャリアに固定している対応するねじ接続を解除することによって、紡糸ノズルが上に配置された上記ホルダをボトムローラキャリアから取り外す必要がある。この場合、エアジェット紡糸ノズルは、概して、2つの対向する軸受点を介してホルダ上に旋回可能に配置され、これらの軸受点も高い位置公差を有する。
【0006】
粗糸を紡糸するための粗紡機によるエアジェット紡糸の場合、例えば、練篠フレームによって製造された繊維ストリップ、いわゆる練篠フレームスライバが粗紡機に供給される。粗紡機は、例えば、上述したようなエアジェット紡糸デバイスを備え、粗糸を製造するためのエアジェット紡糸デバイスの寸法及び流れ条件は、糸を製造するためのエアジェット紡糸デバイスに好適に適合される。粗糸を製造するための粗紡機のこのようなエアジェット紡糸デバイスの動作モードは、糸を製造するためのエアジェット紡糸機のエアジェット紡糸デバイスの動作モードと類似している。
【0007】
このことから出発して、本発明は、必要に応じてボトムローラキャリアから簡単な方法で解離可能な、具体的には、ツールなしに、確実に旋回可能なエアジェット紡糸ノズルを備えた、エアジェット紡糸機及びエアジェット紡糸機の紡糸ユニットのためのドラフトシステムユニットを提供する目的に基づいている。
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有するドラフトシステムユニットによって、及び請求項8の特徴を有するエアジェット紡糸機によって、この目的を解決する。ドラフトシステムユニットの有利な更なる発展形態は、従属請求項2~7に規定されている。
【0009】
好ましい実施形態によれば、エアジェット紡糸機は、巻き取りスプール、具体的にはいわゆる交差巻きスプールを形成するために巻き取りスプールチューブに巻き付けることができる糸を製造するように設計されているそのような紡糸機であってもよい。
【0010】
更なる好ましい実施形態によれば、エアジェット紡糸機は、例えば、冒頭に記載したように、粗糸を製造するための粗紡機であってよい。このような粗紡機では、エアジェット紡糸デバイスは、製造された粗糸が可逆的な保護撚りを有するように設計されている。この種の可逆的な保護撚りは、粗糸が、例えば、リング紡糸機などの更なる処理プロセスのために延伸されることが可能なままであり、導入された付与された撚りを必要に応じて再び溶解することができることを特徴とすることが知られている。可逆的な保護撚りは、通常、エアジェット紡糸デバイスに供給される繊維ストリップがエアジェット紡糸デバイスによって少なくとも部分的に真の撚りを与えられるようにして達成される。これは、供給された繊維ストリップの繊維の少なくとも一部が、エアジェット紡糸プロセスの過程で真の撚りを与えられること、すなわち、エアジェット紡糸デバイス内で生成された空気流によって達成される回転を与えられることを意味すると理解されるべきである。
【0011】
本発明によるドラフトシステムユニットの特徴は、ボトムローラキャリアが、自由端部を有する軸受要素を備え、自由端部を介してエアジェット紡糸ノズルを受容することができ、自由端部は、動作位置と、動作位置から離間した少なくとも1つの第2の位置との間でエアジェット紡糸ノズルを旋回させるための旋回軸を形成し、軸受要素は、自由端部から離間した部分によってボトムローラキャリアに接続されていることである。第2の位置は、第1の位置を規定する動作位置に対して、動作位置よりもフロントローラから離れた位置である。例えば、第2の位置は、例として説明したようなメンテナンス活動を実施することができるメンテナンス位置を規定することができる。代替的に、第2の位置は、メンテナンス位置とは異なる位置であってもよい。具体的には、第2の位置は、動作位置とメンテナンス位置との間、又はメンテナンス位置に対してフロントローラから更に離れた位置であり得る。後者の場合、第2の位置は、フロントローラから延伸する方向において、動作位置及びメンテナンス位置の両方の下流に設けられる。第2の位置は、更に好ましくは、旋回可能なエアジェット紡糸ノズルのための端部位置を規定することができ、この端部位置において、エアジェット紡糸ノズルは、フロントローラに対して可能な限り最大の距離を有することができる。
【0012】
ボトムローラキャリアに接続するための部分は、好ましくは、自由端部とは反対側の軸受要素の端部であり得る。結果として、軸受要素は、規定された費用対効果の高い方法で形成することができる。代替的に、部分は、自由端部と、それに対向して位置する軸受要素の更なる、具体的には自由端部との間に位置する部分であり得る。必要に応じて、これは、軸受要素上の更なる構成要素の更なる配置可能性に有利に働く。部分を介した軸受要素のボトムローラキャリアへの接続は、基本的に自由に選択可能である。好ましい実施形態によれば、ボトムローラキャリアは、軸受要素の部分を受容するように設計されている締結レセプタクルを有する。更に好ましくは、少なくとも締結レセプタクル又は軸受要素の一部分は、ボトムローラキャリア上での軸受要素の静止固定を可能にするように設計されている。これは、例えば、ねじ締結又はクランプ固定によって行うことができ、これは更に好ましくはばね荷重される。
【0013】
ドラフトシステムユニットの本発明による構成によって、エアジェット紡糸ノズルを簡単な方法でボトムローラキャリア上に配置することができ、又はボトムローラキャリアから取り外すことができる。エアジェット紡糸ノズルをボトムローラキャリア上に配置するためには、軸受要素の自由端部に適合された開口部を有する自由端部を介して軸受要素上にエアジェット紡糸ノズルを押し付けるだけでよい。ボトムローラキャリアからのエアジェット紡糸ノズルの取り外しは、エアジェット紡糸ノズルを軸受要素から自由端部を介して単に下方に摺動させることによって実施することができる。したがって、一端が自由な軸受要素は、ボトムローラキャリア上でのエアジェット紡糸ノズルの簡単な組み立て及び分解を可能にし、また、動作位置と、動作位置から離間した第2の位置との間で、軸受要素によって形成される旋回軸の周りでエアジェット紡糸ノズルを旋回させる可能性を提供する。更に、ボトムローラキャリア上の軸受要素の片側軸受は、ボトムローラキャリアに対する旋回軸の特に正確でバックラッシュのない位置合わせを可能にする。
【0014】
軸受要素上へのエアジェット紡糸ノズルの押し付け方向におけるエアジェット紡糸ノズルの位置を、具体的には旋回軸に沿って固定するために、本発明の好ましい実施形態によれば、軸受要素は、自由端部に対向する部分に停止要素を有するように提供されている。好ましくは少なくとも部分的に、又は更に好ましくは完全に、旋回軸又は軸受要素を取り囲む、例えば、肩部又はフランジの形態の停止要素の使用は、軸受要素上への押し付け方向におけるエアジェット紡糸ノズルの正確な位置決めを可能にし、その結果、エアジェット紡糸ノズルは、フロントローラ対に対して最適な方法で動作位置に配置され得る。したがって、別個のアライメントは不要である。
【0015】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、エアジェット紡糸ノズルは、軸受要素上に位置が固定されるように固定される。ここで、エアジェット紡糸ノズルの位置固定は、基本的に自由に選択可能であり得る。具体的には、軸受要素上のエアジェット紡糸ノズルの位置を固定するために、軸受要素が、その自由端部の領域に位置固定要素を受容するように設計されるように提供されている。位置固定要素の使用は、例えば、ねじ締結又はクランプ固定によるものであり、更に好ましくはばね荷重方法で形成することができ、エアジェット紡糸ノズルが望ましくない方法で軸受要素から滑り落ちないことを確実に保証する。例えば、位置固定要素は、軸受要素の自由端部にねじ込むことができるねじ、軸受要素の自由端部上に配置することができるスナップリング、又は、具体的にはばね荷重の圧力片とすることができる。ばね荷重された圧力片は一般的に知られており、圧力片の先端がばね荷重された方法で移動可能であるように設計されているという従来のクランプねじに対する利点を提供する。圧力片の先端に作用する、クランプ力として作用するばね力が克服されるとすぐに、先端は圧力片の方向に又は圧力片内に移動し、それによって、ばね荷重された圧力片によって保持された構成要素又はエアジェット紡糸ノズルを軸受要素上で変位させることができる。代替的に又は追加的に、軸受要素と、軸受要素に押し付けできる、エアジェット紡糸ノズルを担持するキャリアとは、好ましい方法では、ばね荷重された圧力片を備えた好ましい実施形態と同様に、さねはぎ式の係止機構を有していてよく、この係止機構は、押し付け方向に沿った規定された力が克服された場合に、エアジェット紡糸ノズルの押し付け方向に沿って係合又は係脱される。ばね荷重圧力片とは対照的に、ばね荷重圧力片の先端のようなばね荷重圧力要素は設けられていない。更に代替的に又は追加的に、ロックレバーが設けられていてよく、このロックレバーは、押し付け方向に対して横方向に回転可能にボトムローラキャリア上に配置されていて、軸受要素への位置決め後にエアジェット紡糸ノズルを固定して、押し付け方向とは逆方向の移動を阻止するようになっている。位置固定要素としてのスナップリングの好ましい使用は、一方では、軸受要素上のエアジェット紡糸ノズルの位置の確実な固定を保証し、他方では、エアジェット紡糸ノズルを容易な方法で軸受要素から取り外すことができるように、必要であれば、簡単かつ迅速な取り外しを可能にすることを特徴とする。
【0016】
エアジェット紡糸ノズルの旋回軸を形成する軸受要素の実施形態は、基本的に自由に選択可能である。これもボトムローラキャリアと一体に設計されていてよい。本発明の好ましい実施形態によれば、軸受要素は、ボトムローラキャリアの旋回軸キャリア上に配置されている。本発明のこの好ましい実施形態は、例えば、ドラフトシステムユニット上の代替のエアジェット紡糸ノズルの使用を可能にするために、必要に応じて、軸受要素をボトムローラキャリアから取り外し、新しい軸受要素と交換する可能性を提供する。本発明の特に好ましい実施形態によれば、軸受要素が軸受ピンによって形成され、かつ軸受ピンが旋回軸キャリアによって静止状態で保持され、更に好ましくは旋回軸キャリアに圧入又はねじ込まれるように提供されている。具体的には、圧入された又はねじ込まれた軸受ピンの使用は、非常に低い軸受公差で高度の位置安全性を保証するので、フロントローラ対から出てくる繊維ストリップに対するエアジェット紡糸ノズルの最適な位置決めを特に確実な方法で保証することができる。代替的に、軸受ピンは、他の締結タイプを介して、例えば、クランプ又はラッチデバイス、バヨネットキャッチ等を介して、ボトムローラキャリア又は旋回軸キャリアに締結されてもよい。締結タイプに関しては、ボトムローラキャリア又は旋回軸キャリア上の軸受ピンの固定式取り付けを可能にするものを選択することが重要である。
【0017】
フロントローラ対に対する軸受要素の配置も、基本的に自由に選択可能である。本発明の好ましい実施形態によれば、エアジェット紡糸ノズルが、動作位置と少なくとも第2の位置との間で、フロントローラの回転軸に対して横方向に延在する、更に好ましくは、直交して延在する、移動方向に沿って旋回できるように、軸受要素は配置されている。更に好ましくは、エアジェット紡糸ノズルが動作位置と第2の位置との間でフロントボトムローラに対して接線方向に旋回できるように、軸受要素は配置されている。本発明のこの更なる好ましい実施形態によれば、旋回軸は、フロントローラ対のクランプラインに平行に延び、旋回軸、フロントボトムローラの回転軸、及びフロントトップローラの回転軸は、共通の平面内にある、すなわち、共通の平面に広がる。本発明の好ましい又は更なる好ましい実施形態の結果として、紡糸ノズルは、動作位置から少なくとも第2の位置に変位させることができ、第2の位置は、移動方向において、動作位置とは異なる旋回可能なエアジェット紡糸ノズルのためのメンテナンス位置及び/又は端部位置を構成することができ、これは、紡ぎ糸における肥厚部の溶解を容易にする。具体的には、エアジェット紡糸ノズルをフロントローラに対して接線方向に旋回させるという更なる好ましい実施形態は、紡ぎ糸における肥厚部の更なる改善された溶解に寄与する。
【0018】
軸受要素上へのエアジェット紡糸ノズルの組み立てを容易にするために、本発明の更なる好ましい実施形態によれば、自由端部を越えて平行に延在し、かつ軸受要素から距離を置いて延在するガイド面を有する、ボトムローラキャリア上に配置されたガイド要素が設けられる。ガイド要素は、エアジェット紡糸ノズルをボトムローラキャリア上に取り付ける際に停止要素として働き、機械オペレータがエアジェット紡糸ノズルを軸受要素上に配置することを容易にする。エアジェット紡糸ノズルは、機械オペレータによって軸受要素の自由端部に隣接するガイド面に当てられる。ガイド面と接触すると、エアジェット紡糸ノズルは、ガイド面に対して平行に向けられた移動によって、軸受要素の自由端部とは反対側の軸受要素の端部に向かう方向に変位することができる。したがって、紡糸ノズルは、簡単な方法で軸受要素上に押し付けることができる。ガイド面は、ボトムローラキャリア上へのエアジェット紡糸ノズルの特に簡単かつ迅速な組み立てを可能にする組み立て補助手段として働く。
【0019】
本発明はまた、供給された繊維ストリップから糸又は粗糸を製造するためのエアジェット紡糸機であって、本発明に従って記載された、又は好ましくは更に開発された少なくとも1つのドラフトシステムユニットを有するエアジェット紡糸機によって、目的を達成する。
【0020】
本発明によるエアジェット紡糸機は、必要に応じて、エアジェット紡糸ノズルを特に簡単かつ便利な方法で紡糸ユニットから取り外すことができるという利点を有する。したがって、メンテナンス及び清掃作業を短時間で都合よく実施することができ、メンテナンス作業の場合に最小限のダウンタイムしか生じない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の例示的な実施形態は、同一の参照符号が同一の機能要素に使用される図面を参照して以下に説明される。図面は以下の通りである。
【0022】
【
図1】軸受要素から分離されたエアジェット紡糸ノズルを備えたドラフトシステムユニットの部分領域の斜視図の概略図である。
【
図2】メンテナンス位置において軸受要素上に押し込まれている、エアジェット紡糸ノズルを備えた
図1のドラフトシステムユニットの部分領域の斜視図の概略図である。
【
図3】動作位置に配置されている、エアジェット紡糸ノズルを備えた
図1のドラフトシステムユニットの部分領域の斜視図の概略図である。
【
図4】
図1のドラフトシステムユニットの部分領域の斜視図の概略図である。
【
図5】更なる実施形態による、動作位置に配置されている、エアジェット紡糸ノズルを備えたドラフトシステムユニットの部分領域の斜視図の概略図である。
【0023】
図1の概略図に示されるドラフトシステムユニット1の斜視図は、一実施形態による、ボトムローラキャリア4上のフロントボトムローラ3の領域におけるエアジェット紡糸ノズル2の接続領域を示す。
図1では、エアジェット紡糸ノズルは、ボトムローラキャリア4から分離されている。
【0024】
ボトムローラキャリア4上に配置するために、エアジェット紡糸ノズル2は、キャリア13を有しており、軸受要素レセプタクル14がキャリア13を貫通して延在している。ボトムローラキャリア4上にエアジェット紡糸ノズル2を配置するために、軸受要素レセプタクル14は、軸受ピンとして設計された軸受要素5上に、軸受ピンを担持する軸受要素キャリア10の方向に、軸受要素レセプタクル14が
図2に示す軸受ピン5上の押し付け位置に達するまで押し付けられる。
【0025】
例示的な実施形態によれば第2の位置を構成する、
図2に示されるエアジェット紡糸ノズル2のメンテナンス位置において、エアジェット紡糸ノズル2は、軸受ピンの自由端部6を介して軸受ピン上に完全に押し付けられ、軸受要素キャリア10に面するキャリア13の端面は、軸受ピンの円周停止要素7に対して静止する。軸受ピン上におけるエアジェット紡糸ノズル2の押し付け位置を固定するために、スナップリング9が使用され、これは、軸受ピンの自由端部6の領域において、軸受ピンの周りに延在する溝8に挿入される。
【0026】
ボトムローラキャリア4上へのエアジェット紡糸ノズル2の配置を簡単にするために、ボトムローラキャリア4にガイド要素11が配置されており、そのガイド面12は、軸受ピンに対して平行にその自由端部6を越えて延在している。エアジェット紡糸ノズル2を組み立てるために、
図1に示される位置において、エアジェット紡糸ノズル2は、キャリア13によってガイド面12と接触させられ、ガイド面に対して載置され、キャリア13が軸受要素キャリア10に面するその端面で軸受ピンの停止要素7に対して載置されるまで(
図4参照)、軸受ピンの自由端部6を介してガイド面上に押し付けられる。
【0027】
図2に示されるメンテナンス位置から、エアジェット紡糸ノズル2は、軸受ピンを中心に、又は軸受ピンによって形成される旋回軸を中心に、
図3に示される動作位置まで旋回され、再び戻ることができ、動作位置にあるエアジェット紡糸ノズル2は、繊維ストリップ搬送方向において、供給された繊維ストリップを受容するために、フロントボトムローラ3及びフロントトップローラ(ここでは図示せず)によって形成されるクランプラインの下流に配置される。
【0028】
図5は、更なる例示的な実施形態を示しており、先の例示的な実施形態とは対照的に、エアジェット紡糸ノズル2の押し付け方向が逆にされている。軸受ピンの停止要素7は、軸受ピンの右端に押し付け方向に沿って配置されており、これにより、エアジェット紡糸ノズル2は、軸受ピンの左側に配置された自由端部6を介して左側から押し付け可能である。ガイド要素11は、ボトムローラキャリア4上の対応する位置に配置される。エアジェット紡糸ノズル2が押し込まれた状態では、エアジェット紡糸ノズル2のキャリア13は、軸受ピンの自由端部6に面する側で軸受ピンに押し付けられる端部分15を有し、上記端部分は、圧力片16、具体的にはばね荷重圧力片を受容するためのボアを有する。この例示的な実施形態によれば、圧力片16は、ボア15内にねじ込まれ、圧力片16の先端に一致して軸受ピン上に形成された凹部(図示せず)内にその先端で係合し、例示的な実施形態による凹部は、軸受ピン上の円周方向溝8として形成される。結果として、エアジェット紡糸ノズル2は、軸受ピン上に位置的に固定された方法で固定され得る。エアジェット紡糸ノズル2を分解するために、圧力片16は、ねじ外し方向に規定された方法で解放されるべきであり、その結果、エアジェット紡糸ノズル2は、押し付け方向に沿って自由に移動可能になる。このような圧力片16、具体的にはばね荷重された圧力片を使用することによって、エアジェット紡糸ノズル2の軸受ピンへの取り付け及び軸受ピンからの取り外しが簡単になる。
【符号の説明】
【0029】
1 ドラフトシステムユニット
2 エアジェット紡糸ノズル
3 フロントボトムローラ
4 ボトムローラキャリア
5 軸受要素
6 自由端部
7 停止要素
8 溝
9 スナップリング
10 軸受要素キャリア
11 ガイド要素
12 ガイド面
13 キャリア
14 軸受要素レセプタクル
15 キャリアの端部分
16 圧力片